(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/12 20060101AFI20240806BHJP
H01H 50/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01H50/12 G
H01H50/02 Q
(21)【出願番号】P 2020080490
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】塚田 尭
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-069239(JP,U)
【文献】実開昭52-169064(JP,U)
【文献】実開昭50-118449(JP,U)
【文献】実開昭51-151965(JP,U)
【文献】実公昭39-028970(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00-50/92
H01H 45/00-45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通気口を含むケースと、
前記ケース内に配置される固定接点を含む固定端子と、
前記ケース内に配置され前記固定接点に接触可能な可動接点を含む可動接触片と、
前記固定接点と前記可動接点の間に磁界を発生させる永久磁石と、
を備え、
複数の前記通気口は、前記ケースの第1面に設けられる流入口と、前記ケースの第2面に設けられる排出口とを含み、
前記流入口と前記排出口とを結ぶ仮想線は、前記固定接点と前記可動接点との間を通り、
前記固定接点と前記可動接点との間で生じるアークは、前記仮想線に対して交差する方向に伸長される、
電磁継電器。
【請求項2】
前記流入口及び前記排出口の少なくとも一方は、ケース内の空気の流れを制御するガイド部を含む、
請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記ケースの内側又は外側に向かって延びている、
請求項2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記仮想線に沿って延びている、
請求項2又は3に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記ケースの前記第1面及び前記第2面は、前記アークの伸長方向とは異なる方向に位置する、
請求項
1から4のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記通気口は、前記ケースの側面の全周において間隔を隔てて形成されている、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路を開閉する電磁継電器が知られている。電磁継電器は、ベースを含むケースと、接点装置と、接点装置を駆動する駆動装置と、を備えている。接点装置は、固定端子と、可動接触片とを含み、ベースに支持されている。固定端子は、固定接点を含む。可動接触片は、固定接点に接触可能な可動接点を含む。ベースには、ケース内に発生したガスや水蒸気を排出するための通気口が形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電磁継電器では、ベースを下にして外部機器に取り付けられる場合、通気口からケース内のガスや水蒸気が排出されにくい。また、空気の対流が生じにくいので、空気の対流によるケース内の冷却効果が小さい。
【0005】
本発明の課題は、電磁継電器の内部を効果的に冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、ケースと、固定端子と、可動接触片とを備える。ケースは、通気口を含む。固定端子は、ケース内に配置される固定接点を含む。可動接触片は、ケース内に配置され固定接点に接触可能な可動接点を含む。通気口は、ケースの第1面に設けられる流入口と、ケースの第2面に設けられる排出口とを含む。流入口と排出口とを結ぶ仮想線は、固定接点と可動接点との間を通る。
【0007】
この電磁継電器では、流入口と排出口とを結ぶ仮想線が固定接点と可動接点との間を通るので、通電時の発熱源となる接点付近において、空気の対流が発生し易くなる。これにより、電磁継電器の内部を効果的に冷却することができる。
【0008】
流入口及び排出口の少なくとも一方は、ケース内の空気の流れを制御するガイド部を含んでもよい。この場合は、ガイド部によってケース内の空気の流れが制御されるので、対流制御の精度が向上する。
【0009】
ガイド部は、ケースの内側又は外側に向かって延びていてもよい。
【0010】
