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  • 特許-繊維体の製造方法および繊維体製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】繊維体の製造方法および繊維体製造装置
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/587 20120101AFI20240806BHJP
   D04H 1/26 20120101ALI20240806BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
D04H1/587
D04H1/26
B27N3/04 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020062283
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161552
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】中井 葉子
(72)【発明者】
【氏名】田中 英樹
(72)【発明者】
【氏名】横川 忍
(72)【発明者】
【氏名】関 俊一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 尚孝
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042973(JP,A)
【文献】特開2019-151427(JP,A)
【文献】特開2016-186146(JP,A)
【文献】特開2000-071215(JP,A)
【文献】特開2004-251304(JP,A)
【文献】特開2019-137962(JP,A)
【文献】特開2021-085112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/587
D04H 1/26
B27N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む解繊物と、吸水により結着性を発現する結着材と、を含み、含水率が10重
量%以上、30重量%以下である混合物を分散する分散工程と、
前記分散工程で分散された前記混合物を堆積する堆積工程と、
前記堆積工程で堆積した堆積物中の前記結着材に水分を水蒸気またはミストで付与して
結着性を発現させる加湿工程と、
前記加湿工程で加湿された前記堆積物を成形して繊維体を得る成形工程と、を含むこと
を特徴とする繊維体の製造方法。
【請求項2】
前記加湿工程で加湿された前記堆積物の含水率は、15重量%以上、50重量%以下で
ある請求項1に記載の繊維体の製造方法。
【請求項3】
前記分散工程の前に、前記混合物の含水率を10重量%以上、30重量%以下になるよ
うに加湿を行う予備加湿工程を含む請求項1または2に記載の繊維体の製造方法。
【請求項4】
前記予備加湿工程では、水蒸気またはミストを供給することにより加湿が行われる請求
項3に記載の繊維体の製造方法。
【請求項5】
前記分散工程では、前記繊維の含水率および前記結着材の含水率が、いずれも50重量
%以下である請求項1ないし4いずれか1項に記載の繊維体の製造方法。
【請求項6】
前記解繊物は、前記繊維を含む原料を粗砕し、解繊して得られたものであり、
前記予備加湿工程は、前記原料が解繊されるまでに行われる請求項3に記載の繊維体の
製造方法。
【請求項7】
前記原料は、前記結着材を含み、
前記原料における前記結着材の含有率は、1重量%以上、50重量%以下である請求項
に記載の繊維体の製造方法。
【請求項8】
前記成形工程によって成形された前記繊維体中の前記結着材の含有率は、1重量%以上
、25重量%以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の繊維体の製造方法。
【請求項9】
繊維を含む解繊物と、吸水により結着性を発現する結着材と、を含み、含水率が10重
量%以上、30重量%以下である混合物を分散する分散部と、
前記分散部で分散された前記混合物を堆積する堆積部と、
前記堆積部で堆積した堆積物中の前記結着材に水分を付与して結着性を発現させる加湿
部と、
前記加湿部で加湿された堆積物を成形して繊維体を得る成形部と、を備えることを特徴
とする繊維体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維体の製造方法および繊維体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、例えば特許文献1に示すような、水を極力利用しない乾式によるシート製造装置が提案されている。特許文献1に記載されているシート製造装置は、原料を解繊する解繊部と、解繊部で生成された解繊物に結着材を混合する混合部と、混合部で生成された混合物を堆積する堆積部と、堆積部で生成された堆積物に水分を付与する水分付与部と、水分が付与された堆積物を加熱、加圧する成形部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-144826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているシート製造装置では、結着材として、例えば澱粉等の吸水により結着性が発現するものを用いた場合、以下のような問題が生じる。従来の水蒸気またはミストによる水分付与部では、水分量が不十分である。そこで、堆積物の搬送速度を落として、水分を十分に供給することが考えられるが、生産性が低下してしまう。また、搬送速度を落とさずに、堆積物に水を噴射するなどの方法によって単位時間あたりの水分の付与量を高くすることが考えられる。しかしながら、単位時間あたりの水分の付与量を高くすると、堆積物の場所によって吸水量にムラが生じるおそれがある。その結果、結着性にムラが生じ、シート品質の低下を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の繊維体の製造方法は、繊維を含む解繊物と、吸水により結着性を発現する結着材と、を含み、含水率が10重量%以上、30重量%以下である混合物を分散する分散工程と、
