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特許7532770充電条件調整方法、及び充電条件調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】充電条件調整方法、及び充電条件調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240806BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240806BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240806BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20240806BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20240806BHJP
【FI】
H02J7/04 A
H02J7/00 P
H02J7/04 L
B60L58/12
B60L58/24
B60L58/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019225761
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021097450
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克征
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173665(JP,A)
【文献】特開2013-5678(JP,A)
【文献】特開2011-54479(JP,A)
【文献】特開2018-115568(JP,A)
【文献】特開2016-205386(JP,A)
【文献】特開2014-172587(JP,A)
【文献】特開2010-269712(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051104(WO,A1)
【文献】特開2016-166002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/00
B60L 58/12
B60L 58/24
B60L 58/16
G01R 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された蓄電池の充電条件を調整する方法であって、
前記蓄電池の状態を判定し、
前記車両の走行状況を取得し、
前記蓄電池の状態及び前記車両の走行状況に応じて、前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準となる前記蓄電池の充電率の閾値を調整し、
前記蓄電池の状態として、前記蓄電池の温度を判定し、
前記閾値を調整する際に、前記温度が高いほど前記閾値を低下させる
充電条件調整方法。
【請求項2】
車両に搭載された蓄電池の充電条件を調整する充電条件調整装置であって、
前記蓄電池の状態を判定する判定部と、
前記車両の走行状況を取得する取得部と、
前記蓄電池の状態及び前記車両の走行状況に応じて、前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準となる前記蓄電池の充電率の閾値を調整する調整部とを備え
前記判定部は、前記蓄電池の温度を判定し、
前記調整部は、前記温度が高いほど前記閾値を低下させる
充電条件調整装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記蓄電池の劣化状態を判定し、
前記調整部は、前記蓄電池の劣化が進行しているほど前記閾値を上昇させる
請求項2に記載の充電条件調整装置。
【請求項4】
前記取得部は、予定された走行経路を取得し、
前記調整部は、前記走行経路に含まれる高速道路の割合又は下り坂の割合が高いほど、前記閾値を低下させる
請求項2又は3に記載の充電条件調整装置。
【請求項5】
前記車両の走行経路例を記憶する記憶部を更に備え、
前記取得部は、現在の走行に該当する走行経路例を前記記憶部から取得し、
前記調整部は、取得した走行経路例に応じて、前記閾値を調整する
請求項2乃至のいずれか一つに記載の充電条件調整装置。
【請求項6】
前記取得部は、渋滞に関する渋滞情報を取得し、
前記調整部は、前記渋滞情報に基づいて、渋滞区間を走行することが予測される場合に、渋滞が無い場合に比べて前記閾値を上昇させる
請求項2乃至のいずれか一つに記載の充電条件調整装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記車両が渋滞に巻き込まれているか否かを取得し、
