(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】衣付き食品の製造または改質用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/238 20160101AFI20240806BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240806BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240806BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240806BHJP
A23L 13/50 20160101ALI20240806BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20240806BHJP
A23L 29/256 20160101ALN20240806BHJP
A23L 29/269 20160101ALN20240806BHJP
A23L 29/231 20160101ALN20240806BHJP
A23L 29/262 20160101ALN20240806BHJP
【FI】
A23L29/238
A23L5/00 J
A23L5/10 D
A23L13/00 A
A23L13/50
A23L17/00 A
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/231
A23L29/262
(21)【出願番号】P 2020060095
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木場 隆介
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094586(JP,A)
【文献】特開平04-281759(JP,A)
【文献】特開2015-078213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
衣付き食品の製造または改質用であり、
下記成分(A)および/または(B)を含有し:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物
前記多糖加水分解酵素が、前記耐熱性増粘多糖類の主鎖を加水分解する酵素であ
り、
前記耐熱性増粘多糖類がタマリンドシードガムであり、前記多糖加水分解酵素がβ-グルカナーゼである、組成物。
【請求項2】
前記β-グルカナーゼが、エキソ-β-グルカナーゼである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多糖加水分解酵素の含有量が、前記耐熱性増粘多糖類1gに対し、0.1~100Uである、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記衣付き食品の製造の際に、食材に衣材を付着させる前に該食材に付着させることにより利用されるか、衣材と同時に食材に付着させることにより利用される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣の硬さの増大、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート
食品である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
衣付き食品の製造方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)下記成分(A)および/または(B)を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物
を含み、
前記多糖加水分解酵素が、前記耐熱性増粘多糖類の主鎖を加水分解する酵素であり、
前記耐熱性増粘多糖類がタマリンドシードガムであり、前記多糖加水分解酵素がβ-グルカナーゼであり、
前記工程(b)が前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)および(b)が同時に実施される、方法。
【請求項10】
衣付き食品の改質方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)下記成分(A)および/または(B)を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物
を含み、
前記多糖加水分解酵素が、前記耐熱性増粘多糖類の主鎖を加水分解する酵素であり、
前記耐熱性増粘多糖類がタマリンドシードガムであり、前記多糖加水分解酵素がβ-グルカナーゼであり、
前記工程(b)が前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)および(b)が同時に実施される、方法。
【請求項11】
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣の硬さの増大、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記β-グルカナーゼが、エキソ-β-グルカナーゼである、請求項
9~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記多糖加水分解酵素の使用量が、前記耐熱性増粘多糖類1gに対し、0.1~100Uである、請求項
9~
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記衣材が付着した食材を油調する工程を含む、請求項
9~
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記油調が、油で揚げること、または、衣材に油を付着させてから焼成することである、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、請求項
9~
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート
食品である、請求項
9~
17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唐揚げ等の衣付き食品を改質する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣付き食品を改質する技術としては、食材の表面に保水性粉末、卵タンパク質含有液、および衣材を順に付着させてから油調する方法が報告されており、保水性粉末として加工澱粉やゲル化剤が例示されている(特許文献1)。
【0003】
また、挽き肉加工食品を改質する技術としては、側鎖をβ-ガラクトシダーゼで除去したガラクトキシログルカンを配合して挽き肉加工食品を製造する方法が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-126706
【文献】特開2004-180549
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、唐揚げ等の衣付き食品を改質する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、耐熱性増粘多糖類とその主鎖に作用する多糖加水分解酵素を併用することにより油調後の衣付き食品の経時劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
組成物であって、
衣付き食品の製造または改質用であり、
下記成分(A)および/または(B)を含有し:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物
前記多糖加水分解酵素が、前記耐熱性増粘多糖類の主鎖を加水分解する酵素である、組成物。
[2]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[3]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[4]
前記多糖加水分解酵素が、β-グルカナーゼ、アルギン酸リアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、カラギナーゼ、マンナナーゼ、ジェランリアーゼ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[5]
前記耐熱性増粘多糖類がβ-1,4キシログルカン構造を有する多糖であり、前記多糖加水分解酵素がβ-グルカナーゼである、前記組成物。
[6]
前記耐熱性増粘多糖類がタマリンドシードガムであり、前記多糖加水分解酵素がβ-グルカナーゼである、前記組成物。
[7]
前記β-グルカナーゼが、エキソ-β-グルカナーゼである、前記組成物。
[8]
前記多糖加水分解酵素の含有量が、前記耐熱性増粘多糖類1gに対し、0.1~100Uである、前記組成物。
[9]
前記衣付き食品の製造の際に、食材に衣材を付着させる前に該食材に付着させることにより利用されるか、衣材と同時に食材に付着させることにより利用される、前記組成物。[10]
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、前記組成物。
[11]
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣の硬さの増大、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[12]
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、前記組成物。
[13]
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート食品である、前記組成物。
[14]
衣付き食品の製造方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)下記成分(A)および/または(B)を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物
を含み、
前記多糖加水分解酵素が、前記耐熱性増粘多糖類の主鎖を加水分解する酵素であり、
前記工程(b)が前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)および(b)が同時に実施される、方法。
[15]
衣付き食品の改質方法であって、
下記工程(a)および(b):
(a)下記成分(A)および/または(B)を食材に付着させる工程;
(b)衣材を前記食材に付着させる工程:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物
を含み、
前記多糖加水分解酵素が、前記耐熱性増粘多糖類の主鎖を加水分解する酵素であり、
