(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】圧力応答性粒子、カートリッジ、印刷物の製造装置及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20240806BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240806BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240806BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20240806BHJP
G03G 15/22 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/087 325
G03G9/097 374
G03G9/093
G03G15/22 103Z
(21)【出願番号】P 2020097188
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019132145
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 能史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 栄
(72)【発明者】
【氏名】柏木 里美
(72)【発明者】
【氏名】上脇 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉野 進
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115505(JP,A)
【文献】特開2018-163198(JP,A)
【文献】特開2018-002889(JP,A)
【文献】特開2010-243759(JP,A)
【文献】特開2011-027874(JP,A)
【文献】特開昭61-120159(JP,A)
【文献】特開2004-203997(JP,A)
【文献】特開平06-167830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/087
G03G 9/097
G03G 9/093
G03G 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、
少なくとも2種の(メタ)アクリル酸
アルキルエステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸
アルキルエステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含有する圧力応答性母粒子と、
酸化チタン粒子を含有する外添剤と、を含み
前記圧力応答性母粒子は、前記スチレン系樹脂を含む海相と、前記海相に分散した前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有し、
少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である、
圧力応答性粒子。
【請求項2】
前記酸化チタン粒子は前記圧力応答性母粒子の表面に付着される請求項1に記載の圧力応答性粒子。
【請求項3】
前記酸化チタン粒子の平均粒子径は1nm以上180nm以下である請求項1又は請求項2に記載の圧力応答性粒子。
【請求項4】
前記酸化チタン粒子の平均粒子径は1nm以上100nm以下である請求項3に記載の圧力応答性粒子。
【請求項5】
前記酸化チタン粒子の含有量は前記圧力応答性母粒子100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項6】
前記スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が60質量%以上95質量%以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸
アルキルエステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸
アルキルエステルのうち最も質量割合の多
い2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が1個以上4個以下である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項9】
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項10】
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーがアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項11】
前記スチレン系樹脂と前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とが同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が重合成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルを含む、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項13】
前記スチレン系樹脂の含有量が前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多い、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項14】
前記島相の平均径が200nm以上500nm以下である、請求項
1~請求項13のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項15】
前記圧力応答性母粒子は、
前記スチレン系樹脂及び前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有するコア部と、
前記コア部を被覆するシェル層と、
を有する、請求項1~請求項
14のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項16】
前記シェル層が前記スチレン系樹脂を含有する、請求項
15に記載の圧力応答性粒子。
【請求項17】
圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度が90℃以下である、請求項1~請求項
16のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項18】
請求項1~請求項
17のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子を収容し、印刷物の製造装置に着脱されるカートリッジ。
【請求項19】
請求項1~請求項
17のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子を収容し、記録媒体上に配置する配置手段と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、
を含む印刷物の製造装置。
【請求項20】
色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段をさらに含む、請求項
19に記載の印刷物の製造装置。
【請求項21】
請求項1~請求項
17のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置工程と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、
を含む印刷物の製造方法。
【請求項22】
色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程をさらに含む、請求項
21に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力応答性粒子、カートリッジ、印刷物の製造装置及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、式1「20℃≦T(1MPa)-T(10MPa)」(T(1MPa)は印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表し、T(10MPa)は印加圧力10MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度を表す。)を満たす接着材料が記載されている。
【0003】
特許文献2には、「被接着面に、圧力が付与されると粘着性を発現する粉体を付着させる付着部と、前記粉体が付着した記録媒体に圧力を付与して、粘着層として前記記録媒体に定着する定着部と、前記粘着層が、前記被接着面に形成されている記録媒体を、前記被接着面が対向するように、折る折り部と、前記被接着面が対向した前記記録媒体に圧力を付与し、前記粘着層同士を接着する付与部と、を備える圧着印刷物作成装置」が記載されている。
【0004】
特許文献3には、「支持体上に、結着樹脂及び着色剤を含有する着色トナーにより画像層を形成する工程、前記画像層の上に、結着樹脂及び離型剤を含有する透明トナーにより透明層を形成する工程、並びに、前記透明層の上に剥離可能な圧着層を形成する工程を含有し、前記透明層が前記画像層よりも大きな硬度を有することを特徴とする画像形成方法。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-002889号公報
【文献】特開2018-004966号公報
【文献】特開2014-186055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、圧着物を得ることにおいて、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含有する圧力応答性母粒子(以下、「特定圧力応答性母粒子」とも称す。)と、平均粒子径が40nm以下であるシリカのみからなる外添剤と、を含み、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である圧力応答性粒子を使用した場合に比べ、接着性に優れる圧力応答性粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0008】
<1>
スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含有する圧力応答性母粒子と、酸化チタン粒子を含有する外添剤と、を含み少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である、圧力応答性粒子。
<2>
前記酸化チタン粒子は前記圧力応答性母粒子の表面に付着される<1>に記載の圧力応答性粒子。
<3>
前記酸化チタン粒子の平均粒子径は1nm以上180nm以下である<1>又は<2>に記載の圧力応答性粒子。
<4>
前記酸化チタン粒子の平均粒子径は1nm以上100nm以下である<3>に記載の圧力応答性粒子。
<5>
前記酸化チタン粒子の含有量は前記圧力応答性母粒子100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<6>
前記スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が60質量%以上95質量%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<7>
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<8>
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が1個以上4個以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<9>
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<10>
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーがアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<11>
前記スチレン系樹脂と前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とが同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<12>
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が重合成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルを含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<13>
前記スチレン系樹脂の含有量が前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多い、<1>~<12>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<14>
前記圧力応答性母粒子は、前記スチレン系樹脂を含む海相と、前記海相に分散した前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有する、<1>~<13>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<15>
前記島相の平均径が200nm以上500nm以下である、<14>に記載の圧力応答性粒子。
<16>
前記圧力応答性母粒子は、前記スチレン系樹脂及び前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆するシェル層と、を有する、<1>~<15>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<17>
前記シェル層が前記スチレン系樹脂を含有する、<16>に記載の圧力応答性粒子。
<18>
圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度が90℃以下である、<1>~<17>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<19>
<1>~<18>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子を収容し、印刷物の製造装置に着脱されるカートリッジ。
<20>
<1>~<18>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子を収容し、記録媒体上に配置する配置手段と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む印刷物の製造装置。
<21>
色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段をさらに含む、<20>に記載の印刷物の製造装置。
<22>
<1>~<18>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置工程と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む印刷物の製造方法。
<23>
色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程をさらに含む、<22>に記載の印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
<1>に係る発明によれば、特定圧力応答性母粒子と、平均粒子径が40nm以下であるシリカのみからなる外添剤と、を含み、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である圧力応答性粒子を使用した場合に比べ、接着性に優れる圧力応答性粒子が提供される。
<2>に係る発明によれば、酸化チタン粒子は前記圧力応答性母粒子の表面に付着され、かつ特定圧力応答性母粒子と、平均粒子径が40nm以下であるシリカのみからなる外添剤と、を含み、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である圧力応答性粒子を使用した場合に比べ、接着性に優れる圧力応答性粒子が提供される。
<3>、<4>に係る発明によれば、酸化チタン粒子の平均粒子径が180nm超である場合に比べ、接着性に優れる圧力応答性粒子が提供される。
<5>に係る発明によれば、酸化チタン粒子の含有量が前記圧力応答性母粒子100質量部に対して0.5質量部未満又は5質量部超である場合に比べ、接着性に優れる圧力応答性粒子が提供される。
<6>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が95質量%超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を提供することができる。
<7>に係る発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80の範囲を外れる場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を提供することができる。
<8>に係る発明によれば、前記2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が5個以上である場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を提供することができる。
<9>、<10>又は<11>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の代わりにポリスチレンを含む圧力応答性粒子に比べて、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を提供することができる。
<12>に係る発明によれば、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む圧力応答性粒子であって、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がアクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーである圧力応答性粒子に比べて、接着性に優れる圧力応答性粒子を提供することができる。
<13>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の含有量が(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも少ない場合に比べて、接着性が維持される圧力応答性粒子を提供することができる。
<14>に係る発明によれば、特定圧力応答性母粒子が前記海島構造を有しない場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を提供することができる。
<15>に係る発明によれば、島相の平均径が500nm超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を提供することができる。
