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特許7532831発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物、発泡性積層体および発泡積層体並びに断熱容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物、発泡性積層体および発泡積層体並びに断熱容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20240806BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240806BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240806BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240806BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20240806BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20240806BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240806BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B7/027
B32B27/10
B32B27/32 Z
B32B29/00
B65D65/40 D
B65D81/38 B
B65D81/34 U
C08L23/04
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020049854
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147539
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 慎治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 桂一
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-168178(JP,A)
【文献】特開2015-098107(JP,A)
【文献】特開2011-020372(JP,A)
【文献】特開2018-001722(JP,A)
【文献】特開平09-143315(JP,A)
【文献】特開2018-080225(JP,A)
【文献】特開2018-094906(JP,A)
【文献】特開2019-111650(JP,A)
【文献】特開2019-022955(JP,A)
【文献】特開2017-154821(JP,A)
【文献】特開2016-117283(JP,A)
【文献】特開2015-171794(JP,A)
【文献】特開2014-201604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00-9/42
B65D 65/00-65/46
67/00-79/02
81/18-81/30
81/38
85/88
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とする基材の少なくとも一方の面に、加熱によって基材から放出される蒸気によって発泡させるためのポリエチレン系樹脂層(I)が形成され、前記基材の他方の面に、熱可塑性樹脂層(II)を設けた発泡性積層体であって、紙の含水率が4~10%であり、前記ポリエチレン系樹脂層(I)を形成するポリエチレン系樹脂組成物(A)が下記(A1)~(A3)の特性を有し、下記(b1)~(b2)の特性を満たす高圧法低密度ポリエチレン(b)95.0~99.9重量%及び下記(c1)の特性を満たすポリエチレン系樹脂(c)0.1~5.0重量%((b)及び(c)の合計は100重量%)からなるポリエチレン系樹脂組成物であり、前記熱可塑性樹脂層(II)が、下記(d1)の特性を有する熱可塑性樹脂(D)で構成されることを特徴とする発泡性積層体。
(A1)JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトマスフローレート(MFR)が8g/10分以上、30g/10分以下
(A2)JIS K7121-1987に準拠して測定した示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(TmA)が90℃以上、115℃以下
(A3)JIS K7121-1987に準拠して測定した示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(TmA)とJIS K7121-1987に準拠して測定した結晶化開始温度(TcA)が下記(式1)を満たす
―8℃<((TmA)-(TcA))≦8℃ (式1)
(b1)JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトマスフローレート(MFR)が8g/10分以上、30g/10分以下
(b2)試験温度23℃、JIS-K7112:1999に準拠した密度が0.900g/cm以上、0.930g/cm以下
(c1)JIS K7121-1987に準拠して測定した、示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tmc)が116~139℃
(d1)融解ピーク温度(TmD)が100~150℃(但し、前記ポリエチレン系樹脂組成物(A)の融解ピーク温度(TmA)と同じ場合又はそれより低い場合を除く。)
【請求項2】
前記高圧法低密度ポリエチレン(b)のJIS K7121-1987に準拠して測定した融解ピーク温度(Tmb)が、90℃以上115℃以下であることを特徴とする請求項に記載の発泡性積層
【請求項3】
前記高圧法低密度ポリエチレン(b)のJIS K7121-1987に準拠して測定した融解ピーク温度(Tmb)と、前記ポリエチレン系樹脂(c)のJIS K7121-1987に準拠して測定した融解ピーク温度(Tmc)の関係が、下記(式2)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性積層
5℃<((Tmc)-(Tmb))≦35℃ (式2)
【請求項4】
前記ポリエチレン系樹脂(c)の密度が0.935~0.970g/cmであることを特徴とする請求項1~のいずれかの項に記載の発泡性積層
【請求項5】
前記融解ピーク温度(TmD)が115~140℃であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性積層体。
【請求項6】
請求項に記載の発泡性積層体のポリエチレン系樹脂層(I)が、発泡していることを特徴とする発泡積層体。
【請求項7】
請求項に記載の発泡積層体を使用した断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物、及びそれを用いた発泡性積層体並びに発泡積層体、並びに断熱容器に関する。さらに詳しくは、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)を持つ発泡積層体及び断熱容器を、生産性良く得られ、かつ電子レンジ適性に優れる発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物、発泡性積層体、発泡積層体並びに断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱性を有する容器としては、合成樹脂製の発泡体が多く使用されている。また、廃棄し易く印刷適性の良い容器として、紙を複数枚使用した断熱紙容器や、紙基材の両面をポリエチレン系樹脂層で積層された材料を使用し、表面のポリエチレン系樹脂層を発泡させ断熱性を付与した紙容器がある。
【0003】