前記工程(b)が前記工程(a)の後に実施されるか、前記工程(a)および(b)が同時に実施される、方法。
[16]
前記改質が、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制である、前記方法。
[17]
前記劣化が、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣の硬さの増大、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
[18]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、カラギーナン、ジェランガム、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
[19]
前記耐熱性増粘多糖類が、アルギン酸塩、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
[20]
前記多糖加水分解酵素が、β-グルカナーゼ、アルギン酸リアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、カラギナーゼ、マンナナーゼ、ジェランリアーゼ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
[21]
前記耐熱性増粘多糖類がβ-1,4キシログルカン構造を有する多糖であり、前記多糖加水分解酵素がβ-グルカナーゼである、前記方法。
[22]
前記耐熱性増粘多糖類がタマリンドシードガムであり、前記多糖加水分解酵素がβ-グルカナーゼである、前記方法。
[23]
前記β-グルカナーゼが、エキソ-β-グルカナーゼである、前記方法。
[24]
前記多糖加水分解酵素の使用量が、前記耐熱性増粘多糖類1gに対し、0.1~100Uである、前記方法。
[25]
さらに、前記衣材が付着した食材を油調する工程を含む、前記方法。
[26]
前記油調が、油で揚げること、または、衣材に油を付着させてから焼成することである、前記方法。
[27]
前記衣付き食品が、衣付きタンパク質含有食品である、前記方法。
[28]
前記衣付き食品が、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、または衣付きベジミート食品である、前記方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、唐揚げ等の衣付き食品を改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1>有効成分
本発明においては、下記成分(A)および/または(B)を有効成分として利用する:(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物。
【0011】
上記成分(A)および/または(B)を「有効成分」ともいう。
【0012】
有効成分を利用することにより、衣付き食品を改質することができる、すなわち、衣付き食品を改質する効果が得られる。同効果を「食品改質効果」ともいう。すなわち、有効成分を利用することにより、有効成分を利用しない場合と比較して、衣付き食品を改質することができる。よって、有効成分は、衣付き食品の改質に利用されてよい。
【0013】
また、衣付き食品の改質の結果、改質された衣付き食品が得られてよい。言い換えると、有効成分を利用することにより、改質された衣付き食品を製造することができる。すなわち、有効成分を利用することにより、有効成分を利用しない場合と比較して、改質された衣付き食品を製造することができる。よって、有効成分は、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)に利用されてよい。「衣付き食品の改質」と「改質された衣付き食品の製造」は、代替可能に用いられてもよい。
【0014】
有効成分は、後述する本発明の方法に記載の態様で衣付き食品の改質または製造に利用されてよい。
【0015】
衣付き食品の改質としては、油調後の衣付き食品の経時劣化の抑制が挙げられる。油調後の衣付き食品の経時劣化は、例えば、油調後の保温に伴う衣付き食品の経時劣化であってもよい。劣化としては、衣付き食品の歩留の減少、衣の歯切れの悪化、衣の硬さの増大、衣剥がれの増大、食材表面の粘性の増大、食材のジューシー感の低下が挙げられる。有効成分を利用することにより、例えば、これらの劣化から選択される1つまたはそれ以上の劣化が抑制されてよい。有効成分を利用することにより、例えば、これらの劣化の全てが抑制されてもよい。衣付き食品が改質されたことは、例えば、有効成分を利用して製造された衣付き食品と有効成分を利用せずに製造された衣付き食品とで改質の対象となるパラメータを比較することにより、確認できる。改質の対象となるパラメータを測定する方法は、例えば、パラメータの種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。衣付き食品の歩留の比較は、例えば、衣付き食品の重量の変動を測定して比較することにより、測定できる。衣の歯切れ、衣の硬さ、衣剥がれ、食材表面の粘性、および食材のジューシー感の比較は、いずれも、例えば、専門パネルによる官能評価により実施できる。
【0016】
「耐熱性増粘多糖類」とは、耐熱性ゲルを形成する多糖を意味する。言い換えると、耐熱性増粘多糖類は、ゲル化能を有する。「耐熱性ゲル」とは、溶解温度が70℃以上であるゲルを意味してよい。以下、耐熱性増粘多糖類を、単に「増粘多糖類」ともいう。
【0017】
増粘多糖類は、可食性のものであれば、特に制限されない。増粘多糖類としては、アルギン酸、カラギーナン、ジェランガムが挙げられる。増粘多糖類としては、β-グルカン主鎖を有する多糖、ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖、マンナン主鎖を有する多糖も挙げられる。
【0018】
「β-グルカン」とは、D-グルコースがグリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。β-グルカンとしては、β-1,4グルカンやβ-1,3グルカンが挙げられる。「β-1,4グルカン」とは、D-グルコースがβ-1,4グリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。「β-1,3グルカン」とは、D-グルコースがβ-1,3グリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。β-グルカン主鎖は、修飾されていてもよく、いなくてもよい。修飾されたβ-グルカン主鎖としては、側鎖が付加されたものや水酸基がメトキシ化されたものが挙げられる。修飾されたβ-グルカン主鎖として、具体的には、β-1,4キシログルカンが挙げられる。β-グルカン主鎖を有する多糖としては、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードランが挙げられる。β-グルカン主鎖を有する多糖としては、特に、タマリンドシードガム等のβ-1,4キシログルカン構造を有する多糖が挙げられる。
【0019】
「ポリガラクツロン酸」とは、D-ガラクツロン酸がグリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。ポリガラクツロン酸しては、α-1,4ポリガラクツロン酸が挙げられる。「α-1,4ポリガラクツロン酸」とは、D-ガラクツロン酸がα-1,4グリコシド結合で連結された直鎖構造を意味してよい。ポリガラクツロン酸主鎖は、修飾されていてもよく、いなくてもよい。ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖としては、ペクチンが挙げられる。
【0020】
「マンナン」とは、D-マンノースがグリコシド結合で直鎖状に連結された構造を意味してよい。マンナンとしては、β-1,4マンナンが挙げられる。「β-1,4マンナン」とは、D-マンノースがβ-1,4グリコシド結合で直鎖状に連結された構造を意味してよい。マンナン主鎖は、修飾されていてもよく、いなくてもよい。修飾されたマンナン主鎖として、具体的には、β-1,4ガクラトマンナンが挙げられる。マンナン主鎖を有する多糖としては、ローカストビーンガムが挙げられる。
【0021】
すなわち、増粘多糖類として、具体的には、アルギン酸、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガムが挙げられる。増粘多糖類としては、特に、タマリンドシードガム等のβ-1,4キシログルカン構造を有する多糖が挙げられる。
【0022】
アルギン酸は、β-D-マンヌロン酸(M)とα-L-グルロン酸(G)が1,4グリコシド結合で連結された直鎖構造の主鎖を有する多糖であってよい。アルギン酸の由来は、特に制限されない。アルギン酸としては、コンブやジャイアントケルプ等の褐藻類に由来するものが挙げられる。アルギン酸における、MとGの比率および分布ならびに分子量等のパラメータは、アルギン酸が耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。アルギン酸のM/G比(Gに対するMのモル比)は、例えば、0.5~2.0であってよく、特に、1.0~1.5であってもよい。
【0023】
タマリンドシードガムは、タマリンドの種子から得られる多糖であってよい。タマリンドシードガムは、β-1,4グルカン主鎖を有する多糖であってよい。タマリンドシードガムは、具体的には、β-1,4キシログルカン構造を有する多糖であってよい。「β-1,4キシログルカン」とは、β-1,4グルカンの主鎖にD-キシロースの側鎖が連結された構造を意味してよい。D-キシロース残基には、さらに、D-ガラクトース残基が連結されていてもよい。タマリンドシードガムは、具体的には、XXXG、XXLG、XLXG、およびXLLGを繰り返し単位とする繰り返し構造を有していてよい。ここで、「G」はD-グルコース残基を、「X」はα-1,6結合でD-キシロース残基が結合したD-グルコース残基(すなわち、α-D-xylopyranose-(1→6)-β-D-glucopyranose)を、「L」は、D-キシロース残基にβ-1,2結合でさらにD-ガラクトース残基が連結された「X」(すなわち、β-D-galactopyranose-(1→2)-α-D-xylopyranose-(1→6)-β-D-glucopyranose)を示す。タマリンドシードガムにおける、側鎖の構成(例えば、XXXG、XXLG、XLXG、およびXLLGの比率および分布)ならびに分子量等のパラメータは、タマリンドシードガムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0024】