<16>に係る発明によれば、特定圧力応答性母粒子がコア部にスチレン系樹脂のみ又は(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のみを含有するコア・シェル構造である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を提供することができる。
<17>に係る発明によれば、シェル層がスチレン系樹脂を含有せずそれ以外の樹脂を含有する場合に比べて、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を提供することができる。
<18>に係る発明によれば、圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度が90℃超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を提供することができる。
<19>に係る発明によれば、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む圧力応答性粒子であって、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである圧力応答性粒子に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を収容したカートリッジを提供することができる。
<20>又は<21>に係る発明によれば、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む圧力応答性粒子であって、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである圧力応答性粒子に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を適用した印刷物の製造装置を提供することができる。
<22>又は<23>に係る発明によれば、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む圧力応答性粒子であって、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである圧力応答性粒子に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を適用した印刷物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る印刷物の製造装置の別の一例を示す概略図である。
【
図3】本実施形態に係る印刷物の製造装置の別の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本実施形態において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0013】
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
本実施形態において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0016】
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0017】
本実施形態において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0018】
本実施形態において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0019】
本実施形態において、記録媒体を折り重ね対向する面どうしを接着して形成した印刷物、又は、2以上の記録媒体を重ね対向する面どうしを接着して形成した印刷物を、「圧着印刷物」という。
【0020】
<圧力応答性粒子>
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、
スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含有する圧力応答性母粒子と、酸化チタン粒子を含有する外添剤と、を含み、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である、
【0021】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、上記構成とすることにより、圧着物を得ることにおいて、接着性に優れる。この作用機序は明らかではないが、以下のように推測される。
【0022】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、「少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である」との熱的特性を示すことにより、圧力によって相転移する。本実施形態において、圧力によって相転移する圧力応答性粒子とは、下記の式1を満たす圧力応答性粒子を意味する。
【0023】
式1・・・20℃≦T1-T2
式1において、T1は、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度である。T1及びT2の求め方は後述する。
【0024】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、「スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂」と、「少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」と、を含むことにより、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる。その機序として、次のことが推測される。
【0025】
一般的にスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは互いに対する相溶性が低いので、両樹脂は圧力応答性母粒子中に相分離した状態で含まれていると考えられる。また、圧力応答性母粒子が加圧されると、ガラス転移温度が比較的低い(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がまず流動化し、その流動化がスチレン系樹脂に波及し、両樹脂ともに流動化すると考えられる。また、圧力応答性母粒子中の両樹脂は、加圧によって流動化したのち減圧にしたがい固化して樹脂層を形成する際に、相溶性の低さゆえ、再び相分離状態を形成すると考えられる。
少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含む(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、主鎖に結合しているエステル基の種類が少なくとも2種類であることにより、(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーに比べて、固体状態での分子の整列度が低く、それゆえ加圧によって流動化しやすいと推測される。さらに、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上であると、エステル基が少なくとも2種類、密度高く存在することになるので、固体状態での分子の整列度がより低くなり、それゆえ加圧によってより流動化しやすいと推測される。したがって、本実施形態に係る圧力応答性粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである圧力応答性粒子に比べて、圧力によって流動化しやすい、つまり圧力によって相転移しやすいと推測される。
そして、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、再び固化する際においても分子の整列度が低いので、スチレン系樹脂との相分離が微小な相分離になると推測される。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂との相分離の状態が微小であるほど、被接着物に対する接着面の状態が均一性高くなり、接着性に優れると推測される。したがって、本実施形態に係る圧力応答性粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである圧力応答性粒子に比べて、接着性に優れると推測される。
【0026】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、上述の性質を有する圧力応答性母粒子に加えて、更に、外添剤として酸化チタン粒子を含有する。酸化チタン粒子を含有することにより、上記の圧力応答性母粒子と酸化チタン粒子との相互作用が働き、接着性の向上に寄与するものと推測される。特に、特定圧力応答性母粒子に含まれる樹脂種に対して、酸化チタン粒子がより効果的な相互作用を発揮し、接着性に優れる圧力応答性粒子が得られるものと考えられる。
【0027】
以下、本実施形態に係る圧力応答性粒子の成分、構造及び特性について詳細に説明する。以下の説明において、特に断らない限り、「スチレン系樹脂」は「スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂」を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」は「少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」を意味する。
【0028】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、少なくとも圧力応答性母粒子を含み、必要に応じて外添剤を含む。
【0029】
[圧力応答性母粒子]
圧力応答性母粒子は、少なくともスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する。圧力応答性母粒子は、着色剤、離型剤、その他添加剤を含有していてもよい。
【0030】
圧力応答性母粒子は、接着性を維持する観点から、スチレン系樹脂の含有量が(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多いことが好ましい。スチレン系樹脂の含有量は、スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量に対して、55質量%以上80質量%以下が好ましく、60質量%以上75質量%以下がより好ましく、65質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0031】
-スチレン系樹脂-
本実施形態に係る圧力応答性粒子を構成する圧力応答性母粒子は、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂を含有する。
【0032】
スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
【0033】
スチレン系樹脂を構成するスチレン以外のその他のビニルモノマーとしては、例えば、スチレン以外のスチレン系モノマー、アクリル系モノマーが挙げられる。
【0034】
スチレン以外のスチレン系モノマーとしては、例えば、ビニルナフタレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等のアルキル置換スチレン;p-フェニルスチレン等のアリール置換スチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン;p-クロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、p-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン;m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン等のニトロ置換スチレン;などが挙げられる。スチレン系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0038】
スチレン系樹脂を構成するその他のビニルモノマーとしては、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーのほかに、例えば、(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;も挙げられる。
【0039】
スチレン系樹脂は、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、重合成分として(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0040】
スチレン系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。
【0041】
スチレン系樹脂は重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましく、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。
【0042】
スチレン系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、60000以下が好ましく、55000以下がより好ましく、50000以下が更に好ましい。
【0043】
本実施形態において樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、GPC装置として東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムとして東ソー製TSKgel SuperHM-M(15cm)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて行う。樹脂の重量平均分子量は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0044】
スチレン系樹脂のガラス転移温度は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが更に好ましい。
【0045】
本実施形態において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0046】
樹脂のガラス転移温度は、重合成分の種類及び重合割合によって制御できる。ガラス転移温度は、主鎖に含まれるメチレン基、エチレン基、オキシエチレン基等の柔軟な単位の密度が高いほど低く、主鎖に含まれる芳香環、シクロヘキサン環等の剛直な単位の密度が高いほど高い傾向がある。また、ガラス転移温度は、側鎖における脂肪族基の密度が高いほど低い傾向がある。
【0047】
本実施形態において圧力応答性母粒子全体に占めるスチレン系樹脂の質量割合は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0048】
-(メタ)アクリル酸エステル系樹脂-
本実施形態に係る圧力応答性粒子を構成する圧力応答性母粒子は、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、90質量%以上であり、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、80:20~20:80であることが好ましく、70:30~30:70であることがより好ましく、60:40~40:60であることが更に好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差は、圧力によって転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、1個以上4個以下であることが好ましく、2個以上4個以下であることがより好ましく、3個又は4個であることが更に好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種がアクリル酸n-ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとであることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;スチレン;スチレン以外のスチレン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;が挙げられる。これらビニルモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含む場合、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、12万以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、25万以下が好ましく、22万以下がより好ましく、20万以下が更に好ましい。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度は、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0064】
本実施形態において圧力応答性母粒子全体に占める(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の質量割合は、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0065】
本実施形態において圧力応答性母粒子に含まれるスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計量は、圧力応答性母粒子全体に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0066】
-その他の樹脂-
圧力応答性母粒子は、例えば、ポリスチレン:エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;などを含有していてもよい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
-各種の添加剤-
圧力応答性母粒子は、必要に応じて、着色剤(例えば、顔料、染料)、離型剤(例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス)、帯電制御剤などを含有していてもよい。
【0068】
本実施形態に係る圧力応答性粒子を透明圧力応答性粒子とする場合は、圧力応答性母粒子中の着色剤量は圧力応答性母粒子全体に対して1.0質量%以下であることが好ましく、圧力応答性粒子の透明性を高める観点からは少ないほど好ましい。
【0069】
-圧力応答性母粒子の構造-
圧力応答性母粒子の内部構造は海島構造であることが好ましく、海島構造としては、スチレン系樹脂を含む海相と、当該海相に分散した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有する海島構造が好ましい。海相に含まれるスチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。島相に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。海相に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含まない島相が分散していてもよい。
【0070】
