(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】加飾フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240806BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240806BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240806BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240806BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240806BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240806BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/023
B32B15/08 H
B32B27/20 A
B05D1/36 Z
B05D5/06 B
B05D5/06 G
B05D7/00 A
B05D7/24 303A
(21)【出願番号】P 2020063895
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】氏平 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】森脇 幹文
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘次朗
(72)【発明者】
【氏名】中井 正規
(72)【発明者】
【氏名】市原 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 高廣
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-000905(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094680(WO,A1)
【文献】特開平05-076833(JP,A)
【文献】特開2020-049722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に光輝顔料を含む反射層を備えた加飾フィルムであって、
前記反射層は、前記基材に近い第1の反射層と前記第1の反射層よりも前記基材から離れた第2の反射層を有し、
前記基材は、金属又はプラスチックからなるフィルム、又は金属とプラスチックを積層した複合フィルムであり、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂からなる塗料基材に光輝顔料を混合した反射塗料であり、
前記第1の反射層の反射率が前記第2の反射層の反射率よりも大きく、
前記第1の反射層は第1の塗料基材と第1の光輝顔料とを含み、
前記第2の反射層は第2の塗料基材と第2の光輝顔料とを含み、
前記第1の光輝顔料の屈折率は前記第2の光輝顔料の屈折率よりも大きく、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率はそれぞれ、
前記塗料基材及び前記光輝顔料の屈折率による前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率をそれぞれRとし、前記第1の塗料基材及び前記第2の塗料基材の屈折率をそれぞれn
1とし、前記第1の光輝顔料及び前記第2の光輝顔料の屈折率をそれぞれn
2とすると、
R={(n
1-n
2)/(n
1+n
2)}
2、
によって算出される反射率である
ことを特徴とする加飾フィルム。
【請求項2】
前記反射層の前記基材から離れた表面に着色剤を含む着色層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
フィルム基材の表面に、光輝顔料を含む反射塗料を塗布して反射層を形成する工程と、
前記フィルム基材から離れた前記反射層の表面に、着色剤を含む着色塗料を塗布して着色層を形成する工程を含み、
前記反射層を形成する工程は、前記フィルム基材の表面に第1の塗料を塗布して第1の反射層を形成する工程と、前記第1の反射層の上に第2の塗料を塗布して第2の反射層を形成する工程とを含み、
前記フィルム基材は、金属又はプラスチックからなるフィルム、又は金属とプラスチックを積層した複合フィルムであり、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂からなる塗料基材に光輝顔料を混合した反射塗料であり、
前記第1の反射層の反射率が前記第2の反射層の反射率よりも大きく、
前記第1の反射層は第1の塗料基材と第1の光輝顔料とを含み、
前記第2の反射層は第2の塗料基材と第2の光輝顔料とを含み、
前記第1の光輝顔料の屈折率は前記第2の光輝顔料の屈折率よりも大きく、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率はそれぞれ、
前記塗料基材及び前記光輝顔料の屈折率による前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率をそれぞれRとし、前記第1の塗料基材及び前記第2の塗料基材の屈折率をそれぞれn
1とし、前記第1の光輝顔料及び前記第2の光輝顔料の屈折率をそれぞれn
2とすると、
R={(n
1-n
2)/(n
1+n
2)}
2、
によって算出される反射率である
ことを特徴とする加飾フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディ等に貼り付けられる加飾フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属または樹脂の表面にフィルムを貼り付けて複合材料を製造する方法が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
