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特許7532975多心コネクタの製造方法及び多心コネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】多心コネクタの製造方法及び多心コネクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/40 20060101AFI20240806BHJP
   G02B 6/25 20060101ALI20240806BHJP
   G02B 6/245 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G02B6/40
G02B6/25 301
G02B6/245
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020122971
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019241
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒生 肇
(72)【発明者】
【氏名】森島 哲
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125172(JP,A)
【文献】特表2013-522680(JP,A)
【文献】特開2014-106296(JP,A)
【文献】特開2007-156041(JP,A)
【文献】特開2014-061582(JP,A)
【文献】特開昭63-189812(JP,A)
【文献】特開平04-110806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0322835(US,A1)
【文献】国際公開第2016/031678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00 - 6/10
G02B 6/24 - 6/255
G02B 6/36 - 6/40
G02B 6/44 - 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の、マルチコアファイバまたは偏波保持ファイバである光ファイバを保持するよう構成された複数の位置決め部を備えた位置決め部品を用いた、多心コネクタの製造方法であって、各光ファイバはガラスファイバが樹脂被覆に覆われた被覆部と、当該光ファイバの一端部を含み前記ガラスファイバが露出した非被覆部とを有し、前記製造方法は、
前記一端部を含む、前記ガラスファイバの外周面の一部が前記各光ファイバの長手方向に亘って平面となるよう、前記各光ファイバの一部を削る第一工程と、
前記平面の全てが前記位置決め部品の前記各位置決め部内に無いように、前記平面の全てが前記位置決め部品から前記一端部に向けて突出して前記各光ファイバを配置する第二工程と、
直方形状である第1の治具を複数の前記ガラスファイバの各円周上に配置し、基準面を有する第2の治具を複数の前記ガラスファイバの各前記平面が前記基準面に沿うように配置し、複数の前記ガラスファイバを前記第1の治具と前記第2の治具で挟んで、複数の前記ガラスファイバを回転調心する第三工程と、
前記第三工程の後、前記各光ファイバを前記位置決め部品に固定する第四工程と、
前記第四工程の後、前記位置決め部品から突出している、前記ガラスファイバの前記平面を含む部分を切断除去し、前記位置決め部品から露出している前記各光ファイバの切断面を磨く第五工程と、を含
多心コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記第一工程は、前記各光ファイバの少なくとも一つのコアの一部を削ることを含む、請求項1に記載の多心コネクタの製造方法。
【請求項3】
前記各光ファイバの前記平面は、当該光ファイバの中心軸に平行である、請求項1または請求項2に記載の多心コネクタの製造方法。
【請求項4】
前記各光ファイバの前記平面は、当該光ファイバの中心軸に対して傾斜している、請求項1または請求項2に記載の多心コネクタの製造方法。
【請求項5】
前記複数の位置決め部は、複数の孔又は複数の溝である、請求項1から請求項の何れか一項に記載の多心コネクタの製造方法。
【請求項6】
前記第一工程は、前記ガラスファイバの前記外周面の一部をレーザ光で削ることを含む、請求項1から請求項の何れか一項に記載の多心コネクタの製造方法。
【請求項7】
