IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の周辺監視システム 図1
  • 特許-車両の周辺監視システム 図2
  • 特許-車両の周辺監視システム 図3
  • 特許-車両の周辺監視システム 図4
  • 特許-車両の周辺監視システム 図5
  • 特許-車両の周辺監視システム 図6
  • 特許-車両の周辺監視システム 図7
  • 特許-車両の周辺監視システム 図8
  • 特許-車両の周辺監視システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両の周辺監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240806BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G5/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020087618
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182280
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓允
(72)【発明者】
【氏名】安竹 昭
(72)【発明者】
【氏名】有永 剛
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138853(JP,A)
【文献】特開2000-227999(JP,A)
【文献】特開2019-161613(JP,A)
【文献】特開2017-013653(JP,A)
【文献】特開2020-052920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、撮影部を有し、前記車両の車外を飛行可能な飛行体と、
前記車両に設けられ、前記撮影部が撮影した画像を受信可能な通信部と、
前記通信部が受信した画像を前記車両の車室内において表示する表示部と、
前記車両の周辺の障害物を検出可能な障害物センサと、
前記車両の車速を検出する車速センサと、
前記飛行体を制御する制御部と、
を備え、
前記車両と前記障害物センサが検出した前記障害物との距離が所定値以下であり、かつ、前記車速センサが検出した前記車速が所定値以下である場合に、前記制御部は、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記車両の進行方向に向かって前記車両より前方から前記車両及び前記障害物の双方を含む画像を撮影し、前記撮影部が撮影した前記画像を前記通信部に送信するよう制御し、
前記制御部は、前記車両の運転者の視点の高さを前記画像に基づいて検出し、前記撮影部が前記画像を撮影する際の撮影ポジションの高さを、前記運転者の視点の高さに設定する、車両の周辺監視システム。
【請求項2】
前記撮影部は、前記車両の車体形状に起因して生じる前記車両の車室内の運転者の視界からの死角領域を含む前記画像を撮影する、請求項1に記載の車両の周辺監視システム。
【請求項3】
前記車両は、前記撮影部による前記画像の撮影要求を入力可能な要求入力部を備え、
前記制御部は、前記距離が前記所定値以下であり、前記車速が前記所定値以下であり、かつ、前記撮影要求が前記要求入力部から入力された場合に、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記画像を撮影し、前記撮影部が撮影した前記画像を前記通信部に送信するよう制御する、請求項1又は2に記載の車両の周辺監視システム。
【請求項4】
前記車両は、バッテリと、前記バッテリの充放電を制御するバッテリ制御部と、前記バッテリ及び前記飛行体に接続されたテザーとを備え、
前記バッテリ制御部は、前記飛行体の駆動電力を、前記バッテリから前記テザーを介して前記飛行体へ供給する、請求項1に記載の車両の周辺監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、カメラを備えた飛行体を車両に搭載し、車内のナビゲーション装置からの制御により車両上空で飛行体を飛行させることによって撮影画像を取得し、その撮影画像の解析結果に基づいて車両の走行支援等を行うナビゲーションシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-138853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が障害物の近傍を徐行して走行する際に、ソナーセンサ等によって車両と障害物との間の距離を測定し、当該距離が一定値未満になった場合に警告音を出力する接触回避システムが実用化されている。しかし、警告音を出力することによっては、運転者が車両と障害物との間の距離感を視覚的に把握することはできない。また、車体側面(例えばドアミラー)に配置されたカメラによって障害物を撮影し、その撮影映像を車内のディスプレイに表示する接触回避システムも実用化されている。しかし、車体上の視点から障害物を撮影するという撮影方式であるため、その撮影映像を確認しても運転者が車両と障害物との間の距離感を正確に把握することは困難である。従って、運転者が車両と障害物との間の距離感を正確に把握できる手段の実現が望まれる。
