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特許7532835多段収容容器セット及び細胞培養容器セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】多段収容容器セット及び細胞培養容器セット
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240806BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020051322
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021145644
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】塚田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 幸太
(72)【発明者】
【氏名】大久保 春男
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123335(JP,A)
【文献】特開平08-324569(JP,A)
【文献】特開2001-354241(JP,A)
【文献】特開2018-074936(JP,A)
【文献】特開平04-351547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0070951(US,A1)
【文献】特開2019-094315(JP,A)
【文献】特開2019-165689(JP,A)
【文献】特開2002-096834(JP,A)
【文献】三甲株式会社 製品情報(2色コンテナ),2016年08月25日,Internet Archive Wayback Machine[2024年1月30日検索]https://sanko-kk.co.jp/product/sn_container/を検索,インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
B65D 21/
B65D 85/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段に積み上げられて細胞培養容器を収容可能に構成される収容容器を複数備え、前記細胞培養容器を収容空間内に保持して収容する細胞培養容器用の多段収容容器セットであって、
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、
積載方向に垂直な面上であって、積載方向を中心軸とする相対的な角度位置のうち、それぞれの直上段の前記収容容器との関係で第1の角度位置にある第1状態と、該第1状態と異なる第2の角度位置にあり、それぞれの直上段の前記収容容器との間に前記収容空間を形成する第2状態とで、それぞれの直上段の前記収容容器を上に積載可能であり、
前記第1状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第1支持部と、
前記第2状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第2支持部と、を有し、
該第2支持部は、積載方向に垂直な面内において前記収容空間よりも外側に配設されており、前記第1支持部で直上段の前記収容容器を支持しているときよりも、直上段の前記収容容器が高い位置に配設させるように直上段の前記収容容器を支持して、前記細胞培養容器を前記収容空間内に収容可能であり、
前記収容容器の底面部の外周縁部は、前記底面部の中央部よりも上方に配設されており、前記外周縁部の上面の少なくとも一部分は、前記収容容器の高さ方向における中央よりも高い位置に配置されているとともに、前記細胞培養容器が載置される培養容器支持面を構成しており、
前記収容空間は、前記収容容器の内部の上方の空間であることを特徴とする細胞培養容器用の多段収容容器セット。
【請求項2】
多段に積み上げられて細胞培養容器を収容可能に構成される収容容器を複数備え、前記細胞培養容器を収容空間内に保持して収容する細胞培養容器用の多段収容容器セットであって、
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、
積載方向に垂直な面上であって、積載方向を中心軸とする相対的な角度位置のうち、それぞれの直上段の前記収容容器との関係で第1の角度位置にある第1状態と、該第1状態と異なる第2の角度位置にあり、それぞれの直上段の前記収容容器との間に前記収容空間を形成する第2状態とで、それぞれの直上段の前記収容容器を上に積載可能であり、
