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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】液体内容物包装用のガス吸着積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240806BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240806BHJP
   B65D 77/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B32B27/32 D
B65D65/40 D
B65D77/06 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020063074
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160172
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良彦
(72)【発明者】
【氏名】米本 智裕
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065938(WO,A1)
【文献】特開平05-330560(JP,A)
【文献】特開2015-168466(JP,A)
【文献】特開2013-018504(JP,A)
【文献】特開平10-119207(JP,A)
【文献】特開2018-115011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
B65D 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に易突刺しシーラント層を有し、他方の表面にガス吸着シーラント層を有する、液体内容物包装用の積層体であって、
該易突刺しシーラント層は、該積層体に易ニードル突刺し性を付与する為の層であり、外気と接してニードル突き刺し時にニードルが最初に接触するように用いられ、厚さが、20μm以上、40μm以下であり、
該ガス吸着シーラント層は、該積層体にガス吸着性を付与する為の層であって、液体内容物と接して用いられる層であり、該積層体が含有しているガス成分、および/または紫外線照射、加熱(ホットパック)、ボイルからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いた殺菌処理によって、該液体内容物包装用の積層体から発生する樹脂分解物からなるガス成分を吸着する層であり、厚さが、40μm以上、70μm以下であり、
該易突刺しシーラント層は、易突刺し性ポリエチレンと、柔軟性付与樹脂とを含有し、
該易突刺し性ポリエチレンの密度は、0.90g/cm 3 以上、0.935g/cm 3 以下であり、MFRは、1g/10分以上、10g/10分以下であり、
該ガス吸着シーラント層は、低溶出性ポリエチレンと、該柔軟性付与樹脂と、ガス吸着剤とを含有し、
該柔軟性付与樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマーおよび/またはオレフィン系プラストマーであり、該柔軟性付与樹脂の、密度は、0.85g/cm 3 以上、0.905g/cm 3 以下であり、ビカット軟化点は、35℃以上、120℃以下であり、
該易突刺しシーラント層の静止摩擦係数が、0.04以上、0.3以下であり、
該液体内容物包装用の積層体から120mm×80mmの短冊状試験片を作製して、JIS Z 1707 1997に準拠した方法により測定した突刺し強度は、2N以上、10N以下であり、
該低溶出性ポリエチレンに含まれる溶出性TOCの濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下であり、
易突刺しシーラント層/ガス吸着シーラント層の層厚比が、0.3~0.8であり、
該ガス吸着剤は、疎水性ゼオライトを含有し、
該疎水性ゼオライトのSiO 2 /Al 2 3 モル比が30/1~10000/1である
前記の液体内容物包装用の積層体。
【請求項2】
前記ガス吸着剤が、化学吸着剤担持無機多孔体をさらに含有する、請求項1に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項3】
前記易突刺し性ポリエチレンが、C4-LLDPEである、請求項1または2に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項4】
前記易突刺しシーラント層中の前記柔軟性付与樹脂の含有量が、3質量%以上、25質量%以下である、請求項1~の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項5】
前記低溶出性ポリエチレンの密度が、0.90g/cm3以上、0.94g/cm3以下のLLDPEである、請求項1~の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項6】
前記低溶出性ポリエチレンが、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEからなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1~の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項7】
前記ガス吸着シーラント層中の前記柔軟性付与樹脂の含有量が、2質量%以上、25質量%以下である、請求項1~の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項8】
前記ガス吸着剤が、予め、熱可塑性樹脂と、ガス吸着剤/熱可塑性樹脂の質量比が、5/95~40/60の割合で溶融混練されている、請求項1~の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項9】
前記化学吸着剤担持無機多孔体が担持している化学吸着剤が、アルデヒド類、ケトン類、及びカルボン酸類からなる群から選択される1種または2種以上との反応性を有する官能基を有するものである、請求項2~の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項10】
前記化学吸着剤担持無機多孔体が担持している化学吸着剤が、アミノ基または水酸基を有するものである、請求項2~の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項11】
前記易突刺しシーラント層と前記ガス吸着シーラント層との間に、中間層をさらに含み、
該中間層は、ポリアミド系樹脂を含有する、
請求項1~10の何れか1項に記載の、液体内容物包装用の積層体。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の液体内容物包装用の積層体を用いて作製された、液体内容物用包装材料。
【請求項13】
請求項1~11の何れか1項に記載の液体内容物包装用の積層体から作製された、ウォーターサーバー用包装材料。
【請求項14】
請求項1~11の何れか1項に記載の液体内容物包装用の積層体から作製された、バッグインボックス用包装材料。
【請求項15】
請求項12に記載の液体内容物用包装材料から作製された、液体内容物包装体。
【請求項16】
請求項13に記載のウォーターサーバー用包装材料から作製された、ウォーターサーバー包装体。
【請求項17】
請求項14に記載のバッグインボックス用包装材料から作製された、バッグインボックス包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易ニードル突刺し性、耐ピンホール性及びガス吸着性を有する液体内容物包装用積層体、および該液体内容物包装用積層体を用いて作製した液体内容物包装用の包装材料、液体内容物包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料において、臭気吸着剤を内包した包装材料が提案されている。このような包装材料には、合成ゼオライトや活性炭といった臭気吸着剤が、樹脂材料中に練り込まれている。(特許文献1)しかしながら、このような包装材料は、臭気だけでなく、大気中の湿気をも吸着し、且つ、一度吸着した臭気を、脱離させてしまうという問題があるため、十分な臭気吸着効果が得られない。また、液体内容物包装用途としての易ニードル突刺し性については考慮されていない。
無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなる臭気吸着剤を含有した包装材料も知られているが(特許文献2)、主な吸着対象物は特定の官能基を有する臭気成分のみであって、様々な樹脂材料を用いた際に発生する、官能基を有さない有機物の臭気成分を十分に吸着し得るものではなかった。また、液体内容物包装用途において必要な、易ニードル突刺し性、耐ピンホール性については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2538487号公報
【文献】特開2014-233408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の問題を解決し、製膜性等の製造適正、充填機適性、耐皴発生性および印字性に優れ、高いガス吸着効果と耐臭味変化性を長期間にわたって発揮して、シール強度、摺動性(低摩擦性)に優れることによって、保管時および輸送振動時における耐ピンホール性、耐落体性、耐漏水性に優れ、使用開始時における易ニードル突刺し性に優れた積層体、及び該積層体を用いた包装材料、包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討の結果、特定の易突刺しシーラント層と特定のガス吸着シーラント層とを有する積層体が、上記の目的を達成することを見出した。
本発明は、以下の点を特徴とする。
1.一方の表面に易突刺しシーラント層を有し、他方の表面にガス吸着シーラント層を有する、液体内容物包装用の積層体であって、
該易突刺しシーラント層は、易突刺し性ポリエチレンと、柔軟性付与樹脂とを含有し、
該ガス吸着シーラント層は、低溶出性ポリエチレンと、該柔軟性付与樹脂と、ガス吸着剤とを含有し、
該低溶出性ポリエチレンに含まれる溶出性TOCの濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下であり、
易突刺しシーラント層/ガス吸着シーラント層の層厚比が、0.3~0.8であり、
該ガス吸着剤は、疎水性ゼオライトを含有する、
前記の液体内容物包装用の積層体。
2.前記ガス吸着剤が、化学吸着剤担持無機多孔体をさらに含有する、上記1に記載の、液体内容物包装用の積層体。
3.前記易突刺しシーラント層は、前記積層体に易ニードル突刺し性を付与する為の層であり、外気と接してニードル突き刺し時にニードルが最初に接触するように用いられ、厚さが、20μm以上、40μm以下であり、
前記ガス吸着シーラント層は、前記積層体にガス吸着性を付与する為の層であって、液体内容物と接して用いられる層であり、前記積層体が含有しているガス成分、および/または紫外線照射、加熱(ホットパック)、ボイルからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いた殺菌処理によって、該液体内容物包装用の積層体から発生する樹脂分解物からなるガス成分を吸着する層であり、厚さが、40μm以上、70μm以下である、
上記1または2に記載の、液体内容物包装用の積層体。
4.前記易突刺し性ポリエチレンが、C4-LLDPEである、上記1~3の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
5.前記柔軟性付与樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマーおよび/またはオレフィン系プラストマーであり、
前記柔軟性付与樹脂の、密度は、0.85g/cm3以上、0.905g/cm3以下であり、ビカット軟化点は、35℃以上、120℃以下である、
上記1~4の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
