(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G03G15/20 525
(21)【出願番号】P 2020042675
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019094796
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】永田 靖
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康孝
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-057985(JP,A)
【文献】特開2001-051539(JP,A)
【文献】特開2005-164717(JP,A)
【文献】特開平08-328442(JP,A)
【文献】特開2019-035809(JP,A)
【文献】特開2017-151310(JP,A)
【文献】特開2019-060949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する第1加圧部と、
前記第1加圧部に圧接してトナー層をシート状媒体に定着するニップ部を形成する第2加圧部と、
前記第1又は第2加圧部の少なくとも一方を加熱する加熱部と、
前記第1又は第2加圧部の少なくとも一方の表面に接触して清掃する第1清掃部と、
を備え、
前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度を定着時より高い温度に
維持する制御を行って回転する高温回転動作を行った後、前記ニップ部に清掃材を通過させ、
前記清掃材の通過時、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度は、前記高温回転動作時の温度より低い温度
を維持する制御を行う定着装置。
【請求項2】
前記定着時より高い温度は、前記第1清掃部により清掃されるトナーの凝集力が、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部に対する前記トナーの付着力より小さくなる温度である請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記高温回転動作時の回転速度は、前記定着時の最も速い速度より遅い速度である請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記高温回転動作時、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度は、前記第1及び第2加圧部の回転方向と交差する方向に沿った最大サイズの前記シート状媒体が通過する領域にわたり前記定着時より高い温度とされる請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記高温回転動作後、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度が前記高温回転動作時より低下した後に前記清掃材を通過させる請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記清掃材の通過後、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部を、前記高温回転動作時より低い温度
に維持する制御を行って回転させる低温回転動作を行う請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第1清掃部に接触して清掃する第2清掃部を更に備え、
前記第1清掃部の表面はゴム材料からなり、前記第2清掃部の表面は金属材料からなる請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記定着時における前記第1加圧部、前記第2加圧部、前記第1清掃部及び前記第2清掃部に対するトナーの付着力は、
第2清掃部>第1清掃部>第1、第2加圧部
の関係を満たす請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記トナー層で構成されたトナー像を記録媒体に定着する請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
前記第1加圧部はロール状部材であり、その内側に前記加熱部を備え、
前記第2加圧部は無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を内側から保持する保持部材とを備え、
前記第1清掃部は前記第1加圧部の表面に接触して清掃する請求項1に記載の定着装置。
【請求項11】
前記第1加圧部は無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を内側から押圧する押圧部材と、前記加熱部を備え、
前記第2加圧部はロール状部材であり、
前記加熱部は前記ベルト部材を挟んでニップ部に面し、
前記第1清掃部は前記第1加圧部の表面に接触して清掃する請求項1に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置は、加熱手段又は加圧手段の少なくとも一方に付着したトナー等の付着物を清掃する清掃手段を備える。定着装置は、清掃手段が清掃した回収トナー等の付着物が許容保持量を超えると、回収トナー等が清掃手段から加熱手段又は加圧手段に再転移して、プリント汚れが発生する。そこで、かかる技術的課題に関連する技術としては、特許文献1乃至3等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、定着ニップ部に転写材を一定枚数通過させた後、画像形成を行なう温度にて回転体の空回転を行ない、さらにクリーニング材を定着ニップ部に自動的に通過させ、クリーニング回転体に付着したトナーを回収するよう構成したものである。
【0004】
特許文献2は、クリーニングモードを設定すると、一枚のクリーニングシートがニップ部を通過する期間で、複数種類のクリーニング動作を行うよう構成したものである。
【0005】
特許文献3は、温度検知部材の検知温度に基づいて求めた定着回転体の表面温度と加圧部材の表面温度をそれぞれTh、Tpとし、フローテスタを用いて測定した未定着トナー像のトナーの変形終了点をTf2、流出開始点をTf3としたときに、Th≦Tf3、Tf2≦Tp≦Tf3の状態で定着回転体を所定時間回転させ、且つ定着回転体を所定時間回転させた後にニップ部で記録材を挟持搬送することによって、加圧部材の汚れを除去するクリーニングモードを有するよう構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-057985号公報
【文献】特開2011-232689号公報
【文献】特開2011-232690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、クリーニング空回転時の温度がトナー定着時の温度以下である場合に比べ、清掃部が保持する回収トナーの除去性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、回転する第1加圧部と、
前記第1加圧部に圧接してトナー層をシート状媒体に定着するニップ部を形成する第2加圧部と、
前記第1又は第2加圧部の少なくとも一方を加熱する加熱部と、
前記第1又は第2加圧部の少なくとも一方の表面に接触して清掃する第1清掃部と、
を備え、
前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度を定着時より高い温度に維持する制御を行って回転する高温回転動作を行った後、前記ニップ部に清掃材を通過させ、
前記清掃材の通過時、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度は、前記高温回転動作時の温度より低い温度を維持する制御を行う定着装置である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、前記定着時より高い温度は、前記第1清掃部により清掃されるトナーの凝集力が、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部に対する前記トナーの付着力より小さくなる温度である請求項1に記載の定着装置である。
【0010】
請求項3に記載された発明は、前記高温回転動作時の回転速度は、前記定着時の最も速い速度より遅い速度である請求項2に記載の定着装置である。
【0011】
請求項4に記載された発明は、前記高温回転動作時、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度は、前記第1及び第2加圧部の回転方向と交差する方向に沿った最大サイズの前記シート状媒体が通過する領域にわたり前記定着時より高い温度とされる請求項1に記載の定着装置である。
【0013】
請求項5に記載された発明は、前記高温回転動作後、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部の表面温度が前記高温回転動作時より低下した後に前記清掃材を通過させる請求項4に記載の定着装置である。
【0014】
請求項6に記載された発明は、前記清掃材の通過後、前記第1清掃部が接触する前記第1又は第2加圧部を、前記高温回転動作時より低い温度に維持する制御を行って回転させる低温回転動作を行う請求項1に記載の定着装置である。
【0015】
請求項7に記載された発明は、前記第1清掃部に接触して清掃する第2清掃部を更に備え、
前記第1清掃部の表面はゴム材料からなり、前記第2清掃部の表面は金属材料からなる請求項1に記載の定着装置である。
【0016】
請求項8に記載された発明は、前記定着時における前記第1加圧部、前記第2加圧部、前記第1清掃部及び前記第2清掃部に対するトナーの付着力は、
第2清掃部>第1清掃部>第1、第2加圧部
の関係を満たす請求項7に記載の定着装置である。
【0017】
請求項9に記載された発明は、前記トナー層で構成されたトナー像を記録媒体に定着する請求項1に記載の定着装置である。
請求項10に記載された発明は、前記第1加圧部はロール状部材であり、その内側に前記加熱部を備え、