紙を基材とした技術としては、紙の少なくとも一面にポリエチレンを押出ラミネートし、他面には蒸気圧保持層を形成させ加熱により表面に不規則な凹凸模様を有する加工紙を製造する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
また、胴部材の片側壁面に熱可塑性樹脂フィルムがラミネートまたはコーティングされ、加熱によりフィルムを発泡させて発泡断熱層を形成させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、容器胴部材及び底部材からなる紙製容器において、容器胴部材の外壁面の一部に有機溶剤含有インキによる印刷を施し、胴部材外壁面全体を熱可塑性合成樹脂フィルムで被覆されている紙容器を加熱することにより、印刷部分に比較的厚い発泡層を存在させる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
さらに、少なくとも外面側からシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン-αオレフィン共重合体またはそれを含む発泡層、紙を主体とする基材層、熱可塑性樹脂層とを備えた積層体からなる発泡積層体が提案されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。こうして得られた発泡層を保有する加工紙は、容器とした際に、発泡層により手とのなじみがよく滑りにくく、断熱性に優れるとともに紙を複数枚使用した断熱性容器に比較しコストが安いというメリットがある。
【0005】
また、特許文献6においては、紙容器における胴部材原材料シートの紙基材の少なくとも片面に、溶融状態の熱可塑性樹脂をTダイから紙基材に接するまでの時間が0.11~0.33秒となるように押出ラミネートしてなる紙製容器の胴部材原材料シートが示され、低密度ポリエチレンを2種混合してMFRを調整した組成物が記載されている。
【0006】
しかし、従来の発泡層を有する積層体や、それを用いた加工紙は、発泡性積層体を作成する際の押出ラミネート成形時に、ある一定以上の加工速度とした場合、加熱による発泡時に、外観不良となることがあり問題となっていた。従って、押出ラミネート成形速度を高速とした場合であっても、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セルとなるような改良が望まれていた。
【0007】
一方、上記のような断熱性を有する容器は、近年、電子レンジ調理用容器として広く使用されている。しかし、従来技術の容器は、電子レンジ適性に劣るという問題点があった。すなわち、電子レンジによる調理・加熱によって発泡セルが肥大化し、また連通化して発泡層表面が隆起する現象(火ぶくれ)や、この火ぶくれによって肥大化した発泡セルが破れ、表面に凹凸が発生し、外観を損なうという問題点がある。
そのため、(A)特定の密度を有するポリエチレン系樹脂層/基材層/(B)特定の密度を有する発泡層を含み、(B)層を構成するポリエチレン系樹脂を高圧法低密度ポリエチレンとし、(A)層の厚みと発泡前後の(B)層の厚みとを規定する技術が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
しかしながら、従来技術の断熱性を有する電子レンジ調理用容器は、加工速度を高速とした場合、加熱による発泡時に、外観不良となり、いまだ当業界の求めるレベルに到達しておらず、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭48-32283号公報
【文献】特開昭57-110439号公報
【文献】特開平7-232774号公報
【文献】特開平10-128928号公報
【文献】特開2007-168178号公報
【文献】特開2008-105747号公報
【文献】特許第5707848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)を生産性良く得られ、かつ電子レンジ適性に優れる発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物、それを用いた発泡性積層体、及び発泡積層体並びに断熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、紙を主体とする基材の少なくとも一方の面に発泡させるためのポリエチレン系樹脂層(I)を形成する発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物(A)の特性を特定化することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、紙を主体とする基材の少なくとも一方の面に、発泡させるためのポリエチレン系樹脂層(I)が形成された発泡性積層体において、ポリエチレン系樹脂層(I)を形成するポリエチレン系樹脂組成物(A)であって、ポリエチレン系樹脂組成物(A)が下記(A1)~(A3)の特性を有することを特徴とする発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物が提供される。
(A1)JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトマスフローレート(MFR)が8g/10分以上、30g/10分以下
(A2)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が90℃以上、115℃以下
(A3)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(TmA)と結晶化開始温度(TcA)が下記(式1)を満たす
-8<((TmA)-(TcA))≦8 (式1)
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、前記ポリエチレン系樹脂組成物(A)が、下記(b1)~(b2)の特性を満たす高圧法低密度ポリエチレン(b)95.0~99.9重量%及び下記(c1)~(c2)を満たすポリエチレン系樹脂(c)0.1~5.0重量%((b)及び(c)の合計は100重量%)からなるポリエチレン系樹脂組成物であることを特徴とする第1発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物が提供される。
(b1)JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトマスフローレート(MFR)が8g/10分以上、30g/10分以下
(b2)試験温度23℃、JIS-K7112:1999に準拠した密度が0.900g/cm3以上、0.930g/cm以下
(c1)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tmc)が116~139℃
【0013】
さらに、本発明の第3の発明によれば、前記高圧法低密度ポリエチレン系樹脂(b)の融解ピーク温度(Tmb)が、90℃以上115℃以下であることを特徴とする第1又は第2の発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、前記高圧法低密度ポリエチレン(b)の融解ピーク温度(Tmb)と、前記ポリエチレン系樹脂(c)の融解ピーク温度(Tmc)の関係が、下記(式2)を満たすことを特徴とする第1~3のいずれかの発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物が提供される。
5<((Tmc)-(Tmb))≦35 (式2)
【0015】
さらに、本発明の第5の発明によれば、前記ポリエチレン系樹脂(c)の密度が0.935~0.970g/cmであることを特徴とする第1~第4のいずれかの発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、紙を主体とする基材の少なくとも一方の面に発泡させるための前記ポリエチレン系樹脂層(I)が形成された発泡性積層体であって、前記ポリエチレン系樹脂層(I)が、第1~5のいずれかの発明に記載の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物からなることを特徴とする発泡性積層体が提供される。