圧力応答性母粒子が海島構造を有する場合、島相の平均径は、200nm以上500nm以下が好ましい。島相の平均径が500nm以下であると、圧力によって圧力応答性母粒子が相転移しやすく、島相の平均径が200nm以上であると、圧力応答性母粒子に求められる機械的強度(例えば、現像器内で攪拌された際に変形しにくい強度)に優れる。これらの観点から、島相の平均径は、220nm以上450nm以下がより好ましく、250nm以上400nm以下が更に好ましい。
【0071】
海島構造の島相の平均径を上記範囲に制御する方法としては、例えば、後述する圧力応答性母粒子の製造方法において、スチレン系樹脂の量に対する(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の量を増減する、凝集した樹脂粒子を融合・合一する工程において高温に維持する時間を増減する、等が挙げられる。
【0072】
海島構造の確認、及び島相の平均径の測定は、次の方法により行う。
圧力応答性粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。海島構造の海相と島相とは、四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムによる樹脂の染色度合いに起因する濃淡で区別され、これを利用して海島構造の有無を確認する。SEM画像から100個の島相を無作為に選択し、各島相の長径を計測し、長径100個の平均値を平均径とする。
【0073】
圧力応答性母粒子は、単層構造の圧力応答性母粒子であってもよいし、コア部とコア部を被覆するシェル層とを有するコア・シェル構造の圧力応答性母粒子であってもよい。加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、圧力応答性母粒子はコア・シェル構造であることが好ましい。
【0074】
圧力応答性母粒子がコア・シェル構造を有する場合、圧力によって相転移しやすい観点から、コア部がスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有することが好ましい。さらに、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、シェル層がスチレン系樹脂を含有することが好ましい。スチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。
【0075】
圧力応答性母粒子がコア・シェル構造を有する場合、コア部がスチレン系樹脂を含む海相と、海相に分散した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有することが好ましい。島相の平均径は、先述の範囲であることが好ましい。さらに、コア部が上記構成であることに加えて、シェル層がスチレン系樹脂を含有することが好ましい。この場合、コア部の海相とシェル層とが連続した構造となり、圧力によって圧力応答性母粒子が相転移しやすい。コア部の海相及びシェル層に含まれるスチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。コア部の島相に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。
【0076】
シェル層に含まれる樹脂としては、ポリスチレン:エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;なども挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
シェル層の平均厚は、圧力応答性母粒子の変形抑制の観点から、120nm以上が好ましく、130nm以上がより好ましく、140nm以上が更に好ましく、圧力によって圧力応答性母粒子が相転移しやすい観点から、550nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましい。
【0078】
シェル層の平均厚は、次の方法により測定する。
圧力応答性粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。SEM画像から10個の圧力応答性母粒子断面を無作為に選択し、圧力応答性母粒子1個につきシェル層の厚さを20か所計測して平均値を算出し、圧力応答性母粒子10個の平均値を平均厚とする。
【0079】
圧力応答性母粒子の体積平均粒径(D50v)は、圧力応答性母粒子の取り扱いの容易さの観点から、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましく、圧力によって圧力応答性母粒子全体が相転移しやすい観点から、12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、9μm以下が更に好ましい。
【0080】
圧力応答性母粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)及びアパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて測定する。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量%水溶液2mLに圧力応答性母粒子を0.5mg以上50mg以下加え分散させ、次いで、電解液(ISOTON-II、ベックマン・コールター社製)100mL以上150mL以下と混合し、超音波分散機で1分間分散処理を行い、得られた分散液を試料とする。試料中の粒径2μm以上60μm以下の粒子50000個の粒径を測定する。小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0081】
[外添剤]
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、酸化チタン粒子を含有する外添剤を含む。本実施形態に係る圧力応答性粒子が、外添剤として酸化チタン粒子を含むことにより、接着性に優れる圧力応答性粒子が提供される。本実施形態に係る圧力応答性粒子において、酸化チタン粒子は、圧力応答性母粒子の表面に付着されることが好ましい。
【0082】
酸化チタン粒子の結晶構造は特に限定されるものではなく、例えばルチル型、アナターゼ型、又はブルカイト型が例示される。
酸化チタン粒子の平均一次粒子径は、接着性の向上の観点から、1nm以上180nm以下であることが好ましく、1nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上90nm以下であることが更に好ましい。
【0083】
平均一次粒子径は、次の方法により測定される。
ここで、粒子径とは、一次粒子像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)である。具体的に、酸化チタン粒子を含む外添剤が外添された圧力応答性粒子からなる圧力応答性粒子層についてSEM(Scanning Electron Microscope)装置により任意の倍率で観察し電子顕微鏡画像を撮影する。得られた電子顕微鏡画像における、任意の酸化チタン粒子について、画像解析により円相当径を求める。この操作を、任意の酸化チタン粒子100個について行う。そして、各酸化チタン粒子の一次粒子径の個数基準の分布において小径側から累積50%となる粒子径(50%径、D50v)を、酸化チタン粒子の平均一次粒子径とする。
【0084】
本実施形態に係る圧力応答性粒子の外添剤に含まれる酸化チタン粒子は、圧力応答性粒子中における分散性向上の観点から、表面処理剤により表面処理された酸化チタン粒子であることが好ましい。
表面処理剤としては、ケイ素含有有機化合物が好ましい。ケイ素含有有機化合物としては、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0085】
酸化チタン粒子の表面処理に用いるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン;が挙げられる。
【0086】
酸化チタン粒子の表面処理に用いるシラザン化合物としては、例えば、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0087】
酸化チタン粒子の表面処理に用いるシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の変性シリコーンオイル(「反応性シリコーンオイル」ともいう。);等が挙げられる。
【0088】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0089】
表面処理剤の量(「処理量」ともいう。)は、例えば、表面処理剤を除いた酸化チタン粒子の質量に対して0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0090】
本実施形態に係る圧力応答性粒子の外添剤に含まれる酸化チタン粒子の含有量は、接着性の向上の観点から、特定圧力応答性母粒子100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.5質量部3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上2.5質量部以下であることが更に好ましい。
【0091】
[その他の外添剤]
酸化チタン粒子以外の外添剤(以下、「その他の外添剤」とも称する。)としては、例えば、無機粒子が挙げられる。無機粒子として、SiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0092】
その他の外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量は、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0093】
その他の外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0094】
その他の外添剤の外添量は、圧力応答性母粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0095】
[圧力応答性粒子の特性]
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、少なくとも2つのガラス転移温度を有するところ、ガラス転移温度の1つはスチレン系樹脂のガラス転移温度と推測され、もう1つは(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度と推測される。
【0096】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、3つ以上のガラス転移温度を有していてもよいが、ガラス転移温度の個数は2個であることが好ましい。ガラス転移温度の個数が2個である形態としては、圧力応答性粒子に含まれる樹脂がスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のみである形態;スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂ではないその他の樹脂の含有量が少ない形態(例えば、その他の樹脂の含有量が圧力応答性粒子全体に対して5質量%以下である形態);である。
【0097】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、より好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、その上限が、例えば、140℃以下であり、130℃以下であり、120℃以下である。
【0098】
本実施形態に係る圧力応答性粒子が示す最も低いガラス転移温度は、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0099】
本実施形態に係る圧力応答性粒子が示す最も高いガラス転移温度は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましい。
【0100】
本実施形態において、圧力応答性粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0101】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力によって相転移する圧力応答性粒子であり、下記の式1を満たす。
式1・・・10℃≦T1-T2
式1において、T1は、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度である。
【0102】
温度差T1-T2は、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、10℃以上がより好ましく、15℃以上が更に好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
T1の値は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。
T2の値は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
【0103】
圧力応答性粒子が圧力によって相転移しやすいことを示す指標として、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T1と、圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T2との温度差(T1-T2)が挙げられ、温度差(T1-T2)は5℃以上であることが好ましい。温度差(T1-T2)は、一般的に25℃以下である。
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力によって相転移しやすい観点から、温度差(T1-T2)が5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
【0104】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、温度差(T1-T2)が5℃以上となる観点から、圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T2が90℃以下であることが好ましく、温度T2が85℃以下であることがより好ましく、温度T2が80℃以下であることが更に好ましい。温度T2の下限は、例えば60℃以上である。
【0105】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力1MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T1が、例えば95℃以上115℃以下である。
【0106】
温度T1及び温度T2並びにT1及びT2を求める方法は、次のとおりである。
圧力応答性粒子を圧縮してペレット状の試料を作製する。ペレット状の試料をフローテスター(島津製作所製、CFT-500)にセットして、印加圧力を1MPaに固定して、1MPaにおける温度に対する粘度を測定する。得られた粘度のグラフから、印加圧力1MPaにおいて粘度が104Pa・sになるときの温度T1を決定する。印加圧力1MPaを10MPaとした以外は、T1と同様の方法により、T2を決定する。得られたT1及びT2から差をとり、温度差ΔT(T1-T2)を算出する。
【0107】
[圧力応答性粒子の製造方法]
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力応答性母粒子を製造後、圧力応答性母粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0108】
圧力応答性母粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により圧力応答性母粒子を得ることがよい。
【0109】
圧力応答性母粒子を凝集合一法により製造する場合、例えば、
スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂粒子が分散したスチレン系樹脂粒子分散液を準備する工程(スチレン系樹脂粒子分散液準備工程)と、
スチレン系樹脂粒子分散液中で(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する工程(複合樹脂粒子形成工程)と、
複合樹脂粒子が分散した複合樹脂粒子分散液中で複合樹脂粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、
凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、圧力応答性母粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、圧力応答性母粒子を製造する。
【0110】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤及び離型剤を含まない圧力応答性母粒子を得る方法について説明する。着色剤、離型剤、その他添加剤は、必要に応じて用いてもよい。圧力応答性母粒子に着色剤及び離型剤を含有させる場合は、複合樹脂粒子分散液と着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合した後、融合・合一工程を行う。着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液は、例えば、材料を混合した後、公知の分散機を用いて分散処理を行うことで作製できる。
【0111】
-スチレン系樹脂粒子分散液準備工程-
スチレン系樹脂粒子分散液は、例えば、界面活性剤によりスチレン系樹脂粒子を分散媒中に分散させた分散液である。
【0112】
分散媒としては、例えば、水、アルコール類などの水系媒体が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。これらの中でも、アニオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば、スチレン系樹脂と分散媒とを混合し、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等を用いて攪拌して分散させる方法が挙げられる。
【0115】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する別の方法としては、乳化重合法が挙げられる。具体的には、スチレン系樹脂の重合成分と連鎖移動剤又は重合開始剤とを混合した後、界面活性剤を含有する水系媒体をさらに混合し、攪拌して乳化液を作製し、乳化液中でスチレン系樹脂を重合する。この際、連鎖移動剤としてドデカンチオールを用いることが好ましい。
【0116】
スチレン系樹脂粒子分散液中に分散するスチレン系樹脂粒子の体積平均粒径は、100nm以上250nm以下が好ましく、120nm以上220nm以下がより好ましく、150nm以上200nm以下が更に好ましい。
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)にて粒径を測定し、小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0117】
スチレン系樹脂粒子分散液に含まれるスチレン系樹脂粒子の含有量は、30質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0118】
-複合樹脂粒子形成工程-