前記第2加圧部は無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を内側から保持する保持部材とを備え、
前記第1清掃部は前記第1加圧部の表面に接触して清掃する請求項1に記載の定着装置である。
請求項11に記載された発明は、前記第1加圧部は無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を内側から押圧する押圧部材と、前記加熱部を備え、
前記第2加圧部はロール状部材であり、
前記加熱部は前記ベルト部材を挟んでニップ部に面し、
前記第1清掃部は前記第1加圧部の表面に接触して清掃する請求項1に記載の定着装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載された発明によれば、クリーニング空回転時の温度がトナー定着時の温度以下である場合に比べ、清掃部が保持する回収トナーの除去性を向上させることができる。また、清掃材の通過時、第1清掃部が接触する第1又は第2加圧部の表面温度は、高温回転動作時の温度と同等である場合に比べ、第1又は第2加圧部に逆転移させた回収トナーが再度第1清掃部へ転移するのを抑制できる。
【0019】
請求項2に記載された発明によれば、定着時より高い温度は、第1清掃部により清掃された回収トナーの凝集力が、第1清掃部が接触する第1又は第2加圧部に対するトナーの付着力以上となる温度である場合に比べ、清掃部が保持する回収トナーを第1清掃部が接触する第1又は第2加圧部に確実に転移させることができる。
【0020】
請求項3に記載された発明によれば、高温回転動作時の回転速度は、定着時の最も速い速度と同等である場合に比べ、清掃部が保持する回収トナーの除去性を向上できる。
【0021】
請求項4に記載された発明によれば、高温回転動作時、第1清掃部が接触する第1又は第2加圧部の表面温度は、最大サイズの記録媒体が通過する領域より狭い領域が定着時より高い温度とされる場合に比べ、最大サイズのシート状媒体が通過する領域の全域にわたり回収トナーを第1又は第2加圧部に転移させやすくなる。
【0023】
請求項5に記載された発明によれば、高温回転動作後、第1清掃部が接触する第1又は第2加圧部の表面温度が高温回転動作時と同等であるときに清掃材を通過させた場合に比べ、第1又は第2加圧部に逆転移させた回収トナーを清掃材に確実に付着させることができる。
【0024】
請求項6に記載された発明によれば、清掃材の通過後、第1清掃部が接触する第1又は第2加圧部を、高温回転動作時と同等の温度で回転させる場合に比べ、第1又は第2加圧部に逆転移した回収トナーがそのまま残留することを抑制できる。
【0025】
請求項7に記載された発明によれば、第1清掃部に接触して清掃する第2清掃部を備えない場合に比較して、第1清掃部により清掃した回収トナーが第1又は第2加圧部へ逆転移するのを抑制できる。
【0026】
請求項8に記載された発明によれば、定着時における前記第1加圧部、第2加圧部、第1清掃部及び第2清掃部に対するトナーの付着力は、
第2清掃部>第1清掃部>第1、第2加圧部
の関係を満たさない場合に比べ、回収トナーを第2清掃部に確実に転移させ回収できる。
【0027】
請求項9に記載された発明によれば、クリーニング空回転時の温度がトナー像定着時の温度以下である場合に比べ、清掃部が保持する回収トナーの除去性を向上させることができる。
請求項10及び11に記載された発明によれば、クリーニング空回転時の温度がトナー定着時の温度以下である場合に比べ、清掃部が保持する回収トナーの除去性を向上させることができる。また、清掃材の通過時、第1清掃部が接触する第1又は第2加圧部の表面温度は、高温回転動作時の温度と同等である場合に比べ、第1又は第2加圧部に逆転移させた回収トナーが再度第1清掃部へ転移するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図3】この発明の実施の形態1に係る定着装置を示す断面構成図である。
【
図5】加熱ロール、清掃ロール及び回収ロールの濡れ性の指標を示すグラフである。
【
図7】加熱ロール、清掃ロール及び回収ロールの表面に対するトナーの付着力、トナー凝集力と温度との関係を示すグラフである。
【
図8】トナーの付着力を測定する測定原理を示す模式図である。
【
図9】トナーの付着力を測定する測定原理を示す模式図である。
【
図10】トナーの粘度を測定する測定装置を示す模式図である。
【
図11】回収トナーを回収するための原理を示す説明図である。
【
図12】加熱ロール及び清掃ロールの表面に対するトナーの付着状態を示す説明図である。
【
図13】加熱ロール及び清掃ロールの表面に対するトナーの付着状態を示す説明図である。
【
図14】加熱ロール及び清掃ロールの表面に対するトナーの付着状態を示す説明図である。
【
図15】この発明の実施の形態1に係る定着装置の作用を示す構成図である。
【
図16】この発明の実施の形態2に係る定着装置の要部を示す構成図である。
【
図17】この発明の実施の形態3に係る定着装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る定着装置を適用した画像形成装置の全体の概略を示している。なお、図中、矢印Xは水平方向に沿った幅方向を、Yは水平方向に沿った奥行方向を、Zは鉛直方向をそれぞれ示している。
【0031】
<画像形成装置の全体の構成>
画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、
図1に示されるように、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されたトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置50と、中間転写装置20で二次転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる本実施の形態に係る定着装置40等を備えている。符号1aは、支持構造部材や外装カバー等で形成される装置本体を示している。なお、本実施の形態における記録媒体は、一例として、シート状の形状を有するシート状媒体である。また、トナー像は、トナーで構成された層であるトナー層の一例である。
【0032】
この実施の形態1では、複数の作像装置10と中間転写装置20が、記録媒体にトナー像を形成する画像形成部を構成している。なお、画像形成部は、単一の作像装置を備え、中間転写装置を介さず作像装置から記録媒体にトナー像を直接形成するように構成しても良い。
【0033】
作像装置10は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。これらの4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、装置本体1aの内部空間において水平方向Xに対して傾斜した状態で1列に配置されている。
【0034】
各作像装置10(Y,M,C,K)は、
図1に示されるように、回転する像保持手段の一例としての感光体ドラム11を備えており、この感光体ドラム11の周囲に、次のような各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する静電潜像形成手段の一例としての露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像手段の一例としての現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写する一次転写手段の一例としての一次転写装置15と、一次転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃手段の一例としてのドラムクリーニング装置16等である。なお、感光体ドラム11や帯電装置12等を示す符号は、イエロー(Y)の作像装置10Yにのみ付し、他の作像装置10(M,C,K)では省略している。
【0035】
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない駆動装置から駆動力が伝達されて矢印Aで示す方向に回転するよう支持されている。
【0036】
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電ロールで構成される。帯電装置12には帯電用電圧が供給される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、その現像装置14から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧又は電流が供給される。帯電装置12の背面側には、帯電装置12の表面を清掃するクリーニングロール121が接触した状態で配置されている。
【0037】
露光装置13は、感光体ドラム11の軸方向に沿って配列された複数の発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)により感光体ドラム11に画像情報に応じた光を照射して静電潜像を形成するLEDプリントヘッド等からなるものである。露光装置13には、潜像形成時になると、画像形成装置1に任意の手段で入力される画像の情報(信号)が送信される。なお、露光装置13としては、画像形成装置1に入力される画像の情報に応じて構成されるレーザ光を、帯電された後の感光体ドラム11の周面に対して照射して静電潜像を形成するものを用いても良い。
【0038】
現像装置14(Y,M,C,K)はいずれも、
図1に示されるように、開口部と現像剤の収容室が形成された筐体140の内部に、現像剤を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロール141と、現像剤を撹拌しながら現像ロール141を通過させるよう搬送するスクリューオーガー等の撹拌搬送部材142,143と、現像ロール141に保持される現像剤の量(層厚)を規制する層厚規制部材144などを配置して構成されたものである。この現像装置14には、その現像ロール141と感光体ドラム11の間に現像用電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロール141や撹拌搬送部材142,143は、図示しない駆動装置からの駆動力が伝達されて所要の方向に回転する。さらに、上記4色の現像剤(Y,M,C,K)としては、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。