【0017】
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1~6のいずれかの発明の前記発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物を用いて、紙を主体とする基材の一方の面に加熱によって基材から放出される蒸気によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(I)を形成し、前記基材の他方の面に、熱可塑性樹脂層(II)を設けた発泡性積層体の熱可塑性樹脂層(II)が、下記(d1)の特性を有する熱可塑性樹脂(D)で構成されることを特徴とする発泡性積層体が提供される。
(d1)融解ピーク温度(TmD)が100~150℃
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明の前記発泡性積層体のポリエチレン系樹脂層(I)が、発泡していることを特徴とする発泡積層体が提供される。
【0019】
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明の前記発泡積層体を使用した断熱容器が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡性積層体に使用することにより、発泡性積層体を作成する際のラミネート成形時の加工速度を高速とした場合においても、加熱により形成される発泡層が十分な高さと良好な外観(以下、発泡性と言うことがある)を持つため、生産性高く、発泡性積層体、発泡積層体及び断熱容器を得ることができる。また、電子レンジによる調理・加熱によって発泡セルが肥大化し、また連通化して発泡層表面が隆起する現象(火ぶくれ)や、この火ぶくれによって肥大化した発泡セルが破れ、表面に凹凸が発生し、外観を損なうという問題点を解決することができ、いわゆる電子レンジ適性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物、発泡性積層体、発泡積層体並びに断熱容器について、詳細に説明する。
【0022】
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物(A)としては、エチレン単独重合体、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン共重合体などからなり、それらの混合物が例示される。
前記エチレン・αオレフィン共重合体におけるエチレンと共重合するα-オレフィンとしては、プロピレン、又は1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のエチレン以外のα―オレフィンが例示される。
前記エチレン共重合体におけるエチレンと共重合するモノマーとしては、共役ジエン(例えばブタジエンやイソプレン)、非共役ジエン(例えば1,4-ペンタジエン)、アクリル酸、アクリル酸エステル(例えばアクリル酸メチルやアクリル酸エチル)、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチルやメタクリル酸エチル)および酢酸ビニル等が例示される。
このうち好ましいのは、少なくとも高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを含むものが好ましい。高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンは、公知の方法により得ることができるが、酸素、有機過酸化物などのラジカル発生剤を用いて、超高圧下にて製造される。
【0023】
(A1)メルトマスフローレート(MFR)
本発明におけるポリエチレン系樹脂組成物(A)のJIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトマスフローレート(MFR)は、8g/10分以上、30g/10分以下である。
この条件を満たさないと、発泡性積層体を得るための押出ラミネート加工速度を高速とした場合に、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)が得られない。
さらに好ましいMFRは、9~25g/10分であり、とくに好ましいMFRは、9~20g/10分であり、より好ましくは9~19g/10分である。
なおMFRは、JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定した値を意味する。また、ポリエチレン系樹脂(A)が混合物の場合は、混合物のMFRが上記範囲を満たせばよい。
MFRが8g/10分未満では、発泡外観が劣り、30g/分を超える場合は、押出ラミネート加工性に劣るため好ましくない。
【0024】
(A2)融解ピーク温度(TmA)
本発明におけるポリエチレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tm)は90℃以上、115℃以下である。この条件を満たさないと、十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)を生産性高く得られない。
さらに好ましい融解ピーク温度は、93~115℃、とくに好ましい融解ピーク温度はは、95~115℃である。
融解ピーク温度(Tm)が90℃未満では、発泡層の耐熱性に劣り、115℃を超えると、発泡高さが不足となるため、好ましくない。
【0025】
(A3)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(TmA)と結晶化開始温度(TcA)の関係
本発明のポリエチレン系樹脂組成物(A)は、きわめて特徴のある物性を有することを特徴とし、その特徴ある物性は(TmA)と(TcA)の関係として、下記(式1)で示される範囲であることを特徴とする。かかる範囲の物性を有することにより、発泡性と発泡外観の双方に優れる。
-8< ((TmA)-(TcA))≦8 (式1)
さらに好ましい範囲は、
-7< ((TmA)-(TcA))≦8
とくに好ましい範囲は、
-6< ((TmA)-(TcA))≦8
である。
((TmA)-(TcA))が-8以下では発泡高さが不足し、8より大きい場合は、発泡外観に劣るため好ましくない。
【0026】
<示差走査熱量測定(DSC)測定方法>
(融解ピーク温度及び結晶化開始温度)
融解ピーク温度及び結晶化開始温度は、JIS K7121-1987の方法にて、下記の条件にて測定した。
装置:日立ハイテクサイエンス株式会社製DSC7020
試験片の形状:ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打ち抜いてサンプルとした。
試験片の質量:約5mgを採り、0.1mgまで化学天秤にて秤量した。
容器 :アルミニウム
基準物質 :空のアルミニウム容器
窒素ガスの流量:50ml/分
温度の校正:インジウム(156.4℃)、すず(231.9℃)
状態調節:試験片を充填し蓋を固定した容器と、蓋を固定した基準物質を装置にセットし、30℃から40℃/分の速度にて200℃まで昇温し、200℃に10分間保った。
結晶化温度測定:状態調節後、200℃から10℃/分の速度にて30℃まで冷却し、DSC曲線を得た。
融解温度測定:結晶化温度測定後、30℃にて10分間保ったのち、30℃から10℃/分の速度にて200℃まで昇温し、DSC曲線を得た。
結晶化開始温度:結晶化温度測定DSC曲線において、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と,結晶化ピークの高温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度とした。結晶化ピークが複数現れる場合には、高温側のピークの結晶化開始温度とする。