スチレン系樹脂粒子分散液と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分とを混合し、スチレン系樹脂粒子分散液中で(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する。
【0119】
複合樹脂粒子は、スチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態で含まれる樹脂粒子であることが好ましい。当該樹脂粒子は、例えば、下記の方法で製造することができる。
【0120】
スチレン系樹脂粒子分散液に、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分(少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー群)を添加し、必要に応じて水系媒体を添加する。次いで、分散液をゆっくりと攪拌しながら、分散液の温度をスチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えばスチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱する。次いで、温度を保ちながら、重合開始剤を含有する水系媒体をゆっくりと滴下し、さらに1時間以上15時間以下の範囲で長時間攪拌を継続する。この際、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0121】
詳細な機序は必ずしも明らかではないが、上記の方法を採用した場合、スチレン系樹脂粒子中にモノマーと重合開始剤とが含浸し、スチレン系樹脂粒子の内部で(メタ)アクリル酸エステルが重合すると推測される。これによって、スチレン系樹脂粒子の内部に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が含まれており、粒子内部においてスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態を形成している複合樹脂粒子が得られると推測される。
【0122】
複合樹脂粒子分散液中に分散する複合樹脂粒子の体積平均粒径は、140nm以上300nm以下が好ましく、150nm以上280nm以下がより好ましく、160nm以上250nm以下が更に好ましい。
【0123】
複合樹脂粒子分散液に含まれる複合樹脂粒子の含有量は、20質量%以上50質量%以下が好ましく、30質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0124】
-凝集粒子形成工程-
複合樹脂粒子分散液中で複合樹脂粒子を凝集させ、目的とする圧力応答性母粒子の径に近い径を持つ凝集粒子を形成する。
【0125】
具体的には、例えば、複合樹脂粒子分散液に凝集剤を添加すると共に、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、スチレン系樹脂のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、スチレン系樹脂のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、複合樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
【0126】
凝集粒子形成工程においては、複合樹脂粒子分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0127】
凝集剤としては、例えば、複合樹脂粒子分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0128】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0129】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、スチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えばスチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、圧力応答性母粒子を形成する。
【0130】
以上の工程を経て得られた圧力応答性母粒子は、通常、スチレン系樹脂を含む海相と、当該海相に分散した(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相とを有する海島構造を有する。複合樹脂粒子においてはスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態であったところ、融合・合一工程において、スチレン系樹脂が互いに集まって海相になり、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が互いに集まって島相になるものと推測される。
【0131】
海島構造の島相の平均径は、例えば、複合樹脂粒子形成工程において使用するスチレン系樹脂粒子分散液の量又は少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルの量を増減すること、融合・合一工程において高温に維持する時間を増減すること、等によって制御できる。
【0132】
コア・シェル構造の圧力応答性母粒子は、例えば、
凝集粒子分散液を得た後、凝集粒子分散液とスチレン系樹脂粒子分散液とをさらに混合し、凝集粒子の表面にさらにスチレン系樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造の圧力応答性母粒子を形成する工程と、
を経て製造する。
上記工程を経て得られるコア・シェル構造の圧力応答性母粒子は、スチレン系樹脂を含むシェル層を有する。スチレン系樹脂粒子分散液の代わりに他の種類の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を用いて、他の種類の樹脂を含むシェル層を形成してもよい。
【0133】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成された圧力応答性母粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態の圧力応答性母粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0134】
そして、本実施形態に係る圧力応答性粒子は、例えば、得られた乾燥状態の圧力応答性母粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。さらに、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使って圧力応答性粒子の粗大粒子を取り除いてもよい。
【0135】
<印刷物の製造装置、印刷物の製造方法、印刷物>
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を収容し、前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置手段と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む。
【0136】
配置手段は、例えば、圧力応答性粒子を記録媒体上に付与する付与装置と、記録媒体上に付与された圧力応答性粒子を記録媒体上に固定する固定装置と、を備える。
【0137】
圧着手段は、例えば、圧力応答性粒子が配置された記録媒体を折り重ねる折り装置、又は、圧力応答性粒子が配置された記録媒体と別の記録媒体とを重ねる重ね装置と、重なった記録媒体を加圧する加圧装置と、を備える。
【0138】
圧着手段が備える加圧装置は、圧力応答性粒子が配置された記録媒体に圧力を印加する。これによって、記録媒体上において圧力応答性粒子が流動化し接着性を発揮する。
圧着手段が記録媒体に印加する圧力は、3MPa以上300MPa以下が好ましく、10MPa以上200MPa以下がより好ましく、30MPa以上150MPa以下が更に好ましい。
【0139】
本実施形態に係る印刷物の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法が実施される。本実施形態に係る印刷物の製造方法は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を用いるとともに、前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置工程と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む。
【0140】
配置工程は、例えば、圧力応答性粒子を記録媒体上に付与する工程と、記録媒体上に付与された圧力応答性粒子を記録媒体上に固定する工程と、を含む。
【0141】
圧着工程は、例えば、記録媒体を折り重ねる折り工程又は記録媒体と別の記録媒体とを重ねる重ね工程と、重なった記録媒体を加圧する加圧工程と、を備える。
【0142】
圧力応答性粒子は、記録媒体の全面に配置されてもよく、記録媒体の一部に配置されてもよい。圧力応答性粒子は、記録媒体上に1層又は複数層配置される。圧力応答性粒子の層は、記録媒体の面方向に連続した層であってもよいし、記録媒体の面方向に不連続な層であってもよい。圧力応答性粒子の層は、圧力応答性粒子が粒子のまま並んだ層であってもよく、隣接する圧力応答性粒子どうしが融合して並んだ層であってもよい。
【0143】
記録媒体上の圧力応答性粒子(好ましくは透明な圧力応答性粒子)の量は、配置された領域において、例えば、0.5g/m2以上50g/m2以下であり、1g/m2以上40g/m2以下であり、1.5g/m2以上30g/m2以下である。記録媒体上の圧力応答性粒子(好ましくは透明な圧力応答性粒子)の層厚は、例えば、0.2μm以上25μm以下であり、0.4μm以上20μm以下であり、0.6μm以上15μm以下である。
【0144】
本実施形態に係る印刷物の製造装置に適用する記録媒体としては、例えば、紙、紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、布、不織布、樹脂フィルム、樹脂シートなどが挙げられる。記録媒体は、片面又は両面に画像を有していてもよい。
【0145】
以下、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0146】
図1は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示す印刷物の製造装置は、配置手段100と、配置手段100の下流に配置された圧着手段200とを備える。矢印は、記録媒体の搬送方向を示す。
【0147】
配置手段100は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を用いて、圧力応答性粒子を記録媒体P上に配置する装置である。記録媒体Pには、片面又は両面に予め画像が形成されている。
【0148】
配置手段100は、付与装置110と、付与装置110の下流に配置された固定装置120とを備えている。
【0149】
付与装置110は、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に付与する。付与装置110が採用する付与方法としては、例えば、スプレー法、バーコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ラミネート法、電子写真法などが挙げられる。付与方法に応じて、圧力応答性粒子Mを分散媒に分散させ液体組成物を調製し、液体組成物を付与装置110に適用してもよい。
【0150】
付与装置110によって圧力応答性粒子Mが付与された記録媒体Pは固定装置120へ搬送される。
【0151】
固定装置120は、例えば、加熱源を備え、通過する記録媒体P上の圧力応答性粒子Mを加熱し、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に固定させる加熱装置;一対の加圧部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)を備え、通過する記録媒体Pを加圧し、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に固定させる加圧装置;内部に加熱源を備える一対の加圧部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)を備え、通過する記録媒体Pを加圧及び加熱し、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に固定させる加圧加熱装置;などである。
【0152】
固定装置120が加熱源を有する場合、固定装置120によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、10℃以上80℃以下が好ましく、20℃以上60℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下が更に好ましい。
【0153】
固定装置120が加圧部材を有する場合、加圧部材が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよい。
【0154】
記録媒体Pは、配置手段100を通過することによって、画像上に圧力応答性粒子Mが付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0155】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、配置手段100と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。配置手段100と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段100と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0156】
圧着手段200は、折り装置220と加圧装置230とを備え、記録媒体P1を折り重ねて圧着する手段である。
【0157】
折り装置220は、当該装置を通過する記録媒体P1を折り重ね、折り重なった記録媒体P2を作製する。記録媒体P2の折り重なり方は、例えば、二つ折り、三つ折り、四つ折りであり、記録媒体P2の一部のみが折り重なっている形態でもよい。記録媒体P2は、対向する2つの面の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、圧力応答性粒子Mが配置された状態である。
【0158】
折り装置220は、記録媒体P2に圧力を印加する一対の加圧部材(例えば、ロール/ロール、ベルト/ロール)を有していてもよい。折り装置220の加圧部材が記録媒体P2に印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよい。
【0159】
圧着手段200は、折り装置220の代わりに、記録媒体P1と別の記録媒体とを重ねる重ね装置を備えていてもよい。記録媒体P1と別の記録媒体との重なりの形態は、例えば、記録媒体P1上に別の記録媒体が1枚重なっている形態、記録媒体P1上の複数個所に別の記録媒体が1枚ずつそれぞれ重なっている形態などである。別の記録媒体は、片面又は両面に予め画像が形成されている記録媒体でもよく、画像が形成されていない記録媒体でもよく、予め作製しておいた圧着印刷物でもよい。
【0160】
折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2は、加圧装置230に向けて搬送される。
【0161】
加圧装置230は、一対の加圧部材(則ち、加圧ロール231及び232)を備える。加圧ロール231と加圧ロール232とは互いの外周面で接触し且つ押し合い、通過する記録媒体P2に圧力を印加する。加圧装置230が備える一対の加圧部材は、加圧ロールと加圧ロールの組合せに限られず、加圧ロールと加圧ベルトの組合せ、加圧ベルトと加圧ベルトの組合せでもよい。
【0162】
加圧装置230を通過する記録媒体P2に圧力が印加されると、記録媒体P2上において圧力応答性粒子Mが圧力によって流動化し接着性を発揮する。
【0163】
加圧装置230は内部に、記録媒体P2を加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。なお、加圧装置230が内部に加熱源を有しないことは、加圧装置230が備えるモーター等の発熱により、加圧装置230内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0164】
記録媒体P2が加圧装置230を通過することによって、折り重なった面どうしが流動化した圧力応答性粒子Mによって接着され、圧着印刷物P3が作製される。圧着印刷物P3は、対向する2つの面どうしが、一部又は全部、接着されている。
【0165】
完成した圧着印刷物P3は、加圧装置230から搬出される。
【0166】
圧着印刷物P3の第一の形態は、折り重なった記録媒体が、対向する面において、圧力応答性粒子Mによって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、折り装置220を備える印刷物の製造装置によって製造される。
【0167】
圧着印刷物P3の第二の形態は、重なった複数の記録媒体が、対向する面において、圧力応答性粒子Mによって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、重ね装置を備える圧着印刷物の製造装置によって製造される。
【0168】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体P2を折り装置220(又は重ね装置)から加圧装置230へ連続して搬送する形態の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2を貯留し、記録媒体P2の貯留量が予め定められた量に達した後、記録媒体P2を加圧装置230に搬送する形態の装置でもよい。
【0169】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とが離隔している場合、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、例えば、記録媒体P2を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0170】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、配置手段100と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって圧力応答性粒子Mが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって圧力応答性粒子Mが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって圧力応答性粒子Mによって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0171】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0172】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段をさらに含んでもよい。有色画像形成手段は、例えば、色材として有色のインクを用いてインクジェット方式により記録媒体上に有色インク画像を形成する手段、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する手段等が挙げられる。
