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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/86 20230101AFI20240806BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240806BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240806BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240806BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20240806BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240806BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240806BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20240806BHJP
【FI】
H10K50/86 865
G02B5/20 101
G02F1/1335 500
G09F9/30 349A
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
H05B33/12 E
H05B33/14 Z
H10K59/12
H10K59/38
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020113985
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012271
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 淳
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083823(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/008969(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
H05B 33/00-33/28
G02B 5/20-5/28
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路が形成された基板上に、少なくとも、カラーフィルタが備えられた表示装置において、
カラーフィルタの各着色画素の間には各着色画素を区画する樹脂パターンが備えられており、
前記樹脂パターンの幅方向の380nm以上780nm以下の波長領域における最大透過率が20%以下であり、前記樹脂パターンの表面の380nm以上780nm以下の波長領域における最小反射率が15%以上であり、
前記樹脂パターンは、顔料としてグレー顔料のみを含み、
前記樹脂パターンの全固形分の重量に占める前記グレー顔料の重量は30%以上60%以下の範囲内にあり、
前記樹脂パターンと前記着色画素とは直接接している事を特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記樹脂パターンが、前記グレー顔料として、少なくとも酸化チタンを含んでいる事を特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(有機Electro-Luminescence、以下、有機ELと称する。)表示装置に関する。更に詳しくは、混色が無く、輝度が高い有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機や携帯情報端末などの電子機器において、現在の主流である液晶表示装置では困難であった更なる薄型・軽量化や曲面表示の要求に対応するため、自発光素子である有機ELを用いた表示装置の開発・量産化が進んでいる。その中でも、薄型・軽量化の特徴を活かすため、ヘッドマウントディスプレイ、電子ビューファインダなどの高精細かつ0.5インチ程度の小型ディスプレイ(以下、マイクロディスプレイと称する。)への応用が期待されている。
【0003】
有機ELディスプレイの表示方式には、白色発光層を製膜し、カラーフィルタを用いてRGB等の色表現をする方式と、RGB等それぞれの色を発光する発光層を蒸着させ色表現する方式の大きく2つの方式がある。マイクロディスプレイは、画素が微細であるため、RGBの発光層を選択的に製膜する方法は非常に困難な状況となっている。そのため、白色発光層にカラーフィルタを用いる方式がマイクロディスプレイには積極的に採用されている。
【0004】
マイクロディスプレイは前述のとおり、画素サイズが1μm~3μmと微細であるため、従来から採用されている有機EL素子とカラーフィルタを別々の基板に作製し貼り合せる方式では、精度が下がり、色ズレが生じてしまう。そのため、有機EL素子上にカラーフィルタを形成する方式が提案されている。
【0005】
有機EL表示素子上にカラーフィルタを形成して赤色・緑色・青色に分離する場合において、有機EL素子からの発光は等方的であるがゆえに任意の色表示する場合には、カラーフィルタの隣接画素による色の吸収が生じてしまい、色の混色による色再現性の低下が生じる問題がある。
【0006】
前記問題点を解決するため、例えば特許文献1では、図2に示す様に、半導体基板1の上にOLED(Organic Light―Emitting Diode)素子2が形成され、その上にカラーフィルタ3の赤色・緑色・青色の画素間にブラックマトリクス7を形成する手法がとられている。カラーフィルタ3の上には、粘着層5を介してカバーガラス6が貼り付けられる事で、有機EL表示装置10´が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-063745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の特許文献1の内容は、ブラックマトリクスによる光の吸収により、混色の問題は解決するものの、有機EL素子から発せられる光がブラックマトリクスで吸収される為、発光効率が下がり、輝度の低下をもたらしてしまう問題があった。