前記第一工程は、前記ガラスファイバの前記外周面の一部を光コネクタ用研磨機で研磨して削ることを含む、請求項1から請求項の何れか一項に記載の多心コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多心コネクタの製造方法及び多心コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一本のファイバに複数のコアを有するマルチコアファイバが知られている。マルチコアファイバは、断面視において、マルチコアファイバの中心軸に対して軸対称ではない。マルチコアファイバを複数本備える多心コネクタでは、各マルチコアファイバと、接続対象との回転調心が必要となる(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2012/219255号明細書
【文献】国際公開第2016/031678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転調心の方法の一例として、特許文献1は、各マルチコアファイバに長手方向に亘って平面を設け、当該平面を基準に、複数のマルチコアファイバそれぞれを回転調心する方法を開示している。しかしながら当該方法では、一般的な光ファイバ用位置決め部品を使用することが難しい。例えば一般的な位置決め部品としてのフェルールは、断面が円形の光ファイバが挿入される円形の孔を備える。一般的なフェルールを特許文献1に用いた場合、各マルチコアファイバの平面とフェルールの孔との間に隙間が生じるため、製造精度が担保されない可能性がある。
【0005】
回転調心の方法の他の一例として、特許文献2は、各マルチコアファイバに回転防止部材を取り付けて、回転調心する方法を開示している。しかしながら一般的な位置決め部品は回転防止部材の使用を想定していない。そのため、例えば位置決め部品が、回転防止部材を収容するスペースを有していないため、隣接心に取り付けられた部材と干渉してしまうなど、一般的な位置決め部品と回転防止部材とを物理的に併用できない場合がある。
【0006】
そこで本開示は、一般的な位置決め部品を使用しつつ、高精度に回転調心可能な多心コネクタの製造方法及び多心コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、多心コネクタの製造方法は、
複数の、軸対称ではない光ファイバを保持するよう構成された複数の位置決め部を備えた位置決め部品を用いた、多心コネクタの製造方法であって、各光ファイバはガラスファイバが樹脂被膜に覆われた被覆部と、当該光ファイバの一端部を含み前記ガラスファイバが露出した非被覆部とを有し、前記製造方法は、
前記一端部を含む、前記ガラスファイバの外周面の一部が平面となるよう、前記各光ファイバの一部を削る第一工程と、
前記位置決め部品の前記各位置決め部に、前記平面の全てが前記位置決め部から突出するように前記各光ファイバを配置する第二工程と、
前記平面が、前記位置決め部品に対向して配置された治具の基準面に接するように、前記各光ファイバを回転調心する第三工程と、
前記第三工程の後、前記各光ファイバを前記位置決め部品に固定する第四工程と、
前記第四工程の後、前記位置決め部から突出している、前記ガラスファイバの前記平面を含む部分を切断除去し、前記位置決め部品から露出している前記各光ファイバの切断面を磨く第五工程と、を含む。
【0008】
また、本開示の多心コネクタは、
複数の光ファイバと、
前記複数の光ファイバを保持するように構成された複数の位置決め部を備えた位置決め部品と、を備える多心コネクタであって、
前記複数の光ファイバの断面視において、各光ファイバの回転角度のばらつきが、各光ファイバの中心軸及び所定位置に対して±1度以内の位置となるように、前記複数の光ファイバは前記複数の位置決め部に保持されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、一般的な位置決め部品を使用しつつ、高精度に回転調心可能な多心コネクタの製造方法及び多心コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の第一実施形態に係る多心コネクタの斜視図である。
図2図2は、図1に示す多心コネクタの位置決め部品に固定された光ファイバの端面の正面図である。
図3図3は、多心コネクタの製造方法の準備工程を示す図であって、光ファイバの斜視図である。
図4図4は、多心コネクタの製造方法の第一工程を示す概念図である。
図5A図5Aは、多心コネクタの製造方法の第二工程を示す図であって、光ファイバの配列面に直交する方向から見た平面図である。
図5B図5Bは、図5Aの光ファイバの正面図である。
図6A図6Aは、多心コネクタの製造方法の第三工程及び第四工程を示す図であって、光ファイバの配列面に直交する方向から見た平面図である。
図6B図6Bは、図6Aの光ファイバの正面図及び側面図である。
図7A図7Aは、多心コネクタの製造方法の第五工程を示す図であって、光ファイバの配列面に直交する方向から見た平面図である。
図7B図7Bは、図7Aの光ファイバの正面図である。
図8図8は、多心コネクタの製造方法の変形例における第一工程を示す概念図である。