キサンタンガムは、Xanthomonas campestris等の微生物が産生する多糖であってよい。キサンタンガムは、β-1,4グルカン主鎖を有する多糖であってよい。キサンタンガムは、具体的には、β-1,4グルカンの主鎖にα-D-マンノース、β-D-グルクロン酸、およびβ-D-マンノースの3糖よりなる側鎖が1残基おきに連結された構造を有する多糖であってよい。側鎖末端のマンノース残基は、ピルビル化されていてもよい。主鎖に結合したマンノース残基は、アセチル化されていてもよい。キサンタンガムにおける、側鎖の構成(例えば、ピルビル化およびアセチル化の程度および分布)ならびに分子量等のパラメー
タは、キサンタンガムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0025】
メチルセルロースは、β-1,4グルカン主鎖を有する多糖であってよい。メチルセルロースは、具体的には、β-1,4グルカンの水酸基がメトキシ化された構造を有する多糖であってよい。メチルセルロースにおける、メトキシ化の程度および分布ならびに分子量等のパラメータは、メチルセルロースが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0026】
カードランは、Agrobacterium属細菌やAlcaligenes属細菌等の微生物が産生する多糖であってよい。カードランは、β-1,3グルカン主鎖を有する多糖であってよい。カードランにおける、分子量等のパラメータは、カードランが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0027】
ペクチンは、α-1,4ポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖であってよい。D-ガラクツロン酸残基には、アラビノースやガラクトース等の中性糖の側鎖が連結されていてもよい。D-ガラクツロン酸残基のカルボキシル基は、メチルエステル化されていてもよい。ペクチンの由来は、特に制限されない。ペクチンとしては、各種植物に由来するものが挙げられる。ペクチンにおける、側鎖の構成(例えば、側鎖の比率および分布)、メチルエステル化の程度および分布、ならびに分子量等のパラメータは、ペクチンが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。ペクチンとしては、ローメトキシルペクチン(LMペクチン)やハイメトキシルペクチン(HMペクチン)が挙げられる。ペクチンとしては、特に、LMペクチンが挙げられる。「ローメトキシルペクチン」とは、エステル化度が50%未満であるペクチンをいう。「ハイメトキシルペクチン」とは、エステル化度が50%以上であるペクチンをいう。ペクチンの「エステル化度」とは、ペクチンの主鎖を構成する全ガラクツロン酸残基に対するメチルエステル化されているものの比率をいう。
【0028】
カラギーナンは、D-ガラクトースがα-1,3結合およびβ-1,4結合で交互に連結された直鎖構造の主鎖を有する多糖であってよい。D-ガラクトース残基は、3,6-アンヒドロ化されていてもよい。D-ガラクトース残基は、水酸基が硫酸化されていてもよい。カラギーナンの由来は、特に制限されない。カラギーナンとしては、Eucheuma cottoniiやEucheuma spinosum等の海藻類に由来するものが挙げられる。カラギーナンにおける、3,6-アンヒドロ化の程度および分布、硫酸化の程度および分布、ならびに分子量等のパラメータは、カラギーナンが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。カラギーナンとしては、カッパカラギーナンやイオタカラギーナンが挙げられる。
【0029】
ローカストビーンガムは、カロブの種子から得られる多糖であってよい。ローカストビーンガムは、β-1,4マンナン主鎖を有する多糖であってよい。ローカストビーンガムは、具体的には、β-1,4ガクラトマンナン構造を有する多糖であってよい。「β-1,4ガクラトマンナン」とは、β-1,4マンナンの主鎖にガラクトースの側鎖が付加された構造を意味してよい。ローカストビーンガムにおける、分子量等のパラメータは、ローカストビーンガムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0030】
ジェランガムは、Sphingomonas elodea(旧名Pseudomonas elodea)等の微生物が産生する多糖であってよい。ジェランガムは、D-グルコース(D-Glc)、D-グルクロン酸(D-GlcA)、D-グルコース(D-Glc)、L-ラムノース(L-Rha)が順に連結したD-Glc(β1→4)D-GlcA(β1→4)D-Glc(β1→4)L-Rha(α1→3)を繰り返し単位とする繰り返し構造の主鎖を有する多糖であってよい。繰り返し単位の左端のD-グルコース残基の2位の水酸基は、グリセリル化していてもよい。繰り返し単位の左端のD-グルコース残基の6位の水酸基は、アセチル化していてもよい。ジェランガムにおける、グリセリル化の程度および分布、アセチル化の程度および分布、ならびに分子量等のパラメータは、ジェランガ
ムが耐熱性ゲルを形成できる限り、特に制限されない。
【0031】
増粘多糖類としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。増粘多糖類の製造方法は特に制限されず、例えば、公知の方法を利用できる。増粘多糖類は、例えば、化学合成、酵素反応、抽出、発酵、またはその組み合わせにより製造することができる。すなわち、増粘多糖類は、例えば、増粘多糖類を含有する農水畜産物から抽出することにより、製造することができる。また、増粘多糖類は、例えば、増粘多糖類生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。アルギン酸は、例えば、コンブやジャイアントケルプ等の褐藻類から抽出することにより、製造することができる。タマリンドシードガムは、例えば、タマリンドの種子から抽出することにより、製造することができる。キサンタンガムは、例えば、Xanthomonas campestris等のキサンタンガム生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。メチルセルロースは、例えば、セルロースの水酸基をメトキシ化することにより、製造することができる。カードランは、例えば、Agrobacterium属細菌やAlcaligenes属細菌等のカードラン生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。ペクチンは、例えば、柑橘類の果皮等の植物体から抽出することにより、製造することができる。カラギーナンは、例えば、Eucheuma cottoniiやEucheuma spinosum等の海藻類から抽出することにより、製造することができる。ローカストビーンガムは、例えば、カロブの種子から抽出することにより、製造することができる。ジェランガムは、例えば、Sphingomonas elodea(旧名Pseudomonas elodea)等のジェランガム生産能を有する微生物を培養し、培養物から回収することにより、製造することができる。市販のアルギン酸ナトリウムとしては、キミカアルギンI(IL-2、IL-6、I-1、I-3、I-5、I-8等;キミカ(株))が挙げられる。市販のタマリンドシードガムとしては、グリロイド3S(DSP五協フード&ケミカル(株))が挙げられる。増粘多糖類は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、増粘多糖類としては、精製品を用いてもよく、増粘多糖類を含有する素材を用いてもよい。増粘多糖類を含有する素材としては、増粘多糖類を含有する農水畜産物、増粘多糖類の生産能を有する微生物の培養物、それらの加工品が挙げられる。
【0032】
塩を形成し得る成分は、いずれも、フリー体として使用されてもよく、塩として使用されてもよく、それらの組み合わせとして使用されてもよい。すなわち、「有効成分」という用語は、特記しない限り、フリー体の有効成分、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。具体的には、例えば、「アルギン酸」という用語は、特記しない限り、フリー体のアルギン酸、もしくはその塩、またはそれらの組み合わせを意味してよい。アルギン酸は、特に、アルギン酸塩であってよい。また、これらの成分(例えば、フリー体や塩)は、いずれも、特記しない限り、非水和物および水和物を包含してよい。有効成分以外の任意の成分(例えば、本発明の組成物に含有され得る有効成分以外の成分や、本発明の方法で用いられ得る有効成分以外の成分)についても同様である。塩は、食品改質効果を損なわない限り、特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、例えば、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。例えば、アルギン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩が挙げられる。アルギン酸
の塩としては、特に、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の、水溶性のアルギン酸塩が挙げられる。アルギン酸の塩として、さらに特には、ナトリウム塩が挙げられる。塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
有効成分を含有する素材を用いる場合、有効成分の量(例えば、含有量(濃度)や使用量)は、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。ただし、増粘多糖類については、簡便のため、特記しない限り、当該増粘多糖類が不純物を含有し得る混合物(粗精製品等)の形態で一般的に製造および流通する場合には、当該混合物全体の量を当該増粘多糖類そのものの量とみなしてよい。すなわち、例えば、上記例示した市販の増粘多糖類は、特記しない限り、その純度に依らず、その重量を増粘多糖類そのものの重量とみなしてよい。
【0034】
「多糖加水分解酵素」とは、多糖を加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい。多糖加水分解酵素は、増粘多糖類の主鎖を加水分解できるものであれば、特に制限されない。「増粘多糖類の主鎖の加水分解」とは、増粘多糖類の主鎖を構成する糖残基間のグリコシド結合の加水分解を意味する。多糖加水分解酵素は、例えば、エンド型であってもよく、エキソ型であってもよい。多糖加水分解酵素としては、β-グルカナーゼ、アルギン酸リアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、カラギナーゼ、マンナナーゼ、ジェランリアーゼが挙げられる。多糖加水分解酵素としては、特に、β-グルカナーゼが挙げられる。
【0035】