前記第1状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第1支持部と、
前記第2状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第2支持部と、を有し、
該第2支持部は、積載方向に垂直な面内において前記収容空間よりも外側に配設されており、前記第1支持部で直上段の前記収容容器を支持しているときよりも、直上段の前記収容容器が高い位置に配設させるように直上段の前記収容容器を支持して、前記細胞培養容器を前記収容空間内に収容可能としており、
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、前記収容空間と外部とを連通して前記細胞培養容器に接続されたチューブを保持する保持部を有し、
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器の下面に、直下段の前記収容容器との間に収容された前記細胞培養容器に接続された前記チューブを通すことが可能な溝が形成されており、
前記溝は、前記第2状態にあるときに、前記収容空間と直下段の前記収容容器に設けられた前記保持部とに連通しており、
前記保持部は、前記収容容器の上端部に周回して形成されている周縁部の上面に形成された凹溝であることを特徴とする細胞培養容器用の多段収容容器セット。
【請求項3】
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、下方に向かうにつれて小さい断面積となる縮径部を有し、
前記縮径部の肉厚方向の内側に、直上段の前記収容容器を支持する前記第1支持部が設けられており、
前記縮径部の肉厚方向の外側に、直下段に設けられた前記第1支持部に支持される第1被支持部が設けられている請求項1又は2のいずれか一項に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
【請求項4】
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器の下面には、直下段の前記収容容器の前記第2支持部によって支持される第2被支持部が設けられており、
前記第2被支持部は、前記第2状態にあるときに、積載方向に垂直な面において各前記収容容器の中心を通る中心軸を基準として、直上段の前記収容容器に設けられた前記第2被支持部に対して180度ずれた角度位置の下面に設けられている請求項1からのいずれか一項に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
【請求項5】
前記保持部は、前記収容容器の側部に複数設けられており、
複数の前記保持部は、前記収容容器における一方側の第1側部と、該第1側部とは逆側にある第2側部と、に設けられている請求項2を引用する請求項に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セットと、
前記第2状態にある前記収容容器で構成された前記多段収容容器セットの前記収容空間に収容された細胞培養容器と、を備えることを特徴とする細胞培養容器セット。
【請求項7】
前記収容容器のそれぞれの下面には、直下段の前記収容容器の前記第2支持部によって支持される第2被支持部が設けられており、
前記細胞培養容器の上面には、
培地等の流体を導入又は排出するチューブを接続するためのコネクタが突出して設けられており、
前記収容容器の下面の一部は、前記第2被支持部よりも上方に配設されており、直下段の前記収容容器との間に、細胞培養容器に取り付けられた前記コネクタを収容可能な収容空間を形成している請求項に記載の細胞培養容器セット。
【請求項8】
内部を滅菌可能な滅菌包装体を更に備え、
該滅菌包装体は、前記細胞培養容器及び前記収容容器を覆い、内部を密封している請求項又はに記載の細胞培養容器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養容器を収容する細胞培養容器用の多段収容容器セット、及び細胞培養容器を収容した多段収容容器セットである細胞培養容器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞(微生物)を培養するために細胞培養容器が用いられる。細胞培養容器は、細胞を培養するための培地やガスが供給する供給装置に、チューブ(流路)を介して接続可能に構成されるものがある。
