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特許7532976現像装置およびこれを備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】現像装置およびこれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G03G15/08 221
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020123083
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019314
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】前澤 宜宏
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-003280(JP,A)
【文献】特開2007-293119(JP,A)
【文献】特開2007-333830(JP,A)
【文献】特開2007-003613(JP,A)
【文献】特開2008-096531(JP,A)
【文献】特開2009-186667(JP,A)
【文献】特開2013-238699(JP,A)
【文献】特開平09-311544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性一成分のトナーを収容する現像ハウジングと、
円筒形状を有する弾性体からなり、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、所定の感光体ドラムに現像ニップ部において対向して配置され、周面に前記トナーを担持する現像ローラーと、
金属製の軸部材と当該軸部材の周りに配置された円筒形状を有する発泡弾性体とを含み、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、前記現像ローラーの周面に当接することで前記現像ローラーとの間で供給ニップ部を形成し、前記現像ローラーに前記トナーを供給する一方、前記現像ローラーから前記トナーを回収する、供給ローラーと、
前記供給ニップ部よりも前記現像ローラーの回転方向下流側で前記現像ローラーの周面に当接し、前記現像ローラー上の前記トナーの厚さを規制する層厚規制部材と、
を備え、
前記供給ローラーの電気抵抗が1×102Ω以上かつ1×104Ω以下の範囲に含まれており、前記供給ローラーの前記軸部材に対して当該軸部材の軸方向と直交する方向に0.2N以上かつ1.5N以下の範囲に含まれる圧縮荷重が付与された状態で前記供給ローラーが前記現像ローラーの周面に当接され
前記供給ローラーの硬度が、Asker-FP硬度で40以上60以下の範囲に設定されている、現像装置。
【請求項2】
前記トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定されている、請求項に記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像装置と、
表面に静電潜像が形成され、前記現像ローラーから前記トナーが供給される感光体ドラムと、を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性一成分現像剤を用いて、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する為の現像装置およびこの現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター等の画像形成装置に用いられ、非磁性一成分現像剤を用いて、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する現像装置として、特許文献1に記載されているような現像装置が知られている。かかる現像装置では、現像ローラーにトナーを供給する供給ローラーの圧縮永久歪みと、供給ローラーの現像ローラーに対する接触深さとをそれぞれ所定の範囲に設定することで、トナーが受けるストレスが低減しトナーかぶりなどの画像欠陥が抑止される。
【0003】
また、特許文献2に記載された技術では、弾性を有する供給ローラーの表面に多数の空孔が形成され、当該空孔の内径が径方向内側に行くほど狭くなるように設定されている。この結果、トナーが空孔の深部まで入り込むことが抑止され、トナーが空孔に凝集することによる供給ローラーの弾性低下が抑止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3104007号公報
