(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】紫外線治療器
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A61N5/06 B
(21)【出願番号】P 2020020092
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 弘
(72)【発明者】
【氏名】木尾 智彦
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-190058(JP,A)
【文献】特表2019-503803(JP,A)
【文献】特開2011-200605(JP,A)
【文献】特許第6164834(JP,B2)
【文献】特許第6587733(JP,B1)
【文献】特開2017-221646(JP,A)
【文献】特開2020-099374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部に紫外線を照射する光源部を備えた紫外線治療器であって、
前記光源部は、
前記紫外線を出射する複数の第一のLEDと、
前記複数の第一のLEDからなる配列体が配置された領域外に配置され、前記複数の第一のLEDからなる配列体による前記紫外線の照射領域外の皮膚に可視光を放射する少なくとも1つの第二のLEDと、
前記第一のLEDと前記第二のLEDとを同期して点灯制御する制御部であって、前記第一のLEDを駆動する第一の駆動ユニットと、前記第二のLEDを駆動する第二の駆動ユニットとを備える制御部と、
前記第一のLEDと前記第二のLEDに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、
前記異常判定部により前記第一のLEDに異常が発生していると判定された場合と、前記第二のLEDに異常が発生していると判定された場合とで異なるエラーメッセージを表示する出力部と、
前記異常判定部により前記第二のLEDに異常が発生していると判定された場合、前記第一のLEDの点灯を規制する点灯規制部と、を備えることを特徴とする紫外線治療器。
【請求項2】
前記第二のLEDは、前記複数の第一のLEDからなる配列体が配置された領域を囲むように、当該領域の外周に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線治療器。
【請求項3】
前記第二のLEDは、前記複数の第一のLEDからなる配列体が配置された領域外の四隅に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線治療器。
【請求項4】
前記第一のLEDが出射する紫外線は、308nm以上370nm以下の波長域に発光ピークを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の紫外線治療器。
【請求項5】
前記第二のLEDが出射する可視光は、380nm以上780nm以下の波長域に発光ピークを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の紫外線治療器。
【請求項6】
前記第二のLEDが出射する可視光は、520nm以上594nm以下の波長域に発光ピークを有することを特徴とする請求項5に記載の紫外線治療器。
【請求項7】
前記光源部を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記光源部から出射された前記紫外線と前記可視光が放射される放射窓と、
前記筐体内において前記光源部から出射された前記紫外線と前記可視光を前記放射窓に導光する導光路と、
前記筐体における前記放射窓の近傍で、かつ、前記導光路を囲む複数の側面のうち少なくとも1つの側面に設けられた視認窓と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の紫外線治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光線治療として、UVA(波長320nm~400nm)、UVB(波長290~320nm)といった波長域の紫外線を用いる紫外線治療が存在する。紫外線治療とは、紫外線照射により免疫抑制を図り、治療効果を得るものである。
紫外線によって皮膚疾患を治療する紫外線治療器として、例えば特許文献1には、紫外線源としてランプ光源を備えたものが開示されている。
【0003】
一方、近時ではLEDの開発が著しく、一般照明のみならず、多くの工業機械機器、産業用機械においても、ランプからLEDへ光源の切り替えが進んでいる。また、LEDは、可視光域にとどまらず紫外領域においても高出力化が進み、医療分野においても光源のLED化が期待されている。
