(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】医療用オスコネクタ
(51)【国際特許分類】
F16L 19/07 20060101AFI20240806BHJP
A61M 39/10 20060101ALI20240806BHJP
F16L 37/10 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F16L19/07
A61M39/10 110
F16L37/10
(21)【出願番号】P 2020031554
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 健志
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090914(JP,A)
【文献】米国特許第05984373(US,A)
【文献】米国特許第05620427(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0115984(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0033334(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0184090(US,A1)
【文献】特開2017-148477(JP,A)
【文献】特開2013-208206(JP,A)
【文献】特開2005-000466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
A61M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メスコネクタに挿入されるルアー部を先端側に有する本体部と、
前記本体部に回転可能で且つ軸方向に相対移動可能に取り付けられ、前記メスコネクタと螺合するカプラーとを備え、
前記カプラーは、先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜した
カプラー側傾斜面を有し、
前記本体部は、前記ルアー部よりも基端側に設けられ、径方向外側に隆起した隆起部を有し、
前記隆起部は、外周端面
の基端と基端面との交差部に、前記カプラーを基端側から先端側の第1の位置に移動させた際に、前記
カプラー側傾斜面と当接する当接部を有し、
前記第1の位置において前記当接部と当接する前記
カプラー側傾斜面の傾斜角は、25°以下であり、
前記外周端面の基端部は、先端側から基端側へ向かって径方向外側に傾斜して、前記基端面との間で鈍角を形成し、
前記基端面は、前記
カプラー側傾斜面の傾斜角よりも大きい角度で、先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜した面であり、
前記第1の位置において、前記当接部よりも基端側の前記基端面と前記
カプラー側傾斜面との間には空隙が存在している、医療用オスコネクタ。
【請求項2】
前記カプラーは、前記第1の位置から前記カプラーが1/18回転分回動した第2の位置まで移動することができ、前記第1の位置から前記第2の位置までの間、前記当接部よりも基端側の前記基端面と前記
カプラー側傾斜面との間には空隙が存在している、請求項1に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項3】
前記カプラーは、前記
カプラー側傾斜面の基端に設けられ、径方向内側に起立する段差部を有している、請求項1又は2に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項4】
メスコネクタに挿入されるルアー部を先端側に有する本体部と、
前記本体部に回転可能で且つ軸方向に相対移動可能に取り付けられ、前記メスコネクタと螺合するカプラーとを備え、
前記カプラーは、先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜したカプラー側傾斜面を有し、
前記本体部は、前記ルアー部よりも基端側に設けられ、径方向外側に隆起した隆起部を有し、
前記隆起部は、外周端面と基端面との交差部に、前記カプラーを基端側から先端側の第1の位置に移動させた際に、前記カプラー側傾斜面と当接する当接部を有し、
前記第1の位置において前記当接部と当接する前記カプラー側傾斜面の傾斜角は、25°以下であり、
前記基端面は、前記カプラー側傾斜面の傾斜角よりも大きい角度で、先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜した面であり、
前記第1の位置において、前記当接部よりも基端側の前記基端面と前記カプラー側傾斜面との間には空隙が存在し、
前記
カプラー側傾斜面は、第1の面と、前記第1の面よりも基端側に設けられ、前記第1の面よりも軸方向とのなす角が小さい第2の面とを有している
、医療用オスコネクタ。
【請求項5】