例えば、特許文献1には、培地(同文献には、内溶液と記載。)の注入を容易にするため内容積を変えることが可能な細胞培養容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-314276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような細胞培養容器を納入、使用するまで、細胞培養容器の破損を防ぐ必要がある。このため、細胞培養容器を搬送する際には、細胞培養容器を収容する収容容器内に緩衝材を設けたり、輸送時の振動が伝播するのを防ぐために収容容器に細胞培養容器を固定する部材が必要であった。
【0005】
そして、収容容器に加えて、上記の緩衝材や固定する部材を用意すると、細胞培養容器を収容していない状態において、複数の収容容器を多段に積み重ねたときに余計に嵩張ったりすることがあり、細胞培養容器を収容する収容容器に関して改善の余地があった。
したがって、複数の細胞培養容器を容易に搬送でき、かつ嵩張りを防止可能な搬送手段が求められていた。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、細胞培養容器を好適に搬送可能であり、嵩張りを防止可能な、多段収容容器セット及び細胞培養容器セットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る細胞培養容器用の多段収容容器セットは、多段に積み上げられて細胞培養容器を収容可能に構成される収容容器を複数備え、前記細胞培養容器を収容空間内に保持して収容する細胞培養容器用の多段収容容器セットであって、
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、
積載方向に垂直な面上であって、積載方向を中心軸とする相対的な角度位置のうち、それぞれの直上段の前記収容容器との関係で第1の角度位置にある第1状態と、該第1状態と異なる第2の角度位置にあり、それぞれの直上段の前記収容容器との間に前記収容空間を形成する第2状態とで、それぞれの直上段の前記収容容器を上に積載可能であり、
前記第1状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第1支持部と、
前記第2状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第2支持部と、を有し、
該第2支持部は、積載方向に垂直な面内において前記収容空間よりも外側に配設されており、前記第1支持部で直上段の前記収容容器を支持しているときよりも、直上段の前記収容容器が高い位置に配設させるように直上段の前記収容容器を支持して、前記細胞培養容器を前記収容空間内に収容可能とすることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る細胞培養容器セットは、上記の細胞培養容器用の多段収容容器セットと、
前記第2状態にある前記収容容器で構成された前記多段収容容器セットの前記収容空間に収容された細胞培養容器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多段収容容器セット及び細胞培養容器セットによれば、細胞培養容器を好適に搬送可能であり、嵩張りを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第2状態にある収容容器を備える多段収容容器、及び細胞培養容器セットを示す模式図である。
図2】第1状態にある収容容器を備える多段収容容器セットを示す模式図である。
図3】細胞培養容器を示す模式的な斜視図である。
図4】収容容器を示す上側斜視図である。
図5】収容容器を示す下側斜視図である。
図6】収容容器を示す平面図である。
図7】収容容器を示す底面図である。
図8】細胞培養容器セットを滅菌包装体で覆った状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
<概要>
はじめに、本実施形態に係る細胞培養容器2用の多段収容容器セット1、及び細胞培養容器セット1Xの概要を、図1から図4を主に参照して説明する。
図1は、第2状態にある収容容器10を備える多段収容容器セット1、及び細胞培養容器セット1Xを示す模式図である。
図2は、第1状態にある収容容器10を備える多段収容容器セット1を示す模式図である。
図3は、細胞培養容器2を示す模式的な斜視図、図4は、収容容器10を示す上側斜視図である。
【0013】
本実施形態に係る細胞培養容器2用の多段収容容器セット1は、多段に積み上げられて細胞培養容器2を収容可能に構成される収容容器10を複数備える。多段収容容器セット1は、細胞培養容器2を収容空間10x内に保持して収容する細胞培養容器2用の多段収容容器セット1である。
