(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】医療用留置具搬送装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20240806BHJP
A61M 29/02 20060101ALI20240806BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240806BHJP
A61F 2/07 20130101ALI20240806BHJP
【FI】
A61F2/966
A61M29/02
A61M25/00 540
A61F2/07
(21)【出願番号】P 2020031474
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉原 章仙
(72)【発明者】
【氏名】兼政 賢一
(72)【発明者】
【氏名】澤井 博
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】横田 喜正
(72)【発明者】
【氏名】金田 妙子
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137271(JP,A)
【文献】特表2014-530689(JP,A)
【文献】特表2013-526935(JP,A)
【文献】特表2007-529281(JP,A)
【文献】特開2012-065933(JP,A)
【文献】特表2015-514547(JP,A)
【文献】特表2013-541366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 29/02
A61M 25/00
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺で可撓性を有し、体内に留置する医療用の自己拡開式の留置具を保持する管状本体と、
該管状本体に摺動可能に挿通され、施術者が牽引することによって前記管状本体の遠位部を屈曲させることが可能な操作線と、
前記留置具を押し出して前記管状本体の前記遠位部から前記留置具の
遠位端部を突出させる予備展開機構と、
前記管状本体から前記留置具を脱離させて被検者の体内に留置する際に、前記留置具を展開させる展開機構と、
前記管状本体の周面の一部を支持する装置本体部と、
を備え、
前記操作線の遠位端部は、前記管状本体の前記遠位部に直接的又は間接的に固定され、前記操作線の近位端部は、前記装置本体部に直接的又は間接的に保持されており、
前記予備展開機構は、
前記施術者の操作により、前記管状本体の長尺方向の遠位側に前記管状本体に対して動作可能な操作部と、
該操作部に接続され、前記留置具の近位端に接続されたプッシュユニットと、
前記操作部と前記装置本体部との間に設けられ、前記装置本体部に対する前記操作部の遠位側への移動を、弾性復元による付勢力によってアシストする弾性部材と、
前記施術者の操作により、前記操作部と前記装置本体部とをロックしたロック状態から前記操作部と前記装置本体部とのロックが解除されたロック解除状態に切り替わるロック機構と、
を備え、
前記操作部には、前記装置本体部に対する遠位側への当該操作部の摺動を可能とするスライド部が設けられており、
前記予備展開機構を用いた前記留置具の押し出し動作は、前記操作部に対する前記施術者の操作により前記操作部を前記管状本体に対して遠位側に移動させることによって、前記プッシュユニットを前記管状本体に対して遠位方向に移動させ、その移動により前記プッシュユニットが前記留置具を遠位側に押圧することによって、前記留置具が前記管状本体に対して遠位方向に移動し、前記留置具の遠位端部が前記管状本体から露出する動作であり、
前記押し出し動作の際に、前記施術者の操作により前記ロック機構が前記ロック状態から前記ロック解除状態に切り替えられることにより、前記弾性部材が弾性復元し、前記装置本体部に対する前記操作部の遠位側への移動が前記弾性部材によりアシストされる医療用留置具搬送装置。
【請求項2】
前記操作線を牽引可能な牽引機構を更に備え、
前記プッシュユニットは、前記装置本体部の内部において、前記管状本体の長尺方向に前記牽引機構を通って配設されている請求項
1に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項3】
ガイドワイヤを通すことが可能なインナーシースを更に備え、
前記プッシュユニットは、長尺方向に延在する貫通孔を有し、
前記インナーシースは、前記貫通孔を通って配設されている請求項
1又は
2に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項4】
長尺で可撓性を有し、体内に留置する医療用の自己拡開式の留置具を保持する管状本体と、
該管状本体に摺動可能に挿通され、施術者が押し込むことによって前記管状本体の遠位部を屈曲させることが可能な操作線と、
前記留置具を押し出して前記管状本体の
前記遠位部から前記留置具の
遠位端部を突出させる予備展開機構と、
前記管状本体から前記留置具を脱離させて被検者の体内に留置する際に、前記留置具を展開させる展開機構と、
前記管状本体の周面の一部を支持する装置本体部と、
を備え、
前記操作線の遠位端部は、前記管状本体の前記遠位部に直接的又は間接的に固定され、前記操作線の近位端部は、前記装置本体部に直接的又は間接的に保持されており、
前記予備展開機構は、
前記施術者の操作により、前記管状本体の長尺方向の遠位側に前記管状本体に対して動作可能な操作部と、
該操作部に接続され、前記留置具の近位端に接続されたプッシュユニットと、
前記操作部と前記装置本体部との間に設けられ、前記装置本体部に対する前記操作部の遠位側への移動を、弾性復元による付勢力によってアシストする弾性部材と、
前記施術者の操作により、前記操作部と前記装置本体部とをロックしたロック状態から前記操作部と前記装置本体部とのロックが解除されたロック解除状態に切り替わるロック機構と、
を備え、
前記操作部には、前記装置本体部に対する遠位側への当該操作部の摺動を可能とするスライド部が設けられており、
前記予備展開機構を用いた前記留置具の押し出し動作は、前記操作部に対する前記施術者の操作により前記操作部を前記管状本体に対して遠位側に移動させることによって、前記プッシュユニットを前記管状本体に対して遠位方向に移動させ、その移動により前記プッシュユニットが前記留置具を遠位側に押圧することによって、前記留置具が前記管状本体に対して遠位方向に移動し、前記留置具の遠位端部が前記管状本体から露出する動作であり、
前記押し出し動作の際に、前記施術者の操作により前記ロック機構が前記ロック状態から前記ロック解除状態に切り替えられることにより、前記弾性部材が弾性復元し、前記装置本体部に対する前記操作部の遠位側への移動が前記弾性部材によりアシストされる医療用留置具搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用留置具搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用に体内に留置される留置具として、ステントやステントグラフト等がある。
ステントは、生体管腔内に生じた狭窄部や閉塞部、癒着部(以下、「狭窄部等」という場合がある。)等に留置して用いられる。ステントは一般に拡張可能な網目状の小さな金属製の筒として形成される。
【0003】
ステントグラフトは、金属製の網目状に形成されたステントに人工血管(グラフト)を一体化して作成された筒状の留置具である。ステントグラフトは、狭窄部等の他、腹部や胸部の大動脈瘤などの内部に留置して用いられる。ステントグラフトによれば、グラフト内に血液を流すことができ、グラフト外にある大動脈瘤に血圧がかからなくなり大動脈瘤の破裂を予防することができる。
【0004】
ステントやステントグラフトは、カテーテルシャフトやシースなどと呼ばれる長尺で可撓性の管状本体の遠位部に装着されて生体管腔に導入される。
【0005】
例えば、特許文献1には、ステントグラフトを血管内にデリバリーする医療用留置具搬送装置(同文献には、ステントグラフト留置装置と記載。)が記載されている。
特許文献1に記載の医療用留置具搬送装置は、細径部にステントグラフトが取り付けられるプッシャー(同文献には、ダイレータと記載。)と、ステントグラフトの外周に装着されるシースと、ステントグラフトの挿入角度や留置位置を調整する操作線(同文献には、ワイヤと記載。)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の医療用留置具搬送装置において、先端部が屈曲したシースからステントグラフトを展開する際に、シースの屈曲度が大きくなるように、シースが振れてしまうことがあった。
【0008】
例えば、
図17において、搬送装置100を模式的に示すように、操作線400Xを引くことによりシース300の先端部300bが屈曲した状態で、シース300を近位側に引いたときに、ステントグラフト200から加わる摩擦力により、シース300の屈曲度が大きくなることがあった。
