(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】超音波センサー、及び超音波センサーの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20240806BHJP
G01B 17/00 20060101ALI20240806BHJP
G01S 15/10 20060101ALI20240806BHJP
G01S 15/88 20060101ALI20240806BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01S7/521 Z
G01B17/00 B
G01S15/10
G01S15/88
H04R17/00 330G
(21)【出願番号】P 2020121931
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小野木 智英
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-072590(JP,A)
【文献】特開平08-105784(JP,A)
【文献】特開2003-065817(JP,A)
【文献】特開平06-118167(JP,A)
【文献】米国特許第8248888(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/18 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
G01B 17/00 - 17/08
G01F 23/00
23/14 - 23/2965
23/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向かう第一方向に超音波を送信し、かつ、前記第一方向の反対側から入力され
た前記超音波を受信することで受信信号を出力する超音波送受信部と、
前記超音波送受信部と前記対象物との間で、前記超音波送受信部から前記第一方向に既
知の第一距離の位置に設けられた構造体と、
前記超音波送受信部と前記対象物との間の距離を算出する距離算出部と、を備え、
前記超音波送受信部は、前記超音波の送信及び受信を行う送受信面を有し、
前記構造体は、前記第一方向から見た投影視において、前記送受信面を覆い、
前記構造体の法線は、前記送受信面の法線に対して傾斜しており、
前記構造体は、前記超音波送受信部から送信される前記超音波の一部である第一超音波
成分を反射させ、前記超音波のうち前記第一超音波成分以外の第二超音波成分を前記対象
物に向かって通過させ、
前記構造体は、前記第二超音波成分を通過させる複数の開口部を有する面状に構成され
、
前記距離算出部は、前記超音波送受信部から前記超音波を送信した送信タイミングから
前記第一超音波成分が受信されるまでの第一時間と、前記送信タイミングから前記第二超
音波成分が受信されるまでの第二時間と、前記第一距離と、に基づいて、前記超音波送受
信部から前記対象物までの距離を算出する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項2】
請求項
1に記載の超音波センサーにおいて、
前記構造体は、線状部材を編み合わせたメッシュ状部材である
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波センサーにおいて
、
前記構造体は、前記第一方向から見た投影視において、前記送受信面の一部を覆い、前
記送受信面に対向して前記第一超音波成分を反射させる反射面を有する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項4】
請求項
3に記載の超音波センサーにおいて、
前記反射面は、前記送受信面に対して傾斜する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項5】
請求項
3又は請求項
4に記載の超音波センサーにおいて、
底部、及び前記底部の外周縁から前記第一方向に延出する枠部を有するフレームを備え
、
前記超音波送受信部は、前記底部に設けられ、
前記構造体は、前記第一方向に交差する第二方向に延出して前記フレームに接続されて
いる
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項6】
請求項
5に記載の超音波センサーにおいて、
前記構造体は、前記第一方向に交差する第二方向に長手のロッド状構造体であり、前記
第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向の寸法が、前記送受信面の前記第三方向の
寸法よりも短い
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項7】
超音波の送信及び受信を行う送受信面を有し、対象物に向かう第一方向に
前記超音波を
送信し、かつ、前記第一方向の反対側から入力された前記超音波を受信することで受信信
号を出力する超音波送受信部と、
前記第一方向から見た投影視において、前記送受信面を
覆い、前記超音波送受信部と前記対象物との間で、前記超音波送受信部から前記第一方向
に既知の第一距離の位置に設けられた構造体と、を備え、前記構造体が、前記超音波送受
信部から送信される前記超音波の一部である第一超音波成分を反射させ、前記超音波のう
ち前記第一超音波成分以外の第二超音波成分を前記対象物に向かって通過させる超音波セ
ンサーの制御方法であって、
前記構造体の法線は、前記送受信面の法線に対して傾斜しており、
前記構造体は、前記第二超音波成分を通過させる複数の開口部を有する面状に構成され
、
前記超音波送受信部から前記超音波を送信した送信タイミングから前記第一超音波成分
が受信されるまでの第一時間と、前記送信タイミングから前記第二超音波成分が受信され
るまでの第二時間と、前記第一距離と、に基づいて、前記超音波送受信部から前記対象物
までの距離を算出する
ことを特徴とする超音波センサーの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサー、及び超音波センサーの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波送受信部から超音波を送信し、対象物で反射された超音波を当該超音波送受信部で受信することで、超音波送受信部から対象物までの距離を測定する超音波センサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、タンク内の液面を対象物として、液面の高さを計測するための超音波センサーが開示されている。この超音波センサーは、タンク内の所定位置に配置されており、タンクの上面から超音波センサーの超音波送受波器(超音波送受信部)までの距離が既知となる。