【0039】
イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナーT(Y,M,C,K)としては、例えば、
図2に示されるように、内部に粒状の色材301や低融点の合成樹脂302、あるいは潤滑剤などを分散させた通常の熱溶融性樹脂303を有し、その外周を通常の熱溶融性樹脂304で被覆し、外周面に帯電性や清掃性などを調整する機能性微粒子からなる外添剤305を添加したEA(Emulsion Aggregation:乳化重合)トナーが用いられる。低融点の合成樹脂302や通常の熱溶融性樹脂303,304としては、例えば、ポリエステル樹脂が用いられる。EAトナーTは、数平均粒子径が約3~5μm程度であり、略球形状に形成されている。潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などの脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などの金属との化合物である脂肪酸金属塩が用いられる。
【0040】
一次転写装置15は、
図1に示されるように、一次転写位置において感光体ドラム11の周面に中間転写ベルト21を介して接触し回転するとともに一次転写用電圧が供給される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写用電圧としては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧が図示しない電源装置から供給される。
【0041】
ドラムクリーニング装置16は、容器状の本体160の内部に配置されて残留トナー等の付着物を取り除いて清掃するクリーニングブレード161と、クリーニングブレード161で取り除いたトナー等の付着物を回収して図示しない回収システムに送り出すよう搬送するスクリューオーガー等の送出部材162などで構成されている。
【0042】
中間転写装置20は、各作像装置10(Y,M,C,K)の上方の位置に存在するよう配置される。この中間転写装置20は、感光体ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に循環移動する中間転写手段の一例としての中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内周から所望の状態に保持して循環移動可能に支持する複数のベルト支持ロール22~25と、ベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に二次転写させる二次転写装置30と、二次転写装置30を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルトクリーニング装置26とで主に構成されている。
【0043】
中間転写ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール22は駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール23は中間転写ベルト21の走行位置を保持する面出しロールとして構成され、ベルト支持ロール24は張力付与ロールとして構成され、ベルト支持ロール25は二次転写のバックアップロールとして構成されている。
【0044】
二次転写装置30は、中間転写装置20におけるベルト支持ロール25に支持されている中間転写ベルト21の外周面部分である二次転写位置において回転する二次転写ロール31を備えている。二次転写ロール31又は中間転写装置20のベルト支持ロール25には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として供給される。
【0045】
定着装置40は、表面温度が予め定められた温度に保持されるよう加熱手段によって加熱される第1加圧部の一例としての加熱ロール41と、この加熱ロール41に所要の圧力で接触して回転する第2加圧部の一例としての加圧ベルト42などを配置して構成されたものである。この定着装置40では、加熱ロール41と加圧ベルト42が接触する接触部が未定着トナー像を記録用紙5に定着する所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着ニップ部Nとなる。なお、定着装置40については、後に詳述する。
【0046】
給紙装置50は、作像装置10(Y,M,C,K)の下方の位置に存在するよう配置される。この給紙装置50は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載板51上に積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体52と、用紙収容体52から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置53とで主に構成されている。用紙収容体52は、例えば、装置本体1aの正面(使用者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるよう取り付けられている。
【0047】
また、画像形成装置1は、装置本体1aの一側面(図示例では右側面)に記録用紙5を手差しで給紙する手差し給紙装置70を備えている。手差し給紙装置70は、装置本体1aに対して開閉可能に装着され所望の記録用紙5を積載した状態で収容する手差しトレイ71と、手差しトレイ71から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置72等で構成されている。手差し給紙装置70は、画像を形成する所望の記録用紙5以外に、後述するように清掃材の一例としての記録用紙5を給紙する際などに使用される。
【0048】
記録用紙5としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙やトレーシングペーパー等の薄紙、あるいは合成樹脂(PETなど)製の透明なフィルム状の媒体からなるOHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録用紙5の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等の坪量が相対的に大きい所謂厚紙なども好適に使用することができる。また、記録用紙5としては、表面に凹凸が形成されたエンボス紙などが用いられる。
【0049】
給紙装置50と二次転写装置30との間には、給紙装置50から送り出される記録用紙5を二次転写位置まで搬送する単数(又は複数)の用紙搬送ロール対54や搬送ガイド材55,56で構成される給紙搬送路57が設けられている。また、手差し給紙装置70と用紙搬送ロール対54との間には、搬送ガイド材55aが設けられている。給紙搬送路57において二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対54は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成される。
【0050】
また、二次転写装置30と定着装置40との間には、二次転写装置30から送り出される記録用紙5を定着装置40まで搬送する搬送ガイド材58等で構成される用紙搬送路59が設けられている。
【0051】
定着装置40の下流側には、定着装置40によりトナー像が定着された記録用紙5を、装置本体1aの上部に配置された用紙排出部60に排出するための用紙搬送ロール対61及び用紙排出ロール対62や搬送ガイド材63,64等を備えた排出搬送路65が設けられている。
【0052】
図1中、符号100は、画像形成装置1の動作を統括的に制御する制御手段の一例としての制御装置を示している。制御装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、あるいはこれらCPUやROM等を接続するバス、通信インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0053】
<画像形成装置の基本的な動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
【0054】
ここでは、前記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するときの画像形成動作について説明する。なお、4つの作像装置10(Y,M,C,K)のうち、いずれか1つ以上の作像装置10を使用して単色又は複数色のトナー像を組み合わせた画像を形成するときの画像形成動作も基本的には同様である。
【0055】
画像形成装置1は、画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、制御装置100の制御によって、4つの作像装置10(Y,M,C,K)、中間転写装置20、二次転写装置30、定着装置40等が始動する。
【0056】
そして、各作像装置10(Y,M,C,K)においては、まず各感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置12が各感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位に帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて発光される光を照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0057】
続いて、各現像装置14(Y,M,C,K)が、感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーをそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
【0058】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して順番に重ね合わせるような状態で一次転写させる。
【0059】
また、一次転写が終了した各作像装置10(Y,M,C,K)では、ドラムクリーニング装置16が付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、各作像装置10(Y,M,C,K)は次の作像動作が可能な状態となる。