LEDを光源として用いた場合、概して、ランプの電源装置よりも簡単な回路構成を実現でき、装置の小型化、軽量化が可能である。そのため、紫外線治療器においても、ランプ光源に替えてLEDを光源として用いることが検討されており、近年、紫外線の光源として紫外線発光素子(UVLED)を用いた紫外線治療器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の紫外線治療器では、光源としてランプが使用されている。ランプの出射光には、紫外線成分だけでなく、可視光成分も含まれているため、照射光の目視が可能である。つまり、上記従来の紫外線治療器においては、照射光を目視することで、皮膚のどこに紫外線が照射されているのかという照射位置の確認が可能であった。
ところが、LEDは、出射する光の波長域がランプに比べて狭い。そのため、特に、短い波長の紫外線(例えば、310nm付近の紫外線)を出射するLEDを光源として用いた場合、出射光には可視光成分が含まれない。したがって、目視での照射位置の確認ができない。また、照射位置だけでなく、紫外線が照射されているのかどうかの確認もできない。そのため、紫外線照射を停止しないまま照射位置を移動させてしまい、紫外線照射の不要な箇所に紫外線を照射してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、光源として紫外線を出射するLED(UVLED)を用いた紫外線治療器であって、紫外線の照射位置および紫外線照射の有無を適切に確認することができる紫外線治療器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る紫外線治療器の一態様は、患部に紫外線を照射する光源部を備えた紫外線治療器であって、前記光源部は、前記紫外線を出射する複数の第一のLEDと、前記複数の第一のLEDが配置された領域外に配置され、前記複数の第一のLEDによる前記紫外線の照射領域外の皮膚に可視光を放射する少なくとも1つの第二のLEDと、を備える。
このように、光源部として紫外線を出射する第一のLEDの他に、操作者(例えば、医師や患者自身)が視認可能な可視光を出射する第二のLEDを備えるので、第一のLEDに対する第二のLEDの配置位置が既知であれば、皮膚に照射された可視光の位置をもとに、紫外線の照射領域を確認することができる。また、少なくとも紫外線を照射している間は可視光を照射するように制御すれば、可視光が視認されている間は紫外線が照射されている可能性があるとして、適切に紫外線治療器を操作することが可能となる。
【0008】
また、上記の紫外線治療器において、前記第二のLEDは、前記複数の第一のLEDが配置された領域を囲むように、当該領域の外周に配置されていてもよい。この場合、操作者は、可視光によって囲まれた領域が紫外線の照射領域であることを容易に認識することができる。
さらに、上記の紫外線治療器において、前記第二のLEDは、前記複数の第一のLEDが配置された領域外の四隅に配置されていてもよい。この場合、操作者は、四点の可視光を結ぶ四角形領域の内側に紫外線の照射領域が存在することを容易に認識することができる。
【0009】
また、上記の紫外線治療器において、前記第一のLEDが出射する紫外線は、308nm以上370nm以下の波長域に発光ピークを有していてもよい。この場合、UVA(波長320nm~400nm)、UVB(波長290~320nm)といった波長域の紫外線を用いた紫外線治療が可能である。
さらに、上記の紫外線治療器において、前記第二のLEDが出射する可視光は、380nm以上780nm以下の波長域に発光ピークを有していてもよい。この場合、操作者は、第二のLEDから出射される光を適切に視認することができる。
また、上記の紫外線治療器において、前記第二のLEDが出射する可視光は、520nm以上594nm以下の波長域に発光ピークを有していてもよい。この波長域の発光ピークを有する光は緑色であり、視認性が良好である。このように、視認性が良好な緑色の可視光を用いることで、操作者は、より適切に紫外線の照射位置および照射有無を確認することができる。
【0010】
さらにまた、上記の紫外線治療器は、前記第一のLEDと前記第二のLEDとを同期して点灯制御する制御部を備えていてもよい。この場合、可視光が視認されている間は必ず紫外線が照射されていると判断することができ、より適切に紫外線治療器を操作することができる。
