(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】保全管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2020021658
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 昌利
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120532(JP,A)
【文献】特開2020-013464(JP,A)
【文献】特開2019-121052(JP,A)
【文献】特開2009-251822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが接続された製造システムの保全状態を管理する保全管理システムであって、
前記複数のデバイスの各々の保全状態の管理に必要なパラメータの値を、所定のタイミングで収集するパラメータ収集部と、
前記パラメータ収集部で収集した前記パラメータの値を前記複数のデバイスの各々で記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶した前記パラメータの値から、前記複数のデバイスの各々の保全状態の管理に必要な将来のパラメータの値を前記複数のデバイスの各々で予測するパラメータ予測部と、
前記パラメータ予測部で予測した前記将来のパラメータの値に基づいて、所定期間経過した時点の前記複数のデバイスの各々の保全状態
の区分を判断する判断部と、
前記判断部で判断された前記所定期間経過した時点の前記複数のデバイスの各々の保全状態
の区分を、
前記複数のデバイスの接続関係が識別可能な表示態様で、画面に表示する表示部とを備える、保全管理システム。
【請求項2】
前記判断部は、前記所定期間経過した時点の前記将来のパラメータの値が所定の閾値を超えているか否かに基づいて、前記複数のデバイスの各々の保全状態
の区分を判断する、請求項1に記載の保全管理システム。
【請求項3】
前記パラメータ収集部が収集する前記パラメータは、前記複数のデバイスの各々の稼働時間である、請求項1
または請求項2に記載の保全管理システム。
【請求項4】
前記複数のデバイスの各々は、センサを含み、
前記パラメータ収集部が収集する前記パラメータは、前記センサが取得する信号の強度である、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項5】
前記パラメータ収集部が収集する前記パラメータは、デバイスの消費電力量である、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項6】
前記表示部は、前記製造システムに含まれる前記複数のデバイスの各々の保全状態
の区分を時系列に並べたテーブル形式で表示する、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項7】
前記表示部は、前記製造システムに含まれる前記複数のデバイスのうちの1つのデバイスの保全状態
の区分と前記将来のパラメータの値とを時系列に並べたテーブル形式で表示できる、請求項
6に記載の保全管理システム。
【請求項8】
前記表示部は、前記製造システムに含まれる前記複数のデバイスの各々をアイコンで表示し、前記複数のデバイスの各々の保全状態
の区分を識別可能な表示態様でアイコンに表示し、前記複数のデバイスの各々に対応する前記アイコンを接続させて前記複数のデバイスの接続関係を示すように表示する、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の保全管理システム。
【請求項9】
前記表示部は、前記アイコンに表示させるデバイスの保全状態
の区分の所定期間の変更を受け付ける受付手段を表示する、請求項
8に記載の保全管理システム。
【請求項10】
前記受付手段は、所定期間単位に移動可能なスライドバーである、請求項
9に記載の保全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
製造システムの保全状態を管理する保全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
FA(ファクトリオートメーション)の分野では、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの制御装置を用いて多数のセンサやモーターなどの機器を制御する製造システムが一般的である。
【0003】
近年のICT(Information and Communication Technology)の進歩に伴って、制御装置により制御される多くの機器のフィールドレベルのデータを収集したいというニーズが高まっている。
【0004】
このような製造システムの制御装置に関して、特開2011-35664号公報(特許文献1)では、制御装置にプロトコル機能を内蔵して、フレーム等の通信データをキャプチャするといったデータの収集ができる製造システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特開2011-35664号公報に開示されているような製造システムを保全する方法の1つとして、機器が故障する度に機器を交換する事後保全という方法がある。この方法を採用すれば、機器がいつ故障するかは判断できず突然の機器の故障に伴って製造システム全体の稼働を止めてしまう場合があり、生産効率を低下させる可能性があった。そこで、機器が故障する前に事前に交換する予防保全という方法がある。
【0007】
しかし、予防保全を採用した場合、製造システムに接続された多数の機器の状態を定期的かつ個別に確認する作業が必要であり、煩雑であった。また、多数の機器の状態を確認できたとしても、多数の機器に対して適切な交換時期を計画することは容易ではなかった。
【0008】