融解ピーク温度:融解温度DSC測定曲線において、融解ピークの頂点の温度とした。融解ピークが複数ある場合は、最高ピーク高さの温度を融解ピーク温度とした。
【0027】
上記の特徴(A1)~(A3)を有する本発明のポリエチレン系樹脂組成物(A)としては、当該特徴の物性を有するように樹脂の組成物を適宜調整して得ることができるが、より具体的には、下記(b1)~(b2)の特性を満たす高圧法低密度ポリエチレン(b)95.0~99.9重量%及び下記(c1)の特性を満たすポリエチレン系樹脂(c)0.1~5.0重量%((b)及び(c)の合計は100重量%)からなるポリエチレン系樹脂組成物であることが好ましい。
このように、特定の(b1)~(b2)特性を有する高圧法低密度ポリエチレン(b)に対して、特定の物性(c1)を有するポリエチレン系樹脂(c)を極微量添加することにより、驚くべきことに微量であるにもかかわらず、樹脂組成物の物性が変化し、今まで極めて制御の難しかった発泡用樹脂組成物としての従来の問題点、すなわち発泡性積層体を作成する際の押出ラミネート成形速度を高速とした場合であっても、高発泡性と発泡外観の両立ができることとなった。そしてその変化した物性としては、上記特徴のある前記(A3)の物性を示すことを見出したのである。
【0028】
(b1)JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトマスフローレート(MFR)が8g/10分以上、30g/10分以下
(b2)試験温度23℃、JIS-K7112:1999に準拠した密度が0.900g/cm以上、0.930g/cm以下
(c1)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tmc)が116~139℃
【0029】
高圧法低密度ポリエチレン(b)とは、高圧ラジカル重合法により得られる低密度ポリエチレンであって、多数の枝分かれ状態の分岐構造を有するポリエチレンとして知られており、公知の重合方法、例えばエチレンモノマーを原料として、高圧ラジカル重合法により次の条件で製造される。
(i)重合条件
本発明の高圧ラジカル重合法は、酸素、有機過酸化物などのラジカル開始剤の存在下において、超高圧下、塊状または溶液重合によって製造される。
重合温度は100~300℃、好ましくは120~280℃、より好ましくは150~250℃の範囲とする。
重合温度が100℃未満では、収率の低下や安定した製品を製造できないおそれがあり、300℃を超える場合には反応が安定せずに、分子量の大きい重合体を得ることが難しくなる。
また、重合圧力は50~400MPa、好ましくは70~350MPa、より好ましくは100~300MPaの条件下であり、重合圧力が50MPa未満では充分な分子量のものが得られず加工性や物性の低下が生じ、400MPaを超える場合には安定的な製造運転が行い難いものとなる。
(ii)重合操作
製造に際しては、基本的には通常の高圧法低密度ポリエチレンの製造設備及び技術を利用することができる。
反応器の形式としては攪拌翼付のオートクレーブ型、又はチューブラー型のものを使用することができ、必要に応じて複数個の反応器を直列又は並列に接続して多段重合をすることもできる。
【0030】
本発明に用いる高圧法低密度ポリエチレン(b)のJIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFRが8~30g/10minの範囲であると、積層体の発泡性に優れるため好ましい。MFRが8g/10分より低いと発泡外観に劣り、30g/分より高いと押出ラミネート加工性に劣るため、好ましくない。
本発明の積層体において、高圧法低密度ポリエチレン(b)の試験温度23℃、JIS-K7112に準拠した密度は、断熱性と発泡外観に優れるため、0.900~0.930g/cmの範囲であることが好ましい。更に好ましくは、0.913~0.928g/cmg/cm、より好ましくは0.915~0.925g/cmであることが好ましい。
【0031】
特に本発明に用いる高圧法低密度ポリエチレン(b)の融解ピーク温度(Tmb)が、90℃以上115℃以下であることが、良好な発泡特性を得るうえで好ましい。
好ましくは93℃以上115℃以下、更に好ましくは、95℃以上115℃の範囲である。融解ピーク温度(Tmb)が90℃より低いと表面の滑り性が悪化し、115℃より高いと発泡セルの高さが不足するため好ましくない。
【0032】
更なる本発明の特徴として、前記高圧法低密度ポリエチレン(b)の融解ピーク温度(Tmb)と、前記ポリエチレン系樹脂(c)の融解ピーク温度(Tmc)の関係が、下記(式2)を満たすことを特徴とすることが挙げられる。
5<((Tmc)-(Tmb))≦35 (式2)
好ましくは、
7<((Tmc)-(Tmb))≦35
更に好ましくは
9<((Tmc)-(Tmb))≦35
より好ましくは
11<((Tmc)-(Tmb))≦35
の範囲である。
この範囲にあることで、良好な発泡外観と発泡高さに優れるため好ましい。
【0033】
本願発明のポリエチレン系樹脂(c)としては、下記(c1)の物性を有するポリエチレン系樹脂が挙げられる。
(c1)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tmc)が116~139℃
このDSCによる融解ピーク温度(Tmc)の測定方法は上述したとおりである。
この範囲であると、良好な発泡外観と発泡高さが得られるため好ましい。
好ましくは、117℃~139℃、更に好ましくは118℃~139℃の範囲である。
融解ピーク温度が115℃以下では、発泡外観が不良となり、139℃を超えると発泡高さが不足するため好ましくない。
前記ポリエチレン系樹脂(c)の密度は0.935~0.970g/cmであることが好ましい。好ましくは0.940~0.970g/cm、更に好ましくは0.945~0.970g/cmの範囲である。
このような融解ピーク温度(Tmc)、更には密度を有するポリエチレン系樹脂(c)としては、高密度ポリエチレンと呼ばれる直鎖状または長鎖分岐を持つポリエチレン系樹脂が挙げられる。高密度ポリエチレンとは、触媒重合法によりエチレンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン単独重合体、またはエチレンから導かれる繰り返し単位と炭素数3~8のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位からなるエチレン系重合体を含むものである。α - オレフィンとしては、直鎖または分岐鎖状の炭素数3 ~ 2 0 のオレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1 - ブテン、1 - ペンテン、1 - ヘキセン、4 - メチル- 1 - ペンテン、1 - オクテン、1 - デセンを挙げることができる。またそれらを2種類以上組み合わせて使用しても良い。これら共重合体の中でも、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1 - ブテン共重合体、エチレン・1 - ヘキセン共重合体、エチレン・4 - メチル- 1 - ペンテン共重合体、エチレン・1 - オクテン共重合体が経済性の観点から好適である。
本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物(A)に用いるポリエチレン系樹脂(c)は、特に触媒、プロセス等に限定されるものではなく、成書『ポリエチレン技術読本』( 松浦一雄・三上尚孝編著、工業調査会刊行、2 0 0 1 年) のp . 1 2 3 ~ 1 6 0 に記載されている方法により製造することが可能である。即ち、チーグラー系触媒、シングルサイト系触媒等や、スラリー法、溶液法、気相法の各重合様式にて、各種重合器、重合条件、触媒にて製造することが可能である。より具体的には、(A)に使用するポリエチレン(c)を製造するためには、好ましくは特公昭55-14084号公報などの特定のチーグラー系触媒あるいはシングルサイト系触媒を用いて重合温度、圧力等の重合条件、助触媒等をコントロールすることにより好適に製造可能である。