この特許文献1では、超音波送受波器から送信され、液面で反射されて超音波送受波器に戻る超音波を第1反射波とする。また、超音波送受波器から送信され、液面で反射された後タンクの上面で反射され、再度液面で反射された後に超音波送受波器に戻る超音波を第2反射波とする。そして、第1反射波が超音波送受波器で受信されるまでの時間と、第2反射波が超音波送受波器で受信されるまでの時間との時間差に基づいて、液面から超音波送受波器までの距離を算出する。これにより、タンク内の圧力や湿度等の環境によらず、対象物である液面の高さを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の超音波センサーでは、第2反射波は、超音波送受信部から送信された超音波が対象物で反射された後、対象物から超音波送受信部までの距離よりも遠い位置にあるタンクの上面まで進み、さらに、再度対象物まで進んだ後、当該対象物で反射されて超音波送受信部に入射される超音波成分である。よって、超音波の送信タイミングから受信タイミングまでの時間が長くなる。この場合、第2反射波を受信するまでの間、超音波送受信部から対象物までの距離を算出できないので、超音波の送信から距離算出に要する時間が長くなる、との課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一態様の超音波センサーは、対象物に向かう第一方向に超音波を送信し、かつ、前記第一方向の反対側から入力された前記超音波を受信することで受信信号を出力する超音波送受信部と、前記超音波送受信部と前記対象物との間で、前記超音波送受信部から前記第一方向に既知の第一距離の位置に設けられた構造体と、前記超音波送受信部と前記対象物との間の距離を算出する距離算出部と、を備え、前記構造体は、前記超音波送受信部から送信される前記超音波の一部である第一超音波成分を反射させ、前記超音波のうち前記第一超音波成分以外の第二超音波成分を前記対象物に向かって通過させ、前記距離算出部は、前記超音波送受信部から前記超音波を送信した送信タイミングから前記第一超音波成分が受信されるまでの第一時間と、前記送信タイミングから前記第二超音波成分が受信されるまでの第二時間と、前記第一距離と、に基づいて、前記超音波送受信部から前記対象物までの距離を算出する。
【0007】
本開示の第二態様の超音波センサーの制御方法は、対象物に向かう第一方向に超音波を送信し、かつ、前記第一方向の反対側から入力された前記超音波を受信することで受信信号を出力する超音波送受信部と、前記超音波送受信部と前記対象物との間で、前記超音波送受信部から前記第一方向に既知の第一距離の位置に設けられた構造体と、を備え、前記構造体が、前記超音波送受信部から送信される前記超音波の一部である第一超音波成分を反射させ、前記超音波のうち前記第一超音波成分以外の第二超音波成分を前記対象物に向かって通過させる超音波センサーの制御方法であって、前記超音波送受信部から前記超音波を送信した送信タイミングから前記第一超音波成分が受信されるまでの第一時間と、前記送信タイミングから前記第二超音波成分が受信されるまでの第二時間と、前記第一距離と、に基づいて、前記超音波送受信部から前記対象物までの距離を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態における超音波センサーの概略構成を示す模式図。
【
図2】第一実施形態の超音波送受信部の構成例を示す断面図。
【
図3】第一実施形態の超音波送受信部における超音波トランスデューサーの接続例を示す図。
【
図4】第一実施形態の構造体をZ方向からフレームの底部に投影した投影図。
【
図5】第一実施形態の超音波センサーをZ方向から見た平面図、X方向から見た概略側断面図、及びY方向から見た概略側断面図。
【
図6】第一実施形態の構造体の具体的な構成を示す平面図。
【
図7】第一実施形態の超音波センサーの制御方法を示すフローチャート。
【
図8】第二実施形態の超音波センサーをZ方向から見た平面図、X方向から見た概略側断面図、及びY方向から見た概略側断面図。
【
図9】第三実施形態の超音波センサーをZ方向から見た平面図、X方向から見た概略側断面図、及びY方向から見た概略側断面図。
【
図10】第三実施形態における構造体の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における超音波センサー10の概略構成を示す模式図である。
図1において、超音波センサー10は、超音波送受信部20と、フレーム30と、構造体40と、制御部50とを含んで構成されている。この超音波センサー10は、超音波送受信部20から対象物1に向かうZ方向に超音波を送信し、対象物1で反射された超音波を受信することで、超音波送受信部20から対象物1までの距離を測定するセンサーである。
以降、超音波センサー10の各構成について具体的に説明する。
【0010】
[超音波送受信部20の構成]
図2は、超音波送受信部20の構成例を示す断面図である。
超音波送受信部20は、対象物1に超音波を送信し、対象物1で反射された超音波を受信する超音波送受処理を実施して、超音波の受信により受信信号を出力する超音波送受信部である。
図2に示すように、この超音波送受信部20は、素子基板21と、振動板22と、圧電素子23と、を備えて構成されている。なお、以降の説明にあたり、超音波送受信部20から対象物1に向かう超音波の送信方向をZ方向とする。Z方向に直交する一方向をX方向とし、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。
【0011】
素子基板21は、振動板22を支持する基板であり、Si等の半導体基板で構成される。素子基板21には、Z方向に沿って素子基板21を貫通する複数の孔部211が設けられている。
振動板22は、例えばSiO
2及びZrO
2の積層体等より構成され、素子基板21の-Z側に設けられる。この振動板22は、孔部211を構成する素子基板21により支持され、孔部211の-Z側を閉塞する。振動板22のうち、Z方向から見た際に各孔部211と重なる部分は、振動板22において、振動により超音波の送受信を行う振動部221を構成する。
圧電素子23は、振動板22上で、かつ、Z方向から見た際に、各振動部221と重なる位置に設けられている。この圧電素子23は、
図2に示すように、振動板22上に下部電極231、圧電膜232、及び上部電極233が順に積層されることにより構成されている。
【0012】
このような超音波送受信部20では、1つの振動部221と当該振動部221上に配置された圧電素子23とにより、1つの超音波トランスデューサー24が構成される。