本開示は係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、製造システムに接続された多数の機器の状態を確認し、多数の機器に対して適切な交換時期を計画することが容易な保全管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面に従う保全管理システムは、複数のデバイスが接続された製造システムの保全状態を管理する保全管理システムであって、複数のデバイスの各々の保全状態の管理に必要なパラメータの値を、所定のタイミングで収集するパラメータ収集部と、パラメータ収集部で収集したパラメータの値を複数のデバイスの各々で記憶する記憶部とを備える。また、当該保全管理システムは、記憶部に記憶したパラメータの値から、複数のデバイスの各々の保全状態の管理に必要な将来のパラメータの値を複数のデバイスの各々で予測するパラメータ予測部と、パラメータ予測部で予測した将来のパラメータの値に基づいて、所定期間経過した時点の複数のデバイスの各々の保全状態を判断する判断部と、判断部で判断された前記所定期間経過した時点の前記複数のデバイスの各々の保全状態を、画面に表示する表示部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の保全管理システムでは、デバイスの保全状態の管理に必要なパラメータの値を収集し、収集した過去のパラメータの値から将来のパラメータの値を予測し、将来のパラメータの値に基づいて所定期間経過した時点の保全状態を判断し表示することで、製造システムに接続された多数の機器の状態を確認し、製造システム全体の生産性を低下させない各機器の適切な交換時期の計画を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る保全管理システムの機能的な構成例を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る保全管理システムが提供するパラメータ収集機能を説明するための模式図である。
【
図3】本実施の形態に係る検索装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】光電センサの受光強度を予測するための図である。
【
図5】テーブル形式による製造システム全体の保全状態の表示方法を示す図である。
【
図6】任意のデバイスに関する詳細情報の表示方法を示す図である。
【
図7】製造システム全体の保全状態の表示する処理手順を示す図である。
【
図8】アイコンによる製造システム全体の保全状態の表示画面例1を示す図である。
【
図9】アイコンによる製造システム全体の保全状態の表示画面例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
<適用例>
まず、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る保全管理システム1の機能的な構成例を示す模式図である。
図1を参照して、保全管理システム1は、少なくとも1つのデバイス300を含む。「デバイス」は、後述するようなリクエストパケットに対して応答が可能な装置の単位を意味する。典型的には、「デバイス」は、IOユニット、センサユニット、特殊ユニットなどのコントローラに接続され得るユニットを包含するとともに、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)およびネットワーク通信を中継するカプラユニットなども包含する。ここで、本開示において「各デバイス300」と表現するときは、保全管理システム1が含む全てのデバイス300を意味する。一方で、単に「デバイス300」と表現するときは、単一のデバイス300を意味する。
【0014】
データベース104は、保全管理システム1が含む各デバイス300の状態の管理に必要なパラメータを記憶するパラメータ履歴1044と、各デバイス300の状態の管理に必要なパラメータを参照するためのインデックス1043とを保持する。
【0015】
パラメータ収集部106は、任意のデバイス300から任意のデータを収集するにあたって、予め収集された索引情報(以下、「インデックス」とも称す。)を参照する。パラメータ収集部106は、インデックスを自動的に更新することもできる。
【0016】
パラメータ収集部106は、所定のタイミングでリクエストパケット400を生成し、各デバイス300へ送信する。各デバイス300は、リクエストパケット400に応じて、レスポンスパケット450をパラメータ収集部106へ送信する。
【0017】
レスポンスパケット450は、送信元のデバイス300の状態を示すパラメータの値を含む。パラメータ収集部106は、各デバイス300からパラメータの値を受信することで、パラメータを収集し、パラメータ履歴1044へ書き込む。
【0018】
パラメータ履歴1044は、各デバイス300の識別情報と、パラメータの値と、パラメータの値を取得した時間とを保持する。パラメータ履歴1044は、その他の情報を記憶してもよく、たとえば、前回交換をした日時等を記憶してもよい。また、パラメータ履歴1044は、各デバイス300の過去の稼働時間の実測値を保持してもよい。保全管理システム1は、過去の最大稼働時間、過去の最小稼働時間に基づいて後述で説明する保全状態を判断するための閾値を定めてもよい。
【0019】
本実施の形態に係る保全管理システム1によれば、保全管理システム1内のパラメータの変化に応じて更新されるインデックス1043を参照することにより、保全管理システム1内の任意のデバイス300の任意の情報を効率的に収集できる。
【0020】
データベース104は、パラメータ収集部106より収集された状態データを蓄積して保持する。すなわち、パラメータ収集部106がデータを収集する回数に伴ってデータベース104が保持する状態データのデータ使用容量は増加していく。
【0021】
パラメータ予測部107は、データベース104が保持する過去のパラメータの値を用いて、将来のパラメータの値を予測する。パラメータの種類、予測の手法に関しての詳細については後述で説明するが、たとえばパラメータの種類がデバイス300の稼働時間である場合、過去の稼働時間履歴を用いて、将来の稼働時間を予測することが考えられる。
【0022】
判断部108は、パラメータ予測部107が予測するデバイス300の将来のパラメータの値に基づいて、所定期間経過時の対象のデバイス300の保全状態を判断する。所定期間とは、ユーザーが設定することが可能である任意の期間である。保全状態とは、デバイス300の交換時期を示す状態である。
【0023】
本実施の形態においては、保全状態は「正常」「注意」「警告」「危険」に分類される。保全管理システム1では、判断部108によって判断される保全状態を用いて対象のデバイス300が交換時期に達しているか否かを判断する。保全状態の名前、分類の数等は、ユーザーが任意で設定してもよい。たとえば、保全状態は、「正常」「警告」「危険」の3種類に、または「正常」「危険」の2種類に分類されてもよい。さらに保全状態は、「異常レベル1」「異常レベル2」「異常レベル3」「異常レベル4」「異常レベル5」などのように段階的に、複数に分類されてもよい。なお、分類する状態の数に応じて、保全状態を判断するための閾値の数も変更される。
【0024】