【0034】
本発明における発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、ポリエチレン系樹脂組成物(A)の特性を損ねない範囲で、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸等の中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、顔料、染料等の着色剤、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤、ラジカル開始剤などの添加剤を配合してもよい。
また、ポリエチレン系樹脂組成物(A)の特性を損ねない範囲で、他の熱可塑性樹脂を配合しても構わない。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン等他のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂などを挙げることができる。
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物は、樹脂ペレット等を固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、
バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい
。そして、溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリエチレン系樹脂の融点~300℃
程度が好ましい。
【0035】
2.発泡性積層体
本発明の発泡性積層体は、紙を主体とする基材の少なくとも一方の面に発泡させるためのポリエチレン系樹脂層(I)を備え、前記ポリエチレン系樹脂層(I)が、先に説明した発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物からなるものである。
【0036】
(1)紙を主体とする基材
本発明において紙を主体とする基材は(以下、紙基材と言うことがある)、紙基材に含まれた蒸気、揮発分によって表面のポリエチレン系樹脂層(I)を発泡させることができるものであれば特に限定されない。
例えば、カップ原紙、上質紙、クラフト紙、アート紙等が挙げられる。また、紙基材には、加熱により揮発性ガスを発生する物質や水、バリア性を向上させるコーティングをしたり、紙基材中へ加熱により揮発性ガスを発生する物質を配合したりすることもできる。紙基材には、パルプ紙や合成紙等の紙にインクなどで絵や文字、模様などを印刷することができる。基材に使用する紙は、坪量が100~400g/m、特に150~350g/mが好ましい。紙の含水率は4~10%、好ましくは5~8%程度のものが例示される。また、紙基材には印刷、各種コーティング等が施されていてもよい。
【0037】
(2)ポリエチレン系樹脂層(I)
本発明におけるポリエチレン系樹脂層(I)を構成する樹脂には、前記ポリエチレン系樹脂組成物(A)を用いることができる。発泡倍率が高く、均一な発泡セルを形成させるためには、上記の物性値を有することが好ましい。
【0038】
本発明におけるポリエチレン系樹脂層(I)の厚みは、特に限定されないが、例えば20~100μmであり、発泡層厚みを高くするという点で、30~100μmが好ましい。ポリエチレン系樹脂層(I)の厚みが、20μm未満では発泡層厚みを十分に高くすることが難しい。
また、本発明におけるポリエチレン系樹脂層(I)には、必要に応じて印刷等を施してもよい。印刷は、部分的に着色インキで印刷しても、全面的に印刷してもよい。印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。
【0039】
本発明の発泡性積層体は、紙基材のポリエチレン系樹脂層(I)を形成する面とは逆の面(紙基材の他方の面)に、発泡時に前記紙基材から放出される蒸気を保持する熱可塑性樹脂層(II)を設けることもできる。この熱可塑性樹脂層(II)は、下記の熱可塑性樹脂(D)を含む。
【0040】
熱可塑性樹脂(D)は、ポリエチレン系樹脂層(I)が均一にかつ高い発泡セル高さを容易に得るため、下記(d1)の特性を満足することが好ましい。
(d1):融解ピーク温度(TmD)が、100~150℃の範囲内にある。好ましくは、110℃~150℃、より好ましくは、115℃~140℃、更に好ましくは、120℃から140℃の範囲である。
なお本発明における融解ピーク温度は前述のように測定される。
【0041】
本発明において使用される熱可塑性樹脂(D)は、例えば、高・中・低密度ポリエチレン、エチレン単独重合体、エチレン共重合体、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン-1樹脂、ポリ-4-メチル-ペンテン-1樹脂等の炭素数2~10のα-オレフィン単独重合体、またはそれらの相互共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらとの混合物等が挙げられる。前記エチレン共重合体におけるエチレンと共重合体するモノマーとしては、共役ジエン(例えばブタジエンやイソプレン)、非共役ジエン(例えば1,4-ペンタジエン)、アクリル酸、アクリル酸エステル(例えばアクリル酸メチルやアクリル酸エチル)、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチルやメタクリル酸エチル)および酢酸ビニルエチレン等が例示され、これらの混合物としてもよい。
これらの中でも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂やこれらの混合物が好ましい。
【0042】
また、熱可塑性樹脂(D)として、ポリオレフィン系樹脂混合物を使用する場合は、ポリオレフィン系樹脂混合物のJIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトマスフローレート(MFR)が0.1~100g/10分、好ましくは0.3~80g/10分、より好ましくは0.5~60g/10分、密度が0.920~0.970g/cm、好ましくは0.925~0.970g/cm、より好ましくは、0.930~0.970g/cmの範囲のものが好ましい。
【0043】
また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂等のように紙基材と接着性の乏しい樹脂を使用する場合においては、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、エチレン-不飽和カルボン酸との共重合体等の通例の接着性樹脂等を介して積層体としてもよい。
【0044】
熱可塑性樹脂(D)には、必要に応じて、その特性を損ねない範囲で、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸等の中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、顔料、染料等の着色剤、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤などの添加剤を配合してもよい。
【0045】
熱可塑性樹脂層(II)の厚みは、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂層(I)の発泡後の発泡層厚みを高くすることができるという点で、通例では10~100μm、特に20~100μmの範囲で選択されることが好ましい。熱可塑性樹脂層(D)の厚みが、10μm未満では、紙基材から放出される蒸気等を十分に保持することができず、発泡層厚みを十分に高くすることができない虞がある。また100μmを超える場合には、それ以上の効果の向上が期待されず、経済的デメリットが大きくなるおそれが生じる。