【0173】
上記構成の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法であって、色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程をさらに含む製造方法が実施される。有色画像形成工程は、具体的には、例えば、色材として有色のインクを用いてインクジェット方式により記録媒体上に有色インク画像を形成する工程、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する工程等が挙げられる。
【0174】
<電子写真方式による印刷物の製造>
本実施形態に係る圧力応答性粒子を電子写真方式に適用する実施形態例を説明する。電子写真方式において、圧力応答性粒子はトナーに相当する。
【0175】
(静電荷像現像剤)
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を少なくとも含むものである。本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係る圧力応答性粒子のみを含む一成分現像剤であってもよいし、本実施形態に係る圧力応答性粒子とキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0176】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面を樹脂で被覆したキャリアであってもよい。
【0177】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0178】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン粒子、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0179】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。
【0180】
二成分現像剤における圧力応答性粒子とキャリアとの混合比(質量比)は、圧力応答性粒子:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0181】
(印刷物の製造装置、印刷物の製造方法)
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤を収容し、前記圧力応答性粒子を電子写真方式により記録媒体上に配置する配置手段と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む。
【0182】
本実施形態に係る印刷物の製造装置によって、電子写真方式による印刷物の製造方法が実施してもよい。
【0183】
本実施形態に係る印刷物の製造方法は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤を用いて、前記圧力応答性粒子を電子写真方式により記録媒体上に配置する配置工程と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む。
【0184】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む前記配置手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を圧力応答性粒子付与部として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える。
前記配置手段は、記録媒体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を定着
する定着手段をさらに備えることが好ましい。
【0185】
本実施形態に係る印刷物の製造方法が含む前記配置工程は、例えば、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
本実施形態に係る静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を圧力応答性粒子付与部として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
を含む。
前記配置工程は、記録媒体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を定着する定着工程をさらに含むことが好ましい。
【0186】
前記配置手段は、例えば、感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を記録媒体表面に二次転写する中間転写方式の装置;圧力応答性粒子付与部の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;圧力応答性粒子付与部の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。前記配置手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に圧力応答性粒子付与部が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0187】
前記配置手段は、現像手段を含む部分が、前記配置手段に着脱するカートリッジ構造(いわゆるプロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0188】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む圧着手段は、本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置された記録媒体に圧力を印加する。これによって、記録媒体上において本実施形態に係る圧力応答性粒子が流動化し接着性を発揮する。本実施形態に係る圧力応答性粒子を流動化させる目的で圧着手段が記録媒体に印加する圧力は、3MPa以上300MPa以下が好ましく、10MPa以上200MPa以下がより好ましく、30MPa以上150MPa以下が更に好ましい。
【0189】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、記録媒体の全面に配置されてもよく、記録媒体の一部に配置されてもよい。本実施形態に係る圧力応答性粒子は、記録媒体上に1層又は複数層配置される。本実施形態に係る圧力応答性粒子の層は、記録媒体の面方向に連続した層であってもよいし、記録媒体の面方向に不連続な層であってもよい。
【0190】
記録媒体上の本実施形態に係る圧力応答性粒子の量は、配置された領域において、例えば、0.5g/m2以上50g/m2以下であり、1g/m2以上40g/m2以下であり、1.5g/m2以上30g/m2以下である。記録媒体上の本実施形態に係る圧力応答性粒子の層厚は、例えば、0.2μm以上25μm以下であり、0.4μm以上20μm以下であり、0.6μm以上15μm以下である。
【0191】
本実施形態に係る印刷物の製造装置に適用する記録媒体としては、例えば、紙、紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、布、不織布、樹脂フィルム、樹脂シートなどが挙げられる。記録媒体は、片面又は両面に画像を有していてもよい。
【0192】
以下、電子写真方式を適用した本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0193】
図2は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。
図2に示す印刷物の製造装置は、配置手段100と、配置手段100の下流に配置された圧着手段200とを備える。矢印は、感光体の回転方向又は記録媒体の搬送方向を示す。
【0194】
配置手段100は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤を用いて、本実施形態に係る圧力応答性粒子を電子写真方式により記録媒体P上に配置する直接転写方式の装置である。記録媒体Pには、片面又は両面に予め画像が形成されている。
【0195】
配置手段100は、感光体101を有している。感光体101の周囲には、感光体101の表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)102、帯電した感光体101の表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)103、静電荷像に圧力応答性粒子を供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)104、現像した圧力応答性粒子付与部を記録媒体P上に転写する転写ロール(転写手段の一例)105、及び転写後に感光体101の表面に残存する圧力応答性粒子を除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)106が順に配置されている。
【0196】
配置手段100が本実施形態に係る圧力応答性粒子を記録媒体P上に配置する動作について説明する。
まず、帯電ロール102によって感光体101の表面が帯電される。帯電した感光体101の表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置103がレーザ光線を照射する。それにより、本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置パターンの静電荷像が感光体101の表面に形成される。
【0197】
感光体101上に形成された静電荷像は、感光体101の走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体101上の静電荷像が、現像装置104によって現像され可視化され圧力応答性粒子付与部になる。
【0198】
現像装置104内には、少なくとも本実施形態に係る圧力応答性粒子とキャリアとを含む現像剤が収容されている。本実施形態に係る圧力応答性粒子は、現像装置104の内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体101の表面が現像装置104を通過していくことにより、感光体101表面の静電荷像に圧力応答性粒子が静電的に付着し、静電荷像が圧力応答性粒子によって現像される。圧力応答性粒子の圧力応答性粒子付与部が形成された感光体101は、引き続き走行し、感光体101上に現像された圧力応答性粒子付与部が転写位置へ搬送される。
【0199】
感光体101上の圧力応答性粒子付与部が転写位置へ搬送されると、転写ロール105に転写バイアスが印加され、感光体101から転写ロール105に向う静電気力が圧力応答性粒子付与部に作用し、感光体101上の圧力応答性粒子付与部が記録媒体P上に転写される。
【0200】
感光体101上に残留した圧力応答性粒子は感光体クリーニング装置106で除去されて回収される。感光体クリーニング装置106は、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等である。感光体クリーニング装置106は、感光体の表面に残留した本実施形態に係る圧力応答性粒子が圧力により流動化して感光体の表面に膜状に付着する現象を抑制する観点から、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0201】
圧力応答性粒子付与部が転写された記録媒体Pは定着装置(定着手段の一例)107へと搬送される。定着装置107は、例えば、一対の定着部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)である。配置手段100は、定着装置107を備えていなくてもよいが、記録媒体Pから本実施形態に係る圧力応答性粒子が脱落することを抑制する観点から、定着装置107を備えていることが好ましい。定着装置107が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.2MPa以上1MPa以下が好ましい。
【0202】
定着装置107は内部に、記録媒体Pを加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。定着装置107が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、150℃以上220℃以下が好ましく、150℃以上210℃以下がより好ましく、160℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、定着装置107が内部に加熱源を有しないことは、配置手段100が備えるモーター等の発熱により、定着装置107内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0203】
記録媒体Pは、配置手段100を通過することによって、画像上に本実施形態に係る圧力応答性粒子が付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0204】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、配置手段100と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。配置手段100と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段100と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0205】
圧着手段200は、折り装置220と加圧装置230とを備え、記録媒体P1を折り重ねて圧着する手段である。
【0206】
折り装置220は、当該装置を通過する記録媒体P1を折り重ね、折り重なった記録媒体P2を作製する。記録媒体P2の折り重なり方は、例えば、二つ折り、三つ折り、四つ折りであり、記録媒体P2の一部のみが折り重なっている形態でもよい。記録媒体P2は、対向する2つの面の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置された状態である。
【0207】
折り装置220は、記録媒体P2に圧力を印加する一対の加圧部材(例えば、ロール/ロール、ベルト/ロール)を有していてもよい。折り装置220の加圧部材が記録媒体P2に印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、1MPa以上10MPa以下が好ましい。
【0208】
圧着手段200は、折り装置220の代わりに、記録媒体P1と別の記録媒体とを重ねる重ね装置を備えていてもよい。記録媒体P1と別の記録媒体との重なりの形態は、例えば、記録媒体P1上に別の記録媒体が1枚重なっている形態、記録媒体P1上の複数個所に別の記録媒体が1枚ずつそれぞれ重なっている形態などである。別の記録媒体は、片面又は両面に予め画像が形成されている記録媒体でもよく、画像が形成されていない記録媒体でもよく、予め作製しておいた圧着印刷物でもよい。
【0209】
折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2は、加圧装置230に向けて搬送される。
【0210】
加圧装置230は、一対の加圧部材(則ち、加圧ロール231及び232)を備える。加圧ロール231と加圧ロール232とは互いの外周面で接触し且つ押し合い、通過する記録媒体P2に圧力を印加する。加圧装置230が備える一対の加圧部材は、加圧ロールと加圧ロールの組合せに限られず、加圧ロールと加圧ベルトの組合せ、加圧ベルトと加圧ベルトの組合せでもよい。
【0211】
加圧装置230を通過する記録媒体P2に圧力が印加されると、記録媒体P2上において本実施形態に係る圧力応答性粒子が圧力によって流動化し接着性を発揮する。加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力は、3MPa以上300MPa以下が好ましく、10MPa以上200MPa以下がより好ましく、30MPa以上150MPa以下が更に好ましい。
【0212】
加圧装置230は内部に、記録媒体P2を加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。加圧装置230が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体P2の表面温度は、30℃以上120℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましく、50℃以上90℃以下が更に好ましい。なお、加圧装置230が内部に加熱源を有しないことは、加圧装置230が備えるモーター等の発熱により、加圧装置230内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0213】
記録媒体P2が加圧装置230を通過することによって、折り重なった面どうしが流動化した本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着され、圧着印刷物P3が作製される。圧着印刷物P3は、対向する面どうしが、一部又は全部、接着されている。
【0214】
完成した圧着印刷物P3は、加圧装置230から搬出される。
【0215】
圧着印刷物P3の第一の形態は、折り重なった記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、折り装置220を備える印刷物の製造装置によって製造される。
【0216】
圧着印刷物P3の第二の形態は、重なった複数の記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、重ね装置を備える圧着印刷物の製造装置によって製造される。
【0217】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体P2を折り装置220(又は重ね装置)から加圧装置230へ連続して搬送する形態の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2を貯留し、記録媒体P2の貯留量が予め定められた量に達した後、記録媒体P2を加圧装置230に搬送する形態の装置でもよい。
【0218】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とが離隔している場合、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、例えば、記録媒体P2を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0219】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、配置手段100と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0220】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0221】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段をさらに含んでもよい。有色画像形成手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
有色の静電荷像現像剤を収容し、有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着手段と、を備える。