前記調整部は、前記車両が渋滞に巻き込まれている場合に、前記車両が渋滞に巻き込まれていない場合に比べて前記閾値を低下させる
請求項2乃至のいずれか一つに記載の充電条件調整装置。
【請求項8】
前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行う制御部と、
前記蓄電池の充電率及び前記閾値を比較した結果に応じて、前記動作制御を行うべきか否かを決定する決定部とを更に備え、
前記制御部は、前記決定部が前記動作制御を行うべきと決定した場合に、前記動作制御を行う
請求項2乃至のいずれか一つに記載の充電条件調整装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記蓄電池の充電率が前記閾値以下になった場合に前記動作制御を行うべきと決定する
請求項に記載の充電条件調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された蓄電池の充電条件を調整する方法、及び充電条件調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池又はリチウムイオン電池等の蓄電池は、車両に搭載されて使用されている。特許文献1には、電動車両において、走行の予定に応じて予め十分な電力を蓄電池に充電しておく技術が開示されている。内燃機関を利用したエンジンを備えた車両では、エンジンの動作に応じてオルタネータが発電を行い、発電された電力が蓄電池に充電される。また、減速時に発電を行い、充電を行うこともできる。アイドリングストップが行われる場合は、充電が行われず、充電された電力が消費されるものの、車両の燃費が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-64413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池が十分に充電されている場合は、車両は、アイドリングストップを行うことにより、燃費を向上させることが好ましい。蓄電池の充電率が低すぎる場合は、車両は、アイドリングストップを行わずに、蓄電池を充電することが必要である。このため、蓄電池には充電を行う条件として、充電率の閾値が設定されていることがある。例えば、車両は、充電率が閾値を超えている場合に、アイドリングストップによる燃費の向上を優先し、充電率が閾値を下回っている場合に、アイドリングストップを行わずに蓄電池を充電することが望ましい。しかしながら、設定された条件が適切でないことがある。温度が高い場合、充電の効率が高くなるので、充電率の回復は容易である。このため、充電率がある程度低くなるまで電力を利用できる。温度が低い場合は、充電の効率が低くなるので、充電率は高く保っていることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、走行中の車両の状況に応じて、充電条件を調整することにより、車両においてより効率的に蓄電池を利用することを可能にする充電条件調整方法及び充電条件調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係る充電条件調整方法は、車両に搭載された蓄電池の充電条件を調整する方法であって、前記蓄電池の状態を判定し、前記車両の走行状況を取得し、前記蓄電池の状態及び前記車両の走行状況に応じて、前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準となる前記蓄電池の充電率の閾値を調整し、前記蓄電池の状態として、前記蓄電池の温度を判定し、前記閾値を調整する際に、前記温度が高いほど前記閾値を低下させる
【0007】
本発明の一局面に係る充電条件調整装置は、車両に搭載された蓄電池の充電条件を調整する充電条件調整装置であって、前記蓄電池の状態を判定する判定部と、前記車両の走行状況を取得する取得部と、前記蓄電池の状態及び前記車両の走行状況に応じて、前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準となる前記蓄電池の充電率の閾値を調整する調整部とを備え、前記判定部は、前記蓄電池の温度を判定し、前記調整部は、前記温度が高いほど前記閾値を低下させる
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、車両において、電力不足の発生を防止しながらも、蓄電池をより効率的に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】充電条件調整装置の配置例を示す概念図である。
図2】充電条件調整装置の内部の機能構成例を示すブロック図である。
図3】ナビゲーション装置の内部の機能構成例を示すブロック図である。
図4】充電条件調整装置が行う動作制御のための処理の手順を示すフローチャートである。