【0009】
上記の問題を解決するため、本発明は、混色の問題を低減し、且つブラックマトリクスを備えたカラーフィルタを形成した場合より高い輝度を持つ表示装置を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0011】
本発明の一態様は、駆動回路が形成された基板上に、少なくとも、カラーフィルタが備えられた表示装置において、
カラーフィルタの各着色画素の間には各着色画素を区画する樹脂パターンが備えられており、
前記樹脂パターンの幅方向の380nm以上780nm以下の波長領域における最大透過率が20%以下であり、前記樹脂パターンの表面の380nm以上780nm以下の波長領域における最小反射率が15%以上であり、
前記樹脂パターンは、顔料としてグレー顔料のみを含み、
前記樹脂パターンの全固形分の重量に占める前記グレー顔料の重量は30%以上60%以下の範囲内にあり、
前記樹脂パターンと前記着色画素とは直接接している事を特徴とする表示装置である。
【0012】
また、前記樹脂層が、少なくとも酸化チタンを含んでいる事を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表示装置によれば、カラーフィルタ層が、ブラックマトリクスの代わりに、380nm~780nmの波長領域における最大透過率が20%以下であって、380nm~780nmの波長領域における反射率が15%以上であるグレーマトリクスを備えている。その為、混色の問題が無く、且つブラックマトリクスを使用した場合より高い輝度を持つ 表示装置を提供する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のグレーマトリクスを使用したカラーフィルタ層を備えた有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
図2】従来のグレーマトリクスを使用したカラーフィルタ層を備えた有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明において用いられるカラーフィルタおよび有機EL表示装置について詳細に説明する。
【0016】
≪有機EL表示装置≫
本発明の有機EL表示装置の一実施形態の断面図を図1に示す。本発明は、半導体基板1に、OLED素子(以後、有機EL素子とも記す。)2を形成し、次に前記OLED素子2の上に、グレーマトリクス4を備えたカラーフィルタ3を形成し、粘着層5を介してカバーガラス6が貼り合わされた有機EL表示装置10である。グレーマトリクス4は、カラーフィルタに従来から使用されて来たブラックマトリクスに代わるものである。隣接する着色画素による混色を防止可能な遮光性を有しつつ、各画素界面での光の反射率を高める事により、有機EL素子から発せられる光がグレーマトリクス4で吸収されるのを抑制する事で、輝度を向上させる機能を備えている。
【0017】
本発明に係る前記有機EL素子2の有機EL層は、発光物質を含む有機発光層単層、あるいはその他の層を形成した多層で形成することができる。多層で形成される場合は、たとえば一般的な正孔輸送層、電子輸送性有機発光層、電子輸送層が順次積層されてなる3層構成、さらには正孔(電子)注入層、正孔(電子)輸送層と注入機能と輸送機能を分けた層を設けたり、あるいは正孔(電子)輸送をブロックする層を設けたりする多層構成でもよい。
【0018】
<半導体基板>
半導体基板1は、有機EL素子2を駆動する駆動回路が形成された半導体基板である。駆動回路は、シリコンウェハをウェハプロセスにより作製した半導体回路であっても良いし、シリコンウェハやガラス基板の表面にシリコン薄膜を使用した薄膜トランジスタを形成する事により作製したTFT(Thin Film Transistor)回路であっても良い。
【0019】
<有機EL素子>
本発明の有機EL表示装置10に使用する有機EL素子2は、基板(半導体基板1)側から順に、陽極、有機層及び陰極を積層した積層体が、水蒸気や酸素ガスなどを透過させないバリア層で覆われた構成となっている。図1に示す有機EL素子2は、この有機EL素子2で発光した光を基板とは反対側から取り出す、いわゆるトップエミッション型として構成されている場合を例示している。
【0020】
次に、これらの有機EL素子2を構成する各部の詳細な構成を、基板、陽極、陽極と対をなす陰極、これらの陽極と陰極との間に狭持された有機層の順に説明する。
【0021】
(陽極)
陽極は、基板上に設けられ、仕事関数の大きな導電性材料で構成される。仕事関数の大きな導電性材料としては、たとえば、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、セレン、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、ニオブやこれらの合金、あるいは酸化錫(SnO)、酸化インジウム錫(ITO:Indium tin oxide)、酸化亜鉛、酸化チタン等がある。
【0022】
(陰極)
陰極は、仕事関数が小さな導電性材料を用いて構成されている。このような導電性材料としては、例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とAg、Al、In等の金属との合金、或いはこれらを積層した構造を使用できる。また、有機層との間に例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とフッ素、臭素等のハロゲンや酸素等との化合物層を薄く挿入した構造としても良い。
【0023】
陽極及び陰極は、有機EL素子によって構成される表示装置の駆動方式によって適する形状にパターニングされる。例えば、有機EL表示装置の駆動方式が単純マトリックス型である場合には、この陽極及び陰極は互いに交差するストライプ状に形成され、これらが交差した部分が有機EL素子となる。