複数の収容容器10の少なくとも一部の収容容器10は、積載方向(上下方向)に垂直な面上であって、積載方向を中心軸とする相対的な角度位置のうち、それぞれの直上段の収容容器10との関係で第1の角度位置にある第1状態(図2参照。)と、第1状態と異なる第2の角度位置にあり、それぞれの直上段の収容容器10との間に収容空間10xを形成する第2状態(図1参照。)とで、それぞれの直上段の収容容器10を上に積載可能である。
【0014】
複数の収容容器10の少なくとも一部の収容容器10は、第1状態にあるときに、直上段の収容容器10を支持する第1支持部(縮径部10q、図4参照。)と、第2状態にあるときに、直上段の収容容器10を支持する第2支持部(載置面10s、10t、10u、10v、10w、図4参照。)と、を有する。
載置面10s、10t、10u、10v、10wは、積載方向に垂直な面内において収容空間10xよりも外側に配設されており、縮径部10qで直上段の収容容器10を支持しているとき(図2参照。)よりも、直上段の収容容器10が高い位置に配設させるように直上段の収容容器10を支持して(図1参照。)、細胞培養容器2を収容空間10x内に収容可能とすることを特徴とする。
【0015】
なお、後述のように、第1支持部として縮径部10q、第2支持部として載置面10s、10t、10u、10v、10wを例に説明するが、直上段の収容容器10を支持(少なくとも下方から支持)できればよく、その形状は限定されない。
例えば、第1支持部が平面状に形成されていてもよく、第2支持部が下方に向かうにつれて縮径された形状に形成されていてもよい。
【0016】
また、「第1角度位置」と「第2角度位置」は、積載方向に垂直な面内において、180度だけ回転角度がずれた位置であるものとして後述するが、本発明はこのような構成に限定されない。
詳細については後述するが、例えば回転角度が90度ずつずれた位置で積み上げ可能なように、第1支持部と第2支持部を配設する構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、第1状態(図2参照)にすることで、直上段の収容容器10をその下にある収容容器10にコンパクトに重ねることができる。
そして、詳細については後述するが、第2状態にすることで、載置面10s、10t、10u、10v、10wによって、直上段の収容容器10(突出部10h、10i、10j、10k、10m)が当接支持されることとなる。このため、収容空間10xの内部に収容された細胞培養容器2に荷重負荷がかからないようにして、直上段の収容容器10をその下の収容容器10に積載することができる。
【0018】
また、詳細については後述するが、第2支持部(載置面10s、10t、10u、10v、10w、図4参照。)により、直上段の収容容器10をその下にある収容容器10の上に積載できることで、細胞培養容器2の上方の移動を制限できる。このため、収容容器10の他に、細胞培養容器2を収容容器10に固定するための他の部材が不要、あるいはその数を制限することができる。このため、これらの部材のために、重量が増加したり、廃棄物が増加したりすることを抑制できる。
【0019】
本実施形態に係る細胞培養容器セット1Xは、細胞培養容器2用の多段収容容器セット1と、第2状態にある収容容器10で構成された多段収容容器セット1の収容空間10xに収容された細胞培養容器2と、を備える。
【0020】
上記構成によれば、第2状態とした収容容器10で構成された多段収容容器セット1の収容空間10xに細胞培養容器2を収容した状態で、保管及び搬送することが可能となる。
【0021】
<多段収容容器セット及び細胞培養容器セットの各部の構成>
次に、多段収容容器セット1及び細胞培養容器セット1Xの各部の構成について、図1から図4に加え、図5から図7を主に参照して説明する。
図5は、収容容器10を示す下側斜視図、図6は、収容容器10を示す平面図、図7は、収容容器10を示す底面図である。
【0022】
[細胞培養容器]
本実施形態に係る細胞培養容器2は、細胞(微生物を含む)を培養する閉鎖系大量培養装置に使用される容器であり、例えばポリエチレン、ポリスチレン又はポリプロピレン等によって形成されている。培養された細胞は、酵素を投与することにより分散し、不図示のスクレーパーで細胞培養容器2内から回収される。
【0023】
細胞培養容器2(の蓋部2b)の上面には、培地等の流体(液体培地又は二酸化炭素等のガス)を導入又は排出するチューブ2dを接続するためのコネクタ2cが突出して設けられている。
コネクタ2cは、培地及びガス等を不図示の供給装置から細胞培養容器2(の培養部2a)内に流入させ(又は細胞培養容器2から細胞培養容器2外に流出させる)ものである。後述する収容容器10においては、このコネクタ2cを収容可能な領域が、収容容器10の長手方向両側に形成されることになる。