本実施の形態においては、「正常」の保全状態(以下、正常状態とする。)は、交換時期にまだ達していないことを示す状態である。すなわち、正常状態であるデバイス300は、保全のための交換時期に至っておらず、正常な動作が見込まれるデバイスである。「注意」の保全状態(以下、注意状態とする。)は、交換時期が近いことを示す状態である。すなわち、注意状態であるデバイス300は、保全のための交換時期が近づいており、ユーザーに注意を促す必要があるデバイスである。「警告」の保全状態(以下、警告状態とする。)は、交換時期であることを示す状態である。すなわち、警告状態であるデバイス300は、保全のための交換時期に至りユーザーに対して警告が必要なデバイスである。「危険」の保全状態(以下、危険状態とする。)は、交換時期を徒過していることを示す状態である。すなわち、危険状態であるデバイス300は、保全のための交換時期を徒過しておりユーザーに対して保全上危険なデバイスである。
【0025】
表示部162は、所定期間経過時の判断部108が判断した任意のデバイス300の保全状態をユーザーに対して表示する。表示方法に関しての詳細は後述で説明するが、たとえば、テーブル形式で表示することが考えられる。
【0026】
<概要>
まず、本実施の形態に係る保全管理システム1が提供するパラメータ収集機能について説明する。
図2は、本実施の形態に係る保全管理システム1が提供するパラメータ収集機能を説明するための模式図である。
図2を参照して、保全管理システム1は、検索装置100と、検索装置100により検索可能な検索対象2とを含む。
【0027】
検索対象2は、典型的には、制御対象を制御する制御装置の典型例であるPLC200(プログラマブルロジックコントローラ)と、PLC200に接続される1または複数のデバイス300とを含む。デバイス300は、PLC200の管理によって動作する装置を意味し、典型的には、制御対象との間で信号をやり取りする装置である。デバイス300の一例としては、制御対象から入力信号を取得し、あるいは、制御対象へ出力信号を出力するIOユニット、モーターなどを制御するドライバ、ロボットなどを制御するロボットコントローラ、などを含む。制御対象には、ワークを測定するセンサなどが含まれる。
【0028】
PLC200自体も「デバイス」の概念に含まれ得る。また、「デバイス」の概念には、PLC200を細分化したユニットも含まれる。PLC200を構成するCPUユニット、電源ユニット、IOユニットなどは各々取り外し交換が可能であるため、単体のデバイスとして扱う。パラメータ収集部106は、PLC200が備えるこれらのユニットの稼働時間等の情報を各々収集できる。
【0029】
各デバイス300は、データを一時的に保持する作業領域302と、各デバイス300の各種設定を規定するプロファイル304と、接続されているセンサなどから取得したデータを格納し、および/または、各デバイス300において生成されるデータを格納するデータソース306とを含む。
【0030】
検索装置100のパラメータ収集部106は、検索対象2のネットワーク内を巡回して各デバイス300のパラメータの値を、所定のタイミングで自動的に収集する。所定のタイミングとは、典型的には、1日のうちの任意の時間であり、定期的であることが望ましい。
【0031】
たとえば、パラメータ収集部106は、正午のタイミングで、毎日、各デバイス300のパラメータの値を収集する。もちろん、パラメータ収集部106は、ユーザーが設定した任意の条件または外部からのデータ検索要求をトリガとして、パラメータの値を収集してもよい。たとえば、パラメータ収集部106は、保全管理システム1がいずれかの機器のエラーを検知したことをトリガとして、パラメータの値を収集する。または、パラメータ収集部106は、検索装置100が各デバイス300の電源投入を検知した場合に、パラメータの値を収集してもよい。
【0032】
パラメータ収集部106は、インデックス1043とパラメータの値とを各デバイス300から収集する度にデータベース104に蓄積する。パラメータ収集部106は、構成情報1041、および、デバイスプロファイル1042について更新することができてもよい。
【0033】
検索装置100は、主たる機能構成として、インターフェイス102と、データベース104と、通信処理部110と、制御部152と、入力部160と、表示部162とを含む。制御部152は、パラメータ収集部106と、パラメータ予測部107と、判断部108とを含む。
【0034】
インターフェイス102は、他の端末との間でデータをやり取りする。パラメータ収集部106は、インターフェイス102を介して、他の端末からデータ検索要求を受信したことをトリガとして、パラメータの値を収集してもよい。
【0035】
具体的には、インターフェイス102は、他の端末からデータ検索要求を受信すると、受信したデータ検索要求をパラメータ収集部106へ出力する。インターフェイス102は、パラメータ収集部106からデータを受信し、検索結果として他の端末へ送信することができる。
【0036】
パラメータ収集部106は、定期的に必要なリクエストパケットを生成する。生成されたリクエストパケットは、通信処理部110から検索対象2のネットワークへ送信される。パラメータ収集部106は、リクエストパケットに応答して返されるレスポンスパケットを通信処理部110から受信すると、レスポンスパケットに含まれるデータをデータベース104へ出力する。
【0037】
通信処理部110は、検索対象2のネットワークおよび該ネットワークに含まれる各デバイス300との間でデータをやり取りする。
図2の構成例においては、通信処理部110は、検索対象2のネットワークを統括するPLC200を介して、任意のデバイスとの間でデータ(パケット)をやり取りする。
【0038】
データベース104は、パラメータの値と、デバイス300からデータを収集するためのパケットなどを生成するために必要な情報を格納している。より具体的には、データベース104は、構成情報1041と、デバイスプロファイル1042と、インデックス1043と、パラメータ履歴1044を含む。構成情報1041は、検索対象2に含まれる各デバイス300の接続関係を示す情報を含む。デバイスプロファイル1042は、検索対象2に含まれる各デバイス300の特性を示す情報を含む。インデックス1043は、検索を効率化するために用いられる情報であり、検索対象2に含まれる各デバイス300のパラメータの値を含む。パラメータ履歴1044は、各デバイス300のパラメータの値と、該パラメータの値を収集した時間を含む。
【0039】
<検索装置100のハードウェア構成例>
次に、本実施の形態に係る保全管理システム1を構成する検索装置100のハードウェア構成例について説明する。
【0040】
検索装置100は、検索対象2に含まれるPLC200またはネットワークに接続される独立した装置として構成してもよいし、PLC200の一部として(すなわち、PLC200と一体化して)構成してもよい。
【0041】
