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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】撮影制御装置および放射線撮影システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240806BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020026304
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021129707
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 信之
(72)【発明者】
【氏名】深津 幸助
(72)【発明者】
【氏名】小枝 敬輔
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-138828(JP,A)
【文献】特開2019-126709(JP,A)
【文献】特開2009-297284(JP,A)
【文献】特開2008-178674(JP,A)
【文献】特開2014-200306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0333129(US,A1)
【文献】特開2013-103002(JP,A)
【文献】特開2011-115368(JP,A)
【文献】特開2014-166264(JP,A)
【文献】特開2011-206280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して放射線の曝射を行う本曝射より前に行われるプレ曝射の撮影条件として設定された第1撮影条件であって、前記プレ曝射において適切に撮影が可能となる撮影条件である第1撮影条件を取得する取得部と、
前記被写体の撮影条件として入力された第2撮影条件と、前記取得部により取得された前記第1撮影条件との適合性に基づく制御を前記プレ曝射に先立って行う制御部と、
を備える撮影制御装置。
【請求項2】
前記プレ曝射における、前記被写体の検査条件毎に関連付けられた複数の第1撮影条件を記憶する記憶部を備え、
前記取得部は、前記複数の第1撮影条件の中から前記検査条件に対応した第1撮影条件を選択する、
請求項1に記載の撮影制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1撮影条件と前記第2撮影条件とを比較し、前記第2撮影条件が前記第1撮影条件の範囲に入っているか否かについて判定する、
請求項1または請求項2に記載の撮影制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2撮影条件が前記第1撮影条件の範囲に入らないと判定した場合、前記撮影制御装置を含む放射線撮影システムによる曝射および前記曝射に基づく曝射画像の生成を禁止する、
請求項3に記載の撮影制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2撮影条件が前記第1撮影条件の範囲に入らないと判定した場合、警告指令を出力する、
請求項3または請求項4に記載の撮影制御装置。
【請求項6】
前記警告指令は、ユーザーの視覚または触覚に作用する装置の動作に関する指令である、
請求項5に記載の撮影制御装置。
【請求項7】
前記装置の動作に関する指令は、前記装置の動作のために前記ユーザーが使用するハンドスイッチの機能に関する指令である、
請求項6に記載の撮影制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1撮影条件の範囲に関する情報をユーザーに通知する、
請求項1~7の何れか1項に記載の撮影制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2撮影条件が前記プレ曝射の第3撮影条件、および、前記本曝射の第4撮影条件の両方の範囲に入っているか否かについて判定する、
請求項1~8の何れか1項に記載の撮影制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記プレ曝射の第3撮影条件、および、前記本曝射の第4撮影条件の両方を満たす範囲をユーザーに通知する、
請求項1~9の何れか1項に記載の撮影制御装置。
【請求項11】
前記本曝射の第4撮影条件は、前記本曝射の時間あたりの線量範囲に関する条件を含む、
請求項9または請求項10に記載の撮影制御装置。
【請求項12】
前記第1撮影条件は、前記プレ曝射における積算線量範囲に関する条件および前記プレ曝射における照射時間範囲に関する条件の少なくとも1つを含む、
請求項1~11の何れか1項に記載の撮影制御装置。
【請求項13】
前記第1撮影条件は、前記撮影制御装置を含む放射線撮影システムにおける照射野に関する幾何学的配置に関する条件を含む、
請求項1~12の何れか1項に記載の撮影制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記幾何学的配置に基づいて前記照射野を制御する、
請求項13に記載の撮影制御装置。
【請求項15】
放射線を曝射する放射線照射装置と、
前記放射線の曝射を受けることで曝射画像の画像データを生成する放射線撮影装置と、
請求項1~14の何れか1項に記載の撮影制御装置と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項16】
前記第1撮影条件は動作パラメータの範囲に関するものであり、
前記第2撮影条件は前記動作パラメータのユーザーによる入力値であり、
前記制御部は、前記動作パラメータの前記範囲を前記第2撮影条件の前記入力値の表示と共に表示する、
請求項1に記載の撮影制御装置。
【請求項17】
前記第1撮影条件は動作パラメータの範囲に関するものであり、
前記第2撮影条件は前記動作パラメータのユーザーによる入力値であり、
前記制御部は、前記第2撮影条件が前記範囲の中に入るよう、前記ユーザーが判断可能な表示を行う、
請求項1に記載の撮影制御装置。
【請求項18】
前記第1撮影条件は動作パラメータの値の範囲に関するものであり、
前記第2撮影条件は前記動作パラメータのユーザーによる入力値であり、
前記制御部は、前記第1撮影条件と前記第2撮影条件の適合性を判断するために、前記プレ曝射に先立って前記第2撮影条件と前記第1撮影条件の前記範囲を比較する、