ガイド部は、仮想線に沿って延びていてもよい。この場合は、対流制御の精度がさらに向上する。
【0011】
電磁継電器は、固定接点と可動接点の間に磁界を発生させる永久磁石をさらに備えてもよい。固定接点と可動接点との間で生じるアークは、仮想線に対して交差する方向に伸長されてもよい。この場合は、流入口及び排出口からアークが外部に漏れることを防止できる。
【0012】
ケースの第1面及び第2面は、アークの伸長方向とは異なる方向に位置してもよい。この場合においても、流入口及び排出口からアークが外部に漏れることを防止できる。
【0013】
通気口は、ケースの側面の全周において間隔を隔てて形成されてもよい。この場合は、例えばケース内に配置されるコイルなどの発熱を通気口によって冷却することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電磁継電器の内部を効果的に冷却することができる。
る熱の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電磁継電器の内部を前方から見た模式図である。
【
図2】電磁継電器の内部を前方から見た模式図である。
【
図7】通気口とアーク伸長方向の位置関係を説明するための図である。
【
図8】他の実施形態に係る電磁継電器の
図3に相当する図である。
【
図9】他の実施形態に係る電磁継電器の
図3に相当する図である。
【
図10】他の実施形態に係る電磁継電器の
図3に相当する図である。
【
図11】他の実施形態に係る電磁継電器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。図面を参照するときにおいて、説明を分かり易くするために
図1における上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」、紙面の手前側を「前」、紙面の奥側を「後」として説明する。
図1は電磁継電器100の内部を前方から見た模式図である。
【0017】
電磁継電器100は、いわゆるヒンジ型の電磁継電器である。電磁継電器100は、ケース2と、接点装置3と、駆動装置4とを備えている。ケース2は、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。ケース2は、ベース2aと、カバー2bとを含む。
【0018】
ベース2aは、接点装置3と駆動装置4とを支持する。カバー2bは、下方に向けて開口する箱型の部材であり、ベース2aを上方から覆うようにベース2aに固定されている。
【0019】
接点装置3は、ベース2aに支持されている。接点装置3は、ケース2に収容されている。接点装置3は、固定端子6と、可動接触片7と、可動機構8と、を含む。固定端子6及び可動接触片7は、板状の端子であり、導電性を有する材料で形成されている。固定端子6及び可動接触片7は、上下方向に延びており、ベース2aに圧入固定されている。
【0020】
固定端子6は、固定接点6aと、外部接続部6bとを含む。固定接点6aは、ケース2内に配置されている。固定接点6aは、固定端子6と一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0021】
外部接続部6bは、ケース2から外部に露出している。外部接続部6bは、ベース2aから下方に突出する。外部接続部6bは、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0022】
可動接触片7は、弾性変形可能な板ばねで構成されており、固定端子6に対向して配置されている。可動接触片7は、固定端子6と左右方向に間隔を隔てて配置されている。可動接触片7は、可動接点7aと、外部接続部7bとを含む。可動接点7aは、ケース2内に配置されている。可動接点7aは、固定接点6aに接触可能である。可動接点7aは、可動接触片7と一体であってもよいし、別体であってもよい。外部接続部7bは、ベース2aから下方に突出する。
【0023】
可動機構8は、カード部材10を含む。カード部材10は、左右方向に回動可能にベース2aに支持されている。カード部材10は、可動接触片7と駆動装置4との間に配置されている。カード部材10は、可動接触片7と駆動装置4に接続されている。可動機構8は、可動接点7aが固定接点6aに接触する接触方向Z1と開離する開離方向Z2とに可動接触片7を移動させる。本実施形態における可動接触片7の移動方向は、左右方向と一致する。
【0024】
駆動装置4は、電磁力によって可動機構8を作動させる。詳細には、駆動装置4は、電磁力によってカード部材10を回動させることによって、可動接触片7を接触方向Z1及び開離方向Z2に移動させる。
【0025】