【0060】
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置50では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路57に送り出す。給紙搬送路57では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対54が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0061】
二次転写位置においては、二次転写ロール31が、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した後の中間転写装置20では、ベルトクリーニング装置26が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0062】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙5は、中間転写ベルト21と二次転写ロール31から剥離された後に用紙搬送路59に沿って定着装置40まで搬送される。定着装置40では、回転する加熱ロール41と加圧ベルト42との間の定着ニップ部Nに二次転写後の未定着のトナー像を保持した記録用紙5を導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)を行い未定着のトナー像を記録用紙5に定着させる。定着が終了した後の記録用紙5は、排出搬送路65を介して用紙排出ロール対62により、装置本体1aの上部に設けられた用紙排出部60に排出される。
【0063】
以上の動作により、4色のトナーT(Y,M,C,K)からなるトナー像を組み合わせて形成されるフルカラー画像が出力される。
【0064】
<定着装置の構成>
この実施の形態1に係る定着装置40は、所謂フリーベルトニップ方式の定着装置である。定着装置40は、
図3に示されるように、大別して、回転する第1加圧部の一例としての加熱ロール41と、加熱ロール41に圧接して未定着トナー像Tiを記録用紙5に定着する定着ニップ部Nを形成する第2加圧部の一例としての無端状のベルトからなる加圧ベルト42と、加圧ベルト42の内部に配置され、加圧ベルト42を加熱ロール41の表面に圧接させる圧接部の一例としての圧接部材44と、圧接部材44を保持する保持部の一例としての保持部材45と、加圧ベルト42と圧接部材44の間に介在されて摺動抵抗を低減するシート部の一例としての摺動シート46と、加圧ベルト42の内周面に付与される潤滑剤を保持する潤滑剤保持部の一例としてのフェルト部材47を備えている。
【0065】
加熱ロール41は、ステンレスやアルミニウム、あるいは鉄(薄肉高張力鋼管)等の金属からなる円筒形状の芯金411と、芯金411の外周に被覆された耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる弾性体層412と、弾性体層412の表面に薄く被覆されたパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等からなる離型層413を有している。この実施の形態1では、加熱ロール41の離型層413としてパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を用いている。加熱ロール41の内部には、加熱部(加熱源)の一例として2本のハロゲンランプ414a,414bが配置されている。2本のハロゲンランプ414a,414bは、例えば、記録用紙5の搬送方向と交差する方向に沿ったサイズに応じて適宜使用される。
【0066】
加熱ロール41は、その軸方向に沿った両端部が定着装置40の図示しないフレームに軸受部材(図示せず)を介して回転可能に支持されている。また、加熱ロール41は、その軸方向に沿った一端部に取り付けられた駆動ギアを介して図示しない駆動装置によって矢印C方向に沿って所要の速度で回転駆動される。加熱ロール41の回転速度、すなわち定着速度は、記録用紙5の坪量などに応じて高速、中速、低速など複数の速度に設定可能である。この実施の形態1では、加熱ロール41の回転速度として一種類の定着速度のみが設定されている。なお、加圧ベルト42は、加熱ロール41の外周面に圧接された状態で加熱ロール41の回転に伴って略同一の速度で従動回転する。
【0067】
加熱ロール41は、その表面温度が温度検出手段の一例としての非接触式の温度センサ431によって検知される。加熱ロール41は、温度センサ431の検知結果に基づいてハロゲンランプ414a,414bへの通電を図示しないトライアック等を用いた温度制御回路によって制御することにより、その表面が所要の定着温度(例えば、170℃~190℃)となるよう加熱される。
【0068】
この実施の形態1では、定着時における加熱ロール41の表面温度として、薄紙用の定着温度である170℃と、普通紙用の定着温度である180℃と、厚紙用の定着温度である190℃の複数(3種類)の温度が設定されている。ここで、普通紙とは、坪量が52g/m2以上105g/m2以下の用紙をいい、厚紙とは、坪量が105g/m2を超え且つ350g/m2以下の用紙をいい、薄紙とは、坪量が52g/m2未満の用紙をいう。但し、記録用紙5の薄紙、普通紙及び厚紙の区分は、上記坪量に限定されるものではなく、他の坪量に基づいて区分されるものであっても勿論良い。
【0069】
一方、加圧ベルト42は、
図3に示されるように、薄肉円筒形の可撓性を有する無端状ベルトとして構成されている。加圧ベルト42は、基材層と、基材層の表面に被覆された弾性体層と、弾性体層の表面に被覆された離型層とを備える。また、加圧ベルト42は、基材層と、基材層の表面に直接被覆された離型層とから構成しても良い。基材層は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性を有する合成樹脂や、ステンレス、ニッケル、銅等の金属によって形成される。弾性体層は、耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体からなる。離型層は、加熱ロール41と同様に、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等によって形成される。この実施の形態1では、加圧ベルト42の図示しない離型層として、加熱ロール41と同様にパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を用いている。加圧ベルト42は、例えば、その厚さが50~200μm程度に設定可能である。
【0070】
加圧ベルト42は、その長手方向(軸方向)に沿った両端部が図示しない案内部材によって回転可能に支持されている。
【0071】
加圧ベルト42の内部には、圧接部材44が配置されている。圧接部材44は、加圧ベルト42を加熱ロール41の表面に向けて圧接させることにより、加熱ロール41と加圧ベルト42の間に定着ニップ部Nを形成する加圧パッドからなる。
【0072】
圧接部材44は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性を有する弾性体から断面矩形の細長い直方体状に形成されている。圧接部材44は、加熱ロール41の中心Oを通る中心線に沿って加圧ベルト42を加熱ロール41の外周面に圧接させるよう配置されている。圧接部材44の裏面には、例えば、ステンレス等の薄い金属板からなる細長い矩形状の図示しない板材が接着等の手段により固着される。
【0073】
一方、保持部材45は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性及び剛性を有する合成樹脂、あるいは鉄やアルミニウム、ステンレス等の金属を材料として形成することができる。
【0074】
保持部材45は、
図3に示されるように、断面略台形の細長い直方体状に形成されている。保持部材45の加熱ロール41と対向する面には、圧接部材44を取り付けるための凹部451が設けられている。
【0075】
保持部材45は、その全体を必ずしも同一の部材で構成する必要はなく、圧接部材44を保持する部材と、当該圧接部材44を保持する部材を加熱ロール41の外周面に押圧させる部材など、複数の部材を組み合わせて構成しても良い。
【0076】
また、保持部材45は、その断面形状が略台形に限定されるものではなく、加圧ベルト42を回転(周回移動)可能に保持する任意の断面形状に形成することができる。保持部材45は、加圧ベルト42を回転可能に保持するため、当該加圧ベルト42の内周面に摺動シート46を介して一部(下端面)455が接触するよう配置されている。
【0077】
摺動シート46は、細長い平面矩形状のシートからなる。摺動シート46としては、例えば、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなる基層と、基層の表面又は表裏両面に積層されたアラミド繊維等からなる織物や編物等からなる組織を備えたものが用いられる。また、摺動シート46としては、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなる基層のみで構成したものを用いても良い。摺動シート46は、その厚さが100~200μm程度に設定可能である。
【0078】
摺動シート46は、加圧ベルト42の回転方向に沿った上流側の端部に設けられた図示しない複数の係合孔を介して、保持部材45の段差部453に背面側へ向けて設けられた複数の凸部452に係止されている。また、摺動シート46は、加圧ベルト42の回転方向に沿った下流側の端部が、定着ニップ部Nを通過して保持部材45の上端部に沿った位置まで延在されている。
【0079】
また、保持部材45の定着ニップ部Nと反対側に位置する端部には、
図3に示されるように、フェルト部材47を取り付けるための平坦面からなる装着部454が設けられている。装着部454には、図示しない耐熱性を有する両面テープによる粘着や接着剤による接着等の手段によりフェルト部材47が取り付けられている。フェルト部材47には、加圧ベルト42の内周面に塗布された状態で供給するための潤滑剤が所要量(例えば、3g程度)予め含浸されている。潤滑剤としては、粘度が100~350