このため、シース300に沿って放出されるステントグラフト200を所望の位置に留置することについて、改善の余地があった。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、留置具を所望の位置に留置することが可能な医療用留置具搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の医療用留置具搬送装置は、長尺で可撓性を有し、体内に留置する医療用の自己拡開式の留置具を保持する管状本体と、該管状本体に摺動可能に挿通され、施術者が牽引することによって前記管状本体の遠位部を屈曲させることが可能な操作線と、前記留置具を押し出して前記管状本体の前記遠位部から前記留置具の遠位端部を突出させる予備展開機構と、前記管状本体から前記留置具を脱離させて被検者の体内に留置する際に、前記留置具を展開させる展開機構と、前記管状本体の周面の一部を支持する装置本体部と、を備え、前記操作線の遠位端部は、前記管状本体の前記遠位部に直接的又は間接的に固定され、前記操作線の近位端部は、前記装置本体部に直接的又は間接的に保持されており、前記予備展開機構は、前記施術者の操作により、前記管状本体の長尺方向の遠位側に前記管状本体に対して動作可能な操作部と、該操作部に接続され、前記留置具の近位端に接続されたプッシュユニットと、前記操作部と前記装置本体部との間に設けられ、前記装置本体部に対する前記操作部の遠位側への移動を、弾性復元による付勢力によってアシストする弾性部材と、前記施術者の操作により、前記操作部と前記操作本体部とをロックしたロック状態から前記操作部と前記操作本体部とのロックが解除されたロック解除状態に切り替わるロック機構と、を備え、前記操作部には、前記装置本体部に対する遠位側への当該操作部の摺動を可能とするスライド部が設けられており、前記予備展開機構を用いた前記留置具の押し出し動作は、前記操作部に対する前記施術者の操作により前記操作部を前記管状本体に対して遠位側に移動させることによって、前記プッシュユニットを前記管状本体に対して遠位方向に移動させ、その移動により前記プッシュユニットが前記留置具を遠位側に押圧することによって、前記留置具が前記管状本体に対して遠位方向に移動し、前記留置具の遠位端部が前記管状本体から露出する動作であり、前記押し出し動作の際に、前記施術者の操作により前記ロック機構が前記ロック状態から前記ロック解除状態に切り替えられることにより、前記弾性部材が弾性復元し、前記装置本体部に対する前記操作部の遠位側への移動が前記弾性部材によりアシストされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医療用留置具搬送装置によれば、留置具を所望の位置に留置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る搬送装置の初期状態(ステントグラフトがアウターシース内にすべて収容されている状態)を示す模式的な説明図である。
【
図2】搬送装置の予備展開状態(予備展開機構が動作することにより、ステントグラフトの遠位端部がアウターシースから露出した状態)を示す模式的な説明図である。
【
図3】アウターウォームを軸心周りに回転させて、シースの先端部を屈曲させている状態を示す搬送装置の模式的な説明図である。
【
図4】揺動アームの爪部をアウターウォームに螺合させて、ステントグラフトを展開させる際の動作を説明する搬送装置の模式的な説明図である。
【
図5】ステントグラフトを完全に展開した状態を示す搬送装置の模式的な説明図である。
【
図6】アウターシースを初期状態の位置に戻した状態を示す搬送装置の模式的な説明図である。
【
図7】予備展開機構を初期状態の位置に戻した状態を示す搬送装置の模式的な説明図である。
【
図11】アウターシースを引いてステントグラフトを展開させたときのシースの撓みの変化の推移を示す図であり、(a)は、ステントグラフトを予備展開させずに、シースの先端部を30度曲げた状態から、アウターシースを引いたときの図である。(b)は、ステントグラフトを予備展開させた後に、シースの先端部を30度曲げた状態から、アウターシースを引いたときの図である。
【
図12】第1変形例に係る操作部を示す図であり、(a)は、圧縮ばねが圧縮している初期状態を示す模式的な説明図、(b)は、圧縮ばねが拡張している予備展開状態を示す模式的な説明図である。
【
図13】第2変形例に係る操作部を示す模式図である。
【
図14】第3変形例に係る操作部を示す模式図である。
【
図15】第4変形例に係る操作部を示す模式図であり、(a)は、初期状態を示す模式的な説明図、(b)は、ステントグラフトを予備展開させたときの模式的な説明図である。
【
図16】第5変形例に係る操作部を示す模式図であり、(a)は、初期状態を示す模式的な説明図、(b)は、ステントグラフトを予備展開させたときの模式的な説明図である。
【
図17】従来の搬送装置からステントグラフトを展開するときの挙動を模式図に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
<概要>
はじめに、本実施形態に係る医療用留置具搬送装置(搬送装置1)の概要を、
図1及び
図2を主に参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る搬送装置1の初期状態(ステントグラフト2がアウターシース3Y内にすべて収容されている状態)を示す模式的な説明図である。
図2は、搬送装置1の予備展開状態(予備展開機構PDが動作することにより、ステントグラフト2の遠位端部がアウターシース3Yから露出した状態)を示す模式的な説明図である。
【0015】
なお、
図1及び
図2等の図面において、後述するインナーウォーム12とインナーシース3X及びパイプガイド6Xとは、重なって示されている。
実際には、インナーウォーム12の中心部に貫通孔が形成されており、この貫通孔をインナーシース3X及びパイプガイド6Xが挿通している。このように構成されていることで、インナーウォーム12とインナーシース3X及びパイプガイド6Xとは、軸線方向において独立して動作するように構成されている。
【0016】
本実施形態に係る搬送装置1は、長尺で可撓性を有し、体内に留置する医療用の自己拡開式の留置具(ステントグラフト2)を保持する管状本体(シース3)と、シース3に摺動可能に挿通され、施術者が牽引することによってシース3(アウターシース3Y)の遠位部(シース3の先端部3bb、アウターシース3Yの遠位部3Ya)を屈曲させることが可能な操作線4と、ステントグラフト2を押し出してシース3の先端部3bbからステントグラフト2の一部を突出させる予備展開機構PDと、シース3からステントグラフト2を脱離させて被検者の体内に留置する際に、ステントグラフト2を展開させる展開機構DMと、を備える。
予備展開機構PDは、ステントグラフト2を押し出したときのステントグラフト2の動作量よりも操作線4の動作量を小さく抑えることを特徴とする。
【0017】
上記の「留置具」としては、シース3に保持されて、被験者の体内に留置されるものであればよく、ステントグラフト2の他、不図示の樹脂膜のカバーを有しないベアステントや、人工弁その他の生体管腔内に留置される留置具が含まれるものとする。
上記の「屈曲」には、鋭敏に曲がった状態の他に、緩やかに曲がった状態である湾曲が含まれるものとする。
【0018】
なお、上記の「ステントグラフト2の動作量」とは、シース3に対するステントグラフト2の相対的な動作量を意味し、「操作線4の動作量」とは、シース3に対する操作線4の相対的な動作量を意味する。
予備展開機構PDは、ステントグラフト2を押し出し、操作線4に接続されたシース3に作用しない。つまり、予備展開機構PDは、操作線4を直接的に動作させずに、ステントグラフト2を動作させる。
厳密には、「操作線4の動作量」は、ステントグラフト2及びステントグラフト2を押し出すもの(後述するプッシャー6)からアウターシース3Yが受ける摩擦によって動作する程度で、「ステントグラフト2の動作量」に対して非常に小さいものとなる。
つまり、「操作線4を直接的に動作させる」には、予備展開機構PDが操作線4の他の部位を動作させることによって、当該他の部位との摩擦力によって操作線4が動作することが含まれないものとする。
【0019】
上記構成によれば、予備展開機構PDにより、操作線4の動作量を小さく抑えて留置具(ステントグラフト2)を押し出してその一部を管状本体(シース3)の遠位部(先端部3bb)から突出させることができる。
【0020】
このような構成によれば、ステントグラフト2がシース3から突出する初期段階において操作線4の牽引量が大きく変動することによって、シース3が大きく振れることを抑制することができる。このため、展開機構DMによりステントグラフト2を脱離させる際に所望の位置にステントグラフト2を留置しやすくなる。
なお、留置具(ステントグラフト2)を備える搬送装置1を、留置具付き医療用留置具搬送装置D1ともいう。
【0021】
<搬送装置の作用・機能について>
まず、搬送装置1の作用・機能について、
図1及び
図2に加え、
図3から
図7を主に参照して説明する。各部の構成の詳細については後述する。
図3は、アウターウォーム13を軸心周りに回転させて、シース3の先端部3bbを屈曲させている状態を示す搬送装置1の模式的な説明図である。
図4は、揺動アーム14の爪部14aをアウターウォーム13に螺合させて、ステントグラフト2を展開させる際の動作を説明する搬送装置1の模式的な説明図である。
図5は、ステントグラフト2を完全に展開した状態を示す搬送装置1の模式的な説明図である。
図6は、アウターシース3Yを初期状態の位置に戻した状態を示す搬送装置1の模式的な説明図、
図7は、予備展開機構PDを初期状態の位置に戻した状態を示す搬送装置1の模式的な説明図である。
【0022】
なお、
図4(c)、
図5及び
