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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】光ファイバ用多孔質母材の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
C03B37/018 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020122970
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019240
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】田賀 悠記
(72)【発明者】
【氏名】木村 達也
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-011843(JP,A)
【文献】特開2019-172545(JP,A)
【文献】特開2010-076982(JP,A)
【文献】特開2006-316987(JP,A)
【文献】特開2012-148911(JP,A)
【文献】特開2007-278341(JP,A)
【文献】特開平05-345621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0130531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16,8/04
F16L 13/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎中にガラス原料を供給してガラス微粒子を合成するガラス合成用のバーナ本体と、
前記火炎への気流の影響を規制する管状の規制部材であって、前記バーナ本体の周囲に、前記バーナ本体の中心軸と同じ中心軸を有するように取り付けられた規制部材と、
を備え、
前記規制部材の端部には、前記規制部材の径方向の外側に向けて突出する第一フランジ部が形成され、
前記第一フランジ部が前記バーナ本体に着脱可能に固定されており、
前記バーナ本体に着脱可能に固定される固定治具をさらに備え、
前記固定治具を前記バーナ本体に設けられた第二フランジ部に螺合させ、
前記第一フランジ部の外周面が前記固定治具に覆われた状態で、前記第一フランジ部が前記バーナ本体と前記固定治具との間で挟持されることで、前記規制部材が前記バーナ本体に固定される、光ファイバ用多孔質母材の製造装置。
【請求項2】
前記規制部材は、石英ガラス製である、請求項1に記載の光ファイバ用多孔質母材の製造装置。
【請求項3】
前記バーナ本体は、金属製である、請求項1または請求項2に記載の光ファイバ用多孔質母材の製造装置。
【請求項4】
前記第一フランジ部と前記バーナ本体との間には、フッ素樹脂製のガスケットが挟まれている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ用多孔質母材の製造装置。
【請求項5】
前記固定治具は、前記バーナ本体の軸方向に沿った一端部側に底部を有し、
前記底部の中央には前記規制部材の前記第一フランジ部以外の部分が挿通可能な孔部が形成され、
前記孔部に前記規制部材を挿通した状態で、前記バーナ本体に前記固定治具の他端部を固定することで、前記第一フランジ部が前記バーナ本体と前記底部との間で挟持される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバ用多孔質母材の製造装置。
【請求項6】
前記バーナ本体は、前記第一フランジ部が固定される固定面を有し、
前記固定面は、前記バーナ本体のガス噴出側の端部から、他方側の端部に向かって、前記バーナ本体の軸方向に0mm以上100mm以内に設けられている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバ用多孔質母材の製造装置。
【請求項7】
前記バーナ本体および前記規制部材は、VAD法のコア合成用バーナに用いられる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ファイバ用多孔質母材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ用多孔質母材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バーナの先端部の外周に、火炎への気流の影響を規制する気流規制部材が取り付けられた光ファイバ用多孔質母材の製造装置が開示されている。