【0024】
(有機層)
本発明の有機EL表示装置で使用する有機EL素子の有機層は、少なくとも白色の発光層を有するものであるが、通常、複数層の有機層から構成されるものである。例えば、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層や、白色の発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、白色の発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を有する。
【0025】
本発明に係る白色の発光層は、白色の発光が得られれば良く、公知のものを用いることができる。白色の発光特性は、少なくとも赤色領域(600nm~780nm)と緑色領域(475nm~600nm)及び青色領域(380nm~475nm)の3つの領域に、加色混合により白色になる発光があればよい。発光ピークは必ずしも3つあるいはそれ以上の数を必要とするのではなく、例えば2つの発光ピークでも上記の領域に発光があればよい。しかし、広い色再現性を得るためには3つ以上の発光ピークがある白色発光層を用いることが好ましく、さらに好ましくは、上記3つの色領域のひとつ以上に発光ピークがあることが好ましい。
【0026】
このような白色の発光層を構成する材料としては、蛍光又は燐光を発するものであれば特に限定されるものではない。また、発光材料は、正孔輸送性や電子輸送性を有していていもよい。発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、及び高分子系材料を挙げることができる。
【0027】
上記色素系発光材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ-ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、及びピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0028】
上記金属錯体系発光材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、及びユーロピウム錯体、あるいは、中心金属に、Al、Zn、Be等又はTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、およびキノリン構造等を有する金属錯体などを挙げることができる。
【0029】
上記高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、並びに上記の色素系材料及び金属錯体系材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0030】
上記白色の発光層の形成方法としては、例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、又はスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、及び自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。特に、蒸着法、スピンコート法、及びインクジェット法を用いることが好ましく、白色の発光層の膜厚は、通常5nm~5μm程度である。
【0031】
(正孔注入層)
本発明においては、白色の発光層と陽極との間に正孔注入層が形成されていても良い。正孔注入層を設けることにより、白色の発光層への正孔の注入が安定化し、発光効率を高めることができるからである。本発明に用いられる正孔注入層の形成材料としては、一般的に有機EL素子の正孔注入層に使用されている材料を用いることができる。また、正孔注入層の形成材料は、正孔の注入性若しくは電子の障壁性のいずれかを有するものであれば良い。
【0032】
正孔注入層の形成材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、及びチオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマー等を例示することができる。
【0033】
さらに、正孔注入層の形成材料としては、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、及びスチリルアミン化合物等を例示することができる。また、正孔注入層の膜厚は
、通常5nm~1μm程度である。
【0034】
(電子注入層)
本発明においては、白色の発光層と陰極との間に電子注入層が形成されていても良い。電子注入層を設けることにより、白色発光層への電子の注入が安定化し、発光効率を高めることができるからである。
【0035】
本発明に用いられる電子注入層の形成材料としては、例えばニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8-キノリノール)アルミニウム等の8-キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、並びにジスチリルピラジン誘導体等を例示することができる。
【0036】
(バリア膜)
有機EL素子の発光層の材料は湿度に弱いため、耐湿性を発現させるためにバリア膜を設ける構成となる。有機EL素子用のバリア膜には、通常、低温で製膜可能なプラズマCVD法による窒化シリコンからなるバリア膜が使用されるが、有機EL素子の発光層などの劣化を防ぐ事ができれば、窒化シリコンに限定する必要は無い。
【0037】
<カラーフィルタ>
カラーフィルタの画素内の混色を抑制し、且つ発光効率の低下を抑制する必要がある。そのため、各画素を区画するブラックマトリクスの代わりに、グレーマトリクスを形成し、グレーマトリクスによって区画された部分に着色樹脂層を形成し着色画素とする。
グレーマトリクスは、隣接する画素からの光を遮断する遮光性を有しつつ、各画素界面での光の反射率を高める機能を備えている必要がある。