【文献】特開平5-257375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、現像ローラーに対する供給ローラーの接触深さが上記の所定の範囲に設定された場合であっても、高い画像密度の画像(ベタ画像)を連続して印字した場合に供給ローラーから現像ローラーにトナーを充分供給することができず、結果として追従性不良による濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥が生じやすいという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、供給ローラーに蓄えられているトナーの量が少ないために、ベタ画像を連続して印字した場合に供給ローラーから現像ローラーにトナーを充分供給することができず、同様に、追従性不良による濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥が生じやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、特に、供給ローラーから現像ローラーへのトナーの供給性を安定化させ、ベタ画像を連続して印字した場合における濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥を低減することが可能な現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る現像装置は、非磁性一成分のトナーを収容する現像ハウジングと、円筒形状を有する弾性体からなり、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、所定の感光体ドラムに現像ニップ部において対向して配置され、周面に前記トナーを担持する現像ローラーと、金属製の軸部材と当該軸部材の周りに配置された円筒形状を有する発泡弾性体とを含み、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、前記現像ローラーの周面に当接することで前記現像ローラーとの間で供給ニップ部を形成し、前記現像ローラーに前記トナーを供給する一方、前記現像ローラーから前記トナーを回収する、供給ローラーと、前記供給ニップ部よりも前記現像ローラーの回転方向下流側で前記現像ローラーの周面に当接し、前記現像ローラー上の前記トナーの厚さを規制する層厚規制部材と、を備え、前記供給ローラーの電気抵抗が1×10Ω以上かつ1×10Ω以下の範囲に含まれており、前記供給ローラーの前記軸部材に対して当該軸部材の軸方向と直交する方向に0.2N以上かつ1.5N以下の範囲に含まれる圧縮荷重が付与された状態で前記供給ローラーが前記現像ローラーの周面に当接される。
【0008】
本構成によれば、供給ローラーから現像ローラーへのトナーの供給が安定して維持され、画像濃度むらの発生を抑止することが可能となる。
【0009】
上記の構成において、前記供給ローラーの硬度が、Asker-FP硬度で40以上60以下の範囲に設定されていることが望ましい。
【0010】
本構成によれば、供給ローラーの硬度が低すぎることで古いトナーが供給ニップ部をすり抜けて再び現像ローラーに供給され画像濃度ムラが発生することを防止することができるとともに、供給ローラーの硬度が高すぎることで供給ローラーを回転させるためのトルクが著しく上昇することを抑止することができる。
【0011】
上記の構成において、前記トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定されていることが望ましい。
【0012】
本構成によれば、溶融粘度が比較的低く装置内の温度によって粘性が増加しやすいトナーであっても、供給ローラーによる現像ローラーへのトナーの供給性を安定化させることができる。
【0013】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、上記に記載の現像装置と、表面に静電潜像が形成され、前記現像ローラーから前記トナーが供給される感光体ドラムと、を備える。
【0014】
本構成によれば、現像ローラーへのトナー供給不良に基づく画像濃度むらを抑制した画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、供給ローラーから現像ローラーへのトナーの供給性を安定化させ、ベタ画像を連続して印字した場合における濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥を低減することが可能な現像装置およびこれを備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の感光体ドラムの周辺の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る現像装置の現像ローラーと供給ローラーとの間の供給ニップ部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造を示す側断面図である。ここでは、画像形成装置1としてモノクロプリンターを例示するが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよく、またカラー画像を形成する画像形成装置であっても良い。
【0018】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10と、この本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30、定着部40と、を含む。