【0222】
上記構成の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法であって、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程をさらに含む製造方法が実施される。有色画像形成工程は、具体的には、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着工程と、を含む。
【0223】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む有色画像形成手段は、例えば、感光体の表面に形成された有色のトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成された有色のトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写された有色のトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;有色のトナー画像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;有色のトナー画像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。有色画像形成手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に有色のトナー画像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された有色のトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された有色のトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0224】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤の配置手段と有色画像形成手段とが中間転写方式を採用している場合、配置手段と有色画像形成手段とは、中間転写体及び二次転写手段を共有していてもよい。
【0225】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む像現像剤の配置手段と有色画像形成手段とは、熱定着手段を共有していてもよい。
【0226】
以下、有色画像形成手段を備える本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0227】
図3は、電子写真方式を適用した本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。
図3に示す印刷物の製造装置は、記録媒体への本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置と有色画像形成とを一括で行う印刷手段300と、印刷手段300の下流に配置された圧着手段200とを備える。
【0228】
印刷手段300は、5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段である。印刷手段300は、本実施形態に係る圧力応答性粒子(T)を配置するユニット10Tと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色画像を形成するユニット10Y、10M、10C及び10Kとを備えている。ユニット10Tが、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤を用いて記録媒体P上に本実施形態に係る圧力応答性粒子を配置する配置手段である。ユニット10Y、10M、10C及び10Kがそれぞれ、有色トナーを含む現像剤を用いて記録媒体P上に有色画像を形成する手段である。ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、電子写真方式を採用している。
【0229】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、水平方向に互いに離間して並設されている。ユニット10T、10Y、10M、10C、10Kは、印刷手段300に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0230】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kの下方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22、支持ロール23、及び対向ロール24に巻きつけて設けられ、ユニット10Tからユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置21が備えられている。
【0231】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kはそれぞれ、現像装置(現像手段の一例)4T、4Y、4M、4C及び4Kを備える。現像装置4T、4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、圧力応答性粒子カートリッジ8T、及び、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められた本実施形態に係る圧力応答性粒子、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーの供給がなされる。
【0232】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、本実施形態に係る圧力応答性粒子を記録媒体上に配置するユニット10Tについて代表して説明する。
【0233】
ユニット10Tは、感光体1Tを有している。感光体1Tの周囲には、感光体1Tの表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2T、帯電した感光体1Tの表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3T、静電荷像に圧力応答性粒子を供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4T、現像した圧力応答性粒子付与部を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5T、及び一次転写後に感光体1Tの表面に残存する圧力応答性粒子を除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Tが順に配置されている。一次転写ロール5Tは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Tに対向した位置に設けられている。
【0234】
以下、ユニット10Tの動作を例示しながら、記録媒体P上に本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置と有色画像形成とを行う動作について説明する。
まず、帯電ロール2Tによって感光体1Tの表面が帯電される。帯電した感光体1Tの表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置3Tがレーザ光線を照射する。それにより、本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置パターンの静電荷像が感光体1Tの表面に形成される。
【0235】
感光体1T上に形成された静電荷像は、感光体1Tの走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体1T上の静電荷像が、現像装置4Tによって現像され可視化され圧力応答性粒子付与部になる。
【0236】
現像装置4T内には、少なくとも本実施形態に係る圧力応答性粒子とキャリアとを含む現像剤が収容されている。本実施形態に係る圧力応答性粒子は、現像装置4Tの内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体1Tの表面が現像装置4Tを通過していくことにより、感光体1T表面の静電荷像に圧力応答性粒子が静電的に付着し、静電荷像が圧力応答性粒子によって現像される。圧力応答性粒子の圧力応答性粒子付与部が形成された感光体1Tは、引き続き走行し、感光体1T上に現像された圧力応答性粒子付与部が一次転写位置へ搬送される。
【0237】
感光体1T上の圧力応答性粒子付与部が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Tに一次転写バイアスが印加され、感光体1Tから一次転写ロール5Tに向う静電気力が圧力応答性粒子付与部に作用し、感光体1T上の圧力応答性粒子付与部が中間転写ベルト20上に転写される。感光体1T上に残留した圧力応答性粒子は感光体クリーニング装置6Tで除去されて回収される。感光体クリーニング装置6Tは、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等であり、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0238】
ユニット10Y、10M、10C及び10Kにおいても、ユニット10Tと同様の動作が、有色トナーを含む現像剤を用いて行われる。ユニット10Tにて本実施形態に係る圧力応答性粒子付与部が転写された中間転写ベルト20が、ユニット10Y、10M、10C、10Kを順次通過し、中間転写ベルト20上に各色のトナー画像が多重転写される。
【0239】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kを通して圧力応答性粒子付与部とトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する対向ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に給紙され、二次転写バイアスが対向ロール24に印加される。このとき、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力が圧力応答性粒子付与部とトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上の圧力応答性粒子付与部とトナー画像が記録媒体P上に転写される。
【0240】
圧力応答性粒子付与部とトナー画像が転写された記録媒体Pは熱定着装置(熱定着手段の一例)28へと搬送される。熱定着装置28は、ハロゲンヒータ等の加熱源を備え、記録媒体Pを加熱する。熱定着装置28によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、150℃以上220℃以下が好ましく、150℃以上210℃以下がより好ましく、160℃以上200℃以下が更に好ましい。熱定着装置28を通過することにより、有色のトナー画像が記録媒体P上へ熱定着される。
【0241】
熱定着装置28は、記録媒体Pから本実施形態に係る圧力応答性粒子が脱落することを抑制する観点、及び、有色画像の記録媒体Pへの定着性を向上させる観点から、加熱と共に加圧を行う装置であることが好ましく、例えば、内部に加熱源を備える一対の定着部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)であってもよい。熱定着装置28が加圧を行う場合、熱定着装置28が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.2MPa以上1MPa以下が好ましい。
【0242】
記録媒体Pは、印刷手段300を通過することによって、有色画像及び本実施形態に係る圧力応答性粒子が付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0243】
図3における圧着手段200の構成は、
図2における圧着手段200と同じでよく、圧着手段200については構成及び動作の詳細な説明を省略する。
【0244】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、印刷手段300と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。印刷手段300と圧着手段200とが離隔している場合、印刷手段300と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0245】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、印刷手段300と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0246】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して有色画像形成工程、配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0247】
<カートリッジ>
本実施形態に係るカートリッジは、本実施形態に係る圧力応答性粒子を収容し、印刷物の製造装置に着脱されるカートリッジである。カートリッジは、印刷物の製造装置内に設けられた圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置手段に供給するための補給用の圧力応答性粒子を収容するものである。
【0248】
カートリッジが印刷物の製造装置に装着されたとき、カートリッジと、印刷物の製造装置が有する、圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置手段とが供給管で接続される。
カートリッジから配置手段に圧力応答性粒子が供給され、カートリッジ内に収容されている圧力応答性粒子が少なくなったら、そのカートリッジが交換される。
【実施例】
【0249】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0250】
[実施例]
<コア部用樹脂粒子の調製>
(コア部用樹脂粒子分散液(A1)の調製)
・スチレン: 440部
・アクリル酸n-ブチル: 130部
・アクリル酸: 20部
・ドデカンチオール: 5部
前記成分を混合溶解して溶液Aを調製した。
【0251】
他方、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)10部をイオン交換水250部に溶解し、前記溶液Aを加えてフラスコ中で分散し、乳化した(単量体乳化液A)。
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)1部を555部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。重合用フラスコに還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水43部に溶解し、アニオン性界面活性剤水溶液が仕込まれた重合用フラスコ中に、定量ポンプを介して20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aを、定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃で3時間保持して1段階目の重合を終了した。これにより、体積平均粒径が195nm、ガラス転移温度が53℃、重量平均分子量が32,000であるスチレン系樹脂粒子が分散したコア部用樹脂粒子分散液(A1)前駆体が得られた。
【0252】
次に、室温(25℃)まで温度が低下した後、コア部用樹脂粒子分散液(A1)前駆体が入った重合用フラスコに、アクリル酸2-エチルヘキシル240部、アクリル酸n-ブチル160部、デカンチオール7部及びイオン交換水1200部を加え、ゆっくりと2時間撹拌した。その後、撹拌を続けながら70℃に昇温し、過硫酸アンモニウム4.5部及びイオン交換水100部を、定量ポンプを介して20分かけて滴下した。その後、撹拌を続けながら3時間保持して重合を終了した。以上の工程を経て、体積平均粒径が240nm、重量平均分子量が133,000、数平均分子量が18,000である複合樹脂粒子が分散し、イオン交換水の追加により固形分量30質量%に調整されたコア部用樹脂粒子分散液(A1)を得た。
【0253】
得られたコア部用樹脂粒子分散液(A1)の樹脂粒子を乾燥し、乾燥した樹脂粒子をエポキシ樹脂に包埋した試料を作製した。そして、ダイヤモンドナイフにより試料を切断し、樹脂粒子の断面切片を作製した。そして、試料の切断面を、四酸化ルテニウム蒸気中で染色した後、透過型電子顕微鏡観察により確認した。樹脂粒子の断面観察の結果、樹脂粒子は、母材となる高Tgスチレン樹脂中に低Tg(メタ)アクリル酸エステル樹脂のドメインが複数分散されている構成であることが確認された。
また、乾燥した樹脂粒子について、-150℃から100℃まで、(株)島津製作所製示差走査熱量計(DSC)でガラス転移温度Tg挙動を分析すると、-59℃に低Tg(メタ)アクリル酸エステル樹脂によるガラス転移が観測された。また、53℃に高Tgスチレン樹脂によるガラス転移が観測された(ガラス転移温度差:112℃)。
【0254】
(コア部用樹脂粒子分散液(A2~A5)の調製)
コア部用樹脂粒子分散液(A1)前駆体の調製においてドデカンチオールの添加量を表1のように変え、かつ、コア部用樹脂粒子分散液(A1)前駆体を調製した後に添加するアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルの添加量を表1のように変えたこと以外は、コア部用樹脂粒子分散液(A1)と同様にして、体積平均粒径が200nm~240nmの範囲である複合樹脂粒子が分散し、イオン交換水の追加により固形分量30質量%に調整されたコア部用樹脂粒子分散液(A2)~(A5)を得た。
コア部用樹脂粒子分散液(A2)~(A5)に含まれる複合樹脂粒子の重量平均分子量、数平均分子量、及びガラス転移温度差をそれぞれ表1に示す。
【0255】
【0256】
<シェル部用樹脂粒子分散液の調製>
(シェル部用樹脂粒子分散液(B1)の調製)
・スチレン: 450部
・アクリル酸n-ブチル: 135部
・アクリル酸: 10部
・ドデカンチオール: 5部
前記成分を混合溶解して溶液Bを調製した。
【0257】
他方、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)10部をイオン交換水250部に溶解し、前記溶液Bを加えてフラスコ中で分散し、乳化した(単量体乳化液B)。
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)1部を555部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。重合用フラスコに還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水43部に溶解し、アニオン性界面活性剤水溶液が仕込まれた重合用フラスコ中に、定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Bを、定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃で3時間保持して1段階目の重合を終了した。これにより、体積平均粒径が200nm、ガラス転移温度が53℃、重量平均分子量が33,000、数平均分子量15,000であるスチレン系樹脂粒子が分散し、イオン交換水の追加により固形分量30質量%に調整されたシェル部用樹脂粒子分散液(B1)を得た。