また、上記の紫外線治療器において、前記制御部は、前記第一のLEDを駆動する第一の駆動ユニットと、前記第二のLEDを駆動する第二の駆動ユニットと、を備えていてもよい。このように、第一のLEDと第二のLEDとを個別の二つの駆動ユニットにより駆動することで、電気特性が異なる各LEDに対してそれぞれ適切に電力を供給することができる。
【0011】
さらに、上記の紫外線治療器は、前記第二のLEDに異常が発生しているか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部により前記第二のLEDに異常が発生していると判定された場合、前記第一のLEDの点灯を規制する点灯規制部と、を備えていてもよい。
この場合、第二のLEDから可視光が出射されない状態のまま、第一のLEDから紫外線が出射されてしまうことを防止することができる。これにより、可視光が視認されないことをもって、操作者が、紫外線は放射されていないと判断して紫外線治療器1を操作してしまうことを防止することができる。その結果、紫外線を照射すべきでない箇所や紫外線照射の不要な箇所に、誤って紫外線を照射してしまうことを防止することができる。
【0012】
また、上記の紫外線治療器は、前記光源部を収容する筐体と、前記筐体に設けられ、前記光源部から出射された光が放射される放射窓と、前記筐体内において前記光源部から出射された光を前記放射窓に導光する導光路と、前記筐体における前記放射窓の近傍で、かつ、前記導光路の側面のうち少なくとも前記第二のLEDの近傍の側面のいずれかに設けられた視認窓と、を備えていてもよい。
この場合、放射窓を患部に当接または近接させて使用する際に、視認窓を介して可視光の照射位置および照射有無を確認しつつ紫外線の照射治療を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光源として紫外線を出射するLED(UVLED)を用いた紫外線治療器において、紫外線の照射位置および紫外線照射の有無を適切に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における紫外線治療器の全体構成例を示す斜視図である。
【
図5】紫外線治療器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
各図面において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0016】
図1は、本実施形態における紫外線治療器1の全体構成例を示す斜視図である。
この
図1に示すように、紫外線治療器1は、紫外線を含む光を放射する治療具2と、治療具2に電力を供給する本体部4と、治療具2と本体部4とを電気的に接続する接続線6と、を備える。治療具2は、ハンディタイプ(片手で持つことが可能な構成)であって、操作者(例えば、医師、患者自身)により、接続線6が伸びる範囲で、本体部4に対して自由に変位可能である。
なお、以下の説明においては、紫外線および紫外線を含む光を、単に「光」と呼ぶこともある。
【0017】
治療具2は、筐体21と、接続線6の一端を保持する接続線保持部22と、操作者が片手で握るための把持部(把手)23と、を備える。
本体部4は、筐体41と、接続線6の他端を保持する接続線保持部42と、治療具2を保持する治療具保持部43と、を備える。また、本体部4は、情報が入力される入力部44、および、情報を出力する出力部45の機能を備えるタッチパネル40を備える。
【0018】
以下、治療具2の構成について、
図2~
図4を参照しながら詳細に説明する。
図2~
図4に示すように、治療具2は、紫外線を含む光を放射する光源部24と、光源部24から放射された光を筐体21の外部に放射するための放射窓25と、光源部24から放射された光を放射窓25へ導く導光部26と、操作者が光源部24の点灯を指示するための指示部27と、を備える。また、治療具2は、温度を検出する温度検出部28と、光源部24を冷却する冷却部29と、を備えていてもよい。
【0019】
光源部24は、筐体21に収容されている。この光源部24は、紫外線を出射する複数のLED(UVLED)24aと、可視光を出射する少なくとも1つのLED(可視光LED)24bと、を備える。UVLED24aと可視光LED24bとは、LED基板24c上に取り付けられている。
UVLED24aは、例えば308nm以上370nm以下の範囲の波長に発光ピークを有する紫外線を出射する。このUVLED24aから出射される紫外線は、皮膚疾患を治療するための治療光である。
【0020】
例えば中波紫外線(波長308nm~313nm)は、乾癬、類乾癬、掌蹠膿疱症、悪性リンパ腫、菌状息肉腫、慢性苔癬状粃糠疹、尋常性白斑、アトピー性皮膚炎などに有効な光であることが知られている。また、例えばピーク波長365nmの長波紫外線(UVA1)は、皮膚T細胞性リンパ腫、菌状息肉腫、強皮症、異汗性湿疹などに有効な光であることが知られている。