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されたナビゲーションシステムによると、飛行体のカメラによる撮影画像を、車両が障害物の近傍を走行する際に、障害物との接触回避のための運転支援に活用することは、何ら考えられていない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、飛行体の撮影部による撮影画像を、車両が障害物の近傍を走行する際に、障害物との接触回避のための運転支援に活用することが可能な、車両の周辺監視システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車両の周辺監視システムは、車両に搭載され、撮影部を有し、前記車両の車外を飛行可能な飛行体と、前記車両に設けられ、前記撮影部が撮影した画像を受信可能な通信部と、前記通信部が受信した画像を前記車両の車室内において表示する表示部と、前記車両の周辺の障害物を検出可能な障害物センサと、前記車両の車速を検出する車速センサと、前記飛行体を制御する制御部と、を備え、前記車両と前記障害物センサが検出した前記障害物との距離が所定値以下であり、かつ、前記車速センサが検出した前記車速が所定値以下である場合に、前記制御部は、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記車両の進行方向に向かって前記車両より前方から前記車両及び前記障害物の双方を含む画像を撮影し、前記撮影部が撮影した前記画像を前記通信部に送信するよう制御することを特徴とするものである。
【0008】
この態様によれば、車両と障害物との距離が所定値以下であり、かつ、前記車速センサが検出した前記車速が所定値以下である場合に、制御部は、飛行体が車両から離陸し、撮影部が車両の進行方向に向かって前記車両より前方から車両及び障害物の双方を含む画像を撮影し、撮影部が撮影した画像を通信部に送信するよう、飛行体を制御する。従って、車両の運転者は、表示部に表示された画像を視認することによって、車両と障害物との距離を確認することができる。しかも、飛行体の撮影部は、車両から障害物を撮影するのではなく、車外から車両及び障害物の双方を撮影するため、運転者は、撮影画像によって車両と障害物との距離感を正確に把握することができる。その結果、飛行体の撮影部による撮影画像を、車両が障害物の近傍を走行する際に、障害物との接触回避のための運転支援に活用することが可能となる。
また、この態様によれば、制御部は、車速センサが検出した車速が所定値以下である場合に、飛行体が車両から離陸し、撮影部が画像を撮影し、撮影部が撮影した画像を通信部に送信するよう制御する。つまり障害物表示制御を実行する。従って、障害物表示制御の実行を開始するにあたり、運転者による手動の撮影要求入力は不要であるため、ユーザの利便性を向上することができる。
【0009】
上記態様において、前記撮影部は、前記車両の車体形状に起因して生じる前記車両の車室内の運転者の視界からの死角領域を含む前記画像を撮影することが望ましい。
【0010】
この態様によれば、撮影部は、車両の車体形状に起因して生じる車両の車室内の運転者の視界からの死角領域を含む画像を撮影する。従って、車両の運転者は、表示部に表示された画像を視認することによって、死角領域の状況を確認することができる。その結果、運転者に対する運転支援効果を向上することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記車両は、前記撮影部による前記画像の撮影要求を入力可能な要求入力部を備え、前記制御部は、前記距離が前記所定値以下であり、前記車速が前記所定値以下であり、かつ、前記撮影要求が前記要求入力部から入力された場合に、前記飛行体が前記車両から離陸し、前記撮影部が前記画像を撮影し、前記撮影部が撮影した前記画像を前記通信部に送信するよう制御することが望ましい。
【0012】
この態様によれば、制御部は、前記距離が前記所定値以下であり、前記車速が前記所定値以下であり、かつ、撮影要求が要求入力部から入力された場合に、飛行体が車両から離陸し、撮影部が画像を撮影し、撮影部が撮影した画像を通信部に送信するよう制御する。つまり障害物表示制御を実行する。従って、運転者が目視によって障害物との接触を回避できる場合に不要な障害物表示制御が実行されることを、予め回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、飛行体の撮影部による撮影画像を、車両が障害物の近傍を走行する際に、障害物との接触回避のための運転支援に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る車両周辺監視システムの適用例を示す図である。