そして、この超音波送受信部20では、下部電極231及び上部電極233との間に電圧が印加されると、圧電膜232が伸縮して、振動部221が孔部211の幅等に応じた発振周波数で振動する。これにより、振動部221から+Z側に向かって超音波が送信される。
また、超音波送受信部20では、対象物1で反射された超音波が振動部221に入力されると、振動部221が入力された超音波の音圧に応じた振幅で振動し、圧電膜232の下部電極231側と上部電極233側との間で電位差が発生する。よって、各圧電素子23から当該電位差に応じた受信信号が出力される。
【0013】
図3は、超音波送受信部20における超音波トランスデューサー24の接続例を示す図である。
本実施形態では、複数の超音波トランスデューサー24が、マトリクス状に配置されることで、超音波が送受信される送受信面20Aが形成される。そして、各超音波トランスデューサー24の下部電極231は、第一バイパス配線231Aにより互いに結線され、素子基板21の一部に設けられた第一端子251に接続されている。同様に、各超音波トランスデューサー24の上部電極233は、第二バイパス配線233Aにより互いに結線され、素子基板21の一部に設けられた第二端子252に接続されている。これらの第一端子251及び第二端子252は、それぞれ制御部50に接続されている。このような構成では、第一端子251と第二端子252との間に電圧を印加することで、全ての超音波トランスデューサー24を同時に駆動させることができる。
なお、
図3に示す例は、全ての超音波トランスデューサー24の下部電極231を結線して第一端子251に接続する構成例であるが、所定数の超音波トランスデューサー24を1つのチャンネルとし、各チャンネルに対して、第一端子251を設ける構成としてもよい。この場合、全ての第一端子251と第二端子252との間に同時に駆動信号を入力することで、
図3と同様に、全ての超音波トランスデューサー24を同時に駆動させることができる。また、各第一端子251を個別に駆動させることも可能となる。この場合、駆動させるチャンネル数を制御することで送信音圧の調整を行うこともでき、各チャンネルの駆動タイミングを遅延制御することで、超音波の送信方向を制御することもできる。また、複数のチャンネルを、超音波を送信する送信用チャンネルと、超音波を受信する受信用チャンネルとに分けて用いてもよい。
【0014】
なお、本実施形態では、超音波送受信部20として、圧電素子23により振動部221を振動させることで超音波を送信し、超音波が入力された振動部221が振動することで超音波の受信を検出する超音波トランスデューサー24を備える例を示したがこれに限定されない。例えば、超音波送受信部20は、基板上にバルク型の圧電体を配置し、当該圧電体に電圧を印加することで圧電体自体を厚み方向に振動させることで超音波を送信し、超音波の入力によって圧電体が厚み方向に振動することで超音波の受信を検出するバルク型の超音波トランスデューサーを備える構成などとしてもよい。
【0015】
[フレーム30の構成]
図1に戻り、フレーム30は、超音波送受信部20から送信される超音波の通過孔を有する筒状又は箱状に形成されている。具体的には、フレーム30は、底部31と、底部31から立ち上がる枠部32とを備える。
底部31は、超音波送受信部20が設置される台座である。底部31には、超音波送受信部20に接続される制御回路等が設けられていてもよい。本実施形態では、底部31の超音波送受信部20が配置される面は、XY平面であり、超音波送受信部20からXY平面に対して直交するZ方向の+Z側に超音波が送信され、-Z側に向かって進行する超音波が超音波送受信部20で受信されるものとする。Z方向は本開示の第一方向に相当し、X方向は第二方向に相当し、Y方向は第三方向に相当する。
【0016】
枠部32は、底部31に設けられ、底部31から+Z側に向かって延出する。例えば、本実施形態では、
図1に示すように、枠部32は、超音波送受信部20を囲って設けられ、底部31の超音波送受信部20が配置される面に対して垂直に立ち上がる筒形状に形成されている。
【0017】
また、枠部32の+Z側の先端には、筒内周側に突出するフランジ321が設けられている。本実施形態では、フランジ321は、枠部32の全周に亘って形成され、フランジ321の突出先端縁により、超音波が通過する通過孔322が形成される。この通過孔322は、超音波送受信部20で送受信される超音波が通過する孔部である。
【0018】
図4は、本実施形態の構造体40をZ方向からフレームの底部31に投影した投影図である。
図4に示すように、Z方向に沿って通過孔322を底部31に投影すると、通過孔322のサイズは、送受信面20Aよりも大きく形成されており、かつ、通過孔322内に超音波送受信部20の送受信面20Aが含まれる。つまり、本実施形態では、超音波送受信部20から送信された超音波は、フレーム30に阻害されることなく、対象物1に送信され、対象物1で反射された超音波は、フレーム30に阻害されることなく、超音波送受信部20で受信される。
【0019】
図5は、本実施形態の超音波センサー10をZ方向から見た平面図、X方向から見た概略側断面図、及びY方向から見た概略側断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、フランジ321は、+Y側から-Y側に向かうに従って底部31に近接するように傾斜している。つまり、本実施形態では、フランジ321の先端縁により構成される通過孔322の開口面αは、Z方向に対して所定の第一角度θで傾斜する。
【0020】
なお、
図5に示す例では、枠部32の先端にフランジ321が設けられ、枠部32の底部31からの長さが、+Y側から-Y側に向かうにしたがって短くなる例を示すが、これに限定されない。例えば、フランジ321が枠部32の先端から底部31までの間に設けられていてもよい。この場合でも、フランジ321の先端により構成される通過孔322の開口面αが、上記のように、+Y側から-Y側に向かうに従って底部31に近接するように傾斜していればよい。
【0021】
[構造体40の構成]
構造体40は、複数の開口部42(
図6参照)を有する平面状の構造体であり、枠部32のフランジ321に接続されて、通過孔322の全体を覆っている。つまり、構造体40は、開口面αに沿って配置されており、+Y側から-Y側に向かうに従って底部31に近接するように傾斜する。なお、本実施形態では、構造体40がフランジ321の底部31側に接続される例を示すが、フランジ321の対象物1に対向する面に構造体40が接続される構成としてもよい。
【0022】
図6は、構造体40の具体的な構成を示す平面図である。