図6(a)においては、補強層31eの厚みがないように示しているが、実際には、補強層31eを形成するメッシュ分の厚みがある。また、
図7及び後述する
図8においては、補強層31eのメッシュ表示を省略し、簡略化して示している。
【0023】
施術者は、
図1に示すように、ステントグラフト2が完全に先端部3bb内(インナーシース3Xとアウターシース3Yとの間)に収めた状態のシース3を、施術者は、例えば被験者の太腿からシース3の遠位端部を挿し込む。施術者は、このシース3を、例えば大動脈瘤の近傍の位置でありステントグラフト2を留置する位置よりも近位側の位置まで挿し込む。
【0024】
[予備展開操作]
次に、施術者は、
図2に示すように、予備展開機構PDを動作させて、ステントグラフト2の遠位端部をシース3(アウターシース3Y)の先端部3bb(遠位部3Ya)から露出させる。
具体的には、施術者は、予備展開機構PDを構成する可動ブロック10aを、装置本体部8の近位部8Xの近位端に近接させるように遠位方向に移動させる。このようにすると、可動ブロック10aに接続されたY型コネクタ22を介してインナーシース3X及びプッシュユニット11が遠位方向に移動する。
そして、プッシュユニット11によって遠位側に押圧されるステントグラフト2が、アウターシース3Yに対して遠位方向に移動して、アウターシース3Yの遠位部3Yaから露出することになる。
【0025】
ステントグラフト2の先端部をアウターシース3Yから露出させる際に、仮にアウターシース3Yを牽引した場合には、操作線4からアウターシース3Yに加わる荷重の位置がずれ、シース3の先端部3bbがより屈曲することがあった。
上記のように、ステントグラフト2の一部を予備展開する際に、アウターシース3Yを引かずに、プッシュユニット11を押し込むことで、アウターシース3Yの遠位部3Yaの振れを抑えてステントグラフト2の先端部を好適に露出させることができる。
例えば、操作線4によりシース3の先端部3bbを屈曲させた状態で、操作線4が含まれているアウターシース3Yを動かさずに、ステントグラフト2の先端部をアウターシース3Yから露出させることができる。
【0026】
[牽引操作]
さらに、施術者は、
図3に示すように、シース3を挿し込む部位(例えば大動脈弓)に、シース3が沿って位置するように、シース3の先端部3bbを屈曲させる。
具体的には、施術者は、牽引機構PMを動作させて、アウターシース3Yの遠位部3Yaに遠位部を固定された操作線4を引いて、アウターシース3Yを含むシース3を屈曲させる。
【0027】
更に詳細には、施術者は、アウターウォーム13を遠近方向に移動させずに、近位側ハンドル部13X又は遠位側ハンドル部13Zを摘んで、アウターウォーム13を、その軸線を中心とした周方向に回転させる。すると、アウターウォーム13の内周ねじ13aに螺合するインナーウォーム12が、遠近方向に移動することになる。本実施形態においては、近位側から見て反時計回りにアウターウォーム13を回転させると、インナーウォーム12が遠位側に移動する。一方で、近位側から見て時計回りにアウターウォーム13を回転させると、インナーウォーム12が近位側に移動する。
【0028】
詳細については後述するが、インナーウォーム12は、パイプガイド6X等によって周方向の回転が制限されていることで、回転するアウターウォーム13の内周ねじ13aに押されて、遠近方向に移動する。このように移動するインナーウォーム12は、近位側に移動することでインナーウォーム12に近位端部4aを固定された操作線4を牽引し、近位側から遠位側に移動することで、牽引している操作線4を緩めることになる。
【0029】
操作線4が牽引されると、操作線4の遠位端部を固定(又は不図示のリングを介して固定)されたアウターシース3Yが引っ張られて遠位部3Yaが屈曲する。逆に、操作線4が緩められると、アウターシース3Yの引張力が弱まり、遠位部3Yaの屈曲量が小さくなる。
なお、不図示のロック機構によって、アウターウォーム13の遠近方向の移動を制限するようにしてもよい。
【0030】
[展開操作]
次に、施術者は、ステントグラフト2をアウターウォーム13から展開させる動作を行う。詳細には、施術者は、
図4に示すように、まず、不図示のアウターウォーム13の遠近方向の移動を制限するロック機構を解除する。その後、施術者は、揺動アーム14の爪部14aがアウターウォーム13の外周ねじ13bに螺合するように、スライド片15を近位側に移動させて、スライド片15で揺動アーム14を押圧して屈曲させる。
【0031】
そして、施術者は、近位側ハンドル部13X又は遠位側ハンドル部13Zを摘んで、アウターウォーム13を、その軸線を中心とした周方向(近位側から見て反時計回り)に回転させる。
すると、爪部14aに外周ねじ13bが螺合していることにより、アウターウォーム13の反時計回りの回転によって、アウターウォーム13は近位側に移動することになる。
アウターウォーム13の近位側の移動に伴って、アウターウォーム13に接続されたアウターシース3Yは、近位側に移動し、プッシャー6によって近位側への移動を制限されたステントグラフト2を遠位側から近位側へと徐々に露出させることになる。
【0032】
また、アウターウォーム13が反時計回りに回転したときに、アウターウォーム13の内周ねじ13aがインナーウォーム12(の外面)に螺合していることにより、インナーウォーム12は、アウターウォーム13に対して相対的に遠位側に移動することになる。
このため、インナーウォーム12に固定された操作線4の近位端部は、アウターシース3Yの遠位部3Yaに固定された操作線4の遠位端部に近づくことになる。
【0033】
したがって、操作線4のアウターシース3Yへの牽引力は、施術者がアウターウォーム13を反時計回りに回転させるに従って、換言すると、アウターウォーム13を介してアウターシース3Yを近位側に移動させるに従って、弱まることになる。
つまり、アウターシース3Yを近位側に移動させて、ステントグラフト2を露出させながら、先端部3bbの屈曲量を小さくすることができる。
【0034】
屈曲した状態にあるシース3に収容されているステントグラフト2の屈曲角度は、近位側に向かうにつれて小さくなる。屈曲した状態にあるシース3から屈曲した状態にあるステントグラフト2を展開する際には、ステントグラフト2の屈曲角度に合わせて、アウターシース3Yを近位側に移動させつつ、アウターシース3Yを牽引する操作線4の牽引力を弱めるようにするとよい。このようにすることで、ステントグラフト2を所望の位置に所望の形状で留置することができる。
【0035】
施術者は、アウターウォーム13を更に反時計回りに回転させて、爪部14aとアウターウォーム13の外周ねじ13bとの螺合が解除される位置まで、アウターウォーム13を移動させる。ここで、爪部14aとアウターウォーム13の外周ねじ13bとの螺合が解除される位置とは、揺動アーム14の爪部14aがアウターウォーム13における外周ねじ13bよりも遠方の部位に対向する位置である。この位置は、換言すると、爪部14aが外周ねじ13bの遠位端部から外れる位置である。
施術者は、上記のように螺合を解除すると、アウターウォーム13を近位側に自由に移動させることが可能となり、装置本体部8の近位部8X内にある収納部8Xa内に、アウターウォーム13を移動させて、ステントグラフト2のすべてを展開できる位置までステントグラフト2を露出させる。そして、施術者は、不図示のトリガーワイヤを牽引して不図示の縫合糸を解き、
図5に示すように、ステントグラフト2を径方向に弾性復元させて、所望の位置にステントグラフト2を留置させる。
【0036】
[取出し操作]
次に、施術者は、シース3を体内からスムーズに除去するために、
図6に示すように、アウターウォーム13を遠位側に移動させて、アウターウォーム13に接続されたアウターシース3Yを遠位側に移動させる。
そして、施術者は、
図7に示すように、予備展開機構PDを構成する可動ブロック10aを近位部8Xから近位側に離間させる。可動ブロック10aがこのように近位側に移動すると、可動ブロック10aに間接的に接続されたインナーシース3Xが近位側に移動して、インナーシース3Xがアウターシース3Y内に収容される。そして、インナーシース3Xに固定された先端チップ5がアウターシース3Yに密着する。
施術者は、このように先端チップ5がアウターシース3Yに密着した状態にして、シース3を体内からスムーズに体外に取り出すことができる。
【0037】
[その他]
上記においては、シース3の先端部3bbを屈曲させる前の留置部位の位置合わせの段階で、ステントグラフト2の先端をアウターシース3Yから予備展開するものとして説明した。このような構成によれば、予備展開時にステントグラフト2からシース3の先端部3bbに加わる荷重によって先端部3bbがより屈曲する現象が生じることを回避できる。
しかしながら、本発明はこのような手法に限定されず、上記現象によるステントグラフト2の留置位置のずれの影響が小さいのであれば、シース3の先端部3bbを曲げた状態で、ステントグラフト2を予備展開させるようにしてもよい。
【0038】
<搬送装置の各部の構成の詳細について>
次に、搬送装置1の各部の構成の詳細について、
図1から
図7に加え、
図8から
図10を主に参照して説明する。
図8は、
図7のVIII-VIII断面図、
図9は、
図7のIX部を拡大して示す説明図、
図10は、
図7のX方向矢視図である。
【0039】
シース3は、インナーシース3Xと、インナーシース3Xの先端側一部の径方向外側を覆うアウターシース3Yと、から構成されている。