6.前記易突刺しシーラント層中の前記柔軟性付与樹脂の含有量が、3質量%以上、25質量%以下である、上記1~5の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
7.前記低溶出性ポリエチレンの密度が、0.90g/cm3以上、0.94g/cm3以下のLLDPEである、上記1~6の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
8. 前記低溶出性ポリエチレンが、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEからなる群から選ばれる1種または2種以上である、上記1~7の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
9.前記ガス吸着シーラント層中の前記柔軟性付与樹脂の含有量が、2質量%以上、25質量%以下である、上記1~8の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
10.前記ガス吸着剤が、予め、熱可塑性樹脂と、ガス吸着剤/熱可塑性樹脂の質量比が、5/95~40/60の割合で溶融混練されている、上記1~9の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
11.前記化学吸着剤担持無機多孔体が担持している化学吸着剤が、アルデヒド類、ケトン類、及びカルボン酸類からなる群から選択される1種または2種以上との反応性を有する官能基を有するものである、上記2~10の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
12.前記化学吸着剤担持無機多孔体が担持している化学吸着剤が、アミノ基または水酸基を有するものである、上記2~11の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
13.前記易突刺しシーラント層と前記ガス吸着シーラント層との間に、中間層をさらに含み、
該中間層は、ポリアミド系樹脂を含有する、上記1~12の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
14.前記易突刺しシーラント層の静止摩擦係数が、0.04以上、0.3以下である、上記1~13の何れかに記載の、液体内容物包装用の積層体。
15.上記1~14の何れかに記載の液体内容物包装用の積層体を用いて作製された、液体内容物用包装材料。
16.上記1~14の何れかに記載の液体内容物包装用の積層体から作製された、ウォーターサーバー用包装材料。
17.上記1~14の何れかに記載の液体内容物包装用の積層体から作製された、バッグインボックス用包装材料。
18.上記15に記載の液体内容物用包装材料から作製された、液体内容物包装体。
19.上記16に記載のウォーターサーバー用包装材料から作製された、ウォーターサーバー包装体。
20.上記17に記載のバッグインボックス用包装材料から作製された、バッグインボッ
クス包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製膜性等の製造適正、充填機適性、耐皴発生および印字性に優れ、高いガス吸着効果と耐臭味変化性を長期間にわたって発揮して、シール強度、摺動性(低摩擦性)に優れることによって、保管時および輸送振動時における耐ピンホール性、耐落体性および耐漏水性に優れ、使用開始時における易ニードル突刺し性に優れた積層体、及び該積層体を用いた包装材料、包装体を提供することができる。
特に、積層体に含有される樹脂それ自体が含有しているガス成分、あるいは紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理の際に包装材料を構成する樹脂の分解等により発生する樹脂分解物からなるガス成分に対して高いガス吸着効果を有すると共に、ウォーターサーバー等での使用開始時における易ニードル突刺し性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の液体内容物包装用の積層体の層構成について、その一例を示す概略的断面図である。
図2】本発明の液体内容物包装用の積層体の層構成について、別態様の一例を示す概略的断面図である。
図3】本発明の液体内容物包装用の積層体の層構成について、さらに別態様の一例を示す概略的断面図である。
図4】化学吸着剤担持無機多孔体のガス成分に対する吸着機構を示す図である。
図5】静止摩擦係数を測定する為の錘を示す概略的俯瞰図である。
図6】本発明の積層体を錘に固定した状態を示す俯瞰図である。
図7】静止摩擦係数の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の液体内容物包装用の積層体、及び該液体内容物包装用の積層体を用いて作製した包装材料、包装体について、以下に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0009】
<<液体内容物包装用の積層体>>
本発明の液体内容物包装用の積層体は、易ニードル突刺し性とガス吸着性を有しており、液体内容物が異臭や臭味変化を生じることを抑制する積層体である。
本発明の液体内容物包装用の積層体の層構成は、図1に示すように、少なくとも、易突刺しシーラント層とガス吸着シーラント層とを含み、易突刺しシーラント層とガス吸着シーラント層の各々は液体内容物包装用の積層体の表面層であり、包装体形成時には、易突刺しシーラント層が外気と接するように用いられ、ガス吸着シーラント層は包装体の内容物である液体内容物と接するように用いられる。
液体内容物包装用の積層体が両表面にヒートシール性の層を含むことによって、様々なタイプの複雑な構造の包装体を作製することも可能になる。
【0010】
また、本発明の液体内容物包装用の積層体は、必要に応じて種々の性能を有する中間層を、さらに含むことができる。
さらにまた、各層は接着剤層を介して積層されていてもよい。
【0011】
本発明の液体内容物包装用の積層体の厚さは、100μm以上、130μm以下が好ましく、105μm以上、125μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと破れ易く、上記範囲よりも厚いと剛性が強くなり過ぎ易く、包装用途としての適性に劣り易い。
また、易突刺しシーラント層はガス吸着シーラント層よりも薄いことが好ましく、易突刺しシーラント層/ガス吸着シーラント層の層厚比は0.3~0.8であることが好まし
い。上記範囲よりも小さいと層比のバランスが悪く、フィルム作製時の製造適性が劣る虞があり、上記範囲よりも大きいと突刺し強度が高くなり過ぎる虞がある。
【0012】
本発明の液体内容物包装用の積層体の全体の引張弾性率は、20MPa以上、300MPa以下が好ましく、22MPa以上、295MPa以下がより好ましい。上記範囲よりも低いと剛性が小さすぎて皴が寄り易く、上記範囲よりも高いと剛性が強くなりすぎて包装材料としての取り扱いが困難になり易い。
【0013】
本発明の液体内容物包装用の積層体は、優れたガス吸着性、易ニードル突刺し性、低TOC溶出性、充填機適性、低皴発生性、耐ピンホール性、耐落体性、耐漏水性等を有することから、これらの特性を、液体内容物包装用ガス吸着性包装材料や、液体内容物包装用ガス吸着性包装体に付与することができる。
また、液体内容物包装用の積層体は、用途に応じて、高透明性を有することができる。
【0014】
[ガス吸着性]
本発明においてガス吸着性とは、吸着対象のガス成分を吸着する性能を指す。
本発明において吸着対象となるガス成分は、主に、積層体自体が含有しているガス成分、および紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理によって積層体中の樹脂が分解することで発生した樹脂分解物からなるガス成分である。ここで、積層体が元から含有しているガス成分とは、積層体を構成する原材料が含有していたガス成分、および積層体を形成する際の熱履歴等によって発生したガス成分である。
紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理の具体例としては、波長250~300nmの紫外線照射、ホットパック、ボイルを用いた殺菌等が挙げられる。
そして、本発明においては、特に液体内容物包装用の積層体を用いて作製されたガス吸着包装体の内容物または内容物収容部のガス成分濃度を下げることを目的としている。
ここで、本発明の液体内容物包装用の積層体は、ガス成分が液体内容物包装用の積層体から内容物収容部に出る前にガス成分を吸着することが可能であり、また、液体内容物包装用の積層体から内容物収容部に出たガス成分を吸着することも可能であり、さらにまた、内容物に含まれたガス成分を吸着することも可能である。
本発明において吸着対象とするガス成分は、比較的分子量の小さい有機物であって、容易に気化するものや、水に溶けるもの、無臭のもの、臭気の弱いものや強いものがあり、具体的な種類は、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類等である。
炭化水素類は、TOC溶出濃度増加に大きく寄与する成分であり、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類は、臭気を高める成分である。これらのガス成分を総じて吸着することにより、低TCO溶出性(液中溶出成分量の軽減)及び耐臭味変化性の向上(臭味改善)の達成が可能になる。
炭化水素類の具体的な化合物としては、プロパン、プロペン、ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、ブテン、イソブテン、2-メチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、ヘプタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、3-エチルヘプタン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、3-メチルヘプテン、オクタン、2-メチルオクタン、4-エチルオクタン、ノナン、3-メチルノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
アルコール類の具体的な化合物としては、2-メチル-2-プロパノール、2-メチルプロパノール、エタノール、1-プロパノール等が挙げられる。
アルデヒド類の具体的な化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、2-メチルプロパナール、3-メチルブタナール等が挙げられる。
ケトン類の具体的な化合物としては、アセトン、MEK、MIBK、3,3-ジメチル
ー2-ブタノン等が挙げられる。
カルボン酸類の具体的な化合物としては、酢酸、イソ吉草酸、2-メチルプロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸等が挙げられる。
【0015】
(易ニードル突刺し性)
易ニードル突刺し性とは、例えばウォータ-サーバー用の水を充填した液体内容物包装用ガス吸着包装体は、ウォータ-サーバーにセットする際に、ウォータ-サーバーに装備されたニードルが液体内容物包装用ガス吸着包装体の易突刺しシーラント層側から突き刺されて貫通する際の作業が容易である適性のことであり、突刺し強度を測定することによって数値化される。
突刺し強度の測定は、液体内容物包装用の積層体から120mm×80mmの短冊状試験片を作製して、JIS Z 1707 1997に準拠した方法により測定することが好ましい。
突刺し強度は、2N以上、10N以下が好ましく、2.5N以上、9.5N以下がより好ましい。上記範囲よりも小さいと、包装工程中や包装体輸送時や保管中に、不用意に貫通孔を生じてしまう虞があり、上記範囲よりも大きいと、ウォータ-サーバーにセットする際の作業適性が悪くなる虞がある。
【0016】
(低TOC溶出性)
低TOC溶出性とは、液体内容物包装用の積層体から液体内容物へのTOC(Total Organic Carbon、全有機体炭素)溶出量が少ないことを指す。
TOCは、水中の酸化され得る有機物(有機炭素体)全量の濃度を炭素量の濃度で示したものであり、代表的な水質指標の一つとして用いられているものであって、JIS K0805(有機体炭素(TOC)自動計測器)等で規格化されている。