図6において、Xm方向及びYm方向は、開口面αに平行な方向である。開口面αに沿って配置された構造体40は、Z方向に対して第一角度θで傾斜する。したがって、構造体40の法線は、超音波送受信部20の超音波の送信方向であるZ方向に対して第一角度θで傾斜している。
より具体的には、構造体40は、Xm方向を線方向とする線状部材41が、Ym方向に沿って複数配置され、Ym方向を線方向とする線状部材41がXm方向に沿って複数配置されることで、メッシュ状に編み込まれたメッシュ状部材である。なお、
図6では、Xm方向とYm方向とが90°で交差する例を示すが、これに限定されず、Xm方向及びYm方向の為す角は90°以外の角度であってもよい。
線状部材41の材質としては、金属素材や合金素材等の超音波の反射特性が高い素材を用いることが好ましい。線状部材41の表面性状は、超音波の乱反射を抑制可能な凹凸が小さいものが好ましい。つまり、超音波の伝搬媒体(本実施形態では空気)との音響インピーダンスの差が所定の第一閾値以上であり、かつ、表面粗さが第二閾値以下である線状部材41を用いる。
【0023】
また、線状部材41の線径W1は、超音波の波長以上とすることが好ましい。本実施形態では、超音波送受信部20からの距離が既知となる所定位置に構造体40が配置されることで、構造体40からの反射波を特定する。ここで、線状部材の線径W1を超音波の波長未満とする場合、構造体40から超音波送受信部20に反射される超音波成分(第一超音波成分と称する)が減少してしまう。これに対して、線径W1を超音波の波長以上とすることで、第一超音波成分の減少を抑制できる。
なお、本実施形態では、面状の構造体40が開口面αに沿って配置されている。つまり、構造体40の法線が、送受信面20Aの法線(超音波の送受信方向であるZ方向)に対して、第一角度θで傾斜している。このため、線状部材41の線径W1を超音波の波長以上とする場合でも、送受信面20Aと構造体40との間での超音波の多重反射を抑制することができる。
【0024】
そして、本実施形態の構造体40では、Xm方向に隣り合う一対の線状部材41と、Ym方向に隣り合う一対の線状部材41とに囲われて空隙が形成され、当該空隙が、超音波を通過させる開口部42となる。
開口部42の開口幅W2としては、少なくとも、超音波送受信部20から送信される超音波のうち、第一超音波成分以外の第二超音波成分が通過可能なサイズに設定すればよく、具体的には、超音波の波長よりも大きい開口幅W2が設定されていればよい。しかしながら、開口幅W2を大きくするに従って、超音波送受信部20での第一超音波成分の受信量が減少する。
したがって、本実施形態における、線状部材41の線径W1及び開口部42の開口幅W2としては、超音波送受信部20で受信される第一超音波成分と第二超音波成分との受信比が所定比となるように設定されていることが好ましい。超音波センサー10により測定可能な超音波送受信部20から対象物1までの限界測定距離は、送信超音波の周波数、及び送信超音波の音圧等によって決定される。そこで、対象物1を限界測定距離に設置した場合に第二超音波成分を受信した時の受信信号(第二受信信号)の信号電圧と、第一超音波成分を受信した時の受信信号(第一受信信号)の信号電圧との比が、例えば1:1となるように、線状部材41の線径W1及び開口部42の開口幅W2を設定する。
なお、第二受信信号の信号電圧が、第一受信信号の信号電圧よりも大きくなるように、線状部材41の線径W1及び開口部42の開口幅W2が設定されていてもよい。第一受信信号と第二受信信号との信号比が異なるように設定すれば、受信した信号が、第一受信信号であるか第二受信信号であるかを適切に判別することができる。この時、第二受信信号の信号電圧が大きくなるように設定することで、超音波送受信部20で第一超音波成分を受信した時に発生する残響信号に第二受信信号が埋もれる不都合を抑制できる。
【0025】
[制御部50の構成]
制御部50は、超音波送受信部20に接続され、超音波送受信部20の動作を制御するとともに、超音波送受信部20から出力された受信信号に基づいて、超音波送受信部20から対象物1までの距離を算出する。
この制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算部や、メモリー等により構成された記憶部を有し、演算部が記憶部に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、
図1に示すように、送信制御部51、信号検出部52、及び距離算出部53として機能する。
【0026】
送信制御部51は、超音波送受信部20の各超音波トランスデューサー24に所定波数のパルス駆動電圧を印加して、超音波送受信部20の送受信面20Aから対象物1に向かってZ方向に超音波を送信させる。
【0027】
信号検出部52は、超音波送受信部20から出力される受信信号を受信する。具体的には、信号検出部52は、第一信号検出部52Aと、第二信号検出部52Bとを備える。
第一信号検出部52Aは、構造体40により反射される第一超音波成分に基づいた第一受信信号を検出する。
本実施形態では、構造体40は、超音波送受信部20と対象物1との間に位置する。よって、第一超音波成分は、第二超音波成分よりも先に超音波送受信部20で受信される。したがって、第一信号検出部52Aは、送信タイミングの後、最初に所定の第三閾値以上の信号電圧の受信信号を受信した場合に、当該受信信号を第一受信信号として検出する。
【0028】
第二信号検出部52Bは、対象物1により反射される第二超音波成分に基づいた第二受信信号を検出する。第二信号検出部52Bは、第一受信信号が検出された後に、所定の第四閾値以上の信号電圧の受信信号を受信した場合に、当該受信信号を第二受信信号として検出する。
ここで、上述したように、第二受信信号の信号電圧と第一受信信号の信号電圧とが略同一となるように、線状部材41の線径W1及び開口部42の開口幅W2が設定されている場合では、第三閾値と第四閾値とを同じ閾値に設定してもよい。一方、第二受信信号の信号電圧が第一受信信号の信号電圧よりも大きくなるように、線状部材41の線径W1及び開口部42の開口幅W2が設定されている場合では、第四閾値を第三閾値よりも大きくする。この場合、仮に、第二超音波成分の反射成分や、振動部22Aの残響振動によるノイズ信号が出力された場合でも、第二受信信号を適切に検出することができる。
【0029】
距離算出部53は、送信制御部51により超音波の送信が指示された送信タイミングから、第一受信信号が検出されるまでの第一時間t1、送信タイミングから、第二受信信号が検出されるまでの第二時間t2、及び、超音波送受信部20から構造体40までの第一距離L1(既知)に基づいて、超音波送受信部20から対象物1までの距離を算出する。
