(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】運転制御システム及び運転制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240806BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/38 170
H02J3/38 160
H02J3/38 120
H02H3/16 B
(21)【出願番号】P 2020099545
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 健一
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-032323(JP,A)
【文献】特開平04-308412(JP,A)
【文献】特開2005-304263(JP,A)
【文献】特開平07-079527(JP,A)
【文献】特開平01-136523(JP,A)
【文献】特開昭59-153415(JP,A)
【文献】特開2020-061850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統と連系して、需要家に設けられた分散型電源の運転を制御する運転制御システムであって、
前記商用電力系統から前記需要家が受電する受電点における地絡電圧を計測する地絡電圧計測部と、
前記受電点における電力を計測する電力計測部と、
前記地絡電圧計測部による計測結果に基づいて、前記受電点における地絡の有無を判定する地絡判定部と、
前記受電点における前記電力に基づいて
前記受電点における逆電力の発生の有無を判定する逆電力判定部と、
前記地絡判定部の判定結果、前記逆電力判定部の判定結果及び前記受電点における
前記電力の計測値を、通信線を通じて伝送可能なデータに変換するデータ生成部と、
を備えた保護継電器と、
前記保護継電器と前記通信線によって接続され、前記分散型電源の運転を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記保護継電器から伝送された前記データに基づいて、前記分散型電源から出力される電力の前記商用電力系統への逆潮流を防止する制御を行うことを特徴とする運転制御システム。
【請求項2】
前記電力計測部は、変流器と
、前記受電点における前記電力を計測する電力計とを含み、
前記逆電力判定部は
、前記受電点における
前記逆電力の発生の有無を判定する
逆電力継電器であり、
前記変流器は前記受電点に設けられ、
前記変流器の出力は、前記逆電力継電器に入力されて前記受電点の前記逆電力の検知に用いられるとともに、前記電力計に入力されて前記受電点の前記電力の計測にも用いられることを特徴とする請求項1に記載の運転制御システム。
【請求項3】
前記逆電力判定部は、前記変流器の出力が閾値を超えた場合に、前記逆電力の検知信号を出力する請求項2に記載の運転制御システム。
【請求項4】
前記分散型電源は、太陽電池によって太陽光エネルギーを電力に変換することで発電する太陽光発電システムであることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の運転制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の運転制御システムにおける運転制御方法であって、
前記商用電力系統への逆潮流を防止するステップと、
前記分散型電源から出力される前記電力を前記需要家において自家消費するように、前記分散型電源の運転を制御するステップと、
を含む運転制御方法。
【請求項6】
商用電力系統と連系して、需要家に設けられた分散型電源の運転を制御する運転制御システムに用いられる保護継電器であって、
前記商用電力系統から前記需要家が受電する受電点における電力を計測する電力計測部と、
前記受電点における前記電力に基づいて
前記受電点における逆電力の発生の有無を判定する逆電力判定部と、
前記逆電力判定部の判定結果及び前記受電点における
前記電力の計測値を、通信線を通じて伝送可能なデータに変換するデータ生成部と、
を備えたことを特徴とする保護継電器。
【請求項7】
前記電力計測部は
、前記受電点における前記電力を計測する電力計を含み、
前記逆電力判定部は
、前記受電点における
前記逆電力の発生の有無を判定する
逆電力継電器であり、
前記電力計及び前記逆電力継電器は、前記受電点に設けられた変流器の出力に基づいて前記受電点の前記逆電力の検知と前記電力の計測を行うことを特徴とする請求項
6に記載の保護継電器。
【請求項8】
前記逆電力判定部は、前記変流器の出力が閾値を超えた場合に、前記逆電力の検知信号を出力する請求項7に記載の保護継電器。