図9A図9Aは、多心コネクタの製造方法の変形例における第三工程及び第四工程を示す図であって、光ファイバの配列面に直交する方向から見た平面図である。
図9B図9Bは、図9Aの光ファイバの正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の一形態の説明)
まず本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る多心コネクタの製造方法は、
複数の、軸対称ではない光ファイバを保持するよう構成された複数の位置決め部を備えた位置決め部品を用いた、多心コネクタの製造方法であって、各光ファイバはガラスファイバが樹脂被覆に覆われた被覆部と、当該光ファイバの一端部を含み前記ガラスファイバが露出した非被覆部とを有し、前記製造方法は、
前記一端部を含む、前記ガラスファイバの外周面の一部が平面となるよう、前記各光ファイバの一部を削る第一工程と、
前記位置決め部品の前記各位置決め部に、前記平面の全てが前記位置決め部品から突出するように前記各光ファイバを配置する第二工程と、
前記平面が、前記位置決め部品に対向して配置された治具の基準面に接するように、前記各光ファイバを回転調心する第三工程と、
前記第三工程の後、前記各光ファイバを前記位置決め部品に固定する第四工程と、
前記第四工程の後、前記位置決め部品から突出している、前記ガラスファイバの前記平面を含む部分を切断除去し、前記位置決め部品から露出している前記各光ファイバの切断面を磨く第五工程と、を含む。
【0012】
本開示の製造方法によれば、各光ファイバに形成された平面が位置決め部品に対向して配置された治具の基準面と接するように各光ファイバが回転されるため、高精度に回転調心することができる。
また、平面の全てが位置決め部品から突出するように各光ファイバが位置決め部品に配置されるため、位置決め部品内にあるガラスファイバの長手方向に垂直な断面は円である。一般的な光ファイバと同じ断面を有することから、各光ファイバを一般的な光ファイバ用の位置決め部にそのまま使用することができる。さらに、治具は位置決め部品に対向して配置されるため、治具と位置決め部品とを併用することが容易である。
【0013】
(2)前記各光ファイバは、マルチコアファイバでもよい。
本開示の製造方法によれば、一般的な光ファイバ用の位置決め部を使用することができ、且つマルチコアファイバを高精度に回転調心することができる。
【0014】
(3)前記第一工程は、前記各光ファイバの少なくとも一つのコアの一部を削ることを含んでもよい。
本開示によれば、第一工程は各光ファイバの少なくとも一つのコアの一部を削ることを含むため、平面の面積が確保される。治具の基準面と接触する平面の面積が大きいため、より高精度に回転調心することができる。
【0015】
(4)前記各光ファイバの前記平面は、当該光ファイバの中心軸に平行であってもよい。
本開示によれば、平面が光ファイバの中心軸に平行であるため、平面と治具の基準面とが接するように治具を配置しやすい。したがって、光ファイバを高精度に回転調心することができる。
【0016】
(5)前記各光ファイバの前記平面は、当該光ファイバの中心軸に対して傾斜していてもよい。
本開示によれば、平面が光ファイバの中心軸に対して傾斜しているため、治具の基準面を、光ファイバの先端側から位置決め部品に向けて、傾斜した平面に沿うように案内することができる。したがって、光ファイバを高精度に回転調心することができる。
【0017】
(6)前記複数の位置決め部は、複数の孔又は複数の溝であってもよい。
本開示によれば、孔を備えたフェルールや、溝を備えたファイバアレイ板などの一般的な位置決め部品を用いることができる。
【0018】
(7)前記第一工程は、前記ガラスファイバの前記外周面の一部をレーザ光で削ることを含んでもよい。
ガラスファイバの外周面の一部はレーザにより削られるため、研磨加工と比べてより高精度に平面を形成することができる。
【0019】
(8)前記第一工程は、前記ガラスファイバの前記外周面の一部を光コネクタ用研磨機で研磨して削ることを含んでもよい。
ガラスファイバの外周面の一部は研磨により削られるため、レーザ加工と比べてより安価に平面を形成することができる。
【0020】
(9)本開示の他の一態様に係る多心コネクタは、
複数の、軸対称ではない光ファイバと、
前記複数の光ファイバを保持するように構成された複数の位置決め部を備えた位置決め部品と、を備える多心コネクタであって、
前記複数の光ファイバの断面視において、各光ファイバの回転角度のばらつきが、各光ファイバの中心軸及び所定位置に対して±1度以内の位置となるように、前記複数の光ファイバは前記複数の位置決め部に保持されている。
本開示の多心コネクタによれば、高精度に回転調心された多心コネクタを提供することができる。
【0021】
(本開示の第一実施形態の詳細)