シース3の材料としては熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。この熱可塑性ポリマー材料としては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などのナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリプロピレン(PP)を挙げることができる。
【0040】
[インナーシース]
本実施形態に係るインナーシース3Xは、
図8に示すように、不図示のトリガーワイヤを通す筒状のインナーシース3Xaと、不図示のガイドワイヤを通す筒状のインナーシース3Xbと、の2本によって構成されている。
ここで、不図示のトリガーワイヤは、ステントグラフト2先端のベアステント部を完全に展開するときに、ベアステント部に拘束している不図示の縫合糸を解くためのワイヤである。不図示のガイドワイヤは、シース3を血管内に挿入する際に、先行して血管内に通されるものであり、シース3の先端部を病変部にガイドするものである。
【0041】
本実施形態に係るステントグラフト2は、仕様上の最大展開力が40Nであり、外径が34mmで130mmの長さを有する。
インナーシース3Xの基端側は、
図10に示すように、後述するステンレス鋼製のパイプガイド6X内に収容されており、インナーシース3Xの先端側の少なくとも一部は、
図8に示すように、プッシャー6の軸心部分に形成された貫通孔6c内に収容されている。
【0042】
上記のように、インナーシース3Xは、インナーシース3Xa、3Xbによって構成されるものであるが、図示の簡略化して理解を容易にするため、
図8以外の他の図においては、インナーシース3Xとして一体的に示している。
なお、本発明に係るインナーシース3Xは、このような構成に限定されず、ガイドワイヤを通すルーメンと、トリガーワイヤを通すルーメンと、が形成された一つのシースであってもよい。
【0043】
インナーシース3Xの先端には、先端チップ5が接合されている。先端チップ5は、シース3(アウターシース3Y)が血管内を走行する際に血管を損傷しないように、アウターシース3Yの先端を保護するものである。
【0044】
[アウターシース]
本実施形態に係るアウターシース3Yは、
図8に示すように周方向において肉厚が均一ではなく、シース3において最も外側にあるチューブである。アウターシース3Yの厚肉部分には、ルーメン3Ybが軸心方向に沿って形成されている。ルーメン3Ybには、操作線4が収容されている。
施術者が操作線4を引っ張ると、シース3の先端部3bbに引張量に応じた大きさの負荷がかかって、先端部3bbが負荷に応じた屈曲量で曲がる。
また、
図9に示すように、アウターシース3Yの近位端部には、コネクタ3cが取り付けられており、アウターウォーム13の先端部(遠位側片13eと係合片13gとの間)に係合している。
【0045】
コネクタ3cは、遠近方向に移動可能な後述するアウターウォーム13に係合することにより、ステントグラフト2の展開時にアウターシース3Yを近位側にスライドさせ、抜去時に遠位側にスライドさせることを可能とする。
コネクタ3cは、アウターシース3Yの近位端部が取り付けられる筒状部3caと、筒状部3caの近位側端部に設けられた貫通孔付きの鍔部3cbと、を備えて構成されている。鍔部3cbが、後述するアウターウォーム13の遠位端部に設けられた遠位側片13eと、遠位側片13eから近位側に空間をおいて設けられた係合片13gとの間に径方向外側の端部が入り込んでいる。このようにして、コネクタ3c(アウターシース3Y)とアウターウォーム13が係合しており、アウターシース3Yとアウターウォーム13との係合部分は、周方向に自由に回転可能に接続されている。
【0046】
後述する装置本体部8の遠位部8Zに、シース3(アウターシース3Y)のキンク(折れ)を防止するプロテクタ9が嵌合している。プロテクタ9は、遠位端側が筒状に形成されており、近位端に径方向に広がる鍔部を有する。プロテクタ9の鍔部が装置本体部8の遠位部8Zに埋設されるようにして、プロテクタ9は遠位部8Zに嵌合している。
【0047】
操作線4は、シース3の先端部3bbを偏心した位置で牽引することにより、シース3を屈曲させるものである。
操作線4の遠位端部は、シース3(アウターシース3Y)の遠位部(先端部3bb、遠位部3Ya)に直接的又は間接的に固定されている。
【0048】
本実施形態に係る操作線4の遠位端部は、アウターシース3Yの先端に設けられたステンレス鋼製の不図示のリングに固定されており、近位端部がアウターシース3Y内からサイドホールを介して外部に出された先で(
図9参照。)、インナーウォーム12に固定されている。
【0049】
より具体的には、操作線4は、遠位側がアウターシース3Y内にあり、
図9に示すように、アウターウォーム13の近傍でありコネクタ3cよりも遠位側で、アウターシース3Yの周面から外に引き出されて、インナーウォーム12まで延在している。操作線4は、
図9に示すようにコネクタ3cの鍔部3cbを貫通して挿通されていればよい。
【0050】
操作線4は、回転するアウターウォーム13に設けられた遠位側片13e及び係合片13gに干渉しないように配設されている。
具体的には、遠位側片13e及び係合片13gは、操作線4が配設されている位置よりも径方向外側にあり、かつコネクタ3cの鍔部3cbに挟み込んで係合する位置に形成されている。
【0051】
[予備展開機構]
予備展開機構PDは、操作部10と、ステントグラフト2が取り付けられるインナーシース3Xと、インナーシース3Xの外周を覆うパイプガイド6Xと、パイプガイド6Xに接続されたプッシャー6と、によって主に構成されている。
なお、後述するように、パイプガイド6Xとプッシャー6との組合せをプッシュユニット11ともいう。
【0052】
(パイプガイド)
パイプガイド6Xは、後述する装置本体部8内にあるインナーシース3Xの基端側を収容し、インナーウォーム12の前進・後進のガイドとなる機能を有する。
より詳細には、パイプガイド6Xは、アウターウォーム13が回転したときに、アウターウォーム13に螺合するインナーウォーム12の回転を制限することにより、インナーウォーム12が遠近方向にのみ移動するようにガイドする。
【0053】
パイプガイド6Xは、シース3の軸線に沿って配設されており、当該軸線からずれた位置にある操作線4に触れない位置にある。パイプガイド6Xは、後述するアウターウォーム13の近位側片13cに形成された貫通孔13d(
図1参照。)からアウターウォーム13の内部に入り、インナーウォーム12の貫通孔を通り、アウターウォーム13の遠位側片13eの貫通孔13f(
図9参照。)を通って、アウターウォーム13を貫通している。
パイプガイド6Xの近位側は、後述するY型コネクタ22の遠位端部にあるコネクタ部22cを介してプレデプロイハンドル(可動ブロック10a)に固定されている。
【0054】
本実施形態においては、パイプガイド6Xの外形は、
図10に示すように、断面六角形状に形成されており、パイプガイド6Xの内壁面は、断面円形に形成されている。パイプガイド6Xの外周面に対向し、パイプガイド6Xを通す後述するインナーウォーム12の貫通孔の内壁面も、パイプガイド6Xの外径に対応するように断面六角形状に相似形状を有している。
【0055】
パイプガイド6Xは、このように形成されていることにより、インナーウォーム12の回転範囲を規制して、インナーウォーム12を案内する機能を有する。
なお、パイプガイド6Xがインナーウォーム12の回転を制限できるように、インナーウォーム12が回転したときに、少なくとも一部が当接するものであればよい。つまり、これらの形状は、円形でなければ、六角形状に限定されず、多角形状であってもよく、さらには、一方に形成された突起と、他方に形成された凹部の縁面や突起が係合する構成であってもよい。
【0056】
また、インナーウォーム12の回転を制限するものとしては、インナーウォーム12を挿通するパイプガイド6Xに限定されず、インナーウォーム12の外面側に当接してその移動を制限するものであってもよい。
【0057】
予備展開機構PDは、操作線4が配設されている部位とは異なる部位で構成されており、留置具(ステントグラフト2)を押し出したときのステントグラフト2の動作量よりも操作線4の遠位端部と近位端部4aとの距離の変動量を小さく抑える。
「操作線4が配設されている部位」とは、本実施形態においては、アウターシース3Yである。より具体的には、操作線4は、
図8に示すように、アウターシース3Yのルーメン3Yb内に配設されて、上記のようにアウターシース3Yの遠位部3Yaに不図示のリングを介して固定されている。
そして、本実施形態に係る予備展開機構PDは、上記のように、アウターシース3Yとは異なる、操作部10と、インナーシース3Xと、パイプガイド6Xと、プッシャー6と、によって構成されている。
【0058】
上記構成によれば、予備展開機構PDにより、アウターシース3Yを介して操作線4を直接的に動作させずに、操作線4の遠位端部と近位端部4aとの距離の変動量を小さく抑えて留置具(ステントグラフト2)を押し出すことができる。
【0059】
[操作部とプッシュユニット]
より詳細には、予備展開機構PDは、施術者の操作により、管状本体(シース3)の長尺方向の遠位側にシース3に対して動作可能な操作部10と、操作部10に接続され、留置具(ステントグラフト2)の近位端に接続されたプッシュユニット11と、を備える。
【0060】