特許文献2には、耐熱性合金材料からなる金属製の多孔質ガラス製造用バーナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-172545号公報
【文献】特開2010-076982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示のような多孔質母材製造用のバーナに対する気流規制部材の固定方法については改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、バーナに対して規制部材を固定する際の位置ずれを防止可能な、光ファイバ用多孔質母材の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光ファイバ用多孔質母材の製造装置は、
火炎中にガラス原料を供給してガラス微粒子を合成するガラス合成用のバーナ本体と、
前記火炎への気流の影響を規制する管状の規制部材であって、前記バーナ本体の周囲に、前記バーナ本体の中心軸と同じ中心軸を有するように取り付けられた規制部材と、
を備え、
前記規制部材の端部には、前記規制部材の径方向の外側に向けて突出するフランジ部が形成され、
前記フランジ部が前記バーナ本体に着脱可能に固定されている。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、バーナに対して規制部材を固定する際の位置ずれを防止可能な、光ファイバ用多孔質母材の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態に係る光ファイバ用多孔質母材の製造装置の構成図である。
図2図2は、図1に示す製造装置に用いられるコア合成用バーナの一例を示す断面図である。
図3図3は、コア合成用バーナを構成するブラケット及び風防管(規制部材)を示す斜視図である。
図4図4は、コア合成用バーナの第一変形例を示す図である。
図5図5は、コア合成用バーナの第二変形例を示す図である。
図6図6は、コア合成用バーナの従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバ用多孔質母材の製造装置は、
(1)火炎中にガラス原料を供給してガラス微粒子を合成するガラス合成用のバーナ本体と、
前記火炎への気流の影響を規制する管状の規制部材であって、前記バーナ本体の周囲に、前記バーナ本体の中心軸と同じ中心軸を有するように取り付けられた規制部材と、
を備え、
前記規制部材の端部には、前記規制部材の径方向の外側に向けて突出するフランジ部が形成され、
前記フランジ部が前記バーナ本体に着脱可能に固定されている。
これにより、バーナに対して規制部材を固定する際の位置ずれを防止することが可能となるため、歪みなく安定した多孔質母材を作製することができる。
【0010】
(2)前記規制部材は、石英ガラス製であってもよい。
規制部材はバーナの火炎に近い位置に設けられるため、金属製よりも耐熱性の高い石英ガラス製であることが好ましい。
【0011】
(3)前記バーナ本体は、金属製であってもよい。
金属製のバーナ本体に石英ガラス製の規制部材を固定する場合、熱膨張の違いにより両者間の固定が緩みやすい。これに対して、上記構成では規制部材のフランジ部をバーナ本体に固定しているので、バーナ本体が金属製であっても規制部材を緩みなく固定することができる。
【0012】
(4)前記フランジ部は、石英製ボルトにより前記バーナ本体に固定されていてもよい。
上記構成によれば、熱変形しにくい石英製ボルトによって固定することにより、バーナ本体に固定する際の規制部材の位置ずれを確実に防止することができる。加えて、石英は腐食しにくいため、ボルト腐食による不純物の光ファイバ用多孔質母材への付着を抑制することができる。
【0013】
(5)前記フランジ部と前記バーナ本体との間には、フッ素樹脂製のガスケットが挟まれていてもよい。
上記構成によれば、ガスケットによるクッション効果により、規制部材のフランジ部の固定が緩みにくい。これにより、ガスケットによりバーナ本体に対する規制部材の密着性を高めることができ、両者間からのガスの漏れを抑制することができる。加えて、ガスケットをフッ素樹脂製とすることで、ガスケットからの発塵を抑えることができる。
【0014】
(6)前記バーナ本体に着脱可能に固定される固定治具をさらに備え、
前記フランジ部の外周面が前記固定治具に覆われた状態で、前記フランジ部が前記バーナ本体と前記固定治具との間で挟持されることで、前記規制部材が前記バーナ本体に固定されていてもよい。
上記構成によれば、規制部材を容易に脱着させることができるため、分解しての清掃が容易となる。
【0015】
(7)前記固定治具は、前記バーナ本体の軸方向に沿った一端部側に底部を有し、
前記底部の中央には前記規制部材の前記フランジ部以外の部分が挿通可能な孔部が形成され、
