(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】印刷システム、プレビュー画像表示方法、印刷ジョブ生成装置、画像形成装置、印刷ジョブ生成プログラム、プレビュー画像表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240806BHJP
B41J 29/42 20060101ALI20240806BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240806BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G06F3/12 356
G06F3/12 308
G06F3/12 312
G06F3/12 344
G06F3/12 353
B41J29/42 F
B41J29/38
B41J21/00 Z
(21)【出願番号】P 2020134356
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】向井 友弘
(72)【発明者】
【氏名】徳冨 文雄
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120959(JP,A)
【文献】特開2019-220838(JP,A)
【文献】特開2008-145784(JP,A)
【文献】特開2010-268351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09- 3/12
B41J 29/00- 29/70
H04N 1/00
B41J 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部と、
生成した前記印刷ジョブを画像形成装置に送信する送信部と、
を備える印刷ジョブ生成装置と、
前記送信部から送信された前記印刷ジョブを受信する受信部と、
前記印刷ジョブに含まれる前記インク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する処理部と、
印刷に使用される
と判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を
生成し、かつ、印刷に使用されないと判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を生成せず、生成したプレビュー画像を表示部に表示する表示制御部と、
を備える画像形成装置と、
を含む印刷システム。
【請求項2】
前記インク色情報には、カラーインクの使用の有無を示すフラグと、ホワイトインクの使用の有無を示すフラグと、バーニッシュインクの使用の有無を示すフラグとが含まれる、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記カラーインクの使用の有無を示すフラグは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの各インクについて使用の有無を示すフラグを含む、
請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記インク色情報には、メタリックインクの使用の有無を示すフラグが含まれる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記印刷ジョブ生成部は、印刷に使用されるインク色の利用者による指定に基づいて前記インク色情報を生成し、前記インク色情報を含むヘッダーを付加した前記印刷ジョブを生成する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記印刷ジョブ生成部は、前記ラスターイメージデータに基づいて各画素についてインク色毎のインクの吐出の有無を判定し、第1インクを吐出する画素が1画素以上含まれている場合に、前記第1インクを使用することを示す前記インク色情報を含むフッターを付加した前記印刷ジョブを生成する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記処理部は、
前記印刷ジョブに前記インク色情報が含まれる場合、前記ラスターイメージデータに基づいて各画素についてインク吐出の有無を判定することなく、前記インク色情報に基づいて使用されるインク色を判別し、
前記印刷ジョブに前記インク色情報が含まれない場合、前記ラスターイメージデータに基づいて各画素についてインク吐出の有無を判定し、インクを吐出する画素が1画素以上含まれているか否かに基づいて、印刷に使用されるインク色を判別する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項8】
印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成し、
前記印刷ジョブに含まれる前記インク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別し、
印刷に使用される
と判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を
生成し、かつ、印刷に使用されないと判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を生成せず、生成したプレビュー画像を表示部に表示する、
ことを含むプレビュー画像表示方法。
【請求項9】
印刷に使用されるインク色の利用者による指定に基づいて印刷に使用されるインク色を示すインク色情報
を生成し、前記インク色情報を含むヘッダーと、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部と、
生成した前記印刷ジョブを、前記インク色情報に基づいて印刷に使用されるインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する機能を有する画像形成装置に送信する送信部と、
を備える印刷ジョブ生成装置。
【請求項10】
印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを受信する受信部と、
前記印刷ジョブに含まれる前記インク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する処理部と、
印刷に使用される
と判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を