本実施形態における操作部10には、装置本体部8に対する遠位側への摺動を可能とするスライド部(可動ブロック10a)が設けられている。
より詳細には、操作部10は、可動ブロック10aと、可動ブロック10aの遠位側の面から遠位向きに突出する複数のスライド筒10bと、を備える。
なお、本書における「操作部」は、施術者が操作することによって直接的に動作する部位の他、直接的に動作する部位に従動する部位の一部も含むものとする。
【0061】
可動ブロック10aは、スライド部又はプレデプロイハンドルともいい、装置本体部8の近位部8Xに取り付けられており、パイプガイド6X、Y型コネクタ22及びフラッシュポート21が固定されている。
可動ブロック10aに近位側にはY型コネクタ22が接続されており、Y型コネクタ22の遠位端部に設けられたコネクタ部22cに後述するプッシュユニット11のパイプガイド6Xが接続されている。
【0062】
Y型コネクタ22は、2本のインナーシース3Xa、3Xbのそれぞれ出入口である。
Y型コネクタ22のうちコネクタ部22cから直線的に延在する部位は、不図示のガイドワイヤを通すためのインナーシース3Xbにつながっている。当該部位の近位側末端に不図示の止血弁が取り付けられている。
【0063】
Y型コネクタ22のうち分枝側の部位は、ステントグラフト2を折り畳んだ状態に維持するために用いられる不図示のトリガーワイヤを通すためのインナーシース3Xbにつながっている。当該部位には、不図示のトリガーワイヤの末端が取り付けられている。トリガーワイヤはステントグラフト2を最終展開するためのワイヤであり、その近位側末端には不図示のチップが固定されている。
【0064】
後述する装置本体部8の近位部8Xのうち、近位側の端部にあるブロックの近位側の面には、スライド筒10bを収容する複数の収容穴8aが形成されている。複数の収容穴8aは、スライド筒10bに対応(対向)する位置に形成されて、遠近方向に延在している。
収容穴8aには、その中心部分には、スライド筒10bを中空空間側から摺動可能に支持して、その移動をガイドするガイド棒8bが遠近方向に延在するように配設されている。
【0065】
上記構成によれば、スライド部(可動ブロック10a)により操作部10を装置本体部8に対して摺動させることによって、操作部10に接続されたプッシュユニット11を遠位側に移動させてステントグラフト2を予備展開することができる。
【0066】
フラッシュポート21は、パイプガイド6Xとインナーシース3Xとの間に接続されている。フラッシュポート21は、パイプガイド6Xとインナーシース3Xとの間を通って、プッシャー6の先端からステントグラフト2までフラッシング(脱気)するための送液口になる。
【0067】
プッシュユニット11は、操作部10の動作によって、ステントグラフト2に対して遠位方向に荷重を付与可能に構成されている。
本実施形態に係るプッシュユニット11は、長尺のパイプガイド6Xと、パイプガイド6Xの軸線方向の延長上に形成されて、パイプガイド6Xの先端部に後端部が突き当たるように配設されたプッシャー6と、により構成されている。
【0068】
(プッシャー)
シース3の先端部3bbに収容されたステントグラフト2を展開する際には、施術者がアウターシース3Yを近位側(退行側)にスライドさせることにより、アウターシース3Yからステントグラフト2に摩擦力が加わることになる。プッシャー6は、このときにステントグラフト2の基端に当接してステントグラフト2の退行を制限する筒状の棒である。
つまり、本書において「押す」は、受動的に生じる力を付与すること、いわば、ステントグラフト2から受ける荷重に対する反力を含む表現である。プッシャー6は、ステントグラフト2に対して所定位置で近位側から当接することにより、その移動を制限するものである。
プッシャー6の近位端はステンレス製のパイプガイド6Xに突き合わせ接合されている。パイプガイド6X及びインナーシース3Xの近位端部は、Y型コネクタ22の遠位端にあるコネクタ部22cに固定されており、コネクタ部22cを介して可動ブロック10a(プレデプロイハンドル)に接続されている。
【0069】
上記構成によれば、施術者が操作部10を近位部8Xに当接させるように移動させて、可動ブロック10aに間接的に接続されたプッシュユニット11を遠位方向に動作させることができる。そして、施術者は、装置本体部8とアウターシース3Yを動かさずに、プッシュユニット11を遠位方向に移動させることで、ステントグラフト2を予備展開することができる。
例えば、予備展開機構を動作させるために操作部10を移動させる押込み力は、約50N以上に設定されていると好ましい。
【0070】
プッシュユニット11(パイプガイド6X及びプッシャー6のそれぞれ)は、長尺方向に延在する貫通孔を有する。インナーシース3Xは、この貫通孔を通って配設されている。
上記構成によれば、プッシュユニット11とインナーシース3Xaに通されるガイドワイヤとを同軸の長尺方向に配設することができる。そして、ガイドワイヤでインナーシース3Xaをガイドした先で、プッシュユニット11によってステントグラフト2を留置することができる。
【0071】
[装置本体部]
搬送装置1は、管状本体(シース3)の周面の一部を支持する装置本体部8を備える。
装置本体部8は、アウターウォーム13を収納可能な収納部8Xaを有する近位部8Xと、揺動アーム14及びスライド片15が設けられた中位部8Yと、シース3を保持するプロテクタ9が設けられた遠位部8Zと、から構成されている。
操作線4の近位端部4aは、装置本体部8に直接的又は間接的に保持されている。本実施形態においては、操作線4の近位端部4aは、インナーウォーム12に固定されて、インナーウォーム12及びアウターウォーム13を介して間接的に装置本体部8に保持されている。
操作線4の近位端部4aが装置本体部8に直接又は間接的に保持されている旨記載したが、常に保持されている必要はなく、本実施形態のように、予備展開機構PDが動作する際に保持できればよい。
【0072】
[展開機構と牽引機構]
搬送装置1は、ステントグラフト2を全展開するために動作する展開機構DMと、操作線4を牽引可能な牽引機構PMと、を備える。
展開機構DMは、アウターウォーム13と、アウターウォーム13に接続されたアウターシース3Yと、を主に含んで構成されている。
本実施形態に係る牽引機構PMは、具体的には、インナーウォーム12と、インナーウォーム12に螺合して、軸線方向を中心に回転することによりインナーウォーム12を長尺方向に移動させるアウターウォーム13と、インナーウォーム12とアウターシース3Yに接続された操作線4と、によって構成されている。
プッシュユニット11は、装置本体部8の内部において、管状本体(シース3)の長尺方向に牽引機構PMを通って配設されている。
【0073】
上記構成によれば、プッシュユニット11が管状本体(シース3)の長尺方向に牽引機構PMを通り、シース3の軸線に沿って配設されていることで、シース3に支持された留置具(ステントグラフト2)にプッシュユニット11から荷重を加えやすくなる。
【0074】
(インナーウォーム)
インナーウォーム12は、軸方向に延在する中空部(貫通孔)を中心部分に有し、当該中空部を画定し、パイプガイド6Xの外面に沿って遠近方向に動作するように非円形状(断面六角形状)に形成された内壁面を有する。インナーウォーム12の外面には、アウターウォーム13の内周ねじ13aに螺合するねじが形成されている。
インナーウォーム12は、アウターウォーム13の内部に収容されており、その一部に操作線4が固定されている。
【0075】
(アウターウォーム)
アウターウォーム13は、展開機構DMとして、アウターシース3Yを近位側に引く際に用いられるものであり、かつ、牽引機構PMとして、インナーウォーム12を軸方向に移動させる動作させる際に用いられるものである。
【0076】
アウターウォーム13は、施術者がアウターウォーム13を操作する際に触れる近位側ハンドル部13Xと遠位側ハンドル部13Zとを、外周ねじ13bを軸方向において挟む位置に備える。近位側ハンドル部13X及び遠位側ハンドル部13Zは、他の部位よりも径方向外側に張り出して形成されている。施術者は、装置本体部8の中位部8Yに形成されて外部と内部とを連通する開口から、近位側ハンドル部13X及び遠位側ハンドル部13Zに触れて、アウターウォーム13に対して回転操作や、遠近方向への移動をさせることができる。
【0077】
アウターウォーム13の内面には、インナーウォーム12に螺合する内周ねじ13aが形成されており、アウターウォーム13の外面には、後述する揺動アーム14に螺合する外周ねじ13bが形成されている。
アウターウォーム13には、インナーウォーム12が内蔵されており、シース3の先端部3bbを屈曲させる際には、軸方向の動作を不図示のロック部材によりロックされることで、遠近方向に移動せずに、同じ位置で周方向に回転(空転)することとなる。
アウターウォーム13を空転させると、アウターウォーム13の内周ねじ13aに螺合するインナーウォーム12が前後方向に移動する。
【0078】
スライド片15は、
図4に示す揺動アーム14の爪部14aを、アウターウォーム13に螺合させたり、螺合を解除するように機能するものである。
スライド片15は、遠位側に向かうにつれて、アウターウォーム13側に張り出すように断面テーパ状に形成されている。
スライド片15を近位側にスライドさせることで、スライド片15よりもアウターウォーム13側に形成された揺動アーム14が、アウターウォーム13側に変形して、アウターウォーム13の外周ねじ13bに噛みこむことになる。
【0079】