前記分散工程で分散された前記混合物を堆積する堆積工程と、
前記堆積工程で堆積した堆積物中の前記結着材に水分を水蒸気またはミストで付与して結着性を発現させる加湿工程と、
前記加湿工程で加湿された前記堆積物を成形して繊維体を得る成形工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の繊維体製造装置は、繊維を含む解繊物と、吸水により結着性を発現する結着材と、を含み、含水率が10重量%以上、30重量%以下である混合物を分散する分散部と、
前記分散部で分散された前記混合物を堆積する堆積部と、
前記堆積部で堆積した堆積物中の前記結着材に水分を付与して結着性を発現させる加湿部と、
前記加湿部で加湿された堆積物を成形して繊維体を得る成形部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の繊維体の製造方法を実行する繊維体製造装置の第1実施形態を示す概略側面図である。
図2図2は、図1に示す繊維体製造装置が備える制御部が実行する制御動作の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の繊維体の製造方法を実行する繊維体製造装置の第2実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の繊維体の製造方法および繊維体製造装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本発明の繊維体の製造方法を実行する繊維体製造装置の第1実施形態を示す概略側面図である。図2は、図1に示す繊維体製造装置が備える制御部が実行する制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0010】
なお、以下では、説明の便宜上、図1に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むx-y平面が水平となっており、z軸が鉛直となっている。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。また、図1の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。
【0011】
図1に示す繊維体製造装置100は、原料M1を粗砕、解繊し、結着材Pを混合して堆積させ、この堆積物を成形することで繊維体を得る装置である。また、繊維体製造装置100は、加湿装置30を備え、加湿装置30により各部を加湿しつつ、上述した処理を行う。
【0012】
また、繊維体製造装置100により製造される繊維体は、繊維を含んでいれば、例えば、再生紙のようなシート状をなしていてもよく、ブロック状をなしていてもよい。また、繊維体の密度も特に限定されず、シートのような繊維の密度が比較的高い繊維体であってもよく、スポンジ体のような繊維の密度が比較的低い繊維体であってもよく、これらの特性が混在する繊維体であってもよい。以下では、製造される繊維体は、再生紙であるシートSとして説明する。
【0013】
図1に示す繊維体製造装置100は、原料供給部11と、粗砕部12と、定量供給部10と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、分散部18と、堆積部19と、成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、これらの作動を制御する制御部28と、加湿装置30と、を備えている。原料供給部11~ストック部22は、各々が、繊維を含む材料を処理する処理部である。
【0014】
また、繊維体製造装置100では、図2に示すように、原料供給工程と、粗砕工程と、定量供給工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、分散工程と、堆積工程と、加湿工程と、成形工程と、切断工程と、がこの順に実行される。また、原料供給工程~分散工程が行われるまでの間に予備加湿工程が行われる。このことに関しては、後に詳述する。
【0015】
以下、各部の構成について説明する。
原料供給部11は、粗砕部12に原料M1を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、繊維を含むシート状材料が挙げられる。繊維としては、例えば、植物由来の繊維、動物由来の繊維、樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維や、これらの混合物等が挙げられる。この中でも、省エネルギーの観点から、植物由来の繊維を主とするのが好ましい。
【0016】
植物由来の繊維としては、例えば、セルロース繊維、綿、リンター、カボック、亜麻、大麻、ラミー、絹等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、この中でも、セルロース繊維を主とするのが好ましい。セルロース繊維は入手が容易で、シートSへの成形性に優れ、十分な強度が得られる。
【0017】
セルロース繊維としては、木質系パルプに由来するものが好ましい。木質系パルプとしては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、コットンリンター等のバージンパルプ、クラフトパルプ、晒ケミサーモメカニカルパルプ、合成パルプ、古紙や再生紙に由来するパルプ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
ここで、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロース、すなわち狭義のセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、狭義のセルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものが該当する。
【0019】