図2】飛行体の外観を模式的に示す図である。
図3】飛行体の機能構成を示すブロック図である。
図4】車両の機能構成を示すブロック図である。
図5】飛行体制御部の機能構成を示すブロック図である。
図6】車両情報検出部の機能構成を示す図である。
図7】車両の制御部によって実行される障害物表示制御の制御フローを示すフローチャートである。
図8】飛行体の撮影ポジションの一例を示す図である。
図9】表示部に表示された撮影映像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両周辺監視システムの適用例を示す図である。車両1には、車両1の車外を飛行可能な飛行体2が搭載されている。車両1の所定箇所(この例ではリアウインドウ上)には、飛行体2の発着台3が配置されている。発着台3は、飛行体2が離着陸を行うための水平な発着面を有する。発着面の下方には、巻き取りリール19(図1には表れない)が配置されている。巻き取りリール19は、給電用のケーブルであるテザー4が巻装された回転軸(図略)を有している。発着面の略中央部には貫通孔が設けられており、巻き取りリール19の回転軸に巻装されたテザー4は、この貫通孔内を挿通して発着面の上方に引き出され、飛行体2に接続されている。
【0019】
図2は、飛行体2の外観を模式的に示す図である。飛行体2は、いわゆるクワッドコプター型のドローンとして構成されている。飛行体2は、本体部111と、本体部111の前面に配置されたカメラ112と、本体部111の四隅に配置されたプロペラ113と、本体部111の左右両面から垂直に延在するシャフト114と、本体部111を内包する網目球体状の緩衝部材115とを備えている。本体部111と緩衝部材115とは、シャフト114によって互いに固定されている。本体部111の底面にテザー4が接続されている。
【0020】
図3は、飛行体2の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように飛行体2は、通信部21、撮影部22、駆動部23、位置検出部24、及び姿勢検出部25を有している。また、飛行体2は、これら各処理部の動作を制御することによって飛行体2の全体の制御を司る制御部20を有している。さらに、飛行体2は、これら各処理部及び制御部20に駆動電力を供給する電力供給部29を有している。電力供給部29は、テザー4に接続されている。飛行体2の駆動電力を、テザー4を介して車両1側から供給することにより、飛行体2へのバッテリの搭載を省略でき、その結果、飛行体2の軽量化が図られている。飛行体2の総重量は、重量に基づく飛行規制の対象となる制限重量(例えば200グラム)未満である。
【0021】
通信部21は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式によって、後述する車両1側の通信部122との間で双方向にデータ通信を行う。但し、テザー4内にデータ通信線を追加することにより、通信部21と通信部122とが当該データ通信線を介して有線通信を行う構成としても良い。
【0022】
撮影部22は、図2に示したカメラ112を含む。撮影部22によって撮影される画像には、静止画像(写真)及び動画像(映像)の双方が含まれる。以下の説明では、撮影部22によって映像が撮影される場合を例にとる。撮影部22は、カメラ112によって撮影された映像の映像データを、フラッシュメモリ等の記録媒体に記録するとともに、リアルタイムで出力する。なお、映像データの記録は車両1側で行っても良い。
【0023】
駆動部23は、図2に示したプロペラ113のプロペラシャフトを回転駆動するためのモータを含む。駆動部23は、4つのプロペラ113の回転方向及び回転速度を個別に制御する。これにより、飛行体2は、前進、後進、上昇、降下、旋回、及びホバリング等の任意の飛行動作を行うことができる。
【0024】
位置検出部24は、GPS受信機及び高度センサ等を含み、飛行体2の位置をリアルタイムに検出することにより、その検出された位置を示す位置データを出力する。
【0025】
姿勢検出部25は、加速度センサ、ジャイロセンサ、及び方位センサ等を含み、飛行体2の姿勢をリアルタイムに検出することにより、その検出された姿勢を示す姿勢データを出力する。
【0026】
制御部20は、撮影部22から出力された映像データ、位置検出部24から出力された位置データ、及び姿勢検出部25から出力された姿勢データを、リアルタイムで通信部21から車両1に送信する。
【0027】