工業製品、特に自動車において、魅力的なボディカラーを車体に与えるため、光を反射する顔料を塗料と混ぜて、その塗料を用いて車体を塗装することがある。フィルムを貼り付けることにより車体にボディカラーを与える場合も、同様に、アクリルなどのフィルムの材料に顔料を混ぜて、光沢のある加飾フィルムが形成される。一方、車体などの基材にフィルムを貼り付けるとき、フィルムは、表面に生じ得る皺を押さえるために固定される。このとき、固定されているフィルムの近傍において、フィルムは引き伸ばされるように力を与えられるため、フィルムに含まれる顔料の隙間が広がり、透過する光が増え、光が反射され難くなることがある。したがって、光の反射率がフィルムの場所に応じて変化するようになるため、フィルムに色むらや装飾むらが生じ得る。このフィルムを車体に貼り付ける場合、所望のボディカラーが得られない虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明は、曲面の多い自動車のボディ等に貼り付けた場合でも、光の反射率が常にほぼ一様になる加飾フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の実施形態に係る加飾フィルムは、基材の表面に光輝顔料を含む反射層を備えた加飾フィルムであって、
前記反射層は、前記基材に近い第1の反射層と前記第1の反射層よりも前記基材から離れた第2の反射層を有し、
前記基材は、金属又はプラスチックからなるフィルム、又は金属とプラスチックを積層した複合フィルムであり、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂からなる塗料基材に光輝顔料を混合した反射塗料であり、
前記第1の反射層の反射率が前記第2の反射層の反射率よりも大きく、
前記第1の反射層は第1の塗料基材と第1の光輝顔料とを含み、
前記第2の反射層は第2の塗料基材と第2の光輝顔料とを含み、
前記第1の光輝顔料の屈折率は前記第2の光輝顔料の屈折率よりも大きく、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率はそれぞれ、
前記塗料基材及び前記光輝顔料の屈折率による前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率をそれぞれRとし、前記第1の塗料基材及び前記第2の塗料基材の屈折率をそれぞれn1とし、前記第1の光輝顔料及び前記第2の光輝顔料の屈折率をそれぞれn2とすると、
R={(n1-n2)/(n1+n2)}2、
によって算出される反射率である、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る加飾フィルムの製造方法は、
フィルム基材の表面に、光輝顔料を含む反射塗料を塗布して反射層を形成する工程と、
前記フィルム基材から離れた前記反射層の表面に、着色剤を含む着色塗料を塗布して着色層を形成する工程を含み、
前記反射層を形成する工程は、前記フィルム基材の表面に第1の塗料を塗布して第1の反射層を形成する工程と、前記第1の反射層の上に第2の塗料を塗布して第2の反射層を形成する工程とを含み、
前記フィルム基材は、金属又はプラスチックからなるフィルム、又は金属とプラスチックを積層した複合フィルムであり、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂からなる塗料基材に光輝顔料を混合した反射塗料であり、
前記第1の反射層の反射率が前記第2の反射層の反射率よりも大きく、
前記第1の反射層は第1の塗料基材と第1の光輝顔料とを含み、
前記第2の反射層は第2の塗料基材と第2の光輝顔料とを含み、
前記第1の光輝顔料の屈折率は前記第2の光輝顔料の屈折率よりも大きく、
前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率はそれぞれ、
前記塗料基材及び前記光輝顔料の屈折率による前記第1の反射層及び前記第2の反射層の反射率をそれぞれRとし、前記第1の塗料基材及び前記第2の塗料基材の屈折率をそれぞれn1とし、前記第1の光輝顔料及び前記第2の光輝顔料の屈折率をそれぞれn2とすると、
R={(n1-n2)/(n1+n2)}2、
によって算出される反射率である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
これらの実施形態によれば、基材に近い第1の反射層の反射率が第2の反射層の反射率よりも大きいことにより、加飾フィルムが覆う面の形状に関わらず(つまり、加飾フィルムが覆う面が曲面又は屈曲面であっても)、被覆面は一様な反射率を発揮する。したがって、加飾フィルムを例えば曲面の多い自動車のボディ等に貼り付けた場合、色むらや装飾むらの無い面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る加飾フィルム製造装置の概略構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る加飾フィルムの製造方法と、その方法で製造される加飾フィルムの実施形態を説明する。なお、以下の図面を参照した説明では、図面の左右方向をx方向、x方向に直交する図面の表裏方向をy方向、x方向とy方向に直交する図面の上下方向をz方向という。また、図示する装置の大きさやそれを構成する各部分の大きさと形状は誇張して示されており、実際のものとは異なる。
【0013】
図1は、加飾フィルム1を製造する加飾フィルム製造装置(以下、「フィルム製造装置」という。)100の概略構成を示す。以下に説明する実施形態において、加飾フィルム1は、
図2に示すように、薄いシート状の基材12、該基材12の一方の表面(上面)に配置される反射層14、該反射層14の表面(上面)に配置される着色層16、及び該着色層16の表面(上面)に配置されるコーティング層18を含む。