動物由来の繊維としては、羊毛等が挙げられる。
樹脂繊維としては、ポリアミド、テトロン、レーヨン、キュプラ、アセテート、ビニロン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、アラミド等が挙げられる。
【0020】
繊維の平均繊維長さは、特に限定されないが、0.10mm以上、50mm以下であるのが好ましく、0.20mm以上、5mm以下であるのがより好ましく、0.3mm以上、3mm以下であるのがさらに好ましい。これにより、結着材Pでの結着が良好になされ、成形性に優れ、十分な強度が得られる。
【0021】
繊維の平均繊維幅は、特に限定されないが、0.005mm以上、0.5mm以下であるのが好ましく、0.01mm以上、0.05mm以下であるのがより好ましい。これにより、後述する結着材Pでの結着が良好になされ、成形性に優れ、十分な強度が得られる。
【0022】
また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して再生、製造されたリサイクルペーパーや、合成紙のユポ紙(登録商標)であってもよいし、リサイクルペーパーでなくてもよい。
【0023】
粗砕部12は、原料供給部11から供給された原料M1を大気中等の気中で粗砕する粗砕工程を行なう部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、シュート122とを有している。
【0024】
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上、70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0025】
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
【0026】
シュート122は、管241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0027】
また、管241の途中には、定量供給部10が設置されている。定量供給部10は、予め定められた量を、間欠的に解繊部13に対して供給する定量供給工程を行うものである。定量供給部10は、管241内の粗砕片M2を一時的に貯留する貯留部と、貯留部内の粗砕片M2を定められた量ずつ、解繊部13に排出する排出部と、を有する。なお、排出部は、粗砕片M2の量を測量して、定量供給する構成であってもよく、所定時間ごとに排出状態、非排出状態を切り替える構成であってもよい。
【0028】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことを言う。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0029】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転する回転刃と、回転刃の外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、回転刃とライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0030】
また、解繊部13は、回転刃の回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0031】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0032】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、0.10mm以上、50mm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0033】
選別部14は、ドラム141と、ドラム141を収納するハウジング142とを有する。
【0034】
ドラム141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
第1選別物M4-1は、ドラム141から落下する。
【0035】
一方、第2選別物M4-2は、ドラム141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム141と反対側、すなわち、下流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0036】
また、ドラム141からの第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0037】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0038】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0039】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0040】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0041】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0042】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0043】
メッシュベルト151の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング162内を下降する。
【0044】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と結着材Pとを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、結着材供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
【0045】
管172は、細分部16のハウジング162と、分散部18のハウジング182とを接続しており、細分体M6と結着材Pとの混合物M7が通過する流路である。