【0258】
<離型剤分散液の調製>
(離型剤分散液(1)の調製)
・フィッシャートロプシュワックス:270部
(日本精鑞(株)製、商品名:FNP-0090、融解温度=90℃)
・アニオン性界面活性剤: 1.0部
(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)
・イオン交換水: 400部
上記成分を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で360分間の分散処理をして、体積平均粒子径が0.23μmである離型剤粒子を分散させてなる離型剤分散液(1)(固形分濃度:20質量%)を調製した。
【0259】
<透明圧力応答性母粒子の作製>
(透明圧力応答性母粒子(A1)の作製)
・コア部用樹脂粒子分散液(A1):600部
・離型剤分散液(1): 10部
・コロイダルシリカ水溶液: 13部
(日産化学(株)製、スノーテックスOS)
・イオン交換水: 1000部
・アニオン性界面活性剤 : 1部
(ダウケミカル(株)社製、Dowfax2A1)
コア部形成用材料として上記成分を、温度計、pH計、及び攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、1.0質量%硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製、ウルトラタラックスT50)にて5,000rpmで分散しながら、調製した10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液を4部添加してさらに6分間分散した。
【0260】
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が7.5μmになったところで温度を保持し、シェル部形成用材料としてシェル部用樹脂粒子分散液(B1)115部を5分かけて投入した。30分間保持した後、1質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0にした。その後、5℃ごとにpHが6.0になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、96℃で保持した。光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、96℃での保持を開始してから2.0時間後に粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0261】
冷却後のスラリーを、目開き30μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したスラリーをアスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残った固形分を手で、できるだけ細かく砕いて、温度30℃で固形分量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した。引き続き、アスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残った固形分を手で、できるだけ細かく砕いて、温度30℃で固形分量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。洗浄された固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、25℃の乾燥器で36時間真空乾燥して、透明圧力応答性母粒子(A1)を得た。得られた透明圧力応答性母粒子(A1)は、体積平均粒径が8.5μm、重量平均分子量が125,000、数平均分子量が17,000であった。
また、透明圧力応答性母粒子(A1)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、海島構造が観察された。透明圧力応答性母粒子(A1)は、島相が存在するコア部と、島相が存在しないシェル層とを有していた。海相はスチレン系樹脂を含み、島相は(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含んでいた。既述の測定方法にて島相の平均径を求めた。表2に島相の平均径を示す。
【0262】
(透明圧力応答性母粒子(A2)~(A5)の作製)
コア部用樹脂粒子分散液(A1)の代わりに表2に示すコア部用樹脂粒子分散液を用いた以外は、透明圧力応答性母粒子(A1)と同様の方法で、透明圧力応答性母粒子(A2)~(A5)をそれぞれ作製した。
透明圧力応答性母粒子(A2)~(A5)における重量平均分子量、数平均分子量、及び島相の平均径を測定した結果をそれぞれ表2に示す。
【0263】
【0264】
<表面処理酸化チタン粒子の作製>
(表面処理酸チタン(T1)の作製)
1Lビーカーに200mlのメタノールを投入し、STT100(STT100:チタン工業社製、平均一次粒径30nm)を10g投入して2分間の超音波分散をかけた後にスターラーで10分間攪拌した。その分散液に表面処理剤としてジメチルジメトキシシランを1g投入して更に60分間攪拌した。その後に分散液を吸引ろ過して固液分離をし、分離された酸化チタン粒子ケーキをチャンバーで120度で60分間加熱し反応させた。固化した酸化チタン粒子を遊星ボールミルで解砕して表面処理酸化チタン粒子(T1)を得た。結果を表3に示す。
【0265】
(表面処理酸チタン(T2)~(T6)の作製)
平均一次粒子径、表面処理剤、及び処理量について表3に示すものとなるように変更した以外は、表面処理酸化チタン粒子(T1)と同様に作製し、表面処理酸化チタン粒子(T2)~(T6)を得た。
【0266】
【0267】
<外添透明圧力応答性粒子の作製>
(外添透明圧力応答性粒子(A1)の作製)
次に、得られた透明圧力応答性母粒子(A1)100部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製、RY50、平均一次粒径40nm)1.0部、表面処理酸化チタン粒子T1を1.5部加え、サンプルミルを用いて13000rpmで30秒間混合した。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分して、外添透明圧力応答性粒子(A1)を調製した。得られた外添透明圧力応答性粒子(A1)の体積平均粒子径は8.5μmであった。また、外添透明圧力応答性粒子(A1)におけるT1及びT2を先述の測定方法によって求めたところ、外添透明圧力応答性粒子(A1)は式1「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0268】
富士ゼロックス(株)製のハガキ用紙V424にハガキの画像形成面の全体に、外添透明圧力応答性粒子(A1)を付与量6g/m2となるように散布し、ベルトロール型固定機を通過させて、ハガキの画像形成面に外添透明圧力応答性粒子(A1)を固定させ、圧力応答性粒子の層を形成した。画像形成面に圧力応答性粒子の層を有するハガキを、トッパン・フォームズ(株)製のシーラーPRESSLE multiIIを用いて、画像形成面が内側になるように二つ折りにし、二つ折りにしたハガキに圧力を印加し、内側の画像形成面どうしを圧力90MPaで接着した。
上記の装置及び条件で、画像形成面が内側になるように二つ折りにされ、且つ画像形成面どうしが接着されたハガキを連続して10通作製した。得られたハガキの接着性を20℃湿度50%で1日放置後に評価した結果、外添透明圧力応答性粒子(A1)は接着性が優れることが分かった。
【0269】
<透明現像剤の作製>
(透明現像剤(A1)の作製)
外添透明圧力応答性粒子(A1)8部と下記キャリア(1)100部とをVブレンダーで混合し、透明現像剤(A1)を作製した。
【0270】
(キャリア(1)の作製)
・フェライト粒子(体積平均粒径:36μm): 100部
・トルエン: 14部
・スチレン-メチルメタクリレート共重合体: 2部
(成分比:90/10、Mw=80000)
・カーボンブラック(R330:キャボット社製):0.2部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで攪拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分攪拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを得た。
【0271】
(透明現像剤(A2)~(A12)の作製)
外添透明圧力応答性粒子(A1)の代わりに、表5に示す透明圧力応答性母粒子および表面処理酸化チタン粒子を含む外添透明圧力応答性粒子を使用した以外は、透明現像剤(A1)と同様の方法で、透明現像剤(A2)~(A12)をそれぞれ作製した。
表5に示す透明圧力応答性母粒子および表面処理酸化チタン粒子を含む外添透明圧力応答性粒子は、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上であった。
【0272】
次に、本実施形態で使用する各種の着色トナーを含む現像剤(以下、「着色現像剤」ともいう。)の製造について説明する。
【0273】
<着色トナーの作製>
(各分散液の調製)
-結晶性ポリエステル樹脂分散液(A)-
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル100mol%及びノナンジオール 100mol%の比率で構成されるモノマー成分と、触媒として該モノマー成分100部に対しジブチル錫オキサイド0.4部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で4時間攪拌・還流を行った。
【0274】
その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(1)を合成した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は15800で数平均分子量(Mn)は3800、酸価は13.2mgKOH/gであった。
また、結晶性ポリエステル樹脂(1)の融点(Tm)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確な吸熱ピークを示し、吸熱ピーク温度は77.0℃であった。
【0275】
次いで、結晶性ポリエステル樹脂(1)を用い、樹脂粒子分散液を調製した。
・結晶性ポリエステル樹脂(1): 90部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬):1.8部
・イオン交換水: 210部
以上を混合して100℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径210nm、固形分量30%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(A)を得た。
【0276】
-非晶質ポリエステル樹脂分散液(A)-
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物: 80mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:20mol%
・テレフタル酸: 60mol%
・フマル酸: 20mol%
・ドデセニル無水琥珀酸: 20mol%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記の比率のモノマー成分を仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、前記モノマー成分100部に対しジブチル錫オキサイドの1.2部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が63℃、酸価10.5mgKOH/g、重量平均分子量が18000、数平均分子量4200の非晶質ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0277】
次に、非晶質ポリエステル樹脂(1)を用いて樹脂粒子分散液を調製した。
・非晶質ポリエステル樹脂(1):100部
・酢酸エチル: 50部
5リットルのセパラブルフラスコに酢酸エチルを投入し、その後上記樹脂成分を徐々に投入して、スリーワンモーターで攪拌を施し、完全に溶解させて油相を得た。この攪拌されている油相に10%アンモニア水溶液を合計で2部となるようにスポイトで徐々に滴下し、更にイオン交換水230部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させ、更にエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、非晶質ポリエステル樹脂分散液(A)を得た。この分散液における非晶質ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は120nmであり、イオン交換水の追加で調整して固形分濃度は30%とした。
【0278】
-非晶質ポリエステル樹脂分散液(B)-
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物: 50mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:50mol%
・無水トリメリット酸: 5mol%
・テレフタル酸: 85mol%
・ドデセニル無水琥珀酸: 10mol%
上記の比率のモノマー成分のうち無水トリメリット酸以外のモノマーを用いて前記非晶質ポリエステル樹脂(3)の合成に準じて、軟化点が110℃になるまで反応をさせた。次いで、温度を190℃まで下げ無水トリメリット酸の5mol%量を徐々に投入し、同温度で2時間反応を継続し、ガラス転移点が63℃、酸価14.8mgKOH/g、重量平均分子量48000、数平均分子量7000の非晶質ポリエステル樹脂(2)を得た。
【0279】
次に、非晶質ポリエステル樹脂(2)を用いて樹脂粒子分散液を調製した。
非晶質ポリエステル樹脂分散液(A)の調製において、非晶質ポリエステル樹脂(1)の代わりに非晶質ポリエステル樹脂(2)を用いた以外は非晶質ポリエステル樹脂分散液(A)の調製に準じて、非晶質ポリエステル樹脂分散液(B)を得た。この分散液における非晶質ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は220nmであり、イオン交換水の追加で調整して固形分濃度は30%とした。
【0280】
-着色剤粒子分散液1-
・カーボンブラック(キャボット社製、リーガル330): 50部
・アニオン界面活性剤(日油(株)製、ニューレックスR): 2部
・イオン交換水: 198部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により10分予備分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機、杉野マシン製)を用い圧力245MPaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が354nmで固形分が20.0%の着色剤粒子分散液1を得た。
【0281】
-着色剤粒子分散液2-
・青色顔料(銅フタロシアニンB15:3、大日精化製): 50部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬): 5部
・イオン交換水: 195部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機、杉野マシン製)を用い圧力245MPaで15分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が462nmで固形分量が20.0%の着色剤粒子分散液2を得た。
【0282】
-着色剤粒子分散液3-
・マゼンタ顔料(C.I.Pigment Red 122):80部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬製): 8部
・イオン交換水: 200部
上記成分を混合して溶解し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散し、次いで超音波分散機を用いて、28kHzの超音波を10分間照射し、体積平均粒径が132nmで固形分量が29.0%着色剤粒子分散液3を得た。
【0283】
-着色剤粒子分散液4-
・イエロー顔料(5GX03、クラリアント製): 80部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬製):8部
・イオン交換水: 200部
上記成分を混合して溶解し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて10分間分散し、次いで超音波分散機を用いて、28kHzの超音波を20分間照射し、体積平均粒径が108nmで固形分量が29.0%の着色剤粒子分散液4を得た。
【0284】
-離形剤粒子分散液-
・オレフィンワックス(融点:88℃): 90部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬):1.8部
・イオン交換水: 210部
以上を混合し100℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで110℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径180nm、固形分量30%の離型剤粒子分散液1を得た。
【0285】
<着色トナーの作製>
(黒トナー1の作製)
-黒トナー粒子1-
・非晶質ポリエステル樹脂分散液(A):166部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(A): 50部
・着色剤粒子分散液1: 25部
・離型剤粒子分散液1: 40部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(ウルトラタラックスT50)で混合・分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.20部を加え、ウルトラタラックスT50で分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で60分間保持した後、ここに非晶質ポリエステル樹脂分散液(A)を少しずつ60部追加した。その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpH8.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、3時間保持した。
【0286】
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水1リットルに再分散し、300rpmで15分間攪拌・洗浄した。これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度が7.0μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続して黒トナー粒子1を得た。
この黒トナー粒子1の粒子径をマルチサイザーIIにて測定したところ、体積平均粒径D50は6.4μm、体積粒度分布指標GSDvは1.21であった。
【0287】
(外添処理)
黒トナー粒子1の100部と、平均粒子径15nmのデシルシラン処理の疎水性チタニア0.8部と、平均粒子径30nmの疎水性シリカ(NY50、日本アエロジル社製)1.3部とを混合し、ヘンシェルミキサーを用い周速32m/sで10分間ブレンドをおこなった後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、黒トナー1を得た。