検索装置100を独立した装置として構成する場合には、PLC200と同様のハードウェア構成を採用してもよいし、汎用的なコンピュータを採用してもよい。汎用的なコンピュータを採用する場合には、コンピュータのプロセッサが検索プログラムを実行することで実現される。
【0042】
図3は、本実施の形態に係る検索装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3を参照して、検索装置100は、制御部152と、メインメモリ154と、ストレージ156と、上位ネットワークコントローラ158と、入力部160と、表示部162と、下位ネットワークコントローラ164と、メモリカードインターフェイス166とを含む。これらのコンポーネントは、バス170を介して接続されている。
【0043】
制御部152は、後述するような各種処理を実行する演算処理部に相当し、CPUやGPUなどで構成される。具体的には、制御部152は、ストレージ156に格納されたプログラムを読出して、メインメモリ154に展開して実行することで、各種処理を実行する。
【0044】
メインメモリ154は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ156は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ156には、本実施の形態に係るパラメータ収集処理を実現するための検索プログラム1560と、OS(Operating System)などを含むシステムプログラム1564とが格納される。ストレージ156には、データベース104が格納される。
【0045】
入力部160は、タッチパネル、マウス、キーボードなどで構成され、ユーザー操作を受け付ける。表示部162は、液晶ディスプレイなどで構成され、制御部152による処理結果に応じた画像などを表示する。入力部160および表示部162が一体化して構成されてもよい。
【0046】
上位ネットワークコントローラ158は、ネットワーク接続された任意の情報処理装置からのデータ検索要求などを受付ける。上位ネットワークコントローラ158は、
図2のインターフェイス102として機能する。下位ネットワークコントローラ164は、検索対象2に含まれるPLC200などとの間でデータをやり取りする。
【0047】
メモリカードインターフェイス166は、着脱可能な記憶媒体の一例であるメモリカード168を受け付ける。メモリカードインターフェイス166は、メモリカード168に対してデータを書込み、メモリカード168から各種データを読出すことが可能になっている。メモリカードインターフェイス166を介して、検索装置100は、検索プログラム1560および自動更新プログラム1562をインストールできるように構成されてもよい。
【0048】
図3には、制御部152が検索プログラム1560を実行することで必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードウェア回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)など)を用いて実装してもよい。
【0049】
図3では、各機能を備える検索装置100を独立した装置として構成する場合の構成例を示したが、データベース104と、制御部152と、表示部162とが別体の装置に設けられていてもよい。たとえば、PLC200がパラメータ収集部106として機能する場合、PLC200は、PLC200自身が備える不揮発メモリ等にパラメータの値を記憶させる。製造システムのサポートをする図示しないサポート装置がパラメータ予測部107と、判断部108として機能し、保全状態を判断する。図示しない表示用端末が表示部162として機能し、サポート装置が判断した保全状態を、表示することとしてもよい。このように、検索装置100が備える各機能は分離して別体の装置の設けられてもよく、様々な組み合わせで分離することが想定される。
【0050】
<パラメータの種類>
本実施の形態におけるパラメータとは、保全管理システム1が含む各デバイス300であるIOユニット、センサユニット、特殊ユニットなどのコントローラに接続され得るユニット、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)およびネットワーク通信を中継するカプラユニットなどの状態の管理に必要なパラメータをいう。
【0051】
本実施の形態の保全管理システム1では、各デバイス300の稼働時間および各デバイス300の消費電力量をパラメータとして扱う。保全管理システム1では、長い時間稼働したデバイスは劣化している可能性が高いため、交換対象として判断する。
【0052】
保全管理システム1は、新規導入時に比べて消費電力が多くなったデバイス300についても交換対象として判断することができる。デバイス300がモーターなどである場合、経年による変形等の原因により、動作させるための消費電力が高くなる傾向がある。各デバイス300は、図示しないタイマおよび図示しない消費電力を検知する消費電力センサを備える。消費電力の測定は、電源ケーブルをクランプして電流測定してもよい。
【0053】
保全管理システム1では、デバイス300が光電センサ等の信号の送受信をするセンサである場合は、受信する信号の強度をパラメータとして扱う。光電センサは、光を投光する投光器と、当該投光を受光する受光器とを含み、投光器と受光器の間をワークがあるか否かを検知することができる。すなわち、投光器が投光しているにもかかわらず受光器が投光を受光できないとき、光電センサは、ワークがあることを検知する。
【0054】
受光器は、汚れの付着や受光素子の不具合などの原因により、投光を信号に変換できる強度を示す受光強度が低下する。受光強度が一定値まで低下すれば、光電センサは検知できなくなり使用することができなくなる。保全管理システム1では、光電センサのみならずその他のセンサの取得する信号の強度をパラメータとして扱ってもよい。
【0055】
各デバイス300は、各デバイス300自身の稼働時間、消費電力、取得する信号の強度をデータソース306へ記憶させる。また、各デバイス300は、各デバイス300自身のパラメータのみならず、各デバイス300が制御する制御対象のパラメータの値をデータソース306へ記憶させる。たとえばデバイス300がIOユニットである場合、IOユニットは、IOユニットに接続されたセンサなどの稼働時間、消費電力についてIOユニットが備えるデータソース306へ記憶させる。
【0056】
各デバイス300は、リクエストパケット400を受信したとき、稼働時間、消費電力および取得する信号の強度の情報を含むレスポンスパケット450を検索装置100へ送信することができる。検索装置100は、レスポンスパケット450に含まれた稼働時間、消費電力の情報、取得する信号の強度の情報を、パラメータとしてデータベース104へ記憶する。