図4は、車両1の機能構成を示すブロック図である。図4に示すように車両1は、バッテリ制御部11、飛行体制御部12、車両情報検出部14、表示部16、及び操作入力部17を有している。また、車両1は、これら各処理部の動作を制御することによって車両1の全体の制御を司る制御部10を有している。さらに、車両1は、これら各処理部及び制御部10に駆動電力を供給するバッテリ18を有している。テザー4は、バッテリ18に接続されている。また、車両1は、巻き取りリール19を有している。巻き取りリール19の駆動電力は、バッテリ18から供給される。巻き取りリール19は、テザー4が巻装された回転軸(図略)と、当該回転軸を回転駆動するためのモータ(図略)とを有している。巻き取りリール19は、飛行体2の飛行状況に応じた適正量のテザー4が回転軸から繰り出されるように、モータによる回転軸の駆動によってテザー4の送出及び回収を制御する。
【0028】
バッテリ制御部11は、バッテリ18の充放電動作を制御する。また、バッテリ制御部11は、バッテリ18からテザー4への電力供給の開始及び停止を制御する。
【0029】
飛行体制御部12は、飛行体2の飛行を制御する。飛行体制御部12の詳細については後述する。
【0030】
車両情報検出部14は、車両1の各種情報を検出する。車両情報検出部14の詳細については後述する。
【0031】
表示部16は、LCD又は有機EL等の任意の表示装置を用いた車載ディスプレイを含む。表示部16は、カーナビゲーション装置が備えるディスプレイであっても良い。
【0032】
操作入力部17(要求入力部)は、車両1の運転者又は同乗者によって手動による要求入力が可能なスイッチを含む。操作入力部17には、例えば、ステアリングスイッチ、車載ディスプレイのタッチパネル、及び、ユーザの携帯端末のタッチパネルが含まれる。また、要求入力部は、音声による要求入力が可能なマイクであっても良い。
【0033】
図5は、飛行体制御部12の機能構成を示すブロック図である。図5に示すように飛行体制御部12は、通信部122、飛行経路記憶部123、操縦信号生成部124、撮影信号生成部125、及びリール制御部126を有している。また、飛行体制御部12は、これら各処理部の動作を制御する制御部121を有している。
【0034】
通信部122は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式によって、上述した飛行体2側の通信部21との間で双方向にデータ通信を行う。通信部122は、飛行体2側の通信部21から送信された映像データ、位置データ、及び姿勢データを受信する。
【0035】
飛行経路記憶部123には、飛行体2を発着台3から撮影ポジションに移動飛行させるための飛行経路が記憶されている。例えば、車両1の車体に対して左前方、右前方、左後方、及び右後方の4つの撮影ポジションが設定されている場合には、飛行体2を発着台3から各撮影ポジションに移動飛行させるための4つの飛行経路が、飛行経路記憶部123に記憶されている。
【0036】
操縦信号生成部124は、飛行経路記憶部123から読み出された飛行経路に沿って飛行体2を飛行させるための操縦信号を、通信部122が受信した映像データ、位置データ、及び姿勢データに基づいて生成する。
【0037】
撮影信号生成部125は、飛行体2の飛行状況に応じて、飛行体2の撮影部22に対して撮影を開始させるための撮影開始信号、及び、撮影を停止させるための撮影停止信号を生成する。
【0038】
リール制御部126は、巻き取りリール19を制御する。具体的にリール制御部126は、飛行体2の飛行状況に応じた適正量のテザー4が巻き取りリール19の回転軸から繰り出されるように、モータによる回転軸の駆動によってテザー4の送出及び回収を制御する。
【0039】
制御部121は、操縦信号生成部124によって生成された操縦信号、並びに、撮影信号生成部125によって生成された撮影開始信号及び撮影停止信号を、リアルタイムで通信部122から飛行体2に送信する。
【0040】
図6は、車両情報検出部14の機能構成を示す図である。図6に示すように車両情報検出部14は、車速センサ145及び障害物センサ147を含む。
【0041】
車速センサ145は、車両1の車速を検出する。障害物センサ147は、車両1の近傍に障害物が存在する場合に、例えば車両1の四隅に配置されたソナーセンサ61~64(図8)によってその障害物を検出する。障害物には、電柱50(図8)、ブロック塀、又はガードレール等の構造物、及び、狭い道で対向車と離合する際のその対向車等が含まれる。
【0042】
図7は、車両1の制御部10によって実行される障害物表示制御の制御フローを示すフローチャートである。制御部10は、車両1が障害物の近傍を徐行している状況において、この制御フローを実行する。
【0043】
まずステップSP11において制御部10は、車両1と障害物センサ147(ソナーセンサ61~64)が検出した最も近い障害物との距離が所定値(例えば50cm)以下であるか否かを判定する。