生成し、かつ、印刷に使用されないと判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を生成せず、生成したプレビュー画像を表示部に表示する表示制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項11】
コンピューターを、
印刷に使用されるインク色の利用者による指定に基づいて印刷に使用されるインク色を示すインク色情報
を生成し、前記インク色情報を含むヘッダーと、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部、
生成した前記印刷ジョブを、前記インク色情報に基づいて印刷に使用されるインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する機能を有する画像形成装置に送信する送信部、
として機能させる印刷ジョブ生成プログラム。
【請求項12】
コンピューターを、
印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを受信する受信部、
前記印刷ジョブに含まれる前記インク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する処理部、
印刷に使用される
と判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を
生成し、かつ、印刷に使用されないと判別されたインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を生成せず、生成したプレビュー画像を表示部に表示する表示制御部、
として機能させるプレビュー画像表示プログラム。
【請求項13】
印刷に使用されるインク色の利用者による指定に基づいて印刷に使用されるインク色を示すインク色情報を生成し、前記インク色情報を含むヘッダーと、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部と、
生成した前記印刷ジョブを画像形成装置に送信する送信部と、
を備える印刷ジョブ生成装置と、
前記送信部から送信された前記印刷ジョブを受信する受信部と、
前記印刷ジョブに含まれる前記インク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する処理部と、
判別結果に基づいて、印刷に使用されるインク色の前記ラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する表示制御部と、
を備える画像形成装置と、
を含む印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、プレビュー画像表示方法、印刷ジョブ生成装置、画像形成装置、印刷ジョブ生成プログラム、プレビュー画像表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷実行前にプレビュー画像を表示する手法が知られている。特許文献1には、ファクシミリ等の情報端末装置において、受信したデータを画像化した場合の文字や画像を矩形の図形に置き換えることによってプレビュー画像の表示に要する時間を短縮する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷ジョブが示す印刷画像を1以上のインク色を含むグループ(所謂、版)に分け、版毎にプレビューを表示することが知られている。版毎のプレビュー表示に関し、印刷に使用されるインク色を含む版のプレビューは表示するが、印刷に使用されないインク色しか含まない版のプレビューは表示しないという機能を実現するためには、次のような課題があった。すなわち、画像形成装置において、印刷ジョブに基づいて、印刷にどのインク色が使用されるか(使用されないインク色はいずれであるか)を判別するためには、画像データ全体を解析する必要があり、プレビュー画像の表示に要する時間が増大するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための印刷システムは、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部と、生成した印刷ジョブを画像形成装置に送信する送信部と、を備える印刷ジョブ生成装置と、送信部から送信された印刷ジョブを受信する受信部と、印刷ジョブに含まれるインク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する処理部と、判別結果に基づいて、印刷に使用されるインク色のラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する表示制御部と、を備える画像形成装置と、を含む。
【0006】
上記目的を達成するためのプレビュー画像表示方法は、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成し、印刷ジョブに含まれるインク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別し、判別結果に基づいて、印刷に使用されるインク色のラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する、ことを含む。
【0007】
上記目的を達成するための印刷ジョブ生成装置は、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部と、生成した印刷ジョブを、インク色情報に基づいて印刷に使用されるインク色のラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する機能を有する画像形成装置に送信する送信部と、を備える。
【0008】
上記目的を達成するための画像形成装置は、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを受信する受信部と、印刷ジョブに含まれるインク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する処理部と、判別結果に基づいて、印刷に使用されるインク色のラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する表示制御部と、を備える。
【0009】