つまり、本実施形態において超音波送受信部20から構造体40までの第一距離L1は既知であるので、超音波の音速vは、v=L1/t1となる。よって、距離算出部53は、超音波送受信部20から対象物1までの距離Lを、L=v×t2=L1×t2/t1により算出する。
【0030】
[超音波センサー10の制御方法]
次に、超音波センサー10の制御方法として、距離の測定方法について説明する。
図7は、超音波センサー10の制御方法を示すフローチャートである。
本実施形態の超音波センサー10は、対象物1との距離を測定する場合に、まず、送信制御部51が超音波送受信部20の各超音波トランスデューサー24に所定数のパルス駆動電圧を印加する。これにより、超音波送受信部20は、対象物1に向かってZ方向に超音波を送信する(ステップS1)。
【0031】
ステップS1の後、第一信号検出部52Aは、構造体40で反射される第一超音波成分が超音波送受信部20で受信されることで出力される第一受信信号を検出する(ステップS2)。
ここで、超音波送受信部20から送信される超音波は、複数の超音波トランスデューサー24から出力される超音波の合成波であり、送受信面20Aの中心を通るZ方向に平行な軸上で音圧が最大となる。したがって、超音波送受信部20で受信した第一超音波成分は、構造体40の中心で反射されたものとみなすことができる。つまり、本実施形態では、構造体40は、+Y側から-Y側に向かうに従って底部31に近接するように傾斜しているが、第一超音波成分は、その中心位置で反射されたものと見なすことができる。言い換えると、構造体40の+Y側端部の送受信面20Aからの距離がL1+であり、構造体40の-Y側端部の送受信面20Aからの距離がL1-である場合、第一超音波成分は、送受信面20AからL1=(L1++L1-)/2となる距離で反射されたものとみなすことができる。
【0032】
この後、第二信号検出部52Bは、構造体40の開口部42を通過して対象物1で反射された第二超音波成分が超音波送受信部20で受信されることで出力される第二受信信号を検出する(ステップS3)。
【0033】
そして、距離算出部53は、ステップS1の超音波の送信タイミングから、ステップS2の第一受信信号が出力されるまでの第一時間t1と、ステップS1の超音波の送信タイミングから、ステップS3の第二受信信号が出力されるまでの第二時間t2と、をそれぞれ算出する(ステップS4)。
さらに、距離算出部53は、第一時間t1、第二時間t2、及び、超音波送受信部20から構造体40までの第一距離L1を用いて、超音波送受信部20から対象物1までの距離Lを、L=L1×t2/t1により算出する(ステップS5)。
これにより、超音波センサー10は、温度、湿度、気圧等の周囲の環境が変動した場合でも、超音波送受信部20から対象物1までの間の距離を精度よく算出することができる。
【0034】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の超音波センサー10は、超音波送受信部20と、構造体40と、制御部50とを備える。
超音波送受信部20は、対象物1に向かうZ方向に超音波を送信し、かつ、Z方向から入力された超音波を受信することで受信信号を出力する。構造体40は、超音波送受信部20と対象物1との間で、超音波送受信部からZ方向に既知の第一距離L1の位置に設けられている。この構造体40は、超音波送受信部20から送信される超音波の一部である第一超音波成分を反射させ、超音波のうち第一超音波成分以外の第二超音波成分を対象物1に向かって通過させる。制御部50は、超音波送受信部20と対象物1との間の距離Lを算出する距離算出部53として機能する。距離算出部53は、超音波送受信部20から超音波を送信した送信タイミングから第一超音波成分が受信されるまでの第一時間t1と、送信タイミングから第二超音波成分が受信されるまでの第二時間t2と、第一距離L1と、に基づいて、超音波送受信部20から対象物1までの距離Lを算出する。
【0035】
これにより、本実施形態では、温度、湿度、気圧等の音速の変化が起こる環境変化が発生した場合でも、超音波送受信部20から対象物1までの距離Lを精度よく算出することができる。
また、本実施形態では、超音波送受信部20と対象物1との間に配置された構造体40で反射される第一超音波成分を受信することで、リファレンス用の第一時間t1を取得する。つまり、第一時間t1は、測定対象となる対象物1により反射される第二超音波成分を受信することで得られる第二時間t2よりも短くなる。このため、例えば、特許文献1のような第二時間t2よりも長い時間をリファレンス用の第一時間t1とする場合に比べて、測定に係る時間を短縮することができる。
【0036】
本実施形態の超音波センサー10では、超音波送受信部20は、超音波の送信及び受信を行う送受信面20Aを有する。そして、構造体40は、第二超音波成分を通過させる複数の開口部42を有する面状に形成されており、Z方向から見た投影視において、構造体40は送受信面20Aを覆う。
これにより、超音波送受信部20から送信された超音波の一部を第一超音波成分として構造体40で反射させることができ、リファレンス用の第一時間t1を容易に取得することができる。
また、本実施形態のように、構造体40が送受信面20Aの全体を覆う構成とすることで、構造体40は、超音波送受信部20を保護する保護部材としても機能し、異物の侵入による超音波送受信部20の破損や劣化を抑制することができる。
【0037】
本実施形態では、構造体40の法線は、送受信面20Aの法線に対して傾斜している。
超音波送受信部20から送信された超音波が、構造体40の線状部材41に到達すると、その到達点を中心に拡散反射される。この時、構造体40の法線に向かって正反射される超音波成分が最も多くなる。本実施形態では、構造体40の法線は、送受信面20Aの法線であるZ方向に対して傾斜しているので、構造体40で反射される第一超音波成分の多くは、Z方向に沿って進行せず、一部の拡散反射成分のみが、Z方向に沿って超音波送受信部20に向かう。このため、本実施形態では、構造体40と送受信面20Aとの間での超音波の多重反射を抑制することができ、第二受信信号が多重反射によるノイズ信号に埋もれる不都合を抑制できる。
【0038】
本実施形態では、構造体40は、複数の線状部材41を編み合わせたメッシュ状部材である。
このようなメッシュ状の構造体40では、容易に所望の開口幅W2の開口部42を形成できる。このため、第一受信信号と第二受信信号の信号電圧の比を容易に所望の値に設定できる。
【0039】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
上記第一実施形態では、構造体40が、送受信面20Aに対して第一角度θで傾斜する例を示したが、第二実施形態では、構造体40が送受信面20Aに対して略平行に設けられる点で上記第一実施形態と相違する。