【0044】
車両1と障害物との距離が所定値以下でない場合(ステップSP11:NO)は、制御部10はステップSP11の処理を繰り返し実行する。
【0045】
車両1と障害物との距離が所定値以下である場合(ステップSP11:YES)は、次にステップSP12において制御部10は、車速センサ145が検出している車速が所定の閾値(例えば時速10km)以下であるか否かによって、車両1が徐行中であるか否かを判定する。
【0046】
車両1が徐行中でない場合(ステップSP12:NO)は、制御部10はステップSP11,SP12の処理を繰り返し実行する。
【0047】
車両1が徐行中である場合(ステップSP12:YES)は、次にステップSP13において制御部10は、車両1の運転者又は同乗者によって障害物表示制御の実行要求が操作入力部17から入力されたか否かを判定する。
【0048】
実行要求がない場合(ステップSP13:NO)は、制御部10はステップSP11~SP13の処理を繰り返し実行する。
【0049】
実行要求があった場合(ステップSP13:YES)は、次にステップSP14において制御部10は、飛行体制御部12に飛行体2の離陸制御を実行させる。まずバッテリ制御部11は、バッテリ18からテザー4を介して飛行体2への電力供給を開始する。次に操縦信号生成部124は、飛行体2を発着台3から離陸させるための操縦信号を生成する。次に通信部122は、その操縦信号を飛行体2に送信する。次に飛行体2側の通信部21は、車両1側の通信部122から送信された操縦信号を受信する。次に駆動部23は、その操縦信号に基づいてプロペラ113を駆動することにより、飛行体2を離陸させるための制御を開始する。これにより、飛行体2は発着台3から離陸する。
【0050】
次にステップSP15において制御部10は、飛行体制御部12に飛行体2の飛行制御及び撮影制御を実行させる。まず制御部10は、障害物の位置と車両1の進行方向とに基づいて今回の撮影ポジションを設定し、その撮影ポジションに対応する飛行経路を、飛行経路記憶部123から読み出す。
【0051】
図8は、飛行体2の撮影ポジションの一例を示す図である。この例において、障害物は電柱50である。図8(A)の例に示されように、左前のソナーセンサ61が電柱50を検出しており、かつ、車両1の進行方向が前進である場合には、制御部10は左前方の撮影ポジションを設定する。また、図8(B)の例に示されように、左後のソナーセンサ63が電柱50を検出しており、かつ、車両1の進行方向が後進である場合には、制御部10は左後方の撮影ポジションを設定する。このように制御部10は、車両1の進行方向に向かって車両1より前方から車両1及び障害物の双方(並びに両者間の隙間)を撮影できる撮影ポジションを設定する。制御部10は、設定された撮影ポジションに対応する飛行経路を、飛行経路記憶部123から読み出す。また、制御部10は、撮影部22による撮影画像に基づいて車両1の運転者の視点の高さを検出することにより、撮影ポジションの高さを、運転者の視点の高さとほぼ同じ高さに設定する。これにより、撮影画像を視認する際の運転者の違和感を軽減できる。
【0052】
次に操縦信号生成部124は、車両1の位置情報から特定した発着台3の現在位置を起点として、飛行体2を上記飛行経路に沿って上記の設定された撮影ポジションに移動飛行させるための操縦信号を生成する。次に通信部122は、その操縦信号を飛行体2に送信する。次に飛行体2側の通信部21は、車両1側の通信部122から送信された操縦信号を受信する。次に駆動部23は、その操縦信号に基づいてプロペラ113を駆動する。これにより、飛行体2は上記飛行経路に沿って上記撮影ポジションまで飛行する。また、撮影信号生成部125は、飛行体2の撮影部22に対して撮影を開始させるための撮影開始信号を生成する。撮影開始信号は通信部122から飛行体2に送信され、それによって撮影部22はカメラ112による撮影を開始する。カメラ112によって撮影された撮影映像の映像データは、通信部21から車両1に送信される。制御部10は、飛行体2から受信した映像データを表示部16に転送する。これにより、飛行体2のカメラ112によって撮影された撮影映像が、表示部16に表示される。
【0053】
図9は、表示部16に表示された撮影映像の一例を示す図である。図9には、図8(A)に対応して、左前方の撮影ポジションから撮影された撮影映像が示されている。飛行体2のカメラ112が、前進する車両1の左前方から車両1を撮影することにより、撮影映像には、車両1の左前部と、進行方向に向かって車両1の左方近傍に位置する障害物(電柱50)との双方が含まれている。また、撮影映像には、車両1の車体形状に起因して生じる車両1の車室内の運転者の視界からの死角領域(この例では左ドアミラー下方の死角領域)が含まれている。
【0054】