上記目的を達成させるための印刷ジョブ生成プログラムは、コンピューターを、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成部、生成した印刷ジョブを、インク色情報に基づいて印刷に使用されるインク色のラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する機能を有する画像形成装置に送信する送信部、として機能させる。
【0010】
上記目的を達成させるためのプレビュー画像表示プログラムは、コンピューターを、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを受信する受信部、印刷ジョブに含まれるインク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する処理部、判別結果に基づいて、印刷に使用されるインク色のラスターイメージデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する表示制御部、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】プレビュー画像生成のための画像処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1) 印刷システムの構成:
(1-1)印刷ジョブ生成装置の構成:
(1-2)画像形成装置の構成:
(2) 印刷ジョブ生成処理:
(3) 印刷処理:
(3-1)プレビュー画像生成処理:
(4)他の実施形態:
【0013】
(1)印刷システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる印刷システムの構成を示すブロック図である。印刷システムは、印刷ジョブ生成装置100と画像形成装置200を含む。印刷ジョブ生成装置100は画像形成装置200と通信可能であり、印刷ジョブ生成装置100において生成された印刷ジョブが画像形成装置200に送信される。本実施形態において画像形成装置200は、受信した印刷ジョブに基づいて印刷を実行する所謂プリンターである。本実施形態において画像形成装置200は、印刷実行前に、印刷ジョブに基づいて生成したプレビュー画像を表示することができる。
【0014】
本実施形態の画像形成装置は、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)を含むカラーインクに加えて、ホワイト(Wh)、バーニッシュ(Vr)の特色インクを用いた印刷が可能である。カラーインクは、印刷媒体の色以外の色(有彩色および無彩色)を表現する際に使用されるインクである。特色インクは、カラーインクのみでは表現できない色を表現するためや、特定の用途の印刷を行うため等に用いられるインクである。特定の用途には例えば、下地や、表面のコーティング等が含まれる。本明細書において、1以上のインク色を含むグループを版と呼ぶ。画像形成装置は、版毎のプレビュー画像と全ての版を合成した全体プレビュー画像とを表示することができる。本実施形態において、版は、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックを含むカラー版と、ホワイト版と、バーニッシュ版に分けられる。
【0015】
(1-1)印刷ジョブ生成装置の構成:
印刷ジョブ生成装置100は、プロセッサー120と、通信部150と、不揮発性メモリー130と、UI部140と、を備える。プロセッサー120は、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー130に記録された種々のプログラムを実行し印刷ジョブ生成装置100の各部を制御することができる。なお、プロセッサー120は、単一のチップで構成されていても良いし、複数のチップで構成されていても良い。
【0016】
UI部140は、任意の画像を表示するディスプレイ(表示部)を含む。またUI部140は、キーボード、タッチパッド等を含む。プロセッサー120は、UI部140のキーボードやタッチパッド等に対する操作に応じた入力内容を取得することができる。通信部150は、外部機器と有線または無線の各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。印刷ジョブ生成装置100は、当該通信部150を介して画像形成装置200と通信することが可能である。なお、通信部150を介してキーボード、マウス、ディスプレイが接続され、プロセッサー120は、これらの装置を介して各種の情報の入出力を行っても良い。
【0017】
本実施形態において印刷ジョブ生成装置100の利用者は、UI部140に対する操作によって印刷ジョブの生成を指示する。具体的には、利用者は、印刷するファイルの選択と版の選択を行い、印刷ジョブの生成を指示することができる。この機能を実現するため、プロセッサー120は、不揮発性メモリー130に記録された図示しない印刷ジョブ生成プログラムを実行することができる。印刷ジョブ生成プログラムが実行されると、プロセッサー120は、印刷ジョブ生成部120a、送信部120bとして機能する。
【0018】
印刷ジョブ生成部120aは、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成する機能をプロセッサー120に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、印刷ジョブは、拡張子が「prn」のファイル形式で生成され、prnファイルは、
図2に示すように、ファイルの先頭に位置するヘッダーと、ヘッダーに続くラスターイメージデータとを含んでいる。本実施形態において、prnファイルに含まれるラスターイメージデータは、ハーフトーン処理によって生成されたハーフトーンデータである。
【0019】
ハーフトーンデータは、各画素について、インク滴を吐出するか否かを示す値を含んでいる。本実施形態においては、さらに、吐出するインク滴の大きさを大中小の3種類で表すことができる。すなわち本実施形態のハーフトーン値は、インク滴を吐出しないことを示す値、小インク滴を吐出することを示す値、中インク滴を吐出することを示す値、大インク滴を吐出することを示す値の4種類の値を取り得る。
【0020】