請求項1に記載の撮影制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影制御装置および放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影システムにおいては、放射線画像を撮影する際、本曝射と、本曝射より前に行うプレ曝射とを行う自動露出制御機能を有するものが知られている。自動露出制御機能においては、本曝射よりも低い線量でプレ曝射を行い、得られたプレ曝射画像および当該プレ曝射画像に紐付けられた付帯情報(例えば、プレ曝射における照射時間)に基づいて、本曝射を行う際の線量等の撮影条件を決定する。
【0003】
例えば、特許文献1には、プレ曝射画像の撮影が適切に行うことができたかをプレ曝射画像の画像解析から判断する構成が開示されている。画像解析の結果が適切である場合は本曝射による撮影が継続して行われ、画像解析の結果が適切でない場合は本曝射による撮影が中止される。
【0004】
また、特許文献2には、自動露出制御による曝射において単位時間あたりの線量が規定値以上であるかを判定し、規定値以上である場合、警告を報知する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-126709号公報
【文献】特開2008-178674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プレ曝射画像から照射線量を導出する場合、不適切な撮影条件でプレ曝射による撮影を行うと、適切なプレ曝射画像を撮影することができず、ひいては本曝射による撮影を適切に行うことができなくなるおそれがあった。
【0007】
特許文献1に記載の構成の場合、プレ曝射画像の撮影を適切に行うことができたかの判断を、当該撮影後に判断するため、無駄にプレ曝射を行う可能性がある。そのため、本曝射による撮影を適切に行う構成として改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の構成をプレ曝射および本曝射を行う自動露出制御に適用した場合、単位時間あたりの線量だけによる判定では、プレ曝射による撮影の積算線量を適切に把握することができない。例えば、単位時間あたりの線量が大きくても、照射時間が短ければ積算線量が小さくなり、プレ曝射に適した線量になることがある。そのため、プレ曝射による撮影条件が適切であることを検出することができない。
【0009】
本発明の目的は、適切な撮影条件でプレ曝射を行うことが可能な撮影制御装置および放射線撮影システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る撮影制御装置は、
被写体に対して放射線の曝射を行う本曝射より前に行われるプレ曝射の撮影条件として設定された第1撮影条件であって、前記プレ曝射において適切に撮影が可能となる撮影条件である第1撮影条件を取得する取得部と、
前記被写体の撮影条件として入力された第2撮影条件と、前記取得部により取得された前記第1撮影条件との適合性に基づく制御を前記プレ曝射に先立って行う制御部と、
を備える。
【0011】
本発明に係る放射線撮影システムは、
放射線を曝射する放射線照射装置と、
前記放射線の曝射を受けることで曝射画像の画像データを生成する放射線撮影装置と、
上記の撮影制御装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、適切な撮影条件でプレ曝射を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る放射線撮影システムの構成を示すブロック図である。
図2】放射線撮影装置の具体的構成を示すブロック図である。
図3】コンソールの具体的構成を示すブロック図である。
図4】複数の第1撮影条件が記載されたテーブルの一例を示す図である。
図5】第1撮影条件の範囲における表示の一例を示す図である。
図6図5に示すボタンにおける表示の一例を示す図である。
図7図5に示すボタンにおける表示の一例を示す図である。
図8】撮影時における放射線撮影システムの動作を示すラダーチャートである。
図9】複数の第1撮影条件が記載されたテーブルの一例を示す図である。
図10】複数の第1撮影条件が記載されたテーブルの一例を示す図である。
図11】複数の第1撮影条件が記載されたテーブルの一例を示す図である。
図12】複数の第1撮影条件が記載されたテーブルの一例を示す図である。
図13】撮影台において照射野境界と照射野とを重ね合わせた例を示す図である。
図14】撮影台において照射野境界と照射野とを重ね合わせた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る放射線撮影システム100の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る放射線撮影システム100は、放射線照射装置1、放射線撮影装置2およびコンソール3を備えて構成されている。また、放射線撮影システム100は、図示しない放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)や画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等と接続可能となっている。
【0016】
放射線照射装置1は、コンソール3と有線または無線で通信可能に接続されている。また、放射線照射装置1は、ジェネレーター11、曝射スイッチ12および放射線源13を備えて構成されている。
【0017】
ジェネレーター11は、曝射スイッチ12が操作されたことに基づいて、予め設定された放射線曝射条件(管電圧や管電流、照射時間、管電流時間積(mAs値)等)に応じた電圧を放射線源13に印加することが可能に構成されている。
【0018】
放射線源13(管球)は、図示しない回転陽極やフィラメント等を有している。ジェネレーター11から電圧が印加されると、フィラメントが印加された電圧に応じた電子ビームを回転陽極に向けて照射し、回転陽極が電子ビームの強度に応じた線量の放射線X(X線等)を発生させるようになっている。
【0019】
なお、図1には、ジェネレーター11、曝射スイッチ12および放射線源13が別々に分かれたものを例示したが、これらは一体に構成されていても良い。また、図1には、曝射スイッチ12がジェネレーター11に接続されたものを例示したが、曝射スイッチ12は他の装置に備えられていても良い。また、放射線照射装置1は、撮影室内に据え付けても良いし、回診車等に組み込むことで移動可能に構成しても良い。