培地は、供給装置から供給され、チューブ2d内部において不図示のベリスタルポンプによって押し出されて、細胞培養容器2内に流入される。
【0024】
[収容容器]
本実施形態に係る収容容器10は、第1状態となるように上方に複数積み重ねられることによって、図2に示すように、上下の収容容器10の重なりが大きくなり、コンパクトな大きさとなる。
一方で、収容容器10は、第2状態となるように上方に複数積み重ねられることによって、図1に示すように、上下の収容容器10の重なりが小さくなり、これらの間に、細胞培養容器2を収容可能となる。
【0025】
本実施形態に係る収容容器10は、樹脂製(例えばポリスチレン製)で、真空成形により形成されており、肉厚に偏りのない(略ない)、薄肉の容器である。このため、収容容器10にガンマ線を照射して、収容容器10を滅菌する際に、収容容器10全体を効果的に滅菌することができる。
【0026】
収容容器10は、水平面の長手方向における中央にあり下方に突出して形成された中央部10aと、中央部10aの上端部に周回して形成された周縁部10bと、を主に備える。
【0027】
図5に示すように、中央部10aの長手方向における両端部に設けられた後述する上側底面10zは、中央部10aの底面と比較して、上方に配設されている。
中央部10aの上方の空間であり、第2状態となるように直上段に積み重ねられた収容容器10との間の空間が、細胞培養容器2を収容する収容空間10xとなる。
周縁部10bは、収容空間10xに対して外側に延在して下方に折り返されている。
【0028】
図4及び図6に示すように、収容容器10の上面の一部には、細胞培養容器2が載置される培養容器支持面10yが、(後述する縮径部10c、10d、10e、10f、10gに重なる部分を除いて)周回状に形成されている。
【0029】
複数の収容容器10の少なくとも一部の収容容器10は、下方に向かうにつれて小さい断面積となる縮径部10c、10d、10e、10f、10gを有する。より具体的には、縮径部10c、10d、10e、10f、10gは、中央部10aの周面部分の一部に形成されている。
縮径部10c、10d、10e、10f、10gの肉厚方向の内側に、直上段の収容容器10を支持する第1支持部(内面10q)が設けられている。
縮径部10c、10d、10e、10f、10gの肉厚方向の外側に、直下段に設けられた第1支持部(内面10q)に支持される第1被支持部(外面10r)が設けられている。
【0030】
縮径部10c、10d、10e、10f、10gは、換言すると、下方に向かうにつれてテーパ状に縮径されており、断面半円弧状に形成されている。
上記構成によれば、直下段の収容容器10の縮径部10c、10d、10e、10f、10gの内面10qに、直上段の収容容器10の縮径部10c、10d、10e、10f、10gの外面10rを重ねるようにして(つまり、第1状態として)、複数の収容容器10をコンパクトに容易に位置出しをしながら積み上げることができる。
【0031】
このように、収容容器10の縮径部10c、10d、10e、10f、10g(の外面10r)を、直下段の収容容器10の縮径部10c、10d、10e、10f、10g(の内面10q)に重ね合わせることで、自然に支持位置に位置出しできる点で好適であるが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、「縮径部」として、階段状に形成されて、下方に向かうにつれて小さく形成されているものであってもよい。
【0032】
複数の収容容器10の少なくとも一部(本実施形態においてはすべて)の収容容器10の下面には、直下段の収容容器10の第2支持部(載置面10s、10t、10u、10v、10w)によって支持される第2被支持部(突出部10h、10i、10j、10k、10m)が設けられている。
【0033】
本実施形態に係る第2被支持部(突出部10h、10i、10j、10k、10m)は、第2状態にあるときに、積載方向に垂直な面において各収容容器10の中心を通る中心軸を基準として、直上段の収容容器10に設けられた第2被支持部(突出部10h、10i、10j、10k、10m)に対して180度ずれた角度位置の下面に設けられている。
【0034】
上記構成によれば、第1状態にある各収容容器10に対して180度ずつ角度をずらして、第2状態として収容空間10xを形成しながら、複数の収容容器10を容易に積み上げることができる)
特に、本実施形態においては、図6に示すように、収容容器10の中心面CS(溝10aaの溝幅方向の中心を含み、鉛直方向に延在する仮想面)を挟んで、一方側の上面に、2つの載置面10v、10wがある。