前記カプラーは、前記本体部よりも軟質の材料により形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の医療用オスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用オスコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジ、カテーテル及びチューブ等の様々な医療機器がルアーコネクタにより接続される。ルアーコネクタはオスコネクタの外周面とメスコネクタの内周面との摩擦係合により液密に接続される。ルアーコネクタの信頼性をさらに向上させるために、ロック式コネクタも用いられている。ロック式コネクタは、オスコネクタの本体部の回りに雌ネジを有するカプラーを設け、メスコネクタの外面に雄ネジを設け、カプラーと雄ネジとを螺合させることにより、意図しないコネクタの分離を防止しようとしている。
【0003】
しかし、ロック式コネクタにおいても、衝撃や振動等によりカプラーが意図せず回転して緩んでしまうことがあり、コネクタの液漏れが生じたり、コネクタが外れたりするおそれがある。このため、カプラーの意図しない回転を防止するために、緩み止めの機構を設けることが検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。例えば、カプラーの内表面にテーパ面を有する突起部を設け、本体側の凸部の基端がテーパ面と当接することにより生じる摩擦抵抗により、カプラーの意図しない緩みを防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の緩み止めの機構は、凸部の基端が直角となっており、直角となった基端がテーパ面に当接すると、操作者は急に抵抗が大きく増加したと感じて、それ以上の締め込みを行わないケースがあることが新たに判明した。また、凸部の基端とテーパ面とが当接した後に、さらに締め込みを行うと、凸部によりテーパ面が削られてしまい、機能低下が生じるケースが認められた。
【0006】
本開示の課題は、カプラーを適度に締め込むように操作者を誘導できる信頼性が高い医療用オスコネクタを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の医療用オスコネクタの一態様は、メスコネクタに挿入されるルアー部を先端側に有する本体部と、本体部に回転可能で且つ軸方向に相対移動可能に取り付けられ、メスコネクタと螺合するカプラーとを備え、カプラーは、先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜した傾斜面を有し、本体部は、ルアー部よりも基端側に設けられ、径方向外側に隆起した隆起部を有し、隆起部は、外周端面と基端面との交差部に、カプラーを基端側から先端側の第1の位置に移動させた際に傾斜面と当接する当接部を有し、第1の位置において当接部と当接する傾斜面の傾斜角は、25°以下であり、基端面は、前記傾斜面の傾斜角より大きい角度で先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜した面であり、第1の位置において、当接部よりも基端側の基端面と傾斜面との間には空隙が存在している。
【0008】
医療用オスコネクタの一態様は、カプラー側に適切な傾斜角の傾斜面を有し、本体側の当接部において基端面が傾斜しており、第1の位置において、当接部よりも基端側の基端面と当接面との間に空隙がある。このため、傾斜面が当接部により削られにくくすることができる。また、鋭角や直角となった当接部が傾斜面に当接する場合や、基端面と傾斜面とが面同士で接触する場合と異なり、抵抗の急激な増大が生じず、操作者が適切な締め込みを行うように誘導することができる。
【0009】
医療用オスコネクタの一態様において、カプラーは第1の位置からカプラーが1/18回転分回動した第2の位置まで移動することができ、第1の位置から第2の位置までの間、当接部よりも基端側の基端面と傾斜面との間には空隙が存在している。即ち、カプラーとメスコネクタが螺合していく中で、まずカプラーの傾斜面と本体部側の当接部とが当接する。さらにメスコネクタを相対回転させることで、カプラーが本体部の先端側に進み、第1の位置から1/18回転分回動した位置に移動する。この際、常に当接部よりも基端側の基端面と傾斜面との間には空隙が存在しているため、カプラーを先端側に進みやすくすることができる。また、摩擦係合状態で1/18回転分回動させていることで、カプラーが衝撃等で多少緩まる方向に回転したとしても係合状態を保つことができる。
【0010】
医療用オスコネクタの一態様において、カプラーは、傾斜面の基端に設けられ、径方向内側に起立する段差部を有していてもよい。このような構成とすることにより、カプラーが先端側へ抜ける事態を生じにくくすることができる。
【0011】
医療用オスコネクタの一態様において、傾斜面は、第1の面と、第1の面よりも基端側に設けられ、第1の面よりも軸方向とのなす角が小さい第2の面とを有していてもよい。第1の面よりも傾斜角が小さい第2の面を基端側に設けることにより、カプラーを締め込む際に回転可能な範囲を大きくして、操作者が締め込む動作をより行いやすくすることができる。