【0014】
反射層14は複数の層で構成される。実施形態では、反射層14は、反射層14の下に位置する基材12に接する下部反射層(第1の反射層)14aと、反射層14の上に位置する着色層16に接する上部反射層(第2の反射層)14bを有する。
【0015】
図1に戻り、フィルム製造装置(塗布装置)100は、製造される加飾フィルム1を支持する下部構造102と、製造される加飾フィルム1の基材12の表面に反射層14、着色層16、及びコーティング層18を積層(塗布)する上部構造104を有する。実施形態において、フィルム製造装置100はオフセット式塗布装置である。ただし、塗布装置は、これに限らず、グラビア印刷装置やスクリーン印刷装置等の各種印刷装置と同様の構成を有する各種塗布装置が利用可能である。
【0016】
下部構造102は、y方向に伸びる中心軸を中心に回転可能な略円柱形状の第1~第4のバックアップローラ110A,110B,110C,110Dを有する。第1~第4のバックアップローラ110A,110B,110C,110Dは、図の左側から右側に順番に配置されている。第1~第4のバックアップローラ110A,110B,110C,110Dは図面上近接して配置されているが、それらの間隔は任意に決めることができる。
【0017】
上部構造104は、y方向に伸びる中心軸を中心に回転可能な略円柱形状の第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dを有する。第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dは、それぞれ第1~第4のバックアップローラ110A,110B,110C,110Dの上に平行に配置されている。図示しないが、第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dの近傍にはそれぞれ、第1~第4の塗料供給ローラが配置されている。第1~第4のバックアップローラ110A,110B,110C,110D、第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112D、及び第1~第4の塗料供給ローラは、モータを含む駆動系120に駆動連結されており、予め決められた速度で図示する方向(バックアップローラと塗料供給ローラは時計周り方向、塗布ローラは反時計周り方向)に回転するように構成されている。
【0018】
これら第1~第4のバックアップローラ110A,110B,110C,110Dはそれぞれ、対応する第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dと第1~第4の塗料供給ローラと組み合わされて、下部反射層14a,上部反射層14b,着色層16、及びコーティング層18を印刷する第1~第4の塗装工程114A,114B,114C,114Dを構成している。
【0019】
図2に示すように、一般的に、下部反射層14a,上部反射層14b,着色層16、及びコーティング層18の厚さは異なる。そのため、第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dとこれらに対応する第1~第4の塗料供給ローラとの接触圧又は間隔(ギャップ)、及び、第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dとこれらに対応する第1~第4のバックアップローラ110A,110B,110C,110Dとの間隔(ギャップ)は、印刷される層の厚さや印刷する材料の性質(例えば、粘度)に応じて適宜決められる。
【0020】
基材12、及びそれに印刷される下部反射層14a、上部反射層14b、着色層16、コーティング層18の材料について説明する。
【0021】
基材12は、図示するように、x方向とy方向に所定の長さを有する平坦なフィルムである。基材12は、金属(例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、チタン、白金)からなるフィルムであってもよいし、プラスチック[例えば、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンフタレート(GF-PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)]、又はその他のエンジニアリングプラスチック[超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、熱可塑性ポリエステルエラストマ(TPEE)]からなるフィルムであってもよいし、金属とプラスチックを積層した複合フィルムであってもよい。
【0022】
反射層14を構成する塗料は、アクリル樹脂又はウレタン樹脂からなる塗料基材に光輝顔料を混合した反射塗料である。実施形態では、この反射層14の内、下部反射層14aを構成する塗料(以下、適宜「第1の塗料」という。)に含まれる光輝顔料20aは、限定的ではないが、例えば、酸化アルミニウムフレークを基材とし、フレーク表面にシリカ層を被覆し、さらに金属粒子をメッキしたメタリック顔料が使われる。この光輝顔料20aの屈折率は約1.76である。一方、上部反射層14bを構成する塗料(以下、適宜「第2の塗料」という。)に含まれる光輝顔料20bは、同様に限定的ではないが、例えば、アルミニウムフレークを基材とし、フレーク表面にシリカ層を被覆し、さらに金属粒子をメッキしたメタリック顔料が使われる。この光輝顔料20bの屈折率は約1.48である。また、下部反射層14aの塗料に含まれる光輝顔料20aと、上部反射層14bの塗料に含まれる光輝顔料20bは、それぞれ、約10~20マイクロメートルの平均粒径を有する。なお、光輝顔料は薄い板状フレームを基材としており、顔料の平均粒径はフレークの長手方向のサイズである。
【0023】