本開示の一形態に係る多心コネクタ1及び多心コネクタ1の製造方法を、図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1は、本開示の一形態に係る多心コネクタ1の斜視図である。図1に示すように、多心コネクタ1は、複数の光ファイバ2と、複数の光ファイバ2を保持する位置決め部品3と、を備える。
【0023】
各光ファイバ2は、各中心軸に対して軸対称ではない光ファイバである。本例において各光ファイバ2は複数のコア21を備えるマルチコアファイバである。各光ファイバ2は偏波保持ファイバでもよい。各光ファイバ2は、端面が位置決め部品3の端部において露出するように、位置決め部品3に固定されている。各光ファイバ2の外径は、例えば125μmである。各光ファイバ2は軸対称ではないため、多心コネクタ1の製造工程では各光ファイバ2を回転調心する必要がある。多心コネクタ1の製造工程については後述する。
【0024】
位置決め部品3は、複数の光ファイバ2を保持するように構成された複数の位置決め部31を備える。本例において各位置決め部31は各光ファイバ2を収容する円形の孔である。各位置決め部31は円形の孔に限定されず、V溝であってもよい。位置決め部品3は、例えばフェルールである。位置決め部31の内径は光ファイバ2の外径よりも僅かに大きく、例えば126μmである。
【0025】
図2は、図1に示す多心コネクタ1の位置決め部品3に固定された一つの光ファイバ2の端面の正面図である。図2に示すように、多心コネクタ1の製造工程において光ファイバ2は、各コア21’が破線で示された所定位置となるように回転調心され、位置決め部品3に固定されることが理想的である。しかし光ファイバ2それぞれには多少の回転角度のばらつきが生じることがある。実際に光ファイバ2は、図2に示すように、各コア21が実線で示された位置となるように回転調心され、位置決め部品3に固定される。このように各光ファイバ2には、光ファイバ2の中心軸Cに対して所定位置(破線位置)から回転した位置(実線位置)の間に回転角度のばらつきθ1がある。本例の多心コネクタ1の回転角度のばらつきθ1は±1度以内である。
【0026】
次に、多心コネクタ1の製造方法を説明する。図3から図7Bは、多心コネクタ1の製造方法の工程図を示す。
【0027】
図3は、多心コネクタ1の製造方法の準備工程を示す図であって、多心コネクタ1に用いられる光ファイバ2の斜視図である。図3に示すように、光ファイバ2は、ガラスファイバ22が樹脂被膜に覆われた被覆部23と、光ファイバ2の一端部24を含み、ガラスファイバ22が露出する非被覆部25とを有する。ガラスファイバ22の材質は例えば石英ガラスであり、円柱形状を有している。準備工程では、図3に示す軸対称ではない光ファイバ2が、複数用意される。本例の準備工程では、被覆部23及び非被覆部25を予め有する光ファイバ2が用意されるが、準備工程はこれに限定されない。長手方向全長に亘って樹脂被膜で覆われた光ファイバから、先端部を含む、長手方向の一部にて樹脂被覆が除去されて非被覆部が形成され、光ファイバが準備されても良い。
【0028】
図4は、多心コネクタ1の製造方法の第一工程を示す概念図である。図4に示すように、一端部24を含み、ガラスファイバ22の外周面の一部が平面26となるよう、光ファイバ2の一部が削られる(第一工程)。
【0029】
まず、光ファイバ2が所定方向に位置決めされる。このとき、光ファイバ2の一端部24に向けて配置されたカメラ9によって、光ファイバ2が適切な位置と向きで位置決めされたことが確認される。次に、位置決めされた光ファイバ2に対し、レーザあるいは光コネクタ用研磨機によって平面26が形成される。光ファイバ2はカメラ9によって高精度に位置決めされた状態でその一部が削られるため、平面26も光ファイバ2に対して高精度な位置と向きで形成される。このとき、カメラ9で観察されながら光ファイバ2の一部が削られ、平面26が形成されてもよい。このようにして複数の光ファイバ2それぞれで、高精度に位置決めされた平面26が形成される。なお、フェムト秒レーザが用いられる場合にはより高精度な加工が可能である。
【0030】
図4に示すように、平面26は、光ファイバ2の少なくとも一つのコア21の一部が削られるように形成される。平面26は、光ファイバ2の中心軸Cに平行である。本例の平面26は中心軸C上に形成されているが、平面26の位置は中心軸C上に限定されるものではない。長手方向のおける平面26の長さは特に限定されないが、光ファイバ2が位置決め部品3の位置決め部31に挿入された際に、位置決め部31内に平面26が無いように形成されていればよい。平面26は位置決め部31から一端部24に向けて突出するように形成される。
【0031】