【0012】
医療用オスコネクタの一態様において、カプラーは、本体部よりも軟質の材料により形成されていてもよい。このような構成とすることにより、カプラーの意図しない緩みをより生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の医療用オスコネクタによれば、緩み止めの機構の摩耗が生じにくく、操作者はカプラーを適度に締め込むように誘導され、カプラーの緩み止めを適切に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る医療用オスコネクタを示す斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る医療用オスコネクタの要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】変形例に係る医療用オスコネクタを示す斜視図である。
【
図6】変形例に係る医療用オスコネクタの要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図3に示すように、一実施形態に係る医療用のオスコネクタ100Aは、メスコネクタ300に挿入されるルアー部111を先端側に有する本体部101と、本体部101に回転可能で且つ軸方向に相対移動可能に取り付けられ、メスコネクタ300の雄ネジ311と螺合するカプラー102とを有している。
【0016】
カプラー102は、筒状であり、先端側の内面には、雄ネジ311と螺合する雌ネジ121が設けられている。雌ネジ121よりも基端側の部分には、径方向内側に突出する凸部147が設けられている。凸部147の内周面は、先端側から基端側に向かって次第に径方向の突出高さが高くなり、径方向内側に向かって傾斜した傾斜面141となっている。傾斜面141と軸方向とのなす角(傾斜角)θ1は、25°以下、好ましくは20°以下である。θ1は傾斜面141が径方向内側に向かって傾斜していればよいが、好ましくは2°以上、より好ましくは5°以上である。
【0017】
本体部101は、ルアー部111よりも基端側に、径方向外側に隆起した隆起部131を有している。隆起部131は、径方向外側に設けられた外周端面133と、外周端面の基端側に設けられた基端面132を有している。基端面132は先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜した傾斜面であり、基端面132と中心軸とのなす角(傾斜角)は、θ1よりも大きく且つ90°未満となっている。
【0018】
カプラー102の雌ネジ121をメスコネクタ300の雄ネジ311と螺合させていくと、カプラー102は、本体部101に対して先端側に徐々に相対移動し、第1の位置において、隆起部131の当接部135が凸部147の傾斜面141と当接する。本実施形態において、当接部135は隆起部131の外周端面133と基端面132との交差位置である。
【0019】
本実施形態においては、傾斜面141が適切な傾斜角を有している。このため、第1の位置において当接部135が傾斜面141に当接した後も、当接部135に傾斜面141が次第に乗り上げるように先端側に移動させることができる。これにより、本体部101とカプラー102との係合の締め込みを行うことができる。即ち、メスコネクタ300とルアー部111とを係合させた状態でカプラー102をメスコネクタ300に対して相対回転させると、カプラー102がメスコネクタ300側へ移動する。その際、当接部135が傾斜面141に当接し、さらに乗り上げるように移動すると、カプラー102から本体部101への圧縮力が徐々に上昇し、カプラー102を本体部101に強固に固定できる。
【0020】
本実施形態において、基端面132は、基端側に向かって径方向内側に一定の傾斜角で直線状に延びる傾斜面となっており、当接部135における外周端面133と基端面132との交差角は90°よりも大きい鈍角となっている。このため、当接部135に傾斜面141が乗り上げていきやすく、鋭角や直角になっている場合と比べ、傾斜面141が削れにくくなっている。よって、操作者が螺合を行う際に十分に抵抗感を感じて締め込みをやめた場合でも、傾斜面141が削れており、その結果十分な摩擦係合力が実現できていないという事態になることを防止することができる。また、当接部が傾斜面を削り、傾斜面内に嵌入するような場合、カプラーに衝撃等が加わって回転すると、当接部とカプラーとの嵌合がすぐに外れてしまい、意図せず緩まるといった事態が生じるが、本実施形態のように、当接部135に傾斜面141が乗り上げてさらに先端側に進む形であれば、多少カプラーが緩まる方向に回転したとしても当接部135と傾斜面141との嵌合状態を維持することができるため、衝撃等によりカプラーと本体部との係止が解除される事態を防止することができる。つまり、操作者が感じる抵抗感と実際の摩擦係合力とが確実に相関するようにすることができる。また、接続解除時には衝撃等によりカプラー102が緩まる方向に多少回転したとしても簡単には外れず、その後も十分な摩擦係合力が発揮される。
【0021】