プロセッサー120は、印刷ジョブ生成部120aの機能により、印刷対象として指定されたファイルを取得し、印刷対象の版の指定を受け付ける。印刷対象となるファイルは様々な形式のファイルであってよい。また、印刷対象のファイルは例えば版毎に複数のファイルに分けられていてもよく、印刷対象としてこれらの複数のファイルを指定することができてもよい。本実施形態では印刷対象画像のファイルは、1つの画像におけるRGB3色で表現されるカラーチャンネルの各画素の階調値と、スポットカラーすなわち特色としてのホワイトのチャンネルの各画素階調値と、特色としてのバーニッシュのチャンネルの各画素の階調値が含まれた1ファイルを印刷対象として取得するとして説明を続ける。
【0021】
印刷ジョブの作成を指示する利用者は、印刷対象のファイルに対して、印刷対象とする版を指定する。本実施形態において、利用者は、カラーチャンネルとホワイトチャンネルとバーニッシュチャンネルの全て、あるいはこれらのうちのいずれか1~2チャンネルを、印刷対象の版として指定することができる。カラーチャンネルの色は本実施形態においては、CMYKのインクによって印刷媒体上で表現される。また、ホワイトチャンネルの色はホワイトインクによって表現され、バーニッシュチャンネルの色はバーニッシュインクによって表現される。従って、利用者による印刷対象の版の指定は、印刷に使用されるインク色の利用者による指定と言い換えることもできる。
【0022】
印刷対象の版の指定を取得すると、プロセッサー120は、prnファイルのうちのヘッダーを生成する。ヘッダーは、当該prnファイルの印刷に使用されるインク色を示すインク色情報を含んで構成される。本実施形態において、インク色情報には、カラーインクの使用の有無を示すフラグと、ホワイトインクの使用の有無を示すフラグと、バーニッシュインクの使用の有無を示すフラグとが含まれる。プロセッサー120は、印刷ジョブ生成部120aの機能により、利用者による印刷対象の版の指定を、上述の3つのフラグの値として設定する。すなわち、カラー版が印刷対象の版として指定された場合、プロセッサー120はカラーインクの使用の有無を示すフラグに有りを示す値を設定し、カラー版が印刷対象として指定されなかった場合はフラグに無しを示す値を設定する。ホワイトインクの使用の有無を示すフラグおよびバーニッシュインクの使用の有無を示すフラグについても印刷対象としてホワイト版やバーニッシュ版が指定されたか否かに応じて同様に値が設定される。
【0023】
ヘッダーの生成が終了すると、プロセッサー120は、印刷対象として指定された版についてインク量データを生成する。例えば、カラー版が印刷対象として指定された場合、印刷対象画像のRGB各チャンネルの階調値についてCMYKへの色変換処理を行い、CMYK各インクにおけるインク量データを生成する。インク量データは、画素毎に多階調、例えば256階調の階調値として表される。印刷対象として指定された版にホワイトやバーニッシュが含まれている場合、プロセッサー120は、ホワイトの各階調値からホワイトのインク量データを生成し、バーニッシュの各階調値からバーニッシュのインク量データを生成する。
【0024】
続いてプロセッサー120は、インク量データからハーフトーンデータを生成する。プロセッサー120は、CMYKの各インク色のインク量データについてハーフトーン処理を行ってCMYK各インク色についてハーフトーンデータを取得する。また、プロセッサー120は、ホワイトチャンネルの階調値についてハーフトーン処理を行い、ホワイトのハーフトーンデータを取得する。さらにプロセッサー120は、バーニッシュチャンネルの階調値についてハーフトーン処理を行い、バーニッシュのハーフトーンデータを取得する。ハーフトーン処理は、ディザー法や誤差拡散法等によって行われる。
【0025】
各インク色のハーフトーンデータを取得すると、プロセッサー120は、
図2に示すように、画像の1ライン毎に、各インク色の当該ラインのハーフトーン処理後の値を並べる。なお、印刷対象として指定されなかった版のインク色について、プロセッサー120はハーフトーン処理を行わず、本実施形態においては、インクを吐出しないことを示すハーフトーン値である0を並べる。プロセッサー120は、画像の最終ラインまで各インク色のハーフトーン処理後の値あるいは0を並べ、
図2に示すようにヘッダーとハーフトーンデータを含むprnファイルを生成する。
【0026】
送信部120bは、生成した印刷ジョブを画像形成装置に送信する機能をプロセッサー120に実現させるプログラムモジュールである。プロセッサー120は、印刷ジョブ生成装置100の利用者の指示に応じて、送信部120bの機能により、通信部150を介してprnファイルを画像形成装置200に送信する。
【0027】
(1-2)画像形成装置の構成:
画像形成装置200は、プロセッサー220と、不揮発性メモリー230と、UI部240と、通信部250と、印刷部260と、を備える。プロセッサー220は、図示しないCPUやROMやRAM等を備え、不揮発性メモリー230に記録された種々のプログラムを実行し画像形成装置200の各部を制御することができる。なお、プロセッサー220は、単一のチップで構成されていても良いし、複数のチップで構成されていても良い。また、例えばCPUに変えてASICが採用されても良いし、CPUとASICとが協働する構成であっても良い。
【0028】
通信部250は、外部機器と有線または無線の各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェースを含む。また、通信部250は、画像形成装置200に装着された各種のリムーバブルメモリーと通信するためのインターフェースを含む。画像形成装置200は、当該通信部250を介して印刷ジョブ生成装置100と通信することが可能である。
【0029】
印刷部260は、本実施形態においては、プロセッサー220の指示に従って、インクジェット方式で各種の印刷媒体に印刷を実行することができる。印刷部260は、印刷媒体を搬送する搬送機構とインク滴を印刷媒体に吐出する印刷ヘッドを備えている。本実施形態の印刷ヘッドは、C,M,Y,K,Wh,Vrの6色のインクを吐出することができる。また、本実施形態においては、印刷ヘッドのノズルから大中小3種類のサイズのインク滴を吐出することができる。
【0030】
UI部240は、タッチパネルディスプレイや各種のキーやスイッチ等を含む。タッチパネルディスプレイは、プロセッサー220の制御に基づいて様々な情報を表示する表示パネルと、当該表示パネルに重ねられたタッチ検出パネルとを備え、人の指等によるタッチ操作を検出する。プロセッサー220は、UI部240を介して利用者の操作内容を取得することができる。また、プロセッサー220は、UI部240のディスプレイに各種の情報を表示し利用者に通知することができる。