図5】蓄電池の充電率の時間変化を模式的に示すグラフである。
図6】車両の始動時に閾値を調整する処理の手順を示すフローチャートである。
図7】車両の始動時の蓄電池の電圧の時間変化を模式的に示すグラフである。
図8】車両の走行時に時に閾値を調整する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
充電条件調整方法は、車両に搭載された蓄電池の充電条件を調整する方法であって、前記蓄電池の状態を判定し、前記車両の走行状況を取得し、前記蓄電池の状態及び前記車両の走行状況に応じて、前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準となる前記蓄電池の充電率の閾値を調整する。
【0011】
充電条件調整方法では、車両に搭載された蓄電池の状態を判定し、車両の走行状況を取得し、蓄電池の状態及び車両の走行状況に応じて、充電率の閾値を調整する。閾値は、蓄電池の充電を行うための車両に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準である。閾値を調整することで、蓄電池の充電率がどの程度の水準になるまで蓄電池の電力が利用されるのかが定まる。充電率の回復が容易な状況であれば、充電された電力を多く利用できるように閾値を調整することにより、効率的に蓄電池を使用できる。また、電力の不足の虞がある状況では、蓄電池の充電率が高くなるように閾値を調整することにより、電力の不足を防止できる。
【0012】
充電条件調整装置は、車両に搭載された蓄電池の充電条件を調整する充電条件調整装置であって、前記蓄電池の状態を判定する判定部と、前記車両の走行状況を取得する取得部と、前記蓄電池の状態及び前記車両の走行状況に応じて、前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準となる前記蓄電池の充電率の閾値を調整する調整部とを備える。充電条件調整装置は、充電率の閾値を調整することにより、蓄電池の状態及び車両の走行状況に応じて、蓄電池の充電率がどの程度の水準になるまで蓄電池の電力を利用するのかを定める。
【0013】
充電条件調整装置では、前記判定部は、前記蓄電池の温度を判定し、前記調整部は、前記温度が高いほど前記閾値を低下させてもよい。蓄電池の温度が高いほど、充電が容易に行われ、充電率を低くしたとしても、充電により容易に充電率を回復させることができる。閾値を低下させることにより、充電率が低くなるまで蓄電池の電力を利用できる。
【0014】
充電条件調整装置では、前記判定部は、前記蓄電池の劣化状態を判定し、前記調整部は、前記蓄電池の劣化が進行しているほど前記閾値を上昇させてもよい。蓄電池の劣化が進行している状態では、蓄電池の満充電容量が低下しており、放電可能な電気量は小さい。閾値を上昇させることにより、蓄電池の充電率を高く保つことができる。蓄電池の充電率を高くすることにより、放電可能な電気量が不足することが防止される。
【0015】
充電条件調整装置では、前記取得部は、予定された走行経路を取得し、前記調整部は、前記走行経路に含まれる高速道路の割合又は下り坂の割合が高いほど、前記閾値を低下させてもよい。走行経路に含まれる高速道路の割合又は下り坂の割合が高い場合は、車両で発電が効率的に行われ、蓄電池の充電が容易に行われる。蓄電池の充電率を低くしたとしても、容易に充電率を回復させることができる。閾値を低下させることにより、充電率が低くなるまで蓄電池の電力を利用できる。
【0016】
充電条件調整装置は、前記車両の走行経路例を記憶する記憶部を更に備え、前記取得部は、現在の走行に該当する走行経路例を前記記憶部から取得し、前記調整部は、取得した走行経路例に応じて、前記閾値を調整してもよい。例えば、充電条件調整装置は、取得した走行経路例における走行時の発電量が多いほど、閾値を低下させる。走行時の発電量が多い場合は、蓄電池の充電率を低くしたとしても、容易に充電率を回復させることができる。閾値を低下させることにより、充電率が低くなるまで蓄電池の電力を利用できる。
【0017】
充電条件調整装置では、前記取得部は、渋滞に関する渋滞情報を取得し、前記調整部は、前記渋滞情報に基づいて、渋滞区間を走行することが予測される場合に、渋滞が無い場合に比べて前記閾値を上昇させてもよい。閾値を上昇させることにより、蓄電池の充電率を高く保つことができる。車両が渋滞に巻き込まれる前に予め充電率を高くしておくことにより、渋滞中に充電率が低下し過ぎて放電可能な電気量が不足することが防止される。
【0018】
充電条件調整装置では、前記取得部は、前記車両が渋滞に巻き込まれているか否かを取得し、前記調整部は、前記車両が渋滞に巻き込まれている場合に、前記車両が渋滞に巻き込まれていない場合に比べて前記閾値を低下させてもよい。渋滞の最中には、発電の効率が低い。渋滞の最中に閾値を低下させることで、無理に発電及び充電を行うことを回避し、車両の燃費の低下が抑制される。