前記孔部に前記規制部材を挿通した状態で、前記バーナ本体に前記固定治具の他端部を固定することで、前記フランジ部が前記バーナ本体と前記底部との間で挟持されてもよい。
上記構成によれば、ボルトを用いずに規制部材のフランジ部をバーナ本体に容易に固定することができる。
【0016】
(8)前記バーナ本体は、前記フランジ部が固定される固定面を有し、
前記固定面は、前記バーナ本体のガス噴出側の端部から、他方側の端部に向かって、前記バーナ本体の軸方向に0mm以上100mm以内に設けられていてもよい。
上記構成によれば、規制部材を適切な長さに形成することができ、石英ガラス製の規制部材によるコスト増加を抑制することができる。
【0017】
(9)前記バーナ本体および前記規制部材は、VAD法のコア合成用バーナに用いられていてもよい。
本開示の構成は、光ファイバ特性に影響が大きいコア合成用バーナに適用することが好ましい。
【0018】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る光ファイバ用多孔質母材の製造装置の具体例を、図面を参照して説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
図1は、本開示の実施形態に係る光ファイバ用多孔質母材の製造装置の一例を示す構成図である。
なお、以下の実施形態では、光ファイバ用多孔質母材を製造する方法として、VAD(Vapor phase Axial Deposition)法を例に説明するが、VAD法に限らない。VAD法と同様にガラス原料から火炎熱分解反応を利用してガラスを堆積させる方法、例えば、OVD(Outside Vapor phase Deposition)法等に本実施形態を適用することも可能である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ用多孔質母材の製造装置1は、反応容器2を備えている。反応容器2の上方から容器内部に支持棒3が吊り下げられ、支持棒3の下側にダミーガラスロッド(出発ロッド)4が取り付けられている。このダミーガラスロッド4にガラス微粒子が堆積して光ファイバ用多孔質母材Mが形成される。支持棒3は、上端部を昇降装置10により把持されており、昇降装置10によって回転と共に昇降する。この昇降装置10は、制御部20によって制御されている。反応容器2の側壁部には排気管5が取り付けられている。
【0021】
反応容器2の内部下方には、コア合成用バーナ6及びクラッド合成用バーナ7が設けられている。コア合成用バーナ6とクラッド合成用バーナ7の先端部は反応容器2の内部に突出して配置されている。コア合成用バーナ6及びクラッド合成用バーナ7には、それぞれ原料ガス、火炎形成ガス(可燃性ガス及び助燃性ガス)などが供給される。コア合成用バーナ6及びクラッド合成用バーナ7に供給されるガスの流量は、MFC(Mass Flow Controller)21によって制御されている。MFC21は、制御部20から送信される制御信号に基づいて、ガスの供給量を制御する。原料ガスは、原料容器11内に収容された液体原料を気化させたものが供給される。火炎形成ガスは、ガス供給装置12から供給される。
【0022】
図2は、コア合成用バーナ6の長さ方向における一部断面図である。図3は、コア合成用バーナ6を構成するブラケット63と風防管64とを示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、コア合成用バーナ6は、コア合成用のバーナ本体61(ガラス合成用のバーナ本体の一例)と、バーナ本体61に対して着脱可能に固定される風防管64(火炎への気流の影響を規制するための規制部材の一例)と、を備えている。バーナ本体61は、バーナ基部62と、バーナ基部62の周囲に取り付けられるブラケット63と、を有している。
【0023】
バーナ基部62は、その内部構造の図示は省略するが、例えば、径の異なる複数のガス吹き出し管が同心円状に配置された部材である。すなわち、コア合成用バーナ6は、例えば、少なくともガラス原料を流す中心ポートと、これを取り囲むように可燃性ガス又は助燃性ガスの少なくとも1つのガス噴出ポートと、が同心円状に配列された多重管バーナであることが好ましい。バーナ基部62は、ガス噴出側(図2において右側)の所定範囲の先端部分62aが根本部分62bよりも細径となるように形成されている。すなわち、バーナ基部62において、先端部分62aと根本部分62bとの境界には段差部62cが形成されている。バーナ基部62は、例えば、石英ガラスまたはステンレス鋼材等で構成される金属製の部材である。
【0024】