「β-グルカナーゼ」とは、β-グルカンを加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい(EC 3.2.1.4、EC 3.2.1.91、EC 3.2.1.176、EC 3.2.1.150、EC 3.2.1.151、EC 3.2.1.155、EC 3.2.1.6、EC 3.2.1.39、EC 3.2.1.59等)。同活性を、「β-グルカナーゼ活性」ともいう。β-グルカナーゼは、具体的には、β-グルカンのD-グルコース残基間のグリコシド結合を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。β-グルカナーゼは、例えば、β-1,4キシログルカンのβ-1,4グルカン主鎖を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。β-1,4グルカンを基質とするβ-グルカナーゼを、「β-1,4-グルカナーゼ」ともいう。特に、β-1,4キシログルカンのβ-1,4グルカン主鎖を加水分解するβ-1,4-グルカナーゼを、「β-1,4キシログルカナーゼ」ともいう。β-1,3グルカンを基質とするβ-グルカナーゼを、「β-1,3-グルカナーゼ」ともいう。β-グルカナーゼとしては、エンド-β-グルカナーゼやエキソ-β-グルカナーゼが挙げられる。β-グルカナーゼとしては、特に、エキソ-β-グルカナーゼが挙げられる。「エンド-β-グルカナーゼ」とは、β-グルカンのグリコシド結合をランダムに加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい。「エキソ-β-グルカナーゼ」とは、β-グルカンのグリコシド結合を末端から順に切断する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい。エキソ-β-グルカナーゼは、β-グルカンの還元末端側から作用するものであってもよく、β-グルカンの非還元末端側から作用するものであってもよい。エキソ-β-グルカナーゼは、例えば、β-グルカンの末端から二糖単位(例えば、β-1,4グルカンの場合、セロビオース単位)または四糖単位(例えば、β-1,4グルカンの場合、セロテトラオース単位)を切り出してよい。切り出される二糖単位または四糖単位は、β-グルカンの修飾に応じて修飾されていてよい。すなわち、例えば、タマリンドガムからセロテトラオース単位(四糖単位)が切り出される場合、XXXG、XXLG、XLXG、および/またはXLLGが切り出されてよい。β-1,4グルカンを基質とするエンド-β-グルカナーゼを、「エンド-β-1,4-グルカナーゼ」ともいう。β-1,4グルカンを基質とするエキソ-β-グルカナーゼを、「エキソ-β-1,4-グルカナーゼ」ともいう。β-グルカナーゼは、例えば、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン等のβ-グルカン主鎖を有する増粘多糖類の加水分解に利用してよい。具体的には、例えば、β-1,4-
グルカナーゼは、タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース等のβ-1,4グルカン主鎖を有する増粘多糖類の加水分解に利用してよい。特に、β-1,4-キシログルカナーゼは、例えば、タマリンドシードガム等のβ-1,4キシログルカン構造を有する多糖の加水分解に利用してよい。また、具体的には、例えば、β-1,3-グルカナーゼは、カードラン等のβ-1,3グルカン主鎖を有する増粘多糖類の加水分解に利用してよい。
【0036】
「アルギン酸リアーゼ」とは、アルギン酸を加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい(EC 4.2.2.3、EC 4.2.2.11等)。同活性を、「アルギン酸リアーゼ活性」ともいう。アルギン酸リアーゼは、具体的には、β-D-マンヌロン酸(M)残基間、α-L-グルロン酸(G)残基間、および/またはM残基とG残基間の1,4グリコシド結合を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。アルギン酸リアーゼは、例えば、アルギン酸の加水分解に利用してよい。
【0037】
「ポリガラクツロナーゼ」とは、ポリガラクツロン酸を加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい(EC 3.2.1.15、EC 3.2.1.82、EC 4.2.2.2、EC 4.2.2.9等)。同活性を、「ポリガラクツロナーゼ活性」ともいう。ポリガラクツロナーゼは、具体的には、ポリガラクツロン酸のガラクツロン酸残基間のα-1,4グリコシド結合を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。D-ガラクツロン酸残基には、アラビノースやガラクトース等の中性糖の側鎖が連結されていてもよい。D-ガラクツロン酸残基のカルボキシル基は、メチルエステル化されていてもよい。ポリガラクツロナーゼは、例えば、ペクチン等のポリガラクツロン酸主鎖を有する多糖の加水分解に利用してよい。
【0038】
「カラギナーゼ」とは、カラギーナンを加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい(EC 3.2.1.83、EC 3.2.1.157等)。同活性を、「カラギナーゼ活性」ともいう。カラギナーゼは、具体的には、カラギーナンのD-ガラクトース残基間のα-1,3および/またはβ-1,4結合を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。D-ガラクトース残基は、3,6-アンヒドロ化されていてもよい。D-ガラクトース残基は、水酸基が硫酸化されていてもよい。カラギナーゼは、例えば、カラギーナンの加水分解に利用してよい。
【0039】
「マンナナーゼ」とは、マンナンを加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい(EC 3.2.1.78、EC 3.2.1.100等)。同活性を、「マンナナーゼ活性」ともいう。マンナナーゼは、具体的には、β-1,4マンナンのD-マンノース残基間のβ-1,4グリコシド結合を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。マンナナーゼは、例えば、β-1,4ガクラトマンナンのβ-1,4マンナン主鎖を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。特に、β-1,4ガクラトマンナンのβ-1,4マンナン主鎖を加水分解するマンナナーゼを、「ガクラトマンナナーゼ」ともいう。マンナナーゼは、例えば、ローカストビーンガム等のマンナン主鎖を有する多糖の加水分解に利用してよい。特に、ガクラトマンナナーゼは、例えば、ローカストビーンガム等のβ-1,4ガクラトマンナン構造を有する多糖の加水分解に利用してよい。
【0040】
「ジェランリアーゼ」とは、ジェランガムを加水分解する反応を触媒する活性を有する酵素を意味してよい(EC 4.2.2.25等)。同活性を、「ジェランリアーゼ活性」ともいう。ジェランリアーゼリアーゼは、具体的には、ジェランガムのD-Glc(β1→4)D-GlcA中のグリコシド結合を加水分解する反応を触媒する活性を有していてよい。ジェランリアーゼは、例えば、ジェランガムの加水分解に利用してよい。
【0041】
多糖加水分解酵素の由来は特に制限されない。多糖加水分解酵素は、微生物、動物、植物等いずれの由来のものであってもよい。また、多糖加水分解酵素としては、公知の多糖
加水分解酵素のホモログを利用してもよい。また、多糖加水分解酵素としては、公知の多糖加水分解酵素またはそれらのホモログの人為的改変体を利用してもよい。多糖加水分解酵素は、例えば、異種発現により取得したもの(すなわち、組み換え酵素)であってもよい。多糖加水分解酵素としては、例えば、市販品を利用してもよく、適宜製造して取得したものを利用してもよい。市販のβ-グルカナーゼとしては、エンド-β-グルカナーゼ製剤であるセルラーゼA「アマノ」3(天野エンザイム(株))や、エキソ-β-グルカナーゼ製剤であるセルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム(株))が挙げられる。多糖加水分解酵素は、多糖加水分解酵素以外の成分を含有していてもよく、含有していなくてもよい。多糖加水分解酵素は、例えば、他の酵素を含有していてもよい。多糖加水分解酵素としては、1種の多糖加水分解酵素を用いてもよく、2種またはそれ以上の多糖加水分解酵素を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
多糖加水分解酵素の活性は、以下の手順で測定できる。すなわち、多糖加水分解酵素の活性は、酵素を基質とインキュベートし、酵素依存的な基質の分解を測定することにより、測定できる。基質の分解は、例えば、還元末端の生成(すなわち、還元力の増加)または基質の分解物の生成を指標として測定できる。還元力の増加は、例えば、ジニトロサリチル酸(DNS)法またはソモギーネルソン法により測定できる。産物の生成は、例えば、HPLC、LC/MS、GC/MS、NMR等の、化合物の定量に用いられる公知の手法により測定できる。特記しない限り、37℃、所定のpHで1分間に1μmolの基質を分解する酵素量を1U(ユニット)と定義する。すなわち、還元力の増加を指標とする場合、特記しない限り、37℃、所定のpHで1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力の増加をもたらす酵素量を1U(ユニット)と定義する。また、産物の生成を指標とする場合、特記しない限り、37℃、所定のpHで1分間に1μmolの産物を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義する。所定のpHは、特記しない限り、選択した多糖加水分解酵素の至適pHとする。所定のpHは、例えば、pH4.5、pH5.0、pH5.5、pH6.0、pH6.5、またはpH7.0であってもよい。例えば、β-グルカナーゼの場合、所定のpHは、pH4.5またはpH5.0であってもよい。多糖加水分解酵素の活性は、特記しない限り、選択した増粘多糖類を基質として測定される活性として定義する。例えば、β-グルカナーゼ活性は、特記しない限り、選択したβ-グルカン主鎖を有する増粘多糖類(タマリンドシードガム、キサンタンガム、メチルセルロース、カードラン等)を基質として測定される活性として定義する。β-グルカナーゼ活性は、特に、還元力の増加を指標として測定されてよい。
【0043】
「多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物」とは、耐熱性増粘多糖類を多糖加水分解酵素で加水分解することにより得られる産物を意味する。多糖加水分解酵素および耐熱性増粘多糖類については、それぞれ、成分(A)における多糖加水分解酵素および耐熱性増粘多糖類についての記載を準用できる。
【0044】