【0046】
管172の途中には、結着材供給部171が接続されている。結着材供給部171は、結着材Pが収容されたハウジング170と、ハウジング170内に設けられたスクリューフィーダー174とを有している。スクリューフィーダー174の回転により、ハウジング170内の結着材Pがハウジング170から押し出されて管172内に供給される。管172内に供給された結着材Pは、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0047】
ここで、結着材供給部171から供給される結着材Pは、吸水により結着性を発現し、その結着力により、繊維同士を結着させる機能を有する。これにより、シートSの強度を高めることができる。
【0048】
結着材Pとしては、吸水により結着性を発現するものであれば特に限定されず、例えば、セリシン、澱粉、グリコーゲン、デキストリン、アガロース、ペクチン、寒天等の天然由来のものや、例えばPVA等の水溶性ポリマー、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エマルジョン等の合成系等を用いることができる。
【0049】
特に、結着材Pは、少ない吸水量でも十分な結着性を発現させることができ、入手が容易な澱粉を含むのが好ましい。これにより、生分解性により優れ、シートSのリサイクルに有利である。
【0050】
結着材Pの供給量は、特に限定されないが、シートSにおける結着材Pの含有率が1重量%以上、25重量%以下になる程度の供給量であるのが好ましく、2重量%以上、20重量%以下になる程度の供給量であるのがより好ましく、3重量%以上、15重量%以下になる程度の供給量であるのがさらに好ましい。これにより、シート品質、特に、シートSの強度をより効果的に高めることができる。
【0051】
すなわち、後述する成形工程によって成形された繊維体であるシートS中の結着材Pの含有率は、1重量%以上、25重量%以下であるのが好ましく、2重量%以上、20重量%以下であるのがより好ましく、3重量%以上、15重量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、シート品質、特に、シートSの強度をより効果的に高めることができる。
【0052】
また、結着材供給部171は、結着材Pに加え、その他の添加剤を供給してもよい。この添加剤としては、特に限定されず、例えば、繊維を着色するための着色剤、繊維の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤、シートSの紙力を増強するための、結着材以外の紙力増強剤等が挙げられ、これらのうちの一種または複数種を組み合わせて用いることができる。
【0053】
また、管172の途中には、結着材供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173が有する羽根等の回転部の作用により、細分体M6と結着材Pとの混合が促進される。また、ブロアー173は、分散部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と結着材Pとを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と結着材Pとが均一に分散した状態で、分散部18に搬送される。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0054】
なお、図1に示すように、ブロアー173は、制御部28と電気的に接続されており、その作動が制御される。また、ブロアー173の送風量を調整することにより、ドラム181内に送り込む空気の量を調整することができる。
【0055】
なお、図示はしないが、管172は、ドラム181側の端部が2股に分岐しており、分岐した端部は、ドラム181の端面に形成された図示しない導入口にそれぞれ接続されている。
【0056】
図1に示す分散部18は、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐして放出、分散する分散工程を行なう部分である。分散部18は、解繊物である混合物M7を導入および放出するドラム181と、ドラム181を収納するハウジング182と、ドラム181を回転駆動する駆動源183と、を有する。
【0057】
ドラム181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。ドラム181が回転することにより、混合物M7のうち、網の目開きよりも小さい繊維等が、ドラム181を通過することができる。その際、混合物M7がほぐされて空気とともに放出される。すなわち、ドラム181が、繊維を含む材料を放出する放出部として機能する。
【0058】
駆動源183は、図示はしないが、モーターと、減速機と、ベルトと、を有する。モーターは、モータードライバーを介して制御部28と電気的に接続されている。また、モーターから出力された回転力は、減速機によって減速される。ベルトは、例えば、無端ベルトで構成されており、減速機の出力軸およびドラムの外周に掛け回されている。これにより、減速機の出力軸の回転力がベルトを介してドラム181に伝達される。
【0059】
また、ドラム181で放出された混合物M7は、気中に分散しつつ落下して、ドラム181の下方に位置する堆積部19に向かう。堆積部19は、混合物M7を堆積させて堆積物である第2ウェブM8を形成する堆積工程を行なう部分である。堆積部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0060】
メッシュベルト191は、メッシュ部材であり、図示の構成では、無端ベルトで構成される。また、メッシュベルト191には、分散部18が分散、放出した混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0061】
なお、図示の構成では、メッシュ部材の一例としてメッシュベルト191を用いる構成であるが、本発明ではこれに限定されず、例えば、平板状をなすものであってもよい。