また、本実施形態のオスコネクタ100Aは、カプラー102を適度に締め込むように操作者を誘導することもできる。即ち、螺合によりカプラー102が先端側に相対移動して、第1の位置において隆起部131の当接部135と、凸部147の傾斜面141とが当接すると、カプラー102の回転に抵抗が生じる。本実施形態においては、直角又は鋭角の部分が傾斜面141に当接する場合のような引っかかりが生じにくく、第1の位置において抵抗が急激に大きくなることがない。急激な抵抗の増加が生じないため、当接部135と傾斜面141とが最初に当接する第1の位置を越えてカプラー102を回転させて締め込むように操作者を誘導することができる。
【0022】
本実施形態において、隆起部131の外周端面133は、基端側に向かって径方向外側に傾斜している。これにより、当接部135が傾斜面141と当接した際に、外周端面133と傾斜面141とがなす角が大きくなり、外周端面133と傾斜面141との間に空隙ができる。このため、当接部135と傾斜面141とが当接した際に軸方向に幅広く面係合してしまい、カプラー102が第1位置よりさらに先端側に進みにくくなる事態を防止することができる。外周端面133の傾斜角は当接部135において外周端面133と基端面132とのなす角が90°以下とならないようにすることが好ましい。但し、当接部135において基端面132が基端側に向かって径方向内側に傾斜していれば、外周端面133と基端面132との交差角を90°以下とすることもできる。なお、外周端面133は傾斜していなくてもよく、基端側に向かって径方向内側に傾斜させることもできる。
【0023】
本実施形態において、第1の位置において、当接部135よりも基端側の基端面132と傾斜面141との間には空隙125が存在している。第1の位置において空隙125が存在していない場合は、基端面132と傾斜面141とが面で接触して、操作者が感じる抵抗感が急激に大きくなり、操作者が締め込みを行うことなく手を止めてしまうおそれがある。本実施形態において、基端面132の傾斜角θ2は、傾斜面141の傾斜角θ1よりも大きくなっている。このため、第1の位置において基端面132と傾斜面141とは接触しておらず、その間には空隙125が存在している。このため、第1の位置からカプラー102をさらに先端側に移動させやすく、操作者に徐々に締まっていく感覚を感じさせることができる。操作者が第1の位置からカプラー102をさらに先端側に進めた第2の位置まで移動させると、カプラー102は本体部101に対して十分に締め込み力を生じ、意図せずカプラー102が緩まってしまう事態を防止することができる。
【0024】
本実施形態において、基端面132の傾斜角θ2は、軸方向に対して90°未満であればよいが、傾斜面141の摩耗を押さえる観点からは、好ましくは20°以下である。特に、本体部101及びカプラー102がポリカーボネート等の堅い材料により形成されている場合には、摩耗をさらに低減する観点からθ2を15°以下とすることが好ましい。また、基端面132の傾斜角θ2は、傾斜面141の摩耗を押さえる観点からは小さい方が良いが、傾斜面141と面同士が当接しないようにする観点から、θ1よりも大きく、好ましくはθ1よりも5°以上大きい角度である。
【0025】
傾斜面141は、当接部135と傾斜面141とが当接してから、カプラー102を1/18回転以上回転させることができる長さを有していることが好ましく、より好ましくは1/12回転以上、さらに好ましくは1/8回転以上、よりさらに好ましくは1/4回転以上回転させることができる長さとすることができる。第1の位置からカプラー102を先端方向に進める距離が長いほど、カプラー102と本体部101との係止を解除するための回転距離が長くなり、カプラー102に衝撃等が加わり、意図せずカプラー102と本体部101との係止が解除されてしまう事態を防止することができる。なお、あまりに回転距離が長いと操作者は手首を大きくひねらせねばならないため、操作性の観点からは、傾斜面141は、カプラー102を3/4回転又はそれ以下の回転をさせた場合にそれ以上カプラー102を回転させにくくなるように設定されていることが好ましい。
【0026】
本実施形態において、傾斜面141の基端側には、最小内径が隆起部131の最大外径よりも小さい小径部145が設けられており、傾斜面141と小径部145との間には径方向内側に起立する段差部144が設けられている。段差部144を設けることにより、傾斜面141が隆起部131を完全に乗り越えることを防ぎ、カプラー102が先端側へ抜け落ちにくくできる。カプラー102を抜け落ちにくくする観点から、段差部144は中心軸に対して垂直に近い角度となっていることが好ましい。但し、段差部144の傾斜角と基端面132の傾斜角とを一致させて、カプラー102が最も先端側に移動した際に、段差部144と基端面132とが面で接触するようにすることもできる。
【0027】
小径部145の最小内径は、隆起部131の最大外径の98%以下とすることが好ましい。但し、カプラー102が本体部101に対して相対移動できるように、本体部101の延長部113の最大外径よりも小径部145の最小内径を大きくする。なお、小径部145は、内周面全体が縮径している構成だけでなく、内周面に複数の凸部等が設けられて実質的な内径が小さくなっている部分とすることもできる。