【0038】
(グレーマトリクス)
グレーマトリクスは、灰色に着色可能な顔料を含む樹脂層からなるマトリクス状の樹脂パターンである。
その樹脂パターンの平面視における幅方向の、380nm~780nmの波長領域における最大透過率が20%以下である事が必要である。最大透過率が20%以下である事により、ある画素に対応する有機EL素子から発せられた光が、樹脂パターンを透過して隣接する画素に漏れ出る事を防ぐ事が可能となる。且つその樹脂パターンの側面の380nm~780nmの波長領域における最小反射率が15%以上である事が必要である。最小反射率が15%以上である事により、有機EL素子から発せられた光が樹脂パターンの側面に入射した際に、吸収されてしまう事を抑制する事ができる。因みに、ブラックマトリクスの同じ波長領域における最小反射率は4%程度である。
【0039】
グレーマトリクスを着色するグレー顔料として、酸化チタンを好適に使用する事ができる。
・酸化チタン
酸化チタンには、アナターゼ型、ルチル型及びブルーカイト型の3つの結晶形態があるが、本実施形態では、小粒径化しやすいアナターゼ型と、着色力の高いルチル型の少なくとも1種類を含有してもよい。
【0040】
アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して、紫外可視光領域の短波長側の反射率
が高く、より青白い色相を呈する点で好ましい。しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するため、タッチパネルの加飾層として形成した場合に、長時間に亘って太陽光等の光を照射すると、組成物中の樹脂等を変色してしまう恐れがある。そのため、ルチル型を用いる場合が多い。
【0041】
ルチル型酸化チタンは、白色度がアナターゼ型と比較して、紫外可視光領域の短波長側での反射率が劣るものの、光活性をほとんど有さない。そのために、樹脂の黄変等の劣化を抑えることができ、安定した加飾層を得ることができる。
【0042】
また、ルチル型酸化チタンの中でも塩素法で製造したものが、白色度・分散安定性の点で好ましい。また、酸化チタンとマイカやタルク等の天然鉱物の体質顔料と混合することで、輝度が高く、隠蔽性かつ平坦性の良好な塗膜が得られる。
【0043】
本実施形態に係る酸化チタンは、分散安定性、及び反射率を向上させる目的で、表面処理を施してもよく、反射率を一層向上でき白色度が得られる点で、アルミナで表面処理をすることが好ましい。アルミナで表面処理された酸化チタンとして、例えば、DuPont社製 TIPURE R-100、TIPURE R-101、TIPURE R-102、TIPURE R-103、TIPURE R-104、TIPURE R-105、TIPURE R-108、TIPURE R-706、TIPURE R-900、TIPURE R-902、TIPURE R-931、TIPURE R-960、テイカ社製 TITANIX JR-300、TITANIX JR-403、TITANIX JR-405、TITANIX JR-600A、TITANIX JR-600E、TITANIX JR-602、TITANIX JR-602S、TITANIX JR-603、TITANIX JR-805、TITANIX JA-4、堺化学工業社製 TITON R-5N、TITON R-7E、TITON R-21、TITON R-25、TITON R-32、TITON R-42、TITON R-44、TITON R-45M、TITON R-49S、TITON R-61N、TITON R-62N、TITON GTR-100、TITON GTR-300、石原産業社製TIPAQUE CR-50、TIPAQUE CR-57、TIPAQUE CR-58、TIPAQUE CR-60、TIPAQUE CR-63、TIPAQUE CR-67、TIPAQUE CR-80、TIPAQUE CR-85、TIPAQUE CR-90、TIPAQUE CR-93、TIPAQUE CR-95、TIPAQUE CR-97、TIPAQUE UT771、TIPAQUE R-550、TIPAQUE R-630、TIPAQUE R-670、TIPAQUE R-680、TIPAQUE R-780、TIPAQUE R-830、TIPAQUE R-930、TIPAQUE A-220等を用いることができる。
【0044】
アルミナで表面処理された酸化チタン以外に、他の有機物や無機物でさらに表面処理されていてもよく、例えば、アルミナと有機物で表面処理されたTIPAQUE R-60-2(石原産業社製)、アルミナとジルコニアで表面処理されたTIPAQUE R-57、R-67、R-97(石原産業社製)、TITON R-61N、TITON GTR-100、TITON GTR-300等(堺化学工業社製)も好ましく用いることができる。
【0045】
これらの酸化チタンは、そのままの状態では酸化チタン同士が凝集している。そのため、分散処理が必要である。酸化チタンに分散剤及び溶剤を加えてミルベースをつくり、それをボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロール、ペイントシェーカー、超音波、バブルホモジナイザー等の方法により分散することができる。これらの処理方法は、2つ以上組み合わせることも可能である。分散剤には、樹脂あるいは公知の分散剤を使用可能である。
【0046】
本実施形態に係る酸化チタンの含有量としては、グレーマトリクスの全固形分中の30%~60%(重量比)の範囲で使用することが良い。含有量が30%未満では、組成物中の樹脂量が多いため、可視光領域の透過率を抑制しつつ、高い反射率の塗膜を得ることができない。
【0047】
酸化チタン以外の例として、ZrO、アルミナ等の白色の無機顔料であれば好適に利用できる。
【0048】
以上に説明したグレー顔料を用いて、感光性グレー(灰色)レジストを作製すれば良い。例えば、ブラックマトリクスを作製する為の感光性黒色レジストにおいて、カーボンブラックなどの黒色顔料の代わりに、グレー顔料を使用することにより、感光性グレーレジストを作製する事ができる。これを用いて、ブラックマトリクスを作製するのと同様の製造プロセスを行う事により、所望の基板上にグレーマトリクスを形成する事が可能である。