UVLED24aは、治療対象とする皮膚疾患に応じた波長を有する紫外線を出射する。
【0021】
また、可視光LED24bは、380nm以上780nm以下の範囲の波長に発光ピークを有する可視光を出射する。この可視光LED24bから出射される可視光は、UVLED24aから出射される紫外線の照射位置(照射範囲)および照射の有無を示すために用いられる。
可視光LED24bが出射する光は、例えば赤色や緑色など何色の光であってもよい。なお、可視光LED24bが出射する光は、照明光との色の違いが明確な光であることが好ましい。例えば520nm以上594nm以下の波長域に発光ピークを有する緑色の光は、明所比視感度の相対強度が0.7以上となる波長であり、良好な視認性を有するため、より好ましい。
本実施形態において、UVLED24aが第一のLEDに対応し、可視光LED24bが第二のLEDに対応している。
【0022】
導光部26は、光源部24を内部に配置する筒状の反射体26aと、光源部24から放射された光および反射体26aの内周面で反射された光を放射窓25に導く導光路26bとを備えている。導光路26bの一部には、当該導光路26bの内部を視認可能な視認窓26cが形成されている。具体的には、視認窓26cは、筐体21における放射窓25の近傍で、かつ、導光路26bの側面のうち少なくとも可視光LED24bの近傍の側面のいずれかに設けられている。なお、視認窓26cは、内面にコーティングが施されており、光源部24から放射される光のうち可視光のみを透過するように構成されている。
【0023】
操作者は、この視認窓26cから、放射窓25を介して患部を視認することができる。また、操作者は、視認窓26cから、放射窓25を介して、放射窓25から放射される可視光を確認することで、放射窓25から放射される紫外線の患部への照射位置(照射範囲)を確認することができる。さらに、操作者は、視認窓26cから、導光路26bによって導光される可視光の有無を確認することで、放射窓25から放射される紫外線の有無を確認することができる。
【0024】
指示部27は、把持部23の一方側(
図3および
図4の上方側)に配置されている。具体的には、指示部27は、操作者が把持部23を握っている手の親指で操作できるように、把持部23の一方側に配置されている。本実施形態においては、指示部27は、押し釦スイッチであって、操作者に接触される釦27aと、釦27aを付勢する付勢体(例えば、バネ)27bとを備える。
【0025】
温度検出部28は、LED基板24c上に配置される。LED24a、24bからの熱は主にLED基板24cに伝わり、LEDの発熱量およびLED素子温度に依存してLED基板24cの温度が変わる。したがって、LED基板24cの温度を検出することで、LED24a、24bの熱による損傷を防ぐことができる。温度検出部28は、例えば温度センサである。
冷却部29は、LED基板24cのLED24a、24bが配置された側とは反対側に取り付けられたヒートシンク29aと、ヒートシンク29aに取り付けられたファン29bとを備える。LED24a、24bからの熱は、LED基板24cを介してヒートシンク29aに伝わる。ヒートシンク29aに伝わった熱は、ファン29bにより、治療具2の筐体21の外部へ排出され、筐体21の外部の空気を筐体21の内部に給入することで、光源部24を冷却することができる。
【0026】
本体部4は、実質的には、治療具2の光源部24を制御するためのユニットである。
図5に示すように、本体部4は、入力部44と、出力部45と、電源ユニット46、制御ユニット(制御部)47、UVLED駆動ユニット48aおよび可視光LED駆動ユニット48bを備える。なお、治療具2と本体部4とを接続する上述した接続線6は、太線で示す電源線6aと、細線で示す信号線6bとを備える。
【0027】
入力部44は、操作者により入力された情報を受け取り、その情報を制御ユニット46に出力する。操作者により入力される情報には、患部に照射する紫外線の照射量(照射時間および照射強度)に関する情報が含まれる。
出力部45は、入力部44を介して設定された紫外線の照射強度や、紫外線照射中の経過時間などを表示することができる。また、出力部45は、紫外線治療器1において何らかの異常が発生した場合には、異常が発生していることを示す情報(エラーメッセージなど)を表示することもできる。
【0028】
電源ユニット46は、外部電源8から供給された電力を、後段の各ユニットに適切な電圧に変換し、供給する。