本発明においては、低TOC溶出性は、中長期保管前後の、液体内容物包装用ガス吸着包装体における液体内容物である水のTOCの濃度の変化によって示される。
液体内容物包装用ガス吸着包装体の内容物中のTOC増加濃度(TOC濃度の増加量)が0.05ppm以上、1.5ppm以下になることが好ましい。
上記の内容物における低TOC増加濃度を達成する為には、液体内容物包装用の積層体に含有される溶出性TOCの濃度が低いことが必要であり、該積層体に含有される溶出性TOC濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下が好ましい。
上記範囲よりも低いものを得ることは技術的に困難が伴い、且つ実用上の効果に有意差を示し難い。上記範囲よりも高いと、包装体を作製した際の液体内容物への長期間の耐臭味変化性が劣る虞がある。
尚、上記の液体内容物包装用の積層体に含まれる溶出性TOCの濃度は、液体内容物包装用の積層体を用いて、ガス吸着シーラント層が内層となって液体内容物に直接接触するように作製されたパウチに、液体内容物として水を充填して測定したものである。
【0017】
TOC溶出量として検出される有機化合物は、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類であり、特に炭化水素類が多い。
【0018】
ここで、液体内容物包装用の積層体を用いて作製したパウチに含有されている溶出性TOCの全量が充填水1000gに溶出した場合の、充填水中のTOCの増加濃度は、下記のように算出される。
パウチ比重:S[g/cm3
パウチサイズ:15cm×44cm×50μm厚
パウチ重量:W=15×44×50×10-4×2×S=6.6×S[g]
パウチ中に含まれる溶出性TOCの濃度:C[ppm]
とすると、
パウチ中に含まれる溶出性TOCの全重量=C×W[g]
これが水1000gに溶出するので、
充填水中のTOCの増加濃度=C×W/1000=C×6.6×S×10-3[ppm]
例えば、パウチを構成する液体内容物包装用の積層体の比重が0.92、含有される溶出性TOCの濃度が1.7ppmの場合は、
充填水中のTOCの増加濃度=1.7×6.6×0.92×10-3=0.01[ppm]の様に算出される。
【0019】
具体的なTOCの増加濃度の求め方としては、例えば、上記のパウチ内に、充填水として40℃~80℃の蒸留水を1000g充填し、25℃~50℃、数日~4週間保管後の該充填水のTOC濃度を全有機体炭素計やHS-GCで測定して、ブランクとして未処理の蒸留水のTOC濃度を差し引いて求めることができる。
本発明においては、液体内容物包装用の積層体を用いて、包装体としてパウチ(15cm×44cm)を作製し、65℃の水(高速液体クロマトグラフィー用蒸留水、純正化学)1000gを充填して液体内容物包装用ガス吸着包装体液体充填物を作製し、35℃、2週間保管後に、(株)島津製作所社製TOC-L全有機体炭素計により充填水のTOC濃度を測定することを標準方法として、TOCの増加濃度を求める。
そして、得られた充填水のTOC増加濃度と、充填水の質量部と液体内容物包装用の積層体の質量部から、液体内容物包装用の積層体に含有されていた溶出性TOC濃度を算出することができる。
また、TOC濃度が高い液体内容物は、臭味がきついと官能的に感じ取ることができる。
本発明においては、積層体に含まれるガス吸着剤がTOCを吸着することによって、液体内容物のTOC濃度を低減することができる。
【0020】
(充填機適性)
充填機適性とは、液体内容物包装用ガス吸着包装体の作製と内容物の充填を連続的に実施する充填機を用いた工程において、ヒートシール不良やピンホール発生等の不良を生じない製造適性のことである。
【0021】
(低皴発生性)
低皴発生性とは、液体内容物が充填された液体内容物包装用ガス吸着包装体が、包装工程、充填工程、輸送工程、保管工程の何れかの工程において、外力によって皴を発生させ難い性能のことである。
該皴の発生を防ぐ為には、液体内容物包装用の積層体の剛性を小さくすることが効果的であり、剛性を小さくする為には、液体内容物包装用の積層体の厚さを薄くすることや、液体内容物包装用の積層体の弾性率を小さくすることが効果的である。
【0022】
(耐ピンホール性)
耐ピンホール性とは、液体内容物包装用の積層体が包装工程中や包装体輸送時において、ピンホールを発生させ難い性能を指す。
ここで言うピンホールとは、貫通孔及び液体内容物包装用ガス吸着包装体中の極局所的な部分剥離であり、液体内容物包装用ガス吸着包装体中を構成する液体内容物包装用の積層体内の層内凝集破壊または層間界面の剥離であったり、液体内容物包装用の積層体間のヒートシール界面の剥離であったりする。
耐ピンホール性が向上することによって、内容物の水が漏れることに対する耐性(耐漏水性)が向上する。
耐ピンホール性は、具体的には、23℃における5000回のゲルボフレックス後のピンホール発生個数が、0個、または1個以上、160個以下であることが好ましい。
ピンホールは、振動による局所的繰り返し屈曲によって疲労破壊が進行することによって発生すると推察される。
【0023】
(摺動性)
上記の耐ピンホール性に係る局所的繰り返し屈曲は、積層体または包装体が包装機器や梱包容器や、あるいは積層体または包装体同士と接触した際に発生する応力によって生じるが、外層である易突刺しシーラント層の静止摩擦係数が小さく摺動性に優れていれば、滑ることによって屈曲を低減することが可能であり、耐ピンホール性を向上することができる。
易突刺しシーラント層の静止摩擦係数は、0.04以上、0.3以下が好ましく、0.05以上、0.28以下がより好ましい。上記範囲よりも小さい静止摩擦係数を得ることは困難であり、積層体間の易突刺しシーラント層界面に剥離が生じ易くなる虞があり、上記範囲よりも大きい静止摩擦係数だと、摺動性が不十分になる虞がある。
【0024】
(耐落体性)
耐落体性は、液体内容物が充填された液体内容物包装用ガス吸着包装体が、輸送や荷役作業等における落下等の衝撃によって、破損を生じさせ難い性能を指す。
本願発明における耐落体性の評価は、液体内容物包装用の積層体からなるサイズ350mm×330mmのパウチに4.7Lの水を充填し、1mの高さから垂直落下を5回繰り返した際の破袋、及び液漏れの有無を確認した。
【0025】
(高透明性)
高透明性とは、可視光の透過率が高く、曇りが少ないことを指す。
透明性が高いことによって、液体内容物包装用ガス吸着包装体に充填された液体内容物を視認して識別したり異常を検出したりすることが容易になり、また、液体内容物包装用の積層体中の異常を検出することが容易になる。
透明性は、JIS K 7361-1 : 1997に準拠した方法によりヘーズ(曇り度)値(%)を測定して評価することが好ましい。
ヘーズ値は、35%以下であることが好ましい。上記範囲よりも大きいと透明性が不十分になり易い。下限値に特に制限は無く、透明性が高いほど好ましい。下限値は0%であってもよいが、実用上の効果および製造適性を考えると、3%~15%、あるいは5~10%の範囲の値が下限値であってもよい。
【0026】
液体内容物包装用の積層体を構成する各層の詳細は下記のとおりである。
<易突刺しシーラント層>
易突刺しシーラント層は、本発明の液体内容物包装用の積層体にヒートシール性と易ニードル突刺し性とを付与する層であり、易突刺し性ポリエチレンと、柔軟性付与樹脂と、摩擦抵抗低減剤とを含有する。易突刺し性ポリエチレンおよび/または柔軟性付与樹脂は、ヒートシール性を有することが好ましい。また、これら以外の汎用のヒートシール性樹脂を含有してもよい。
【0027】
ポリエチレン系樹脂は、紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理に対して耐性があって分解され難い性質があることから、易突刺しシーラント層にポリエチレン系樹脂が多く含有されれば、臭気成分の発生や液体内容物のTOCの濃度増加を抑制でき、好ましい。また、ポリエチレン系樹脂はヒートシール性に優れたものが多い。
したがって、易突刺し性ポリエチレンは易突刺しシーラント層に、易ニードル突刺し性と、ヒートシール性を付与することができ、さらには、低臭気性とTOCの濃度増加の低減を付与することができる。
【0028】
易突刺しシーラント層中の易突刺し性ポリエチレンの含有量は、60質量%以上、95質量%以下が好ましく、75質量%以上、94質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないと液体内容物包装用の積層体の易ニードル突刺し性が不十分になる虞があり、上
記範囲よりも多いと耐ピンホール性が低下する虞がある。
【0029】
そして、柔軟性付与樹脂は、耐ピンホール性を付与することができ、さらには、ポリエチレン系の柔軟性付与樹脂を用いれば、ヒートシール性、低臭気性、TOCの濃度増加の低減を付与することができる。
易突刺しシーラント層中の柔軟性付与樹脂の含有量は、3質量%以上、40質量%以下が好ましく、4質量%以上、25質量%以下がより好ましく、5質量%以上、20質量%以下がさらに好ましい。上記範囲よりも少ないと易突刺しシーラント層が硬過ぎて耐ピンホール性が低下する虞があり、上記範囲よりも多いと液体内容物包装用の積層体の剛性が小さくなり過ぎて皴が発生し易くなる虞がある。
【0030】
摩擦抵抗低減剤としては、スリップ剤および/またはアンチブロッキング剤を含有することができる。
易突刺しシーラント層中の、摩擦抵抗低減剤の含有量は、0.05質量%以上、2質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、1.5質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないと摩擦抵抗低減効果が発現され難く、上記範囲よりも多くても摩擦抵抗低減効果はさほど変わらず。積層体内の層間接着性が低下する虞がある。
また、アンチブロッキング剤/スリップ剤の質量比に特に制限は無く、公知公用の比率が可能であり、積層体の特性に応じて決定することができるが、1.5/1~15/1が好ましく、2/1~12/1がより好ましい。上記範囲であれば、スリップ剤による効果とアンチブロッキング剤による効果のバランスがよく、良好な摩擦抵抗低減効果を得やすい。
あるいは、易突刺しシーラント層中のアンチブロッキング剤の含有量は、0.05質量%以上、1.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、1質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないとアンチブロッキング剤の効果が発現され難く、上記範囲よりも多くても摩擦抵抗低減効果はさほど変わらず。積層体内の層間接着性が低下する虞がある。
またあるいは、易突刺しシーラント層中のスリップ剤の含有量は、0.005質量%以上、0.2質量%以下が好ましく、0.01質量%以上、0.15質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないとスリップ剤の効果が発現され難く、上記範囲よりも多くても摩擦抵抗低減効果はさほど変わらず。積層体内の層間接着性が低下する虞がある。
【0031】
易突刺しシーラント層は、ニードル突刺し時に最初にニードルが接触する層であることから、易突刺しシーラント層の厚さによって易ニードル突刺し性を調節することができる。
易突刺しシーラント層の厚さは、良好なヒートシール性と易ニードル突刺し性とのバランスを有する為に、20μm以上、40μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いとヒートシール性が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いとニードル突刺性が劣る虞がある。
【0032】
易突刺しシーラント層の形成は公知の方法でよく、例えば、易突刺しシーラント層を構成する樹脂を溶融し、他層の上に(共)押出しによって形成してもよく、共押出しインフレーション法等によって、易突刺しシーラント層の形成と他層との積層を同時に行ってもよい。あるいは、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等従来から使用されている製膜化法により一旦フィルム化して、接着剤等を介して積層したりして、形成することができる。
フィルムの作製方法は、上記の方法の何れでもよいが、インフレーション法が好ましい。