【0019】
本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。後カバー12は、シートジャムやメンテナンスの際に開放されるカバーである。また、本体ハウジング10の上面には、画像形成後のシートが排出される排紙部13が備えられている。前カバー11と、後カバー12と、排紙部13とによって画定される内部空間Sに、画像形成を実行するための各種装置が内装される。
【0020】
給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。この給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面からさらに前方に突出している。給紙カセット21のうち、本体ハウジング10内に収容されている部分の上面は、給紙カセット天板21Uによって覆われている。給紙カセット21には、前記シートの束が収容されるシート収容空間、前記シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部にはシート繰出部21Aが設けられている。このシート繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
【0021】
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー画像を形成する画像形成処理を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31と、この感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電装置32、露光装置(図2には表れていない)、現像装置33、転写ローラー34と、を含む。
【0022】
感光体ドラム31は、回転軸と、回転軸回りに回転する円筒面と、を備える。円筒面には、静電潜像が形成されるとともに、該静電潜像に応じたトナー像が円筒面に担持される。感光体ドラム31としては、OPC感光体ドラムを用いることができる。
【0023】
帯電装置32は、感光体ドラム31の表面を均一に帯電するものであって、感光体ドラム31に対して所定の間隔をおいて配置され、かつ、所定の電圧が印加されることで放電するスコロトロンを含む。
【0024】
露光装置は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づいて変調された光を照射して、静電潜像を形成する。
【0025】
現像装置33は、感光体ドラム31上の前記静電潜像を現像してトナー像を形成するために、感光体ドラム31の周面にトナーを供給する。
【0026】
転写ローラー34は、感光体ドラム31の周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーである。転写ローラー34は、感光体ドラム31の円筒面に当接し、転写ニップ部を形成している。この転写ローラー34には、トナーと逆極性の転写バイアスが与えられる。
【0027】
定着部40は、転写されたトナー像をシート上に定着する定着処理を行う。定着部40は、加熱源を内部に備えた定着ローラー41と、この定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する加圧ローラー42とを含む。トナー像が転写されたシートが前記定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱および加圧ローラー42による押圧により、シート上に定着される。なお、本実施形態では、現像装置33において使用される非磁性一成分トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定されている。
【0028】
本体ハウジング10内には、シートを搬送するために、主搬送路22F及び反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20のシート繰出部21Aから画像形成部30及び定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
【0029】
主搬送路22Fは、感光体ドラム31および転写ローラー34によって形成される転写ニップ部を、下方から上方に向かって、通過するように延設される。また、主搬送路22Fの、転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、前記転写ニップ部に送り出される。主搬送路22F及び反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されており、例えば排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
【0030】