【0019】
充電条件調整装置は、前記蓄電池の充電を行うための前記車両に対する動作制御を行う制御部と、前記蓄電池の充電率及び前記閾値を比較した結果に応じて、前記動作制御を行うべきか否かを決定する決定部とを更に備え、前記制御部は、前記決定部が前記動作制御を行うべきと決定した場合に、前記動作制御を行ってもよい。充電条件調整装置が蓄電池の充電を行うための車両に対する動作制御を行う場合は、蓄電池の充電が行われ易く、動作制御を行わない場合は、充電が行われ難い。蓄電池の充電率と閾値との比較に応じて動作制御が行われることにより、充電率が閾値に応じた値に保たれる。
【0020】
充電条件調整装置では、前記決定部は、前記蓄電池の充電率が前記閾値以下になった場合に前記動作制御を行うべきと決定してもよい。蓄電池の充電率が閾値以下である場合は、蓄電池の充電を行うための車両に対する動作制御が行われる。例えば、アイドリングストップが禁止される。車両の一時停止時に、エンジンが停止せず、発電が行われ、蓄電池が充電される。蓄電池の充電率が閾値を超過する場合は、動作制御が行われない。例えば、アイドリングストップの禁止が行われない。アイドリングストップが行われる状態では、蓄電池に充電された電力が利用され、燃料の消費が抑制され、車両の燃費が向上する。
【0021】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
<実施形態>
図1は、充電条件調整装置1の配置例を示す概念図である。充電条件調整装置1及び蓄電池2は、車両3内に設けられている。充電条件調整装置1は、例えば、ECU(engine control unit )を用いて構成されている。蓄電池2は、例えば、鉛蓄電池である。蓄電池2は、リチウムイオン電池等、鉛蓄電池以外の蓄電池であってもよい。車両3は、内燃機関を利用したエンジン41を備えている。エンジン41には、オルタネータ42が連結されている。
【0022】
オルタネータ42には、負荷回路43が接続されており、負荷回路43を介して蓄電池2が接続されている。負荷回路43は、電装品等の車両3の負荷が含まれている。オルタネータ42は、エンジン41の動作に応じて発電を行う。また、車両3の減速時に、運動エネルギーの回生が行われ、オルタネータ42は発電を行う。オルタネータ42が発電した電力は、負荷回路43に含まれる負荷へ供給され、また、蓄電池2へ供給される。オルタネータ42から電力が供給されることによって、蓄電池2は充電される。蓄電池2は、必要に応じて放電し、負荷回路43に含まれる負荷へ電力を供給する。また、蓄電池2は、エンジン41が始動するために必要な電力を供給する。負荷回路43は、蓄電池2の充電時及び放電時の電流及び電圧を測定する電流計及び電圧計を含んでいる。エンジン41、負荷回路43及び蓄電池2は、充電条件調整装置1に接続されている。
【0023】
車両3には、温度を測定する温度センサ44が備えられている。温度センサ44は、例えば、サーミスタである。温度センサ44は充電条件調整装置1に接続されている。温度センサ44は、蓄電池2に設けられていてもよい。更に、車両3には、ナビゲーション装置5が備えられている。ナビゲーション装置5は、車両3のナビゲーションを行う。ナビゲーション装置5は充電条件調整装置1に接続されている。
【0024】
図2は、充電条件調整装置1の内部の機能構成例を示すブロック図である。充電条件調整装置1は、ECU等のコンピュータである。充電条件調整装置1は、演算部11と、メモリ12と、記憶部13と、インタフェース部14を備えている。演算部11は、例えばCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。演算部11は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ12は、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶する。メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。記憶部13は、不揮発性であり、例えばハードディスクである。インタフェース部14は、エンジン41、負荷回路43、蓄電池2、温度センサ44、及びナビゲーション装置5に接続されている。充電条件調整装置1は、インタフェース部14を通じて、各部との間で情報を送受信する。
【0025】