制御ユニット47は、入力部44から入力された情報をもとに、UVLED駆動ユニット48aを制御し、UVLED24aの照射量(照射時間および照射強度)を制御する。また、制御ユニット47は、可視光LED24bがUVLED24aと同期して点灯消灯するように、可視光LED駆動ユニット48bを制御する。つまり、紫外線治療器1において、UVLED24aによる紫外線の照射中は、可視光LED24bにより可視光も照射される。なお、可視光LED24bから出射される可視光は、治療効果には寄与しない。したがって、可視光LED24bの照射強度は予め定められた一定強度でよい。
【0029】
UVLED駆動ユニット48aは、制御ユニット47からの制御信号に従い、UVLED24aに給電を行う。同様に、可視光LED駆動ユニット48bは、制御ユニット47からの制御信号に従い、可視光LED24bに給電を行う。
このように、本実施形態では、本体部4は、UVLED24aと可視光LED24bとにそれぞれ対応した二つの駆動ユニット48a、48bを備え、UVLED24aと可視光LED24bとは、それぞれ個別の配線系統を使用して、対応する駆動ユニットによって駆動される。以下、その理由について説明する。
【0030】
UVLED24aと可視光LED24bとを共通の一つの駆動ユニットで点灯させる場合、上記の二種のLEDを直列または並列に接続する必要がある。直列に接続した場合、UVLED24aと可視光LED24bとに同一電流量を流すことになる。しかしながら、一般に、可視光LEDのほうがUVLEDに比べ発光効率が良い。そのため、UVLED24aに必要な電流を流すと、可視光LED24bの光量が大きくなりすぎて(明るすぎて)目視確認しづらいという不具合が生じることがある。一方、並列に接続した場合、両者のLEDの電気特性(順方向電圧など)の違いにより、UVLED24aまたは可視光LED24bのいずれかの配線に過電流が流れる可能性がある。この過電流は、UVLED24aまたは可視光LED24bの故障の原因となり得る。
【0031】
本実施形態では、UVLED24aと可視光LED24bとを個別の駆動ユニットによって駆動するので、各LEDの光学特性や電気特性に応じた電力供給が可能となる。したがって、可視光LED24bの光量が大きくなりすぎて目視確認しづらくなることや、可視光LED24bの配線に過電流が流れることを防止することができる。
【0032】
以下、操作者が本実施形態の紫外線治療器1を用いて患部に紫外線を照射する手順について説明する。
まず、操作者は、入力部44を操作して、患部に照射する紫外線の照射量(照射時間および照射強度)に関する情報を入力する。次に操作者は、治療具2の把持部23を持ち、放射窓25を患部に当接もしくは近接させる。
そして、操作者は、把持部23に設けられた指示部27の釦27aを押す。すると、UVLED24aおよび可視光LED24bが点灯し、患部への紫外線照射が開始される。このとき、操作者は、可視光LED24bから出射される可視光を視認窓26cから視認することで、紫外線照射がなされていることを確認することができる。また、操作者は、視認窓26cから放射窓25を介して可視光の照射位置を視認することで、紫外線の照射範囲を確認することができる。
その後、紫外線照射が入力された照射量に達する(入力された照射時間に達する)と、自動的にUVLED24aおよび可視光LED24bが消灯する。
【0033】
図6は、光源部24の構成を示す模式図である。
UVLED24aは、ある程度の照射範囲(照射面積)を確保するために、LED基板24cに複数配置されている。具体的には、複数のUVLED24aは、平面状に縦横に、全体として格子状になるようにLED基板24c上に配置されている。また、LED基板24cには、これら複数のUVLED24aと電気的に接続される配線パターン24dが形成されている。配線パターン24dの一端であるアノード接続部24eと、配線パターン24dの他端であるカソード接続部24fとは、
図5に示す電源線6aを介してUVLED駆動ユニット48aに接続される。
【0034】
UVLED24aの大きさは、例えば約3.5mm×約3.5mmであり、このようなUVLED24aが、LED基板24c上の例えば四角形の領域内に複数配置される。上記四角形の領域は、例えば、30mm×30mmの領域や50mm×50mmの領域とすることができる。ただし、上記四角形の領域は、正方形状の領域に限定されるものではなく、例えば長方形状や平行四辺形状、台形状の領域であってもよい。
なお、
図6では、UVLED24aが縦横に五個ずつ配置されている例を示しているが、UVLED24aの数や配置間隔は、