【0020】
放射線撮影装置2は、コンソール3と有線または無線で通信可能に接続されている。また、放射線撮影装置2は、放射線照射装置1から被写体を介して放射線Xの曝射を受けることで当該被写体の曝射画像の画像データを生成することが可能に構成されている。
【0021】
図2に示すように、放射線撮影装置2は、撮影制御部21、放射線検出部22、読出部23、通信部24、記憶部25および、各部を接続するバス26を備えて構成されている。
【0022】
撮影制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。撮影制御部21のCPUは、コンソール3等の外部機器からの制御信号等を受信したことに基づいて、記憶部25に記憶されている各種プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、放射線撮影装置2における各部の動作を集中制御する。
【0023】
放射線検出部22は、放射線Xを受けることで線量に応じた電荷を発生させる放射線検出素子やスイッチ素子を備えた画素が2次元状(マトリクス状)に配列された基板によって構成されている。
【0024】
読出部23は、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出し、複数の信号値から画像データを生成することが可能に構成されている。
【0025】
通信部24は、外部機器から各種制御信号や各種データ等を受信したり、各種制御信号や生成した画像データ等を外部機器へ送信したりすることが可能に構成されている。
【0026】
記憶部25は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成され、撮影制御部21が実行する各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター等を記憶している。また、記憶部25は、読出部23が生成した画像データや、撮影制御部21が処理した各種データを記憶することが可能となっている。
【0027】
このように構成された放射線撮影装置2は、撮影制御部21が放射線検出部22の各スイッチ素子をオフにした状態で放射線の曝射を受けると、各画素に放射線の線量に応じた電荷を蓄積する。撮影制御部21が各スイッチ素子をオンにして各画素から電荷が放出されると、読出部23が各電荷量を信号値に変換し、画像データとして読み出す。
【0028】
なお、放射線撮影装置2は、シンチレーター等を内蔵し、照射された放射線Xをシンチレーターで可視光等の他の波長の光に変換し、変換した光に応じた電荷を発生させるものであっても良いし、シンチレーター等を介さずに放射線Xから直接電荷を発生させるものであっても良い。また、放射線撮影装置2は、撮影台と一体化された専用機型のものでも、可搬型のものであっても良い。
【0029】
コンソール3は、PC、携帯端末、または専用の装置によって構成されており、放射線照射装置1および放射線撮影装置2等と有線または無線で通信可能に接続されている。コンソール3は、外部装置(RIS等)からの撮影オーダーやユーザーによる操作に基づいて、放射線照射装置1および放射線撮影装置2の撮影条件や撮影対象部位などを設定することが可能となっている。コンソール3は、本発明の「撮影制御装置」に対応する。
【0030】
図3に示すように、コンソール3は、制御部31、通信部32、記憶部33、表示部34、操作部35および、各部を接続するバス36を備えて構成されている。
【0031】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部35の操作に応じて記憶部33に記憶されている各種プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、コンソール3各部の動作を集中制御する。
【0032】
通信部32は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0033】
記憶部33は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成され、制御部31が実行する各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター等を記憶している。また、記憶部33は、放射線撮影装置2から受信した画像データや制御部31が処理した画像データを、付帯情報と紐付けて記憶することが可能となっている。
【0034】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、操作部35からの入力指示やデータ等を表示する。
【0035】
操作部35は、カーソルキー、数字入力キー、および各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部35は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0036】
次に、制御部31による放射線撮影装置2の撮影制御について説明する。制御部31は、プレ曝射により得られたプレ曝射画像およびプレ曝射画像に紐付けられた付帯情報に基づいて本曝射を行う際の撮影条件を決定する自動露出制御を行う。プレ曝射は、本曝射の前において、本曝射よりも低い線量で行われる。
【0037】
制御部31は、被写体の検査条件およびユーザーによる第2撮影条件に基づいて、プレ曝射における第1撮影条件を取得する。制御部31は、本発明の「取得部」に対応する。
【0038】
被写体の検査条件には、被写体の撮影部位(胸部、腹部、腰椎等)および撮影方向(正面、背面、側面、斜入等)等の条件が含まれる。ユーザーによる第2撮影条件には、プレ曝射に用いられる管電圧(kV)、管電流時間積(mAs)等の積算線量に関する条件が含まれる。また、管電流時間積は、管電流および照射時間の組合せであってもよい。プレ曝射における第1撮影条件等の撮影条件には、プレ曝射に用いられる管電圧(kV)、管電流時間積(mAs)等の積算線量範囲に関する条件が含まれる。また、管電流時間積は、管電流および照射時間の組み合わせであっても良い。
【0039】
プレ曝射における第1撮影条件は、プレ曝射において適切に撮影が可能となる撮影条件であり、被写体の検査条件毎に設定されている。記憶部33には、被写体の検査条件毎に関連付けられた、複数の第1撮影条件が記載されたテーブルが記憶されている。例えば、図4には、撮影部位および撮影方向に関連付けられた管電圧の範囲および管電流時間積の上限値が記載されたテーブルが例示されている。