【0049】
(着色画素)
次にカラーフィルタ3の着色画素を作製する為の着色感光性レジストの構成要素について説明する。具体的には、赤色、緑色、青色の各着色画素に使用する赤色顔料、緑色顔料、黄色顔料、青色顔料、紫色顔料と、バインダ樹脂と、光重合性モノマーと、光重合開始剤、熱硬化性モノマー、連鎖移動剤、酸発生剤、溶剤などについて説明する。
【0050】
・赤色顔料
赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276などを挙げられる。
オレンジ色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ36、38、43、51、55、59、61等が挙げられる。
これらの中でも、高着色力を得る点から、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177を用いることが特に好ましいものである。
【0051】
・緑色顔料
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55又は58を挙げることができる。これらの中でも、高着色力を得る点から、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36又は58であり、更に好ましくはC.I.ピグメントピグメントグリーン36、C.I.ピグメントピグメントグリーン58である。
【0052】
・黄色顔料
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208などを挙げることができる。これらの中でも、高着色力を得る点から、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180、又は185であり、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー138、139、150、又は185であり、更に好ましくは、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー185である。
【0053】
・青色顔料
青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などを挙げることができる。これらの中でも高着色力を得る点から、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、又は15:6であり、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6である。
【0054】
・紫色顔料
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50などを挙げることができる。これらの中でも、高着色力を得る点から、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、又は23であり、更に好ましくは、C.I.ピグメントバイオレット23である。
【0055】
・バインダ樹脂
バインダ樹脂としては、アルカリ可溶型の非感光性透明樹脂および感光性透明樹脂を使用することができる。
アルカリ可溶型の非感光性透明樹脂とは、アルカリ水溶液に溶解する性質を持つ、光重合性を有しない透明樹脂であり、このようなアルカリ可溶型の非感光性樹脂として具体的には、酸性官能基を有するアクリル樹脂、α-オレフィン-(無水)マレイン酸共重体、スチレン-(無水)マレイン酸共重合体、スチレン-スチレンスルホン酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン-(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。なかでも、酸性官能基を有するアクリル樹脂、α-オレフィン-(無水)マレイン酸共重合体、スチレン-(無水)マレイン酸共重合体およびスチレン-スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好適に用いられる。
【0056】
感光性透明樹脂としては、反応性官能基を有する線状高分子に、この反応性官能基と反応可能な置換基を有する(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等を反応させて、エチレン不飽和二重結合を該線状高分子に導入した樹脂が挙げられる。また、反応性官能基を有する
(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等に、この反応性官能基と反応可能な置換基を有する線状高分子を反応させて、エチレン不飽和二重結合を該線状高分子に導入した樹脂が挙げられる。前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が例示でき、この反応性官能基と反応可能な置換基としては、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等が例示できる。
また、スチレン-無水マレイン酸共重合物やα-オレフィン-無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも、感光性樹脂として使用できる。
【0057】
・光重合性モノマー
光重合性モノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレートを用いることができる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロカラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
また、多官能イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