また、図7に示すように、一方側の下面に、3つの突出部10j、10k、10mがある。また、図6に示すように、他方側の上面に、3つの載置面10s、10t、10uがあり、図7に示すように、他方側の下面に、2つの突出部10h、10iがある。
【0035】
このような構成によれば、収容容器10を安定して積み重ねることができるため好適であるが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、収容容器10の中心面CSを挟んで、一方側と他方側とのどちらかに、少なくとも1つの載置面(及び突出部)があり、逆側に少なくとも2つの載置面(及び突出部)があればよい。このような構成であれば、収容容器10を積み重ねたときのぐらつきを好適に抑制できる。
【0036】
上記のように、収容容器10のそれぞれの下面には、直下段の収容容器10の第2支持部(載置面10s、10t、10u、10v、10w)によって支持される第2被支持部(突出部10h、10i、10j、10k、10m)が設けられている。
収容容器10の下面の一部(上側底面10z)は、第2被支持部(突出部10h、10i、10j、10k、10m)よりも上方に配設されている。このため、図1に示すように、収容容器10と直下段の収容容器10との間に、細胞培養容器2に取り付けられたコネクタ2cを収容可能な収容空間を形成している。
上記構成によれば、細胞培養容器2に取り付けられたコネクタ2cを、上側底面10zによって形成された収容空間内に好適に収容可能となる。
【0037】
特に、図7に示すように、本実施形態に係る突出部10h、10iのそれぞれは、縮径部10f、10gのそれぞれの下面に該当する部位である。そして、突出部10h、10i及び縮径部10f、10gは、周囲よりも他方側に突出しており、突出部10j、10m及び縮径部10c、10eと比較して、長尺方向において内側に配設されている。
【0038】
また、本実施形態に係る突出部10j、10k、10mのそれぞれは、縮径部10c、10d、10eのそれぞれの下面に該当する部位である。そして、突出部10j、10k、10m及び縮径部10c、10d、10eは、一方側に周囲よりも突出している。
突出部10j、10m及び縮径部10c、10eは、突出部10h、10i及び縮径部10f、10gと比較して、長尺方向において外側に配設されている。
そして、一方側には、縮径部10d及び突出部10kが設けられているのに対し、他方側には、これらがなく、方形部10nが設けられているのみである。
【0039】
そして、載置面10v、10w(図6参照。)を中心面CSに対し面対称に投影した部位のそれぞれの領域は、突出部10i、10h(図7参照。)のそれぞれの少なくとも一部の領域に重なるように形成されている。
同様に、載置面10s、10t、10u(図6参照。)を中心面CSに対し面対称に投影した部位のそれぞれの領域は、突出部10e、10d、10c(図7参照。)のそれぞれの少なくとも一部の領域に重なるように形成されている。
【0040】
このような構成によれば、直下段の収容容器10に対して、水平面方向において反転させた状態で、収容容器10を積み重ねたときに、細胞培養容器2を収容する収容空間10xを形成するように間を空けて重なる第2状態とすることができる。
つまり、突出部10hを載置面10w、突出部10iを載置面10v、突出部10jを載置面10u、突出部10kを載置面10t、突出部10mを載置面10sで支持することとなる。
【0041】
そして、収容容器10の高さを、収容容器10の縮径部10c、10d、10e、10f、10gそれぞれの外面10rを直下段の収容容器10の縮径部10c、10d、10e、10f、10gそれぞれの内面10qで支持する場合と比較して、高い位置にすることができる。
【0042】
なお、上記においては、「第1角度位置」と「第2角度位置」は、積載方向に垂直な面内において、180度だけ回転角度がずれた位置であるものとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、360度/N(Nは2以上の自然数。)で、積載方向に垂直な面において各収容容器10の中心を通る中心軸周りに回転させて、積み上げられるようにしてもよい。
【0043】
具体的な構成としては、1つの収容容器10において、第2支持部(載置面10s、10t、10u、10v、10w)が、第2被支持部(突出部10h、10i、10j、10k、10m)に対して、中心軸周りに360度/N(Nは2以上の自然数。)の角度位置に設けられていればよい。
【0044】
図4に示すように、複数の収容容器10の少なくとも一部の収容容器10は、収容空間10xと外部とを連通して細胞培養容器2に接続されたチューブ2dを保持する保持部(保持溝部10ba)を有する。