【0031】
プロセッサー220は、不揮発性メモリー230に記録された図示しないプレビュー画像表示プログラムを実行することができる。プレビュー画像表示プログラムは、印刷ジョブに含まれる印刷対象の画像のプレビューを表示する機能をプロセッサー220に実現させる。プレビュー画像表示プログラムが実行されると、プロセッサー220は、受信部220a、処理部220b、表示制御部220cとして機能する。
【0032】
受信部220aは、印刷ジョブ生成装置100から送信された印刷ジョブを受信する機能をプロセッサー220に実現させるプログラムモジュールである。プロセッサー220は、受信部220aの機能により、印刷ジョブ生成装置100から送信されたprnファイルを、通信部250を介して取得し、不揮発性メモリー230に記録する。本実施形態においては、不揮発性メモリー230に記録されたprnファイルを画像形成装置200の利用者がUI部240を操作して選択すると、処理部220bによる処理が起動される。
【0033】
処理部220bは、判別機能とプレビュー画像生成機能とを有する。判別機能は、印刷ジョブに含まれるインク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別する機能である。プレビュー画像生成機能は、カラーインクおよび特色インクのインク色毎のラスターイメージデータをRGBのビットマップ形式に変換したプレビュー画像を生成する機能である。本実施形態において、プレビュー画像表示プログラムは、印刷対象の版のプレビュー画像を生成するが、印刷対象でない版のプレビュー画像は生成しない。
【0034】
そのため、処理部220bの判別機能によって、プロセッサー220は、印刷対象の版がいずれであるかをヘッダーのインク色情報に基づいて判別する。プロセッサー220は、処理部220bの判別機能により、不揮発性メモリー230からRAMにprnファイルを、先頭から順に読み出す。上述したようにprnファイルにおいてハーフトーンデータよりも前にヘッダーが含まれている。プロセッサー220は、ヘッダーを解析し、
図2に示すインク色情報を取得する。プロセッサー220はインク色情報により、印刷対象の版すなわち印刷に使用されるインク色を判別する。プロセッサー220は、CMYKを含むカラー版、ホワイト版、バーニッシュ版インクのうち、印刷対象の版がいずれであるかを判別する。
【0035】
なお、仮に、印刷ジョブにインク色情報が含まれていない場合、印刷対象の版であるか否かすなわちプレビュー画像を表示すべき版であるか否かを判断するために、各インク色のハーフトーンデータを全画素解析し、インク色毎に、インクを吐出する画素が1画素以上含まれているか否かを判定する必要がある。この場合、印刷対象の版の判別に要する時間が増大する。しかし、本実施形態によれば、ハーフトーンデータに基づいて各画素についてインク吐出の有無を判定することなく、インク色情報に基づいて印刷対象の版を判別することができる。
【0036】
次に、処理部220bのプレビュー画像生成機能について説明する。プロセッサー220は、処理部220bの機能により、インク色毎のラスターイメージデータ(本実施形態においてはハーフトーンデータ)に基づいて、各画素にRGB値を割り当てる。具体的には、まず、プロセッサー220は、不揮発性メモリー230から、prnファイルにおいてヘッダーに続いて格納されているハーフトーンデータを先頭から順に読み出す。一度に読み出す量は、例えば、プレビュー画像の所定ライン数分のRGBラスターイメージデータを生成するのに必要なライン数分である。
図3はハーフトーンデータからインク量データへの変換および縮小処理を経たデータの変遷の一例を示す図である。
図3におけるハーフトーンデータは、説明の便宜のため、4×4画素の範囲の各値をインク色毎に分けて表現している。なおprnファイルにおけるハーフトーンデータのデータ構造は、
図2に示した通りである。
図3に示すハーフトーンデータにおいて、S,M,Lはそれぞれ、小、中、大のインク滴を吐出する画素であることを示しており、空欄の画素はインクを吐出しない画素であることを示している。
【0037】
プロセッサー220は、ハーフトーンデータをインク量データに換算する。例えば本実施形態においては、インク量を256階調で表し、Sは100、Mは180、Lは255に換算する。インクを吐出しない画素については0が割り当てられる。
図3中央列に示される各インク色のインク量データにおいて、空欄の画素は0が割り当てられていることを示している。ハーフトーンデータをインク量データに換算した後、プロセッサー220は、プレビュー表示用のサイズに画像を縮小する。
図3の例では、4×4画素が1画素となるように、縮小することを示している。具体的には、プロセッサー220は、4×4画素のインク量データの和を16で除算して平均値を算出し、縮小後の1画素のインク量データとする。
図3の縮小画像のインク量データの列において、上段の数字はこのようにして算出された値を示している。なお、
図3に示す1/16の縮小は一例である。縮小率は、prnファイルにおけるラスターイメージの縦横画素数とプレビュー表示する場合の画像の縦横画素数等に応じて決定される。
【0038】
なお、上述の例では、1行ずつ全ての行を不揮発性メモリー230から順に読み出し、隣接するn×n画素の各インク量データの和をn×n画素で除算することにより、縮小後のインク量データを算出しているが、例えば画像の縦方向においては読み出す画素を間引きしてもよい。すなわち、m行目のK,C,M,Y,Wh,Vrのハーフトーンデータ(
図2を参照)を読み出し、当該ハーフトーンデータの横方向の隣接n画素のインク量データの平均値を縮小後の1画素のインク量データとしてもよい。その後、m+1行目からm+n-1行目までを読み飛ばし、次は、m+n行目のハーフトーンデータを読み出す。そしてm+n行目について上述と同様に、横方向の隣接n画素のインク量データから縮小後のインク量データを算出するようにしてもよい。
図3の縮小画像のインク量データの列において、下段の数字はこのようにして算出された値を示している。このようにすることによって、不揮発性メモリー230からのハーフトーンデータ読み込みに要する時間を削減することができ、その結果プレビュー画像生成に要する時間も削減することができる。
【0039】