・光重合開始剤
光重合開始剤としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。
【0059】
上記光重合開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。
【0060】
・熱硬化性モノマー
熱硬化性モノマーとしては、二官能以上の多官能エポキシ化合物を使用することが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、またはビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物などのエポキシ化合物が挙げられる。
具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の低分子量エポキシ化合物が挙げられる。製品名としては、ナガセケムテックス製EX-810、EX-830、EX-611、EX-421、EX-512、EX-521、EX-611、EX-614、EX-622、EX-314、EX-321、EX-411が挙げられる。
また、多官能エポキシ化合物の一部を多官能オキセタン化合物に置き換えてもよい。オキセタン化合物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、またはビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物などのオキセタン化合物等が挙げられる。
【0061】
・連鎖移動剤
着色樹脂組成物には、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有させることができる。多官能チオールの使用量は、着色樹脂組成物の全固形分量を基準として0.1~30重量%が好ましく、より好ましくは1~20重量%である。0.1質量%未満では多官能チオールの添加効果が不充分であり、30質量%を越えると感度が高すぎて逆に解像度が低下する。また、チオールは熱硬化成分の硬化剤としても機能するため、光反応および熱反応促進の働きをするため、本発明においては非常に重要な役割を果たす。
【0062】
多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等が挙げられる。これらの多官能チオールは、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0063】
・光酸発生剤
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤ともいう)を含有する。放射線の照射により発生した酸とエポキシおよびオキセタンの反応が進行することにより、従来の高温焼成を実施することなく、低温での塗膜の硬化が可能となる。
【0064】
光酸発生剤は、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造に制限されるものではない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線又は放射線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。例えば、(C)光酸発生剤としては、オニウム塩、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、又はトリス(アルキルスルホニル)メチドのような有機酸を発生する化合物が好ましい。また、(C)光酸発生剤としては、トリクロロメチル-s-トリアジン類、スルホニウム塩やヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物なども好ましい。
【0065】
・溶剤
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジグライム、シクロヘキサノン、エチルベンゼン、キシレン、酢酸磯亜ミル、酢酸nアミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、液体ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エステル、エチルエトキシプポピオネートなどが挙げられる。
【0066】
<カラーフィルタの製造方法>
本発明に係るカラーフィルタの画素形成に用いる感光性着色樹脂組成物は、少なくとも顔料、光重合性単量体、光重合開始剤、界面活性剤を含くみ、フォトリソ法によりパターン形成が可能なものであれば特に限定するものではない。
【0067】
駆動回路が形成された半導体基板上に、有機EL素子を形成し、有機EL素子のバリア膜上に平坦化膜を形成した基板の上にカラーフィルタを形成する。
【0068】
具体的な形成方法は、まず、基板上に、スピンコート法やダイコート法などの塗布技術を用いて、グレーマトリクスを形成する為の感光性着色樹脂組成物を塗布し、乾燥する。次に、所定のフォトマスクを介して、露光、現像することによりグレーマトリクスを形成する。次に、1色目の感光性着色樹脂組成物を塗布し、乾燥する。次に、所定のフォトマスクを介して、露光、現像することにより1色目の着色画素を形成する。同様にして、2色目以降の着色画素を形成する事によりカラーフィルタを形成する。
【0069】
その後、必要であればカラーフィルタの上に平坦化膜を形成し、カラーフィルタの表面を平滑化する。
【0070】
<有機EL表示装置の製造方法>
上記の様にして、駆動回路を形成した半導体基板上に、有機EL素子を形成し、更にその上にカラーフィルタを形成した基板の上に、粘着層を介してカバーガラスを貼り合わせる事により、図1に断面図を例示した様な有機EL表示装置10を得る事ができる。
【実施例
【0071】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
<実施例1>
<有機EL素子基板の製造>