【0045】
保持溝部10baは、周縁部10bにおける対向する長辺部の対角部分の上面に、周囲より窪んで形成されている。
例えば、保持溝部10baは、チューブ2dの線形よりも若干小さな溝幅で形成されていることで、チューブ2dが弾性変形することにより、保持溝部10ba内に収容され、弾性復元力が生じることにより、チューブ2dが保持溝部10ba内に保持される。
【0046】
なお、「保持部」としては、チューブ2dを保持できればよく、リング状に形成されたものであっても、C字状に形成されたもの等であってもよく、収容容器10に取り付けられる別個の部材であってもよい。
【0047】
上記構成によれば、保持部により保持したチューブ2dを収容空間10xと一の収容容器10の外部とに通して、不図示の培地・気体供給装置、及び不図示の排液・排気装置に接続することができる。
【0048】
保持部(保持溝部10ba)は、収容容器10の側部(周縁部10b)に複数設けられている。
複数の保持溝部10baは、収容容器10における一方側の第1側部10bbと、第1側部10bbとは逆側にある第2側部10bcと、に設けられている。
より詳細には、周縁部10bにおける対向する長辺部の対角部分の上面に、短辺に平行な方向に延在している3条ずつ形成されている。
【0049】
上記構成によれば、各収容容器10を、180度ずつ角度をずらして積み上げた場合に、収容容器10から保持部(保持溝部10ba)により同一方向にチューブ2dを引き出すことができる。
なお、保持溝部10baは、例えば、周縁部10bのすべての周側部に設けられてもよい。
【0050】
図5及び図7に示すように、複数の収容容器10の少なくとも一部の収容容器10の下面に、直下段の収容容器10との間に収容された細胞培養容器2に接続されたチューブ2dを通すことが可能な溝10aa、10abが形成されている。
溝10aa、10abは、第2状態にあるときに、収容空間10xと直下段の収容容器10に設けられた保持部(保持溝部10ba)とに連通している。
【0051】
具体的には、溝10aaは、収容容器10の短尺方向の中央部において、長尺方向に延在している。溝10abは、一方側にある縮径部10c、10d、10eのそれぞれと、他方側にある縮径部10f、長尺方向中央の方形部10n、縮径部10gのそれぞれと、を分けるように短尺方向に2本設けられている。
また、溝10abは、溝10aaに跨って直交するように延在し、溝10aaよりも浅い深さで形成されている。
【0052】
このように、収容容器10の下面に溝10aa、10abが形成されていることにより、直下段の収容容器10の収容空間10xから収容容器10の外部にチューブ2dを好適に通すことができる。
【0053】
[滅菌包装体]
次に、多段収容容器セット1(細胞培養容器セット1X)をまとめて滅菌可能とする滅菌包装体について、図8を主に参照して説明する。
図8は、細胞培養容器セット1Xを滅菌包装体(滅菌袋3)で覆った状態を示す模式図である。
【0054】
細胞培養容器セット1Xは、内部を滅菌可能な滅菌包装体(滅菌袋3)を更に備えるようにしてもよい。滅菌袋3は、細胞培養容器2及び収容容器10を覆い、内部を密封している。
上記構成によれば、滅菌袋3により、細胞培養容器2及び収容容器10に対してガンマ線を照射することにより、これらを滅菌した状態で、細胞培養容器セット1Xを搬送することができる。
なお、滅菌包装体としては、細胞培養容器2及び収容容器10を覆って、密封できればよく、滅菌袋3に限定されず、ある程度の定形性を有するボックス状のものであってもよい。
【0055】
なお、本発明に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0056】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
多段に積み上げられて細胞培養容器を収容可能に構成される収容容器を複数備え、前記細胞培養容器を収容空間内に保持して収容する細胞培養容器用の多段収容容器セットであって、
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、
積載方向に垂直な面上であって、積載方向を中心軸とする相対的な角度位置のうち、それぞれの直上段の前記収容容器との関係で第1の角度位置にある第1状態と、該第1状態と異なる第2の角度位置にあり、それぞれの直上段の前記収容容器との間に前記収容空間を形成する第2状態とで、それぞれの直上段の前記収容容器を上に積載可能であり、
前記第1状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第1支持部と、