図5A及び図5Bは、多心コネクタ1の製造方法の第二工程を示す図である。図5Aは光ファイバ2および位置決め部品3をカメラ9とともに光ファイバ2の配列面に直交する方向から見た平面図であり、図5B図5Aの光ファイバ2の一端部24に向けて配置されたカメラ9が映す、光ファイバ2の正面図である。図5Aに示すように、第一工程で一部が削られた複数の光ファイバ2それぞれは、位置決め部品3の位置決め部31を挿通して、平面26が位置決め部31の端面から突出するように配置される(第二工程)。このとき、図5Bに示すように、各光ファイバ2は回転調心されておらず、各平面26は互いに異なる向きに配置されている。
【0032】
図6A及び図6Bは、多心コネクタ1の製造方法の第三工程及び第四工程を示す図である。図6Aは光ファイバ2および位置決め部品3をカメラ9とともに光ファイバ2の配列面に直交する方向から見た平面図であり、図6B図6Aの光ファイバ2の一端部24に向けて配置されたカメラ9が映す光ファイバ2の正面図と、光ファイバ2の一端部24付近を光ファイバ2の配列方向から見た側面図である。図6A及び図6Bに示すように、第三工程及び第四工程では一組の治具41、42が用いられる。各治具41、42はともに直方形状である。治具41は、位置決め部品3に対向した位置であってガラスファイバ22の円周上に配置され、治具42は、位置決め部品3に対向した位置であってガラスファイバ22の平面26に向かって配置される。治具42は、光ファイバ2に対向する面に、光ファイバ2の長手方向に平行となるように形成された基準面43を有する。すなわち、位置決め部品3に対向して配置された一組の治具41、42が、第二工程で配置された複数の光ファイバ2を上下方向から挟むように配置される。治具42は、位置決め部31から一端部24に向かって突出形成されている平面26に沿うように配置される。このとき、図6Bに示すように各光ファイバ2は、平面26が治具42に形成された基準面43に接するように、回転調心される(第三工程)。本例において基準面43は各光ファイバの中心軸Cに平行になるように配置される。平面26も中心軸Cに平行であるため、複数の光ファイバ2の平面26は全て基準面43と接触して、向きが統一される。このとき一端部24に向けて配置されたカメラ9によって、複数の光ファイバ2が適切に回転調心されたことが確認される。
【0033】
回転調心された各光ファイバ2は、位置決め部品3の位置決め部31に固定される(第四工程)。固定方法としては、各光ファイバ2に接着剤を塗布し硬化させてもよい。接着剤は例えばエポキシ系接着剤である。このとき、回転角度のばらつきθ1が±1度以内となるように、カメラ9によって観察された状態で、各光ファイバ2は位置決め部31に保持固定される。一組の治具41,42は光ファイバ2から取り外された状態で、各光ファイバ2は固定されてもよい。
【0034】
図7A及び図7Bは、多心コネクタ1の製造方法の第五工程を示す図である。図7Aは光ファイバ2および位置決め部品3をカメラ9とともに光ファイバ2の配列面に直交する方向から見た平面図であり、図7B図7Aの光ファイバ2に向けて配置されたカメラ9が映す、光ファイバ2の正面図である。図7A及び図7Bに示すように、第三工程で固定された光ファイバ2のうち、位置決め部品3から突出している、ガラスファイバ22の平面26を含む部分が切断除去される(第五工程)。そして、図7Bに示すように、位置決め部品3から露出している光ファイバ2の切断面が研磨され(第五工程)、多心コネクタ1が完成する。
【0035】
以上説明したように、本例に係る多心コネクタ1の製造方法においては、各光ファイバ2に形成された平面26が位置決め部品3に対向して配置された一組の治具41,42のうち、一方の治具42の基準面43と接するように各光ファイバ2が回転調心されるため、複数の光ファイバ2を一度に高精度に回転調心することができる。したがって作業効率が向上する。
【0036】
また、平面26の全てが位置決め部品3から突出するように各光ファイバは位置決め部品3の位置決め部31に配置されるため、位置決め部31内にあるガラスファイバ22の長手方向に垂直な断面は円であり、位置決め部31に平面は無い。一般的な光ファイバと同じ円形の断面を有することから、各光ファイバ2をフェルールやV溝を備えるファイバアレイ板などの一般的な光ファイバ用位置決め部品3にそのまま使用することができる。すなわち、回転調心用あるいは回転防止用の特殊部材を用いる必要が無い。さらに、一組の治具41,42は位置決め部品3に対向して配置されるため、位置決め部品3と併用することが容易である。したがって製造コストを大幅に上げることなく多心コネクタ1を製造することができる。
【0037】
各光ファイバ2はマルチコアファイバであるため、大容量伝送が可能な多心コネクタ1を提供することができる。
【0038】
平面26は、各光ファイバの少なくとも一つのコア21の一部が削られるように形成されるため、平面26の面積が大きく確保される。治具42の基準面43と接触する平面26の面積が大きいため、高精度に光ファイバ2を回転調心することができ、作業効率も向上する。
【0039】