【0046】
本発明の発泡性積層体においては、本発明の効果を損なわない範囲において、該層間、あるいはその内層及び/又は外層等に他の層を設けてもよく、例えば、外側から、{ポリエチレンフィルム層/ポリエチレン系樹脂層(I)/紙基材/熱可塑性樹脂層(II)}、{ポリエチレンフィルム層/バリア層/接着層/ポリエチレン系樹脂層(I)/紙基材/熱可塑性樹脂層(II)}、{ポリエチレン系樹脂層(I)/紙基材/熱可塑性樹脂層(II)/バリア層/熱可塑性樹脂層(II)}のように紙基材とポリエチレン系樹脂層(I)または、さらに熱可塑性樹脂層(II)を設けた積層体の内層及び/又は外層、あるいは該層間に一層または複数層のフィルム層、装飾層、補強層、接着剤層、バリア層等を設けてもよい。
また、必要に応じて印刷等を施してもよい。印刷は、部分的または全面的に着色インキで印刷してもよい。また、必要に応じて発泡性インキを使用して、部分的または全面的に発泡部位を設けてもよい。印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。
【0047】
上記装飾層としては、印刷された紙、フィルム、不織布、織布等が挙げられる。
また補強層とは、基材に積層されたポリエチレン系樹脂層(I)が加熱によって発泡されるときに発泡層が破裂しないように、ポリエチレン系樹脂層(I)の外層にポリエチレン樹脂フィルムなどを積層して発泡層の過度の発泡による破裂防止や、不ぞろいの発泡セルを均一に矯正する、あるいはフィルム、不織布等を積層して、機械的強度を持たせるなどの役割を果たすものである。樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等でよい。
また、接着剤層を形成する樹脂としては、エチレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸等をグラフトした変性ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等ホットメルト、通常の接着剤等が挙げられる。
またバリア層を形成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着等の金属蒸着フィルム、金属箔等が挙げられる。
【0048】
本発明の発泡性積層体は、紙基材の少なくとも一方の面に前記発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物を押出ラミネート加工し、ポリエチレン系樹脂層(I)を形成することで得ることができる。
【0049】
押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。押出ラミネート加工の方法については公知の加工法により実施することができるが、シングルラミネート加工法、タンデムラミネート加工法、サンドウィッチラミネート加工法、共押出ラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工法を例示することができる。押出ラミネート法における樹脂の温度は150~350℃の範囲が好ましい。
また、押出ラミネート時の基材と樹脂層との接着を向上させるため、基材へのコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、アンカーコート処理等の公知の処理を実施してもよい。
また、押出ラミネート時の基材と樹脂層との接着を向上させるため、Tダイスより押出した溶融樹脂膜をオゾンや酸素を含む気体に晒したのちに、基材と圧着させてもよい。
また、押出ラミネート加工により得られた発泡性積層体をポリエチレン系樹脂組成物(A)が発泡しない温度でエージングさせてもよい。
【0050】
3.発泡積層体
本発明の発泡積層体は、前記ポリエチレン系樹脂層(I)を発泡させて得られるものである。発泡積層体の発泡セルの高さは、0.5mm以上、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは0.8mm以上とすることが好ましい。発泡セルの高さが0.5mm以上であると、十分な断熱性が得られやすい。
【0051】
加熱方法としては特に制限はないが、熱風、マイクロ波、高周波、赤外線、遠赤外線等が挙げられる。加熱温度には特に制約はないが、紙基材中の水分を蒸発させ、ポリエチレン系樹脂(A)が溶融する温度でなければならず、例えば、100~150℃が好ましい。加熱時間は10秒間~10分間が好ましい。上記範囲であれば、充分な発泡セル高さが得られやすい。
上記発泡積層体は、下記のカップ等断熱容器用の断熱・保温材料としてはもちろんのこと、緩衝材料、遮音材料、発泡紙等としても用いられ、スリーブ材、紙皿、トレー、滑り止め材、果物の包装材、発泡紙等の農業用、産業用、生活用資材等として活用される。本発明の発泡積層体はとくに電子レンジ適性に優れることから電子レンジ調理用であることが好ましい。
【0052】
4.断熱容器
本発明の断熱容器は、上記発泡性積層体を用いて容器を形成した後、該容器を加熱し、前記ポリエチレン系樹脂層(I)を発泡させて得られたもの、及び上記発泡性積層体の前記ポリエチレン系樹脂層(I)を発泡させた発泡積層体を用いて形成された容器が挙げられる。
断熱容器でも、上記発泡積層体と同様に、発泡セルの高さは、0.5mm以上、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは0.8mm以上とすることが好ましい。発泡セルの高さが0.5mm以上であると、十分な断熱性が得られやすい。
これにより得られた断熱容器は、トレー及びカップなどとして使用される。
【実施例
【0053】
以下、実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本例の物性、得られた発泡性積層体等の試験方法は、以下の通りである。
【0054】
(1)MFR:JIS K7210:1999に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定した。
【0055】
(2)密度:試験温度23℃でJIS-K7112:1999に準拠して測定した。
【0056】
(3)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度及び結晶化開始温度
融解ピーク温度及び結晶化開始温度は、JIS K7121-1987の方法にて、下記の条件にて測定した。
装置:日立ハイテクサイエンス株式会社製DSC7020
試験片の形状:ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打ち抜いてサンプルとした。
試験片の質量:約5mgを採り、0.1mgまで化学天秤にて秤量した。
容器 :アルミニウム
基準物質 :空のアルミニウム容器
窒素ガスの流量:50ml/分
温度の校正:インジウム(156.4℃)、すず(231.9℃)
状態調節:試験片を充填し蓋を固定した容器と、蓋を固定した基準物質を装置にセットし、30℃から40℃/分の速度にて200℃まで昇温し、200℃に10分間保った。
結晶化温度測定:状態調節後、200℃から10℃/分の速度にて30℃まで冷却し、DSC曲線を得た。
融解温度測定:結晶化温度測定後、30℃にて10分間保ったのち、30℃から10℃/分の速度にて200℃まで昇温し、DSC曲線を得た。
結晶化開始温度:結晶化温度測定曲線において、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と,結晶化ピークの高温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度とした。結晶化ピークが複数現れる場合には、高温側のピークの結晶化開始温度とする。
融解ピーク温度:融解温度測定曲線において、融解ピークの頂点の温度とした。融解ピークが複数ある場合は、最高ピーク高さの温度を融解ピーク温度とした。
【0057】
(4)発泡高さ