施術者は、この状態で、後述する近位側ハンドル部13X又は遠位側ハンドル部13Zを掴んでアウターウォーム13を(反時計回りに)回転させて、近位側にゆっくりと後退させることが可能となる。アウターウォーム13が回転後退すると同時に、アウターウォーム13に遠位側片13e及び係合片13gによって係合するアウターシース3Yが、アウターウォーム13に引っ張られて同じく後退する。
【0080】
その際に、アウターウォーム13の内周ねじ13aに螺合するインナーウォーム12は、アウターシース3Y(アウターウォーム13)に対して相対的に前進する。このインナーウォーム12の前進により、アウターシース3Yの近位側への移動に合わせて操作線4が徐々に緩むことになる。
つまり、アウターシース3Yの遠位部3Yaにかかる張力が小さくなることで、屈曲していたシース3の先端部3bbの曲率が徐々に小さくなる。
【0081】
なお、内周ねじ13a及びインナーウォーム12のねじ山のピッチと、外周ねじ13bのねじ山のピッチとの比率を変更することで、アウターシース3Yの近位側の移動量に対する、操作線4の緩み量を調整することができる。
つまり、内周ねじ13a及びインナーウォーム12のねじ山のピッチを、外周ねじ13bのねじ山のピッチに対して大きくすることで、アウターシース3Yが近位側に移動したときの操作線4の緩み量を大きくすることができる。
【0082】
また、シース3を屈曲させるためにインナーウォーム12が遠近方向に移動したときに、アウターウォーム13が遠近方向に移動しないように、アウターウォーム13と装置本体部8との位置をロックする不図示のストッパーが設けられているとより好適である。
【0083】
本実施形態においては、操作線4は、アウターシース3Yの近端部の側面(に設けられたサイドホール)から引き出されて、インナーウォーム12に向けて延在している。
しかしながら、このような構成に限定されず、コネクタ3cにも操作線4を通すための貫通孔を設ける等、コネクタ3cが配置的に干渉しない構成であれば、操作線4は、アウターシース3Yの近位側端面から引き出されて、インナーウォーム12まで直線的に延在するように配設してもよい。このような構成であれば、操作線4の軸線に沿って直線的に牽引できるため、アウターシース3Yの遠位部3Yaの屈曲応答性を高めることができる。
特に、操作線4は、遠位側片13e及び係合片13g等のアウターウォーム13に触れないように配設されていると、アウターウォーム13の回転を阻害することがないために好適である。
【0084】
<シースの挙動について>
次に、
図11を主に参照して、ステントグラフト2を展開するときのシース3の挙動について説明する。
図11は、アウターシース3Yを引いてステントグラフト2を展開させたときのシース3の撓みの変化の推移を示す図であり、
図11(a)は、ステントグラフト2を予備展開させずに、シース3の先端部3bbを30度曲げた状態から、アウターシース3Yを引いたときの図である。
図11(b)は、ステントグラフト2を予備展開させた後に、シース3の先端部3bbを30度曲げた状態から、アウターシース3Yを引いたときの図である。
【0085】
予備展開機構PDを動作させずに、ステントグラフト2を予備展開していない状態から、アウターウォーム13を操作して、ステントグラフト2を展開させると
図11(a)に示すように、シース3の先端部3bbが大きく振れることになる。
具体的には、操作線4を牽引することによりシース3(アウターシース3Y)の先端部3bbを30度曲げた状態((1)の状態)から、アウターウォーム13を操作してアウターシース3Yを近位側に引くと、ステントグラフト2がシース3から露出し始める((2)の状態になる)まで、シース3(インナーシース3X)の屈曲量が徐々に大きくなる。
【0086】
これは、プッシャー6に移動を制限されたステントグラフト2の遠位端からアウターシース3Yに、アウターシース3Yを更に屈曲させる方向の成分を有する摩擦力(反力)が加わるためである。
そして、ステントグラフト2がシース3から露出する量が大きくなるにつれて、アウターシース3Yがステントグラフト2から受ける摩擦力は徐々に小さくなり、これに応じてシース3の屈曲量が小さくなって、完全に露出する状態((3)のステントの状態)となる。
【0087】
予備展開機構PDを動作させて、ステントグラフト2を予備展開した状態(ステントグラフト2の遠位端部をアウターシース3Yから露出させた状態)から、アウターウォーム13を操作して、ステントグラフト2を展開させると
図11(b)に示すように、シース3の先端部3bbの振れが抑制されることになる。
具体的には、ステントグラフト2を予備展開した後、操作線4を牽引することによりシース3(アウターシース3Y)の先端部3bbを30度曲げた状態((1)の状態)から、アウターウォーム13を操作してアウターシース3Yを近位側に引くと、ステントグラフト2がシース3から更に露出し始める((2)の状態)。
このとき、ステントグラフト2の遠位端部は、予備展開時にアウターシース3Yから露出しているため、ステントグラフト2の遠位端からの摩擦力はアウターシース3Yに加わらないため、アウターシース3Yが更に屈曲することはない。
【0088】
そして、ステントグラフト2がシース3から露出する量が大きくなるにつれて、アウターシース3Yがステントグラフト2から受ける摩擦力は徐々に小さくなり、これに応じてシース3の屈曲量が小さくなって、完全に露出する状態((3)のステント状態)となる。
このように、ステントグラフト2を屈曲させる前に、予備展開機構PDを動作させることにより、シース3の振れを効果的に抑制させることができる。
【0089】
また、アウターシース3Yを屈曲させた後であっても、アウターウォーム13を操作してアウターシース3Yを引いて展開させるより前に、予備展開機構PDを動作させるとよい。
アウターシース3Yを屈曲させている状態は、インナーウォーム12をアウターウォーム13に対して相対的に近位側に移動させて操作線4でアウターシース3Yの遠位部3Yaを牽引している状態である。この状態で、予備展開機構PDを動作させずに、アウターシース3Yを近位側に引くと、アウターシース3Yと操作線4との接続部分が、ステントグラフト2の遠位端部を乗り越えて近位側に近づくことになる。
このように、アウターシース3Yと操作線4との接続部分が、ステントグラフト2の遠位端部を乗り越える際にステントグラフト2からアウターシース3Yに大きな摩擦力が加わることでシース3(インナーシース3X)の振れが大きくなる。
【0090】
一方で、アウターシース3Yを屈曲させた後、アウターシース3Yを近位側に引く前に、予備展開機構PDを動作させると、アウターシース3Yと操作線4との接続部分が近位側に近づく前に、ステントグラフト2をアウターシース3Yから遠位側に突出させることができる。
このため、ステントグラフト2の遠位端からアウターシース3Yに荷重が加わることを回避して、アウターシース3Yをステントグラフト2に対して近位側に引くことが可能となり、シース3の振れを小さく抑えることができる。
【0091】
<第1変形例>
上記実施形態に係る操作部10は、可動ブロック10aと、複数のスライド筒10bと、を備え、装置本体部8の近位部8Xに設けられた収容穴8aにスライド筒10bを収容するように操作部10を操作してステントグラフト2を予備展開するものであると説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。
【0092】
次に、
図12を参照して、第1変形例に係る操作部10Aについて説明する。
図12は、第1変形例に係る操作部10Aを示す図であり、
図12(a)は、圧縮ばね16が圧縮している初期状態を示す模式的な説明図、
図12(b)は、圧縮ばね16が拡張している予備展開状態を示す模式的な説明図である。
【0093】
本変形例において搬送装置1は、操作部10A(可動ブロック10Aa)と装置本体部18A(近位端部18Aa)との間に設けられた弾性部材(圧縮ばね16)を更に備える。
圧縮ばね16の付勢によって、装置本体部18A(近位端部18Aa)に対する操作部10A(可動ブロック10Aa)の往動(遠位向きへの移動)がアシストされる。
より具体的には、装置本体部18Aは、近位端部18Aaと、近位端部18Aaから遠位側に離間し、近位端部18Aaに対して可動ブロック10Aaを挟んだ位置にある支持部18Abと、を備える。
【0094】
また、可動ブロック10Aaは、遠近方向における、装置本体部18Aの支持部18Abと近位端部18Aaとの間に配設されており、支持部18Abによって、遠近方向に移動可能に支持されている。
近位端部18Aaは、遠位側に向けて突出する位置出し棒18Adを周方向に複数備える。
支持部18Abは、位置出し棒18Adを収容するガイド筒18Acを位置出し棒18Adと同じ数だけ周方向に複数備える。
【0095】
圧縮ばね16は、ガイド筒18Acよりも大径である内径を有して、位置出し棒18Adに中心軸が一致する配置で、可動ブロック10Aaと近位端部18Aaとの間に配設されている。
操作部10Aは、可動ブロック10Aaと近位端部18Aaとの間の位置を保持する係合リング10Abを備える。
係合リング10Abは、
図12(a)に示す圧縮ばね16を圧縮した状態において、可動ブロック10Aaと近位端部18Aaとのに跨るように、取り付けられている。
【0096】
このように構成された操作部10Aによれば、施術者が、係合リング10Abを径方向外側に広げると、圧縮ばね16が弾性復元して、操作部10Aの動作がアシストされることで、可動ブロック10Aaが支持部18Abに近づくように遠位向きに移動する。具体的には、可動ブロック10Aaは、ガイド筒18Acに沿って遠位向きに移動する。