【請求項9】
前記受電点における地絡電圧を計測する地絡電圧計測部による計測結果に基づいて、該受電点における地絡の有無を判定する地絡判定部を備え、
前記データ生成部は、前記地絡判定部の判定結果を前記データに変換することを特徴とする請求項
6乃至8のいずれか1項に記載の保護継電器。
【請求項10】
前記データ生成部は、入力されたオンオフ信号をデータ信号に変換して出力することを特徴とする請求項
6乃至
9のいずれか1項に記載の保護継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源の運転制御システム及び運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、系統に連系して運転される太陽光発電システム等の分散型電源において、系統への逆潮流を防止する際には、電力計や不足電力継電器(UPR)を用いて太陽光発電システムにおける発電電力を制御していた(例えば、特許文献1)。さらに、逆電力発生時には、太陽光発電システムを停止させるための逆電力継電器(RPR)に加え、地絡過電圧継電器(OVGR)も設置されており、複数機器の設置や複数機器間の配線が複雑であり、機器や施工に多くのコストが必要であった。
【0003】
また、逆電力を防止する制御を行うための電力計や不足電力継電器と逆電力継電器は異なるセンサを用い、異なるアルゴリズムで電力計測を行っているため、それぞれの機器が認識する電力値は異なった値となっていた。このため、電力計や不足電力継電器を使って逆電力を発生させない制御を行っても、逆電力継電器が、逆電力が発生したと認識することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、構成が簡素で、機器や施工に要するコストを抑え、逆潮流を防止する制御をより高精度で行うことができる運転制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は、
商用電力系統と連系して、需要家に設けられた分散型電源の運転を制御する運転制御システムであって、
前記商用電力系統から前記需要家が受電する受電点における地絡電圧を計測する地絡電圧計測部と、
前記受電点における電力を計測する電力計測部と、
前記地絡電圧計測部による計測結果に基づいて、前記受電点における地絡の有無を判定する地絡判定部と、
前記受電点における前記電力に基づいて該受電点における逆電力の発生の有無を判定する逆電力判定部と、
前記地絡判定部の判定結果、前記逆電力判定部の判定結果及び前記受電点における電力の計測値を、通信線を通じて伝送可能なデータに変換するデータ生成部と、
を備えた保護継電器と、
前記保護継電器と前記通信線によって接続され、前記分散型電源の運転を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記保護継電器から伝送された前記データに基づいて、前記分散型電源から出力される電力の前記商用電力系統への逆潮流を防止する制御を行うことを特徴とする。
【0007】
このように、従来は、独立の機器として構成されていた地絡判定部、逆電力判定部、電力計測部を、保護継電器の構成要素として一体化することにより、機器の数が少なくなって、構成が簡素になるので、機器や施工に要するコストを抑えることができる。また、データ生成部により、地絡判定部の判定結果、逆電力判定部の判定結果及び受電点における電力の計測値を、通信線を通じて伝送可能なデータに変換するので、保護継電器と制御部とを通信線で接続することにより、保護継電器の内部で、また保護継電器と制御部との間で、省配線が可能となる。また、受電点において計測された電力に基づいて、分散型電源の出力の制御を行うので、逆潮流を防止する制御をより高精度で行うことができる。
【0008】
また、本発明において、
前記電力計測部は、変流器と、前記変流器の出力に基づいて前記受電点における前記電力を計測する電力計とを含み、
前記逆電力判定部は、前記変流器の出力に基づいて前記受電点における逆潮流の発生の有無を判定するようにしてもよい。
【0009】
このように、受電点における電力の計測と、逆電力の発生の有無の判定とに、共通の変流計を用いるので、機器の構成がさらに簡略化されるとともに、逆潮流を防止する制御をより高精度で行うことができる。
【0010】
また、本発明において、
前記分散型電源は、太陽電池によって太陽光エネルギーを電力に変換することで発電する太陽光発電システムであるようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、構成が簡素で、機器や施工に要するコストを抑え、太陽光発電システムによって発電される電力の商用電力系統への逆潮流を防止する制御をより高精度で行うことができる