記憶部13は、コンピュータプログラム131を記憶している。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って、充電条件調整装置1に必要な情報処理を実行する。記憶部13は、過去の車両3の走行経路例を表す経路データ132を記憶している。例えば、経路データ132は、総計経路例として、過去の所定期間に車両3が最も多く走行した経路を表す。経路データ132は、最近の過去の走行経路例を含んでいてもよい。経路データ132は、ナビゲーション装置5に記憶されていてもよい。更に、記憶部13は、蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準となる蓄電池2の充電率の閾値133を記憶している。
【0026】
図3は、ナビゲーション装置5の内部の機能構成例を示すブロック図である。ナビゲーション装置5は、処理部51と、メモリ52と、記憶部53と、操作部54と、表示部55と、通信部56と、インタフェース部57とを備えている。処理部51は、プロセッサを含んで構成されており、ナビゲーション装置5に必要な情報処理を実行する。例えば、処理部51は、記憶部53に記憶したプログラムに従って情報処理を実行する。メモリ52は、データを一時的に記憶する。記憶部53は、不揮発性である。例えば、記憶部53は、不揮発性の半導体メモリ又はハードディスクを用いて構成されている。記憶部53は、各地点の位置、各道路の種類及び長さ等に関する情報を含んだ地図データを記憶している。操作部54は、使用者からの操作を受け付けることにより、テキスト等の情報の入力を受け付ける。操作部54は、例えばキーボード、マウス又はタッチパネルである。表示部55は、画像を表示する。表示部55は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイ(Electroluminescent Display)である。通信部56は、車両3の外部から送信された情報を受信する。例えば、通信部56は、車両3の位置を測定するために必要な測位情報、及び渋滞の状態を表す渋滞情報を受信する。インタフェース部57は、充電条件調整装置1に接続されている。ナビゲーション装置5は、使用者が操作部54を操作することにより目的地を入力され、経路を計算し、表示部55を用いて経路を案内するナビゲーションを行う。
【0027】
次に、充電条件調整装置1が実行する処理を説明する。充電条件調整装置1は、蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を行う。図4は、充電条件調整装置1が行う動作制御のための処理の手順を示すフローチャートである。以下、ステップをSと略す。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。負荷回路43に含まれる電流計は、充電時及び放電時の蓄電池2の電流を測定し、充電条件調整装置1へ入力する。充電条件調整装置1は、測定された蓄電池2の電流をインタフェース部14で取得する(S11)。演算部11は、取得した電流の値を積算することにより、蓄電池2の充電率(SOC:State of Charge )を計算する(S12)。S11~S12では、演算部11は、電流値を積算する方法以外の方法で充電率を計算してもよい。
【0028】
演算部11は、次に、蓄電池2の充電率と記憶部13に記憶している閾値133とを比較し、充電率が閾値133以下であるか否かを判定する(S13)。閾値133は、蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を行うべきか否かを決定する基準である。閾値133は、充電条件として用いられる。充電率が閾値以下である場合は(S13:YES)、演算部11は、蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を行うべきと決定する(S14)。演算部11は、次に、蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を行う(S15)。S15では、演算部11は、インタフェース部14から車両3の各部へ制御信号を送信することにより、車両3に対する動作制御を行う。具体的には、演算部11は、車両3にアイドリングストップを禁止させる動作制御を行う。アイドリングストップが禁止された状態では、車両3の一時停止時に、エンジン41が停止せず、オルタネータ42が発電を行い、蓄電池2が充電される。
【0029】
充電率が閾値を超過する場合は(S13:NO)、演算部11は、蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を行わないと決定する(S16)。演算部11は、次に、蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を停止する(S17)。S17では、演算部11は、インタフェース部14から車両3の各部へ制御信号を送信することにより、動作制御を停止する。具体的には、演算部11は、アイドリングストップの禁止を行わないようにする。即ち、車両3はアイドリングストップを行う。車両3の一時停止時に、エンジン41が停止する。アイドリングストップが行われている状態では、蓄電池2に充電された電力が利用され、燃料の消費が抑制され、燃費が向上する。