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。なお、反転ユニット25の内側面には転写ローラー34及びレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12及び反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてシートジャムが発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでシートジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像装置33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
【0031】
図2は、感光体ドラム31の周辺の構造を示す断面図である。本実施形態では、感光体ドラム31の後方において転写ローラー34が感光体ドラム31に当接するように配置され、感光体ドラム31の前方かつ上方において帯電装置32が所定の間隔をおいて感光体ドラム31に対向するように配置されている。感光体ドラム31と転写ローラー34との間には、転写ニップ部が形成され、当該転写ニップ部を図2の矢印のようにシートが通過する。この際、感光体ドラム31からシートにトナー像が転写される。
【0032】
現像装置33は、感光体ドラム31の前方かつ下方において、感光体ドラム31に対向するように配置されている。現像装置33は、現像ハウジング330と、現像ローラー331と、供給ローラー332と、攪拌パドル333と、規制ブレード334(層厚規制部材)と、ロワーシール335(シール部材)と、を有する。
【0033】
現像ハウジング330は、内部に非磁性一成分トナーを収容する。現像ハウジング330は、ハウジング本体330Aと、ハウジング蓋部330Bとを有する。図2に示すように、現像ハウジング330の後端部には現像ローラー331の一部を感光体ドラム31側に露出させるための開口部が形成されている。
【0034】
現像ローラー331は、現像ハウジング330に回転可能に支持され、トナーを担持する周面を有している。現像ローラー331は、感光体ドラム31に当接し、トナーを感光体ドラム31に供給するための現像ニップ部を感光体ドラム31とともに形成している。現像ローラー331では、SUS材またはSUM材のシャフトの周囲に、円筒状のゴム層(弾性体)が形成されている。当該ゴム層は一例としてNBR(Nitril-Butadiene Rubber)ゴムからなる。また、前記ゴム層の表面に所定のコート層が形成されてもよい。本実施形態では、現像ローラー331の表面の硬度が、Asker-C硬度で50以上80以下の範囲に設定されている。
【0035】
供給ローラー332は、現像ローラー331の前方かつ下方において現像ローラー331に対向するように配置され、現像ハウジング330に回転可能に支持されている。供給ローラー332は、現像ローラー331に当接し、トナーを現像ローラー331に供給するための供給ニップ部を形成している。供給ローラー332は、金属製の所定のシャフト(軸部材)の周囲に円筒状のウレタンスポンジまたは発砲スポンジ(いずれも弾性発泡体)が固定されることで形成される。本実施形態では、供給ローラー332の表面の硬度が、Asker-FP硬度で40以上60以下の範囲に設定されている。また、前記供給ニップ幅は、径方向に沿って見た場合、回転方向において0.2mm以上1.5mm以下の範囲に設定されている。
【0036】
攪拌パドル333は、供給ローラー332の前方において現像ハウジング330に回転可能に支持されている。攪拌パドル333は、図2に示すように断面視でL字状のシャフトと、当該シャフトから径方向に延びるように配置されたPETフィルムとを含む。
【0037】
なお、図2には、画像形成装置1においてシートに対する画像形成動作が行われる際の現像ローラー331、供給ローラー332および攪拌パドル333の回転方向が図示されている。現像ローラー331は、その表面が現像ニップ部において感光体ドラム31の表面と同じ方向に移動するように回転する。一例として、現像ローラー331の感光体ドラム31に対する周速比は、1.55倍に設定されている。供給ローラー332は、その表面が現像ローラー331の表面とは逆方向に移動するように回転する。現像ローラー331の供給ローラー332に対する周速比は1.55倍に設定されている。攪拌パドル333は、現像ハウジング330内のトナーを掬い上げながら供給ローラー332に供給するように回転する。
【0038】
規制ブレード334は、前記供給ニップ部よりも現像ローラー331の回転方向下流側かつ前記現像ニップ部よりも現像ローラー331の回転方向上流側において、現像ローラー331の表面(周面)に当接している。規制ブレード334は、現像ローラー331の回転方向上流側に向かって傾斜するように現像ハウジング330に固定されている。規制ブレード334は、現像ローラー331上のトナーの厚さ(層厚)を規制する。
【0039】
ロワーシール335は、規制ブレード334とは反対側で現像ローラー331とハウジング本体330Aとの間の隙間を塞ぐようにハウジング本体330Aに支持されている。ロワーシール335の先端部は現像ローラー331の表面に当接している。
【0040】