【0012】
また、本発明は、
前記運転制御システムにおける運転制御方法であって、
前記商用電力系統への逆潮流を防止するステップと、
前記分散型電源から出力される前記電力を前記需要家において自家消費するように、前記分散型電源の運転を制御するステップと、
を含む。
【0013】
このようにすれば、分散型電源から出力された電力の商用電力系統への逆潮流を防止し、分散型電源から出力された電力を需要家において自家消費する制御をより高精度で行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構成が簡素で、機器や施工に要するコストを抑え、逆潮流を防止する制御をより高精度で行うことができる分散型電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係る運転制御システムの構成の一例を示すシステム図である。
【
図2】本発明の実施例1の変形例に係る運転制御システムの構成の一例を示すシステム図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る運転制御システムの構成の一例を示すシステム図である。
【
図4】第1の従来例に係る運転制御システムの構成の一例を示すシステム図である。
【
図5】第2の従来例に係る運転制御システムの構成の一例を示すシステム図である。
【
図6】第3の従来例に係る運転制御システムの構成の一例を示すシステム図である。
【
図7】第4の従来例に係る運転制御システムの構成の一例を示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本発明は、太陽光発電システム1等の分散型電源を商用電力系統2に連系して運転する運転制御システム100等に適用される。
まず、需要家の施設に設置された太陽光発電システム1等の分散型電源を商用電力系統2に連系して運転するシステムにおいて、太陽光発電システム1から商用電力系統2への逆潮流を防止するために、従来採用されていた構成について説明する。
【0018】
図4は、第1の従来例に係る運転制御システム400の概略構成を示すシステム図である。
需要家は、商用電力系統2から、高圧の三相交流電力(
図4では、三本線で示す。)を受電する。需要家の施設には、キュービクル3が設けられる。ここで、キュービクル3とは、キュービクル式高圧受電設備の略称で、商用電力系統2から高圧電力を受電するための機器及び変圧器、コンデンサ、その他の保安装置の機器一式を一つの金属製の外箱に収めた受電設備を指す。ここでは、キュービクル3には、商用電力系統2から供給された電力及び太陽光発電システム1から供給される電力を、単相負荷4及び三相負荷5に分けて供給するための分電盤31も収められている。
【0019】
キュービクル3の高圧側(商用電力系統側)の電路6には、ZPD(零相電圧検出装置)7、CT(変流器)8、CT(変流器)21が設けられている。そして、ZPD7の出力は、OVGR(地絡過電圧継電器)191に入力される。OVGR191は、コントローラ20と通信線22によって接続され、OVGR191からコントローラ20にはオンオフ信号が出力される。具体的には、ZPD7によって地絡電圧が検出された場合に、OVGR191は、コントローラ20に地絡検知信号を出力する。CT8の出力は、RPR(逆電力継電器)192に入力される。RPR192は、コントローラ20と通信線23によって接続され、RPR192からコントローラ20にはオンオフ信号が出力される。具体的には、RPR192は、CT8によって逆潮流する電力が閾値を超えた場合に、コントローラ20に逆電力検知信号を出力する。CT21の出力は電力計193に入力される。商用電力系統2からの供給電力は、CT21によって変流され、電力計193における電力値検出に用いられる。電力計193とコントローラ20は通信線24によって接続され、電力計193からコントローラ20には電力の計測値が出力される。
【0020】
キュービクル3の分電盤31には、単相負荷4及び三相負荷5が接続される。分電盤31と三相負荷5は、三相3線の電力線(
図4では破線で示す。)13によって接続され、分電盤31を介して、三相負荷5には三相交流電力が供給される。分電盤31と単相負荷4は、単相3線の電力線(
図4では一点鎖線で示す。)14によって接続され、分電盤31を介して、単相負荷4には単相交流電力が供給される。
【0021】
また、キュービクル3の分電盤31には、PCS(パワーコンディショナ)10が接続
される。分電盤31とPCS10は、単相三線の電力線(
図4では一点鎖線で示す)15によって接続されている。PCS10には、単相2線の電力線(