cSのアミノ変性シリコーンオイル等が用いられる。潤滑剤は、予めフェルト部材47に含浸させることで、加圧ベルト42の内周面に塗布供給されるが、これに限定されるものではなく、初期的に加圧ベルト42の内周面に塗布した状態で供給しても良い。
【0080】
加熱ロール41の表面には、当該加熱ロール41の表面に付着したトナーや記録用紙5の紙粉等を除去する清掃装置80が配置されている。清掃装置80は、加熱ロール41の表面に所要の押圧力で接触する第1清掃部の一例としての清掃ロール81と、清掃ロール81の表面に所要の押圧力で接触する第2清掃部の一例としての回収ロール82とを備えている。清掃ロール81は、加熱ロール41の外周面において、定着ニップ部N側に近い図中の下端部近傍に配置されている。ただし、清掃ロール81の位置は、定着ニップ部N側に近い下端部に限定されるものではなく、加熱ロール41の外周面における他の位置に配置しても勿論良い。
【0081】
清掃ロール81は、
図4に示されるように、ステンレスや鉄、アルミニウム等からなる円柱形状の金属製芯金811の外周に、シリコーンゴムやフッ素ゴム等からなるゴム材料からなる被覆層812を所要の厚さとなるよう被覆して構成されている。この実施の形態1では、清掃ロール81の被覆層812としてシリコーンゴムを用いている。
【0082】
また、回収ロール82は、ステンレスや鉄、アルミニウム等の金属あるいはフェノール樹脂等の合成樹脂などからなる中実円柱形状に形成されている。回収ロール82の外周面82aは、トナーの回収性及び保持性を向上させるため、ブラスト加工等により粗面化処理が施されて予め定められた表面粗さを有している。この実施の形態1では、回収ロール82として外周面82aにブラスト加工を施したステンレスからなる中実円柱形状の部材を用いている。なお、回収ロール82の外径は、清掃ロール81より小さく設定されている。但し、回収ロール82の外径は、清掃ロール81と同等か又は清掃ロール81より大きく設定しても良い。
【0083】
加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82は、
図5に示されるように、その表面の濡れ性が加熱ロール>清掃ロール>回収ロールの順に良くなるよう設定されている。すなわち、加熱ロール41は、その表面の濡れ性が最も悪い。加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の表面の濡れ性は、表面自由エネルギーの大きさを示す指標であり、濡れ性が良い(表面自由エネルギーが大きい)程、トナーに対する付着力が大きい。したがって、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82のうち、トナーに対する付着力は回収ロール82が最も大きく、次に清掃ロール81が大きく、加熱ロール41のトナーに対する付着力が最も小さい。そのため、加熱ロール41の表面に付着したトナーは、より付着力の大きい清掃ロール81へと転移し、清掃ロール81に転移したトナーは、最終的に最も付着力の大きい回収ロール82へと転移して回収され蓄積される。
【0084】
加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の表面の濡れ性を水の接触角で示せば、加熱ロール41の表面層である離型層413を構成するパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)は、約109度、清掃ロール81の被覆層812を構成するシリコーンゴムは、約80~90度、回収ロール82を形成するステンレスは、約80度である。回収ロール82は、ステンレスからなることに加えて、その外周面82aにブラスト処理が施されており更に濡れ性が向上している(水の接触角が小さい)。因みに、回収ロール82の材料として使用可能なアルミニウムは、水の接触角が約4.6度と非常に小さく濡れ性に優れている。
【0085】
ところで、定着装置40では、
図3に示されるように、定着動作時、未定着トナー像Tiを保持した記録用紙5が定着ニップ部Nを通過することにより定着処理が行われる。その際、記録用紙5に保持された未定着トナー像Tiは、定着ニップ部Nにおいて加熱ロール41の表面と接触する。しかし、未定着トナー像Tiを構成するトナーのうち、加熱ロール41の表面に転移(オフセット)するトナーは、記録用紙5に対する付着力が圧倒的に大きいため、略ゼロであるか転移したとしても極僅かである。
【0086】
仮に、加熱ロール41の表面にトナーが転移したとしても、加熱ロール41の表面に転移したトナーは、加熱ロール41の回転に伴って清掃ロール81が接触する清掃位置へと移動する。加熱ロール41の表面に転移したトナーは、清掃位置において加熱ロール41の表面から清掃ロール81へと移行することで清掃(除去)される。清掃ロール81の表面へと移行したトナーは、回収ロール82と接触する回収位置において、清掃ロール81の表面から回収ロール82へと移行し回収される。回収ロール82により回収された回収トナーは、そのまま回収ロール82の外周面に付着した状態で保持される。
【0087】
このように、定着装置40では、通常の定着動作時、加熱ロール41の外周面に転移するトナーの量は略ゼロであるか極僅かである。そのため、定着装置40を長期間使用した場合においても清掃装置80の清掃ロール81及び回収ロール82で清掃され回収される回収トナーの総量は、それ程多くない。したがって、加熱ロール41に配設された清掃装置80は、清掃ロール81及び回収ロール82を交換することなく、定着装置40が寿命に達するまで使用することが可能である。
【0088】
しかしながら、定着装置40では、記録用紙5の外周縁にわたってフルカラーなどの画像を形成する所謂縁なしプリントを連続して実行する場合など、
図6(a)に示されるように、記録用紙5の外縁部から加熱ロール41の表面にトナーが付着し易い傾向がある。これは、記録用紙5の外縁部以外の領域では、トナー像の周囲にも他のトナー像が存在するため、隣接するトナー像同士に吸着力が作用して加熱ロール41の表面にトナー像のトナーが付着し難い。これに対して、記録用紙5の外縁部では、当該外縁部のトナー像の外側に他のトナー像が存在しないため、隣接するトナー像同士の吸着力が作用せず、外縁部以外の領域に比べて加熱ロール41の表面にトナー像のトナーが付着し易い。加熱ロール41の表面に付着したトナーTcは、清掃ロール81によって清掃された後、清掃ロール81の表面から回収ロール82へと移行して回収される。その際、清掃ロール81によって一度に清掃しきれなかったトナーTcは、加熱ロール41の表面に残留する。尚、ここで、縁なしプリントとは、記録用紙5の外周端にわたりトナー像を形成する場合に限らず、記録用紙5の外周端より内側に僅かな隙間を残してトナー像を形成する場合をも含むものである。
【0089】
そのため、回収ロール82の表面には、
図6(b)に示されるように、加熱ロール41の表面から除去されたトナーTcが清掃ロール81を介して徐々に蓄積される。そして、記録用紙5に縁なしプリントの画像を多数枚定着した場合など、回収ロール82の表面に蓄積された回収トナーTcの量が当該回収ロール82が保持可能な許容量を超えると、
図6(c)に示されるように、回収トナーTcの一部が清掃ロール81へと逆転移して清掃ロール81の外周面に蓄積され始める。
【0090】
さらに、縁なしプリントを行う記録用紙5の数が累積的に増加し、清掃ロール81の外周面に蓄積される回収トナーTcの量が許容量を超えると、
図6(c)に示されるように、清掃ロール81の外周面に保持された回収トナーTcの一部が加熱ロール41の表面へと逆転移し始める。
【0091】
加熱ロール41の表面へと逆転移した回収トナーTcは、その後に定着処理を受ける記録用紙5上に転移したり、加圧ベルト42に移行した後に記録用紙5の裏面に転移して画像汚れとなって現れる。その結果、定着装置40は、清掃装置80が清掃機能を果たすことができず寿命となり、定着装置40の全体を新たなものと交換する必要が生じる。
【0092】
また、定着装置40では、上述した縁なしプリント以外にも、記録用紙5の搬送不良である所謂ジャム(紙詰まり)が発生した場合など、記録用紙5上の未定着トナー像Tiを構成するトナーTが加熱ロール41の表面に多量に付着する場合がある。
【0093】
更に説明すると、定着装置40の定着ニップ部Nにおいて、未定着トナー像Tiを保持する記録用紙5のジャムが発生した場合には、通常、図示しないニップ解除機構を操作して加熱ロール41と加圧ベルト42の圧接状態を解除した状態で、定着ニップ部Nにおいてジャムが発生した記録用紙5の除去が行われる。この場合は、未定着トナー像Tiを保持した記録用紙5が加熱ロール41の表面に接触しないか、接触しても弱い力で接触するため、記録用紙5上に保持された未定着トナー像TiのトナーTが加熱ロール41の表面に多量に付着することはない。
【0094】
しかし、ユーザーによっては、定着装置40の定着ニップ部Nにおいて記録用紙5のジャムが発生した際、加熱ロール41と加圧ベルト42の圧接状態を解除せずに、装置本体1aの用紙排出ロール対62側から記録用紙5の先端を把持して引き抜くことにより、ジャムが発生した記録用紙5の除去を行う場合がある。
【0095】
すると、記録用紙5上に保持された未定着トナー像Tiを構成するトナーTは、記録用紙5を引き抜く際に記録用紙5の移動と共に加熱ロール41が回転し当該加熱ロール41の表面に大量に付着する。加熱ロール41の表面に大量に付着したトナーTcは、そのまま清掃位置において清掃ロール81により清掃されて清掃ロール81の表面に転移する。そして、清掃ロール81の表面に転移した大量のトナーは、回収ロール82によって回収され、当該回収ロール82の表面に保持される。
【0096】
上述したように、加熱ロール41と加圧ベルト42の圧接状態を解除せずに、記録用紙5の除去が行われると、加熱ロール41の表面に付着するトナーの量は、一度でも多量となる。そして、回収ロール82の表面に蓄積された回収トナーTcの量が当該回収ロール82が保持可能な許容量を超えると、回収トナーTcの一部が清掃ロール81の外周面へと逆転移して清掃ロール81の外周面に蓄積され始め、清掃ロール81の外周面に蓄積される回収トナーTcの量が許容量を超えると、
図6(c)に示されるように、清掃ロール81の外周面に保持された回収トナーTcの一部が加熱ロール41の表面へと逆転移しはじめ、定着装置40が寿命となる。
【0097】