駆動装置4は、ベース2aに支持されている。駆動装置4は、コイル4aと、可動鉄片4b、ヨーク4cと、鉄心4dとを含む。可動鉄片4bは、ヨーク4cに支持されている。コイル4aに電圧が印加されていない状態では、
図1に示すように可動接点7aが固定接点6aから開離している。コイル4aに電圧が印加されて励磁されると、可動鉄片4bが鉄心4dに吸引されて回動し、可動鉄片4bがカード部材10を押圧する。カード部材10が可動鉄片4bに押圧されることで、可動接触片7が接触方向Z1に押圧される。これにより、
図2に示すように、可動接点7aが固定接点6aに接触する。
【0026】
図3は、
図1のII-II線断面図である。
図3に示すように、ケース2は、複数の通気口20を含む。複数の通気口20は、流入口21a,21bと、排出口22a,22bとを含む。流入口21a,21bは、ケース2の外部から内部に空気を流入させるための開口である。排出口22a,22bは、ケース2の内部から外部に空気を排出させるための開口である。
【0027】
流入口21a,21b及び排出口22a,22bは、例えば、円形の貫通孔である。流入口21a,21b及び排出口22a,22bの径は、0.2mm以内であることが好ましい。流入口21a,21b及び排出口22a,22bの形状は、楕円形状や矩形状であってもよい。流入口21a,21bと排出口22a,22bの径は、互いに異なっていてもよい。例えば、排出口22a,22bの面積が流入口21a,21bの面積よりも大きく形成されてもよい。通常は、通電時において発熱源となる固定接点6a及び可動接点7aに近い位置の通気口20が排出口として機能するが、通気口の孔の面積を調整することによって、特定の通気口20を流入口或いは排出口として機能させてもよい。
【0028】
流入口21a,21bは、ケース2を前後方向に貫通して形成されている。流入口21aは、ケース2の前面2c(第1面の一例)に形成されている。流入口21bは、ケース2の後面2d(第1面の一例)に形成されている。
【0029】
排出口22a,22bは、ケース2の上面2e(第2面の一例)を上下方向に貫通して形成されている。排出口22aと排出口22bとは、前後方向に離れている。排出口22a,22bは、固定接点6aと上下方向に重ならない位置に形成されている。
【0030】
流入口21a,21bと排出口22a,22bとを結ぶ仮想線VLは、固定接点6aと可動接点7aとの間を通る。詳細には、流入口21aと排出口22aとを結ぶ仮想線VL(以下、「仮想線VL1」と記す)は、固定接点6aと可動接点7aとの間を通る。流入口21bと排出口22bとを結ぶ仮想線VL(以下、「仮想線VL2」と記す)は、固定接点6aと可動接点7aの間を通る。可動接触片7の移動方向から見て、仮想線VL1の一部及び仮想線VL2の一部は、固定接点6a及び可動接点7aと重なる。
【0031】
上述した電磁継電器100では、流入口21a,21bと排出口22a,22bとを結ぶ仮想線VL1,VL2が固定接点6aと可動接点7aとの間を通るので、通電時の発熱源となる接点付近において、空気の対流が発生し易くなる。これにより、電磁継電器100の内部を効果的に冷却することができる。
【0032】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、駆動装置4の構成が変更されてもよい。また、ケース2、接点装置3、固定端子6、可動接触片7及び可動機構8の形状、或いは配置が変更されてもよい。
【0033】
流入口21b及び排出口22bは、省略されてもよい。また、流入口と排出口の数が異なっていてもよい。例えば、流入口21aに対応する排出口22aが複数設けられてもよい。この場合は、流入口21aと、それぞれの排出口22aとを結ぶ仮想線VL1が固定接点6aと可動接点7aとの間を通る。また、流入口21a及び排出口22aの位置は、前記実施形態に限定されない。仮想線VL1が固定接点6aと可動接点7aとの間を通る位置において、流入口21a及び排出口22aが形成されていればよい。したがって、前記実施形態において、流入口21aが、例えばベース2a(ケース2の下面)に形成されていてもよい。
【0034】
複数の通気口20は、ベース2a及びカバー2bの一方に形成されてもよい。複数の通気口20は、一部品の貫通孔ではなく二部品で構成されてもよい。例えば、流入口21a,21b或いは排出口22a,22bは、ベース2aとカバー2bとに亘って形成されてもよい。また、流入口21a,21b或いは排出口22a,22bは、例えば、ベース2aとカバー2bとを組み合わせたときに生じる隙間によって構成されてもよい。この場合は、上下割の金型によって複数の通気口20を設けることができる。
【0035】