以降の説明において、既に説明した構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0040】
図8は、第二実施形態の超音波センサー10AをZ方向から見た平面図、X方向から見た概略側断面図、及びY方向から見た概略側断面図である。
本実施形態では、
図8に示すように、構造体40は、超音波送受信部20の送受信面20Aに対して平行に設けられている。つまり、超音波の送信方向であるZ方向(送受信面20Aの法線)と、構造体40の法線とが平行となる。
【0041】
本実施形態の超音波センサー10Aでは、上記第一実施形態と同様の制御方法により、超音波送受信部20から対象物1までの距離を測定することができる。
ここで、本実施形態では、構造体40が送受信面20Aに対して略平行であるため、構造体40の位置によらず、超音波送受信部20から構造体40までの第一距離L1が略同一となる。したがって、第一距離L1/第一時間t1により表される超音波の音速は、より実際の音速に近い値となる。よって、距離算出部53により、より精度よく距離L(=L1×t2/t1)を算出することができる。
【0042】
一方、本実施形態では、送受信面20Aに対して、構造体40が略平行となることから、超音波送受信部20と構造体40との間で第一超音波成分が多重反射するおそれがある。
したがって、本実施形態では、構造体40における開口部42の面積を大きくし、第二超音波成分の通過量を増大させることが好ましい。これにより、第一超音波成分による多重反射が発生した場合でも、当該多重反射によるノイズに第二受信信号が埋もれる不都合を抑制でき、第二受信信号を適切に検出することができる。
【0043】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、構造体40は、送受信面20Aに対して略平行に設けられている。
このような構成では、第一距離L1と、第一時間t1とで示される音速L1/t1の値をより精度よく算出できる。これにより、対象物1と超音波送受信部20との距離もより精度よく算出できる。
【0044】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。
上記第一実施形態及び第二実施形態では、複数の線状部材41を編み合わせたメッシュ状の構造体40を例示した。これに対して、本実施形態では、ブロック状の構造体が設けられる点で上記第一実施形態及び第二実施形態と相違する。
【0045】
図9は、本実施形態の超音波センサー10BをZ方向から見た平面図、X方向から見た概略側断面図、及びY方向から見た概略側断面図である。
構造体40Aは、長手方向を有するロッド形状を有し、フレーム30の互いに対向する側面の間を架橋するように設けられている。例えば、
図9に示す例では、構造体40Aは、X方向に長手のロッド形状に構成されている。具体的には、構造体40Aは、X方向の長さが、超音波送受信部20の送受信面20AのX方向の長さよりも長く、長手方向に直交する方向であるY方向の長さ、つまりロッド幅が送受信面20AのY方向の長さよりも短い。そして、構造体40Aは、X方向に対向する一対のフランジ321に接続されて設置される。
つまり、本実施形態では、Z方向から見た投影視において、構造体40Aは、送受信面20Aの一部のみを覆う。
ここで、第一実施形態及び第二実施形態における線状部材41の線径W
1及び開口部42の開口幅W
2と同様に、第一受信信号と第二受信信号の信号比に基づいて、構造体40AのY方向の長さを適宜設定することが好ましい。
なお、本実施形態では、構造体40Aが、フランジ321の底部31側に接続される例を示すが、フランジ321の対象物1に対向する側に接続されていてもよい。
【0046】
また、構造体40Aの送受信面20Aに対向する面は、第一超音波成分を反射させる反射面43を構成する。この反射面43は、送受信面20Aに対して傾斜している。つまり、反射面43の法線は、Z方向に対して所定の角度で傾斜する。例えば、
図9の例では、構造体40Aは、YZ平面での断面が三角形であり、送受信面20Aに対向する2つの傾斜面が反射面43となる。
【0047】
なお、構造体40Aの形状としては、
図9のような断面三角形状に例に限定されない。
本開示において、反射面43が送受信面20Aに対して傾斜するとは、反射面43から超音波送受信部20への超音波の正反射が抑制される構成を示している。
図10は、YZ平面での断面形状を異なる構造体40Aの例を用いた場合の、超音波センサーをZ方向から見た平面図、X方向から見た概略側断面図、及びY方向から見た概略側断面図を示している。
例えば、
図10に示すように、構造体40Aは断面視円形となる円柱状や円筒状であってもよく、この場合、送受信面20Aに対向する反射面43は、シリンドリカル形状となる。或いは、構造体40AのYZ平面で切断した断面が扇状や半円形であってもよい。
このような形状でも、反射面43は、構造体40Aから超音波送受信部20への正反射が抑制される形状となる。
【0048】
なお、超音波センサー10Bの制御方法は、上述した第一実施形態及び第二実施形態と同様である。つまり、本実施形態では、超音波送受信部20から送信される超音波のうち、ロッド状の構造体40Aの反射面43で反射される超音波が、第一超音波成分となる。一方、送受信面20AにおいてZ方向で構造体40Aが配置されない領域では、送受信面20Aから送信された超音波は構造体40Aで反射されずに対象物1に到達し、第二超音波成分として超音波送受信部20で受信される。
【0049】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の超音波センサー10Bでは、超音波送受信部20は、超音波の送信及び受信を行う送受信面20Aを有する。また、構造体40Aは、Z方向から見た投影視において、送受信面20Aの一部を覆い、送受信面20Aに対向して第一超音波成分を反射させる反射面43を有する。
つまり、構造体がロッド状等のブロック形状を有し、当該構造体が送受信面の一部を覆うように構成されていてもよい。このような構造体を用いる場合、上述したメッシュ状の構造体とは異なり、超音波を通過しない。しかしながら、第一方向に沿った投影視で、構造体は、送受信面の一部のみに重なっているので、送受信面のうち構造体に重なっていない部分では、超音波送受信部から送信された超音波が構造体に反射されることなく対象物に到達する。これにより、本態様においても、構造体により反射される第一超音波成分と、対象物により反射される第二超音波成分とを分離でき、これらの超音波成分の受信タイミングを用いて、精度よく超音波送受信部から対象物までの距離を算出できる。
【0050】
本実施形態では、反射面43は、送受信面20Aに対して傾斜する。