シリコン基板上に、公知のTFT製造方法を用いてTFT層を形成した。更に、TFT層上に公知の有機EL製造方法を用いて白色有機EL素子を形成後、プラズマCVD法により窒化シリコンを被覆して有機EL素子基板を形成した。
【0073】
<着色樹脂組成物の作製>
次に、有機EL素子基板上にグレーマトリクスを形成するグレーマトリクス用着色樹脂組成物、着色画素を形成する赤色着色樹脂組成物、緑色着色樹脂組成物、青色着色樹脂組成物を下記の様にして作製した。
【0074】
(顔料)
グレーマトリクス用着色樹脂組成物に使用する着色剤としては、アクリル樹脂にアクリルモノマー、光重合開始剤などを添加する事によって得たアクリル系感光性樹脂に、グレー顔料としてルチル型酸化チタンを添加した感光性着色樹脂組成物とした。
この感光性着色樹脂組成物のルチル型酸化チタンの含有量は、画素間のグレートマトリクスの厚さに相当するグレーマトリクス用着色樹脂組成物をガラス基板上に塗布・乾燥した塗膜の最大透過率が10%、表面の最小反射率が37%となるように調整した値である(Gray1)。
【0075】
(顔料)
赤色着色樹脂組成物に使用する着色剤には以下のものを使用した。
赤色用顔料:C.I. Pigment Red 254
(BASF社製「イルガーフォーレッド B-CF」)
黄色用顔料:C.I. Pigment YELlow 139
(BASF社製「Paliotol YELlow L 2146HD」)
【0076】
それぞれの顔料を用いて赤色の着色樹脂組成物を作製した。
【0077】
(赤色着色樹脂組成物の調整)
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して赤色顔料の分散体を作製した。
赤色顔料:C.I. Pigment Red 254 : 78重量部
黄色顔料:C.I. Pigment YELlow 139: 22重量部
アクリルワニス(固形分20%) :215重量部
【0078】
その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して赤色着色材料(R-1)を得た。
【0079】
前述の着色材料を用いて、表1に記載の配合となるように赤色の感光性着色樹脂組成物を作製した(RR-1)。
【0080】
(顔料)
緑色着色樹脂組成物に使用する着色剤には以下のものを使用した。
緑色用顔料:C.I. Pigment Green 58
(DIC社製「FASTOGEN(登録商標)GREEN A110」)
黄色用顔料:C.I. Pigment YELlow 185
(BASF社「Paliotol(登録商標)YELlow L 1155」)
それぞれの顔料を用いて緑色の着色樹脂組成物を作製した。
【0081】
(緑色着色樹脂組成物の調整)
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して緑色顔料の分散体を作製した。
緑色顔料:C.I. Pigment Green 58 : 65重量部
黄色顔料:C.I. Pigment YELlow 185: 35重量部
アクリルワニス(固形分20%) :215重量部
その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して緑色着色材料(G-1)を得た。
前述の着色材料を用いて、表1に記載の配合となるように青色の感光性着色樹脂組成物を作製した(GR-1)。
【0082】
(顔料)
着色樹脂組成物に使用する着色剤には以下のものを使用した。
青色用顔料:C.I. Pigment Blue 15:6
(トーヨーカラー社製「LIONOL BLUE ES」)
紫色用顔料:C.I. Pigment Violet 23
(トーヨーカラー社製「LIONOGEN VIOLET RL」)
それぞれの顔料を用いて青色の着色樹脂組成物を作製した。
【0083】
(青色着色樹脂組成物の調整)
下記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して青色顔料の分散体を作製した。
青色顔料:C.I. Pigment Blue 15:6 : 63重量部
紫色顔料:C.I. Pigment Violet 23 : 37重量部
アクリルワニス(固形分20%) :215重量部
その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して青色着色材料(B-1)を得た。
【0084】
前述の着色材料を用いて、表1に記載の配合となるように青色の感光性着色樹脂組成物を作製した(BR-1)。
【0085】
【表1】
【0086】
<カラーフィルタおよび有機EL表示装置の製造>
作製した有機EL素子基板上に平坦化膜用の透明樹脂組成物を硬化仕上がりの膜厚が0.1μmになるようにスピンナーで塗布した。その後、加熱オーブンを用いて100℃、10分間加熱して硬化し、平坦化膜の形成を完了した。
【0087】
有機EL素子基板の平坦化膜上に、グレー感光性樹脂組成物を硬化仕上がりの膜厚が1.2μmになるようにスピンナーで塗布し、パターンマスクを介して紫外線露光、アルカリ現像、水洗および乾燥工程を経てカラーフィルタのグレーマトリクス層(Gray)を形成した。その後、加熱オーブンを用いて80℃、10分間加熱して硬化して、カラーフィルタのグレーマトリクス層(Gray1)の形成を完了した。
【0088】
有機EL素子基板上に形成したグレーマトリクス層の上に、緑色感光性樹脂組成物を硬化仕上がりの膜厚が1.2μmになるようにスピンナーで塗布し、パターンマスクを介して紫外線露光、アルカリ現像、水洗および乾燥工程を経てカラーフィルタの緑色層(Green2)を仮形成した。その後、加熱オーブンを用いて80℃、10分間加熱して硬化して、カラーフィルタの緑色層(Green2)の形成を完了した。
【0089】
次に、上述のカラーフィルタの緑色層(Green2)の形成方法と同様にして、赤色感光性樹脂組成物を、硬化仕上がりの膜厚が1.2μmになるようにスピンナーで塗布し、パターンマスクを介して紫外線露光、アルカリ現像、水洗および乾燥工程を経てカラーフィルタの緑色層(Red1)を仮形成した。その後、加熱オーブンを用いて80℃、10分間加熱して硬化して、カラーフィルタの赤色層(Red1)の形成を完了した。