ブラケット63は、略円筒状に構成される部材である。ブラケット63の両端部には、径方向の外側に向けて突出したフランジ部65,66が設けられている。ブラケット63の内径は、バーナ基部62の先端部分62aの外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。一方で、ブラケット63の内径は、バーナ基部62の根本部分62bの外径よりも小さくなるように形成されている。ブラケット63は、バーナ基部62の先端部分62aの周囲に取り付けられる。ブラケット63は、フランジ部65,66のうち一方のフランジ部65がボルト68によってバーナ基部62の段差部62cにボルト締めされることによりバーナ基部62に固定される。ブラケット63及びボルト68は、例えば、ステンレス鋼材等で構成される金属製の部材である。
【0025】
風防管64は、コア合成用バーナ6で形成される火炎の気流による影響を規制するための部材であり、管状(略円筒状)に形成されている。風防管64の一方の端部(図2において左側の端部)には、径方向の外側に向けて突出したフランジ部67が設けられている。風防管64のフランジ部67が設けられている側と反対側の端部(図2において右側の端部)は、先端に近づくにしたがって徐々に開口径が大きくなるように形成されている。風防管64におけるフランジ部67側の内径は、バーナ基部62の先端部分62aの外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。風防管64は、バーナ基部62の先端部分62aの周囲に、バーナ基部62の中心軸と同じ中心軸を有するように取り付けられる。風防管64は、フランジ部67がボルト69によってブラケット63のフランジ部66にボルト締めされることによりブラケット63(バーナ本体61)に固定される。風防管64は、バーナ本体61に対して脱着可能に取り付けられている。風防管64及びボルト69は、例えば、石英ガラス製の部材である。
【0026】
風防管64のフランジ部67が固定されるブラケット63の固定面、すなわちブラケット63のフランジ部66における外側(図2において右端部)の面66aは、バーナ基部62のガス噴出側の端部62dからバーナ基部62の軸方向における根本部分62b方向へ、所定の距離Lだけ離隔した位置に設けられている。所定の距離Lは、0mm以上100mm以下であることが好ましい。より好ましくは、所定の距離Lは50mmである。風防管64のフランジ部67とブラケット63のフランジ部66の固定面66aとの間には、カーボン製またはフッ素樹脂製、例えば、テフロン(登録商標)製のガスケット70が設けられている。ガスケット70は、例えば、リング状に形成されたものとし得る。
【0027】
光ファイバ用多孔質母材の製造装置1は、ガラス原料をコア合成用バーナ6及びクラッド合成用バーナ7に供給し、各々のバーナにより形成された火炎中で酸化あるいは加水分解反応させてガラス微粒子を生成し、該ガラス微粒子を回転するダミーガラスロッド4の先端あるいは外周に堆積させて光ファイバ用多孔質母材を製造する。
【0028】
ところで、風防管(気流規制部材)をバーナ本体に固定する方法としては、従来、例えば図6に示すように、テープ310などをバーナ本体301と風防管302とに貼り付ける方向が採用されていた。しかしながら、テープ310では必ずしも固定力が十分ではなく、例えばバーナ本体301の先端部や風防管302に付着した汚れを清掃した際に、風防管302の取り付け角度や取り付け位置がずれてしまう場合があった。風防管302の取り付け位置等が変化すると、バーナ本体301から噴出されるガラス微粒子の方向も変化してしまうため、歪みのない安定した多孔質母材を作製することが難しくなる。
【0029】
これに対して、上記実施形態に係る光ファイバ用多孔質母材の製造装置1は、コア合成用のバーナ本体61と、風防管64と、を備え、風防管64の端部には、風防管64の径方向の外側に向けて突出するフランジ部67が形成され、このフランジ部67がバーナ本体61のブラケット63に設けられたフランジ部66に着脱可能に固定されている。このように、風防管64に形成されたフランジ部67をバーナ本体61に固定することで、風防管64をバーナ本体61に対して固定する際の位置ずれを防止することができる。これにより、反応容器2内において、コア合成用バーナ6の火炎への気流の影響を確実に抑制することができ、歪みなく安定した多孔質母材を作製することができる。
【0030】