【0030】
図5は、蓄電池2の充電率の時間変化を模式的に示すグラフである。図中の横軸は時間を示し、縦軸は充電率を示す。蓄電池2の充電率は、時間の経過に応じて変化する。充電率が閾値を超過する状態では、アイドリングストップが行われ、充電率が低下し易い。充電率が閾値以下になった状態では、充電率が低下し過ぎないように、充電のための動作制御が行われる。アイドリングストップが禁止され、充電が行われ易く、充電率が回復し易い。
【0031】
S15又はS17が終了した後は、演算部11は、動作制御のための処理を終了する。充電条件調整装置1は、S11~S17の処理を繰り返し実行する。S11~S17の処理が繰り返し実行されることにより、図5に示すように、蓄電池2の充電率が適切に保たれる。S13、S14及びS16は、決定部に対応する。S15及びS17の処理は制御部に対応する。なお、充電条件調整装置1は、S13において充電率が閾値未満であるか否かを判定し、充電率が閾値未満である場合に動作制御を行うと決定し、充電率が閾値以上である場合に動作制御を行わないと決定してもよい。
【0032】
充電条件調整装置1は、S11~S17の処理とは並行して、蓄電池2の状態及び車両の3走行状況に応じて閾値133を調整する処理を行う。図6は、車両3の始動時に閾値133を調整する処理の手順を示すフローチャートである。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。車両3の始動時に、充電条件調整装置1は、蓄電池2を放電させ、電力をエンジン41へ供給し、エンジン41を始動させる(S21)。負荷回路43に含まれる電圧計は、蓄電池2の電圧を測定し、充電条件調整装置1へ入力する。充電条件調整装置1は、測定された蓄電池2の電圧をインタフェース部14で取得する(S22)。S22では、充電条件調整装置1は、逐次的に測定された電圧を取得することにより、電圧の時間変化を取得する。
【0033】
図7は、車両3の始動時の蓄電池2の電圧の時間変化を模式的に示すグラフである。図中の横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。時間ゼロの時点は、蓄電池2が放電を開始した時点を示す。放電を開始した時点から、しばらくの間、蓄電池2の電圧は低下し、その後、電圧は上昇する。放電を開始した時点から電圧が低下した量を、電圧低下量ΔVとする。電圧低下量ΔVの絶対値が大きいほど、蓄電池2はより劣化している。
【0034】
演算部11は、次に、取得した電圧に応じて、蓄電池2の劣化状態を判定する(S23)。蓄電池2の劣化状態は、例えば、蓄電池2の初期の満充電容量に対する実際の満充電容量の割合を示す健全度(SOH:State of Health )で表される。S23では、演算部11は、予め定められている電圧低下量ΔVと健全度との関係に従って、蓄電池2の健全度を特定する。
【0035】
演算部11は、次に、蓄電池2の劣化状態に応じて、閾値133を調整する(S24)。S24では、演算部11は、蓄電池2の劣化が進行しているほど閾値133を上昇させる。例えば、健全度の値と閾値133の値又は変化量とが対応付けられたテーブルを記憶部13が記憶しており、演算部11は、テーブルに従って、健全度の値に応じた閾値133を定める。演算部11は、電圧低下量ΔVに応じた閾値133を定める処理を行ってもよい。演算部11は、記憶部13に記憶している閾値133を更新する。
【0036】
蓄電池2の劣化が進行している状態では、満充電容量が低下しており、劣化していない状態と比較して、充電率が同一であっても、放電可能な電気量は小さい。閾値133を上昇させることにより、蓄電池2の充電率を高く保つことができる。充電率を高くすることにより、放電可能な電気量が上昇する。このため、蓄電池2の劣化によって放電可能な電気量が不足することが防止される。
【0037】
S24が終了した後は、演算部11は処理を終了する。S22及びS23は判定部に対応し、S24は調整部に対応する。充電条件調整装置1は、電圧低下量ΔVを用いる方法とは別の方法により蓄電池2の劣化状態を判定してもよい。例えば、充電条件調整装置1は、蓄電池2の完全充放電を行うことにより、蓄電池2の健全度を計測してもよい。
【0038】