本実施形態では、図2に示すように、感光体ドラム31と転写ローラー34とによって形成される転写ニップ部から見て、感光体ドラム31の回転方向下流側には帯電装置32が配置されており、公知のクリーニング装置が備えられていない、いわゆるクリーナレス構成が採用されている。すなわち、転写ニップ部において感光体ドラム31からシートにトナー像が転写されると、未転写トナーが感光体ドラム31上に残存する。当該未転写トナーは、帯電装置32を通過して、現像装置33の現像ローラー331によって感光体ドラム31から回収される。この際、シートに対して連続的に画像(トナー像)が形成される場合には、現像ローラー331は感光体ドラム31から未転写トナーを回収する一方、感光体ドラム31上の静電潜像にトナーを供給する。
【0041】
一方、供給ローラー332は、前記供給ニップ部において現像ローラー331に新しいトナーを供給する一方、現像ローラー331から感光体ドラム31に供給されなかったトナーを現像ローラー331から回収する。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に係る現像装置33の現像ローラー331および供給ローラー332の対向部を拡大した断面図である。本実施形態では、現像ローラー331の表面が供給ローラー332の表面に食い込み量Hだけ食い込むように現像ローラー331および供給ローラー332のシャフトがそれぞれ現像ハウジング330に支持されている。この結果、現像ローラー331と供給ローラー332との間には、互いの回転方向に沿って所定の幅を有する供給ニップ部SNが形成される。なお、現像ローラー331の硬度よりも供給ローラー332の硬度が低いため、図3に示すように、主に供給ローラー332の表面が変形することで、前記供給ニップ部SNが形成される。したがって、現像ローラー331および供給ローラー332がそれぞれ回転すると、供給ローラー332によって搬送されるトナーが供給ニップ部SNの上流側で滞留し、トナー溜まりTNが形成される。当該トナー溜まりTNによって、感光体ドラム31上に高濃度の画像が形成される場合でも、供給ローラー332から現像ローラー331に安定してトナーを供給することができる。
【0043】
一方、現像ローラー331と供給ローラー332とが、断面視において点接触で互いに接触する場合、図3に示すようなトナー溜まりTNが充分に形成されないため、トナーの供給性が著しく低下することがある。
【0044】
このため、適度な食い込み量Hになるように現像ローラー331と供給ローラー332の軸間距離(シャフト間距離)やそれぞれの直径が設定される必要がある。現像ローラー331の硬度は、感光体ドラム31という硬い部材と接触するために、Asker-C硬度で50以上80以下の範囲に設定される。したがって、図3のように現像ローラー331が供給ローラー332にめり込んだ構成とするためには、供給ローラー332の硬度を現像ローラー331の硬度よりも低く設定する必要がある。
【0045】
ここで、現像ローラー331上の未現像トナーは、鏡像力、ファンデルワールス力、液架橋力や電界エネルギーなどによって現像ローラー331の表面に留まっている(付着している)。すなわち、供給ローラー332は、これらのエネルギーを上回る摩擦力で未現像トナーを擦り落とすことで、当該未現像トナーを現像ローラー331から回収することができる。なお、摩擦力は摩擦係数と荷重との積であり、供給ローラー332を現像ローラー331に押し付ける力である圧縮荷重を最適な範囲に設定することで、未現像トナーの回収性は著しく向上する。
【0046】
本発明の発明者は、上記のような作用を踏まえて鋭意実験を重ねた結果、供給ローラー332の電気抵抗が1×10Ω以上かつ1×10Ω以下の範囲に含まれており、供給ローラー332の前記シャフト(軸部材)に対して当該シャフトの軸方向と直交する方向に0.2N以上かつ1.5N以下の範囲に含まれる圧縮荷重が付与された状態で供給ローラー332が現像ローラー331の周面に当接されることが望ましいことを新たに知見した。なお、上記の圧縮荷重は、前記シャフトの軸方向と直交する断面で見た場合、現像ローラー331の回転中心と供給ローラー332の回転中心とを結ぶ直線に沿って付与される荷重でもある。
【0047】
ここで、現像ローラー331と供給ローラー332との間の電位差である電界エネルギーやファンデルワールス力によって、供給ローラー332から現像ローラー331へトナーが供給される。しかしながら、現像ローラー331および供給ローラー332の電気抵抗が高い場合、両者の間の実効電界が小さくなり、供給性能が低下する。したがって、トナーの帯電量を維持するとともに、現像ローラー331から感光体ドラム31へのトナーの現像性を担保するためには、現像ローラー331の電気抵抗は1×10Ω以上かつ1×10Ω以下の範囲に含まれることが望ましい。そして、この現像ローラー331の電気抵抗の範囲内で、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナーの供給性を担保できる実効電界を形成するためには、供給ローラー332の電気抵抗が1×10Ω以上かつ1×10Ω以下の範囲に含まれる必要がある。更に、本発明者は、供給ローラー332を現像ローラー331に押し付ける力である圧縮荷重を前述のような最適な範囲に設定することで、ベタ画像の追従性が著しく向上することを新たに知見した。