本実施形態に係る製造装置1においては、風防管64が石英ガラスで構成されている。風防管64はバーナ本体61の先端部に取り付けられるので、コア合成用バーナ6の火炎に近く、高温になりやすい。このため、金属よりも耐熱性の高い石英ガラスで構成されることが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る製造装置1においては、バーナ本体61は金属製であってもよい。金属製のバーナ本体61に石英ガラス製の風防管64を固定する場合、部材の熱膨張率の違いにより両者間の固定が緩みやすい。これに対して、本製造装置1では風防管64にフランジ部67を設け当該フランジ部67をバーナ本体61に固定しているので、バーナ本体61が金属製であって風防管64と熱膨張率が相違しても、緩みなく風防管64をバーナ本体61に固定することができる。加えて、バーナ本体61を金属製とすることにより、例えば石英ガラス製のバーナ本体を作製するよりもコスト面で有利である。
【0032】
本実施形態に係る製造装置1においては、風防管64のフランジ部67は、石英製のボルト69でバーナ本体61に固定されている。この構成によれば、熱変形しにくい石英製のボルト69で風防管64を固定するため、バーナ本体61に対して風防管64を緩みなく確実に固定することができる。加えて、ボルト腐食による不純物の発生を防止することができるので、光ファイバ用多孔質母材への不純物の付着を抑制することができる。
【0033】
本実施形態に係る製造装置1においては、風防管64のフランジ部67とバーナ本体61のブラケット63のフランジ部66との間に、カーボン製またはフッ素樹脂製のガスケット70が設けられている。この構成によれば、ガスケット70によるクッション効果により、バーナ本体61のブラケット63に対する風防管64のフランジ部67の固定が緩みにくい。さらに、ガスケット70を配置することにより、バーナ本体61に対する風防管64の密着性を高めることができ、両者間からのガスの漏れを抑制することができる。加えて、ガスケット70をフッ素樹脂製とすることで、ガスケット70からの発塵を抑えることができるため好ましい。
【0034】
本実施形態に係る製造装置1においては、風防管64のフランジ部67を固定するバーナ本体61のブラケット63の固定面66aが、バーナ本体61のガス噴出側の端部62dから、他方側の端部に向かって、バーナ本体61の軸方向に0mm以上100mm以内となるように構成されている。ブラケット63の固定面66aがバーナ基部62のガス噴出面よりも先に突出していると、火炎の熱によりブラケット63が劣化する。一方、ブラケット63の固定面66aがバーナ基部62の根本側に設けられていれば火炎の熱によるブラケット63の劣化は抑制されるが、石英ガラス製の風防管64を長くする必要がありコストが増加する。上記構成によれば、風防管64を適切な長さに形成することができ、火炎の熱によるブラケット63の劣化を抑制しつつ、風防管64を石英ガラス製にすることに伴うコスト増加を抑制することができる。
【0035】
なお、図2及び図3に示す実施形態では、コア合成用バーナ6について説明したが、クラッド合成用バーナ7についても本実施形態と同様の構成とすることができる。
【0036】
(第一変形例)
次に、図4を参照して、コア合成用バーナの第一変形例について説明する。
上述した実施形態におけるコア合成用バーナ6においては、風防管64をバーナ本体61に固定するためにブラケット63を設け、当該ブラケット63に風防管64をボルト締めしているが、この構成に限られない。例えば、風防管は、ブラケットを介さずにバーナ基部に直接ボルト締めされるようにしてもよい。
【0037】
図4は、第一変形例に係るコア合成用バーナ106の構成を示す断面図である。図4に示すように、コア合成用バーナ106は、コア合成用のバーナ本体161(ガラス合成用のバーナ本体の一例)と、バーナ本体161に対して着脱可能な風防管164と、を備えている。バーナ本体161は、バーナ基部162を有している。バーナ基部162は、例えば、石英ガラス製または金属製の部材である。
【0038】
風防管164は、フランジ部167がボルト169によってバーナ基部162の段差部162cにボルト締めされることによりバーナ基部162(バーナ本体161)に固定される。風防管164及びボルト169は、例えば、石英ガラス製の部材である。
【0039】
風防管164のフランジ部167が固定されるバーナ基部162の固定面、すなわちバーナ基部162の段差部162cは、バーナ基部162のガス噴出側の端部162dからバーナ基部162の軸方向における根本部分162b方向へ、所定の距離L1だけ離隔した位置に設けられている。所定の距離L1は、0mm以上100mm以下であることが好ましい。より好ましくは、所定の距離L1は50mmである。
【0040】
本変形例のコア合成用バーナ106の構成では、風防管164のフランジ部167がバーナ本体161のバーナ基部162に直接固定される。この構成でも、上記実施形態のコア合成用バーナ6を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0041】
(第二変形例)