印刷対象の版に対応するインク色の縮小後のインク量データを生成すると、プロセッサー220は、印刷対象の版を全て合成した全体プレビュー画像と、印刷対象の版毎のプレビュー画像とを、RGB形式のラスターイメージデータ(ビットマップデータ)に変換する。この変換は、変換関数による計算によって行われても良いし、LUTを用いて行われてもよい。ここではLUTを用いた変換例を説明する。例えば、(K,C,M,Y)の代表値と(R,G,B)とが対応付けられたカラー用LUTと、(Wh)の代表値毎に(R,G,B)を対応付けたホワイト用LUTと、(Vr)の代表値毎に(R,G,B)を対応付けたバーニッシュ用LUTが不揮発性メモリー230に記録されている。
【0040】
ホワイトインクやバーニッシュインクはそのもの自体で表現される色は白色、無彩色、あるいは無彩色に近い色や透明であるため、仮に白色や透明に近い色をプレビュー画像で再現したとしても、ホワイトインクやバーニッシュインクがどの部分に使用されているかを利用者が判別しにくい。特に全版を重ねた場合にホワイトインクやバーニッシュインクの使用部分を判別しにくい。そのため、本実施形態においては、ホワイトやバーニッシュの特色インクについて、印刷された状態の特色インクそのものの色とは異なる色を割り当ててRGB値で表現する構成を採用している。本実施形態においては、ホワイトインクの色は、無彩色で白色より明度が低い色(グレー)で表現される構成を採用する。従って、ホワイト用LUTによる変換後の(R,G,B)はR=G=Bである。ホワイトインクを表現するグレーもホワイトのインク量データの値に応じて既定の範囲内で階調を持って表現され得る。プレビュー画像においては、印刷媒体の色として多用される白色と区別されることが好ましく、ホワイトのインク量データが最大値である場合、変換後のR,G,Bの階調値は最大値より小さい値となることが好ましい。バーニッシュインクの色については、本実施形態においては印刷後の光沢感によって視認される薄い黄色で表現する構成を採用する。この場合、例えば薄い黄色に相当する特定の色相と彩度においてバーニッシュのインク量に応じて明度を変化させた色をRGBに換算した値がバーニッシュ用LUTに記録されている。従ってバーニッシュ版についてもバーニッシュのインク量データの値に応じて既定の範囲内で階調を持って表現され得る。なお、他の実施形態においては、バーニッシュインクの色はバーニッシュインクカートリッジの筐体の色で表現される構成を採用してもよい。無彩色や透明の特色は、後述するプレビュー画面におけるプレビュー画像の背景と区別しやすくするために、背景色とも異なる色であることが望ましい。
【0041】
プロセッサー220は、印刷対象の版に基づいて、全体プレビュー画像と、版毎のプレビュー画像とを生成する。まず、カラー、ホワイト、バーニッシュの全てが印刷対象である例について説明する。プロセッサー220は、カラーインクのインク量データと特色インクであるホワイトインクとバーニッシュインクのインク量データに基づいて、RGBのビットマップ形式の全体プレビュー画像を生成する。すなわち、プロセッサー220は、上述した3つのLUTと補間演算により(K,C,M,Y)に対応する(R,G,B)と、(Wh)に対応する(R,G,B)と、(Vr)に対応する(R,G,B)をそれぞれ算出する。プロセッサー220は、算出した3つの(R,G,B)を合成し、全体プレビュー画像を生成する。カラー版、ホワイト版、バーニッシュ版の全てを合成した場合の(R,G,B)は、例えば、3つの(R,G,B)のそれぞれに予め決められた係数s、t、u(s+t+u=1)を乗算して足し合わせることによって実現される。また、プロセッサー220は、1以上のインク色を含むグループ毎すなわち版毎にRGBのビットマップ形式のプレビュー画像を生成する。すなわちプロセッサー220は、カラー用LUTを用いて(K,C,M,Y)から変換した(R,G,B)によって、カラー版のプレビュー画像を生成する。またプロセッサー220は、ホワイト用LUTを用いて(Wh)から変換した(R,G,B)によって、ホワイト版のプレビュー画像を生成する。またプロセッサー220は、バーニッシュ用LUTを用いて(Vr)から変換した(R,G,B)によって、バーニッシュ版のプレビュー画像を生成する。なお、さらに、カラー版とホワイト版を合わせたプレビュー画像や、ホワイト版とバーニッシュ版を合わせたプレビュー画像や、バーニッシュ版とカラー版を合わせたプレビュー画像も生成されてもよい。
また、(K,C,M,Y,Wh、Vr)の代表値と(R,G,B)を対応付けたLUTが不揮発性メモリー230に記録されており、このLUTを用いて補間演算することにより、任意の(K,C,M,Y,Wh,Vr)の値から(R,G,B)を得る構成を採用してもよい。例えば、このLUTを用いて(K,C,M,Y,0,0)を(R,G,B)に変換しカラー版のプレビュー画像を生成してもよい。また例えばこのLUTを用いて(0,0,0,0,Wh,0)を(R,G,B)に変換しホワイト版のプレビュー画像を生成してもよい。
【0042】
次に、カラー版、ホワイト版、バーニッシュ版の全てではなくいずれかが印刷対象である例について説明する。例えばカラー版とホワイト版が印刷対象である場合、プロセッサー220は、カラー版とホワイト版を合わせた全体プレビュー画像と、カラー版のプレビュー画像と、ホワイト版のプレビュー画像の3つを生成する。また、例えば、バーニッシュ版のみが印刷対象である場合、プロセッサー220は、バーニッシュ版のプレビュー画像を生成する。この場合、このバーニッシュ版のプレビュー画像が全体プレビュー画像としても用いられることとなる。
【0043】
プロセッサー220は、生成したプレビュー画像を用いて汎用的なBMP形式のファイルを生成する。すなわちプロセッサー220は1つのプレビュー画像につき1ファイルを生成する。例えば、全体プレビュー画像を示すBMPファイルや、カラー版プレビュー画像を示すBMPファイルや、ホワイト版プレビュー画像を示すBMPファイル等が生成される。BMP形式のファイルは、ヘッダー部と画像データ部を含んだデータ構造を有する。画像データ部にはRGB形式のラスターイメージデータが含まれる。ヘッダー部の構成はBMP形式に準拠しており、例えば、画像データ部に含まれるラスターイメージデータが示す画像の縦横画素数や、1画素あたりの色数等の情報が含まれる。このように本実施形態によれば、汎用的なBMP形式のファイルをプレビュー表示用に生成することができる。レイヤー情報等を有するファイル形式のファイルからプレビュー画像を表示する構成よりも、本実施形態のように、BMP形式のファイルからプレビュー画像を表示する構成の方が複雑な処理が必要なく、表示に要する時間を短縮することができる。
【0044】