【0040】
制御部31は、記憶部33のテーブルを参照して、複数の第1撮影条件の中から被写体の検査条件に対応した第1撮影条件を選択する。例えば、ユーザーによって胸部、正面、管電圧120kV、管電流時間積15mAsが入力された場合、制御部31は、図4に示すテーブルの中から、胸部、正面、管電圧の範囲100kV以上となるNo.2の第1撮影条件を取得する。
【0041】
そして、制御部31は、被写体の撮影条件として入力された第2撮影条件と、取得した第1撮影条件との適合性に基づく制御を行う。つまり、制御部31は、被写体における、ユーザーによる第2撮影条件が、第1撮影条件の範囲に入るようにユーザーを支援するための制御を行う。具体的には、制御部31は、第1撮影条件と第2撮影条件とを比較し、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っているか否かについて判定する。
【0042】
上記の場合、ユーザーによって入力された管電流時間積が15mAsである一方、No.2の第1撮影条件における、管電流時間積の上限値は、10mAsである。そのため、制御部31は、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っていないと判定する。
【0043】
制御部31は、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入らない場合、放射線撮影装置2による曝射および当該曝射における曝射画像の生成を禁止し、ユーザーに対して警告指令を出力する。警告指令は、例えば、表示部34等に表示されるようなユーザーの視覚に作用する装置の動作に関する指令でも良いし、操作部35に振動等で付与するようなユーザーの触覚に作用する装置の動作に関する指令でも良い。
【0044】
こうすることで、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入らないことをユーザーに気付かせることができる。その結果、ユーザーによる第2撮影条件が、プレ曝射における第1撮影条件の範囲に入るようにユーザーを導くことができ、ひいては最適な条件によってプレ曝射を行うことができる。
【0045】
ユーザーの視覚に作用する装置の動作に関する指令としては、例えば、装置の動作のためにユーザーが使用するハンドスイッチのライトの色を警告専用の色に変更する動作指令等が挙げられる。また、ユーザーの触覚に作用する装置の動作に関する指令としては、当該ハンドスイッチにバイブレーション機能を設けて、警告時にバイブレーションを動作させる指令やバイブレーションの振動パターンを変更させる動作指令等が挙げられる。ユーザーはハンドスイッチを押下する際に、被写体が撮影に適切な状態にあるかを注視している事が多い。そのため、ユーザーの手元にあるハンドスイッチでユーザーに通知することで、表示部34のみでユーザーに通知するよりも、少ない視線移動で通知の有無を知る事ができ、作業性を高めることができる。また、表示部34とハンドスイッチの両方でユーザーに通知してもよい。例えば、ハンドスイッチからは範囲に入っていない事のみの簡易な情報をユーザーに通知し、表示部34からは後述するようなハンドスイッチよりも詳細な情報もあわせてユーザーに通知する事で、ユーザーの少ない視線移動と、異常の原因と取るべき行動の正確な理解を両立することができ、作業性をさらに高めることができる。
【0046】
また、制御部31は、警告指令以外に、文字等で第1撮影条件の範囲外である旨を表示する指令や、音声等で第1撮影条件の範囲外である旨を伝達する指令等、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っているか否かの判定結果を通知するようにしても良い。
【0047】
また、制御部31は、取得した第1撮影条件の範囲をユーザーに通知するようにしても良い。具体的には、制御部31は、第1撮影条件の範囲を表示部34に表示するようにしても良い。例えば、図5には、管電圧の範囲、管電流の範囲、照射時間の範囲が表示部34に表示された例が示されている。
【0048】
この例では、矢印の位置が第2撮影条件の入力値を示しており、第1撮影条件の範囲外にドットが示されている。この例においては、入力値を増加させるボタンB1と、入力値を減少させるボタンB2とが表示されている。
【0049】
このようにすることで、ユーザーが第2撮影条件の入力値が第1撮影条件の範囲内であるかを容易に判断することができる。
【0050】
また、入力値を増減させるためのボタンB1,B2にも、そのボタンB1,B2を押下した後に第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入るか否かについて、ユーザーが判断可能な表示をしても良い。
【0051】
例えば、これ以上ボタンを押下すると、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲から外れる場合、そのボタンにドットを表示するようにしても良い。図6には、照射時間の入力値のボタンB1を押下して、入力値を増加させることで、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲から外れることをユーザーが判断可能な表示例が示されている。なお、図6に示す例は、図5に示す例に、図6に示す例に係るボタンB1,B2が適用されたものでも良いし、図5における管電圧の範囲等が表示されない例であっても良い。
【0052】
また、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲から外れている場合、ボタンを押下することによって、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に近づくことをユーザーが判断可能な表示をしても良い。
【0053】
例えば、図7には、照射時間の入力値のボタンB2を押下して入力値を減少させることで、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に近づくことをユーザーが判断可能な表示例が示されている。ボタンB2には、ハッチが表示されている。なお、図7に示す例は、図5に示す例に、図7に示す例に係るボタンB1,B2が適用されたものでも良いし、図5における管電圧の範囲等が表示されない例であっても良い。