次に、図5を参照して、コア合成用バーナの第二変形例について説明する。
図5は、第二変形例に係るコア合成用バーナ206の構成を示す断面図である。図5に示すように、コア合成用バーナ206は、コア合成用のバーナ本体261(ガラス合成用のバーナ本体の一例)と、バーナ本体261に対して着脱可能な風防管264と、風防管264をバーナ本体261に固定するための固定治具81と、を備えている。
【0042】
バーナ本体261におけるガス噴出側(図5において右側)の端部には、径方向の外側に向けて突出したフランジ部91が設けられている。フランジ部91の外周面には、ねじ切り加工が施されている。
【0043】
風防管264は、上記の実施形態の風防管64と同様に、例えば、石英ガラス製の部材である。風防管264の一方の端部(図5において左側の端部)には、径方向の外側に向けて突出したフランジ部267が設けられている。風防管264の他方の端部(図5において右側の端部)は、上記の実施形態の風防管64とは異なり、拡径されていない。
【0044】
固定治具81は、例えば、石英ガラス製であって、円筒状に構成された部材である。固定治具81は、バーナ本体261の軸方向に沿った一端部側に底部82を有している。底部82の中央には、孔部83が形成されている。孔部83の径は、風防管264のフランジ部267以外の円筒部分の外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。固定治具81の他端部側の内周面には、ねじ切り加工が施されている。固定治具81は、バーナ本体261のフランジ部91との螺合により、フランジ部91の周囲に取り付けられる。すなわち、固定治具81は、バーナ本体261に対して着脱可能に固定される。
【0045】
第二変形例における、バーナ本体261への風防管264の取り付け方法は以下のとおりである。まず、風防管264をフランジ部267が設けられた側とは反対側の端部から固定治具81の孔部83に挿通させる。この状態で、風防管264内にバーナ本体261におけるガス噴出側の端部を挿入し、固定治具81をバーナ本体261のフランジ部91と螺合させる。これにより、風防管264のフランジ部267が固定治具81の底部82に押されて、バーナ本体261のフランジ部91の面91aに接触する。このようにして、風防管264のフランジ部267の外周面が固定治具81に覆われた状態で、フランジ部267が固定治具81の底部82とバーナ本体261のフランジ部91との間で挟持され、風防管264がバーナ本体261に固定される。
【0046】
バーナ本体261のフランジ部91におけるガス噴出側の面91aは、バーナ本体261のガス噴出側の端部261aからバーナ本体261の軸方向における端部261aとは反対方向へ、所定の距離L2だけ離隔した位置に設けられている。上記の実施形態と同様に、所定の距離L2は、0mm以上100mm以下であることが好ましい。より好ましくは、所定の距離L2は50mmである。
【0047】
以上説明したように、第二変形例のコア合成用バーナ206は、バーナ本体261に着脱可能に固定される固定治具81を備えている。コア合成用バーナ206は、風防管264のフランジ部267の外周面が固定治具81に覆われた状態でバーナ本体261のフランジ部91と固定治具81の底部82との間に風防管264のフランジ部267が挟持されることで、風防管264がバーナ本体261に固定されるように構成されている。このように、ボルト以外の部材を用いて風防管264のフランジ部91を固定することで、風防管264を容易に脱着させることができる。加えて、固定治具81をバーナ本体261のフランジ部91と螺合させているため、風防管264をバーナ本体261から容易に脱着させて清掃等を容易に行うことができる。
【0048】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:光ファイバ用多孔質母材の製造装置
2:反応容器
3:支持棒
4:ダミーガラスロッド
5:排気管
6,106,206,300:コア合成用バーナ
7:クラッド合成用バーナ
10:昇降装置
11:原料容器
12:ガス供給装置
20:制御部
21:MFC
61,161,261,301:コア合成用のバーナ本体(ガラス合成用のバーナ本体の一例)
62,162:バーナ基部
62a,162a:先端部分
62b,162b:根本部分
62c,162c:段差部
62d,162d,261a:端部
63:ブラケット
64,164,264,302:風防管(規制部材の一例)
65,66,67,91,167,267:フランジ部
66a,91a:固定面
68,69,169:ボルト
70:ガスケット
81:固定治具
82:底部
83:孔部
310:テープ
M:光ファイバ用多孔質母材
図1
図2
図3
図4
図5
図6