図6に示す例に限定されるものではなく、要求される照射領域の面積、形状および照射強度から適宜設計されるものとする。また、UVLED24aの数や配置間隔は、UVLED24aの発熱量や発光効率を考慮して設計することが好ましい。発光効率が低いUVLED24aの場合、LED素子自体が発熱により故障する可能性があるため、UVLED24aを集密させないようにする。
【0035】
可視光LED24bは、LED基板24c上において、UVLED24aが配置された領域を取り囲むように、当該領域の外周に沿って複数配置されている。LED基板24cには、これら複数の可視光LED24bと電気的に接続される配線パターン24gが形成されている。配線パターン24gの一端であるアノード接続部24hと、配線パターン24gの他端であるカソード接続部24iとは、
図5に示す電源線6aを介してUVLED駆動ユニット48bに接続される。
【0036】
このように構成することで、UVLED24aから出射される紫外線が照射される領域が、可視光LED24bから出射される可視光により囲まれた領域の内側であることが、目視により容易に認識できる。
また、UVLED24aと可視光LED24bとは、UVLED駆動ユニット48aと可視光LED駆動ユニット48bを制御する制御ユニット47により、同期して点灯消灯されるように構成する。これにより、可視光が照射されているときは紫外線も照射されていると判断することができ、紫外線照射の有無を確実に確認することができる。したがって、紫外線の誤射を適切に抑制することができる。
【0037】
可視光LED24bとしては、小さいもので1.0mm×0.5mm、大きいもので5.0mm×5.0mmなど、様々な種類のものを使用することができる。
図6では、12個の可視光LED24bが配置されている例を示しているが、可視光LED24bの数や配置間隔は、
図6に示す例に限定されない。可視光LED24bは、UVLED24aから出射される紫外線が照射される領域が認識できる数および配置間隔で配置されていればよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、
図6に示すように、LED基板24c上において、UVLED24aを配置した領域の外周に、当該UVLED24aを取り囲むように複数の可視光LED24bを配置する場合について説明した。しかしながら、可視光LED24bは、
図7や
図8に示すように配置することもできる。
例えば
図7に示すように、UVLED24aを四角形状の領域内に配置する場合には、その四角形状の領域の四隅の外側(UVLED24aの最外周の列の外側の四隅)にそれぞれ可視光LED24bを配置してもよい。また、
図8に示すように、UVLED24aを配置する領域は四角形状の領域でなくてもよく、UVLED24aの最外周の列の四隅に可視光LED24bを配置してもよい。要は、紫外線が照射される領域と、紫外線の照射の有無とが、目で見た感覚として得られればよい。
【0039】
本実施形態における紫外線治療器1は、操作者に紫外線の照射位置(照射範囲)を認識させ、紫外線照射の不要な箇所に紫外線が照射されてしまうことを抑制することを目的としている。UVLED24aが点灯しているかどうか(紫外線が照射されているかどうか)だけの確認であれば、可視光LED24bをUVLED24aと同期して点灯消灯させるだけでよく、可視光LED24bの配置位置も特に限定されない。例えばUVLED24aを配置した領域内(例えば中央)に、可視光LED24bを1つだけ配置することもできる。
しかしながら、UVLED24aを配置した領域内に可視光LED24bを配置すると、患部に照射される光の中に治療に寄与しない光が含まれることになり、可視光LED24bを配置した分、治療効果が低下する。また、可視光LED24bから出射される可視光が照射される部分は治療効果が得られないため、患部において治療にムラが生じる。
【0040】
本実施形態では、可視光LED24bを、UVLED24aを配置した領域外に配置し、UVLED24aから出射される紫外線の照射領域外に可視光を照射するので、上記のような治療効果の低下や治療ムラの発生を抑制することができる。
また、患部に照射される光は、UVLED24bから照射される紫外線のみとすることができるので、紫外線の照射光量が得られ、患部への紫外線の照射時間を短縮する効果も得られる。
【0041】
なお、本実施形態の紫外線治療器1は、光源部24のUVLED24aおよび可視光LED24bの異常を判定する異常判定部(不図示)を備えていてもよい。