成分(B)としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。成分(B)の製造方法は特に制限されず、例えば、公知の方法を利用できる。成分(B)は、例えば、耐熱性増粘多糖類を多糖加水分解酵素で加水分解することにより製造することができる。加水分解の条件は、成分(B)を有効成分として利用することにより食品改質効果が得られる限り、特に制限されない。加水分解は、例えば、増粘多糖類の主鎖のグリコシド結合が所望の程度に加水分解されるように実施してよい。加水分解されるグリコシド結合の比率は、例えば、増粘多糖類の主鎖のグリコシド結合の総数の0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、5%以上、または10%以上であってもよく、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、または0.5%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。成分(B)は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。すなわち、成分(B)としては、精製品を用いてもよく、成分(B)を含有する素材を用いてもよい。
【0045】
<2>本発明の組成物
本発明の組成物は、有効成分を含有する組成物である。
【0046】
すなわち、本発明の組成物は、下記成分(A)および/または(B)を含有する組成物である:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物。
【0047】
本発明の組成物を利用することにより、衣付き食品を改質することができる、よって、本発明の組成物は、衣付き食品の改質に利用されてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、衣付き食品の改質用の組成物であってよい。
【0048】
また、本発明の組成物を利用することにより、改質された衣付き食品を製造することができる。よって、本発明の組成物は、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)に利用されてよい。すなわち、本発明の組成物は、例えば、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)用の組成物であってよい。
【0049】
本発明の組成物は、後述する本発明の方法に記載の態様で衣付き食品の改質または製造に利用されてよい。
【0050】
本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分以外の成分を含有していてもよい。
【0051】
有効成分以外の成分は、食品改質効果を損なわない限り、特に制限されない。有効成分以外の成分は、例えば、衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。有効成分以外の成分としては、食品または医薬品に配合される成分が挙げられる。
【0052】
有効成分以外の成分として、具体的には、増粘多糖類またはその加水分解物のゲル化に有効な成分が挙げられる。そのような成分としては、カルシウムが挙げられる。カルシウムとしては、塩化カルシウム等のカルシウム塩が挙げられる。カルシウムは、例えば、アルギン酸等の増粘多糖類と併用されてよい。
【0053】
有効成分以外の成分として、具体的には、衣付き食品の製造に有効な成分も挙げられる。衣付き食品の製造に有効な成分としては、衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料に含有され得る成分が挙げられる。衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料としては、調味液、打粉、卵液、バッター液が挙げられる。衣付き食品の製造に有効な成分としては、衣材に含有され得る成分も挙げられる。そのような成分については後述する。
【0054】
有効成分以外の成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の組成物は、例えば、有効成分および任意でその他の成分を適宜混合することにより製造することができる。
【0056】
本発明の組成物は、例えば、適宜製剤化されていてよい。製剤化にあたっては、添加剤を適宜使用してよい。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、溶剤が挙げられる。添加剤は、例えば、本発明の組成物の形状等の諸条件に応じて、適宜選択できる。
【0057】
本発明の組成物の形状は、特に、制限されない。本発明の組成物は、例えば、粉末、フレーク、錠剤、ペースト、液体等の任意の形状であってよい。本発明の組成物は、特に、粉末であってよい。
【0058】
本発明の組成物における各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)の含有量は、食品改質効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物における各成分の含有量は、例えば、成分の種類、衣付き食品の改質または製造の際の各成分の使用量、衣付き食品の改質または製造の際の本発明の組成物の使用量等の諸条件に応じて、適宜設定できる。
【0059】
本発明の組成物における有効成分の総含有量は、0%(w/w)より多く、且つ、100%(w/w)以下である。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、1%(w/w)以上、2%(w/w)以上、5%(w/w)以上、10%(w/w)以上、15%(w/w)以上、20%(w/w)以上、30%(w/w)以上、40%(w/w)以上、50%(w/w)以上、60%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、または90%(w/w)以上であってもよく、100%(w/w)以下、95%(w/w)以下、90%(w/w)以下、80%(w/w)以下、70%(w/w)以下、60%(w/w)以下、50%(w/w)以下、40%(w/w)以下、30%(w/w)以下、20%(w/w)以下、15%(w/w)以下、10%(w/w)以下、または5%(w/w)以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
【0060】
本発明の組成物が成分(A)を含有する場合、本発明の組成物における多糖加水分解酵素の含有量は、増粘多糖類1gに対し、例えば、0.01U以上、0.02U以上、0.05U以上、0.1U以上、0.2U以上、0.5U以上、1U以上、2U以上、または5U以上であってもよく、100U以下、50U以下、20U以下、10U以下、5U以下、2U以下、1U以下、0.5U以下、または0.2U以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。本発明の組成物が成分(A)を含有する場合、本発明の組成物における多糖加水分解酵素の含有量は、増粘多糖類1gに対し、具体的には、例えば、0.1~100U、0.5~20U、または1~10Uであってもよく、0.01~10U、0.05~2U、または0.1~1Uであってもよく、0.01~100U、0.05~20U、または0.1~10Uであってもよい。多糖加水分解酵素がエンド-β-グルカナーゼを含む(すなわち、多糖加水分解酵素として少なくともエンド-β-グルカナーゼが選択される)場合、本発明の組成物におけるエンド-β-グルカナーゼの含有量は、増粘多糖類1gに対し、具体的には、例えば、0.1~100U、0.5~20U、または1~10Uであってもよい。また、多糖加水分解酵素がエキソ-β-グルカナーゼを含む(すなわち、多糖加水分解酵素として少なくともエキソ-β-グルカナーゼが選択される)場合、本発明の組成物におけるエキソ-β-グルカナーゼの含有量は、増粘多糖類1gに対し、具体的には、例えば、0.01~10U、0.05~2U、または0.1~1Uであってもよい。
【0061】
本発明の組成物における各有効成分の含有量は、例えば、上記例示した有効成分の総含有量および量比を満たすように設定することができる。また、本発明の組成物における各有効成分の含有量は、例えば、本発明の組成物を利用して衣付き食品を改質または製造する際に、各有効成分の使用量が所望の範囲となるように設定することができる。各有効成分の使用量は、例えば、本発明の方法の説明(後述)において例示する範囲であってよい。
【0062】
本発明の組成物に含有される各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)は、互いに混合されて本発明の組成物に含有されていてもよく、それぞれ別個に、あるい
は、任意の組み合わせで別個に、本発明の組成物に含有されていてもよい。例えば、本発明の組成物は、それぞれ別個にパッケージングされた各有効成分のセットとして提供されてもよい。このような場合、セットに含まれる成分は使用時に適宜併用することができる。
【0063】
<3>本発明の方法
本発明の方法は、有効成分を利用する工程を含む方法である。
【0064】
すなわち、本発明の方法は、下記成分(A)および/または(B)を利用する工程を含む方法である:
(A)耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素;
(B)多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物。
【0065】
本発明の方法により、具体的には有効成分を利用することにより、衣付き食品を改質することができる、すなわち、衣付き食品を改質する効果が得られる。よって、本発明の方法は、衣付き食品の改質のために実施されてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、衣付き食品を改質する方法であってよい。同方法を「本発明の改質方法」ともいう。
【0066】
また、本発明の方法により、具体的には有効成分を利用することにより、改質された衣付き食品を製造することができる。よって、本発明の方法は、衣付き食品の製造(具体的には、改質された衣付き食品の製造)のために実施されてよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってよい。同方法を「本発明の製造方法」ともいう。
【0067】
衣付き食品の改質または製造において、有効成分は、食材に付着させて利用できる。すなわち、有効成分の利用としては、食材に有効成分を付着させることが挙げられる。すなわち、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および食材に衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法であってよい。また、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および食材に衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。食材に有効成分を付着させる工程を、「有効成分付着工程」ともいう。有効成分付着工程は、具体的には、食材に有効成分を付着させて有効成分の付着した食材を得る工程であってよい。食材に衣材を付着させる工程を、「衣材付着工程」ともいう。衣材付着工程は、具体的には、食材に衣材を付着させて衣材の付着した食材を得る工程であってよい。有効成分は、特に、食材の表面に接触するように食材に付着させてよい。