実施例または比較例により得られた積層体を10cm×10cmに切り出し、120℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH-102型エスペック製)中で360秒間静置した後、取り出して空気中で室温まで冷却した。発泡後の積層体の発泡層断面をデジタルマイクロスコープにて断面写真を撮影し、断面写真から発泡層のみの高さを10箇所測定し、平均の発泡層厚みを発泡高さとした。
【0058】
(5)発泡外観
実施例または比較例により得られた積層体を10cm×10cmに切り出し、120℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH-102型エスペック製)中で360秒間静置し発泡させた後、取り出して空気中で室温まで冷却した。発泡後の積層体の発泡層表面を目視にて観察し、セルサイズが均一かつ表面が平滑であるものを外観良好(〇)、セルサイズが不均一かつ表面凹凸があるものを外観不良(×)とした。
【0059】
(6)電子レンジ適性
実施例または比較例により得られた積層体をカップ状に賦型した後、120℃に加熱したパーフェクトオーブン(PH-102型エスペック製)中で360秒間静置し、電子レンジ適性評価用の発泡後の積層体を作製した。この発泡後の積層体中に常温の水200gを注入し、出力800Wの電子レンジ(パナソニック社製 NE-MS262)を用いて5分間電子レンジ処理を行った後、取り出して空気中で室温まで冷却し、積層体の発泡層の状況を評価した。表面に膨らみが発生せず、表面光沢にも問題がなかったものを○、発泡表面の凹凸が大きく外観が不良または、表面に大きな膨らみが発生していたものを×として判定した。
【0060】
(実施例1)
ポリエチレン系樹脂層(I)を形成するポリエチレン系樹脂組成物(A)として、MFRが15g/10分、密度が918g/cm、融解ピーク温度(Tmb)が104℃である高圧法低密度ポリエチレン(b-1)を99.7重量%、MFRが17g/10分、密度が0.966g/cm、融解ピーク温度(Tmc)が134℃の高密度ポリエチレン(c-1)を0.3重量%((b)と(c)の合計量を100重量%とする)になるよう配合し、直径40mmφの単軸押出機にて溶融混練したポリエチレン系樹脂組成物(A-1、MFR 15g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)104℃、((TmA)-(TcA))7℃、((Tmc)-(Tmb))30℃)を使用した。熱可塑性樹脂層(II)を形成する熱可塑性樹脂として、MFRが10g/10分、密度が0.936g/cm、融解ピーク温度が129℃のポリエチレン樹脂(D-1)を使用した。
直径90mmφの単軸押出機を備えた押出ラミネーターを用い、坪量320g/m、含水率7%の紙基材の片面にコロナ処理(30W・min/m)を施したのち、ポリエチレン樹脂(D-1)を押出機へ供給してTダイスから押出し、エアーギャップ115mm、ダイス出口樹脂温度320℃、引取り速度90m/min、厚み40μmにて基材上に押出ラミネート加工し、熱可塑性樹脂層(II)と紙基材との積層体を得た。
次に、直径90mmφの単軸押出機を備えた押出ラミネーターを用い、上記積層体の熱可塑性樹脂層(II)と反対の紙基材面に、コロナ処理(30W・min/m)を施したのち、ポリエチレン系樹脂組成物(A-1)を押出機へ供給してTダイスより押出し、エアーギャップ135mm、ダイス出口樹脂温度320℃、引取り速度90m/min、厚み70μmにて基材上に押出ラミネート加工し、ポリエチレン系樹脂層(I)、紙基材、ポリエチレン樹脂層(熱可塑性樹脂層)(II)の順に積層されてなる積層体を得た。 得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さ及び発泡外観の評価実施した結果、発泡高さ、発泡外観とも良好であった。また、電子レンジ適性においても、発泡層に異常は見られなかった。その層構成及び評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例2)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中の(b-1)の含有量を、99.0重量%とし、(c-1)の含有量を1.0重量%として変更して得られた、ポリエチレン系樹脂組成物(A-2、MFR 15g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)103℃、((TmA)-(TcA))2℃、((Tmc)-(Tmb))30℃)を使用した以外は実施例1と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の層構成と評価結果を表1に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さ及び発泡外観の評価実施した結果、発泡高さ、発泡外観とも良好であった。また、電子レンジ適性においても、発泡層に異常は見られなかった。
【0062】
(実施例3)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中のポリエチレン系樹脂(c)として、(c-1)の代わりに、MFRが11g/10分、密度が0.950g/cm、融解ピーク温度(Tmc)が131℃の高密度ポリエチレン(c-2)を用いて得られたポリエチレン樹脂組成物(A-3、MFR 15g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)103℃、((TmA)-(TcA))6℃、((Tmc)-(Tmb))27℃))を用いた以外は実施例2と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表1に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さ及び発泡外観の評価実施した結果、発泡高さ、発泡外観とも良好であった。また、電子レンジ適性においても、発泡層に異常は見られなかった。
【0063】
(実施例4)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中の高圧法低密度ポリエチレン(b)として、高圧法低密度ポリエチレン(b-1)の代わりに、MFRが9g/10分、密度が0.922g/cm、融解ピーク温度(Tmb)が108℃である高圧法低密度ポリエチレン(b-2)を99.7重量%、ポリエチレン系樹脂(c-1)の重量%を0.3重量%に変更して得られたポリエチレン樹脂組成物(A-4、MFR 9g/10分、密度 0.922g/cm、融解ピーク温度(TmA)108℃、((TmA)-(TcA))7℃、((Tmc)-(Tmb))26℃))を用いた以外は実施例21と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表1に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さ及び発泡外観の評価実施した結果、発泡高さ、発泡外観とも良好であった。また、電子レンジ適性においても、発泡層に異常は見られなかった。
【0064】
(実施例5)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中の高圧法低密度ポリエチレン(b)として、(b-1)の代わりに、MFRが17g/10分、密度が918g/cm、融解ピーク温度(Tmb)が104℃である高圧法低密度ポリエチレン(b-3)を用い、ポリエチレン系樹脂(c)として、(c-1)の代わりに、MFRが11g/10分、密度が0.950g/cm、融解ピーク温度(Tmc)が131℃の高密度ポリエチレン(c-2)を用いて得られたポリエチレン樹脂組成物(A-5、MFR 17g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)103℃、((TmA)-(TcA))6℃、((Tmc)-(Tmb))27℃))を用いた以外は実施例2と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表1に示す。得られた発泡性積層体の評価結果を表1に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さ及び発泡外観の評価実施した結果、発泡高さ、発泡外観とも良好であった。また、電子レンジ適性においても、発泡層に異常は見られなかった。