【0054】
また、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入るまでに必要な、ボタンを押下する回数を表示するようにしても良い。例えば、3回ボタンを押下することで第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入る場合、「3」の数字をボタンの近傍に表示するようにしても良い。このように第2撮影条件が適切になる方向や不適切になる方向を示すことで、ユーザーは、適切な第2撮影条件を少ない操作で入力できるようになる。また、ユーザーが不適切な第2撮影条件を入力することを防ぐことができる。
【0055】
なお、プレ曝射を行わず、本曝射のみを行う制御の場合、撮影条件は、プレ曝射における第1撮影条件とは異なる条件が用いられる。
【0056】
次に、放射線撮影システム100の動作について説明する。図8は、撮影時における放射線撮影システム100の動作を示すラダーチャートである。
【0057】
コンソール3は、被検者の検査条件および第2撮影条件を取得する(ステップS101)。コンソール3は、取得した検査条件および第2撮影条件に基づいて、記憶部33から第1撮影条件を取得して、表示部34に表示する(ステップS102)。
【0058】
コンソール3は、第1撮影条件と第2撮影条件とを比較し、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲内であるか否かについて判定する(ステップS103)。判定の結果、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲内ではない場合(ステップS103、NO)、処理はステップS101に戻る。なお、コンソール3は、この際、ユーザーに警告を出力しても良い。
【0059】
一方、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲内である場合(ステップS103、YES)、コンソール3は、プレ曝射の撮影条件を放射線照射装置1および放射線撮影装置2に出力する(ステップS104)。
【0060】
放射線照射装置1は、プレ曝射の撮影条件が入力されると、そのプレ曝射の撮影条件を放射線照射装置1が持つ第5撮影条件の範囲と比較し、第5撮影条件の範囲内である場合、プレ曝射の撮影条件を設定し、プレ曝射を行うための準備を行う(ステップA1)。一般的には放射線照射装置1のジェネレーター11が対応している管電圧範囲、管電流範囲、管電流時間積範囲と、放射線源13が対応している管電圧範囲、管電流範囲、管電流時間積範囲のうちの範囲の狭い方が第5撮影条件になる。例えば、ジェネレーター11の管電圧範囲が50kVから150kVに対応し、放射線源13の管電圧範囲が40kVから125kVに対応している場合は、第5撮影条件の管電圧範囲は、50kVから125kVになる。これらの範囲は放射線照射装置1の性能に起因する制約であり、プレ曝射でも本曝射でも、共通の範囲が使われる為、プレ曝射に適切な撮影条件であるかどうかの判定は行えない。放射線撮影装置2は、プレ曝射の撮影条件が入力されると、そのプレ曝射の撮影条件を設定し、プレ曝射を行うための準備を行う(ステップB01)。
【0061】
その後、ユーザーによって曝射スイッチ12が押下されると、プレ曝射の撮影条件に基づいて、放射線照射装置1は、被検者および放射線撮影装置2に向けて放射線を曝射する(ステップA2)。
【0062】
放射線撮影装置2は、放射線の曝射を受けると、放射線の線量に基づいて各放射線検出素子が発生させた電荷を各画素に蓄積し、各画素の電荷量を信号値に変換してプレ画像データとして読み出し、当該プレ画像データをコンソール3に出力する(ステップB02)。
【0063】
コンソール3は、プレ画像データを取得し(ステップS105)、取得したプレ画像データに画像解析処理等を行うことにより、本曝射の撮影条件を算出して、当該撮影条件を放射線照射装置1および放射線撮影装置2に出力する(ステップS106)。
【0064】
放射線照射装置1および放射線撮影装置2は、本曝射の撮影条件が入力されると、その撮影条件をそれぞれ設定し、本曝射を行うための準備をそれぞれ行う(ステップA3,B03)。
【0065】
その後、ユーザーによって曝射スイッチ12が押下されると、本曝射の撮影条件に基づいて、放射線照射装置1は、被検者および放射線撮影装置2に向けて放射線を曝射する(ステップA4)。
【0066】
放射線撮影装置2は、放射線の曝射を受けると、放射線の線量に基づいて各放射線検出素子が発生させた電荷を各画素に蓄積し、各画素の電荷量を信号値に変換して本画像データとして読み出し、当該本画像データをコンソール3に出力する(ステップB04)。
【0067】
また、放射線撮影装置2は、各画素に暗電荷を蓄積し、各画素の暗電荷量を信号値に変換してオフセットデータとして読み出し、当該オフセットデータをコンソール3に出力する(ステップB05)。なお、ステップB05の処理はステップB04の前に行っても良い。
【0068】
コンソール3は、本画像データおよびオフセットデータを取得して(ステップS107)、所定の画像処理を行った後、上記のプレ画像データを用いて本画像データに画像合成処理を行う(ステップS108)。その後、放射線撮影システム100における撮影が終了する。
【0069】
なお、ステップS108では、プレ画像データと本画像データとを画像合成処理しているが、画像合成処理を行わない構成の場合、ステップS108の処理はなくても良い。ただし、プレ曝射での被曝線量を無駄に捨てずに患者の診断に活かす観点からすると、プレ画像データと本画像データとを画像合成処理する方が好ましい。
【0070】
以上のように構成された本実施の形態によれば、第2撮影条件が、プレ曝射における第1撮影条件の範囲に入るようにユーザーを支援するための制御を行うので、プレ曝射を最適な撮影条件で行うことができる。
【0071】
ここで、本曝射の前に行われるプレ曝射が適切ではない撮影条件で行われると、放射線撮影システム100による撮影が適切に行えない。
【0072】
例えば、プレ曝射における積算線量が大きすぎると、画素値が最大値に貼り付いてしまう画素が発生する。このような画素値は、最大値相当のものなのか、最大値よりも大きいものなのかが不明であるので、当該画素値を用いた場合、プレ曝射における線量を正確に算出することができないこととなる。
【0073】