このため、可動ブロック10AaにY型コネクタ22のコネクタ部22cを介して接続されたインナーシース3X及びパイプガイド6Xを遠位方向に移動させることができ、ステントグラフト2を容易に予備展開することができる。
【0097】
なお、圧縮ばね16の付勢による可動ブロック10Aaの移動を制限するロック機構としては、係合リング10Abに限定されず、可動ブロック10Aa又は近位端部18Aaの一方に揺動可能に設けられた揺動部材と揺動部材に係合可能な突起等によって構成されるものであってもよい。
【0098】
また、圧縮ばね16の付勢によって、装置本体部18A(近位端部18Aa)に対する操作部10A(可動ブロック10Aa)の往動がアシストされるものとして説明したが、このような構成に限定されない。
例えば、弾性部材として引張ばねを採用するようにしてもよい。この場合、引張ばねの付勢に抗して、施術者の操作によって可動ブロック10Aaが支持部18Abに近接する位置に移動しロックした状態から、ロックを解除して、引張ばねの付勢により、可動ブロック10Aaの復動がアシストされればよい。
【0099】
<第2変形例>
次に、
図13を主に参照して、第2変形例に係る操作部10Bについて説明する。
図13は、第2変形例に係る操作部10Bを示す模式図である。なお、
図13においては、ステントグラフト2を省略し、各部の詳細についても簡略化して示している。
本例に係る操作部10Bは、装置本体部8Bの内側に設けられた内側可動部材10Baに接続されており、内側可動部材10Baとともに装置本体部8Bに対して周方向に回動可能に配設されている。
【0100】
内側可動部材10Baは、装置本体部8Bに対して周回方向に回動可能、かつ遠近方向に摺動可能に装置本体部8Bに取り付けられており、内側可動部材10Baの一部に径方向外側に突出するボス10Bbが形成されている。内側可動部材10Baには、インナーシース3X及びパイプガイド6Xが直接的又は間接的に接続されている。
装置本体部8Bには、ボス10Bbを収容して、その画定面でボス10Bbの移動を制限するガイド孔8Baが形成されている。
ガイド孔8Baは、遠近方向に延在する部位と、その両端それぞれから周方向に延在する部位と、によって形成されており側面視凹状に形成されている。
内側可動部材10Baは、シース3の挿入時及び抜去時においては、
図13に示すように、内側可動部材10Baの近位側に配置されている。
【0101】
施術者は、予備展開時に、内側可動部材10Baに形成されたボス10Bbがガイド孔8Baの遠近方向に延在する部位に重なる位置まで、操作部10Bを把持して内側可動部材10Baを周回方向に回動させる。
【0102】
そして、施術者は、ボス10Bbがガイド孔8Baの遠近方向に延在する部位の遠位端部に至る位置まで、操作部10Bを把持して内側可動部材10Baを遠位向きに移動させる。
そうすると、内側可動部材10Baに固定されたインナーシース3X及びパイプガイド6X(プッシュユニット11)が遠位向きに移動して、ステントグラフト2を予備展開することができる。
【0103】
さらに、施術者は、ボス10Bbがガイド孔8Baの遠近方向に延在する部位から離間する位置まで、操作部10Bを把持して内側可動部材10Baを周回方向に回動させる。
このようにすることで、ボス10Bbが近位側に移動することをガイド孔8Baの画定面によって妨げることができ、不意に予備展開状態から通常の状態に戻ることを抑制できる。
【0104】
<第3変形例>
次に、
図14を主に参照して、第3変形例に係る操作部10Cについて説明する。
図14は、第3変形例に係る操作部10Cを示す模式図である。
【0105】
本例に係る操作部10Cは、装置本体部18Cの中心軸を中心とした回転方向の荷重をプッシュユニット11への遠位向きの荷重に置換する置換部(支持部18Caに形成された雄ねじ18Cbに螺合する雌ねじ10Cf)を備える。
本例に係る操作部10Cと装置本体部18Cとは螺合しており、使用者によって、操作部10Cが装置本体部18Cに対して回転させられることにより、シース3はシース3の長尺方向に往復動可能に構成されている。
【0106】
より具体的には、操作部10Cは、プッシュユニット11の一部であるパイプガイド6Xに固定されたブロック状の固定部10Cdと、固定部10Cdに対して軸方向を中心して回転可能に接続された回転部10Ceと、を備える。
固定部10Cdと回転部10Ceとは、例えばベアリングによって回転可能に接続されている。
また、回転部10Ceの遠位側に形成された雌ねじ10Cfが形成されており、装置本体部18Cの支持部18Caの近位端部には、回転部10Ceに形成された雌ねじ10Cfに螺合する雄ねじ18Cbが、近位向きに突出して形成されている。
【0107】
施術者は、予備展開時に、回転部10Ceの雌ねじ10Cfの遠位端部を、支持部18Caの雄ねじ18Cbの近位端部に当てがった状態で、回転部10Ceを例えば時計回りに回転させて、回転部10Ceを遠位方向に螺進させて移動させる。
そうすると、回転部10Ceに接続された固定部10Cdとともに固定部10Cdに固定されたインナーシース3X及びパイプガイド6X(プッシュユニット11)が遠位向きに移動して、ステントグラフト2を予備展開することができる。
【0108】
上記構成によれば、操作部10Cが置換部(雄ねじ18Cbに螺合する雌ねじ10Cf)を備える。このため、施術者は、操作部10C(回転部10Ce)に装置本体部18Cの中心軸を中心とした回転方向の荷重を加えることで、プッシュユニット11を遠位方向に容易に動作させることが可能となる。
特に、操作部10Cと装置本体部18Cとが螺合していることで、ねじ込み量を微調整して予備展開するステントグラフト2の位置を調整しやすくなる。
【0109】
<第4変形例>
次に、
図15を主に参照して、第4変形例に係る操作部10Dについて説明する。
図15は、第4変形例に係る操作部10Dを示す模式図であり、
図15(a)は、初期状態を示す模式的な説明図、
図15(b)は、ステントグラフト2を予備展開させたときの模式的な説明図である。
【0110】
本例に係る操作部10Dは、歯車10Dbを中心とした回転方向(回動方向を含む。)の荷重をプッシュユニット11への遠位向きの荷重に置換する置換部(ラック部10Deを有する可動ブロック10Daと歯車10Db)を備える。
【0111】
より具体的には、可動ブロック10Daは、遠近方向における、装置本体部18Dの支持部18Dbと近位端部18Daとの間に配設されており、支持部18Dbによって、遠近方向に移動可能に支持されている。
また、操作部10D(可動ブロック10Da)の側面の一部には、遠近方向に延在するラック部10Deが形成されている。
装置本体部18D(支持部18Dbから延在するサポート18Dcの先端部)には、ラック部10Deに噛み合う歯車10Dbが回動可能に支持されている。
歯車10Dbには、施術者が歯車10Dbを回動させるための持ち手を含むレバー10Dcが取り付けられている。レバー10Dcは、歯車10Dbの回転中心から径方向外側に延在し、初期位置においては遠位側に配設されており、施術者の操作により、予備展開時には、近位側に配設される。
【0112】
施術者は、予備展開時に、レバー10Dcを遠位側から近位側に移動させる。
そうすると、レバー10Dcに一体的に形成された歯車10Dbが、サポート18Dcの先端部を中心に回動する。歯車10Dbの回動に伴って歯車10Dbに螺合するラック部10Deを有する可動ブロック10Daが、装置本体部18Dの近位端部18Daに近接する位置から離間する位置(遠位向き)に移動することになる。
このとき、可動ブロック10Daに固定されたインナーシース3X及びパイプガイド6X(プッシュユニット11)が遠位向きに移動することになるため、ステントグラフト2を予備展開することができる。
【0113】
上記構成によれば、操作部10Dが置換部(可動ブロック10Daと歯車10Db)を備える。このため、操作部10Dに歯車10Dbを中心とした回転方向の荷重を加えることで、プッシュユニット11を遠位方向に容易に動作させることが可能となる。つまり、ラックアンドピニオンの構成により、歯車10Dbを回動させることにより、ラック部10Deを有する可動ブロック10Daを動作させることができる。
【0114】
<第5変形例>
次に、
図16を主に参照して、第5変形例に係る操作部10Eについて説明する。
図16は、第5変形例に係る操作部10Eを示す模式図であり、
図16(a)は、初期状態を示す模式的な説明図、
図16(b)は、ステントグラフト2を予備展開させたときの模式的な説明図である。
【0115】
本例に係る操作部10Eは、可動ブロック10Eaと、可動ブロック10Eaに回動可能に接続されたリンク10Eeと、リンク10Eeと装置本体部18Dに回動可能に接続され、リンク10Eeよりも短いリンク10Edと、リンク10Ee及びリンク10Eeとに回動可能に取り付けられた可動チップ10Ebと、リンク10Ed及びリンク10Eeの可動チップ10Ebに対する角度が可変となるように、可動チップ10Ebを移動させるレバー10Ecと、を備える。
【0116】
換言すると、本例に係る操作部10Eは、後述するピン10Efを中心とした回転方向(回動方向を含む。)の荷重をプッシュユニット11への遠位向きの荷重に置換する置換部(レバー10Ec、可動チップ10Eb及びリンク10Ed、10Ee)を備える。