【0065】
【表1】
【0066】
(比較例1)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂として、下記表2に示す高圧法低密度ポリエチレン(b-4、MFRが7g/10分、密度が918g/cm、融解ピーク温度(Tmb)が105℃である高圧法低密度ポリエチレン)100重量%のみを用いて、ポリエチレン系樹脂(c)を含まない樹脂組成物(A-6、MFR 7g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)105℃、((TmA)-(TcA))10℃)を用いた以外は実施例1と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表2に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さは良好であったものの、発泡外観が悪く、発泡高さと発泡外観が両立した発泡積層体は得られなかった。また、電子レンジ適性においても、発泡体表面に大きな膨らみが発生した。
【0067】
(比較例2)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)として、下記表2に示す高圧法低密度ポリエチレン(b-1)100重量%のみを用いて、ポリエチレン系樹脂(c)を含まない樹脂組成物(A-7、MFR 15g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)104℃、((TmA)-(TcA))11℃)を用いた以外は実施例1と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表2に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さは良好であったものの、発泡外観が悪く、発泡高さと発泡外観が両立した発泡積層体は得られなかった。また、電子レンジ適性においても、発泡体表面に大きな膨らみが発生した。
【0068】
(比較例3)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中の樹脂として、高圧法低密度ポリエチレン(b-1)の重量%を94.0重量%、ポリエチレン系樹脂(c-1)の重量%を6.0重量%に変更して用いる以外は実施例1と同様にして得られたポリエチレン樹脂組成物(A-8、MFR 15g/10分、密度 0.920g/cm、融解ピーク温度(TmA)103℃、((TmA)-(TcA))-9℃、((Tmc)-(Tmb))30℃))を用いた以外は実施例1と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表2に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さ及び発泡外観の評価実施した結果、発泡高さ、発泡外観共に不良であり、良好な発泡積層体は得られなかった。また、電子レンジ適性においては、発泡外観が不良であった。
【0069】
(比較例4)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)として、下記表2に示す高圧法低密度ポリエチレン(b-5、MFRが50g/10分、密度が916g/cm、融解ピーク温度(Tmb)が103℃である高圧法低密度ポリエチレン)100重量%のみを用いて、ポリエチレン系樹脂(c)を含まない樹脂組成物(A-9、MFR 50g/10分、密度 0.916g/cm、融解ピーク温度(TmA)103℃、((TmA)-(TcA))10℃)を用いた以外は実施例1と同様にして発泡性積層体を得ようとした。しかしながら、結果を表2に示すが、樹脂組成物の成膜ができずに、良好な発泡性積層体を得ることはできなかった。
【0070】
(比較例5)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中の樹脂として、高圧法低密度ポリエチレン(b-1)の重量%を97.0重量%とし、ポリエチレン系樹脂(c-1)の代わりに、MFRが20g/10分、密度が0.928g/cm、融解ピーク温度(Tmc)が114℃の高圧法低密度ポリエチレン(c-3)を3.0重量%に変更して用いて得られたポリエチレン樹脂組成物(A-10、MFR 15g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)104℃、((TmA)-(TcA))9℃、((Tmc)-(Tmb))10℃))を用いた以外は実施例1と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表2に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さは良好であったものの、発泡外観が悪く、発泡高さと発泡外観が両立した発泡積層体は得られなかった。また、電子レンジ適性においても、発泡外観が不良であった。
【0071】
(比較例6)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中の樹脂として、下記表2に示すポリエチレン系樹脂(c-1、MFRが17g/10分、密度が966g/cm、融解ピーク温度(Tmb)が134℃である高密度ポリエチレン)100重量%のみを用いて、高圧法低密度ポリエチレン(b)を含まない樹脂組成物(A-11、MFR 17g/10分、密度 0.966g/cm、融解ピーク温度(TmA)134℃、((TmA)-(TcA))12℃)を用いた以外は実施例1と同様にして発泡性積層体を得ようとした。しかしながら、結果を表2に示すが、樹脂組成物の成膜ができずに、良好な発泡性積層体を得ることはできなかった。
【0072】
(比較例7)
ポリエチレン系樹脂層(I)に使用する樹脂組成物(A)中の樹脂として、ポリエチレン系樹脂(c-1)の代わりに、ポリプロピレン樹脂(p-1、日本ポリプロ(株)製ノバテックPP FL02A)MFRが20g/10分、密度が0.900g/cm、融解ピーク温度(Tmc)が140℃)を1.0重量%に変更して用いて得られたポリエチレン樹脂組成物(A-12、MFR 15g/10分、密度 0.918g/cm、融解ピーク温度(TmA)104℃、((TmA)-(TcA))10℃、((Tmc)-(Tmb))36℃))を用いた以外は実施例2と同様にして発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体の評価結果を表2に示す。得られた発泡性積層体をオーブン中にて120℃、6分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡積層体の発泡高さは良好であったものの、発泡外観が悪く、発泡高さと発泡外観が両立した発泡積層体は得られなかった。また、電子レンジ適性においても、発泡外観が不良であった。
【0073】
【表2】
【0074】
上記の結果から、紙基材の少なくとも一方の面に発泡させるためのポリエチレン系樹脂層(I)を形成する発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂組成物において、該組成物に含まれるポリエチレン系樹脂組成物(A)の特性として、本発明で規定する(A1)~(A3)の物性、特に(A3)で定める、(TmA)-(TcA)の値が一定の範囲内を示す物性の樹脂組成物を用いる場合において、加熱によって十分な高さと外観の良好な発泡セル(発泡層)が生産性良く得られ、かつ優れた電子レンジ適性が得られることが判明した。