各光ファイバ2の平面26は、光ファイバ2の中心軸Cに平行であるため、平面26と治具42の基準面43とが接するように一組の治具41,42を配置しやすい。したがって、高精度に回転調心された光ファイバ2を備える多心コネクタ1を提供することができる。
【0040】
位置決め部品3が備える複数の位置決め部31は、複数の孔又は複数の溝であるので、孔を備えたフェルールや溝を備えたファイバアレイ板などの一般的な位置決め部品を用いることができる。したがって製造コストを大幅に上げることなく、多心コネクタ1を製造することができる。
【0041】
第一工程において、ガラスファイバ22の外周面の一部はレーザによって削られるため、研磨加工と比べて高精度に平面26を形成することができる。したがって高精度に回転調心された光ファイバ2を備える多心コネクタ1を製造することができる。
【0042】
第一工程において、ガラスファイバ21の外周面の一部は光コネクタ用研磨機によって削られるため、レーザ加工と比べて安価に平面26を形成することができる。したがって製造コストを抑えて多心コネクタ1を製造することができる。
【0043】
各光ファイバ2の回転角度のばらつきθ1が、各光ファイバ2の中心軸C及び所定位置に対して±1度以内であるため、高精度に回転調心された光ファイバ2を備える多心コネクタ1を提供することができる。
【0044】
(変形例)
図4に示す第一工程では、平面26は光ファイバ2の中心軸Cに平行に形成されたが、これに限定されない。図8は、多心コネクタ1の製造方法のうち第一工程の変形例を示す図であって、多心コネクタ1に用いられる光ファイバ2の斜視図である。図4に例示された構成と実質的に同一又は対応する要素には同様の参照番号を付し、繰り返しとなる説明は省略する。
【0045】
光ファイバ2が所定方向に回転調心されたことがカメラ9によって確認された後、図8に示すように、回転調心された光ファイバ2の一部は、光ファイバ2の中心軸Cに対して平面27が傾斜するように削られる。平面27は、光ファイバ2の全てのコア21が削られるように形成されてもよい。中心軸Cに対する平面27の傾斜角度は例えば60度である。長手方向のおける平面27の長さは特に限定されないが、第二工程にて光ファイバ2が位置決め部品3の位置決め部31に挿入された際に、位置決め部31内に平面27が無いように形成されていればよい。本例における第二工程は図5A及び図5Bと同じであるため、説明は省略する。
【0046】
図9A及び図9Bは、多心コネクタ1の製造方法のうち第三工程の変形例を示す図である。図9Aは光ファイバ2および位置決め部品3をカメラ9とともに光ファイバ2の配列面に直交する方向から見た平面図であり、図9B図9Aの光ファイバ2の一端部24に向けて配置されたカメラ9が映す光ファイバ2の正面図と、光ファイバ2の一端部24付近光ファイバ2の配列方向から見た側面図である。図9A及び図9Bに示すように、第三工程の変形例では、一組の治具41、44が用いられる。光ファイバ2の断面視において、治具41はガラスファイバ22の円周上に、治具42はガラスファイバ22の平面27に配置される。治具41は長方形状であるが、治具44は、光ファイバ2に対向する面に、光ファイバ2の長手方向に傾斜するように形成された基準面45を有する。すなわち、位置決め部品3に対向して配置された一組の治具41、44が、複数の光ファイバ2を上下方向から挟むように配置される。治具44は、位置決め部31から一端部24に向かって突出形成されている平面27に沿うように配置される。このとき、図9Bに示すように各光ファイバ2は、平面27が治具44に形成された基準面45に接するように、回転調心される(第三工程)。本例において基準面45は各光ファイバの中心軸Cに対して傾斜するように配置される。平面27も中心軸Cに対して傾斜しているため、複数の光ファイバ2の平面27は全て基準面45と接触して、向きが統一される。このとき一端部24に向けて配置されたカメラ9によって、複数の光ファイバ2が適切に回転調心されたことが確認される。本例における第四工程及び第五工程は、図6Aから図7Bに示す工程と同じであるため、説明は省略する。
【0047】
このように平面27が光ファイバ2の中心軸Cに対して傾斜しているため、治具44の基準面45を、光ファイバ2の先端側から位置決め部品3に向けて、傾斜した平面27に沿うように案内することができる。したがって、作業効率が向上し、且つ光ファイバ2を高精度の回転調心することができる。
【0048】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:多心コネクタ
2:光ファイバ
21:コア
22:ガラスファイバ
23:被覆部
24:一端部
25:非被覆部
26、27:平面
3:位置決め部品
31:位置決め部
41,42,44:治具
43、45:基準面
9:カメラ
C:中心軸
θ1、θ2:回転角度のばらつき
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B