【0068】
衣材付着工程は、例えば、有効成分付着工程の後に実施されてよい。すなわち、衣付き食品の改質または製造において、有効成分は、食材に衣材を付着させる前に食材に付着させて利用できる。すなわち、有効成分の利用としては、食材に衣材を付着させる前に食材に有効成分を付着させることが挙げられる。言い換えると、本発明の方法においては、食材に有効成分を付着させてから、さらに衣材を付着させることができる。すなわち、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および有効成分の付着した食材にさらに衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法であってよい。また、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分を付着させる工程、および有効成分の付着した食材にさらに衣材を付着させる工程を含む、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。すなわち、衣材付着工程は、具体的には、有効成分の付着した食材にさらに衣材を付着させて有効成分と衣材の付着した食材を得る工程であってよい。また、言い換えると、有効成分は、衣付き食品の衣材と食材の間に配置して利用されてよい。
【0069】
衣材付着工程は、有効成分付着工程と同時に実施されてもよい。すなわち、衣付き食品の改質または製造において、有効成分は、衣材と同時に食材に付着させて利用できる。すなわち、有効成分の利用としては、衣材と同時に有効成分を食材に付着させることが挙げられる。言い換えると、本発明の方法においては、例えば、食材に有効成分と衣材を同時に付着させてよい。すなわち、有効成分付着工程および衣材付着工程は、例えば、食材に有効成分と衣材を付着させて有効成分と衣材の付着した食材を得る工程として、同時に実施されてもよい。すなわち、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分と衣材を同時に付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法であってもよい。また、本発明の方法は、例えば、食材に有効成分と衣材を同時に付着させる工程を含む、衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。例えば、有効成分を含有する衣材を食材に付着させることにより、有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施することができる。すなわち、本発明の方法は、具体的には、例えば、有効成分を含有する衣材を食材に付着させる工程を含む、衣付き食品を改質する方法または衣付き食品を製造する(具体的には、改質された衣付き食品を製造する)方法であってもよい。
【0070】
有効成分は、食材に付着できる任意の態様で有効成分付着工程に利用してよい。有効成分は、例えば、本発明の組成物の形態で有効成分付着工程に利用してよい。すなわち、「食材に有効成分を付着させる」ことには、食材に本発明の組成物を付着させることも包含される。
【0071】
衣付き食品の改質または製造は、例えば、有効成分を利用すること以外は、通常の衣付き食品の製造と同様に実施してよい。すなわち、衣付き食品の改質または製造は、例えば、有効成分を利用すること以外は、通常の衣付き食品と同様の原料を用いて同様の製造条件で実施してよい。また、衣付き食品の原料や製造条件は、いずれも、適宜修正して衣付き食品の改質または製造に利用してもよい。本発明の方法は、衣付き食品の原料から衣付き食品を製造する工程を含んでいてよい。同工程を「衣付き食品の製造工程」ともいう。
【0072】
衣付き食品の種類は、特に制限されない。衣付き食品としては、クリスピーな衣を有する食品が挙げられる。衣付き食品として、具体的には、唐揚げ、カツ、フライ、てんぷら、コロッケが挙げられる。唐揚げ、カツ、フライ、てんぷら、コロッケとしては、それぞれ、後述する食材を用いた唐揚げ、カツ、フライ、てんぷら、コロッケが挙げられる。唐揚げとして、具体的には、鶏の唐揚げやタコの唐揚げ等の鳥肉やシーフードの唐揚げが挙げられる。カツとして、具体的には、豚カツ、牛カツ、チキンカツ、メンチカツ等の畜肉や鳥肉のカツが挙げられる。フライとして、具体的には、アジフライ、カキフライ、エビフライ等のシーフードのフライが挙げられる。てんぷらとして、具体的には、シーフードのてんぷらや野菜のてんぷらが挙げられる。コロッケとして、具体的には、ポテトコロッケやクリームコロッケが挙げられる。
【0073】
衣付き食品の原料としては、食材や衣材が挙げられる。「食材」とは、衣付き食品において内側に配置される素材を意味してよく、具体的には、衣付き食品において衣材より内側に配置される素材を意味してよい。「衣材」とは、衣付き食品において外側に配置される素材を意味してよく、具体的には、衣付き食品において食材より外側に配置される素材を意味してよい。
【0074】
まず、食材に有効成分を付着させることができる。
【0075】
食材の種類は、特に制限されない。食材は、例えば、衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。食材としては、タンパク質含有食材が挙げられる。「タンパク質含有食材」とは、タンパク質を含有する食材を意味する。タンパク質としては、動物性タンパク質や植物性タンパク質が挙げられる。動物性タンパク質含有食材としては、食肉やシ
ーフードが挙げられる。「食肉」とは、食用の肉を意味する。食肉としては、動物の肉や鳥の肉が挙げられる。動物としては、牛、豚、馬、羊、山羊、兎等の家畜;猪、鹿、熊等の野生動物;鯨、イルカ、トド等の海洋哺乳類が挙げられる。鳥としては、鶏、七面鳥、カモ、ガチョウ、ホロホロ鳥、ウズラ、ダチョウが挙げられる。シーフードとしては、アジ、サケ、タラ、フグ、キス、アナゴ、ホキ、メルルーサ等の魚、エビやカニ等の甲殻類、ホタテやカキ等の貝類、イカやタコ等の他の水産物が挙げられる。植物性タンパク質含有食材としては、ベジミートが挙げられる。「ベジミート」とは、植物性タンパク質またはそれを含有する原料を食肉様に加工した食材を意味してよい。植物性タンパク質としては、豆、麦、米、トウモロコシ、芋、種子、キノコのタンパク質が挙げられる。豆としては、大豆、エンドウ豆、ソラ豆、ヒヨコ豆、アーモンド、落花生、ルピン豆が挙げられる。麦としては、小麦、大麦、ライ麦が挙げられる。種子としては、ひまわりの種、かぼちゃの種、キヌア、チアシード、麻の実が挙げられる。植物性タンパク質としては、特に、大豆タンパク質が挙げられる。すなわち、植物性タンパク質含有食材としては、特に、大豆タンパク質含有ベジミート等の、大豆タンパク質含有食材が挙げられる。食材としては、野菜も挙げられる。野菜としては、キノコ類や根菜類が挙げられる。食材としては、特に、食肉等のタンパク質含有食材が挙げられる。食材としては、1種の食材を用いてもよく、2種またはそれ以上の食材を組み合わせて用いてもよい。これらの食材は、例えば、そのまま、あるいは適宜加工してから、本発明の方法に利用してよい。加工としては、切断やミンチ等の形状加工、加熱、調味が挙げられる。
【0076】
すなわち、衣付き食品としては、衣付きタンパク質含有食品が挙げられる。「衣付きタンパク質含有食品」とは、食材の少なくとも一部がタンパク質含有食材である衣付き食品を意味してよい。衣付きタンパク質含有食品としては、衣付き動物性タンパク質含有食品や衣付き植物性タンパク質含有食品が挙げられる。衣付きタンパク質含有食品として、具体的には、衣付き食肉食品、衣付きシーフード食品、衣付きベジミート食品が挙げられる。「衣付きタンパク質含有食品」とは、具体的には、食材の50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、または90%(w/w)以上がタンパク質含有食材である衣付き食品を意味してよい。衣付きタンパク質含有食品についての説明は、衣付きタンパク質含有食品の各具体例にも準用できる。すなわち、例えば、「衣付き動物性タンパク質含有食品」、「衣付き植物性タンパク質含有食品」、「衣付き食肉食品」、「衣付きシーフード食品」、および「衣付きベジミート食品」とは、それぞれ、食材の少なくとも一部(例えば、食材の50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、または90%(w/w)以上)が動物性タンパク質含有食材、植物性タンパク質含有食材、食肉、シーフード、およびベジミートである衣付き食品を意味してよい。
【0077】
また、衣付き食品としては、衣付き野菜食品も挙げられる。「衣付き野菜食品」とは、食材の少なくとも一部が野菜である衣付き食品を意味してよい。「衣付き野菜食品」とは、具体的には、食材の50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、または90%(w/w)以上が野菜である衣付き食品を意味してよい。衣付き野菜食品についての説明は、衣付き野菜食品の各具体例にも準用できる。
【0078】
有効成分付着工程を実施するタイミングは、衣材付着工程の実施前または実施時であれば、特に制限されない。すなわち、有効成分付着工程は、衣付き食品の製造工程において、衣材付着工程の実施前または実施時のいずれの段階で実施してもよい。
【0079】
以下、主に、衣材付着工程の前に有効成分付着工程を実施する場合を参照して食材への有効成分および衣材の付着について説明するが、当該説明は、有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施する場合にも準用できる。
【0080】
食材に有効成分を付着させる方法は、特に制限されない。食材に有効成分を付着させる
方法は、例えば、食材の種類や衣付き食品の種類等の諸条件に応じて、適宜選択できる。有効成分は、例えば、そのまま、あるいは適宜希釈等して、使用してよい。有効成分は、所望の形態で使用してよい。有効成分は、例えば、粉末等の固体の形態で使用してもよく、液体の形態で使用してもよい。有効成分は、特に、粉末の形態で使用してもよい。有効成分が粉末等の固体の形態で使用される場合、有効成分は、例えば、食材との混合や食材への振りかけ等の手段により、食材に付着させることができる。また、有効成分が液体の形態で使用される場合、有効成分は、例えば、食材の浸漬、食材への塗布、食材への滴下、食材への噴霧等の手段により、食材に付着させることができる。
【0081】