そして、異常判定部により、UVLED24aおよび可視光LED24bのうち少なくとも一方に異常が発生していると判定された場合には、制御ユニット47が出力部45にエラーメッセージを表示させるなど、操作者に異常を報知してもよい。また、異常判定部によりUVLED24aに異常が発生していると判定された場合と、可視光LED24bに異常が発生していると判定された場合とで、出力部45に異なるエラーメッセージを表示し、どちらのLEDに異常が発生しているかを操作者に報知するようにしてもよい。
【0042】
さらに、紫外線治療器1は、異常判定部により可視光LED24bの異常が検出された場合に、UVLED24aを消灯させるなど、UVLED24aの点灯を規制する点灯規制部を備えていてもよい。
これにより、UVLED24aからの紫外線が照射されているにもかかわらず、操作者が、可視光LED24bからの可視光が視認されないことをもって紫外線が照射されていないと誤判断してしまうことを防止することができる。したがって、紫外線を照射すべきでない箇所や紫外線照射の不要な箇所に、誤って紫外線を照射してしまうことを防止することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態における紫外線治療器1は、患部に紫外線を照射する光源部24を備え、当該光源部24は、紫外線を出射する複数のUVLED24aと、可視光を出射する少なくとも1つの可視光LED24bと、を備える。ここで、UVLED24aは、広い紫外線照射範囲(照射面積)を確保するために、例えば、平面状に縦横に格子状に並べて配置されている。そして、可視光LED24bは、複数のUVLED24aが配置された領域外に配置され、複数のUVLED24aによる紫外線の照射領域外の皮膚に可視光を放射する。
【0044】
これにより、可視光成分が含まれない紫外線を治療光として用いる紫外線治療器1であっても、操作者は、患者の皮膚に照射された可視光の位置をもとに、紫外線の照射領域を確認することができる。
例えば
図6に示すように、UVLED24aが配置された領域を囲むように、当該領域の外周に複数の可視光LED24bを配置すれば、操作者は、可視光によって囲まれた領域が紫外線の照射領域であることを容易に認識することができる。また、例えば
図7に示すように、UVLED24aが配置された領域外の四隅にそれぞれ可視光LED24bを配置すれば、操作者は、四点の可視光を結ぶ四角形領域の内側に紫外線の照射領域が存在することを容易に認識することができる。
【0045】
さらに、本実施形態における紫外線治療器1は、UVLED24aと可視光LED24bとを同期して点灯制御することができる。これにより、UVLED24aが点灯する際には、必ず可視光LED24bも同期して点灯するように制御することができる。したがって、操作者は、可視光が視認されている間は必ず紫外線が照射されていると判断することができる。このように、可視光の照射の有無を確認することで、紫外線の照射の有無を容易に確認することができるので、適切に紫外線治療器を操作することができる。
なお、本実施形態では、UVLED24aと可視光LED24bとを同期して点灯制御する場合について説明したが、少なくともUVLED24aが点灯している間に可視光LED24bが点灯されていればよい。この場合、可視光が視認されている間は紫外線が照射されている可能性があると判断することができ、適切に紫外線治療器を操作することができる。
【0046】
また、本実施形態における紫外線治療器1において、UVLED24aと可視光LED24bとを個別の二つの駆動ユニット48a、48bによってそれぞれ駆動させることができる。これにより、電気特性が異なる各LEDに対してそれぞれ適切に電力を供給することができる。したがって、各LEDの配線に適切な電流を流し、各LEDの光量を適切に制御することができる。
【0047】
このように、本実施形態における紫外線治療器1は、治療光である紫外線の照射位置および照射の有無を容易かつ適切に確認することができる。
【0048】
(変形例)
上記実施形態においては、紫外線治療器1がハンディタイプの治療具2を備える場合について説明したが、紫外線治療器1の構成は上記に限定されない。例えば、紫外線治療器1は、床面上において車輪を介して支持される架台と、架台から上方に伸びる支柱と、支柱の上端部において治療具2を当該支柱に対して揺動自在に支持する作動アームと、を備えるような構成であってもよい。
【0049】
1…紫外線治療器、2…治療具、4…本体部、21…筐体、23…把持部、24…光源部、24a…UVLED(第一のLED)、24b…可視光LED(第二のLED)、25…放射窓、26…導光部、26c…視認窓、27…指示部、41…筐体、44…入力部、45…出力部、46…電源ユニット、47…制御ユニット、48a…UVLED駆動ユニット、48b…可視光LED駆動ユニット