表示制御部220cは、処理部220bの機能により生成したプレビュー画像を表示部に表示する機能である。具体的には、プロセッサー220は、処理部220bによる判別結果に基づいて、印刷に使用されるインク色のハーフトーンデータが示すプレビュー画像を表示部に表示する。処理部220bのプレビュー画像生成機能によるプレビュー画像の生成が終了すると、プロセッサー220は、表示制御部220cの機能により、プレビュー画像をUI部240のディスプレイに表示する。本実施形態においては、プロセッサー220は、最初に全体プレビュー画像を表示する。
【0045】
図4Aおよび
図4Bは、プレビュー画面の一例を示す図である。プレビュー画面には、1つのprnファイルの画像に対して生成された複数のプレビュー画像から所望の版のプレビュー画像を選択するための版選択部10と、プレビュー画像表示部11とが含まれている。版選択部10には、プレビュー画像のサムネイルが表示され、プレビュー画像表示部11には、プレビュー画像が表示される。なお、サムネイルは例えば、処理部220bの機能によって生成されたプレビュー画像をさらに縮小して生成される。プレビュー画面の初期状態では、
図4Aに示すように、全体プレビュー画像が自動的に選択された状態であり、プロセッサー220は、版選択部10においても、プレビュー画像表示部11においても、全体プレビュー画像を表示する。
【0046】
図4Aに示す状態で、展開ボタン12が選択されると、
図4Bに示すように、プロセッサー220は、版選択部10に各版のプレビュー画像のサムネイルを表示する。ここで、プロセッサー220は、インク色情報に基づいて、印刷対象の版のみを表示する。
図4Bのように全体プレビュー画像の他、版毎のプレビュー画像のサムネイルが版選択部10に表示されている場合に、利用者がいずれかの版を選択すると、プロセッサー220は、選択された版のプレビュー画像をプレビュー画像表示部11に表示する。
【0047】
プレビュー画面には印刷ボタン13が含まれ、印刷ボタン13が選択されると、プロセッサー220は、プレビュー画面に表示されているprnファイルの印刷を行う。すなわち、プロセッサー220は、インク色情報によって印刷に使用することが特定されたインク色のハーフトーンデータに基づいて、印刷部260を駆動し印刷を実行する。
【0048】
(2)印刷ジョブ生成処理:
図5は、印刷ジョブ生成装置100のプロセッサー120が印刷ジョブ生成部120aの機能により実行する、印刷ジョブ生成処理を示すフローチャートである。印刷ジョブ生成処理は印刷ジョブ生成プログラムが印刷ジョブ生成装置100の利用者によって起動された場合に開始される。印刷ジョブ生成処理が開始されると、プロセッサー120は、印刷ジョブ生成部120aの機能により、印刷データおよび版の指定を受け付ける(ステップS100)。すなわち、プロセッサー120は、印刷対象とするファイルを受け付ける。また、プロセッサー120は、受け付けたファイルの印刷に関し、カラー、ホワイト、バーニッシュの少なくともいずれかを印刷対象の版として指定するようにUI部140の画面に提示する。利用者が印刷対象の版を指定し、印刷ジョブの生成を指示したことを受け付けると、プロセッサー120は、印刷ジョブ生成部120aの機能により、指定された版のインク量データを生成する(ステップS105)。すなわち、プロセッサー120は、印刷対象のファイルに含まれる各色の階調値から、印刷対象として指定された版のインク色毎にインク量データを生成する。
【0049】
続いて、プロセッサー120は、インク量データからハーフトーンデータを生成する(ステップS110)。すなわちプロセッサー120は、指定された版のインク量データを対象にハーフトーン処理を行い、ハーフトーンデータを得る。またプロセッサー120は、指定されていない版については、各画素に0を設定したハーフトーンデータを生成する。続いて、プロセッサー120は、インク色情報を付加したヘッダーとハーフトーンデータを含むprnファイルを生成する(ステップS115)。すなわち、プロセッサー120は、ステップS100にて受け付けた印刷対象の版の指定に基づいて、インク色情報の各フラグに印刷対象か否かを示す値を設定する。そして、プロセッサー120は、インク色情報を含むヘッダーを生成し、ヘッダーに続いてステップS110にて生成したハーフトーンデータを
図2に示す順序で並べる。このようにしてプロセッサー120は、印刷ジョブとしてのprnファイルを生成する。生成されたprnファイルは、送信部120bの機能により、画像形成装置200に受け渡される。
【0050】
(3)印刷処理:
図6は、画像形成装置200のプロセッサー220が実行する印刷処理のフローチャートである。プロセッサー220は、受信部220aの機能によりprnファイルを受信し不揮発性メモリー230に記録する。不揮発性メモリー230に記録されたprnファイルを利用者が選択すると、プロセッサー220は印刷処理を開始する。印刷処理が開始されると、プロセッサー220は、処理部220bの機能により、prnファイルを受け付ける(ステップS200)。すなわちプロセッサー220は、印刷ジョブとしてprnファイルを不揮発性メモリー230からRAMに取得する。例えばここでは、ヘッダーに相当するサイズ分RAMに取得される。
【0051】
続いて、プロセッサー220は、処理部220bの機能により、prnファイルのヘッダーを解析し(ステップS205)、印刷する版を特定する(ステップS210)。すなわち、プロセッサー220は、RAMに取得したprnファイルのヘッダーの内容を解析し、ヘッダーに含まれるインク色情報を取得し、インク色情報に基づいて、カラー、ホワイト、バーニッシュのうち印刷対象とされている版を特定する。
【0052】
続いて、プロセッサー220は、処理部220bの機能により、印刷対象の版のハーフトーンデータに基づいて、プレビュー画像を生成する(ステップS215)。すなわち、プロセッサー220は、印刷対象の版のプレビュー画像を示すビットマップ形式のファイルと全体プレビュー画像を示すビットマップ形式のファイルを生成し、不揮発性メモリー230に記録する。ステップS215の処理内容について詳細は後述する。続いて、プロセッサー220は、表示制御部220cの機能により、全体のプレビュー画像を表示する(ステップS220)。すなわち、プロセッサー220は、
図4Aに示すように、全体プレビュー画像を表示する。
【0053】
続いて、プロセッサー220は、表示制御部220cの機能により、展開ボタンが押下され且つ版選択がなされたか否かを判定し(ステップS225)、展開ボタンが押下され且つ版選択がなされたと判定された場合、プロセッサー220は、表示制御部220cの機能により、選択された版のプレビュー画像を表示させる(ステップS230)。すなわち、プロセッサー220は、