さらに、定着装置40では、記録用紙5として表面に凹凸を有するエンボス紙が使用される場合がある。エンボス紙は、平坦な普通紙と異なり、定着装置40の定着ニップ部Nを通過する際に表面の凹部で十分な定着圧力及び熱を未定着トナー像Tiに作用させることが困難である。そのため、エンボス紙は、未定着トナー像Tiを構成するトナーTが加熱ロール41の表面に付着し易く、清掃ロール81で回収されるトナーの量が普通紙と比べて大幅に多い。
【0098】
このように、定着装置40では、記録用紙5としてエンボス紙が多く使用されると、未定着トナー像TiのトナーTcが加熱ロール41の表面に付着し易く、清掃ロール81で回収される回収トナーTcが大量となり、清掃ロール81及び回収ロール82に保持される回収トナーTcの量が許容量を超える場合がある。
【0099】
いずれの場合も、従来の定着装置40は、清掃ロール81及び回収ロール82から回収トナーTcを除去する手段を有していないため、清掃ロール81及び回収ロール82が寿命に達すると、定着装置40を新たなものと交換せざるを得なかった。
【0100】
そこで、この実施の形態1に係る定着装置40は、清掃ロール81及び回収ロール82が保持する回収トナーTcの除去性を向上させ、清掃ロール81及び回収ロール82に付着した回収トナーTcが許容量に達するような場合であっても、清掃ロール81及び回収ロール82に付着した回収トナーTcを除去して、清掃ロール81及び回収ロール82を継続して使用可能となるよう構成したものである。
【0101】
本発明者等は、清掃ロール81及び回収ロール82に付着した回収トナーTcを除去することができる条件を明らかにするため、清掃ロール81及び回収ロール82に付着した回収トナーTc自体が凝集しようとする力、つまり清掃ロール81及び回収ロール82に付着した回収トナーTc同士が凝集して清掃ロール81及び回収ロール82に付着したままの状態を維持しようとする凝集力と、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82のそれぞれの表面にトナーが付着する付着力が、温度によってどのように変化するかを考察した。
【0102】
その結果、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の温度によっては、清掃ロール81及び回収ロール82の外周面に付着した回収トナーTcが凝集しようとする凝集力より、加熱ロール41の外周面に対する回収トナーTcの付着力が大きくなり、回収トナーTcを清掃ロール81及び回収ロール82から加熱ロール41へと逆に転移させ、清掃ロール81及び回収ロール82に付着した回収トナーTcを除去可能であることを見出した。
【0103】
図7は、横軸に温度をとり、縦軸に回収トナーの凝集力Ftnと、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82のそれぞれの表面に対するトナーの付着力Fhr,Fcln,Fsptを測定した結果を示すグラフである。回収トナーと新しいトナーとは、回収トナーに記録用紙5の紙粉等が混合している可能性があり、厳密には組成が異なるが、ここでは、回収トナーとして新しいトナーそのものを用いた。なお、新しいトナーとしては、富士ゼロックス社製のEA-Ecoトナーを使用した。
【0104】
加熱ロール41は、その表面である離型層413がパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)からなり、清掃ロール81は、その被覆層812がシリコーンゴムからなり、回収ロール82は、その外周面82aがブラスト加工されたステンレスからなるものとした。
【0105】
加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82のそれぞれの表面に対するトナーの付着力は、タッキング試験機を用いて測定した。タッキング試験機としては、株式会社レスカ製のTAC-1000を用いた。タッキング試験機は、
図8に示されるように、付着力を測定する対象であるトナーをステージSの表面に予め定められた量だけ載せ、このステージS上に載せられたトナーの表面に、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の各表面と同一の素材からなる下端面を有するプローブPを一定の力で圧接させた後、プローブPを引き上げるのに要する付着力(kPa)の最大値を測定したものである。
【0106】
なお、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82のそれぞれの表面に対するトナーの付着力が回収トナーの凝集力Ftnより大きい場合は、
図9に示されるように、トナーがプローブPから剥離せずに、凝集したトナーの凝集力Ftnが限界に達してトナーが分離する。したがって、タッキング試験機を用いて
図8の状態から
図9の状態へ移行する温度を測定することにより、
図7において、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の各表面に対するトナーの付着力と回収トナーの凝集力Ftnが等しくなる温度を求めることが可能となる。
【0107】
付着力の測定は、実験室の環境下(温度20℃、相対湿度50%)において、プローブP及びステージSの温度を室温から約220℃の範囲にわたり変化させて行った。
【0108】
また、回収トナーの凝集力は、次のようにして測定した。
【0109】
トナーの凝集力とは、トナーが流れるときの内部抵抗である。トナーの凝集力は、トナーの流動性の基準となる。流動化するトナーの凝集力は、トナーの粘度を測定することにより求めた。
【0110】
トナーの粘度を測定する測定装置としては、高化式フローテスターCFT-500C(株式会社島津製作所製)を用いた。トナーの粘度の測定は、
図10に示されるように、流動化するトナーを通過させるダイスDの細孔の直径を0.5mm、ダイスDの細孔の長さを1.0mm、シリンダCyの加圧荷重を0.98MPa(10Kg/cm
2)、プレヒート時間を5分、昇温速度を1.0℃/分、測定温度間隔を1.0℃、測定開始温度を65℃とした条件下で、1.1gのトナーを秤量し、これを高化式フローテスターCFT-500Cにセットし、溶融流出させることによりトナーの粘度を測定した。因みに、トナーを主として構成するポリスチレン樹脂の融点は、約225~276℃である。尚、トナーの粘度の単位は、kPa・
sである。
【0111】
タッキング試験機を用いて測定したトナーの付着力と高化式フローテスターを用いて測定したトナーの粘度を
図7に示されるように比較可能とするためには、例えば、上述したように、タッキング試験機を用いて
図8の状態から
図9の状態へ移行する温度を測定すれば良い。
【0112】
図7から明らかなように、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の表面に対する回収トナーTcの付着力Fhr、Fcln、Fsptは、室温からの温度上昇に伴って急激に増加した後に略一定の値に達し、その後温度が上昇しても略一定の値を維持する。
【0113】
これら加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の表面に対する回収トナーTcの付着力Fhr、Fcln、Fsptは、トナーの回収性を考慮して、回収ロール82が最も大きく、次に清掃ロール81が大きく、加熱ロール41が最も小さくなるよう設定されている(Fhr<Fcln<Fspt)。
【0114】
また、
図7から明らかなように、回収トナーTcの凝集力Ftnは、温度の上昇とともに回収トナーTcの付着力Fhr、Fcln、Fsptと同様に急激に増加し、所要の温度(ガラス転移温度近傍)でピークに達した後、温度に反比例するように減少する。
【0115】
これらの加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の表面に対する回収トナーの付着力Fhr、Fcln、Fsptと、回収トナーTcの凝集力Ftnを比較すると、
図7に示されるように、温度の上昇に伴って、付着力Fhr、Fcln、Fsptと凝集力Ftnが略同時に急激に増加した後、最初に加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrが略一定の値に達し、次に清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnが略一定の値に達し、最後に回収ロール82の表面に対するトナーの付着力Fsptが略一定の値に達し、最後に回収トナーTcの凝集力Ftnがピークに達する。
【0116】
その後、回収トナーTcの凝集力Ftnは、温度の上昇とともに急激に減少し、最初に回収ロール82の表面に対するトナーの付着力Fsptを下回り、次に清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnを下回った後、最後に加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrより小さくなる。
【0117】
ここで、
図7において、温度T1は回収トナーTcの凝集力Ftnを示す曲線が加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrを示す線と交差する(等しくなる)温度、温度T2は回収トナーの凝集力Ftnを示す曲線が回収ロール82の表面に対するトナーの付着力Fsptを示す線と交差する温度、温度T3は回収トナーの凝集力Ftnを示す曲線が回収ロール82の表面に対するトナーの付着力Fsptを示す線と交差する温度、温度T4は回収トナーの凝集力Ftnを示す曲線が清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnを示す線と交差する温度、温度T5は、回収トナーの凝集力Ftnを示す曲線が加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrを示す線と交差する温度をそれぞれ示している。
【0118】
温度T1~温度T5までの温度領域が、加熱ロール41の表面に付着したトナーTcを清掃ロール81及び回収ロール82によって除去するクリーニング機能が成立する温度範囲を示している。
【0119】
定着装置40の定着温度は、例えば、温度T2と温度T3の間に位置する温度T6から、温度T4と温度T5の間に位置する温度T7の範囲で適宜設定される。
【0120】