図4では二点鎖線で示す。)12を介して太陽光発電システム1が接続されている。PCS10には、太陽光発電システム1によって発電された直流電力が電力線12を通じて入力され、PCS10は、この直流電力を交流電力に変換するとともに、太陽光発電システム1の出力を制御する。PCS10は、直流電力を交流電力に変換するインバータ、直流電力を変換するコンバータ等を含む電力変換装置であり、太陽光発電システム1によって発電された直流電力を交流電力に変換して出力するとともに、太陽光発電システム1の出力を制御する。
【0022】
コントローラ20とPCS10とは通信線25で接続され、例えばRS-485に準拠して情報が伝送される。例えば、コントローラ20は、RPR192から出力される検知信号に基づいて、PCS10に制御信号を出力し、PCS10は、この制御信号に基づいて、太陽光発電システム1の発電を停止させる等の逆潮流防止のための制御を行う。
【0023】
図5は、第2の従来例係る運転制御システム500の概略構成を示すシステム図である。第1の従来例に係る運転制御システム400と同様の構成については、同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0024】
第2の従来例に係る運転制御システム500では、OVGR191及びRPR192の出力であるオンオフ信号が、コントローラを介さずに、通信線26及び通信線27を通じて、直接PCS10に入力されている。また、電力計に替えてUPR(不足電力継電器)194が設けられ、キュービクル3の高圧側(商用電力系統2側)の電路6に設けられたCT29の出力は、UPR194に入力される。UPR194は、PCS10と通信線28によって接続され、UPR194からPCS10にはオンオフ信号が出力される。具体的には、UPR194、商用電力系統2から需要家に供給される順電力が閾値を下回った場合に、PCS10に不足電力検知信号を出力する。
【0025】
図6は、第3の従来例に係る運転制御システム600の概略構成を示すシステム図である。第1の従来例に係る運転制御システム400及び第2の従来例に係る運転制御システム500と同様の構成については、同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0026】
第3の従来例に係る運転制御システム600では、OVGR191及びRPR192の出力は、第2の従来例と同様に、PCS10に入力されている。一方、第2の従来例ではCT29はキュービクル3に対して高圧側(商用電力系統2側)に設けられていたが、第3の従来例では、CT30がキュービクル3の分電盤31の低圧側(単相負荷4側)の、PCS10に接続される単相3線の電力線15に設けられている。そして、CT30の出力は、直接PCS10に接続された通信線32を通じてPCS10に入力される。
【0027】
図7は、第4の従来例に係る運転制御システム700の概略構成を示すシステム図である。第1の従来例と同様の構成については、同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0028】
第4の従来例に係る運転制御システム700では、第1の従来例と同様に、OVGR191及び電力計193の出力はコントローラ10に入力される。第4の従来例では、CT8及びRPR192が省略され、コントローラ20が、インターネット等のネットワーク18を介して、電力会社のサーバ17と接続されている。
【0029】
ここでは、電力計193の計測値がコントローラ20を介して、電力会社のサーバ17に送信される。そして、コントローラ20は、電力計193の計測値を取得したサーバ17からの要求に応じて、太陽光発電システム1の出力制御を行う。
【0030】
上述のように、太陽光発電システム1によって発電された電力の逆潮流を防止するためには、複数の独立した機器を設ける必要がある。第1の従来例に係る運転制御システム400では、OVGR191、RPR192、電力計193及びコントローラ20が設けられている。また、RPR192と電力計193には、異なるCT8及びCT21の出力がそれぞれ入力されている。第2の従来例に係る運転制御システム500では、OVGR191、RPR192、UPR194が設けられている。また、RPR192とUPR194には、異なるCT8及びCT29の出力がそれぞれ入力されている。第3の従来例に係る運転制御システム600では、OVGR191及びRPR192が設けられている。また、RPR192に接続されるCT8とは別のCT30が設けられている。第4の従来例に係る運転制御システム700では、OVGR191、電力計193及びコントローラ20が設けられている。
【0031】