下部反射層14aの反射率と上部反射層14bの反射率について説明する。それぞれの反射層の反射率は以下の数式1から求まる。この数式1から求まる値Rは、それぞれの反射層の反射率を示す。また、変数n1は、第1の塗料及び第2の塗料の屈折率であり、実施形態における塗料基材がアクリル樹脂又はウレタンであるため、約1.49である。一方、変数n2は、光輝顔料20a,20bの上述の屈折率である。
【0024】
【0025】
この数式1から、下部反射層14aの反射率は約6.90×10-3と求まる。一方、上部反射層14bの反射率は約1.13×10-5と求まる。したがって、下部反射層14aの反射率は上部反射層14bの反射率よりも大きい。
【0026】
このように構成された実施形態の加飾フィルム1によれば、外部から加飾フィルム1に照らされる光は、主にコーティング層18から入射する。この光は、上部反射層14bの塗料を透過することで減衰した後、下部反射層14aの光輝顔料20aで反射される。結果として、下部反射層14aの光輝顔料20aで反射される光は、上部反射層14bの光輝顔料20bで反射される光に比べて減衰する。しかし、実施形態の加飾フィルム1では、下部反射層14aの反射率が上部反射層14bの反射率よりも大きく設定されている。したがって、上部反射層14bを透過した光は上部反射層14bよりも反射率が大きい下部反射層14aで反射されるため、上部反射層14bで反射される光の輝度(明るさ)と下部反射層14aで反射される光の輝度が同じ又はほぼ同じになり、全体として色むらの無い発色を実現できる。
【0027】
着色層16は、所望の色の着色剤を含む塗料(以下、適宜「第3の塗料」という。)である。例えば、加飾フィルムが自動車のボディ表面の外装材として使用される場合、塗料にはウレタン塗料、アクリル塗料が利用される。
【0028】
コーティング層18は、例えばガラスを材料とする透明又は半透明の塗料(以下、適宜「第4の塗料」という。)である。
【0029】
上述のフィルム製造装置を用いた加飾フィルムの製造を説明する。
【0030】
図1に示す状態で、駆動系120の駆動に基づいて、バックアップローラ110A,110B,110C,110D、塗布ローラ112A,112B,112C,112D、及び塗料供給ローラがそれぞれ所定の方向に回転する。これにより、第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dの外周面にはそれぞれ、隣接する第1~第4の塗料供給ローラから第1~第4の塗料が供給され、所望の厚さの塗膜が形成される。また、第1~第4の塗布ローラ112A,112B,112C,112Dの塗膜は、バックアップローラ110A,110B,110C,110Dと塗布ローラ112A,112B,112C,112Dとの間を図の左側から右側に向かって搬送される基材12に順次転写され、これにより、基材12の表面には所定の厚さの下部反射層14a、上部反射層14b、着色層16、及びコーティング層18が順次積層され、
図2に示す層構造を有する加飾フィルム1が製造される。
【0031】
このように製造された加飾フィルム1を、例えば凸状曲面又は凸状屈曲面を有する車体表面上に、その面方向に力を加えながら貼り付けた場合、凸状曲面又は凸状屈曲面を覆うフィルム部分では、上部反射層14bが下部反射層14aよりも大きく伸びる。したがって、凸状曲面又は凸状屈曲面を覆うフィルム部分では、特に上部反射層14bにおける光輝顔料20bの間隔が広がるため、コーティング層18から入射する光が、その光輝顔料20bの間を通過し易い。一方、上述のように、加飾フィルム1は、下部反射層14aの反射率が上部反射層14bの反射率よりも大きくなるように設定されているため、下部反射層14aで反射される光の輝度と上部反射層14bで反射される光の輝度はほぼ同等になる。結果として、凸状曲面又は凸状屈曲面を覆うフィルム部分は、その他の平坦な面を覆うフィルム部分と同等の反射率を発揮し、色むらの無い反射面が得られる。
【0032】
上述の実施形態では、反射層14を2つの層、すなわち、下部反射層14aと上部反射層14bで構成したが、反射層14を構成する層の数は限定的ではない。例えば、
図3は、反射層214を3つの層214a、214b、214cで構成した実施形態を示しており、そこでは、下部反射層214aの反射率が中間反射層214bと上部反射層214cの反射率よりも大きい。したがって、上部反射層214cと中間反射層214bを透過することで減衰した光が下部反射層214aで反射されるため、凸状曲面又は凸状屈曲面を覆うフィルム部分がその他の平坦な面を覆うフィルム部分と同等の反射率を発揮し、色むらの無いきれいな塗装面が得られる。
【0033】
上述の実施形態では、基材12の表面に所定の厚さの下部反射層14a、上部反射層14b、着色層16、及びコーティング層18が順次積層されて、加飾フィルム1が製造されるが、透明又は半透明な基材318の裏面に所定の厚さの着色層316、上部反射層314b、及び下部反射層314aが順次積層されて、加飾フィルムが製造されてもよい(
図4参照)。
【0034】
上述の実施形態では、塗装装置としてオフセット式の塗布装置を採用したが、それ以外の塗布装置、例えば、ダイコータを使った塗布装置を使用してもよい。
【0035】
上述の実施形態では、第1~第4の塗装工程を一定の間隔に配置しているが、隣接する塗装工程の間隔は適宜決定すればよいし、隣接する塗装工程の間に適宜乾燥工程を設けてもよい。また、上述の実施形態では、バックアップローラの上に塗布ローラを配置したが、逆に、塗布ローラの上にバックアップローラを配置し、基材の下面に塗料を塗布してもよい。
【0036】
上述の実施形態では、基材と着色層を単一の層で形成しているが、それらは複数の層で形成されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:加飾フィルム、12:基材、14:反射層、14a:第1の反射層(下部反射層)、
14b:第2の反射層(上部反射層)、20a,20b:光輝顔料。