有効成分付着工程は、例えば、衣付き食品の製造工程を実施することにより併せて実施されてもよく、衣付き食品の製造工程とは別に実施されてもよい。衣付き食品の製造工程においては、例えば、食材の調味液への浸漬、食材への打粉の付着、食材への卵液の付着、食材へのバッター液の付着等の操作が実施されてよい。これらの操作は、例えば、食材の種類や衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。これらの操作は、単独で、あるいは適宜組み合わせて実施されてよい。よって、例えば、調味液、打粉、卵液、バッター液等の材料に有効成分を含有させて上記操作を実施することにより、食材に有効成分を付着させることができる。
【0082】
有効成分付着工程においては、さらに、有効成分以外の成分を食材に付着させてもよい。有効成分付着工程において利用され得る有効成分以外の成分については、本発明の組成物に含有され得る有効成分以外の成分についての記載を準用できる。
【0083】
有効成分以外の成分として、具体的には、耐熱性増粘多糖類またはその加水分解物のゲル化に有効な成分が挙げられる。そのような成分としては、カルシウムが挙げられる。カルシウムとしては、塩化カルシウム等のカルシウム塩が挙げられる。カルシウムは、例えば、アルギン酸等の耐熱性増粘多糖類と併用されてよい。
【0084】
有効成分以外の成分として、具体的には、衣付き食品の製造に有効な成分も挙げられる。衣付き食品の製造に有効な成分としては、衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料に含有され得る成分が挙げられる。衣材を食材に付着させる前に利用され得る材料としては、調味液、打粉、卵液、バッター液が挙げられる。調味液に含有され得る成分としては、調味料が挙げられる。打粉に含有され得る成分としては、穀粉、澱粉、タンパク質、調味料が挙げられる。卵液に含有され得る成分としては、卵や調味料が挙げられる。バッター液に含有され得る成分としては、穀粉、澱粉、油、卵、調味料が挙げられる。また、調味液、卵液、バッター液等の液体材料は、例えば、水、牛乳、溶き卵等の液体で希釈して調製されていてよい。このような液体は、有効成分や衣材の希釈にも利用してよい。これらの成分は、いずれも、上記材料に含有された状態で食材に付着させてもよく、上記材料とは別に食材に付着させてもよい。
【0085】
2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合、有効成分の付着に関する記載は、特記しない限り、各有効成分に独立に適用できる。2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合、それら有効成分は、全て同時に食材に付着させてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、食材に付着させてもよい。2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合、それら有効成分を食材に付着させる順序は特に制限されない。2種またはそれ以上の有効成分を利用する場合についての記載は、有効成分と有効成分以外の成分を併用する場合にも準用できる。なお、成分(A)の耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素は、多糖加水分解酵素が耐熱性増粘多糖類の主鎖に作用できるように使用される。すなわち、成分(A)の耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素は、例えば、互いに接触可能な位置関係で保持されるように食材に付着させてよい。成分(A)の耐熱性増粘多糖類および多糖加水分解酵素は、典型的には、予め混合してから食材に付着させてよい
。また、耐熱性増粘多糖類またはその加水分解物とそのゲル化に有効な成分を併用する場合、それらの成分は、例えば、互いに接触可能な位置関係で保持されるように食材に付着させてよい。耐熱性増粘多糖類またはその加水分解物とそのゲル化に有効な成分を併用する場合、それらの成分は、典型的には、予め混合してから食材に付着させてよい。
【0086】
有効成分の使用量は、食品改質効果が得られる限り、特に制限されない。「有効成分の使用量」とは、特記しない限り、食材に付着した有効成分の量を意味してよい。
【0087】
有効成分の使用量は、食材100重量部に対し、例えば、0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.03重量部以上、0.05重量部以上、0.07重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、0.9重量部以上、1重量部以上、1.1重量部以上、または1.2重量部以上、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、1.7重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、1.2重量部以下、1.1重量部以下、1重量部以下、0.9重量部以下、0.8重量部以下、0.7重量部以下、0.6重量部以下、または0.5重量部以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。有効成分の使用量は、食材100重量部に対し、具体的には、例えば、0.05~5重量部、0.1~3重量部、または0.5~2重量部であってもよい。
【0088】
成分(A)を利用する場合、成分(A)の使用量は、例えば、上記例示した有効成分の使用量の範囲であってよい。成分(A)を利用する場合、成分(A)の使用量は、例えば、成分(A)の増粘多糖類の使用量に換算して、例えば、上記例示した有効成分の使用量の範囲であってもよい。
【0089】
成分(B)を利用する場合、成分(B)の使用量は、例えば、上記例示した有効成分の使用量の範囲であってよい。
【0090】
成分(A)を利用する場合、多糖加水分解酵素の使用量は、増粘多糖類1gに対し、例えば、0.01U以上、0.02U以上、0.05U以上、0.1U以上、0.2U以上、0.5U以上、1U以上、2U以上、または5U以上であってもよく、100U以下、50U以下、20U以下、10U以下、5U以下、2U以下、1U以下、0.5U以下、または0.2U以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。成分(A)を利用する場合、多糖加水分解酵素の使用量は、増粘多糖類1gに対し、具体的には、例えば、0.1~100U、0.5~20U、または1~10Uであってもよく、0.01~10U、0.05~2U、または0.1~1Uであってもよく、0.01~100U、0.05~20U、または0.1~10Uであってもよい。多糖加水分解酵素がエンド-β-グルカナーゼを含む(すなわち、多糖加水分解酵素として少なくともエンド-β-グルカナーゼが選択される)場合、エンド-β-グルカナーゼの使用量は、増粘多糖類1gに対し、具体的には、例えば、0.1~100U、0.5~20U、または1~10Uであってもよい。また、多糖加水分解酵素がエキソ-β-グルカナーゼを含む(すなわち、多糖加水分解酵素として少なくともエキソ-β-グルカナーゼが選択される)場合、エキソ-β-グルカナーゼの使用量は、増粘多糖類1gに対し、具体的には、例えば、0.01~10U、0.05~2U、または0.1~1Uであってもよい。
【0091】
ついで、有効成分が付着した食材にさらに衣材を付着させることができる。
【0092】
衣材の種類は、特に制限されない。衣材は、例えば、衣付き食品の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。衣材としては、穀粉や澱粉が挙げられる。穀粉としては、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、そば粉、大豆粉、トウモロコシ粉が挙げられる。穀粉としては
、特に、小麦粉が挙げられる。小麦粉としては、強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉が挙げられる。澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、小豆澱粉、それらの加工澱粉が挙げられる。また、衣材としては、パン粉、揚げ玉、クルトン、おかきも挙げられる。また、衣材としては、バッター液も挙げられる。衣材としては、1種の素材を用いてもよく、2種またはそれ以上の素材を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
食材に衣材を付着させる方法は、特に制限されない。食材に衣材を付着させる方法は、例えば、食材の種類や衣付き食品の種類等の諸条件に応じて、適宜選択できる。衣材は、例えば、そのまま、あるいは適宜希釈等して、使用してよい。衣材は、所望の形態で使用してよい。衣材は、例えば、粉末等の固体の形態で使用してもよく、液体の形態で使用してもよい。衣材が粉末等の固体の形態で使用される場合、衣材は、例えば、食材との混合や食材への振りかけ等の手段により、食材に付着させることができる。また、衣材が液体の形態で使用される場合、衣材は、例えば、食材の浸漬、食材への塗布、食材への滴下、食材への噴霧等の手段により、食材に付着させることができる。
【0094】
食材への衣材の付着量は、特に制限されない。食材への衣材の付着量は、例えば、衣付き食品を製造する際の通常の付着量であってよい。
【0095】
なお、衣材とそれ以外の材料は、相対的に区別されればよい。典型的には、油調時に衣付き食品の最外層に配置される素材を衣材とみなせばよい。すなわち、例えば、食材へバッター液を付着させた後に追加の素材を付着させずに油調する場合、バッター液を衣材とみなせばよい。よって、その場合、有効成分付着工程はバッター液を食材に付着させる前に実施すればよい。また、例えば、食材へバッター液を付着させた後に追加の素材(パン粉等)を付着させてから油調する場合、追加の材料を衣材とみなせばよい。よって、その場合、有効成分付着工程は追加の材料を食材に付着させる前に実施すればよく、例えば、有効成分をバッター液に含有させて食材に付着させてもよい。
【0096】
有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施する場合、有効成分と衣材は、例えば、予め混合して用いてもよく、そうでなくてもよい。例えば、有効成分を含有する衣材を食材に付着させることにより、有効成分付着工程と衣材付着工程を同時に実施することができる。有効成分付着工程と衣材付着工程は、特に、バッター液等の液体の形態で使用される衣材を用いる場合に、同時に実施してよい。すなわち、有効成分を含有する衣材としては、有効成分を含有するバッター液等の、有効成分を含有する液体の形態で使用される衣材が挙げられる。
【0097】
このようにして有効成分および衣材を食材に付着させることにより、衣付き食品が得られる。このようにして有効成分および衣材を食材に付着させることにより、具体的には、油調前の衣付き食品が得られる。
【0098】