これにより、反射面43と送受信面20Aとの間で超音波の多重反射の発生を抑制できる。
【0051】
本実施形態では、底部31、及び底部31の外周縁からZ方向に延出する枠部32を有するフレーム30を備え、超音波送受信部20は、底部31に設けられ、構造体40Aは、Z方向に交差するX方向に延出してフレーム30に接続されている。
これにより、構造体40Aをフレーム30により支持することができ、送受信面20Aから第一距離L1となる位置に構造体40Aを保持することができる。
【0052】
本実施形態では、構造体40Aは、X方向に長手のロッド状構造体であり、Y方向の長さが、送受信面20AのY方向の長さよりも短い。
これにより、構造体40AをX方向に長手となる構成とする場合でも、第二超音波成分が通過する領域を確保することができ、信号検出部52により、第一受信信号と第二受信信号とを適切に検出することができ、距離算出部53により対象物1と超音波送受信部20との距離を精度よく算出することができる。
【0053】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0054】
[変形例1]
第一実施形態から第三実施形態において、フレーム30として、枠部32が超音波送受信部20を囲う略筒状に形成され、当該枠部32から延出するフランジ321に構造体40,40Aが接続される例を示したが、これに限定されない。
例えば、枠部32にフランジ321が設けられず、枠部32の+Z側の端縁に構造体40,40Aが接続される構成としてもよく、枠部32の内壁に構造体40,40Aが直接接合される構成などとしてもよい。
【0055】
[変形例2]
また、超音波送受信部20を囲う4つの壁部により構成される枠部32を例示したが、例えば円柱状の枠部32であってもよい。
さらに、底部31から枠部32が立ち上がる構成に限定されない。例えば、底部31から立ち上がる1つまたは2つの平面壁部、或いは柱状部材により、構造体40,40Aが保持される構成としてもよい。具体例を挙げると、X方向に対して対向する一対の壁部がZ方向に立ち上がり、当該壁部により超音波送受信部20が挟まれ、これらの壁部間に構造体40,40Aが保持される構成としてもよい。
【0056】
[変形例3]
第三実施形態では、X方向に長手のロッド状の構造体40Aを例示したが、Y方向に長手のロッド状の構造体を用いてもよく、略十字形状の構造体を用いてもよい。また、Z方向から見た平面視で、湾曲形状やリング状等に屈曲した構造体を用いてもよい。
また、第三実施形態では、構造体40AのX方向の長さが、送受信面20AのX方向の長さよりも大きく、X方向に対向するフランジ321に保持される構成としたが、構造体40AのX方向の長さが、送受信面20AのX方向の長さよりも短くてもよい。例えば、構造体40Aが+X側のフランジ321に接続され、-X側に向かって送受信面20Aの略中央位置まで延出する構成としてもよい。
つまり、Z方向における投影視において、構造体が送受信面20Aの一部のみに重なり、構造体と重ならない部分において、超音波送受信部20から送信された超音波が第二超音波成分として、対象物1に向かって通過できる構成とすればよく、Z方向から見た平面視での構造体の形状や、構造体が設けられる位置は特に限定されない。
【0057】
[変形例4]
第三実施形態では、構造体40AをYZ平面で切断した場合の断面形状において、送受信面20Aに対向する面が、Z方向に傾斜する反射面43となる例を示したが、例えば、第一実施形態のように、構造体40Aを+X側から-X側に向かうに従って、送受信面20Aとの距離短くなるように、傾斜させてもよい。
【0058】
[変形例5]
第一実施形態では、構造体40が開口面αに沿って配置される例を示すがこれに限定されない。
例えば、構造体40を湾曲させたり、Z方向に対して90°以外の角度で交差する2平面が形成されるように折り曲げたりした状態で、フレーム30に接続されていてもよい。この場合でも、構造体40と送受信面20Aとの間の多重反射を抑制することができる。
【0059】
[変形例6]
第一実施形態及び第二実施形態では、構造体40は、複数の線状部材41を編み込むことでメッシュ状に構成される例を示したが、これに限定されない。例えば、構造体40は、平板により構成され、平板を板厚方向に貫通する開口部が設けられる構成としてもよい。この場合、平板に、複数の開口部を均一に配置する構成としてもよく、平板の一部に、1つの開口部を設ける構成としてもよい。
【0060】
[変形例7]
第一実施形態及び第二実施形態では、Z方向から見た投影視において、構造体40が送受信面20Aの全体を覆う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、第三実施形態のように、X方向の寸法が超音波送受信部20よりも長く、Y方向の寸法が超音波送受信部20よりも短いメッシュ状の構造体を設ける構成としてもよい。
【0061】
[変形例8]
第一実施形態から第三実施形態では、1つの構造体40,40Aを設ける構成であるが、複数の構造体が設けられる構成としてもよい。
例えば、送受信面20Aから既知の第一距離L1に設けられた第一構造体と、送受信面20Aから既知の第二距離L2に設けられた第二構造体と、を備える構成としてもよい。
この場合、距離算出部53は、超音波の送信タイミングから第一構造体により反射される超音波成分の受信タイミングまでの時間、第二構造体により反射される超音波成分の受信タイミングまでの時間、対象物1により反射される超音波成分の受信タイミングまでの時間、第一距離L1、及び第二距離L2を用いて、より精度よく超音波送受信部20から対象物1までの距離を算出できる。例えば、第一構造体により反射された超音波成分を用いて算出された超音波送受信部20から対象物1までの距離と、第二構造体により反射された超音波成分を用いて算出された超音波送受信部20から対象物1までの距離と、の平均を求めてもよい。また、第一構造体により反射された超音波成分を用いて算出された音速と、第二構造体により反射された超音波成分を用いて算出された音速との平均を用いて、超音波送受信部20から対象物1までの距離を算出してもよい。
【0062】
[本開示のまとめ]
本開示の第一態様の超音波センサーは、対象物に向かう第一方向に超音波を送信し、かつ、前記第一方向の反対側から入力された前記超音波を受信することで受信信号を出力する超音波送受信部と、前記超音波送受信部と前記対象物との間で、前記超音波送受信部から前記第一方向に既知の第一距離の位置に設けられた構造体と、前記超音波送受信部と前記対象物との間の距離を算出する距離算出部と、を備え、前記構造体は、前記超音波送受信部から送信される前記超音波の一部である第一超音波成分を反射させ、前記超音波のうち前記第一超音波成分以外の第二超音波成分を前記対象物に向かって通過させ、前記距離算出部は、前記超音波送受信部から前記超音波を送信した送信タイミングから前記第一超音波成分が受信されるまでの第一時間と、前記送信タイミングから前記第二超音波成分が受信されるまでの第二時間と、前記第一距離と、に基づいて、前記超音波送受信部から前記対象物までの距離を算出する。