フィルムは、無延伸でもよいが、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等による1軸ないし2軸方向への延伸によって、強度、寸法安定性、耐熱性を向上して用
いることもできる。
例えば、2軸方向に延伸した延伸フィルムは、例えば50~100℃のロール延伸機により2~4倍に縦延伸し、更に90~150℃の雰囲気のテンター延伸機により3~5倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100~240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。また、延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延伸をしても良い。
上記の中でも、無延伸単層フィルムまたは無延伸多層フィルムを用いることが特に好ましい。
【0033】
易突刺しシーラント層は、1層で構成されていてもよく、組成が同一および/または異なる2層以上の多層構成であってもよく、また、易突刺し性ポリエチレン、柔軟性付与樹脂、摩擦抵抗低減剤の何れか1種または2種以上を含有しない層を含んでいてもよい。
易突刺しシーラント層が多層構成の場合には、例えば、易突刺し性ポリエチレンおよび/または柔軟性付与樹脂の種類や含有量が異なる2層以上あってもよく、ヒートシール性の高い組成の層を易突刺しシーラント層の外部表面および/または内部表面に含むことによって、高い層間接着強度および/または高いヒートシール性を得ることができる。
【0034】
[易突刺し性ポリエチレン]
易突刺し性ポリエチレンは、ヒートシール性を有し、易ニードル突刺し性に優れたポリエチレンである。
具体的な易突刺し性ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体及びそれらの樹脂の混合物当が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
【0035】
本発明における易突刺し性ポリエチレンとしては、上記の中でも、LLDPEが好ましく、C4-LLDPEがより好ましい。
C4-LLDPEとは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなるLLDPEの1種であり、エチレン由来のLLDPEの主鎖に、1-ブテン由来の炭素数が4個の側鎖を有する分子構造である。
C4-LLDPEは、C6-LLDPEやC8-LLDPEよりも、側鎖が短く、MFRが低いことから、相対的に低い引張衝撃強さや引張強度や引張弾性率を有しており、これらによって、相対的に柔らかく、優れた易ニードル突刺し性を有し、積層体に優れた易ニードル突刺し性を付与することができる。
【0036】
易突刺し性ポリエチレンの密度に特に制限は無く、様々な密度のポリエチレンを用いることができるが、優れた耐ピンホール性を有する為には、0.90g/cm3以上、0.935g/cm3以下が好ましい。
易突刺し性ポリエチレンのMFRは、1g/10分以上、10g/10分以下が好ましく、3g/10分以上、7g/10分以下がより好ましい。MFRが上記範囲であれば、柔軟性付与樹脂や摩擦抵抗低減剤と混合されても、良好なMFRを維持し、良好な製膜性や接着性を示すことができる。
易突刺し性ポリエチレンは、さらに、紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理に対する耐性があって、低臭気性に優れてTOCの濃度増加を低減できるものが好ましい。
【0037】
<ガス吸着シーラント層>
ガス吸着シーラント層は、本発明の液体内容物包装用の積層体にヒートシール性とガス吸着性と低溶出性とを付与する層であり、低溶出性樹脂と、柔軟性付与樹脂と、ガス吸着剤とを含有する。低溶出性樹脂および/または柔軟性付与樹脂は、ヒートシール性を有す
ることが好ましい。また、これら以外の汎用のヒートシール性樹脂を含有してもよい。
ポリエチレン系樹脂は、紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理に対して耐性があって分解され難い性質があることから、ガス吸着シーラント層にポリエチレン系樹脂が多く含有されれば、ガス成分の発生や液体内容物のTOCの濃度増加を抑制でき、好ましい。また、ポリエチレン系樹脂はヒートシール性に優れたものが多い。
したがって、低溶出性樹脂はガス吸着シーラント層に、低溶出性と、ヒートシール性を付与することができ、さらには、低臭気性とTOCの濃度増加の低減を付与することができる。
【0038】
ガス吸着シーラント層中の低溶出性樹脂の含有量は、35質量%以上、97質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと液体内容物包装用の積層体の剛性が小さくなり過ぎて皴が発生し易くなる虞があり、上記範囲よりも多いと易突刺しシーラント層が硬過ぎて耐ピンホール性が低下する虞がある。
【0039】
そして、柔軟性付与樹脂は、耐ピンホール性を付与することができ、さらには、ポリエチレン系の柔軟性付与樹脂を用いれば、ヒートシール性、低臭気性、TOC濃度増加の抑制を付与することができる。
ガス吸着シーラント層中の柔軟性付与樹脂の含有量は、2質量%以上、25質量%以下が好ましく、5質量%以上、22質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないとガス吸着シーラント層が硬過ぎて耐ピンホール性が低下する虞があり、上記範囲よりも多いと液体内容物包装用の積層体の剛性が小さくなり過ぎて皴が発生し易くなる虞がある。
【0040】
本発明の液体内容物包装用の積層体は、内容物と接するガス吸着シーラント層にガス吸着剤を含有することによって、液体内容物包装用ガス吸着包装体の内容物収容部内のガス成分濃度を、効率的に下げることができる。
ガス吸着シーラント層中の、ガス吸着剤の含有量は、0.3質量%以上、15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上、14質量%以下がより好ましい。
上記範囲よりも少ないと、ガス吸着効果が発現され難く、上記範囲よりも多いと、製膜性が悪化する虞がある。
【0041】
そして、ガス吸着シーラント層は、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、溶剤、その他の添加剤をさらに少量含むことができるが、加熱時に有機物の溶出量を上昇させてしまいそうな添加剤の使用を制限して、高温による酸化を防止することが好ましい。
【0042】
ガス吸着シーラント層は、液体内容物包装用ガス吸着包装体の内容物収容部および内容物に接する層であることから、ガス吸着シーラント層の厚さによってガス吸着性を調節し、低臭気化や低TOC溶出性化を調節することができる。
ガス吸着シーラント層の厚さは、良好なヒートシール性とガス吸着性と低TOC溶出性とのバランスを有する為に、40μm以上、70μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いとヒートシール性および/またはガス吸着性が不十分になる虞があり、上記範囲よりも厚いと低TOC溶出性が劣る虞がある。
【0043】
ガス吸着シーラント層の形成は公知の方法でよく、例えば、ガス吸着シーラント層を構成する樹脂を溶融し、他層の上に(共)押出しによって形成してもよく、共押出しインフレーション法等によって、ガス吸着シーラント層の形成と他層との積層を同時に行ってもよい。あるいは、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等従来から使用されている製膜化法により一旦フィルム化して、接着剤等を介して積層したりして、形成することができる。
フィルムの作製方法は、上記の方法の何れでもよいが、インフレーション法が好ましい

フィルムは、無延伸でもよいが、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等による1軸ないし2軸方向への延伸によって、強度、寸法安定性、耐熱性を向上して用いることもできる。
例えば、2軸方向に延伸した延伸フィルムは、例えば50~100℃のロール延伸機により2~4倍に縦延伸し、更に90~150℃の雰囲気のテンター延伸機により3~5倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100~240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。また、延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延伸をしても良い。
上記の中でも、無延伸単層フィルムまたは無延伸多層フィルムを用いることが特に好ましい。
【0044】
ガス吸着シーラント層は、1層で構成されていてもよく、組成が同一および/または異なる2層以上の多層構成であってもよく、また、ガス吸着剤および/または低溶出性樹脂を含有しない層を含んでいてもよい。
ガス吸着シーラント層が多層構成の場合には、例えば、ガス吸着剤の種類や含有量が異なる2層以上あってもよく、ガス吸着剤の含有量の低い層をガス吸着シーラント層の外部表面および/または内部表面に含むことによって、高い層間接着強度および/または高いヒートシール性を得ることができる。
【0045】
(低溶出性樹脂)
低溶出性樹脂とは、樹脂から液体内容物へのTOC(Total Organic Carbon、全有機体炭素)の溶出量が少ない樹脂という意味であり、溶出量は樹脂の形状や熱履歴等によって変化する。
ヒートシール性を有する低溶出性樹脂を液体内容物に接するガス吸着シーラント層に含有させることによって、ガス吸着シーラント層にヒートシール性を付与し、本発明の液体内容物包装用ガス吸着包装体に充填された液体内容物中に溶出する有機物の濃度を低減して、液体内容物の臭味変化を抑制することができる。
【0046】
低溶出性樹脂に含まれる溶出性TOCの濃度は、1.5ppm以上、250ppmが好ましい。
上記範囲よりも低いものを準備することは困難であり、且つ実用上の効果に有意差を示し難い。上記範囲よりも高いと、包装体を作製した際の液体内容物への長期間の耐臭味変化性が劣る虞がある。
尚、上記の低溶出性樹脂に含まれる溶出性TOCの濃度は、フィルム化された低溶出性樹脂において測定された値である。フィルム化された状態で測定する理由は、低溶出性樹脂は、シーラント層形成等のフィルム化される際に、様々な熱履歴等を与えられてTOCの溶出量を増加させてしまう可能性を考慮してのことであり、実際のフィルム化または積層時に相当する熱履歴を与えることが好ましい。
【0047】
ヒートシール性を有する低溶出性樹脂としては、ヒートシール性に優れ、紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理に対して耐性があって分解され難い性質があることから、ポリエチレン系樹脂(低溶出性ポリエチレン系樹脂)が好ましい。
低溶出性ポリエチレン系樹脂は、元々含有している溶出性TOC量が少なく、且つ紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理に対して耐性があって分解され難いことによって、該殺菌処理後の液体内容物包装用の積層体から発生するガス成分や溶出性TOCの量を少なくすることができる。
一般的に、ポリエチレンには、密度の下限値は0.90g/cm3よりも小さいものが存在し、上限値は0.96g/cm3程度のものまで存在し、低密度ポリエチレンの密度は0.910g/cm3以上、0.930g/cm3未満であり、直鎖状低密度ポリエチレンの密度は0.910g/cm3以上、0.925g/cm3以下であるが、本発明におけ
る低溶出性ポリエチレンには、密度が0.90g/cm3以上、0.94g/cm3以下のものを用いることが好ましい。
密度が上記範囲である低溶出性ポリエチレンは、有機物の溶出量を低くし得る傾向にある。
【0048】
低溶出性ポリエチレン系樹脂のMFR(メルトフローレート)は、1g/10分以上、10g/10分以下が好ましく、1.5g/10分以上、7g/10分以下が好ましい。MFRが上記範囲であれば、柔軟性付与樹脂やガス吸着剤と混合されても、良好なMFRを維持し、良好な製膜性や接着性を示すことができる。
【0049】
低溶出性ポリエチレン系樹脂のポリエチレン種の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等の低溶出化されたもの及びそれらの樹脂の混合物が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