衣付き食品は、例えば、油調前の状態で提供されてもよく、油調済の状態で提供されてもよい。また、衣付き食品は、例えば、油調前または油調後の状態で、冷凍等の加工がされた状態で提供されてもよい。油調前の衣付き食品を「生の衣付き食品」ともいう。油調後の衣付き食品を「油調済み衣付き食品」ともいう。衣付き食品は、例えば、衣材が粉末等の固体である場合に、油調前の衣付き食品として提供されてよい。
【0099】
本発明の方法は、さらに、生の衣付き食品を油調する工程を含んでいてもよい。同工程を、「油調工程」ともいう。油調工程は、具体的には、生の衣付き食品を油調して油調済み衣付き食品を得る工程であってよい。「油調」とは、油の存在下での加熱処理を意味してよい。油調としては、油で揚げることや、衣材に油を付着させてから焼成することが挙
げられる。油調としては、特に、油で揚げることが挙げられる。
【0100】
成分(A)を利用する場合、衣付き食品の製造の際に、成分(A)の増粘多糖類の主鎖が加水分解されてよい。増粘多糖類の主鎖の加水分解は、衣付き食品の製造工程を実施することにより併せて実施されてもよく、衣付き食品の製造工程とは別に実施されてもよい。増粘多糖類の主鎖の加水分解は、通常、有効成分付着工程、衣材付着工程、油調工程等の本発明の方法に含まれる工程の実施により進行してよい。しかし、増粘多糖類の主鎖を加水分解するための反応時間を確保してもよい。例えば、増粘多糖類と多糖加水分解酵素を混合してから所定の時間が経過した後で油調工程を実施してもよい。また、増粘多糖類と多糖加水分解酵素を食材に付着させてから所定の時間が経過した後で油調工程を実施してもよい。所定の時間の長さは、例えば、1分以上、2分以上、3分以上、4分以上、5分以上、7分以上、10分以上、20分以上、または30分以上であってもよく、24時間以下、12時間以下、6時間以下、2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、または10分以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。所定の時間が経過する際の温度は、例えば、冷蔵温度であってもよく、室温であってもよい。
【0101】
<4>有効成分の使用
また、本発明は、上記例示した用途での有効成分の使用を開示する。すなわち、本発明は、例えば、衣付き食品の改質または製造のための有効成分の使用や、衣付き食品の改質または製造用の組成物の製造における有効成分の使用を開示する。
【0102】
また、本発明は、上記例示した用途に用いるための有効成分を開示する。すなわち、本発明は、例えば、衣付き食品の改質または製造に用いるための有効成分や、衣付き食品の改質または製造用の組成物の製造に用いるための有効成分を開示する。
【0103】
<5>本発明の衣付き食品
本発明の衣付き食品は、有効成分を備える衣付き食品である。本発明の衣付き食品は、具体的には、食材と該食材に付着した衣材と該食材に付着した有効成分を備える、衣付き食品であってよい。本発明の衣付き食品は、より具体的には、食材と該食材に付着した衣材とを備え、前記食材と前記衣材の間に有効成分を備える、衣付き食品であってよい。本発明の衣付き食品は、より具体的には、食材と該食材に付着した衣材とを備え、前記衣材が有効成分を含有する、衣付き食品であってもよい。本発明の衣付き食品は、さらに、他の成分を備えていてもよく、いなくてもよい。本発明の衣付き食品については、本発明の方法により製造される衣付き食品についての記載を準用できる。本発明の衣付き食品を構成する食材、衣材、有効成分、その他の成分等の素材については、本発明の方法で利用される素材についての記載を準用できる。
【0104】
本発明の衣付き食品の製造方法は、特に制限されない。本発明の衣付き食品は、例えば、本発明の方法により製造することができる。
【0105】
なお、本発明の衣付き食品が油調済み衣付き食品である場合、本発明の衣付き食品を構成する食材、衣材、有効成分、その他の成分等の素材は、いずれも加熱後の素材として理解されてよい。また、例えば、本発明の食品が成分(A)を備える場合、成分(A)の耐熱性増粘多糖類は加水分解されていてもよい。また、例えば、本発明の食品が成分(A)を備える場合、成分(A)の多糖分解酵素は失活していてもよい。すなわち、成分(A)は、成分(B)に変換されていてもよい。言い換えると、本発明の食品が少なくとも成分(B)を備えていてもよい。また、例えば、本発明の食品が成分(A)を備える場合、成分(A)の耐熱性増粘多糖類はゲル化していてもよい。すなわち、本発明の食品が備える「耐熱性増粘多糖類」とは、ゲル化した耐熱性増粘多糖類を包含してよい。例えば、本発
明の食品における「タマリンドシードガム」とは、ゲル化したタマリンドシードガムを包含してよい。また、例えば、本発明の食品が成分(B)を備える場合、成分(B)はゲル化していてもよい。すなわち、本発明の食品が備える「多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物」とは、ゲル化した、多糖加水分解酵素による耐熱性増粘多糖類の加水分解物を包含してよい。
【実施例】
【0106】
以下、非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0107】
実施例1:耐熱性増粘多糖類と多糖加水分解酵素の併用添加による衣付き食品の経時劣化抑制効果の評価(1)
本実施例では、鶏唐揚げについて、油調後の保管時の歩留の変化を指標として、種々の素材の添加による経時劣化抑制効果を評価した。
【0108】
図1に示す通りに、市販国産鶏モモ肉(ブロイラー鶏種)の皮、脂肪、およびスジを取り除いた後、包丁を用いて大腿骨周辺の筋肉を得た。筋肉を、筋線維方向を横辺とする横40mm×縦20mm×厚さ5mmの直方体に整形した。浸漬液として塩化ナトリウム「ナクルM」(ナイカイ塩業社製)の0.3M水溶液を対肉20%重量で整形した肉に加え、真空包装機「V-455G-1」(TOSEI社製)を用いて真空パックし、4℃で18時間冷蔵保管した。その後、真空パックから取り出してザルの中で1分間静置して液切りを行い、打粉として片栗粉「北海道産 片栗粉」(アイワイフーズ社製)を対肉10%重量で加え、袋の中で30秒間反転混合した後、5分間静置した。尚、表1に示す添加量となるように各素材を浸漬液または打粉中に配合した。各素材を打粉中に配合する場合、打粉の使用量は、片栗粉と各素材の総量として、対肉10%重量とした。薄力小麦粉「日清フラワー」(日清フーズ社製)と水を1:1.5の重量比で混合して調製したバッター液をボウル内に準備し、打粉をまぶした肉を一度バッター液に潜らせ、液が垂れ落ちない程度になったところでクッキングシートを敷いたフライ網に静置した。これを菜種油「FMスーパーフライオイル」(J-オイルミルズ社製)中でフライヤーを用いて175℃で5分間フライし、唐揚げ試料を得た。得られた唐揚げ試料をホッター什器「CHS-090CSE」(サンデン社製)に移し、庫内温度70℃で3時間保管した。その後、ホッター保管前後の重量比率[%](ホッター3時間保管後の重量 / フライ直後の重量)を算出し、これを経時後の保水量を示す「経時劣化抑制指標値(n=4, 平均値)」とした。本指標値は無添加区の値77.5%を基準とし、77.5%以下を効果なし又は逆効果として「-」、77.6%以上82.5%未満を経時劣化抑制効果ありとして「+」、82.5%以上85%未満を高い経時劣化抑制効果ありとして「++」、85%以上を顕著な経時劣化抑制効果ありとして「+++」とした。
【0109】
表2に示す通り、タマリンドシードガムとβ-グルカナーゼの併用試験区にて高い経時劣化抑制効果が認められた。一方で、セルロースとβ-グルカナーゼの併用試験区では経時劣化抑制効果が認められなかった。よって、経時劣化抑制効果はタマリンドシードガムが有する性質に起因しており、これはセルロースにはない耐熱性ゲルを形成する性質であると示唆された。また、タマリンドシードガムをその側鎖を除去するβ-ガラクトシダーゼと併用した試験区では高い経時劣化抑制効果が得られなかったことから、タマリンドシードガムの主鎖であるβ-グルカンを適切に分解することも経時劣化抑制効果の発揮に必要であると示唆された。また、タマリンドシードガムとβ-グルカナーゼの併用効果は、一般的な食肉加工剤(既存技術)の中で効果を示したアルカリ(炭酸ナトリウム)とトレハロースの併用効果よりも顕著に高かった。以上より、耐熱性ゲルを形成する多糖類とその主鎖に作用する多糖加水分解酵素の併用添加によって既存技術では得られない高い経時劣化抑制効果が得られることが明らかとなった。
【0110】
【0111】
【0112】
実施例2:耐熱性増粘多糖類と多糖加水分解酵素の併用添加による衣付き食品の経時劣化抑制効果の評価(2)
本実施例では、鶏唐揚げについて、油調後の保管時の官能品質の変化を指標として、耐熱性増粘多糖類と多糖加水分解酵素の併用添加による経時劣化抑制効果を評価した。
【0113】
市販国産鶏肉の大腿骨周辺部位のモモ肉を包丁を用いて一口大サイズ(30±2g)にカットした。その後、実施例1と同様の方法にて、食塩水中の冷蔵浸漬、液切り、表3の各試験区に対応する素材(商品名および配合量は実施例1と同一)を配合した打粉まぶし、バッター液浸漬、フライ、ホッター什器保管を実施し、唐揚げ試料を得た。得られた唐揚げ
試料は、官能評価に供した。官能評価は、衣の官能品質、肉の官能品質、総合的な官能品質について、8名の専門パネルにて実施した。衣の官能品質は歯切れ、衣の硬化、衣剥がれの3項目について評価した。歯切れとは一噛み目の歯通りの良さを、衣の硬化とは硬く噛み切りにくい物性の緩和を、衣剥がれとは衣が肉表面から乖離して剥がれている度合いの低減を、それぞれ意味する。肉の官能品質はねちゃつき、ジューシー感の2項目について評価した。ねちゃつきとは肉表面の粘性が抑えられていることを、ジューシー感とは咀嚼する度に肉汁がジュワッと滲みだす多汁感を、それぞれ意味する。総合的な官能品質とは、上述した衣および肉の官能評価5項目について、全てに効果がある状態を意味する。官能評価結果は、無添加区(ホッター保管時間4時間品)をコントロールとし、効果なし又は逆効果を「-」、効果ありを「+」、高い効果ありを「++」とした。
【0114】
結果を表3に示す。無添加区やタマリンドシードガム添加区では、ホッター保管後の総合的な官能品質が低いことが確認された。一方で、タマリンドシードガムとエキソ-β-グルカナーゼの併用添加区では、ホッター保管後の総合的な官能品質が高いことが確認された。本結果より、耐熱性ゲルを形成する多糖類とその主鎖に作用する多糖加水分解酵素の併用添加によって、既存技術では得られない高い経時劣化抑制効果を得ることができると示唆された。特に、耐熱性ゲルを形成する多糖類とその主鎖に作用する多糖加水分解酵素の併用添加によって、既存技術では成し得なかった経時後の衣剥がれや肉表面のねちゃつきが改善され、さらに衣の硬化の抑制等、その他経時後の官能品質の低下も抑制できると示唆された。以上より、耐熱性ゲルを形成する多糖類とその主鎖に作用する多糖加水分解酵素の併用添加により衣付き食品の経時劣化を顕著に抑制できることが再度確認された。
【0115】