また、プレ曝射における積算線量が小さすぎると、画素値のSN比が悪化するので、当該画素値を用いても、プレ曝射における線量を正確に算出することができないこととなる。これらのことから、プレ曝射における積算線量を適切な条件にする必要がある。
【0074】
また、プレ曝射における照射時間が短すぎると、一般的に当該照射時間が極端に短いと放射線の出力が不安定になることから、画素値から算出したプレ曝射の線量も不安定になり、その結果、本曝射における撮影条件も不安定になる。
【0075】
また、プレ曝射における照射時間が長すぎると、撮影開始から撮影終了までの被写体の体動は大きくなる傾向があることから、当該体動を一定以内におさめる必要がある撮影では、撮影失敗となる可能性が高くなる。
【0076】
これらのことから、プレ曝射における照射時間を適切な条件にする必要がある。
【0077】
また、プレ曝射における照射野が正確に調整されていないと、プレ曝射による線量を正確に算出することができないこととなる。
【0078】
以上のように、プレ曝射が適切ではない撮影条件で行われると、放射線撮影システム100における適切な撮影が行えず、被写体が無駄に被曝する可能性がある。
【0079】
本実施の形態では、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲内であるかを判定することにより、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入るようにユーザーを導くことができる。すなわち、本実施の形態では、プレ曝射を適切な撮影条件で行うことができ、その結果、本曝射による撮影を適切に行うことができる。
【0080】
また、第1撮影条件の範囲をユーザーに表示(通知)するので、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っているか否かをユーザーが容易に気付くことができる。
【0081】
なお、上記実施の形態では、図4に示すテーブルを参照して第1撮影条件を取得していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、図9に示すテーブルを参照して第1撮影条件を取得しても良い。
【0082】
このテーブルでは、撮影部位および撮影方向の組み合わせに、管電圧と、管電流時間積の上限値との組み合わせが関連付けられている。管電圧は、撮影部位および撮影方向の組み合わせのそれぞれにおいて、3つ設定されている。つまり、撮影部位および撮影方向の組み合わせ毎に、管電圧と、管電流時間積の上限値との組み合わせがそれぞれ3つ設定されている。
【0083】
このようなテーブルでは、線形補間により管電流時間積を算出することができる。例えば、検査条件が、撮影部位が胸部、撮影方向が正面である条件であり、第2撮影条件における管電圧が110kV、管電流時間積が12mAsであるとする。
【0084】
この場合、第2撮影条件における管電圧が、No.2における管電圧と、No.3における管電圧との間の値である。このことから、制御部31は、No.2における管電流時間積の上限値(30mAs)と、No.3における管電流時間積の上限値(10mAs)とを参照する。
【0085】
制御部31は、No.2における管電圧とNo.3における管電圧との差分の絶対値(120kV-80kV=40kV)と、No.3における管電圧と入力された管電圧との差分の絶対値(120kV-110kV=10kV)との第1比を算出する。第1比は、4:1となる。
【0086】
次に、制御部31はNo.2における管電流時間積の上限値とNo.3における管電流時間積の上限値との第1差分の絶対値と、110kVにおける管電流時間積の上限値とNo.3における管電流時間積の上限値との第2差分との第2比を算出する。第1差分は、30mAs-10mAs=20mAsとなる。
【0087】
第2比は、第1比と等しくなるので、第1差分が20mAs、第1比が4:1であることを考慮すると、第2差分は、5mAsとなる。No.3における管電流時間積の上限値が10mAsであることを考慮すると、110kVにおける管電流時間積は15mAsとなる。
【0088】
上記の第2撮影条件における管電流時間積は12mAsであるので、線形補間により算出された第1撮影条件である15mAsを下回る。その結果、制御部31は、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っていると判定する。撮影部位と撮影方向は多くの組合せが存在するため、組合せごとにテーブルを持つとデータサイズが非常に大きくなるが、このようにテーブルの値から第2撮影条件を算出すると、各テーブルのデータサイズを圧縮できる事からより安価なコンピュータを採用できて経済的である。さらに小さいデータサイズで精度の高い第2撮影条件の範囲を提供できる事から、結果としてユーザーの第1撮影条件の選択肢が増え、ユーザーはより所望の第1撮影条件で撮影できるようになる。
【0089】
また、図9に示すテーブルにおいては、線形補間以外の補間方法を用いても良い。
【0090】
また、上記実施の形態では、テーブルにおいて管電圧の範囲と管電流時間積の上限値との組み合わせを用いていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示すテーブルのように、管電圧の範囲、管電流時間積の上限値および管電流時間積の下限値の組み合わせを用いても良い。
【0091】
このようなテーブルにより、第1撮影条件の範囲に管電流時間積の下限値が設定されることで、放射線の積算線量が小さすぎるような第2撮影条件が第1撮影条件の範囲外と判定される。これにより、放射線の積算線量が小さく設定されることを抑制することができる。
【0092】
また、図11に示すテーブルのように、放射線照射装置1の種類と、照射時間とを関連付けたものを用いても良い。このテーブルでは、照射時間の下限値が装置の種類毎に関連付けられている。つまり、第2撮影条件および第1撮影条件には、プレ曝射における照射時間の条件が含まれる。
【0093】
装置の照射時間が極端に短くなると、放射線の出力が不安定になることが一般に知られている。そのため、第2撮影条件としての照射時間が短すぎると、プレ曝射による積算線量が不安定になり、ひいては本曝射による積算線量も不安定になる。
【0094】
そのため、使用する装置毎の照射時間の下限値が記載されたテーブルを参照することで、照射時間が短くなり過ぎることに起因する積算線量の不安定化を抑制することができ、ひいては積算線量を安定させることができる。また、使用する装置毎の差異を考慮した第1撮影条件とすることができる。
【0095】