上記の中でも、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEからなる群から選ばれる1種または2種以上であることがより好ましく、C6-LLDPEがさらに好ましい。
ここで、C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C6-LLDPEは、エチレンと1-ヘキセンおよび/または4-メチル-1-ペンテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C8-LLDPEは、エチレンと1-オクテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンである。
それぞれの分子構造は、エチレン由来のLLDPEの主鎖に、それぞれ、1-ブテン、1-ヘキセンおよび/または4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン由来の、炭素数がそれぞれ、4個、6個、8個の側鎖が存在する分子構造を有する。
【0050】
樹脂の溶出性TOC量を低く抑える為には、例えば、樹脂を製造する際に、未反応原料残存量や低分子量生成物や副生成物の量を低減することや、重合触媒を除去することである。具体的には、原料純度を向上したり、反応温度や圧力等の条件を精密に制御したり、蒸留や洗浄によって未反応原料や低分子量生成物や副生成物や重合触媒を除去したり、高温のままで空気中の酸素に触れることによる酸化を防止したりする方法が挙げられる。
他の方法としては、製造された樹脂をペレット化やフィルム化する際に、溶出性TOC量を増加させてしまいそうな添加剤の使用を制限し、高温による酸化を防止することが挙げられる。具体的な添加剤としては、滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、溶剤、その他が挙げられる。
本発明は、上記の方法に限定されない。
【0051】
[ガス吸着剤]
本発明において、ガス吸着剤としては、疎水性ゼオライトを含有する。そして、化学吸着剤担持無機多孔体をさらに含有することができる。
ガス吸着シーラント層中のガス吸着剤の含有量は、0.3質量%以上、15質量%以下が好ましい。このガス吸着剤の含有量は、疎水性ゼオライトと化学吸着剤担持無機多孔体とを含有する場合にはこれらの合計量である。
ガス吸着シーラント層中の疎水性ゼオライトの含有量は、0.3質量%以上、15質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、ガス吸着効果が発現され難く、上記範囲よりも多いと、製膜性が悪化する虞がある。
化学吸着剤担持無機多孔体を含有する場合の、ガス吸着シーラント層中の化学吸着剤担
持無機多孔体の含有量は、0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、化学吸着剤担持無機多孔体を含有したことによるガス吸着効果が発現され難く、上記範囲よりも多いと、製膜性が悪化する虞がある。
【0052】
(疎水性ゼオライト)
本発明において、ガス吸着剤として用いられる疎水性ゼオライトは、SiO2/Al23モル比が30/1~10000/1であることが好ましい。該モル比が上記の範囲であれば、疎水性と細孔サイズのバランスに優れて、良好なガス吸着性を有することができる。
疎水性ゼオライトは、本発明の積層体が230℃以上に晒される場合であっても、ガス成分の吸着効果が維持される。
疎水性ゼオライトは、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、樹脂中に分散させた際の、均一な分散性や混練特性、製膜性等の観点から、粉体状が好ましい。
【0053】
本発明において、疎水性ゼオライトの平均粒子径は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、平均粒子径0.01μm~15μmのものが好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が上記範囲よりも小さい場合には疎水性ゼオライトの凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。また、平均粒子径が上記範囲よりも大きい場合には、該疎水性ゼオライトを含有する層の製膜性が劣る傾向になる為に、疎水性ゼオライトを多くは添加し難い傾向となり、更に表面積も減少する為、十分な消臭効果が得られない可能性が生じる。
【0054】
疎水性ゼオライトは、疎水性である為に、極性の高い水分子等は吸着し難く、逆に極性の低い、ガス成分、疎水性ガス、親油性ガス(溶剤系ガスも含む)との親和性が高く、これらを吸着し易い。すなわち、官能基を有していないガス成分を吸着する機能にも優れている。更に、ゼオライト表面に存在する、Ca、Na、K等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の効果によりゼオライト表面は塩基性を示し、酸性ガスを中和反応によって吸着し易い。
【0055】
(化学吸着剤担持無機多孔体)
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体とは、無機多孔体に化学吸着剤を担持させたものであり、特に官能基を有するガス成分を吸着する機能に優れている。
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体に用いられる化学吸着剤とは、臭気物質と化学反応を起こして結合する反応性官能基を有し、且つ、上記無機多孔体上に担持され得る化合物である。
より具体的には、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類またはアルコール類と結合する反応性を有する官能基を有する化合物であり、このような化合物としては、アミノ基を含有する化合物、水酸基を有する化合物等が挙げられる。
担持方法としては、公知または慣用の担持方法を適用することができ、例えば、下記で説明する化学吸着剤を含有する溶液を、無機多孔体に含浸させて、乾燥することにより、担持させることができる。
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体を用いることにより、化学吸着剤の単位質量当たりの吸着能を大幅に高めることができ、積層体中の化学吸着剤及び化学吸着剤担持無機多孔体の含有率を減らすことができる。また無機多孔体の孔部分に対する物理吸着特性も期待できる。
これらにより、高い接着強度やシール強度が得られ、接着層として求められる優れた接着性及び塗布性や製膜性を保持することができ、シーラント層として求められる優れたヒートシール性及び製膜性を保持することができる。
【0056】
化学吸着剤担持無機多孔体は、銅、亜鉛、銀、白金、鉄、コバルトなる群から選択される1種または2種以上の元素を含有することが好ましい。
また、化学吸着剤担持無機多孔体は、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、上記製膜性や、均一な分散性や混練特性等の観点から、粉体状が好ましい。
【0057】
化学吸着剤担持無機多孔体は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、本発明においては特に、平均粒子径0.01μm~15μmのものが好ましく、0.1μm~13μmのものがより好ましく、1μm~12μmのものが更に好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が上記範囲よりも小さい場合には、化学吸着剤担持無機多孔体の凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。
また、平均粒子径が上記範囲よりも大きい場合には上記製膜性が劣るために、化学吸着剤担持無機多孔体を多くは含有し難い傾向となり、十分な吸着効果が得られない可能性が生じる。
市販品の具体例としては、東亞合成(株)社製のNS-241、NS-231(アミノ基含有化合物担持無機多孔体)、(株)シナネンゼオミック社製のダッシュライトM(アミノ基含有化合物担持無機多孔体)、ケスモンNS-80E(水酸基含有化合物担持無機多孔体)等を本発明において好適なガス吸着剤として用いることができる。
【0058】
化学吸着剤担持無機多孔体は、化学吸着であることにより、一旦吸着した臭気物質は脱離され難く、効率的に臭気吸着を行うことができる。
さらに、臭気物質は化学吸着剤の特定の官能基と結合するため、臭気吸着能を低下させる種々の物質、例えば水蒸気等の影響を受けにくい。
【0059】
(アミノ基担持無機多孔体)
アミノ基担持無機多孔体とは、表面にアミノ基を担持した無機多孔体であり、アミノ基と化学反応する臭気物質を化学的に吸着することができる。
アミノ基担持無機多孔体は、例えばアミノ基を含有する化合物を用いて作製することができる。
アミノ基を含有する化合物としては、例えば、アルキルアミン類、環状アミン類、ポリアミン類、アルコールアミン類が挙げられる。具体的には、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、エタノールアミン、ピペラジン、ピペリジン等が挙げられる。
アミノ基担持無機多孔体は、アルデヒド類、ケトン類に対する吸着性能に非常に優れている。
アルデヒド類とケトン類は、シッフ反応によってアミノ基と化学反応して、吸着ざれる。
【0060】
(水酸基担持無機多孔体)
水酸基担持無機多孔体とは、表面に水酸基を担持した無機多孔体であり、水酸基と化学反応する臭気物質を化学的に吸着することができる。
水酸基担持無機多孔体は、例えば水酸基を含有する化合物を用いて作製することができる。
水酸基を含有する化合物としては、例えば、金属水酸化物が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等が挙げられる。
水酸基担持無機多孔体は、カルボン酸類、アミン類に対する吸着性能に非常に優れている。
【0061】
(化学吸着剤担持無機多孔体に用いられる無機多孔体)
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体に用いられる無機多孔体には、その表面に多数の細孔を有する任意の無機化合物を用いることができ、例えば、ゼオライト、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、活性炭、チタニア、燐酸カルシウム等の無機燐酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられ、特に、吸着対象物質の分子サイズやクラスターサイズに対して有効な孔サイズの多孔状態を有することや安全面の観点から、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ケイ酸塩を適用することが好ましい。
上記において、ゼオライトは、疎水性であることが好ましく、SiO2/Al23モル比が400/1~10000/1であることがより好ましい。
特に、吸着対象物質の分子サイズやクラスターサイズに対して有効な孔サイズの多孔状態を有することや安全面の観点から、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ケイ酸塩を適用することが好ましい。
【0062】
また、無機多孔体の外形形状は、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、化学吸着剤を担持して化学吸着剤担持無機多孔体とした後で、上記製膜性や均一な分散や混練特性等の観点から、粉体状が好ましい。
無機多孔体は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、上記、化学吸着剤担持無機多孔体の平均粒子径を達成するために、平均粒子径0.01μm~15μmのものが好ましく、0.1μm~13μmのものがより好ましく、1μm~12μmのものが更に好ましい。
【0063】
(化学吸着剤担持無機多孔体に用いられる化学吸着剤)