【0048】
上記のような構成によれば、供給ローラー332の抵抗値が1×10Ω以上かつ1×10Ω以下の範囲に含まれることで、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナー供給性を安定化することが可能となる。また、供給ローラー332の軸中心(シャフトの中心)に対して、垂直方向の圧縮荷重が0.2N以上に設定されることで、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナーの供給性を更に安定させることができる。この結果、ベタ画像を連続して印字した場合における濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥を低減することが可能となる。なお、供給ローラー332を回転させるための駆動トルクの著しい増大を抑制するためには、上記の圧縮荷重が1.5N以下に設定されることが望ましい。また、上記のように、供給ローラー332の現像ローラー331に対する圧縮荷重を管理することによって、現像ローラー331および供給ローラー332のローラー径やそれぞれのローラーの硬度の影響を受けにくく、トナーの供給性を安定して維持することができる。
【0049】
更に、本実施形態では、現像ローラー331の硬度がAsker-C硬度で50以上80以下の範囲に設定され、現像ローラー331と供給ローラー332と間の供給ニップ幅が回転方向に沿って0.2mm以上1.5mm以下の範囲に設定されていることが望ましい。なお、一例として、当該供給ニップ幅は、現像ローラー331の形状および硬度を想定したポリカーボネート製の円筒に供給ローラー332を接触させた際のニップ幅を実測すればよい。
【0050】
このような構成によれば、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナーの供給が更に安定して維持され、画像濃度むらの発生を抑止する。この結果、ベタ画像を連続して印字した場合における濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥を低減することが可能となる。
【0051】
また、供給ローラー332の表面の硬度が、Asker-FP硬度で40以上60以下の範囲に設定されることが更に望ましい。供給ローラー332の硬度がAsker-FP硬度で60を超えると、供給ローラー332の硬度が高すぎることで供給ローラー332を回転させるための駆動トルクが著しく上昇してしまう。また、供給ローラー332の硬度がAsker-FP硬度で40未満になると、現像ローラー331と供給ローラー332との間の供給ニップ部におけるトナーの流れが不安定となる。特に、供給ローラー332の硬度が低すぎることで、感光体ドラム31から現像ローラー331に回収された古いトナーが供給ニップ部SNをすり抜けて再び供給ローラー332から現像ローラー331に供給されやすくなる。このため、供給ローラー332から現像ローラー331への新しいトナーの供給が不十分となり、ベタ画像を連続して印字した場合における濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥が誘発されやすくなる。
【0052】
更に、現像装置33において使用される非磁性一成分トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定されることが更に望ましい。この溶融粘度が比較的低く装置内の温度によって粘性が増加しやすいトナーであっても、供給ローラー332による現像ローラー331へのトナー供給を安定して維持し、ベタ画像を連続して印字した場合における濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥を低減することが可能となる。
【0053】
なお、前述のように、現像ローラー331の電気抵抗は、1×10Ω以上かつ1×10Ω以下の範囲に含まれることが望ましい。現像ローラー331の電気抵抗が1×10Ω未満になると、現像ローラー331上に担持されるトナーの電荷が抜けやすく、高湿環境下における画像形成時にトナーかぶりが発生しやすくなる。また、現像ローラー331の電気抵抗が1×10Ωを超えると、現像ローラー331と感光体ドラム31との間に形成される電界が弱まり、画像濃度が低い(濃度薄)問題が発生しやすくなる。
【実施例
【0054】
次に、現像装置33の好ましい態様について、実施例をもとに説明する。なお、以後の各実験は、下記の実験条件にて行った。
<実験条件について>
・感光体ドラム31:OPCドラム
・感光体ドラム31の周速度:118mm/sec
・現像ローラー331の周速度:182mm/sec
・感光体ドラム31に対する現像ローラー331の周速比:1.55
・現像バイアスDC成分:350V
・供給バイアスDC成分:450V
・感光体ドラム31の表面電位:640V
・現像ローラー331の直径:13mm
・現像ローラーのAsker-C硬度:70
・感光体ドラム31の直径:24mm
・非磁性トナーの平均粒子径:8.0μm(D50)