【0062】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0063】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0064】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0065】
また、堆積部19では、第2ウェブM8に対して加湿装置30が加湿を行う。これにより、第2ウェブM8中の結着材Pが結着性を発現し、繊維同士を結着させることができる。このことに関しては、後に詳述する。
【0066】
堆積部19の下流側には、成形部20が配置されている。成形部20は、第2ウェブM8からシートSを形成する成形工程を行なう部分である。この成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0067】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0068】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内の水分が蒸発して、第2ウェブM8の含水率が低下する。この含水率の低下に伴い、結着材Pの結着性が失活し、繊維同士が結着した状態で定着させることができる。これにより、十分な強度を有するシートSが得られる。
【0069】
そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0070】
成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行なう部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
【0071】
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0072】
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの両側端部、すなわち、+y軸方向および-y軸方向の端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。
【0073】
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の形状、大きさのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0074】
なお、成形部20としては、上記のようにシートSに成形する構成に限定されず、例えば、ブロック状、球状等の繊維体に成形する構成であってもよい。
【0075】
このような繊維体製造装置100が備える各部は、制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。
【0076】
制御部28は、CPU(Central Processing Unit)281と、記憶部282とを有している。CPU281は、記憶部282に記憶された各種プログラムを実行することができ、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。
【0077】
記憶部282には、例えば、シートSを製造するプログラム等の各種プログラムや、各種検量線、テーブル等が記憶されている。
【0078】
また、この制御部28は、繊維体製造装置100に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、繊維体製造装置100とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、例えばインターネット等のようなネットワークを介して繊維体製造装置100と接続されている場合等がある。
【0079】
また、CPU281と、記憶部282とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、CPU281が繊維体製造装置100に内蔵され、記憶部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよいし、記憶部282が繊維体製造装置100に内蔵され、CPU281が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
【0080】
次に、加湿装置30について説明する。
図3に示すように、加湿装置30は、繊維体製造装置100の各部を加湿することにより、各部における材料に対して水分を付与するものである。複数の加湿器である加湿器3A、加湿器3B、加湿器3C、加湿器3D、加湿器3E、加湿器3Fおよび加湿器3Gを有する。これら加湿器3A~加湿器3Gは、制御部28によってそれぞれ独立して作動が制御される。なお、制御部28に制御される構成に限定されず、加湿器3A~加湿器3Gを制御する専用の制御部を有していてもよい。
【0081】
加湿器3Aは、原料供給部11、具体的には、原料M1をストックするストック部内に設置されている。加湿器3Aは、原料M1に対して加湿を行うものである。
【0082】
加湿器3Bは、粗砕部12、具体的には、シュート122の上方に設置されている。加湿器3Bは、粗砕片M2に対して加湿を行うものである。
【0083】
加湿器3Cは、定量供給部10内に設置されており、粗砕片M2に対して加湿を行うものである。
【0084】
加湿器3Dは、選別部14、具体的には、ドラム141に接続されている。加湿器3Dは、解繊物M3に対して加湿を行うものである。
【0085】
加湿器3Eは、第1ウェブ形成部15、具体的には、メッシュベルト151の上方に設置されている。加湿器3Eは、第1ウェブM5に対して加湿を行うものである。
【0086】
加湿器3Fは、分散部18、具体的には、ドラム181に接続されている。加湿器3Fは、混合物M7に対して加湿を行うものである。
【0087】
加湿器3Gは、堆積部19、具体的には、メッシュベルト191の上方に設置されている。加湿器3Gは、第2ウェブM8に対して加湿を行うものである。
【0088】