【0117】
より具体的には、可動ブロック10Eaは、遠近方向における、装置本体部18Dの支持部18Dbと近位端部18Daとの間に配設されており、支持部18Dbによって、遠近方向に移動可能に支持されている。
【0118】
可動チップ10Ebは、側面視において、台形状に形成されており、長辺側が可動ブロック10Ea及び近位端部18Da側、短辺側がレバー10Ec側に位置する向きで、リンク10Ed、10Eeに回動可能に接続されている。
リンク10Edは、近位端部18Daの近位端縁に接続されており、リンク10Eeは、可動ブロック10Eaの遠位端縁に接続されている。
【0119】
レバー10Ecは、サポート18Dcの先端部に設けられたピン10Efによって回動自在にサポート18Dcに取り付けられている。
具体的には、レバー10Ecは、可動チップ10Ebを押し込み可能な押込み部10Egと、施術者が把持する円柱状に形成された持ち手部10Ehと、で構成されている。
押込み部10Egは、ピン10Efに回動自在に接続されて、リンク10Ed、10Eeを遠近方向に長く延在するように、可動チップ10Ebを押し込み可能に構成されている。
持ち手部10Ehは、初期位置においては遠位側に配設されており、施術者の操作により、予備展開時には、近位側に配設される。
【0120】
施術者は、予備展開時に、レバー10Ecの持ち手部10Ehを遠位側から近位側に移動させる。そうすると、レバー10Ecの押込み部10Egが、サポート18Dcの先端部に設けられたピン10Efを中心に回動する。押込み部10Egは、その回動により、可動チップ10Eb側に張り出して、可動チップ10Ebに当接及び押圧して可動チップ10Ebを可動ブロック10Ea及び近位端部18Daに近接するように移動させる。
可動チップ10Ebが可動ブロック10Ea及び近位端部18Daに近接することで、リンク10Ee、10Edは、遠近方向の長さ成分が長くなるようにそれぞれの傾きが変更する。
【0121】
リンク10Ee、10Edの傾きが変更することで、遠近方向に移動可能に配設された可動ブロック10Eaは、支持部18Dbに固定された近位端部18Daに対して遠位向きに移動することになる。
このとき、可動ブロック10Eaに固定されたインナーシース3X及びパイプガイド6X(プッシュユニット11)が遠位向きに移動することになるため、ステントグラフト2を予備展開することができる。
また、上記構成によれば、レバー10Ecを操作して、トグル機構に係るリンク10Ed及びリンク10Eeを動作させて可動ブロック10Eaを動かすことで、操作部10Eをステントグラフト2の予備展開の位置でロックした状態(リンク10Edとリンク10Eeとが同一直線上に位置する状態)を維持することができる。
【0122】
その他、搬送装置1は、操作線4を牽引することによって、操作線4の遠位端部に接続されたアウターシース3Yを引いて、ステントグラフト2をアウターシース3Yから露出させて、これを体内に留置するものとして説明したが、本発明はこのような構成のものに限定されない。
例えば、施術者が押し込むことによって管状本体(シース3)の遠位部を屈曲させることが可能な操作線であってもよい。
【0123】
このような構成であっても、予備展開機構PDにより、操作線4の動作量を小さく抑えてステントグラフト2を押し出してその一部をシース3(アウターシース3Y)の遠位部からステントグラフト2の一部を突出させることができる。
このような構成によれば、ステントグラフト2がシース3から突出する初期段階における操作線4の牽引量が大きく変動することによって、シース3が大きく振れることを抑制することができる。このため、展開機構DMによりステントグラフト2を展開して所望の位置にステントグラフト2を留置しやすくなる。
【0124】
なお、本発明の搬送装置1に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0125】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
長尺で可撓性を有し、体内に留置する医療用の自己拡開式の留置具を保持する管状本体と、
該管状本体に摺動可能に挿通され、施術者が牽引することによって前記管状本体の遠位部を屈曲させることが可能な操作線と、
前記留置具を押し出して前記管状本体の前記遠位部から前記留置具の一部を突出させる予備展開機構と、
前記管状本体から前記留置具を脱離させて被検者の体内に留置する際に、前記留置具を展開させる展開機構と、を備え、
前記予備展開機構は、前記留置具を押し出したときの前記留置具の動作量よりも前記操作線の動作量を小さく抑えることを特徴とする医療用留置具搬送装置。
(2)
前記管状本体の周面の一部を支持する装置本体部を更に備え、
前記操作線の遠位端部は、前記管状本体の前記遠位部に直接的又は間接的に固定され、前記操作線の近位端部は、前記装置本体部に直接的又は間接的に保持されており、
前記予備展開機構は、前記操作線が配設されている部位とは異なる部位で構成されており、前記留置具を押し出したときの前記留置具の動作量よりも前記操作線の前記遠位端部と前記近位端部との距離の変動量を小さく抑える(1)に記載の医療用留置具搬送装置。
(3)
前記予備展開機構は、
前記施術者の操作により、前記管状本体の長尺方向の遠位側に前記管状本体に対して動作可能な操作部と、
該操作部に接続され、前記留置具の近位端に接続されたプッシュユニットと、を備え、
該プッシュユニットは、前記操作部の動作によって、前記留置具に対して遠位方向に荷重を付与可能に構成されている(2)に記載の医療用留置具搬送装置。
(4)
前記操作線を牽引可能な牽引機構を更に備え、
前記プッシュユニットは、前記装置本体部の内部において、前記管状本体の長尺方向に前記牽引機構を通って配設されている(3)に記載の医療用留置具搬送装置。
(5)
ガイドワイヤを通すことが可能なインナーシースを更に備え、
前記プッシュユニットは、長尺方向に延在する貫通孔を有し、
前記インナーシースは、前記貫通孔を通って配設されている(3)又は(4)に記載の医療用留置具搬送装置。
(6)
前記操作部には、前記装置本体部に対する遠位側への摺動を可能とするスライド部が設けられている(3)から(5)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(7)
前記操作部と前記装置本体部との間に設けられた弾性部材を更に備え、
該弾性部材の付勢によって、前記装置本体部に対する前記操作部の往動又は復動がアシストされる(6)に記載の医療用留置具搬送装置。
(8)
前記操作部は、回転方向の荷重を前記プッシュユニットへの遠位向きの荷重に置換する置換部を備える(3)から(5)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(9)
長尺で可撓性を有し、体内に留置する医療用の自己拡開式の留置具を保持する管状本体と、
該管状本体に摺動可能に挿通され、施術者が押し込むことによって前記管状本体の遠位部を屈曲させることが可能な操作線と、
前記留置具を押し出して前記管状本体の遠位部から前記留置具の一部を突出させる予備展開機構と、
前記管状本体から前記留置具を脱離させて被検者の体内に留置する際に、前記留置具を展開させる展開機構と、を備え、
前記予備展開機構は、前記留置具を押し出したときの前記留置具の動作量よりも前記操作線の動作量を小さく抑えることを特徴とする医療用留置具搬送装置。
【符号の説明】
【0126】
D1 留置具付き医療用留置具搬送装置
DM 展開機構
PD 予備展開機構
PM 牽引機構
1 搬送装置(医療用留置具搬送装置)
2 ステントグラフト(留置具)
3 シース(管状本体)
3X、3Xa、3Xb インナーシース
3Y アウターシース
3Ya 遠位部
3Yb ルーメン
3bb 先端部(遠位部)
3c コネクタ
3ca 筒状部
3cb 鍔部
4 操作線
4a 近位端部
5 先端チップ
6 プッシャー
6c 貫通孔
6X パイプガイド
8、8B 装置本体部
8Ba ガイド孔
8X 近位部
8Xa 収納部
8Y 中位部
8Z 遠位部
8a 収容穴
8b ガイド棒
9 プロテクタ
10、10A、10B、10C、10D、10E 操作部
10a 可動ブロック(スライド部、プレデプロイハンドル)
10b スライド筒(スライド部)
10Aa 可動ブロック
10Ab 係合リング
10Ba 内側可動部材
10Bb ボス
10Cd 固定部
10Ce 回転部
10Cf 雌ねじ(置換部)
10Da 可動ブロック
10Db 歯車
10Dc レバー
10De ラック部
10Ea 可動ブロック
10Eb 可動チップ
10Ec レバー
10Ed、10Ee リンク
10Ef ピン
10Eg 押込み部
10Eh 持ち手部
11 プッシュユニット
12 インナーウォーム
13 アウターウォーム
13X 近位側ハンドル部
13Z 遠位側ハンドル部
13a 内周ねじ
13b 外周ねじ
13c 近位側片
13d 貫通孔
13e 遠位側片
13f 貫通孔
13g 係合片
14 揺動アーム
14a 爪部
15 スライド片
16 圧縮ばね(弾性部材)
18A、18C、18D 装置本体部
18Aa 近位端部
18Ab 支持部
18Ac ガイド筒
18Ad 位置出し棒
18Ca 支持部
18Cb 雄ねじ(置換部)
18Da 近位端部
18Db 支持部
18Dc サポート
21 フラッシュポート
22 Y型コネクタ
22c コネクタ部
100 搬送装置
200 ステントグラフト
300 シース
300b 先端部
400X、400Y 操作線