本発明において、化学吸着剤担持無機多孔体に用いられる化学吸着剤とは、溶出性の有機物や、紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理時に樹脂の分解等により発生するガス物質と化学反応を起こして結合する反応性官能基を有し、且つ、上記無機多孔体上に担持され得る化合物である。
より具体的には、紫外線照射や加熱を用いた殺菌処理時に生じる種々のアルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類等からなる群から選択される1種または2種以上と結合する反応性を有する官能基を有する化合物である。
【0064】
このような化合物としては、アミノ基を含有する化合物、例えばアルキルアミン、テトラメチレンジアミン等のポリアミン、エタノールアミン、ピペリジン、水産基等の塩基性官能基を有する化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸等のアミド基含有化合物等が挙げられる。
本発明において、特に優れた吸着効果を発揮する化学吸着剤としては、アミノ基または水産基を有する化合物、例えばポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
化学吸着剤の、吸着対象物質に対する吸着機構を、図4(a)~(b)の具体例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、吸着対象物質が酸系物質である場合は、図4(a)に示すように、化学吸着剤として、例えば水産基を有する化合物を無機多孔体上に担持してなる化学吸着剤担持無機多孔体を用いることができる。これにより、カルボキシル基と水産基とが化学反応を起こ
して結合し、吸着対象物質が吸着される。
また、吸着対象物質がアルデヒド類である場合は、図4(b)に示すように、化学吸着剤として、例えばアミノ基を有する化合物を無機多孔体上に担持してなる化学吸着剤担持無機多孔体を用いることができる。これにより、アルデヒド基とアミノ基とが化学反応を起こして結合し、吸着対象物質が吸着される。
【0066】
この際、化学吸着であることにより、一旦吸着した吸着対象物質は脱離することがなく、効率的にガス吸着を行うことができる。
さらに、吸着対象物質と水蒸気とが同一の吸着部位に吸着される物理吸着剤とは異なり、本発明における化学吸着剤は、吸着対象物質は化学吸着剤の特定の官能基と結合するため、ガス吸着能を低下させる種々の物質、例えば水蒸気等の影響を受けにくい。
【0067】
(ガス吸着剤のマスターバッチ化による分散性向上)
ガス吸着剤を他のガス吸着シーラント層の構成成分と、直接に混合して溶融混練してもよいが、ガス吸着剤を高濃度で熱可塑性樹脂と混合した後に溶融混練(メルトブレンド)してマスターバッチを作製しておき、これを、目標含有率に応じた比率で他のガス吸着シーラント層の構成成分と混合して溶融混練する、いわゆるマスターバッチ方式によって、ガス吸着剤のガス吸着シーラント層での分散性を高めることが好ましい。
マスターバッチ方式を採用することで、凝集が発生し易いガス吸着剤を用いた場合であっても、ガス吸着剤をガス吸着シーラント層中に、効率的且つ均質に分散させることができる。
【0068】
マスターバッチ中の、ガス吸着剤/熱可塑性樹脂の質量比は、特に制限は無いが、3/97~40/60の割合が好ましく、5/95~35/65の割合がより好ましい。
ガス吸着剤と熱可塑性樹脂とを混練する方法としては、公知または慣用の混練方法を適用することができる。
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂は、ガス吸着シーラント層全体のヒートシール性や製膜性やガス吸着性や低溶出性に大きな悪影響を与えない範囲内の種類および含有量で用いることができるが、ガス吸着シーラント層に含有されているヒートシール性樹脂Bや低溶出性樹脂やC6-LLDPE等の他樹脂と相溶性が高く、同等程度のヒートシール性を有する樹脂が好ましく、これらと同一であっても、異なっていてもよい。また、低溶出性ポリエチレンであってもよい。
【0069】
該熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、汎用のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されず、目的に応じた熱可塑性樹脂の種類を選ぶことができる。
【0070】
該熱可塑性樹脂のMFR(メルトフローレート)は、0.2g/10分以上、10g/10分以下が好ましい。この範囲のMFRであれば、ガス吸着剤との溶融混錬が容易であり、ガス吸着シーラント層中にガス吸着剤を分散させ易く、ガス吸着シーラント層の製膜性も維持され易い。
【0071】
易突刺しシーラント層とガス吸着シーラント層の両層に用いられる原料の詳細は下記のとおりである。
【0072】
[柔軟性付与樹脂]
本発明において柔軟性付与樹脂とは、混合することによって柔軟性を付与する樹脂である。例えば、易突刺しシーラント層および/またはガス吸着シーラント層に柔軟性を付与することができる。
柔軟性付与樹脂は、柔軟性付与樹脂自身が柔らかいものが好ましい。
また、柔軟性付与樹脂のビカット軟化点は、35℃以上、120℃以下が好ましく、40℃以上、115℃以下がより好ましい。ビカット軟化点が上記範囲よりも大きいと、積層体の使用温度において十分な柔軟性付与効果を示すことが困難な場合が多く、ビカット軟化点が上記範囲よりも小さいものは積層体の使用温度においてべたつき等を発生させ易い。
そして、柔軟性付与樹脂の密度は、0.85g/cm3以上、0.905g/cm3以下が好ましい。密度が上記範囲よりも大きいと、十分な柔軟性付与効果を示すことが困難な場合が多く、密度が上記範囲よりも小さいものを準備することは困難である。
また、柔軟性付与樹脂の溶出性TOC含有量が少なければ、積層体全体の溶出性TOC含有量を低減し、液体内容物のTOC濃度増加の抑制を付与することができる。
具体的な柔軟性付与樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーや、オレフィン系プラストマーが好ましく、上記の1種または2種を含有することができる。
【0073】
(オレフィン系熱可塑性エラストマー)
本発明において柔軟性付与樹脂として用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、オレフィンに由来するハードセグメントと、オレフィンに由来するソフトセグメントとを有する共重合体であり、各オレフィンモノマーに由来する繰り返し単位の配列状態によって、ランダム共重合型とブロック共重合型に分類される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
一般的に、ランダム共重合型の方がブロック共重合型よりも、相対的に柔らかく、低融点(軟化点)である。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン/ブテンランダム共重合体、エチレン/オクテンブロック共重合体や、各種の環状オレフィンコポリマー等が挙げられる。
【0074】
ランダム共重合型のオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、各オレフィンモノマーに由来する繰り返し単位が、ランダムに配列している場合のオレフィン系共重合体である。
例えばモノマーAとモノマーBからなるオレフィン系ランダム共重合体の主鎖構造は、-A-B-A-A-B-A-B-B-A-B-等で表される。
【0075】
ブロック共重合型のオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、1種のオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位が数個連続したブロックを形成した後に、他の1種のオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位が数連続したブロックを形成して配列している場合のオレフィン系共重合体である。
例えばモノマーAとモノマーBからなるオレフィン系ランダム共重合体の主鎖構造は、-A--A-A-A-B-B-B-B-B-A-A-A-等で表される。
【0076】
(柔軟性付与樹脂用のオレフィン系プラストマー)
本発明において柔軟性付与樹脂として用いられるオレフィン系プラストマーは、主鎖が1種のモノマーからなるが、側鎖の影響及び分子量分布が狭いことによって、弾性を示すと同時に熱可塑性を示すオレフィン系ポリマーである。
上記のようなオレフィン系プラストマーとしては、メタロセンプラストマーと呼ばれる、分子量分布が狭いメタロセン触媒を用いて合成したLLDPEが挙げられる。
【0077】
[汎用のヒートシール性樹脂]
易突刺しシーラント層および/またはガス吸着シーラント層に含有される汎用のヒートシール性樹脂としては、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、オレフィンとビニル化合物との共重合体、オレフィンと各種(メタ)アクリル化合物との共重合体、オレフィンと不飽和カルボン酸との共重合体、アイオノマー樹脂、オレフィンと各種(メタ)アクリ
ル化合物と各種不飽和カルボン酸との三元共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の中でも、ヒートシール性という点では、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体が好ましく、オレフィン系共重合体がより好ましい。
【0078】
(ポリオレフィン)
本発明において、ポリオレフィンとは、主鎖が1種または2種以上のモノマーに由来する繰り返し単位からなる樹脂である。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
(ビニル化合物)
ビニル化合物は、ビニル基を有する化合物であり、具体的には、酢酸ビニル、ビニルアルコール等が挙げられ、各種(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0080】
(不飽和カルボン酸)
不飽和カルボン酸は、不飽和炭素-炭素結合を有するカルボン酸類であり、具体的には、マレイン酸、フマル酸、およびそれらの無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
[摩擦抵抗低減剤]
【0082】
(スリップ剤)
本発明において、スリップ剤には、公知のスリップ剤を特に制限無く用いることができる。
例えば、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドやエチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、パラフィン等の高級炭化水素系ワックス、高級脂肪酸系ワックス、金属石鹸等が好ましく挙げられ、これら以外にも、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ樹脂、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン等が挙げられる。これらのスリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
上記の中でも、高級脂肪酸アミドを用いることが好ましく、高級脂肪酸アミドの中でも、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドを用いることがより好ましく、エルカ酸アミドを用いることが更に好ましい。
【0084】
(アンチブロッキング剤)
本発明において、アンチブロッキングには、公知のアンチブロッキング剤を特に制限無く用いることができる。
例えば、合成ゼオライト、天然ゼオライト、タルク、シリカ、珪藻土、カオリン、PMMA等が挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることがで
きる。
上記の中でも、合成ゼオライトとタルクとを組み合わせて用いることが好ましく、合成ゼオライト/タルクの質量比が、70/30~95/5の割合が好ましい。
【0085】
(摩擦抵抗低減剤のマスターバッチ化による分散性向上)
摩擦抵抗低減剤は他の構成成分と直接に混合して溶融混練してもよいが、摩擦抵抗低減剤を高濃度で熱可塑性樹脂と混合した後に溶融混練(メルトブレンド)してマスターバッチを作製しておき、これを、目標含有率に応じた比率で他の構成成分と混合して溶融混練する、いわゆるマスターバッチ方式によって、摩擦抵抗低減剤の分散性を高めることが好ましい。