また、第2撮影条件が管電流時間積である場合、コンソール3等によって管電流と照射時間とを分解し、分解した照射時間が上記テーブルにおける照射時間の下限値を下回らないようにすれば良い。
【0096】
また、体動が起きやすい撮影部位や、体動が起きやすい患者(例えば、小児や年配者)の撮影においては、放射線の安定性よりも照射時間の短縮を優先した方が、結果として撮影の失敗頻度を減らせる場合がある。このような場合は、撮影部位および患者属性と、照射時間の下限値とを関連付けたテーブルとすれば良い。
【0097】
また、照射時間を長くなるほど、撮影開始から撮影終了までに発生する患者(被写体)の体動は大きくなる。そのため、体動が起きやすい撮影部位や、体動が起きやすい患者(例えば、小児や年配者)の撮影では、撮影部位および患者属性と照射時間の上限値とを関連付けたテーブルを用いることで、照射時間の上限値を設定する。こうすることで、体動に起因した撮影の失敗頻度を低減することができる。
【0098】
このような体動影響を考慮した第1照射条件の決定は、プレ画像データを用いて本画像データに画像合成処理を行わない構成でも有効であるが、画像合成処理行う構成(上記図8に示すステップS108)では、プレ画像と本画像との間における被写体の幾何学的配置の変化を軽減でき、より精度の高い画像合成が可能になるため、特に有効である。
【0099】
また、図12に示すテーブルのように、撮影部位および撮影方向と、放射線撮影システムにおける照射野とを関連付けたテーブルを用いても良い。このテーブルには、照射野上側境界として撮影台の照射面中心から期待する照射野の上側境界までの距離、照射野下側境界として撮影台の照射面中心から期待する照射野の下側境界までの距離、照射野左側境界として撮影台の照射面中心から期待する照射野の左側境界までの距離、照射野右側境界として撮影台の照射面中心から期待する照射野の右側境界までの距離の4つの距離と、撮影部位および撮影方向とが関連付けられている。つまり、第2撮影条件および第1撮影条件には、放射線撮影システムにおける照射野に関する幾何学的配置に関する条件が含まれる。
【0100】
照射野内に積算線量導出に使用する幾何学的領域が含まれていない場合、積算線量を正確に算出できなくなり、ひいては本曝射による撮影条件が適切ではなくなる。
【0101】
例えば、プレ曝射におけるプレ画像データからROI(Region of Interest)を検出してROI内の画素値情報から積算線量を導出する構成の場合、照射野内にROIが収まっていることが望ましい。ROIは、撮影部位および撮影方向によって概ね範囲が定まるので、想定ROIが入る照射野境界を、撮影部位および撮影方向に関連付けてテーブルに記載することが可能である。
【0102】
制御部31は、例えば、撮影部位が胸部で、撮影方向が正面である場合、テーブルを参照してNo.1の照射野境界の情報を第1撮影条件として取得する。図13には、No.1の照射野境界の情報が撮影台に実線で示されている。
【0103】
制御部31は、第2撮影条件として、例えば放射線照射装置1に設けられるコリメーターから照射範囲の情報を取得する。例えば、照射野の中心から上方向に19cm、下方向に19cm、左方向に20cm、右方向に20cmの情報が得られたとする。
【0104】
放射線照射装置1は、管球の焦点位置および向きと撮影台照射面の中心位置の情報から、照射野の中心と、撮影台照射面の中心の相対位置を導出し、コンソール3に出力する。例えば、照射野の中心が撮影台照射面の中心から上方向に1cmずれており、横方向にずれてない等の情報である。
【0105】
上記の照射野範囲の情報が、照射野の中心と撮影台照射面の中心との相対位置を考慮して、破線の位置だったとする。この場合、第1撮影条件における照射野境界が、上記の第2撮影条件における照射野(破線)から、下方向に1cmはみ出すこととなる。そのため、制御部31は、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っていないと判定する。
【0106】
また、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入ってない場合、照射野の中に照射野境界が収まる、または、照射野が照射野境界よりも大きくなるように、コリメーターが設定される。つまり、制御部31は、照射野の幾何学的配置に基づいて照射野を制御する。プレ曝射におけるプレ画像データからROIを検出してROI内の画素値情報から積算線量を導出する構成の場合、撮影部位ごとに想定ROIが入る照射野境界が変化するため、撮影部位ごとの被写体境界を把握のユーザーの負担が高い。結果、ユーザーが不適切な照射野を設定する頻度が高くなる。それに対し、制御部31が照射野を制御することで、ユーザーの使い勝手を大きく改善できる。
【0107】
例えば、図14に示すように、照射野(破線)が照射野境界(実線)を完全に覆うように設定される。こうすることで、制御部31は、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っていると判定する。
【0108】
また、照射野の確認タイミングを、照射野が変更されてから一定時間経過後、または、曝射スイッチ12が押下された後、等とすることで、最新の照射野の情報を常にコンソール3において取得させることができる。これにより、ユーザーによる照射野変更に起因して第2撮影条件が第1撮影条件の範囲外と判定される頻度を低減させることができる。
【0109】
なお、図12に示すテーブルは、ユーザー(患者)の体格について言及されていなかったが、患者の体格に応じた照射野の境界に関するテーブルを複数用意し、患者の体格情報によってテーブルを切り替えるようにしても良い。
【0110】
また、上記の図4図9図10図11図12に示された各テーブルは、2つ以上を組み合わせて用いられても良い。
【0111】
また、撮影部位および撮影方向の他、被写体体圧、被写体体型、インプラントの有無、焦点受像器間距離、焦点皮膚間距離、放射線照射装置1の固有ろ過値、付加フィルタの有無、付加フィルタの種類、散乱線除去グリッドの有無および散乱線除去グリッドの種類等を、第1撮影条件に関連付けても良い。これら全ての条件を組み合わせたものをテーブルとしても良いし、また、これら全ての条件のうち、例えば最小となる条件を選択することによって、管電流時間積の上限値等を設定しても良い。こうすることで、ユーザーの撮影条件の選択の自由度を向上させることができる。
【0112】