【0063】
これにより、超音波センサーは、温度、湿度、気圧等の音速の変化が起こる環境変化が発生した場合でも、超音波送受信部から対象物までの距離Lを精度よく算出することができる。
また、超音波送受信部と対象物との間に配置された構造体で反射される第一超音波成分を受信することで得られる第一時間をリファレンスとして、超音波送受信部と対象物との間の距離を算出する。この場合、第一時間は、測定対象となる対象物により反射される第二超音波成分を受信することで得られる第二時間よりも短くなる。これにより、測定に係る時間を短縮することができる。
【0064】
本態様の超音波センサーにおいて、前記超音波送受信部は、前記超音波の送信及び受信を行う送受信面を有し、前記構造体は、前記第二超音波成分を通過させる複数の開口部を有する面状に構成され、前記構造体は、前記第一方向から見た投影視において、前記送受信面を覆うことが好ましい。
これにより、超音波送受信部から送信された超音波の一部を第一超音波成分として構造体で反射させることができ、リファレンス用の第一時間を容易に取得することができる。
また、構造体が送受信面の全体を覆う構成とすれば、構造体により超音波送受信部を保護することができる。
【0065】
本態様の超音波センサーにおいて、前記構造体の法線は、前記送受信面の法線に対して傾斜していることが好ましい。
これにより、送受信面と構造体との間での超音波の多重反射を抑制できる。
【0066】
本態様の超音波センサーにおいて、前記構造体は、前記送受信面に対して略平行に設けられていてもよい。
このような構成では、超音波送受信部から構造体までの距離が位置によって変化せず、送信タイミングから第一超音波成分が超音波送受信部で受信されるまでの第一時間と第一距離とで示される音速の値をより精度よく算出できる。これにより、対象物と超音波送受信部との距離もより精度よく算出できる。
【0067】
本態様の超音波センサーにおいて、前記構造体は、線状部材を編み合わせたメッシュ状部材であることが好ましい。
このようなメッシュ状の構造体では、容易に所望の開口幅W2の開口部を形成できる。このため、第一超音波成分を受信した場合に検出される第一受信信号と、第二超音波成分を受信した場合に検出される第二受信信号の信号比を容易に所望の値に設定することができる。
【0068】
本態様の超音波センサーにおいて、前記超音波送受信部は、前記超音波の送信及び受信を行う送受信面を有し、前記構造体は、前記第一方向から見た投影視において、前記送受信面の一部を覆い、前記送受信面に対向して前記第一超音波成分を反射させる反射面を有する構成としてもよい。
つまり、構造体がロッド状等のブロック形状を有し、当該構造体が送受信面の一部を覆うように構成されていてもよい。このような構造体を用いる場合、上述したメッシュ状の構造体とは異なり、超音波を通過しない。しかしながら、第一方向に沿った投影視で、構造体は、送受信面の一部のみに重なっているので、送受信面のうち構造体に重なっていない部分では、超音波送受信部から送信された超音波が構造体に反射されることなく対象物に到達する。これにより、本態様においても、構造体の反射面により反射される第一超音波成分と、対象物により反射される第二超音波成分とを分離でき、これらの超音波成分の受信タイミングを用いて、精度よく超音波送受信部から対象物までの距離を算出できる。
【0069】
本態様の超音波センサーにおいて、前記反射面は、前記送受信面に対して傾斜することが好ましい。
これにより、反射面と送受信面との間で超音波の多重反射の発生を抑制できる。
【0070】
本開示の超音波センサーにおいて、底部、及び前記底部の外周縁から前記第一方向に延出する枠部を有するフレームを備え、前記超音波送受信部は、前記底部に設けられ、前記構造体は、前記第一方向に交差する第二方向に延出して前記フレームに接続されていることが好ましい。
これにより、構造体をフレームにより支持することができ、送受信面から第一距離となる位置に構造体を保持することができる。
【0071】
本態様の超音波センサーにおいて、前記構造体は、前記第一方向に交差する第二方向に長手のロッド状構造体であり、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向の寸法が、前記送受信面の前記第三方向の寸法よりも短いことが好ましい。
上記のように、構造体を第二方向に長手となる構成とする場合、構造体の第三方向に対する長さを送受信面の第三方向の長さよりも短くすることで、第二超音波成分が通過する領域を確保することができる。これにより、上記の様に、第一超音波成分の受信タイミングと、第二超音波成分の受信タイミングを適切に検出することができ、対象物と超音波送受信部との距離を精度よく算出することができる。
【0072】
本開示の第二態様の超音波センサーの制御方法は、対象物に向かう第一方向に超音波を送信し、かつ、前記第一方向の反対側から入力された前記超音波を受信することで受信信号を出力する超音波送受信部と、前記超音波送受信部と前記対象物との間で、前記超音波送受信部から前記第一方向に既知の第一距離の位置に設けられた構造体と、を備え、前記構造体が、前記超音波送受信部から送信される前記超音波の一部である第一超音波成分を反射させ、前記超音波のうち前記第一超音波成分以外の第二超音波成分を前記対象物に向かって通過させる超音波センサーの制御方法であって、前記超音波送受信部から前記超音波を送信した送信タイミングから前記第一超音波成分が受信されるまでの第一時間と、前記送信タイミングから前記第二超音波成分が受信されるまでの第二時間と、前記第一距離と、に基づいて、前記超音波送受信部から前記対象物までの距離を算出することを特徴とする。
これにより、第一態様と同様に、温度、湿度、気圧等の音速の変化が起こる環境変化が発生した場合でも、超音波送受信部から対象物までの距離Lを精度よく算出することができ、かつ、測定に係る時間も短縮することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…対象物、10,10A,10B…超音波センサー、20…超音波送受信部、20A…送受信面、30…フレーム、31…底部、32…枠部、40,40A…構造体、41…線状部材、42…開口部、43…反射面、50…制御部、51…送信制御部、52…信号検出部、52A…第一信号検出部、52B…第二信号検出部、53…距離算出部、321…フランジ、322…通過孔、L1…第一距離。