前記第2状態にあるときに、直上段の前記収容容器を支持する第2支持部と、を有し、
該第2支持部は、積載方向に垂直な面内において前記収容空間よりも外側に配設されており、前記第1支持部で直上段の前記収容容器を支持しているときよりも、直上段の前記収容容器が高い位置に配設させるように直上段の前記収容容器を支持して、前記細胞培養容器を前記収容空間内に収容可能とすることを特徴とする細胞培養容器用の多段収容容器セット。
(2)
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、前記収容空間と外部とを連通して前記細胞培養容器に接続されたチューブを保持する保持部を有する(1)に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
(3)
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器の下面に、直下段の前記収容容器との間に収容された前記細胞培養容器に接続された前記チューブを通すことが可能な溝が形成されており、
該溝は、前記第2状態にあるときに、前記収容空間と直下段の前記収容容器に設けられた前記保持部とに連通している(2)に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
(4)
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器は、下方に向かうにつれて小さい断面積となる縮径部を有し、
前記縮径部の肉厚方向の内側に、直上段の前記収容容器を支持する前記第1支持部が設けられており、
前記縮径部の肉厚方向の外側に、直下段に設けられた前記第1支持部に支持される第1被支持部が設けられている(1)から(3)のいずれか一項に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
(5)
複数の前記収容容器の少なくとも一部の前記収容容器の下面には、直下段の前記収容容器の前記第2支持部によって支持される第2被支持部が設けられており、
前記第2被支持部は、前記第2状態にあるときに、積載方向に垂直な面において各前記収容容器の中心を通る中心軸を基準として、直上段の前記収容容器に設けられた前記第2被支持部に対して180度ずれた角度位置の下面に設けられている(1)から(4)のいずれか一項に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
(6)
前記保持部は、前記収容容器の側部に複数設けられており、
複数の前記保持部は、前記収容容器における一方側の第1側部と、該第1側部とは逆側にある第2側部と、に設けられている(2)又は(3)を引用する(5)に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セット。
(7)
(1)から(6)のいずれか一項に記載の細胞培養容器用の多段収容容器セットと、
前記第2状態にある前記収容容器で構成された前記多段収容容器セットの前記収容空間に収容された細胞培養容器と、を備えることを特徴とする細胞培養容器セット。
(8)
前記収容容器のそれぞれの下面には、直下段の前記収容容器の前記第2支持部によって支持される第2被支持部が設けられており、
前記細胞培養容器の上面には、
培地等の流体を導入又は排出するチューブを接続するためのコネクタが突出して設けられており、
前記収容容器の下面の一部は、前記第2被支持部よりも上方に配設されており、直下段の前記収容容器との間に、細胞培養容器に取り付けられた前記コネクタを収容可能な収容空間を形成している(7)に記載の細胞培養容器セット。
(9)
内部を滅菌可能な滅菌包装体を更に備え、
該滅菌包装体は、前記細胞培養容器及び前記収容容器を覆い、内部を密封している(7)又は(8)に記載の細胞培養容器セット。
【符号の説明】
【0057】
1 多段収容容器セット
1X 細胞培養容器セット
2 細胞培養容器
2a 培養部
2b 蓋部
2c コネクタ
2d チューブ
3 滅菌袋(滅菌包装体)
10 収容容器
10a 中央部
10aa、10ab 溝
10b 周縁部(側部)
10ba 保持溝部(保持部)
10bb 第1側部
10bc 第2側部
10c、10d、10e、10f、10g 縮径部
10h、10i、10j、10k、10m 突出部(第2被支持部)
10n 方形部
10q 内面(第1支持部)
10r 外面(第1被支持部)
10s、10t、10u、10v、10w 載置面(第2支持部)
10x 収容空間
10y 培養容器支持面
10z 上側底面
CS 中心面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8