マスターバッチ方式を採用することで、凝集が発生し易い摩擦抵抗低減剤を用いた場合であっても、摩擦抵抗低減剤を効率的且つ均質に分散させることができる。
該マスターバッチ化は、スリップ剤およびアンチブロッキング剤のそれぞれを個別にマスターバッチ化してもよく、両者を含有してマスターバッチ化してもよい。
【0086】
マスターバッチ中の、摩擦抵抗低減剤/熱可塑性樹脂の質量比は、10/90~70/30の割合が好ましい。
また、スリップ剤を個別にマスターバッチ化する場合には、スリップ剤/熱可塑性樹脂の質量比は、2/98~10/90の割合が好ましい。
そして、アンチブロッキング剤を個別にマスターバッチ化する場合には、アンチブロッキング剤/熱可塑性樹脂の質量比は、10/90~90/10の割合が好ましい。
【0087】
摩擦抵抗低減剤と熱可塑性樹脂とを混練する方法としては、公知または慣用の混練方法を適用することができる。
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂は、含有対象層全体のヒートシール性や製膜性、および該含有対象層独自の、例えば、易ニードル突刺し性、ガス吸着性、低溶出性等に大きな悪影響を与えない範囲内の種類および含有量で用いることができる。
また、該含有対象層に含有される他樹脂と相溶性が高く、同等程度のヒートシール性を有する樹脂が好ましく、これらと同一であっても、異なっていてもよい。
【0088】
該熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、汎用のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されず、目的に応じた熱可塑性樹脂の種類を選ぶことができる。
【0089】
<中間層>
本発明において、中間層は、積層体に種々の特性を付与する層であり、例えば、積層体に剛性を付与したり、ガスバリヤー性、遮光性、強度等を付与したりすることができる。
どのような特性を付与するかは、包装される内容物の種類や、物流において要求される機械的強度、耐薬品性、耐溶剤性、製造性等に応じて決定され、種々の材料が適用され得る。
中間層は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、熱可塑性樹脂をフィルム化した樹脂フィルムを用いることがより好ましく、例えば、公知又は市販のガスバリヤー性、遮光性、高強度を有するフィルムを用いることができる。フィルムは、未延伸であってもよく、1軸延伸あるいは2軸延伸されていてもよい。アルミニウム箔等の金属箔等を用いることもできる。
【0090】
積層体のガスバリヤー性を高めたい場合には、シリカ蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム箔を用いることが好ましく、上記樹脂フィルムの少なくとも片面上にシリカ蒸着膜や酸化アルミニウム蒸着膜等を形成して作製することができる。
積層体の突刺し強度を高めたい場合には、高強度を有するフィルムを用いることができ、具体的には、PET、ポリブチレンテレフタレート、シリカ蒸着膜や酸化アルミニウム蒸着膜等蒸着フィルム等を用いることが好ましい。
積層体の遮光性を高めたい場合には、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0091】
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド6/66等のポリアミド(ナイロン)系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂を含むことができる。
中間層は、上記から選択される1種または2種以上の樹脂を含有することが好ましく、1層で構成されていても、同一組成または異なる組成の2層以上で構成されていてもよい。
【0092】
本発明における中間層には、積層体に適度な剛性を付与する中間層を含むことが好ましい。
剛性を付与する中間層を得る為に熱可塑性樹脂を含むフィルムとしては、上記の熱可塑性樹脂を含むフィルムの中でも、ポリアミド系樹脂を含む樹脂フィルムが好ましく、ポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6/66共重合体および/またはポリアミド6/66/12共重合体を含む樹脂フィルムがより好ましい。
【0093】
また中間層は、積層体の加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々の改質用樹脂やプラスチック配合剤や添加剤等を含有することができる。この場合、これら添加剤を中間層に、極微量~数10質量%まで、その目的に応じて任意に含有させればよい。本発明においては、一般的な添加剤としては、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸着剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を任意に含有させることができる。
本発明において、上記中間層は、押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて単層、又は多層製膜したものを用いることができる。
【0094】
また、中間層の厚みは、中間層の機能や包装用途に応じて、当業者が適宜に決定することができるが、好ましくは6μm以上、150μm以下、より好ましくは9μm以上、130μm以下である。
特に、ポリアミド系樹脂を含む樹脂フィルムを用いた剛性を付与する層の場合には、10μm以上、50μm以下が好ましい。
【0095】
中間層の表面は、必要ならば、積層を行う前に予め各種の表面処理を施しておくことが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、オゾン処理等が挙げられる。
【0096】
<接着剤層>
本発明では、液体内容物包装用の積層体を構成する各層の層間および各層内の層間に、
接着剤層を設けて積層することも可能である。
また、接着剤層を形成する前に、接着性を向上する為に、接着対象層表面に予めアンカーコート層を形成しておいてもよい。
【0097】
接着剤層を形成する接着剤(接着剤組成物)は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等であってよく、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
またこのような接着剤としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。
インフレーション法による共押出し及び製膜で積層体を形成する場合には、上記の中でも、ポリオレフィン系接着剤が好ましい。
【0098】
本発明の一態様において、接着剤層は、EC(エクストルージョンコート)用接着剤、ドライラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等の何れからなる層であってよい。
EC用接着剤を用いる場合は、特に限定されないが、例えば、まず、接着剤を加熱溶融して、Tダイス等で必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、接着対象層上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、接着剤層の形成と接着対象層への接着と積層を同時に行う。
【0099】
別態様において、接着剤層は、サンドラミネーションにより形成されてもよい。この場合、接着剤層は、加熱溶融させて押出機で適用可能な任意の樹脂を用いることができる。具体的には、上記のヒートシール性を有する熱可塑性樹脂として挙げた樹脂を好ましく用いることができる。
【0100】
ドライラミネート用接着剤を用いる場合は、溶媒へ分散または溶解した接着剤を一方のフィルム上に塗布し乾燥させて、もう一方のフィルムを重ねて積層した後に、30~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて接着し、積層することができる。
【0101】
ノンソルベントラミネート用接着剤を用いる場合は、溶媒へ分散または溶解せずに接着剤自身を接着対象層上に塗布し乾燥させて、もう一方の層を形成するフィルムを重ねて積層した後に、30~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて積層する。
【0102】
ドライラミネート用接着剤またはノンソルベントラミネート用接着剤は、例えばロールコート、グラビアロールコート、キスコート等でコーティングして用いることができ、そのコーティング量は、0.1~10g/m2(乾燥状態)が望ましい。該コーティング量を上記範囲とすることで、良好な接着性が得られる。
【0103】
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、任意のアンカーコート剤から形成することができる。
アンカーコート剤としては、例えば、有機チタン系、イソシアネート(ウレタン系)系、ポリエチレンイミン系、酸変性ポリエチレン系、ポリブタジエン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のアンカーコート剤を用いることができる。
【0104】
<<液体内容物包装用ガス吸着包装材料>>
本発明の液体内容物包装用ガス吸着包装材料は、本発明の液体内容物包装用の積層体から作製された包装材料であり、液体内容物包装用の積層体と同一物であってもよく、必要に応じて、種々の機能層や、印刷層等をさらに含むこともできる。
また、本発明の液体内容物包装用ガス吸着包装材料に、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施すこともできる。
本発明の液体内容物包装用ガス吸着包装材料の具体例としては、ウォーターサーバー用包装材料、バッグインボックス用包装材料が挙げられる。
【0105】
[液体内容物包装用の積層体または液体内容物包装用ガス吸着包装材料の作製方法]
例えば、易突刺しシーラント層/接着剤層/中間層/接着剤層/ガス吸着シーラント層という層構成を有する液体内容物包装用の積層体(包装材料)を作製する場合について、一例を説明する。
下記に示した作製方法は1例であって、本発明を限定するものではない。
先ず、易突刺しシーラント層、接着剤層、中間層、接着剤層、ガス吸着シーラント層の各々を形成する為の樹脂組成物を準備する。
そして、インフレーション製膜により、易突刺しシーラント層、接着剤層、中間層、接着剤層、ガス吸着シーラント層の5層を共押出して積層し、液体内容物包装用の積層体を作製する。
このようにして、液体内容物包装用の積層体または液体内容物用包装材料を作製することができる。
【0106】
上記における各層の積層は、通常の包装材料を製造するときに使用するラミネートする方法、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。
上記で得た液体内容物包装用の積層体または液体内容物包装用ガス吸着包装材料には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
【0107】
<<液体内容物包装体>>
本発明の液体内容物包装体は、本発明の液体内容物用包装材料を用いて、液体内容物を包装して作製された包装体である。
本発明の液体内容物包装体の具体例としては、ウォーターサーバー包装体、バッグインボックス包装体が挙げられる。
【0108】
[液体内容物包装体の作製方法]
液体内容物包装体の作製方法の一例として、液体内容物用包装材料を製袋してなる包装
袋を作製する方法を挙げる。
まず、液体内容物用包装材料のガス吸着シーラント層が対向するように、液体内容物用包装材料を折り曲げるかまたは2枚を重ね合せ、その周辺端部をヒートシールすることにより作製することができる。
包装袋の形態としては、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等が挙げられる。
ヒートシールの方法としては、例えばバーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知方法を適用することができる。
【0109】
<<液体内容物>>