加湿器3Gは、水蒸気またはミストを放出することにより加湿を行うものである。すなわち加湿器3Gは、気化式またはミスト式の加湿器である。また、加湿器3A~3Fは、特に限定されるものでないが、気化式またはミスト式の加湿器であることが好ましい。
【0089】
気化式の加湿器としては、例えば、水を貯留する容器と、容器内に設けられたフィルターと、ファンと、を有する構成のものが挙げられる。フィルターは、容器内に設置され、容器内の水を吸収し含有することができるもの、例えば、織布、不織布、スポンジ等の多孔質体で構成される。このフィルターが容器内の水を吸い込み、ファンが発生させる気流により、フィルター内の水の気化が促進される。そして、この加湿空気を放出することにより、加湿が行われる。
【0090】
気化式の加湿器としては、例えば、水を貯留する容器と、超音波素子と、を有する構成のものが挙げられる。超音波振動素子は、超音波振動を発生させ、容器内に水柱を形成する。この水柱の形成とともに周囲にミストが発生し、このミストを放出することにより、加湿が行われる。
【0091】
なお、加湿器3A~加湿器3Fのうち、少なくとも1つが設置されていれば、他の加湿器を省略してもよい。
【0092】
このような加湿装置30によって、各部を通過する材料を加湿することにより、以下の効果Aおよび効果Bを得ることができる。
【0093】
効果Aは、結着材Pの結着性を発現させて、シートSの強度を高めるという効果である。
【0094】
効果Bは、処理中または搬送中の材料が帯電によりダマになったり、装置内の壁部等に張り付いたりするのを防止または抑制して定量性を確保し、シート品質を高めるという効果である。
【0095】
使用する結着材Pの材料にもよるが、効果Aを得るためには、第2ウェブM8の含水率を15重量%以上、40重量%以下に高めるのが好ましい。仮に、加湿器3Gのみで、結着材Pの結着性が発現するまで第2ウェブM8の含水率を高めるには、加湿器3Gでの吸水量を高めるのが好ましい。しかしながら、第2ウェブM8に対する単位時間あたりの吸水量が多すぎると、第2ウェブM8において、吸水量のムラが生じやすく、この場合、結着性にムラが生じてシート品質の低下を招くおそれがある。一方、加湿器3Gによる単位時間当たりの吸水量を少なくして、メッシュベルト191の回転速度、すなわち、第2ウェブM8の搬送速度を落とすことが考えられる。しかしながら、この場合、シートSの生産性が低下してしまう。このように、結着材Pを用いた場合、シート品質を高めることと、シートSの生産性を高めることとを両立するのは難しい。
【0096】
そこで、繊維体製造装置100では、分散部18から放出される混合物M7の含水率が10重量%以上、20重量%以下となるよう、加湿器3A~加湿器3Fで予備的に加湿を行う。なお、この段階では、結着材Pは、十分な結着性を発現しておらず、ダマが形成されるのを抑制しつつ、搬送、放出を行うことができる。そして、予備的に加湿が行われた状態の混合物M7が堆積した第2ウェブM8に対して、結着材Pの結着性が発現するように加湿器3Gにて加湿を行う。このような構成とすることにより、加湿器3Gによる単位時間当たりの吸水量を比較的少なくしつつ、かつ、メッシュベルト191の回転量を十分に高めた状態でシートSを製造することができる。よって、第2ウェブM8中の結着材Pにムラなく水分を供給しつつ、迅速に第2ウェブM8を搬送することができる。その結果、シートSの品質を高めつつ、生産性を高めることができる。
【0097】
なお、混合物M7の含水率が低すぎると、加湿器3Gによる単位時間当たりの吸水量を高くする必要があり、第2ウェブM8において水分の供給量にムラが生じる。その結果、シート品質が低下する。一方、混合物M7の含水率が高すぎると、結着材Pの種類によっては、分散部18までの間の経路において、結着材Pが結着性を発現してしまうことがあり、繊維にダマが生じる可能性がある。また、セルロース繊維自体の分散性も低下する。その結果、分散部18からの分散を良好に行うことができなかったりして、第2ウェブM8の厚さに部分的にムラが生じて、引張強さ等のシート品質が低下する。
【0098】
また、混合物M7の含水率は、例えば、分散後の混合物を採取し、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製「MS70/MX50/MF50/ML50」)等を用いて測定することができる。
【0099】
このような加湿器3A~加湿器3Fは、予備的に加湿を行う予備加湿工程を行うものであり、加湿器3Gは、結着材Pの結着性を発現させる加湿工程を行うものである。すなわち、図示の構成では、原料供給工程、粗砕工程、定量供給工程、選別工程、第1ウェブ形成工程、分散工程において、時間的に重複して予備加湿工程が行われ、第2ウェブ形成工程の後に加湿工程が行われる。
【0100】
このように、本発明の繊維体の製造方法は、分散工程の前に、混合物M7の含水率を10重量%以上、30重量%以下になるように加湿を行う予備加湿工程を含む。これにより、上述したように、加湿器3Gによる単位時間当たりの吸水量を比較的少なくしつつ、かつ、メッシュベルト191の回転量を十分に高めた状態でシートSを製造することができる。
【0101】
なお、分散された混合物M7の含水率は、10重量%以上、30重量%以下であればよく、加湿器3A~加湿器3Fの各々における水分は特に限定されない。
【0102】
また、予備加湿工程では、湿度が60%以上、95%以下の加湿空気を供給することにより加湿が行われるのが好ましく、湿度が65%以上、90%以下の加湿空気を供給することにより加湿が行われるのがより好ましい。また、該加湿空気は、水蒸気またはミストによって調整され、混合物M7に供給されるのが好ましい。これにより、結着材Pに過剰に水分が供給されるのを防止または抑制しつつ、繊維または結着材Pに対して加湿を行うことができる。
【0103】