このように、従来例に係る運転制御システム400、500、600、700では、太陽光発電システム1で発電された電力の逆潮流を防止するために、複数の機器を設ける必要があるので、複数の機器の設置スペースが必要になるとともに、複数の機器間の配線も煩雑になっていた。また、機器や施工に多くのコストが必要となっていた。
【0032】
さらに、第1の従来例に係る運転制御システム400では、RPR192と電力計193のそれぞれに異なるCT8及びCT21が接続されている。第2の従来例に係る運転制御システム500でも、RPR192とUPR194のそれぞれに異なるCT8及びCT29が接続されている。このように、電力計193やUPR194と、RPR192とは、それぞれ異なるCTを用い、異なるアルゴリズムで電力計測を行っているため、それぞれの機器が認識する電力値が異なる値となっていた。このため、電力計193やUPR194を用いて逆潮流を発生させない制御を行っても、RPR193が、逆潮流が発生したと認識する場合もあった。
【0033】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、以下に本発明の適用例について説明する。
【0034】
図1は、本発明が適用される運転制御システム100の概略構成を示すシステム図である。
本発明の適用例に係る運転制御システム100では、需要家の施設に設置されたキュービクル3の高圧側(商用電力系統2側)の電路6には、ZPD7及びCT8が設けられている。ZPD7及びCT8の出力は、一体型保護継電器9に入力されている。そして、一体型保護継電器9とPCS10は通信線11で接続されている。ここで、ZPD7は、本発明の地絡電圧計測部に相当する。また、CT8は、本発明の変流計に相当する。
【0035】
一体型保護継電器9は、従来例に係る運転制御システムで個別に設けられていたOVGR91、RPR92及び電力計93を一体の筐体に収容している。OVGR91は、従来、独立の機器として構成されていた地絡過電圧継電器と同等の機能を有する一体型保護継電器9の構成要素である。RPR92も、従来、独立の機器として構成されていた逆電力継電器と同等の機能を有する一体型保護継電器9の構成要素である。電力計93も、従来、独立の機器として構成されていた電力計と同等の機能を有する一体型保護継電器9の構成要素である。ここで、CT8の出力は、RPR92に入力されて逆潮流の検知に用いられるとともに、電力計93に入力されて電路6に流れる電力値の計測にも用いられる。また、OVGR91から出力される地絡過電圧検知信号と、RPR92から出力される逆電力検知信号は、いずれもオンオフ信号である。一体型保護継電器9は、オンオフ信号である地絡過電圧検知信号及び逆電力検知信号を、データとして表現された地絡過電圧検知データ及び逆電力検知データに変換するとともに、地絡過電圧検知データ、逆電力検知デー
タ及び電力値データとを含む出力データを生成するデータ生成部94を備える。ここでは、OVGR91は、本発明の地絡判定部に相当する。また、RPR92は、本発明の逆電力判定部に相当する。CT8及び電力計93は、本発明の電力計測部に相当する。また、データ生成部94は、本発明のデータ生成部に相当する。
【0036】
このように、OVGR91、RPR92及び電力計93と一体化することにより、機器の設置スペースやコストを低減することができる。また、OVGR91、RPR92及び電力計93と一体化し、一体型保護継電器9とPCS10との間を単一の通信線11で接続することができるので、省配線が可能となるとともに、施工も簡略化でき、施工コストも低減することができる。
【0037】
データ生成部94によって生成された出力データは、一体型保護継電器9とPCS10とを接続する通信線11を通じて、PCS10に送信される。ここで、通信線11は、本発明の通信線に相当する。
【0038】
このように、RPR92と電力計93には共通のCT8の出力が用いられる。逆潮流の発生時に太陽光発電システム1を停止させるためにRPR93に接続されたCT8と共通のCTの出力によって、高圧の電路6に流れる電力の計測値をPCS10は取得することができる。したがって、PCS10は、単に、RPR92による逆潮流が検知された場合に太陽光発電システム1を停止させる制御にとどまらず、電力の計測値に基づいて、自律的に太陽光発電システム1の発電電力を制御することができるので、RPR92による逆電力検知信号を発生させない、又は、太陽光発電システム1を停止させないような制御が可能となる。ここで、PCS10は、本発明の制御装置に相当する。
また、RPR92と電力計93とが共通のCT8の出力を用いるので、逆潮流を発生させない制御の確実性が向上する。
【0039】
また、一体型保護継電器9に、さらに、UPRを設けてもよい。