【0057】
本実施の形態の保全管理システム1では、稼働時間、消費電力、取得する信号の強度をパラメータとして扱うが、各デバイス300が記憶するその他の数値をパラメータとして扱ってもよい。
<パラメータの予測手法>
パラメータ予測部107は、パラメータ履歴1044が記憶する過去のパラメータ値に基づいて、将来のパラメータを予測する。
【0058】
稼働時間のもっとも単純な予測手法として、移動平均法が考えられる。パラメータ予測部107は、任意のデバイス300の過去の一ヶ月単位の平均稼働時間が、500時間である場合、現在より一ヶ月後の累積平均時間は、現在の累積平均時間から500時間を加えたものとして予測することができる。パラメータの予測方法として、移動平均法のほかに指数平滑法を用いてもよい。また、過去の月別平均値を使用してもよい。
【0059】
ストレージ156は、移動平均法または指数平滑法などを用いた将来のパラメータを計算するための計算プログラムを記憶する。パラメータ予測部107は、当該計算プログラムを展開して、実行することで所定の期間経過後の稼働時間を計算することができる。パラメータ予測部107は、同一の手法により将来の消費電力を予測する。
【0060】
図4は、光電センサの受光強度を予測するための図である。
図4の縦軸は、光電センサの受光強度を示し、横軸は、時間の経過を示す。パラメータ予測部107は、過去の光電センサの受光強度に基づいて
図4で示すグラフを作成する。当該グラフは、受光強度と時間との関数を示すグラフである。光電センサの受光強度は、時間の経過に伴って徐々に低下する。パラメータ予測部107は、当該関数の係数を求めることで、将来の任意の時間においての受光強度を計算により、予測することができる。
【0061】
遮断1と遮断2と遮断3とは、光電センサの投光器と受光器との間をワークが通過したため、受光器が投光を受光できなくなったことを示している。
図4では簡略化して表現しているため、遮断回数が3回のみの間に大きく受光強度が下がっているが、実際の運用では、受光強度が下がるまでに多数のワークを測定するため、
図4よりも多数の遮断が存在することが想定される。
【0062】
検知閾値とは、光電センサが投光を適切に検知することができることを保証する閾値である。受光強度が検知閾値を下回った場合、光電センサは、投光器と受光器との間にワークが存在しないにもかかわらず、ワークがあると検知する可能性が生じる。閾値A~閾値Cは保全状態を判断するために使用される閾値であり、詳しくは後述で説明する。このように将来のパラメータを予測することにより、パラメータ予測部107は、所定の期間が経過した時点での各デバイス300の将来のパラメータの値を予測することができる。
【0063】
以下に、パラメータ予測部107が稼働時間を予測する具体的かつ簡易な例を示す。デバイス300は、サーボモーターである。たとえば、製造システムでは、サーボモーターが3月1日に導入され、3月全体の稼働時間が400時間、4月全体の稼働時間が600時間であったとする。よって、デバイス300であるサーボモーターの1ヶ月の平均稼働時間は、500時間であり、累積稼働時間は1,000時間である。
【0064】
5月1日時点において、パラメータ予測部107は、サーボモーターの累積稼働時間を、1ヶ月後の累積稼働時間が1,500時間、2ヶ月後の累積稼働時間は2,000時間、3ヶ月後の累積稼働時間は2,500時間、12ヶ月後の累積稼働時間は7,000時間であると予測することができる。
【0065】
同様に、パラメータ予測部107は、たとえば、6ヶ月後のモーターの回転数あたりの消費電力や、1年後の光電センサの受光強度を予測できる。
<保全状態の判断手法>
本実施の形態における保全管理システム1は、保全状態を「正常」「注意」「警告」「危険」の4つに分類する。判断部108は、パラメータ予測部107が予測した所定期間経過時のパラメータの値に基づいて、各デバイス300の所定期間経過時の保全状態を判断する。これにより、各デバイス300の保全状態は分類される。
【0066】
具体的な分類方法として、閾値を用いることが考えられる。たとえば、保全管理システム1では、サーボモーターの稼働時間に、2,250時間、3,000時間および6,000時間の3つの閾値を設ける。判断部108は、パラメータ予測部107が所定期間経過時のサーボモーターの稼働時間が2,250時間未満であれば保全状態は、正常状態であると判断する。同様に、判断部108は、サーボモーターの稼働時間が2,250時間以上で3,000時間未満であれば保全状態は、注意状態であると判断する。
【0067】
判断部108は、サーボモーターの稼働時間が3,000時間以上で6,000時間未満であれば保全状態は、警告状態であると判断する。判断部108は、サーボモーターの稼働時間が6,000時間以上であれば保全状態は、危険状態であると判断する。
【0068】
2,250時間、3,000時間および6,000時間の3つの閾値は、各デバイス300に定められた耐用年数を参考にして設定してもよいし、その他の条件に基づいてユーザーが任意の数値を設定できることとしてもよい。また、パラメータ履歴1044が保持する各デバイス300の過去の稼働時間の実測値に基づいて定めてもよい。保全管理システム1では消費電力、取得する信号の強度についても、同様に閾値を定め、保全状態を判断する。
【0069】
図4に戻り、光電センサの保全状態の判断手法を説明する。閾値A、閾値B、閾値Cは、光電センサの保全状態を判断するための閾値である。判断部108は、受光強度が閾値A以上であるとき、保全状態は、正常状態であると判断する。判断部108は、受光強度が閾値A未満で閾値B以上であるとき、保全状態は、注意状態であると判断する。
【0070】
判断部108は、受光強度が閾値B未満で閾値C以上であるとき、保全状態は、警告状態であると判断する。判断部108は、受光強度が閾値C未満であるとき、保全状態は、危険状態であると判断する。
【0071】
このように、判断部108が、所定の期間経過時の各デバイス300の保全状態を判断することで、ユーザーは任意のデバイス300について、いつ交換すべきか容易に判断することができる。また、判断部108は、1つのデバイスの複数のパラメータに基づいて、当該デバイスの保全状態を判断してもよい。たとえば、判断部108は、光電センサの保全状態を、受光強度と稼働時間とを組み合わせて判断する。受光強度が閾値C未満であって、かつ、稼働時間が特定の時間以上である場合に、判断部108は、保全状態が危険状態であると判断する。受光強度が閾値C未満であっても、稼働時間が特定の時間以上でなければ、判断部108は、保全状態が警告状態であると判断する。このように、保全管理システム1では、判断部108が、1つのパラメータからのみに限られず、複数のパラメータを用いて、デバイスの保全状態を判断してもよい。もちろん、判断部108は、光電センサ以外の他のデバイスにおいても、複数のパラメータを用いて保全状態を判断することができる。