【0090】
さらに、上述のカラーフィルタの緑色層(Green2)の形成方法と同様にして、青色感光性樹脂組成物を、硬化仕上がりの膜厚が1.2μmになるようにスピンナーで塗布し、パターンマスクを介して紫外線露光、アルカリ現像、水洗および乾燥工程を経てカラーフィルタの赤色層(Blue3)を仮形成した。その後、加熱オーブンを用いて80℃、10分間加熱して硬化して、カラーフィルタの青色層(Blue3)の形成を完了してカラーフィルタを作製した。
【0091】
緑色、赤色、青色の層を形成後、封止剤ストラクトボンドXMF-T107(三井化学社製)を用いてカバーガラスと貼り合せし、有機EL表示装置を作製した。
【0092】
<実施例2>
カラーフィルタの形成工程においてグレーマトリクスを形成する着色材料を最大透過率15%、最小反射率33%となるようにGray1から酸化チタンの含有量を減量したGray2を形成したことを除き、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0093】
<実施例3>
カラーフィルタの形成工程においてグレーマトリクス形成する着色材料を最大透過率20%、最小反射率30%となるようにGray2から酸化チタンの含有量をさらに減量したGray3を形成したことを除き、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0094】
<実施例4>
カラーフィルタの形成工程においてグレーマトリクス形成する着色材料を最大透過率40%、最小反射率15%となるようにGray3から酸化チタンの含有量をさらに減量したGray4を形成したことを除き、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0095】
<比較例1>
カラーフィルタの形成工程においてグレーマトリクスを形成する代わりにブラックマトリクスを形成したことを除き、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0096】
実施例1~4で作製したグレーマトリクス;Gray1~Gray4および比較例1で作製したブラックマトリクスの380nm以上780nm以下の波長領域における最大透過率と最小反射率をまとめて表2に示した。
【0097】
【表2】
【0098】
<輝度評価>
実施例1および比較例1の有機EL表示装置における赤色表示時、緑色表示時、青色表示時の色度をオリンパス社製「分光放射輝度計 CS-1000」を用いて測定した。
【0099】
赤色、緑色、青色の3色の画素を全て点灯表示し、白色表示した際の輝度が330cd/m以上のものは◎、300cd/m以上330cd/m未満のものは〇、280cd/m以上300cd/m未満のものは△、280cd/m未満のものは×として評価した。
【0100】
輝度評価の結果を表3にまとめて示した。比較例1はブラックマトリクスを使用しており、×となった。一方、実施例1~3については、ブラックマトリクスの代わりに、それぞれGray1、Gray2,Gray3のグレーマトリクスを使用している。そのため、全て〇となり、赤色・緑色・青色表示における相対輝度が向上する効果を確認することができた。グレーマトリクスによる同一画素内での光の反射が隣接画素およびブラックマトリクスによる吸収の光の損失を抑制できているものと考える。実施例4については、最小反射率が25%で実施例1~4の中で最も小さい値だった事から△となったが、最小反射率が4%のブラックマトリクスを使用した比較例1より高い輝度が得られる事が確認できた。
【0101】
<混色評価>
実施例1~4および比較例1の有機EL表示装置を白色点灯させ、斜め方向から観察した際に色の変化の程度を目視にて観察した。
斜め方向から観察しても色変化がみられないものは〇(混色無し)、変化が生じているように見えるものは×(混色有り)として判定を実施した。
【0102】
混色評価の結果を表3にまとめて示した。表3に示した様に、実施例1~4および比較例1において、全て混色評価が良好(〇)で、視認性に優れた有機EL表示装置であることが分かる。一方、参考としてブラックマトリクスもグレーマトリクスも備えていないカラーフィルタでは、ブラックマトリクスによる輝度の低下は起こっていないが、有機EL素子からの発光が透過してしまい、隣接画素を透過した光の影響をうけて、混色を起こしていると考えられる。
【0103】
【表3】
【0104】
以上の結果から、本発明のグレーマトリクスを用いたカラーフィルタを備えた有機EL表示装置においては、ブラックマトリクスを用いた場合より輝度を高くする事が可能であり、且つ混色を防ぐ事ができる為、視認性を向上させることが可能である。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
駆動回路が形成された半導体基板上に、少なくとも、有機EL素子とカラーフィルタがこの順に備えられた有機EL表示装置において、
カラーフィルタの各着色画素の間には各着色画素を区画する樹脂パターンが備えられており、
前記樹脂パターンの幅方向の380nm以上780nm以下の波長領域における最大透過率が20%以下であり、前記樹脂パターンの表面の380nm以上780nm以下の波長領域における最小反射率が15%以上である事を特徴とする有機EL表示装置。
[2]
前記樹脂パターンが、少なくとも酸化チタンを含んでいる事を特徴とする項1に記載の有機EL表示装置。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイ、電子ビューファインダなどの電子機器用の有機EL表示装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1・・・半導体基板
2・・・OLED素子または有機EL素子
3・・・カラーフィルタ
4・・・グレーマトリクス
5・・・粘着層
6・・・カバーガラス
7・・・ブラックマトリクス
10、10´・・・有機EL表示装置
図1
図2