図4に示すように、排出口22aは、固定接点6a及び可動接点7aの真上に形成されてもよい。すなわち、排出口22aは、固定接点6a及び可動接点7aと上下方向に重なる位置に形成されてもよい。この場合、排出口22aから固定接点6a及び可動接点7a周辺への異物の混入を防ぐためのカバー部材24が設けられていてもよい。カバー部材24は、例えば、ケース2に固定される。カバー部材24は、壁部24aと、貫通孔24bとを含む。壁部24aは、固定端子6及び可動接触片7の上部に配置されている。壁部24aは、排出口22aの上方を覆うように設けられる。貫通孔24bは、排出口22aと上下方向に重ならない位置に形成されている。なお、カバー部材24は、ケース2と一体であってもよい。固定接点6a及び可動接点7aの真上に排出口22aを形成することで、固定接点6a及び可動接点7aの発熱を効果的に冷却することができる。なお、
図4に示す例では、排出口22aが排出口22bを兼ねている。
【0036】
図5に示すように、流入口21a,21b及び排出口22a,22bの少なくとも一方は、ケース2内の空気の流れを制御するガイド部25a,25bを含んでもよい。詳細には、流入口21aは、ガイド部25aを含む。ガイド部25aは、ケース2の内側に向かって仮想線VL1に沿って延びている。ガイド部25aは、排出口22aに向かって延びている。流入口21bは、ガイド部25bを含む。ガイド部25bは、ケース2の内側に向かって仮想線VL2に沿って延びている。ガイド部25bは、排出口22bに向かって延びている。なお、ガイド部25a,25bは、ケース2と別体であってもよい。
【0037】
図6に示すように、流入口21aと排出口22aとは、前後方向に対向する位置に形成されてもよい。また、ガイド部25aは、ケース2の外側に向かって延びていてもよい。ガイド部25aは、ケース2の前面2cよりも外側(前方側)に配置され、前後方向において流入口21aと重なるように形成されている。排出口22aは、ガイド部25cを含んでもよい。ガイド部25cは、ケース2の後面2dよりも外側(後方側)に配置され、前後方向において排出口22aと重なるように形成されている。流入口21aの径は、排出口22aの径よりも小さい。
【0038】
図7に示すように、電磁継電器100は、永久磁石30をさらに備えてもよい。永久磁石30は、固定接点6aと可動接点7aの間に磁界を発生させる。永久磁石30は、固定接点6aと可動接点7aの間で生じるアークを仮想線VL1に対して交差する方向に伸長させる磁界を発生させる。
図7に示す例では、永久磁石30は、第1磁石30aと、第2磁石30bとを含む。第1磁石30a及び第2磁石30bは、例えば、ケース2に支持される。なお、
図7では、説明を分かり易くするために、永久磁石30を模式的に図示している。
【0039】
第1磁石30aと第2磁石30bとは、前後方向に異極が対向するように配置されている。このため、固定接点6aと可動接点7aの間で生じるアークは、上下方向(
図7の紙面に直交する方向)に伸長される。流入口21aが設けられるケース2の後面2d及び排出口22aが設けられるケース2の前面2cは、アークの伸長方向とは異なる方向に位置する。すなわち、流入口21a及び排出口22aは、アークが外部に漏れない位置に形成される。この実施例では、後面2dが第1面の一例であり、前面2cが第2面の一例である。
【0040】
前記実施形態では、ヒンジ型の電磁継電器に本発明を適用していたが、
図8に示すように、プランジャ型の電磁継電器に本発明を適用してもよい。この場合において、
図9に示すように、金属蒸気を逃がすための通気口32がケース2に形成されていてもよい。また、
図10に示すように、例えば、2極のヒンジ型の電磁継電器に本発明を適用してもよい。すなわち、電磁継電器100は、固定端子16と、固定端子16に配置される固定接点16aと、固定接点16aに接触可能な可動接点(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0041】
図11に示すように、通気口20は、ケース2の全周に形成されていてもよい。
図11では、ケース2のカバー2bの前後左右の側面の全周において、間隔を隔てて複数の流入口21aを形成した例を示している。この場合は、駆動装置4のコイル4aの発熱を通気口20によって効果的に冷却することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、電磁継電器の内部を効果的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0043】
2 ケース
6 固定端子
6a 固定接点
7 可動接触片
7a 可動接点
20 通気口
21a 流入口
22b 排出口
25a ガイド部
30 永久磁石
100 電磁継電器
VL 仮想線