これらの検査条件は、ユーザーによる入力以外の方法で取得されても良い。例えば、焦点受像器間距離、焦点皮膚間距離の場合、放射線照射装置1側で管球と撮影台の位置情報から導出されたもの、距離計測計で測定されたもの、撮影に使用する撮影台をユーザー操作から認識し、撮影台に紐付けられたもの等を制御部31が取得しても良い。また、立体撮影台なら、180cm、臥位撮影台なら100cm等、予め定められた値を焦点受像器間距離としても良い。
【0113】
また、付加フィルタの情報や散乱線除去グリッドの情報は、放射線照射装置1側で取得したものが用いられても良い。また、RISから患者情報に付帯した被写体体圧、被写体体型、インプラントの有無等の情報が用いられても良い。また、RISから患者情報に付帯した患者年齢をもとに決定した被写体体圧、被写体体型が用いられても良い。
【0114】
また、放射線撮影装置2の種類によって感度が異なったり、画素値のダイナミックレンジが異なる場合がある。また、1つの放射線撮影装置2の中に2種類の検出器(例えば、GosやCsI)が用いられる場合がある。これらの装置の差異は、管電流時間積の上限値に影響するので、装置の種類によって異なるテーブルを用いても良い。
【0115】
また、上記実施の形態では、プレ曝射時において、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲内であるか否かについて判定していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部31は、第2撮影条件がプレ曝射の第3撮影条件、および、本曝射の第4撮影条件の両方の範囲に入っているか否かについて判定しても良い。
【0116】
例えば、第2撮影条件として、プレ曝射および本曝射の両方で共通した管電圧および管電流が入力される構成の場合、プレ曝射および本曝射のそれぞれの照射時間をコンソール3等が決定することとなる。そして、コンソール3は、各照射時間と、入力された管電圧および管電流とに基づいて、管電流時間積(時間あたりの線量範囲)を算出して、プレ曝射および本曝射の両方に適した撮影条件であるか否かについて判定する。
【0117】
本曝射の照射時間についても、被写体の体動の影響を考慮すると、比較的短い方が好ましい。しかし、第2撮影条件における管電圧および管電流が比較的小さい値に設定された場合、本曝射における照射時間を長くとる必要が生じる。そこで、入力された管電圧および管電流に基づいて、本曝射における最適な照射時間(第4撮影条件)の範囲に入るか否かを判定するようにすることで、本曝射における照射時間を適切な条件にすることができる。
【0118】
また、制御部31は、第3撮影条件および第4撮影条件の両方を満たす範囲をユーザーに通知するようにしても良い。
【0119】
また、上記実施の形態では、ユーザーの入力によって第2撮影条件が設定されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、撮影部位および撮影方向等が入力されると、それらに紐付けられた管電圧および管電流時間積が自動で第2撮影条件として設定されても良いし、RISからの検査オーダーに基づいて、第2撮影条件が自動で設定されても良い。
【0120】
また、上記実施の形態では、制御部31が、プレ曝射における積算線量範囲、プレ曝射における照射時間、放射線撮影装置における照射野の幾何学的配置の何れかを第1撮影条件に含ませていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部31が、積算線量範囲、照射時間および照射野の幾何学的配置の2つ以上を、第1撮影条件に含ませても良い。
【0121】
また、上記実施の形態では、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲に入っていないと判定した後、ユーザーに第2撮影条件を再入力させていたが、本発明はこれに限定されず、装置が自動で第1撮影条件の範囲内に入るように第2撮影条件を再入力しても良い。この場合、再入力後の第2撮影条件をユーザーに通知するようにしても良い。こうすることで、第2撮影条件が第1撮影条件の範囲内に入るようにユーザーを支援することができる。
【0122】
また、上記実施の形態では、記憶部33に記憶されたテーブルを参照して第1撮影条件を取得していたが、本発明はこれに限定されず、外部の記憶装置に記憶された第1撮影条件を取得しても良い。
【0123】
また、上記実施の形態では、撮影制御装置が、放射線撮影システムに設けられたコンソールであったが、本発明はこれに限定されない。例えば、撮影制御装置は、放射線撮影システムとは異なる場所に設けられた外部の装置であっても良い。この場合、撮影制御装置は、例えば、無線通信等により第1撮影条件と第2撮影条件との適合性に基づく情報を放射線撮影システムに出力する。
【0124】
また、上記実施の形態では、撮影制御装置が放射線照射装置および放射線撮影装置とは別体で構成されていたが、本発明はこれに限定されず、放射線照射装置または放射線撮影装置に組み込まれていても良い。
【0125】
また、上記実施の形態では、撮影制御装置における制御部が、記憶部、表示部および操作部等と一体に構成されていたが、本発明はこれに限定されず、記憶部、表示部および操作部等と別体で構成されていても良い。また、この場合、制御部は例えば放射線照射装置に設けられていても良い。制御部が放射線照射装置に設けられる場合、放射線照射システムによっては、撮影条件の入力受付を放射線照射装置側で行い、画像処理をコンソール等で行う。
【0126】
また、上記実施の形態では、1回のプレ曝射の後に1回の本曝射を行う構成とされていたが、本発明はこれに限定されず、1回のプレ曝射の後に、複数回の本曝射を行う構成であってもよい。この場合、制御部31は、プレ曝射により得られたプレ曝射画像およびプレ曝射画像に紐付けられた付帯情報に基づいて複数回の本曝射を行う際の撮影条件を決定する自動露出制御を行う。
【0127】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 放射線照射装置
2 放射線撮影装置
3 コンソール
11 ジェネレーター
12 曝射スイッチ
13 放射線源
21 撮影制御部
22 放射線検出部
23 読出部
24 通信部
25 記憶部
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
100 放射線撮影システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14