図7において、温度T1以下の温度領域Iでは、加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrと、清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnとが略同等であるため、加熱ロール41の表面に付着したトナーTcは、
図11に示されるように、清掃位置において、清掃ロール81の表面へと移行せずに、加熱ロール41の表面に付着し続けるので、トナーの清掃を行うことができない。
【0121】
次に、温度T1~温度T2の温度領域IIでは、加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrより、清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnが大きくなり(Fhr<Fcln)、加熱ロール41の表面に付着したトナーTcは、清掃位置において、清掃ロール81の表面へと移行しトナーの清掃が可能となる。
【0122】
同様に、温度T2~温度T4の温度領域IIIでは、清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnより、回収ロール82の表面に対するトナーの付着力Fsptが大きくなり(Fcln<Fspt)、しかも清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnより、回収トナーの凝集力Ftnの方が大きいため、清掃ロール81の表面に付着した回収トナーTcは、回収ロール82の表面へと転移し、当該回収ロール82の表面に留まり続ける。
【0123】
更に、温度T4~温度T5の温度領域IIでは、加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrより、清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnが大きくなり(Fhr<Fcln)、しかも回収トナーの凝集力Ftnより、清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnが大きいため(Ftn<Fcln)、加熱ロール41の表面に付着したトナーTcは、清掃位置において、清掃ロール81の表面へと移行しトナーの清掃が可能となる。
【0124】
これに対して、温度T5より高い温度領域IVでは、回収トナーの凝集力Ftnより、清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnが大きく、しかも回収トナーの凝集力Ftnより、加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrが大きいため(Ftn<Fhr)、回収ロール82の表面に付着した回収トナーTcのうち、清掃ロール81の表面と接触する回収トナーTcは、当該回収トナーTcの凝集力Ftnより、清掃ロール81の表面に対するトナーの付着力Fclnが勝り、清掃ロール81の表面へと移行する。
【0125】
同様に、温度T5より高い温度領域IVでは、清掃ロール81の表面に付着した回収トナーTcのうち、加熱ロール41の表面と接触する回収トナーTcは、当該回収トナーの凝集力Ftnより、加熱ロール41の表面に対するトナーの付着力Fhrが勝り(Ftn<Fhr)、加熱ロール41の表面へと移行する。
【0126】
その結果、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の温度を温度T5より高い温度領域IVに設定することにより、回収ロール82に保持された回収トナーTcを清掃ロール81の表面へと移行させ、清掃ロール81の表面に移行した回収トナーTcを加熱ロール41の表面へと移行させることが可能となる。ここで、温度T5より高い温度領域IVの温度は、例えば、210℃に設定される。
【0127】
なお、
図11では、加熱ロール41と清掃ロール81と回収ロール82の間に、便宜上、各ロールに付着した回収トナーTcの存在を明確化するため間隙が形成されているが、各ロールは、互いに接触するよう配置されていることは勿論である。
【0128】
更に説明すると、清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcには、
図12に示されるように、清掃ロール81の表面に対する付着力Fclnと、加熱ロール41の表面に対する付着力Fhrと、回収トナー自体が凝集しようとする凝集力Ftnが働いていると考えられる。ここでは、便宜上、清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcが二層である場合について図示しているが、清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcが三層以上であっても同様である。
【0129】
次に、清掃ロール81の表面に対する回収トナーTcの付着力Fclnが回収トナーTcの凝集力Ftnよりも大きく、且つ加熱ロール41の表面に対する回収トナーTcの付着力Fhrよりも大きい場合(Fcln>Ftn、且つFcln>Fhr)、清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcは、
図12に示されるように、清掃位置において、加熱ロール41の表面と接触した後も清掃ロール81の表面に付着し続ける。
【0130】
一方、加熱ロール41の表面に対する回収トナーTcの付着力Fhrが回収トナーTcの凝集力Ftnよりも大きく、且つ清掃ロール81の表面に対する回収トナーTcの付着力Fclnよりも小さい場合(Fhr>Ftn、且つFcln>Fhr)、清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcのうち最上層のトナーのみが、
図13に示されるように、清掃位置において、加熱ロール41の表面と接触した際に、加熱ロール41の表面へと逆転移する。
【0131】
さらに、加熱ロール41の表面に対する回収トナーTcの付着力Fhrが回収トナーTcの凝集力Ftnよりも大きく、且つ清掃ロール81の表面に対する回収トナーの付着力Fclnよりも大きい場合(Fhr>Ftn、且つFhr>Fcln)、清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcは、
図14に示されるように、清掃位置において、加熱ロール41の表面と接触した際に、そのすべてが加熱ロール41の表面へと逆転移することになる。
【0132】
このように、加熱ロール41の内部に配置されたハロゲンランプ414a,414bによって加熱ロール41を加熱し、加熱ロール41からの熱伝導によって清掃ロール81及び回収ロール82の表面温度、更には加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の表面に付着した回収トナーTcの温度を変化させることにより、清掃ロール81及び回収ロール82の表面に付着した回収トナーTcを加熱ロール41へと転移させ、その後、定着ニップ部Nに清掃材としての普通紙からなる記録用紙5を通過させる清掃動作を行うことで、清掃ロール81及び回収ロール82の表面に付着した回収トナーTcを除去することが可能となる。
【0133】
なお、回収トナーTcは、外添剤305の剥離や記録用紙5の材質によっては紙粉の混入等がみられるものの、基本的な物性は新規のトナーTと同様である。また、回収トナーTcは、記録用紙5の紙粉の混入量が多い場合、凝集力や付着力等の物性に変化がみられ、紙粉の混入量が増加するに伴って凝集力や付着力も増加する傾向にあることが本発明者等により明らかとなっている。
【0134】
回収トナーの凝集力Ftnは、トナーを構成する合成樹脂等の成分にもよるが、トナーを構成する合成樹脂等の成分が異なった場合でも、
図7に示されるものと同じ挙動を示す。
【0135】
その結果、画像形成装置1で使用されるトナーTの種類が異なり、定着装置40の構成が異なる場合であっても、加熱ロール41の表面温度を回収トナーTcの凝集力Ftnが加熱ロール41に対するトナーの付着力Fhrを下回る温度より高い温度に設定することで、清掃ロール81及び回収ロール82の外周面に付着した回収トナーTcが加熱ロール41の表面に逆転移する(吐き出される)。
【0136】
この実施の形態1では、回収トナーTcの凝集力Ftnが加熱ロール41に対するトナーの付着力Fhrを下回る温度より高い温度として、例えば、加熱ロール41の表面温度を210℃に設定している。ただし、加熱ロール41の表面温度は、210℃に限定されるものではない。加熱ロール41の表面温度は、回収トナーの凝集力Ftnが加熱ロール41に対するトナーの付着力Fhrを下回る温度より高い温度であれば良く、205℃、215℃、220℃等に設定しても良い。但し、加熱ロール41の表面温度が230℃以上の温度であると、加熱ロール41や加圧ベルト42、あるいは定着装置40を構成する他の部材に経時的に熱的な損傷を与える虞れがあり、220℃以下であることが望ましい。
【0137】
<定着装置の動作>
この実施の形態1に係る定着装置40では、清掃装置80が保持可能な回収トナーの許容量を超える可能性があると判断される予め定められた条件を満たすとき、清掃装置80が清掃した回収トナーを吐き出させて清掃装置80を再度使用可能な状態に復帰させるリカバリー(吐き出し)モードが実行される。なお、リカバリーモードは、予め定められた条件を満たしたときであって、前の画像形成動作が終了した後又は次の画像形成動作を開始する前に実行される。
【0138】
制御装置100は、リカバリーモードを実行するタイミングか否かを判別する。リカバリーモードを実行するタイミングとしては、例えば、記録用紙5のジャムが定着装置40において発生した場合、縁なしプリントが累積的に予め定められた枚数以上の記録用紙5に対して実行された場合、あるいはエンボス紙に対して累積的に予め定められた枚数以上にわたり定着動作を実行された場合などに設定される。リカバリーモードは、これらに限定されるものではなく、他の条件を満たす場合に実行しても良い。なお、制御装置100は、記録用紙5の種類及び記録用紙5の累積的な枚数を判別し計数する機能等を有している。
【0139】
制御装置100は、記録用紙5の搬送不良であるジャムが発生すると、記録用紙5のジャムが発生した領域が定着装置40の領域であるか否かを判別する。ここで、ジャムが発生した領域が定着装置40の領域であるか否かは、未定着トナー像Tiを保持した記録用紙5が定着装置40の定着ニップ部Nに位置するか否かによって判別される。