【0072】
以下にて、パラメータ予測部107が予測する上述の例を用いて、保全状態を判断する例を示す。上述の通り、パラメータ予測部107は、1ヶ月後のサーボモーターの累積稼働時間は1,500時間、2ヶ月後の累積稼働時間は2,000時間、3ヶ月後の累積稼働時間は2,500時間、12ヶ月後の累積稼働時間は7,000時間であると予測している。また、サーボモーターの累積稼働時間にかかる閾値は、2,250時間、3,000時間および6,000時間と設定されている。
【0073】
よって、判断部108は、1ヶ月後の保全状態は正常状態、2ヶ月後の保全状態は正常状態、3ヶ月後の保全状態は注意状態、12ヶ月後の保全状態は警告状態であると判断する。
<テーブル形式による製造システム全体の保全状態の表示方法>
図5は、テーブル形式による製造システム全体の保全状態の表示方法を示す図である。
図5では、製造システムに接続された各デバイス300の稼働時間に基づいた保全状態を、2019年度の各月単位で表示している。
図5で示すテーブルは、検索装置100が備える表示部162に表示してもよいし、ネットワークを介して他の端末に表示させてもよい。
【0074】
図5で示すテーブルはリレーショナルデータベースに準じたテーブルである。当該テーブルは、判断部108が判断したデバイス300の保全状態を含むデータが1行ずつ表示する。以下、左端の列から順に説明する。列「Position」は、各データを識別する識別子として利用される主キーである。列「Node」は、他のテーブルを参照するための外部キーである。
【0075】
列「ベンダ名」は、デバイス300の製造元の名前を表示する。列「商品名」は、デバイス300の商品名を表示する。列「累積稼働時間」は、デバイス300の当該テーブルを表示した時点の累積稼働時間を表示する。列「閾値」は、保全状態を分類するための閾値を表示する。列「注意」が1600の場合、累積稼働時間が1600時間以上になれば、判断部108は、デバイス300の保全状態が注意状態であると判断する。
【0076】
列「2019年」は、2019年度の各月の保全状態を時系列で表示する。列「2019年」のセルの両端に設けられた矢印のアイコンをクリック等で選択することで、2018年または2020年のデータを表示する。
【0077】
図5では、表示部162は、商品名が商品A~商品Zの各デバイス300が表示しているが、どのデバイス300を表示するかは、ユーザーが選択可能である。同様に、表示部162は、保全状態は2019年度分が表示しているが、どの期間を表示するかはユーザーが選択可能である。
【0078】
図5で表示するデータの内容は、2019年5月1日時点での内容である。したがって、累積稼働時間は、各デバイス300が導入されてから2019年5月1日までの稼働時間を示す。列「2019年」のうちの5月以降の保全状態は、パラメータ予測部107が予測した累積稼働時間に基づいて、判断部108が判断した保全状態である。列「2019年」のうちの4月以前の保全状態は、実際の累積稼働時間に基づいて、判断した保全状態である。
【0079】
保全状態における注意状態は交換時期が近いことを示し、一般的な製造システムでは、注意状態の期間は、新しいデバイス300を発注する期間などの交換準備期間として扱われる。一方、警告状態のまま使用することはデバイス300が故障する可能性があるため、注意状態の期間内で交換準備をし、警告状態になったところで交換をすることが予防保全の考え方として一般的である。
【0080】
この予防保全の考え方に従えば、商品Aは、7月に交換準備をして8月に交換をする。商品Bは、2019年内に交換準備をする必要はない。商品Cは、5月に交換準備を始め7月に交換をする。商品Zは、8月に交換準備を始め11月に交換をする。
【0081】
しかし、商品を交換するということは、少なくとも製造システムの一部分の稼働を停止させる必要があり、交換の度に、製造システムの稼働を停止させることは製造システム全体の生産性、稼働率を低下させる。
【0082】
そこで、
図5で示すテーブル形式で各デバイス300を時系列で並べて表示することで、より効率的に交換ができる適切な交換時期を計画することができる。
【0083】
具体的には、保全管理システム1では、商品A、商品C、商品Zを同時に交換すべきであることが計画できる。商品A、商品C、商品Zを各々交換すれば3回交換しなくてはならないが、商品A、商品C、商品Zを同時に交換すれば1回の交換で済み、効率的である。
図5を参照して、たとえば8月に商品A、商品B、商品Cを交換すればよいことを知ることができる。商品Aは、8月に警告状態となるため、適切な時期での交換である。
【0084】
商品Cが警告状態となるのは7月ではあるが、交換を見送り、8月まで交換を見送る。仮に7月中に故障したとしても、あらかじめ交換準備をすることができるため、比較的に生産性を低下させることなく、交換処理ができる。商品Zは、8月の時点では注意状態であるが、11月に交換するよりも8月で商品Aと商品Cと合わせて交換することで製造システム全体の稼働率を上げることができる。
【0085】
日本では、一般的に8月のお盆期間と1月の正月期間とに工場内で規模の大きいメンテナンスがされる。商品Zの保全状態が危険状態となるのが1月の正月期間よりも前であるため、8月のお盆期間に交換すべきであるといった判断をさせることが容易となる。
【0086】
このように、予測した将来の稼働時間の値に基づいて判断する保全状態をテーブル形式で表示することで、製造システム全体の生産性を低下させることなく各デバイス300の適切な時期を計画することができる。
【0087】
本実施の形態において、保全管理システム1では、交換時期を徒過していることを示す状態を、危険状態であると定義しているが、さらに閾値を設定し分類を設けてもよい。たとえば、
図4で、判断部108は、受光強度が閾値C未満となれば一律で危険状態であると判断する。しかし、受光強度が検知閾値未満となった場合、光電センサは、投光を受光できず、光電センサとしての機能をすることができない。そこで、判断部108は、受光強度が検知閾値未満となった場合、「要交換」などの直ちに交換が必要である時期を示す状態であると判断してもよい。
【0088】
さらに、保全管理システム1では、ユーザーが交換時期を計画して定めた場合、任意のデバイス300の交換時期を入力部160より受け付け、交換した後の稼働時間を再度予測し直して、表示してもよい。これによれば、保全管理システム1では、交換後のデバイス300の交換時期を表示することができる。また、制御部152は、実際に交換したという情報を入力部160から受け付けることで、デバイス300の総稼働時間を計算し、閾値を自動で調整してもよい。