【0028】
本実施形態において、カプラー102を基端側に移動させた際に、ルアー部111が完全に露出するように、延長部113の長さを設定している。これにより、ルアー部111をメスコネクタ300に挿入する際にカプラー102が邪魔にならないようにすることができる。但し、延長部113の長さは、当接部135と傾斜面141とが当接しない位置までカプラー102を基端側にすらすことができる程度に短くてもよい。
【0029】
本実施形態において、延長部113の基端側にはチューブを接続可能なポート部112が設けられている。ポート部112の外径は、延長部113の外径よりも大きくなっており、カプラー102が基端側に抜けることを防止する抜け止めとしても機能する。但し、ポート部112は、チューブを接続できればどのような構成としてもよく、カプラー102が基端側に抜けるようにしてもよい。
【0030】
本実施形態において、カプラー102の外表面及びポート部112の外表面には、それぞれ把持用のリブ123及び114が設けられている。これにより、カプラー102に力を加えて締め込むことが容易にできる。また、カプラー102の螺合を解除する際にも操作が容易となる。但し、把持用のリブは必要に応じて設ければよい。
【0031】
メスコネクタ300は、図示したようなものに限らず、ルアー部111を受け入れることができる内腔と、雌ネジ121と螺合する雄ネジとを有していればどのようなものであってもよい。
図1において、メスコネクタ300は把持用のリブ314を有しているが、リブ314を有していなくてもよい。
【0032】
本実施形態において、隆起部131は本体部101の外周面を一周する環状に設けられており、傾斜面141はカプラー102の内周面を一周する環状に設けられている。このようにすることで、周縁における係合力を均一化することができる。しかし、隆起部131及び傾斜面141の少なくとも一方が、周方向に複数の部分に分割されていてもよい。隆起部131及び傾斜面141に少なくとも一方が周方向に複数の部分に分割されていてもよく、隆起部131と傾斜面141との当接量を調整して、抵抗を調整してもよい。
【0033】
例えば、隆起部131は、本体部101の外周面を一周するように環状に設けられ、傾斜面141は、カプラー102の内周面の相対する2カ所又はそれ以上の箇所に設けられた凸部147に設けられている構成とすることができる。また、隆起部131を相対する2カ所又はそれ以上の箇所に設け、傾斜面141を環状に設けることもできる。さらに、複数の隆起部131を十分に間隔を狭めて配置し、傾斜面141の周方向の幅を隆起部131の間隔よりも広くすれば、隆起部131と傾斜面141の両方が環状に設けられていない構成とすることもできる。
【0034】
なお、分割されて複数の隆起部131が設けられている場合における隆起部131の外径は、すべての隆起部131が内接する円の直径であり、分割されて複数の傾斜面141が設けられている場合における傾斜面141の内径は、すべての傾斜面141が外接する円の直径である。
【0035】
本実施形態においては、直線状に延びる外周端面133と直線状に延びる基端面132とが交差して当接部135が構成された例を示した。このような構成であれば、設計が容易であり、形成も容易にすることができる。しかし、傾斜面141の摩耗を低減する観点からは、少なくとも当接部135における基端面132の軸方向に対する傾斜角が90°未満の傾斜面があればよく、基端面132の全体が一定の傾斜角で傾斜している必要はない。例えば、傾斜角が異なる複数の面が組み合わせられていてもよい。この場合、基端面132の当接部135とならない部分は、垂直面であってもよい。また、
図4~
図6に示す変形例のように、隆起部151の外周端面153と基端面152との交差部を曲面とすることができる。
【0036】
変形例に係るオスコネクタ100Bは、本体部101の隆起部151の外周端面153と基端面152との交差部が、面取りされた曲面となっており、カプラー102側に設けられた傾斜面161と当接する当接部155は曲面に位置している。隆起部151の基端面152は、中心軸に対してほぼ垂直に起立する部分を有する面であるが、当接部155は曲面の部分に位置し、当接部155近傍における基端面152は先端側から基端側に向かって径方向内側に傾斜する傾斜面であり、当接部155における外周端面153と基端面152との交差角は90°よりも大きい鈍角となっている。また、当接部155よりも基端側においては基端面152の傾斜角は傾斜面161の傾斜角よりも大きいため、基端面152と傾斜面141との間には空隙125が形成されるので、第1に位置においては、当接部155よりも基端側の基端面152と傾斜面141とが面で接触するおそれがない。
【0037】
このように、当接部155を曲面とすることにより、面同士の接触が生じないようにしつつ、当接部155における基端面152の傾斜角を最小にすることができ、傾斜面161の摩耗をより生じにくくできる。