【0040】
また、一体型保護継電器9から通信線11を介して取得した電力計93の電力値データをPCS10が活用し、逆潮流を検知して太陽光発電システム1を停止させてもよい。この場合は、一体型保護継電器9からRPR92を省略してよい。
【0041】
また、一体型保護継電器9に、第2通信線33を設けて、電力計93の電力値データをモニタリングシステム34等で活用してもよい。
【0042】
図2は、本発明が適用される他の運転制御システム200の概略構成を示すシステム図である。
図1に示す運転制御システム100と同様の構成については同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0043】
図2に示す運転制御システム200は、
図1に示す運転制御システム100に加えて、PCS10a、PCS10b、PCS10cが通信線16a、16bによって接続される。
【0044】
図3に示す運転制御システム300では、PCS10が一体型保護継電器9から取得した電力の計測値を、PCS10からネットワーク18を介してサーバ17に送信し、サーバ17から、太陽光発電システム1の出力に対する制御指令をPCS10に送信することができる。
このようにすれば、太陽光発電システム1で発電された電力を需要家が自家消費する場合に限らず、需要家が消費しない余剰電力を、電力会社に売電し、商用電力系統2に供給する場合における、電力会社による、太陽光発電システム1の出力制御にも、一体型保護
継電器9による電力の計測値を利用することができる。
【0045】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係る運転制御システム100について、図面を用いて、より詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている装置及びシステムの構成は各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0046】
図1に示す運転制御システム100は、分散型電源である太陽光発電システム1を商用電力系統2に連系して運転制御するシステムである。
【0047】
需要家は、商用電力系統2から、高圧の三相交流電力を受電する。需要家の施設には、キュービクル3が設けられる。ここで、キュービクル3とは、キュービクル式高圧受電設備の略称で、商用電力系統から高圧電力を受電するための機器及び変圧器、コンデンサ、その他の保安装置の機器一式を一つの金属製の外箱に収めた受電設備を指す。ここでは、キュービクル3には、商用電力系統から供給された電力及び分散型電源から供給される電力を、単相負荷4及び三相負荷5に分けて供給するための分電盤31も収められている。ここでは、商用電力系統2に接続される電路6上におけるキュービクル3が、本発明の受電点に相当する。
図1では、単相負荷4及び三相負荷5を1つずつ表示しているが、単相負荷4及び三相負荷5の数は限定されない。
【0048】
キュービクル3の高圧側(商用電力系統側)の電路6(
図1では、三本線で示す。)には、ZPD(零相電圧検出装置)7、CT(変流器)8が設けられている。ZPD7及びCT8は、一体型保護継電器9に接続されている。一体型保護継電器9は、OVGR(地絡過電圧継電器)91、RPR(逆電力継電器)92及び電力計93を一体の筐体に収容している。ZPD7の出力は、OVGR91に入力される。ZPD7によって地絡電圧が検出された場合に、OVGR91は地絡検知信号を出力する。CT8の出力は、RPR92に入力される。RPR92は、CT8によって逆潮流する電力が閾値を超えた場合に、逆電力検知信号を出力する。CT8の出力は電力計93に入力される。ここで、CT8の出力は、RPR92に接続されて、逆潮流の検知に用いられるとともに、電路6に流れる電力値の計測にも用いられる。また、OVGR91から出力される地絡過電圧検知信号と、RPR92から出力される逆電力検知信号は、いずれもオンオフ信号である。一体型保護継電器9は、オンオフ信号である地絡過電圧検知信号及び逆電力検知信号をデータとして表現された地絡過電圧検知データ及び逆電力検知データに変換するとともに、地絡過電圧検知データ、逆電力検知データ及び電力値データとを含む出力データを生成するデータ生成部94を備える。
【0049】
一体型保護継電器9は、PCS10と通信線11によって接続される。データ生成部94によって生成された出力データは、一体型保護継電器9とPCS10とを接続する通信線11を通じて、PCS10に送信される。
【0050】
PCS10は、直流電力を交流電力に変換するインバータ、直流電力を変換するコンバータ等を含む電力変換装置である。PCS10には、単相2線の電力線(