【0089】
図6は、任意のデバイス300に関する詳細情報の表示方法を示す図である。
図5の商品Aの行をクリックすることで
図6に示す情報を表示する画面へと画面遷移する。下部に表示するテーブルは、保全状態を判断するための詳細な情報を示す。
図6のテーブルでは、
図5と比べて月別の稼働時間と月別の累積稼働時間とが示されている。
【0090】
4月以前の稼働時間と累積稼働時間は実測値であり、5月以降の稼働時間と累積稼働時間はパラメータ予測部107が予測した値である。「2019年4月」で示す列を参照すれば、2019年4月全体の稼働時間が155時間であることがわかり、2019年4月1日時点での累積稼働時間が1,295時間であることがわかる。したがって、2019年5月1日時点での累積稼働時間が1,295時間に155時間を加算した1,450時間である。
【0091】
「2019年5月」で示す列を参照して、2019年5月1日時点での累積稼働時間が1,450時間であることがわかる。中央上部のテーブルを参照して、
図6で示す画面を表示する日付は2019年5月1日であるため、2019年5月全体の稼働時間の実測値は存在しない。しかし、パラメータ予測部107によって、2019年5月全体の稼働時間が予測される。これにより、2019年5月全体の稼働時間が計算できる。
【0092】
計算された2019年5月全体の稼働時間は1597.25時間である。判断部108は、当該稼働時間と閾値とを比較して保全状態を判断する。1597.25時間は、右側上部のテーブルで示されるよう注意状態となる閾値1,600時間未満であるため、判断部108は、2019年6月の保全状態は正常状態であると判断する。
【0093】
このように、詳細情報を表示することにより、保全状態を判断する基準となったパラメータ予測部107が予測する稼働時間を確認することができ、より正確な判断をすることができる。
<処理手順>
図7は、製造システム全体の保全状態の表示する処理手順を示す図である。制御部152は、製造システム全体の保全状態の表示命令を受け付けたか否かを判断する(ステップS100)。製造システム全体の保全状態の表示命令を受け付けていない場合(ステップS100でNO)、処理をステップS100に留める。
【0094】
製造システム全体の保全状態の表示命令を受け付けた場合(ステップS100でYES)、制御部152は、表示する各デバイス300の情報と、表示する期間を受け付ける(ステップS110)。たとえば、入力部160が商品A、商品B、商品Cのみの2021年度の保全状態を表示するという命令をユーザーから入力された場合、入力部160は、商品A、商品B、商品Cというデバイス300の情報と、2021年度という期間の情報を制御部152に送信する。
【0095】
制御部152は、入力されたデバイス300の過去のパラメータの値をデータベース104から取得する(ステップS120)。制御部152のパラメータ予測部107は、過去のパラメータの値に基づいて、入力された期間での将来のパラメータ値を予測する(ステップS130)。
【0096】
制御部152の判断部108は、パラメータ予測部107が予測したパラメータの値と、設定された閾値とから、各デバイス300の保全状態を判断する(ステップS140)。制御部152は、入力された期間での各デバイス300の保全状態を、表示部162へ送信し、表示部162は製造システム全体の保全状態を表示する(ステップS150)。
<アイコンによる製造システム全体の保全状態の表示方法>
図8は、アイコンによる製造システム全体の保全状態の表示画面例1を示す図である。
図8では、PLC200や各デバイス300をそれぞれアイコン化し、製造システムの全体を俯瞰できるようにシステム構成を図示したうえで、それぞれのPLC200と各デバイス300の稼働時間に基づいた保全状態を表示する。なお、
図8で示した表示形式を、以下アイコン形式の表示という。このようなアイコン形式の表示では、
図5に示したテーブル形式の表示と異なり製造システムの接続関係を一見して把握することができる。
【0097】
図8で示す製造システムは、PLC200にデバイスA~デバイスGとがデイジーチェーン型のネットワーク構成で接続されている。当該製造システムのネットワークは、Ethercatをプロトコルとして採用する。もちろん、他のプロトコルを用いてもよい。
【0098】
PLC200は、CPUユニットU1と、電源ユニットU2と、IOユニットU3と、IOユニットU4とを備える。デバイスAは、スレーブターミナルであり、PLC200と同様に、CPUユニットU1と、電源ユニットU2と、IOユニットU3と、IOユニットU4とを備える。デバイスB~デバイスEは、サーボモーターである。デバイスFおよびデバイスGは、汎用スレーブである。もちろん、その他の種類のデバイス300が接続されることが想定される。
【0099】
図8で示す画面の下部に表示されているスライドバーは、
図8で示す画面を表示している時から何ヶ月先の製造システムの保全状態を表示するかを示している。
図8では、3ヶ月後先の製造システムの保全状態を表示する。制御部152は、ユーザーがスライドバーを移動させることによって、対応する時の製造システムの保全状態を表示部162に表示させる。もちろん、スライドバーではなく、たとえばユーザーがキーボード等から所定期間を直接入力することで、表示する時を変更させてもよい。
【0100】
表示部162は、画面の右上部に保全状態の分類である「注意」「警告」「危険」を表示する。「注意」「警告」「危険」は、それぞれに特有のハッチングが付される。PLC200と各デバイス300とは、それぞれの保全状態に対応して、分類に対応するハッチングが付される。保全状態が正常状態である場合は、PLC200と各デバイス300とはなんらハッチングが付されない。
【0101】
図8を参照して、PLC200の電源ユニットU2とIOユニットU4と、デバイスDとは、注意状態に対応するハッチングが付されている。これにより、ユーザーは
図8で示す画面を参照して、PLC200の電源ユニットU2とIOユニットU4と、デバイスDとの保全状態が、3ヶ月後に注意状態であると判断できる。同様に、デバイスAのIOユニットU3とデバイスFの保全状態は、3ヶ月後に警告状態になる。もちろん、保全管理システム1は、ハッチングではなく色彩を用いて分類を分けて表示してもよい。
【0102】
保全状態の判断手法は、
図5で用いた判断方法と同一であり、パラメータ収集部106が収集した過去のパラメータに基づいて、パラメータ予測部107が将来のパラメータの値を予測し、判断部108が保全状態を判断する。すなわち、
図8で示す画面を表示するために必要な情報は、