次にステップSP16において制御部10は、車両1の運転者又は同乗者によって障害物表示制御の終了要求が操作入力部17から入力されたか否かを判定する。
【0055】
終了要求がない場合(ステップSP16:NO)は、制御部10はステップSP15,SP16の処理を繰り返し実行する。その際、制御部10は、車両1及び飛行体2の各位置情報に基づいて、車両1と飛行体2との間に一定距離が保たれるように飛行体2の飛行位置を制御する。
【0056】
終了要求があった場合(ステップSP16:YES)は、次にステップSP17において制御部10は、飛行体2を現在位置から発着台3に向けて飛行させるための操縦信号を操縦信号生成部124に生成させる。この操縦信号が飛行体2に送信されることによって飛行体2の飛行が制御され、飛行体2は発着台3に帰艦する。
【0057】
なお、飛行体2を車両1へ帰艦させる場合には、制御部10は、飛行体2を帰艦させるための操縦信号を操縦信号生成部124に生成させる代わりに、リール制御部126によって巻き取りリール19の回転軸を高速に回転駆動させることによって、飛行体2を強制的に回収しても良い。これにより、飛行体2を迅速に回収することが可能となる。
【0058】
次に、撮影信号生成部125は、飛行体2の撮影部22に対して撮影を停止させるための撮影停止信号を生成する。撮影停止信号は飛行体2に送信され、撮影部22はカメラ112による撮影を停止する。その後、バッテリ制御部11は、バッテリ18から飛行体2への電力供給を停止する。
【0059】
本実施の形態に係る車両周辺監視システムによれば、制御部10は、車両1が障害物の近傍を走行している状況において、車両1から飛行体2を飛行させ、車両1の進行方向前方から車両1及び障害物の双方を含む映像を飛行体2の撮影部22に撮影させ、撮影された映像を表示部16に表示させる。従って、車両1の運転者は、表示部16に表示された映像を視認することによって、車両1と障害物との距離を確認することができる。しかも、飛行体2の撮影部22は、車両1から障害物を撮影するのではなく、車外から車両1及び障害物の双方を撮影するため、運転者は、撮影映像によって車両1と障害物との距離感を正確に把握することができる。その結果、飛行体2の撮影部22による撮影映像を、車両1が障害物の近傍を走行する際に、障害物との接触回避のための運転支援に活用することが可能となる。
【0060】
また、制御部10は、障害物表示制御において、車両1の車体形状に起因して生じる車両1の運転者の視界からの死角領域を含む映像を、撮影部22に撮影させる。従って、車両1の運転者は、表示部16に表示された映像を視認することによって、死角領域の状況を確認することができる。その結果、運転者に対する運転支援効果を向上することが可能となる。
【0061】
また、制御部10は、障害物表示制御の実行要求が操作入力部17から入力されたことを条件として、障害物表示制御を実行する。従って、運転者が目視によって障害物との接触を回避できる場合に不要な障害物表示制御が実行されることを、予め回避することができる。
【0062】
また、制御部10は、車両1から飛行体2を飛行させた後、障害物表示制御の終了要求が操作入力部17から入力された場合に、飛行体2を車両1に帰艦させる。従って、車両1が障害物回避のための徐行を終了して通常走行を再開する前に飛行体2を帰艦させることができるため、通常走行再開後に飛行体2が周辺の障害物等に接触する事態を予め回避できる。
【0063】
<変形例>
上記実施の形態では、制御部10は、操作入力部17から障害物表示制御の実行要求が入力されたことを条件として障害物表示制御を実行したが、この例には限られない。制御部10は、障害物表示制御の実行要求が入力されなくても、障害物センサ147によって障害物が検出されており、かつ、車速センサ145によって徐行が検出されていることを条件として、障害物表示制御を実行しても良い。この場合、図7に示したフローチャートにおいては、ステップSP13が省略されることにより、ステップSP12の判定結果が「YES」の場合にはステップSP14の処理が実行されることになる。
【0064】
本変形例によれば、制御部10は、障害物センサ147が障害物を検出しており、かつ、車速センサ145によって検出されている車速が所定の閾値以下であることを条件として、障害物表示制御を実行する。従って、障害物表示制御の実行を開始するにあたり、運転者による手動の操作入力は不要であるため、ユーザの利便性を向上することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両
2 飛行体
4 テザー
10 制御部
12 飛行体制御部
14 車両情報検出部
16 表示部
17 操作入力部
19 巻き取りリール
22 撮影部
55 表示部
145 車速センサ
147 障害物センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9