図1では二点鎖線で示す。)12を介して太陽光発電システム1が接続されている。PCS10には、太陽光発電システム1によって発電された直流電力が電力線12を通じて入力され、PCS10は、この直流電力を交流電力に変換するとともに、太陽光発電システム1の出力を制御する。
【0051】
上述のように、キュービクル3の分電盤31には、単相負荷4及び三相負荷5が接続さ
れる。分電盤31と三相負荷5は、三相3線の電力線(
図1では破線で示す。)13によって接続され、三相負荷5には分電盤31を介して、三相交流電力が供給される。分電盤31と単相負荷4は、単相3線の電力線(
図1では一点鎖線で示す。)14によって接続され、単相負荷4には分電盤31を介して単相交流電力が供給される。
【0052】
また、キュービクル3の分電盤31には、PCS(パワーコンディショナ)10が接続される。分電盤31とPCS10は、単相3線の電力線15によって接続され、太陽光発電システム1によって発電された交流電力が分電盤31を介して単相負荷4に供給され、又は、キュービクル3から電路6を介して商用電力系統2に交流電力を逆潮流させる。
【0053】
このように、OVGR91とRPR92と電力計93を一体化することにより、機器の設置スペースやコストを低減することができる。また、OVGR91とRPR92と電力計93とを一体化し、一体型保護継電器9とPCS10との間を単一の通信線で接続することができるので、省配線が可能となるとともに、施工も簡略化でき、施工コストも低減することができる。
【0054】
このように、RPR92と電力計93には共通のCT8の出力が用いられる。逆潮流の発生時に太陽光発電システム1を停止させるためにRPR93に接続されたCT8の出力によって、高圧の電路6に流れる電力の計測値をPCS10は取得することができる。したがって、PCS10は、単に、RPR92による逆潮流が検知された場合に太陽光発電システム1を停止させる制御にとどまらず、電力の計測値に基づいて、自律的に太陽光発電システム1の発電電力を制御することができるので、RPR92による逆電力検知信号を発生させない、又は、太陽光発電システム1を停止させないような制御が可能となる。
また、RPR92と電力計93とが共通のCT8の出力を用いるので、逆潮流を発生させない制御の確実性が向上する。
また、このような運転制御方法により、太陽光発電システム1で発電された電力を商用電力系統に逆潮流させることなく、需要家の負荷で消費する自家消費型のシステムを構築することができる。
【0055】
また、一体型保護継電器9に、さらに、UPRを設けてもよい。
【0056】
また、一体型保護継電器9から通信線11を介して取得した電力計93の電力値データをPCSが活用し、逆潮流を検知して太陽光発電システム1を停止させてもよい。この場合は、一体型保護継電器9からRPR92を省略してもよい。
【0057】
また、一体型保護継電器9に、第2通信線33を設けて、電力計93の電力値データをモニタリングシステム34等で活用してもよい。
【0058】
〔変形例〕
図2に、実施例1の変形例に係る運転制御システム200の概略構成示すシステム図である。
図1に示す運転制御システム100と同様の構成については同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0059】
運転制御システム200は、PCS10a、PCS10b、PCS10cを備える。ここでは、3つのPCSを備える場合について説明するが、接続されるPCSの数は特に限定されない。システム構成に応じて、複数のPCSを適宜接続することができる。
図2では図示を省略しているが、PCS10a、PCS10b、PCS10cはそれぞれに接続された太陽光発電システム等の分散型電源の出力制御等を行う。
【0060】
PCS10aは、単相3線の電力線15aによってキュービクル3の分電盤31(
図1
参照)に接続され、分電盤31を介して単相負荷4に交流電力を供給し、又は、キュービクル3から電路6を介して商用電力系統2に交流電力を逆潮流させる。同様に、PCS10b及びPCS10cは、それぞれ単相3線の電力線15b及び電力線15cによって、分電盤31に接続され、分電盤31を介して単相負荷4に交流電力を供給し、又は、キュービクル3から電路6を介して商用電力系統2に交流電力を逆潮流させる。
【0061】
PCS10aとPCS10b、PCS10bとPCS10cとは、それぞれ通信線16a、16bによって接続される。PCS10aとPCS10bとPCS10cとは、互いに協調して負荷追従制御等の制御を行う。ここでは、PCS10aは、PCS10b及びPCS10cに対してマスタの関係にあり、PCS10b及びPCS10cは、PCS10aに対してスレーブの関係にある。従って、一体型保護継電器9からのOVGR91(