本発明において、液体内容物包装体で包装される液体内容物の具体例としては、飲料水、ジュース類、点滴用輸液、醤油、ソース、等の調味液体、つゆ、はちみつ、タレ、ドレッシング等の液体全般が挙げられる。
【実施例
【0110】
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
[易突刺しポリエチレン]
・易突刺しポリエチレン1:宇部興産(株)社製、UMERIT 720FT。C4-LLDPE、密度0.918g/cm3、MFR4g/10分。
【0111】
[低溶出性ポリエチレン]
・低溶出性ポリエチレン1:(株)プライムポリマー社製、ウルトゼックス1520L。C6-LLDPE、密度0.916g/cm3、MFR2.3g/10分。50μm厚フィルム中の溶出性TOCの濃度96ppm。
・低溶出性ポリエチレン2:(株)プライムポリマー社製、ウルトゼックス3520L。C6-LLDPE、密度0.931g/cm3、MFR2.1g/10分。50μm厚フィルム中の溶出性TOCの濃度42ppm。
・低溶出性ポリエチレン3:(株)プライムポリマー社製、ネオゼックス3510F。C4-LLDPE、密度0.933g/cm3、MFR1.6g/10分。50μm厚フィルム中の溶出性TOCの濃度52ppm。
・低溶出性ポリエチレン4:宇部丸善ポリエチレン(株)社製、ユメリット125NF、HAO-LLDPE(C6、C8等の炭素数6以上のハイヤーαオレフィンをコモノマーの共重合LLDPE)、密度0.924g/cm3、MFR2.2g/10分。50μm厚フィルム中の溶出性TOCの濃度92ppm。
・低溶出性ポリエチレン5:日本ポリエチレン社製、カーネルKF283。オレフィン系プラストマー、密度0.921g/cm3、MFR2.5g/10分。50μm厚フィルム中の溶出性TOCの濃度98ppm。
【0112】
[汎用ポリエチレン]
・汎用ポリエチレン1:日本ポリエチレン(株)社製、ノバテックLC600A。LDPE。密度が0.918g/cm3、MFR7g/10分。
・汎用ポリエチレン2:(株)プライムポリマー社製エボリューSP2020。C6-LLDPE、密度0.916g/cm3、MFR2.1g/10分。50μm厚フィルム中の溶出性TOCの濃度263ppm。
【0113】
[ガス吸着剤]
・疎水性ゼオライト1:水澤化学工業(株)製疎水性ゼオライト、ミズカシーブスEX-122。SiO2/Al23モル比=32/1、平均粒子径=2.5~5.5μm。
・疎水性ゼオライト2:水澤化学工業(株)社製疎水性ゼオライト、シルトンMT400
。SiO2/Al23モル比=400/1、平均粒子径=5~7μm。
・疎水性ゼオライト3:水澤化学工業(株)製疎水性ゼオライト、シルトンMT-8000。SiO2/Al23モル比=8000/1、平均粒子径=0.8μm。
・化学吸着剤担持無機多孔体1:東亞合成(株)社製、ケスモンNS-241。アミノ基含有化合物担持無機多孔体。平均粒子径3.5μm。
・化学吸着剤担持無機多孔体2:東亞合成(株)社製、ケスモンNS-80E。水酸基含有化合物担持無機多孔体。平均粒子径2μm。
【0114】
[柔軟性付与樹脂]
・柔軟性付与樹脂1:三井化学(株)社製、タフマーA-4085S。エチレン/1-ブテンランダム共重合体、密度0.885g/cm3、MFR3.6g/10分、ビカット軟化点55℃。
・柔軟性付与樹脂2:ダウ・ケミカル(株)社製、INFUSE9100。エチレン/オクテンブロック共重合体、密度0.877g/cm3、MFR1g/10分、ビカット軟化点114℃。
・柔軟性付与樹脂3:日本ポリエチレン(株)社製、カーネルKS340T。オレフィン系プラストマー(メタロセン系プラストマー)、密度0.880g/cm3、MFR3.5g/cm3、ビカット軟化点44℃。
【0115】
[アンチブロッキング剤]
・アンチブロッキング剤マスターバッチ1:東京インキ(株)社製、PEX-ABT-16。合成ゼオライト・タルク添加マスターバッチ。合成ゼオライト45質量%、タルク5質量%、低密度ポリエチレン50質量%を含有。
【0116】
[スリップ剤]
・スリップ剤マスターバッチ1:三井住友ポリオレフィン(株)社製、EMB-10。スリップ剤のマスターバッチ。エルカ酸アミド4質量%、LDPE96質量%含有。
【0117】
[接着剤]
・接着剤1:三井化学(株)社製アドマーNF557。ポリオレフィン系接着剤。
[中間層用樹脂]
・ナイロン樹脂1:宇部興産(株)社製、UBE5033B。ポリアミド6/66共重合体。
・ナイロン樹脂2:宇部興産(株)社製、UBE6434。ポリアミド6/66/12共重合体。
【0118】
[マスターバッチの調整]
ガス吸着シーラント層に用いるマスターバッチは下記のように調整して作製した。
(マスターバッチ1の調整)
汎用ポリエチレン1と、疎水性ゼオライト1とを下記の割合でメルトブレンドし、マスターバッチ1(MB1)を得た。
汎用ポリエチレン1 90質量部
疎水性ゼオライト1 10質量部
【0119】
[マスターバッチ2~9の調整]
表1の配合に従って、マスターバッチ1と同様に、メルトブレンドし、マスターバッチ2~9(MB2~9)得た。
【0120】
【表1】
【0121】
[易突刺しシーラント層樹脂組成物の調整]
表2に示された配合で各原料をドライブレンドすることによって易突刺しシーラント層樹脂組成物1~8を得た。
【0122】
【表2】
【0123】
[ガス吸着シーラント層樹脂組成物の調整]
表3と表4とに示された配合で各原料をドライブレンドすることによって、ガス吸着シーラント層樹脂組成物1~18を得た。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
<実施例1>
上記で得た易突刺しシーラント層樹脂組成物1と、ナイロン樹脂1と、接着剤1と、ガス吸着シーラント層樹脂組成物1とを用いて、インフレーション法により、下記層構成の積層体を得た。
そして、得られた積層体を包装材料として用いて、各種評価を実施した。
(積層体層構成)
易突刺しシーラント層樹脂組成物1(30μm)/接着剤1(5μm)/ナイロン樹脂1(20μm)/接着剤1(5μm)/ガス吸着シーラント層樹脂組成物1(55μm)(計115μm)
【0127】
<実施例2~23、比較例1~4>
表5~8に示された原料を用いて、実施例1と同様に操作して、積層体を得て、同様に評価した。
そして、積層体の特徴及び評価結果を表9~14に示した。
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
【表9】
【0133】
【表10】
【0134】
【表11】
【0135】
【表12】
【0136】
【表13】
【0137】
【表14】
【0138】
<評価方法>
[製膜性]
積層体の外観を観察し、官能的に評価した。評価基準は以下の通りである。
○:積層体に皺やぶつが生じることなく製膜が可能。
×:積層体に皺やぶつが多数生じ、製膜が困難。
【0139】
[ヒートシール性]
積層体を5cm×10cmに切り分け、2枚をガス吸着シーラント層同士が対向するように重ねたものと、2枚を易突刺しシーラント層とガス吸着シーラント層とが対向するように重ねたものとを準備し、各々をヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、1cm×10cmの領域をヒートシールした(端部はヒートシールされずに接着しておらず、二股に分かれている状態)。
そして、各々を、15mm幅で短冊状に切り、二股に分かれている各端部を引張試験機に装着して引張強度(N/15mm)を測定して、合否を判定した。
ヒートシール条件
温度:160℃
圧力:1kgf/cm2
時間:1秒
引張強度試験条件
試験速度:300mm/分
荷重レンジ:50N
合否結果
○:30N/15mm以上であり、合格。
×:30N/15mm未満であり、不合格。
【0140】
[易突刺しシーラント層の静止摩擦係数]
図5に記載のSUS製治具(滑り片:加重200g)を、図6に記載のように、カットした積層体のにおい吸着シーラント層側の面上に乗せて、積層体の端を上に折って前記治具の上部で両面テープにより積層体を固定した。評価は、常温常湿環境下(23℃、50%RH)で実施した。
そして、図7に記載のように、積層体を貼り付けた治具を一定速度(100mm/min)で引っ張り、フィルム表面-金属板間の摩擦力を測定し、静止摩擦係数を検出した。
測定は個々に5回行い、その平均値を求めた。
詳細条件は下記の通り。
使用機器:東洋精機 Friction Tester TR-2
【0141】
[耐ピンホール性]
積層体をA4サイズ(30cm×21cm)に断裁し、ゲルボフレックステスター(テスター産業(株)社製、BE-1005)で屈曲後に、積層体に発生したピンホールの数をカウントした。
温度:23℃
ゲルボ屈曲回数:5000回
【0142】
[突刺し強度]
積層体から120mm×80mmの短冊状試験片を作製して、JIS Z 1707 1997に準拠した方法により、突刺し強度を測定した。7.5N以下を合格とした。
【0143】
[充填機適性]
積層体の巻取り原反を充填機(オリヒロ社、ONPACK-7916システム)に通して製袋加工状態を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:フィルムの滑り性が良好でありヒートシール部のずれが発生せず、製袋が可能。
×:フィルムの滑りが不十分でありヒートシール部のずれが発生し、製袋が困難。
【0144】
[耐落体性]
積層体を用いてパウチ(350mm×240mm)を作製した。そして、4.7Lの水を充填し、1mの高さから垂直落下を5回繰り返した後に、破袋による液漏れの有無を確認した。
○:破袋による液漏れ無し。
×:破袋による液漏れ有り。
【0145】
[ガス吸着効果]
(充填水のTOC増加濃度)
積層体を用いてパウチ(15cm×44cm)を作製した。パウチの内面には予めUV照射殺菌処理を施した。
そして、パウチに65℃の水(純正化学(株)社製高速液体クロマトグラフィー用蒸留水)1000gを充填して包装体液体充填物を作製し、35℃、2週間保管後に、(株)島津製作所社製TOC-L全有機体炭素計により充填水のTOC濃度を測定した。
次いで、充填前の水についても同様にTOC濃度を測定し、各包装体におけるTOC増加濃度を下記式から求めた。
TOC増加濃度=保管後の充填水TOC濃度-充填前の水のTOC濃度
充填前の水のTOC濃度:0.02ppm
UV照射殺菌処理条件
UV波長:253.7nm
照射時間:10秒
温度:25℃
【0146】
(充填水の臭味変化)
積層体を用いて、パウチ(13cm×17cm)を作製した。パウチの内面には予めUV照射殺菌・滅菌処理を施した。UV照射殺菌処理は、TOC増加濃度と同条件で実施した。
そして、得られたパウチに、65℃の水(サントリー(株)社製、日本の天然水)100gをホットパック充填して包装体液体充填物を作製し、10℃、1週間保管後に官能評価を実施した。
官能評価の指標は下記の通り。官能評価実験の参加者は5人であり、平均値を算出して評価結果とした。
1:臭味がきつい
2:臭味が多少軽減している
3:臭味が大幅に軽減している
4:充填前の天然水と同等
【0147】
<結果まとめ>
本発明の液体内容物包装用の積層体である全実施例の積層体は、良好な製膜性、充填機適性、耐落体性、ヒートシール性、易ニードル突刺し性、弾性率、耐ピンホール性、易突刺しシーラント層の静止摩擦係数、ガス吸着効果(充填水のTOC濃度、充填水の臭味変化)もバランスを示した。
しかしながら、ガス吸着シーラント層に低溶出性ポリエチレンを含有していない比較例1、2、3の積層体は、TOC溶出濃度が大きく、臭味変化が悪く、劣ったガス吸着効果を示した。
また、ガス吸着シーラント層における低溶出性ポリエチレンの含有量が低過ぎて、ガス吸着剤の含有量が多すぎる比較例4は、ガス吸着効果は良好であるが、製膜性が劣った。
更に、易突刺しシーラント層が易突刺し性ポリエチレンを含有しない全比較例は全実施例よりも高い突刺し強度を示し、易ニードル突刺し性が劣った。
【符号の説明】
【0148】
1 液体内容物包装用の積層体
2 易突刺しシーラント層
3 中間層
4 ガス吸着シーラント層
5 接着剤層
10 化学吸着剤担持無機多孔体
12 液体内容物包装用の積層体(易突刺しシーラント層が外側)
13 錘
14 金属板(鏡面真鍮板)
15 ヒーター
16 滑車
17 フォースゲージ
18 縦型電動計測スタンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7