図8は、車両3の走行時に時に閾値133を調整する処理の手順を示すフローチャートである。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。充電条件調整装置1は、温度センサ44が測定した温度をインタフェース部14で取得し(S301)、演算部11は、取得した温度に基づいて、蓄電池2の温度を判定する(S302)。例えば、演算部11は、取得した温度を蓄電池2の温度としてもよい。演算部11は、取得した温度と、車両3内の温度分布とに基づいて、蓄電池2の温度を計算してもよい。また、車両3は複数の温度センサ44を備え、演算部11は、複数の温度を用いて、蓄電池2の温度を計算してもよい。充電条件調整装置1は、S301で車両3の外部から気温に関する情報を取得し、S302で取得した情報に基づいて蓄電池2の温度を計算してもよい。
【0039】
演算部11は、次に、蓄電池2の温度に応じて、閾値133を調整する(S303)。S303では、演算部11は、蓄電池2の温度が高いほど、閾値133を低下させ、蓄電池2の温度が低いほど、閾値133を上昇させる。例えば、蓄電池2の温度と閾値133の値又は変化量とが対応付けられたテーブルを記憶部13が記憶しており、演算部11は、テーブルに従って、温度の値に応じた閾値133を定める。演算部11は、記憶部13に記憶している閾値133を更新する。
【0040】
蓄電池2の温度が高いほど、蓄電池2内での化学反応が発生しやすくなり、蓄電池2は充放電をより容易に行う。充電が容易に行われるので、蓄電池2は、充電率が低い状態からでも、充電により容易に充電率が回復する。閾値133を低下させ、充電率を低くしたとしても、充電率は容易に回復することができる。閾値133を低下させることで、充電を行うための車両3に対する動作制御を行わずにアイドリングストップを行う期間が長くなる。アイドリングストップを行う期間が長くなることによって、車両3の燃費が向上する。
【0041】
逆に、蓄電池2の温度が低いほど、蓄電池2内での化学反応が発生し難くなり、蓄電池2は充放電がより困難になる。蓄電池2は、充電により充電率を回復させ難い。閾値133を上昇させることにより、蓄電池2の充電率を高く保つことができる。これにより、充電率が低下し過ぎて放電可能な電気量が不足することが防止される。
【0042】
演算部11は、予定された走行経路の取得を待ち受ける(S304)。使用者が操作部54を操作することにより、予定された走行経路がナビゲーション装置5へ入力され、ナビゲーション装置5は入力された走行経路を充電条件調整装置1へ入力する。充電条件調整装置1は、予定された走行経路を、インタフェース部14で取得する。予定された走行経路を取得した場合(S304:YES)、演算部11は、予定された走行経路に含まれる高速道路の割合又は下り坂の割合を判定する(S305)。演算部11は、ナビゲーション装置5の記憶部53に記憶されている地図データを参照して、S305を実行する。S305はナビゲーション装置5で実行されてもよい。
【0043】
演算部11は、次に、予定された走行経路に含まれる高速道路の割合又は下り坂の割合に応じて、閾値133を調整する(S306)。S306では、演算部11は、高速道路の割合又は下り坂の割合が高いほど、閾値133を低下させる。例えば、高速道路の割合又は下り坂の割合と閾値133の値又は変化量とが対応付けられたテーブルを記憶部13が記憶しており、演算部11は、テーブルに従って、高速道路の割合又は下り坂の割合に応じた閾値133を定める。車両3が高速道を走行する場合、エンジン41は高速回転し、オルタネータ42は効率的に発電を行う。車両3が下り坂の多い経路を走行する場合、減速の機会が多く、運動エネルギーの回生によりオルタネータ42が発電する機会が多い。このため、閾値133を低下させ、充電率を低くしたとしても、充電率は容易に回復することができる。閾値133を低下させることで、アイドリングストップを行う期間を長くし、車両3の燃費を向上させることができる。
【0044】
予定された走行経路の取得が無い場合(S304:NO)、演算部11は、記憶部13に記憶している経路データ132に、現在の走行状況に該当する走行経路例があるか否かを判定する(S307)。例えば、経路データ132には、同一の経路を車両3が所定回数以上走行した場合にその経路が走行経路例として記録される。S307では、例えば、平日に車両3が走行する同一の経路が走行経路例として経路データ132に含まれており、当日が平日である場合に、演算部11は、現在の走行状況に該当する走行経路例があると判定する。例えば、曜日及び時間帯が現在と一致する走行経路例がある場合に、演算部11は、現在の走行状況に該当する走行経路例があると判定する。演算部11は、最近の過去の走行経路例を、現在の走行状況に該当する走行経路例であると判定してもよい。
【0045】
現在の走行状況に該当する走行経路例がある場合(S307:YES)、演算部11は、経路データ132から、現在の走行状況に該当する走行経路例を取得する(S308)。演算部11は、次に、取得した走行経路例に応じて、閾値133を調整する(S309)。例えば、演算部11は、走行経路例に含まれる高速道路の割合又は下り坂の割合が高いほど、閾値133を低下させる。例えば、走行経路例には、走行時の発電量の実績が記録されており、演算部11は、発電量が多いほど、閾値133を低下させる。