図1参照)からの地絡過電圧検知データ等のデータは、PCS10aが通信線11を介して取得し、協調制御のための指令は、マスタであるPCS10aからスレーブであるPCS10b及びPCS10cに対して、通信線16a及び16bを介して伝送される。このため、一体型保護継電器9と、PCSb及びPCS10cとを個別に通信線で接続する必要がない。
【0062】
〔実施例2〕
図3は、本発明の実施例2に係る運転制御システム300の概略構成示すシステム図である。
図1に示す運転制御システム100と同様の構成については同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0063】
図2に示す運転制御システム300は、
図1に示す運転制御システム100に加えて、PCS10が、商用電力系統2を運営する電力会社に設けられたサーバ17とインターネット等のネットワーク18を介して接続される。
【0064】
図2に示す運転制御システム300では、PCS10が一体型保護継電器9から取得した電力の計測値を、PCS10からネットワーク18を介してサーバ17に送信し、サーバ17から、太陽光発電システム1の出力に対する制御指令をPCS10に送信することができる。
このようにすれば、太陽光発電システム1で発電された電力を需要家が自家消費する場合に限らず、需要家が消費しない余剰電力を、電力会社に売電し、商用電力系統2に供給する場合における、電力会社による、太陽光発電システム1の出力制御にも、一体型保護継電器9による電力の計測値を利用することができる。
【0065】
PCS10は、需要家の消費電力を管理するエネルギーマネジメントシステムのコントローラを介して、ネットワークに接続されてもよい。このようにすれば、電力会社のサーバ17は、一体型保護継電器9による電力の計測値を利用して、太陽光発電システム1の出力制御のみならず、需要家の単相負荷4や三相負荷5を制御することもできる。
【0066】
なお、上述の実施例1及び2並びに変形例の構成は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。例えば、上述の実施例1及び2並びに変形例においては、分散型電源としては、太陽電池によって太陽光エネルギーを電力に変換することで発電する太陽光発電システム1を備えた分散型電源システムに適用した例について説明したが、太陽光発電システム1に加えて蓄電池モジュールを備えた分散型電源システムに本発明を適用することができる。また、太陽光発電システム1に代えて、燃料電池モジュール、ガスエンジンモジュール、風力発電モジュール、潮力発電モジュール、水力発電モジュール、地熱発電モジュール等のエネルギーやこれらを組み合わせて用いる分散型電源システムに本発明を適用することもできる。
【0067】
上述の実施例1及び2並びに変形例においては、PCS10から出力された単相交流電力を単相負荷4に供給しているが、PCS10から三相交流電力を出力し、三相負荷5にPCS10から三相交流電力を供給するようにしてもよい。
【0068】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
商用電力系統(2)と連系して、需要家に設けられた分散型電源(1)の運転を制御する運転制御システム(100)であって、
前記商用電力系統(2)から前記需要家が受電する受電点(3)における地絡電圧を計測する地絡電圧計測部(7)と、
前記受電点(3)における電力を計測する電力計測部(8、93)と、
前記地絡電圧計測部(7)による計測結果に基づいて、前記受電点(3)における地絡の有無を判定する地絡判定部(91)と、
前記受電点(3)における前記電力に基づいて該受電点(3)における逆電力の発生の有無を判定する逆電力判定部(92)と、
前記地絡判定部(91)の判定結果、前記逆電力判定部(92)の判定結果及び前記受電点(3)における電力の計測値を、通信線(11)を通じて伝送可能なデータに変換するデータ生成部(94)と、
を備えた保護継電器(9)と、
前記保護継電器(9)と前記通信線(11)によって接続され、前記分散型電源(1)の運転を制御する制御装置(10)と、
を備え、
前記制御装置(10)は、前記保護継電器(9)から伝送された前記データに基づいて、前記分散型電源(1)から出力される電力の前記商用電力系統(2)への逆潮流を防止する制御を行うことを特徴とする運転制御システム(100)。
【符号の説明】
【0069】
1 :太陽光発電システム
2 :商用電力系統
3 :キュービクル
7 :ZPD
8 :CT
9 :一体型保護継電器
10 :PCS
11 :通信線
91 :OVGR
92 :RPR
93 :電力計
94 :データ生成部