【0038】
本変形例において、傾斜面161は、先端側に設けられ、傾斜が急な第1の部分162と基端側に設けられ、第1の部分162よりも傾斜が緩やかな第2の部分163とを有している。カプラー102をメスコネクタ300と螺合させて、本体部101に対して先端側に相対移動させると、第1の位置において当接部155と第1の部分162とが当接する。カプラー102をさらに回転させて締め込んでいくと、当接部155と傾斜が緩やかな第2の部分163とが当接する。当接部155と第2の部分163とが当接する小さな抵抗状態が長いストロークで続くとより外れにくくすることができる。
【0039】
第1の部分162の傾斜角θ3は、好ましくは2°以上、より好ましくは5°以上で、25°以下、好ましくは20°以下であり、第2の部分163の傾斜角θ4は、好ましくは1°以上、より好ましくは3°以上で、好ましくは20°以下、より好ましくは15°以下であり、且つθ3よりも小さくすればよい。
【0040】
本変形例において傾斜面161を、傾斜角が異なる2つの面により形成した例を示したが、その角度は適宜変えることができる。
【0041】
第1の部分162の当接部155と当接する部分から、第2の部分163の基端までの長さは、カプラー102の雌ネジ121をメスコネクタの雄ネジ311に係合させて1/18回転させたときに移動する長さ以上とすることが好ましく、より好ましくは1/12回転、さらに好ましくは1/8回転、よりさらに好ましくは1/4回転させたときに移動する長さ以上とするのが好ましい。また、第1の部分162の当接部155と当接する部分から、第2の部分163までの長さと、第2の部分163の長さとはほぼ等しいことが好ましい。
【0042】
本変形例においても、カプラー102が前方へ抜けないようにするために、傾斜面161の基端側には、小径部165が設けられており、傾斜面161と小径部165との間には段差部164が設けられている。段差部164は、直線状とすることができるが、当接部155近傍の曲面に合わせた曲面とすることもできる。
【0043】
本変形例においては、ポート部112にチューブを外嵌させることができ、カプラー102の小径部165の内径は、ポート部112に外嵌させたチューブの外径よりも若干大きく設定されている。このようにすれば、カプラー102を基端側に移動させ、ルアー部111を完全に露出させることが容易にできる。但し、カプラー102が基端側へ抜けないようにする抜け止めを設けることもできる。また、ポート部112は、チューブを接続できれば他の構成とすることもできる。
【0044】
本変形例において、隆起部151は軸方向にある程度の長さを有する構成としている。このため、隆起部151がカプラー102の傾斜面161により押しつぶされたりする事態を生じにくくすることができる。また、コネクタをポリカーボネート等の比較的硬い樹脂により形成し、カプラーをポリプロピレン等のコネクタよりも軟質の樹脂により形成すれば、隆起部151が潰れて、カプラー102が前方へ抜けるような事態を生じにくくすることができる。また、隆起部151の基端面152は、面取りされていない部分が軸方向に対してほぼ垂直な面となっているが、この部分を傾斜した面とすることもできる。
【0045】
実施形態において示した各構成要素と、変形例において示した各構成要素とは、必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0046】
実施形態及び変形例において、本体部101及びカプラー102の材質は特に限定されないが、カプラー102を本体部101よりも硬度が低い材料により形成すれば、締め込みが容易となり、カプラー102の意図しない緩みをより生じにくくすることができる。例えば、本体部101をポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)、硬質塩化ビニル(PVC)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等により形成し、カプラー102をポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、軟質塩化ビニル(PVC)、スチレン系エラストマー等により形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示の医療用オスコネクタは、緩み止めの機構の摩耗が生じにくく、カプラーを適度に締め込むように操作者を誘導でき、医療の分野等において有用である。
【符号の説明】
【0048】
100A オスコネクタ
100B オスコネクタ
101 本体部
102 カプラー
111 ルアー部
112 ポート部
113 延長部
121 雌ネジ
123 リブ
125 空隙
131 隆起部
132 基端面
133 外周端面
135 当接部
141 傾斜面
144 段差部
145 小径部
147 凸部
151 隆起部
152 基端面
153 外周端面
155 当接部
161 傾斜面
162 第1の部分
163 第2の部分
164 段差部
165 小径部
300 メスコネクタ
311 雄ネジ
314 リブ