【0046】
S306が終了した場合、S309が終了した場合、又は現在の走行状況に該当する走行経路例が無い場合(S307:NO)、充電条件調整装置1は、渋滞に関する渋滞情報を取得する(S310)。ナビゲーション装置5は、車両3の外部から渋滞情報を通信部56で受信し、充電条件調整装置1へ入力する。充電条件調整装置1は、入力された渋滞情報をインタフェース部14で取得する。渋滞情報には、現在発生している渋滞の位置が含まれている。
【0047】
演算部11は、次に、渋滞情報に基づいて、車両3が現在渋滞に巻き込まれているか否かを判定する(S311)。例えば、現在発生している渋滞の位置に車両3の位置が含まれる場合に、演算部11は、車両3が現在渋滞に巻き込まれていると判定する。車両3が現在渋滞に巻き込まれている場合(S311:YES)、演算部11は、閾値133を調整する(S312)。S312では、演算部11は、閾値133を低下させる。渋滞の最中には、発電の効率が低い。閾値133を低下させることで、無理に発電を行うことを回避し、車両3の燃費の低下が抑制される。S312が終了した後、演算部11は、処理を終了する。
【0048】
車両3が現在渋滞に巻き込まれていない場合(S311:NO)、演算部11は、渋滞情報に基づいて、車両3が今後渋滞区間を走行することが予測されるか否かを判定する(S313)。例えば、予定された走行経路に渋滞区間が含まれる場合、又は進行方向に渋滞区間が存在する場合に、演算部11は、車両3が今後渋滞区間を走行することが予測されると判定する。車両3が今後渋滞区間を走行することが予測される場合(S313:YES)、演算部11は、閾値133を調整する(S314)。S314では、演算部11は、閾値133を上昇させる。
【0049】
渋滞の最中には、蓄電池2を充電することは困難である。閾値133を上昇させることにより、蓄電池2の充電率を高く保つことができる。車両3が渋滞に巻き込まれる前に予め充電率を高くしておくことにより、渋滞中に充電率が低下し過ぎて放電可能な電気量が不足することが防止される。S314が終了した後、又は車両3が今後渋滞区間を走行することが予測されない場合(S313:NO)、演算部11は、処理を終了する。
【0050】
S301及びS302は判定部に対応し、S304、S305、S307、S308、S310、S311及びS313は取得部に対応する。S303、S306、S309、S312及びS314は、調整部に対応する。充電条件調整装置1は、S301~S314の処理を繰り返し実行する。S301~S314の処理が繰り返し実行されることにより、蓄電池2の状態及び車両3の走行状況に応じて、閾値133が適切に調整される。閾値133が適切に調整された状態で、S11~S17の処理が実行されることにより、蓄電池2の放電可能が不足することが防止される。また、蓄電池2の充電率の回復が容易な状態では、蓄電池2に充電された電力が利用されて燃料の消費が抑制される。このように、本実施形態では、車両3において、電力不足の発生を防止しながらも、蓄電池2をより効率的に使用することが可能となる。なお、演算部11は、S301~S303の処理と、S304~S306の処理と、S307~S309の処理と、S310~S312の処理と、S313~S314の処理との内、一部の処理を行わなくてもよい。
【0051】
本実施形態では、蓄電池2の充電率が閾値133以下である場合に蓄電池2の充電を行うための車両3に対する動作制御を行う形態を主に説明した。充電条件調整装置1は、閾値133よりも大きい第2の閾値を設定しておき、蓄電池2の充電率が第2の閾値以上である場合に蓄電池2の充電を禁止する形態であってもよい。第2の閾値を利用することにより、蓄電池2の過充電が防止される。充電条件調整装置1は、蓄電池2の状態又は車両3の走行状況に応じて、第2の閾値を調整してもよい。
【0052】
本実施形態では、オルタネータ42で発電を行う形態を示したが、車両3は、モータで発電を行う形態であってもよい。車両3は、ハイブリッドカーであってもよく、回生ブレーキを備えた形態であってもよい。本実施形態では、充電条件調整装置1が車両3に対する動作制御と閾値133の調整との両方を行う形態を示したが、車両3に対する動作制御は充電条件調整装置1とは別の装置で実行されてもよい。
【0053】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 充電条件調整装置
11 演算部
13 記憶部
131 コンピュータプログラム
132 経路データ
133 閾値
2 蓄電池
3 車両
41 エンジン
42 オルタネータ
43 負荷回路
44 温度センサ
5 ナビゲーション装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8