また、加湿器3Gで加湿された後の第2ウェブM8の含水率、すなわち、加湿工程で加湿された堆積物である第2ウェブM8の含水率は、15重量%以上、50重量%以下であるのが好ましく、15重量%以上、30重量%以下であるのがより好ましい。これにより、第2ウェブM8に過不足なく水分を供給することができ、結着材Pの結着性をより効果的に発現させることができる。第2ウェブM8の含水率が低すぎた場合、結着材Pの種類によっては結着性の発現が不十分となり、シート品質が低下する可能性がある。一方、第2ウェブM8の含水率が高すぎた場合、成形工程での加熱温度または加熱時間を高める必要があり、高消費電力化または生産性の低下を招く可能性がある。
【0104】
分散工程では、繊維の含水率および結着材Pの含水率は、いずれも50重量%以下、好ましくは、40重量%以下であることが好ましい。これにより、繊維の乾燥の為に消費されるエネルギー量を減らすことができる。また、澱粉が分散工程で結着性を発現しなくなるため、シート品質をより効果的に高めることができる。繊維の含水率および結着材Pの含水率の一方でも高すぎた場合、混合物M7にダマが生じやすくなるおそれがあり、シート品質の低下が懸念される。
【0105】
また、分散部18での混合物M7の含水率と、加湿器3Gで加湿された後の第2ウェブM8の含水率との差は、4重量%以上、25重量%以下であるのが好ましく、7重量%以上、20重量%以下であるのがより好ましい。これにより、分散中に混合物M7の水分が蒸発してしまうのを考慮して、適切な量の水分を加湿工程において付与することができる。
【0106】
また、成形工程では、加熱部202による加熱温度が50℃以上、120℃以下であるのが好ましく、70℃以上、100℃以下であるのがより好ましい。これにより、第2ウェブM8の水分を過不足なく蒸発させることができ、シート品質を高めることができる。
【0107】
以上説明したように、本発明の繊維体の製造方法は、繊維を含む解繊物M3と、吸水により結着性を発現する結着材Pと、を含み、含水率が10重量%以上、30重量%以下である混合物M7を分散する分散工程と、分散工程で分散された混合物M7を堆積する堆積工程と、堆積工程で堆積した堆積物である第2ウェブM8中の結着材Pに水分を水蒸気またはミストで付与して結着性を発現させる加湿工程と、加湿工程で加湿された第2ウェブM8を成形して繊維体としてのシートSを得る成形工程と、を含む。これにより、加湿工程での単位時間当たりの吸水量を比較的少なくしつつ、かつ、第2ウェブM8の成形部20への搬送速度を十分に高めつつ、シートSを製造することができる。よって、第2ウェブM8中の結着材Pにムラなく水分を供給しつつ、迅速に第2ウェブM8を搬送することができる。その結果、シートSの品質を高めつつ、生産性を高めることができる。
【0108】
また、本発明の繊維体製造装置100は、繊維を含む解繊物M3と、吸水により結着性を発現する結着材Pと、を含み、含水率が10重量%以上、30重量%以下である混合物M7を分散する分散部18と、分散部18で分散された混合物M7を堆積する堆積部19と、堆積部19で堆積した堆積物である第2ウェブM8中の結着材Pに水分を水蒸気またはミストで付与して結着性を発現させる加湿器3Gと、加湿器3Gで加湿された第2ウェブM8を成形して繊維体としてのシートSを得る成形部20と、を備える。これにより、加湿器3Gにおける単位時間当たりの吸水量を比較的少なくしつつ、かつ、第2ウェブM8の成形部20への搬送速度を十分に高めつつ、シートSを製造することができる。よって、第2ウェブM8中の結着材Pにムラなく水分を供給しつつ、迅速に第2ウェブM8を搬送することができる。その結果、シートSの品質を高めつつ、生産性を高めることができる。
【0109】
なお、本実施形態では、加湿器3A~加湿器3Fが予備加湿工程を行うことにより混合物M7の含水率が10重量%以上、30重量%以下とする構成について説明したが、本発明ではこれに限定されず、加湿器3A~加湿器3Fを省略し、かつ、例えばカートリッジ式により含水率が10重量%以上、30重量%以下の混合物M7を分散部18に供給してもよい。
【0110】
また、図示のように、解繊物M3は、前記繊維を含む原料M1を粗砕し、解繊して得られたものである場合、予備加湿工程は、原料が解繊されるまでに行われることが好ましい。繊維がある程度水分を含んだ状態で解繊を行うことにより、繊維へのダメージを効果的に軽減することができる。よって、シートSの強度および繰り返し再生性を高めることができる。
【0111】
<第2実施形態>
図3は、本発明の繊維体の製造方法を実行する繊維体製造装置の第2実施形態を示す概略側面図である。
【0112】
以下、この図を参照して本発明の繊維体の製造方法および繊維体製造装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0113】
図3に示すように、本実施形態の繊維体製造装置100は、図1に示す結着材供給部171が省略されている。このため、繊維体製造装置100の小型化を図ることができる。また、本実施形態では、原料M1に結着材Pが含まれている。すなわち、本実施形態では、繊維および結着材Pを含んだ状態で、原料供給工程~切断工程が行われる。なお、本実施形態では、混合工程は、結着材Pを供給せず、解繊物M3と結着材Pとを良好に攪拌、混合するための工程である。
【0114】
また、本実施形態のように、原料M1が結着材Pを含む場合、原料M1における結着材Pの含有率は、シートSにおける結着材Pの目標含有率よりも多いのが好ましく、1重量%以上、50重量%以下であるのが好ましく、2重量%以上、40重量%以下であるのがより好ましい。これにより、例えば、第1ウェブ形成工程等において、結着材Pが吸引部153に吸引されて減ったとしても、シートSにおける結着材Pの目標含有率に設定しやすくなる。よって、シートSの強度を十分に確保することができる。
【0115】
また、原料M1中の結着材Pの形態としては、固形状であれば特に限定されず、例えば、粒子状、繊維状等が挙げられる。
【0116】
また、本実施形態のように原料M1に結着材Pが含まれている場合、解繊部13までの間に予備加湿工程を行うのが特に好ましい。すなわち、加湿器3A~加湿器3Cで予備加熱工程を行うのが特に好ましい。繊維および結着材Pがある程度水分を含んだ状態で解繊を行うことにより、繊維へのダメージを効果的に軽減することができる。よって、シートSの強度および繰り返し再生性を高めることができる。