【0288】
(キャリアの作製)
・フェライト粒子(体積平均粒径:50μm、体積抵抗率:108Ωcm):100部
・トルエン: 14部
・パーフルオロオクチルエチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合比40/60、Mw:5万): 1.6部
・カーボンブラック(VXC-72、キャボット社製): 0.12部
・架橋メラミン樹脂粒子(数平均粒子径:0.3μm): 0.3部
上記成分のうち、フェライト粒子以外の成分を混合し10分間スターラーで分散し、被膜形成用液を調製した。この被膜形成用液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、60℃で30分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去して、フェライト粒子表面に樹脂被膜を形成して、キャリアを製造した。
【0289】
<着色現像剤の作製>
(黒現像剤1の作製)
キャリア94部、及び黒トナー1を6部、を混合し、V-ブレンダーを用い40rpmで20分間攪拌し、177μmの網目を有するシーブで篩うことにより黒現像剤1を作製した。
【0290】
(各着色現像剤の作製)
黒トナー粒子1の作製において、着色剤粒子分散液1、結晶性ポリエステル樹脂分散液、非晶質ポリエステル樹脂分散液(A)を変更した以外は、黒トナー粒子1の作製に準じて各色トナー粒子1を得た。また、外添処理、現像剤の作製も黒トナー粒子1を他トナー粒子に変えた以外は同様にして各着色現像剤を得た。その内容を表4に示す。
なお、表4の非晶質ポリエステル樹脂分散液(A)、及び非晶質ポリエステル樹脂分散液(B)の欄において、符号「+」の左側に記載の部数は、丸型ステンレス製フラスコ中に予め配合する部数を示し、符号「+」の右側に記載の部数は、混合・分散操作の後に、既述の丸型ステンレス製フラスコ中に追加される部数を示す。
【0291】
【0292】
<評価>
あらかじめ第1~第4現像器にシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの有色静電荷像現像剤が充填された富士ゼロックス(株)社製Color1000 Press改造機の第5現像器に、得られた透明現像剤(すなわち、透明現像剤(A1)~(A12))を供給した。
記録紙(OKプリンス上質紙、王子製紙(株)製)をセットし、定着温度170℃、定着圧力4.0kg/cm2にて、透明圧力応答性粒子の載り量3g/m2とし、文字と写真画像を混在させた画像(面積密度30%)を形成し、定着をおこなった。トナー像及び圧力応答性粒子像の配置の順番としては、着色トナー像上に、透明圧力応答性粒子像を配置した。
【0293】
定着した画像を、定着面が重なるように折り曲げ、圧着シーラーPRESSELE LEADA(トッパンフォームズ(株)製)改造機を用いて圧着し、圧着印刷物を作成した。なお、圧着時における温度は20℃、圧力は90MPaであった。
得られた圧着印刷物の接着性を20℃湿度50%で1日放置後に評価した。印刷物の圧力応答性粒子層間における接着性の評価は、圧着印刷物を長辺方向に切断することにより幅15mmの長方形状のサンプルを作製して、90度剥離法により剥離力を測定した。90度剥離試験の剥離速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから50mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、さらに試験片3枚の荷重(N)を平均した。結果を表5に示す。
【0294】
【0295】
表5からわかるように、実施例では、比較例に比べ、接着性に優れる圧力応答性粒子が提供される。
以下、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む圧力応答性粒子の参考例を示す。
【0296】
[参考例]
<スチレン系樹脂粒子を含む分散液の調製>
[スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製]
・スチレン :390部
・アクリル酸n-ブチル:100部
・アクリル酸 : 10部
・ドデカンチオール :7.5部
上記の材料を混合し溶解してモノマー溶液を調製した。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)8部をイオン交換水205部に溶解し、前記モノマー溶液を加えて分散し乳化し、乳化液を得た。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)2.2部をイオン交換水462部に溶解し、攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた重合用フラスコに仕込み、攪拌しながら73℃まで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム3部をイオン交換水21部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して15分間かけて滴下した後、前記乳化液を、定量ポンプを介して160分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、スチレン系樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が154nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が59k、ガラス転移温度が54℃、固形分量が42%のスチレン系樹脂粒子分散液(St1)を得た。
【0297】
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を乾燥してスチレン系樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が1つ観察された。表6にガラス転移温度を示す。
【0298】
[スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St13)の調製]
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製と同様にして、但しモノマーを表6に記載の通りに変更して、スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St13)を調製した。
【0299】
表6においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA
【0300】
【0301】
<複合樹脂粒子を含む分散液の調製>
[複合樹脂粒子分散液(M1)の調製]
・スチレン系樹脂粒子分散液(St1):1190部(固形分500部)
・アクリル酸2-エチルヘキシル :250部
・アクリル酸n-ブチル :250部
・イオン交換水 :982部
上記の材料を重合用フラスコに仕込み、25℃で1時間攪拌した後、70℃に加熱した。
過硫酸アンモニウム2.5部をイオン交換水75部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して60分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを70℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、複合樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が183nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が129k、固形分量が32%の複合樹脂粒子分散液(M1)を得た。
【0302】
複合樹脂粒子分散液(M1)を乾燥して複合樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表7にガラス転移温度を示す。
【0303】
[複合樹脂粒子分散液(M2)~(M21)及び(cM1)~(cM3)の調製]
複合樹脂粒子分散液(M1)の調製と同様にして、但し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を表7に記載の通りに変更して、又は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分を表7に記載の通りに変更して、複合樹脂粒子分散液(M2)~(M21)及び(cM1)~(cM3)を調製した。
【0304】
[複合樹脂粒子分散液(M22)~(M27)の調製]
複合樹脂粒子分散液(M1)の調製と同様にして、但しアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルの使用量を調節して、複合樹脂粒子分散液(M22)~(M27)を調製した。
【0305】
表7においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA、アクリル酸ヘキシル:HA、アクリル酸プロピル:PA
【0306】
【0307】
<圧力応答性粒子の調製>
[圧力応答性粒子(1)及び現像剤(1)の調製]
・複合樹脂粒子分散液(M1) :504部
・イオン交換水 :710部
・アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1): 1部
【0308】
温度計及びpH計を備えた反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて回転数5000rpmで分散しながら、2.0%硫酸アルミニウム水溶液を23部添加した。次いで、反応容器に攪拌機及びマントルヒーターを設置し、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径50μm、ベックマン-コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が6.7μmになったところで温度を保持し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)170部を5分間かけて投入した。投入終了後、50℃に30分間保持した後、1.0%水酸化ナトリウム水溶液を加え、スラリーのpHを6.0に調整した。次いで、5℃ごとにpHを6.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。光学顕微鏡と電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、10時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水で容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0309】
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粒子を除去し、メッシュを通過したスラリーをアスピレータで減圧濾過した。濾紙上に残った固形分を手でできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した。次いで、アスピレータで減圧濾過し、濾紙上に残った固形分を手でできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した後、再度アスピレータで減圧濾過し、濾液の電気伝導度を測定した。濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。
【0310】
洗浄された固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕き、25℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、圧力応答性母粒子(1)を得た。圧力応答性母粒子(1)は、体積平均粒径が8.0μmであった。
【0311】
圧力応答性母粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製、RY50)1.5部とを混合し、サンプルミルを用いて回転速度13000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分して、圧力応答性粒子(1)を得た。
【0312】
圧力応答性粒子(1)を試料にして、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表3にガラス転移温度を示す。
【0313】
圧力応答性粒子(1)のT1及びT2を先述の測定方法によって求めたところ、圧力応答性粒子(1)は式1「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0314】
圧力応答性粒子(1)10部と下記の樹脂被覆キャリア100部とをV型ブレンダーに入れ20分間攪拌し、次いで、目開き212μmの振動篩で篩分して現像剤(1)を得た。
【0315】
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm): 100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント社製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間攪拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリアを得た。
【0316】
[圧力応答性粒子(2)~(27)及び現像剤(2)~(27)の調製]
圧力応答性粒子(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表8に記載の通りに変更して、圧力応答性粒子(2)~(27)及び現像剤(2)~(27)を調製した。
【0317】
圧力応答性粒子(2)~(27)のT1及びT2を先述の測定方法によって求めたところ、圧力応答性粒子(2)~(27)は式1「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0318】
[比較用の圧力応答性粒子(c1)~(c3)及び現像剤(c1)~(c3)の調製]
圧力応答性粒子(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表8に記載の通りに変更して、圧力応答性粒子(c1)~(c3)及び現像剤(c1)~(c3)を調製した。
【0319】
[圧力応答性相転移の評価]
圧力応答性粒子が圧力によって相転移しやすいことを示す指標である温度差(T1-T2)を求めた。各圧力応答性粒子を試料にして、フローテスター(島津製作所製、CFT-500)にて、温度T1及び温度T2を測定し、温度差(T1-T2)を算出した。表8に温度差(T1-T2)を示す。
【0320】
[接着性の評価]
印刷物の製造装置として、
図3に示す形態の装置を用意した。すなわち、記録媒体への本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置と有色画像形成とを一括で行う5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段と、折り装置及び加圧装置を有する圧着手段とを備える印刷物の製造装置を用意した。
印刷手段が有する5つの現像器にそれぞれ、本実施形態に係る圧力応答性粒子(又は比較用の圧力応答性粒子)、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを入れた。イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーは、富士ゼロックス社製の市販品を使用した。
記録媒体として富士ゼロックス社製のハガキ用紙V424を用意した。
ハガキ用紙に形成する画像は、黒色文字とフルカラー写真画像とが混在した面積密度30%の画像とし、ハガキ用紙の片面に形成した。
本実施形態に係る圧力応答性粒子(又は比較用の圧力応答性粒子)の付与量は、ハガキ用紙の画像形成面の画像形成領域に、3g/m
2とした。
折り装置は、画像形成面が内側になるようにハガキ用紙を二つ折りにする装置とした。
加圧装置は、圧力90MPaとした。
上記の装置及び条件で、画像形成面が内側になるように二つ折りにされ、且つ画像形成面どうしが接着されたハガキを連続して10通作製した。
10通目のハガキを長辺方向に幅15mmで裁断し長方形の試験片を作製して、90度剥離試験を行った。90度剥離試験の剥離速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから50mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、さらに試験片3枚の荷重(N)を平均した。剥離に要する荷重(N)を下記のとおり分類した。表8に結果を示す。
【0321】
A:0.8N以上
B:0.6N以上、0.8N未満
C:0.4N以上、0.6N未満
D:0.2N以上、0.4N未満
E:0.2N未満
【0322】
【0323】
表8に示すように、圧力応答性粒子(1)~(27)は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである圧力応答性粒子(c1)~(c3)に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子であることが分かった。
【符号の説明】
【0324】
100 配置手段
101 感光体
102 帯電ロール(帯電手段の一例)
103 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
104 現像装置(現像手段の一例)
105 転写ロール(転写手段の一例)
106 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
107 定着装置(定着手段の一例)
120 固定装置
110 付与装置
200 圧着手段
220 折り装置
230 加圧装置
231、232 加圧ロール
M 圧力応答性粒子
P 記録媒体
P1 画像上に本実施形態に係る圧力応答性粒子が付与された記録媒体
P2 折り重なった記録媒体
P3 圧着印刷物
【0325】
300 印刷手段
1T、1Y、1M、1C、1K 感光体
2T、2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3T、3Y、3M、3C、3K 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
4T、4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5T、5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6T、6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8T 圧力応答性粒子カートリッジ
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10T、10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
21 中間転写体クリーニング装置
22 駆動ロール
23 支持ロール
24 対向ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 熱定着装置(熱定着手段の一例)