表1に、各実施例および比較例の詳細条件および実験結果を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1~12、比較例1~5では、供給ローラー332の直径(mm)、供給ローラー332の軸方向における幅(mm)、現像ローラー331に向かって供給ローラー332のシャフトに付与する圧縮荷重(N)、供給ローラー332のAsker-FP硬度、トナーの溶融粘度(Pa・s)がそれぞれ変化された場合の、画像濃度ムラ、現像装置33に掛かるトルクがそれぞれ評価されている。
【0057】
前記圧縮荷重は、供給ローラー332単体で、日本電産シンポ製FGC-1を用いて測定した。更に、供給ローラー332のAsker-FP硬度は、供給ローラー332単体で、高分子計器製Asker-FP硬度計を用いて測定した。また、トナーの溶融粘度は、島津製作所製CFT-500Dでトナー1gの溶融粘度を測定した。
【0058】
また、画像濃度ムラの評価は、シート(用紙)の先端および後端のベタ画像の濃度差が0.1未満のものを◎、0.1以上0.2未満のものを○、0.2以上のものを×とした。更に、現像装置33のトルクの評価は、現像ユニット単体で、そのトルクが250mN・m未満のものを◎、250mN・m以上、300mN・m未満のものを○、300mN・m以上のものを×とした。
【0059】
表1の実施例1~12に示されるように、供給ローラー332の電気抵抗が1×10Ω以上かつ1×10Ω以下の範囲に設定されている場合では、供給ローラー332に付与される圧縮荷重が0.2N以上1.5N以下の範囲に設定されることで、画像濃度ムラおよびトルクが良好な結果となった。この場合、供給ローラー332から現像ローラー331にトナーを安定して供給できるため、当該トナー供給が高濃度の画像形成にも充分追従することが可能となり、画像濃度むらの発生が抑止される。加えて、供給ローラー332が現像ローラー331に過剰に押圧されることがないため、現像装置33の現像ローラー331、供給ローラー332および攪拌パドル333を回転駆動する駆動系に大きなトルクが付与されることが防止される結果となった。この際、供給ローラー332の軸方向における幅が120mm以上240mm以下の範囲、供給ローラー332の硬度が、Asker-FP硬度で40以上60以下の範囲、更には、トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定された条件で、いずれも画像濃度ムラおよびトルクが良好な結果が確認された。
【0060】
一方、比較例1では、供給ローラー332の電気抵抗が5×10Ωと高いため、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナーの供給が不十分となり、画像濃度むらが発生する結果となった。同様に、比較例2では、供給ローラー332に付与される圧縮荷重が0.1Nと低いために、供給ローラー332から現像ローラー331へのトナーの供給が不十分となり、画像濃度むらが発生する結果となった。一方、比較例3では、供給ローラー332に付与される圧縮荷重が1.6Nと高いために、現像装置33の現像ローラー331、供給ローラー332および攪拌パドル333を回転駆動する駆動系に大きなトルクが付与される結果となった。また、比較例4では、供給ローラー332の硬度が、Asker-FP硬度で35と低く設定されているため、供給ローラー332のトナー供給性が不十分となり、画像濃度ムラが発生する結果となった。また、比較例6では、供給ローラーの硬度が、Asker-FP硬度で65と高いため、現像ローラー331と供給ローラー332との摩擦力が高く、現像装置33の現像ローラー331、供給ローラー332および攪拌パドル333を回転駆動する駆動系に大きなトルクが付与される結果となった。
【0061】
なお、上記と同様の評価結果(効果)が、現像ローラー331の直径が11.0mm以上15.0mmの以下の範囲で再現された。同様に、上記と同様の評価結果(効果)が、現像ローラー331と供給ローラー332との周速比(現像ローラー331の方が高い周速度)が1.3以上1.8以下の範囲で再現された。
【0062】
以上、本発明の実施形態に係る現像装置33およびこれを備えた画像形成装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0063】
(1)上記の実施形態では、画像形成装置1に1つの現像装置33が備えられる態様にて説明したが、画像形成装置1は複数の色に応じた現像装置33をそれぞれ有するカラー画像形成装置であってもよい。
【0064】
(2)上記の実施形態では、現像装置33の現像ハウジング330が内部に非磁性トナーを貯留する態様にて説明したが、現像ハウジング330とは別に非磁性トナーを収容するトナーコンテナ、トナーカートリッジを有するものでもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
31 感光体ドラム
33 現像装置
330 現像ハウジング
330A ハウジング本体
330B ハウジング蓋部
331 現像ローラー
332 供給ローラー
333 攪拌パドル
334 規制ブレード(層厚規制部材)
335 ロワーシール
図1
図2
図3