【0117】
以上、本発明の繊維体の製造方法および繊維体製造装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、繊維体の製造方法および繊維体製造装置を構成する各部、工程は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のもの、工程と置換することができる。また、任意の構成物、工程が付加されていてもよい。
【実施例
【0118】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
1.繊維体の製造
(実施例1)
原料として、コピー用紙(三菱製紙社製「リサイクルカット判G80」)に、プリンター(セイコーエプソン社製「PX-M7050FX」)を用いて印刷を行った使用済みの古紙を、図1に示す原料供給部11に投入し、シートSの製造を行った。
【0119】
また、図1に示す混合部17から投入する結着材として、酸処理澱粉(日澱化學社製「NSP-EA」)を用いた。また、得られたシートS中の澱粉の含有率が、6重量%となるよう投入した。
【0120】
また、本実施例では、予備加湿工程として、選別部14の加湿器3Dで加湿を行った。加湿器3Dでは、表1に示すように、第1選別物M4-1の含水率が10重量%となるように加湿を行った。
【0121】
また、加湿工程として、堆積部19の加湿器3Gで加湿を行った。加湿器3Gでは、表1に示すように、第2ウェブM8の含水率が20重量%となるように加湿を行った。
【0122】
なお、第1選別物M4-1の含水率は、ドラム141から放出された第1選別物M4-1を1g採取し、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製「MS70」)を用いて測定した。
【0123】
同様に、混合物M7の含水率は、ドラム181から放出された混合物M7を1g採取し、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・デイ製「MS70」)を用いて測定した。
【0124】
(実施例2~6)
加湿箇所、加湿の程度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてシートSを製造した。
【0125】
なお、実施例1~6では、加湿工程において、ミスト式の加湿器を用い、予備加湿工程において、気化式の加湿器を用いた。
【0126】
(比較例1~5)
加湿箇所、加湿の程度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてシートSを製造した。
【0127】
なお、比較例1、3~5では、加湿工程において、ミスト式の加湿器を用い、比較例2では、噴霧で水を供給する加湿器を用いた。また、比較例4、5では、予備加湿工程において、気化式の加湿器を用いた。
【0128】
2.評価
前記各実施例および各比較例で得られた繊維体、すなわち、シートについて、以下の評価を行った。
【0129】
2-1.引張強さ(引張試験)
JIS 8113に準拠してシートに対して引張試験を行い、以下のように評価した。
A:20[N・m/g]以上
B:10[N・m/g]以上、20[N・m/g]未満
C:0[N・m/g]以上、10[N・m/g]未満
【0130】
2-2.プロセスタイム
第2ウェブM8において、結着材の結着性が十分発現する条件で、選別部14で分散されてから、加熱部202を通過するまでの時間を測定し、以下のように評価した。
A:8秒/枚以下
B:8秒/枚超
【0131】
これらの結果を表1にまとめて示す。なお、表1において、通過後の材料の含水率に数値の記載のない項目、すなわち、「-」が記載されている項目は、その部位にて加湿が行われておらず、最新の含水率の数値が引き継がれている。また、加湿器3Aで加湿を行わなかった場合、原料供給部にストックされている原料の含水率は6重量%であった。
【0132】
【表1】
【0133】
表1から明らかなように、実施例2~6では優れた結果が得られた。これに対し、比較例1~5では、満足のいく結果が得られなかった。比較例1~3では、予備的に加湿を行わなかったため、分散部18から分散された混合物M7の含水率が10%未満であった。このため、比較例1では、結着材に必要な水分が足りず、「引張強さ」の評価が悪かった。また、比較例2では、噴霧により急速に加湿工程を行ったが、結着性の発現にムラが生じ、結果として、「引張強さ」の評価が悪かった。また、比較例3、4では、ミスト式で加湿工程を行ったが、十分な引張強さを得るためには、生産に時間がかかってしまった。また、比較例5では、予備加湿工程での水分量が多すぎたため、加熱工程に時間がかかってしまった。
【符号の説明】
【0134】
3A…加湿器、3B…加湿器、3C…加湿器、3D…加湿器、3E…加湿器、3F…加湿器、3G…加湿器、10…定量供給部、11…原料供給部、12…粗砕部、13…解繊部、14…選別部、15…第1ウェブ形成部、16…細分部、17…混合部、18…分散部、19…堆積部、20…成形部、21…切断部、22…ストック部、27…回収部、28…制御部、30…加湿装置、100…繊維体製造装置、121…粗砕刃、122…シュート、141…ドラム、142…ハウジング、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、161…プロペラ、162…ハウジング、170…ハウジング、171…結着材供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、181…ドラム、182…ハウジング、183…駆動源、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、211…第1カッター、212…第2カッター、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、281…CPU、282…記憶部、M1…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、P…結着材、S…シート
図1
図2
図3