【0140】
制御装置100は、リカバリーモードを実行するタイミングであると判別すると、次のようなリカバリー動作を実行する。
【0141】
リカバリーモードにおいて制御装置100は、
図3に示されるように、加熱ロール41のハロゲンランプ414a,414bに通電して加熱ロール41の表面温度が所要の温度(例えば、210℃)に達するように加熱する。その際、加熱ロール41は、通常の回転速度で回転駆動される。
【0142】
制御装置100は、
図15(a)に示されるように、加熱ロール41の表面温度が所要の温度(例えば、210℃)に達したと判別すると、加熱ロール41を予め定められた時間(例えば、1~2分間程度)だけ通常の回転速度での回転駆動を継続する。この高温回転動作時、加熱ロール41の表面温度は、当該加熱ロール41の回転方向と交差する方向に沿った最大サイズの記録用紙5が通過する全領域にわたり定着時より高い温度とされるのが望ましいが、必ずしも全領域である必要はなく、当該加熱ロール41の回転方向と交差する方向の一部が定着時より高い温度となっていれば良い。
【0143】
このとき、定着装置40では、加熱ロール41の表面温度が所要の温度(例えば、210℃)に達したとき、加熱ロール41の表面に接触する清掃ロール81及び清掃ロール81に接触する回収ロール82も熱伝導によって加熱ロール41の表面温度と同じ温度(例えば、210℃)に加熱される。
【0144】
すると、回収ロール82及び清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcは、
図7に示されるように、加熱ロール41、清掃ロール81及び回収ロール82の表面に対する回収トナーTcの付着力Fhr,Fcln,Fsptよりも回収トナーの凝集力Ftnの方が小さくなる。
【0145】
その結果、回収ロール82の表面に保持された回収トナーTcは、清掃ロール81の表面へと転移し、清掃ロール81の表面へと転移した回収トナーTcは、加熱ロール41の表面へと逆転移する。したがって、加熱ロール41を所要の時間にわたり回転駆動する間に、回収ロール82及び清掃ロール81の表面に保持された回収トナーTcは、加熱ロール41の表面へと逆転移する。
【0146】
このとき、清掃ロール81の表面に対する回収トナーTcの付着力Fclnは、
図7に示されるように、回収トナーの凝集力Ftnより大きい。そのため、清掃ロール81の表面には、
図15(a)に示されるように、回収トナーTcの付着力Fclnによって薄層(1~2層程度)の回収トナーTcが残留する。
【0147】
その後、制御装置100は、加熱ロール41のハロゲンランプ414a,414bへの通電を制御し、加熱ロール41の表面温度が通常の定着温度(例えば、170~190℃)となるよう低下させる。
【0148】
制御装置100は、
図15(b)に示されるように、加熱ロール41の表面温度が通常の定着温度(例えば、170~190℃)となったと判別すると、給紙装置50から複数枚(例えば、5枚程度)の記録用紙5を自動的に給紙するか、図示しない操作表示部にメッセージを表示して、ユーザーに複数枚(例えば、5枚程度)の記録用紙5を手差し給紙装置70から給紙するように促して、定着装置40の定着ニップ部Nを通過させる清掃動作を実行する。
【0149】
この清掃動作により、
図15(b)に示されるように、加熱ロール41の表面へと逆転移した回収トナーTcは、定着ニップ部Nにおいて、複数枚の記録用紙5上に付着して加熱ロール41の表面が清掃される。
【0150】
ここで、加熱ロール41の表面温度が通常の定着温度(例えば、170~190℃)に設定されるのは、加熱ロール41の表面温度を通常の定着温度より低い温度に切り替えると、回収ロール82の表面に対する回収トナーTcの付着力Fsptが、回収トナーの凝集力Ftnより大きくなり、清掃ロール81の表面に薄層に付着した回収トナーTcが回収ロール82へ移行してしまうのを防止するためである。
【0151】
その後、制御装置100は、加熱ロール41のハロゲンランプ414a,414bへの通電を制御し、加熱ロール41の表面温度が通常の定着温度より低い低温(例えば、140℃程度)となるよう低下させる。この低温は、
図7において、回収トナーの凝集力Ftnが回収ロール82の表面に対する回収トナーTcの付着力Fsptより大きくなる温度である。
【0152】
制御装置100は、
図15(c)に示されるように、加熱ロール41の表面温度が通常の定着温度より低い低温(例えば、140℃程度)に達したと判別すると、加熱ロール41を高温回転時より長い予め定められた時間(例えば、2分間程度)だけ通常の回転速度での回転駆動を継続する。この低温回転時、加熱ロール41の表面温度は、当該加熱ロール41の回転方向と交差する方向に沿った最大サイズの記録用紙5が通過する全領域にわたり定着時より低い温度とされるのが望ましいが、必ずしも全領域である必要はなく、当該加熱ロール41の回転方向と交差する方向の一部が定着時より低い温度となっていれば良い。
【0153】
すると、加熱ロール41及び清掃ロール81の表面に残留した回収トナーTcが加熱ロール41から清掃ロール81へ、更に清掃ロール81から回収ロール82へと転移し、回収ロール82へと転移した回収トナーTcは、回収トナーTcの外周面に保持される。
【0154】
このとき、加熱ロール41及び清掃ロール81の表面に残留した回収トナーTcは、極僅かであり、清掃ロール81から回収ロール82へとすべて転移した後、回収ロール82の外周面に転移したトナーの付着力Fspt及び凝集力Ftnによって回収ロール82の外周面に保持され、清掃ロール81へ移行することはない。
【0155】
このように、上記実施の形態1に係る定着装置40によれば、リカバリーモードの空回転時の温度が画像定着時の温度以下である場合に比べ、清掃ロール81及び回収ロール82が保持する回収トナーTcの除去性を向上させることができ、定着装置40を継続して使用することが可能となる。
【0156】
[実施の形態2]
図16は、実施の形態2に係る定着装置を示すものである。この実施の形態2に係る定着装置では、清掃装置が加熱ロールのみではなく、加圧ベルトに対しても設けられている。
【0157】
すなわち、この実施の形態2に係る定着装置40では、
図16に示されるように、加圧ベルト42の外周面に第2の清掃装置90が設けられている。第2の清掃装置90は、加圧ベルト42の表面に所要の押圧力で接触する第1清掃部の一例としての清掃ロール91と、清掃ロール91の表面に所要の押圧力で接触する第2清掃部の一例としての回収ロール92とを備えている。清掃ロール91は、加圧ベルト42の外周面において、定着ニップ部N側に近い図中の下端部近傍に配置されている。
【0158】
清掃ロール91及び回収ロール92は、清掃ロール81及び回収ロール82と同様に構成されている。
【0159】
また、清掃ロール91が圧接する加圧ベルト42の裏面には、フェルト等からなる弾性材料48が設けられている。
【0160】
このように、加圧ベルト42に対して第2の清掃装置90を設けることにより、加圧ベルト42の表面に付着したトナー等を加熱ロール41に一旦転移させてから、加熱ロール41の清掃装置80によって除去することなく、加圧ベルト42の第2の清掃装置90によって直ちに除去することができる。
【0161】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0162】
[実施の形態3]
図17は、実施の形態3に係る定着装置を示すものである。この実施の形態3に係る定着装置40では、第1の加圧部として加熱ベルトを用い、第2の加圧部として加圧ロールを用いるように構成したものである。
【0163】
すなわち、この実施の形態3に係る定着装置40は、
図17に示されるように、無端状のベルトの一例として加熱ベルト201と、加圧ロール202を備えている。加熱ベルト201には、清掃装置80が設けられている。
【0164】
加熱ベルト201の内部には、加熱部203を有する押圧部材204が配置されている。加熱ベルト201は、押圧部材204によって押圧されることで加圧ロール202との間に定着ニップ部Nを形成している。
【0165】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0166】
なお、前記実施の形態では、画像形成部が複数の作像装置と中間転写装置を備えたフルカラーの画像形成装置について説明したが、これに限定されるものではなく、単一の作像装置を有するモノクロの画像形成装置についても同様に適用することができることは勿論である。
【0167】
また、前記実施の形態では、第1の加圧部としてロール又はベルトを用い、第2の加圧部としてベルト又はロールを用いた場合について説明したが、第1及び第2の加圧部としてベルトを用い、或いは第1及び第2の加圧部としてロールを用いても良い。
【0168】
さらに、前記実施の形態では、第1の加圧部に加熱部を設けた場合について説明したが、第1及び第2の加圧部の双方に加熱部を設けても良い。
【0169】
また、前記実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置における定着装置を例に説明したが、これ以外の装置に適用してもよい。すなわち、電子写真方式以外によってシート状媒体表面に形成されたトナー像を定着する定着装置に適用してもよい。
【0170】
例えば、前記実施の形態における現像剤(トナー)を塗装用粉体として利用することで、粉体塗装装置を構成してもよい。具体的には、前記実施の形態における現像装置14を静電粉体塗装ヘッドとして利用し、この粉体塗装ヘッドに近接させて導電性のシート状媒体を搬送させる。粉体塗装ヘッドと導電性のシート状媒体との間にバイアス電圧を印加することで、帯電した塗装用粉体であるトナーがシート状媒体上に塗布される。その後、シート状媒体を前記実施の形態において開示した定着装置で加圧及び加熱すれば、シート状媒体表面が塗装される。
【0171】
以上のように、本発明に適用されるシート状媒体には、画像等が記録された記録媒体に限定されず、塗装など電子写真方式以外の手段によってトナー層が形成される媒体も含むものである。
【符号の説明】
【0172】
1…画像形成装置
40…定着装置
41…加熱ロール
42…加圧ベルト
80…清掃装置
81…清掃ロール
82…回収ロール