図5で示すテーブルを表示するために必要な情報と同一であり、収集方法も同一である。
【0103】
図9は、アイコンによる製造システム全体の保全状態の表示画面例2を示す図である。
図8では3ヶ月後の製造システムの保全状態を表示しているのに対して、
図9で示す画面は、9ヶ月後の製造システムの保全状態を表示している。期間が経過したことにより、パラメータ予測部107は、各デバイス300の累積稼働時間が3ヶ月経過時点よりも長くなると予測する。
【0104】
図9で示す画面では、PLC200のIOユニットU4と、デバイスAのIOユニットU3と、デバイスDと、デイバスFとの保全状態が、危険状態であることを示す。PLC200の電源ユニットU2と、デバイスAのIOユニットU4との保全状態は、警告状態である。デバイスBとデバイスGとの保全状態は、注意状態である。
【0105】
このように、製造システムの接続関係を表示するアイコン形式で、各デバイス300の保全状態を表示することにより、ユーザーは、実際の各デバイス300の接続関係を考慮して交換時期を計画することができる。たとえば、
図9で示す画面では、デバイスDを交換する際に、ネットワークトポロジの形態上、デバイスEとデバイスFとデバイスGとが、ネットワークから非接続状態となることをユーザーに一見して把握させることができる。
【0106】
これにより、たとえば
図8で既にデバイスFは警告状態であるが、
図9で示す画面では、デバイスDが危険状態となることがわかる。スライドバーで表示する期間を変更することで、ユーザーは、3ヶ月後経過時にはデバイスDを交換する必要はないが、9ヶ月後経過時には交換が必要となることを知ることができる。そのため、保全管理システム1は、デバイスDの交換時と同時にデバイスFを交換することで、製造システム全体の生産性、稼働率を低下させることのない各デバイス300の交換時期を容易に計画させることができる。
【0107】
保全管理システム1は、ユーザーからの命令により、
図8で示すテーブル形式の表示方法と、
図9で示すアイコン形式の表示方法とを、交互に画面遷移させることができる。
<小括>
以上のように、本実施の形態の保全管理システム1は、複数のデバイス300が接続された製造システムの保全状態を管理する保全管理システム1であって、各々のデバイス300の保全状態の管理に必要なパラメータの値を、所定のタイミングで収集するパラメータ収集部106と、パラメータ収集部106で収集したパラメータの値をデバイス300ごとに記憶するデータベース104と、データベース104に記憶した過去のパラメータの値から、将来のパラメータの値をデバイス300ごとに予測するパラメータ予測部107と、パラメータ予測部107で予測した将来のパラメータの値に基づいて、所定期間経過したごとにデバイス300の保全状態を判断する判断部108とを備える。保全管理システム1は、製造システムに含まれる複数のデバイス300について、少なくとも1つの所定期間経過した時点の判断部108で判断した保全状態を表示する表示部162とを備える。これによれば、製造システムに接続された多数の機器の状態を確認し、製造システム全体の生産性を低下させない各機器の適切な交換時期の計画を容易にすることができる。
【0108】
また、判断部108は、所定期間経過した時点の将来のパラメータの値が所定の閾値を超えているか否かに基づいて、デバイス300の保全状態を判断する。これによれば、閾値に基づいてデバイス300の保全状態を判断することができる。
【0109】
さらに、判断部108は、所定期間経過した時点の将来のパラメータの値に基づいて、デバイス300の保全状態の区分を判断する。これによれば、デバイス300の保全状態を所定の区分に分けて判断することができる。
【0110】
また、パラメータ収集部106が収集するパラメータは、各々のデバイス300の稼働時間である。これによれば、稼働時間に基づいて、保全状態の判断をすることができる。
【0111】
さらに、複数のデバイス300は、センサを含み、パラメータ収集部106が収集するパラメータは、センサが取得する信号の強度である。これによれば、センサが取得する信号強土に基づいて、センサの保全管理を判断することができる。
【0112】
また、パラメータ収集部106が収集するパラメータは、デバイス300の消費電力量である。これによれば、デバイス300の消費電力量に基づいて、保全状態の判断をすることができる。
【0113】
さらに、表示部162は、製造システムに含まれる複数のデバイス300の各々の保全状態を時系列に並べたテーブル形式で表示する。これによれば、ユーザーは、複数のデバイス300の全体の交換時期を一括して確認することができ、製造システム全体として効率的な交換時期を計画することができる。
【0114】
また、表示部162は、製造システムに含まれる複数のデバイス300のうちの1つのデバイス300の保全状態と将来のパラメータの値とを時系列に並べたテーブル形式で表示できる。これによれば、詳細な情報をユーザーに対して表示することができる。
【0115】
さらに、表示部162は、製造システムに含まれる複数のデバイス300の各々をアイコンで表示し、デバイス300の保全状態を識別可能な表示態様でアイコンに表示し、各々のアイコンを接続させて複数のデバイス300の接続関係を示すように表示する。これによれば、ユーザーは製造システムの接続関係とともに、各デバイス300の交換時期を確認することができ、製造システム全体として効率的な交換時期を計画することができる。
【0116】
また、表示部162は、アイコンに表示させるデバイス300の保全状態の所定期間の変更を受け付ける受付手段を表示する。これによれば、ユーザーは、表示する所定期間を変更することができる。
【0117】
さらに、受付手段は、所定期間単位に移動可能なスライドバーである。これによれば、ユーザーは、スライドバーを用いて容易に表示する所定期間を変更することができる。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1 保全管理システム、100 検索装置、102 インターフェイス、104 データベース、106 パラメータ収集部、107 パラメータ予測部、108 判断部、110 通信処理部、152 制御部、154 メインメモリ、156 ストレージ、158 上位ネットワークコントローラ、160 入力部、162 表示部、164 下位ネットワークコントローラ、166 メモリカードインターフェイス、168 メモリカード、170 バス、306 データソース、400 リクエストパケット、450 レスポンスパケット、1041 構成情報、1042 デバイスプロファイル、1043 インデックス、1044 パラメータ履歴、1560 検索プログラム、1562 自動更新プログラム、1564 システムプログラム。