図4Aに示す展開ボタン12が押下された場合に、
図4Bに示すように、版選択部10において全体プレビュー画像のサムネイルに続いて印刷対象の版毎のプレビュー画像のサムネイルを表示する。版毎のプレビュー画像のサムネイルのうちのいずれかが選択されると、プロセッサー220はプレビュー画像表示部11に選択された版のプレビュー画像を表示する。
【0054】
ステップS230を実行後、または、ステップS225において展開ボタン12が押下されたと判定されなかった場合、プロセッサー220は、印刷ボタン13が押下されたか否かを判定し(ステップS235)、印刷ボタン13が押下されたと判定されなかった場合、ステップS225に戻る。ステップS235において印刷ボタン13が押下されたと判定された場合、プロセッサー220は、印刷を実行する(ステップS240)。すなわち、プロセッサー220は、インク色情報によって印刷に使用することが特定されたインク色のハーフトーンデータに基づいて、印刷部260の印刷ヘッドを駆動し、搬送機構によって印刷媒体を搬送させて印刷を実行する。
【0055】
(3-1)プレビュー画像生成処理:
図7は、
図6に示す印刷処理のステップS215で実行されるプレビュー画像生成処理の詳細を示すフローチャートである。プレビュー画像生成処理が開始されると、プロセッサー220は、prnファイルからハーフトーンデータを抽出する(ステップS300)。すなわち、ヘッダーに続くハーフトーンデータを先頭から順にRAMに読み出し、インク色情報に基づき印刷対象であることが特定された版のインク色のハーフトーンデータをインク量データに変換するために抽出する。
【0056】
続いて、プロセッサー220は、ハーフトーンデータからインク量データに変換する(ステップS305)。すなわち、プロセッサー220は、S,M,Lのいずれかのサイズのインク滴が吐出される画素についてはインク滴サイズに応じたインク量換算値に変換し、インク滴を吐出しない画素はインク量0に変換する。
【0057】
続いて、プロセッサー220は、プレビューサイズに変換する(ステップS310)。すなわち、プロセッサー220は、予め決められたサイズに収まるように、縦横比率を保ったままインク量データの縦横サイズを縮小する。続いて、プロセッサー220は、プレビューサイズに変換後のインク量データをRGBデータに変換する(ステップS315)。すなわちプロセッサー220は、LUTを用いてインク量データをRGBデータに変換する。
【0058】
続いて、プロセッサー220は、RGBデータからBMPファイル形式のファイルを生成する(ステップS320)。すなわち、プロセッサー220は、ステップS315で生成したRGBデータを汎用のビットマップ形式のファイルとして生成する。
【0059】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、画像形成装置としては、プリンター以外にも例えば、印刷機能を備えた複合機を想定してよい。
【0060】
印刷ジョブ生成部は、印刷に使用されるインク色を示すインク色情報と、インク色毎のラスターイメージデータと、を含む印刷ジョブを生成することができればよい。インク色情報は、対象の印刷ジョブの印刷を実行する際に使用されるインク色を示していれば良く、様々な構成を採用可能である。例えば、上記実施形態に示すように、カラーインクと特色インクのそれぞれについて、使用の有無を示すフラグで表されても良い。カラーインクは、カラーインクを構成するインクの組み合わせによって既定の色域内の色を表現可能なインクであり、明度も調整可能である。特色インクは、色域の特定の範囲を広げたり、特定の用途の印刷を行うために用いられるインクである。
【0061】
また、カラーインクの使用の有無を示すフラグは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの各インクについて使用の有無を示すフラグを含む構成であってもよい。この場合、シアン版、マゼンダ版、イエロー版、ブラック版毎にプレビュー画像を生成および表示する構成を採用してもよい。なお、カラーインクには、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンダ(Lc)、ライトブラック(Lk)が含まれてもよく、カラーインクの使用の有無を示すフラグには、これらの各インクについて使用の有無を示すフラグが含まれてもよい。この場合も、ライトシアン版、ライトマゼンダ版、ライトブラック版毎にプレビュー画像を生成および表示する構成が採用されてもよい。また、特色インクには、有彩色インク、例えばレッド(Rd)が含まれてもよく、インク色情報には、レッドインクの使用の有無を示すフラグが含まれてもよい。この場合、インク色情報に基づいて、レッド版のプレビュー画像を生成および表示する構成が採用されてもよい。
【0062】
また、特色インクには、メタリック(銀色)が含まれてもよく、インク色情報には、メタリックインクの使用の有無を示すフラグが含まれてもよい。この場合、インク色情報に基づいて、メタリック版のプレビュー画像を生成および表示する構成が採用されてもよい。なお、メタリックインクは銀色を表現するために使用される以外にも、例えば、下地としてメタリックインク層を形成し、上層にイエローインク層を形成することで金色を表現することが可能である。バーニッシュインクは、保護層として用いることが可能である他、光沢感等の質感の調整のために使用可能である。ホワイトインクは、例えば下地として形成し上層に形成される画像の発色をよくするために使用され得る。
【0063】
なお、フラグにて各色の使用の有無を示す構成以外にも、例えば、インク色情報は、使用されるインク色を示す識別情報が含まれる構成であってもよい。この場合、使用されないインク色を示す識別情報はインク色情報に含まれなくてもよく、さらに使用されないインク色についてのラスターイメージデータは印刷ジョブに含まれなくてもよい。こうすることにより、印刷ジョブファイルのデータサイズを削減可能である。
【0064】
また、インク色情報は、印刷ジョブに含まれていればよい。例えばラスターイメージデータの前にヘッダーにインク色情報が含まれていても良い。他の例としては、ラスターイメージデータの後に続くフッターにインク色情報が含まれていても良い。フッターにインク色情報を含める構成の場合、印刷ジョブ生成部は、ラスターイメージデータに基づいて各画素についてインクの吐出の有無を判定し、第1インクを吐出する画素が1画素以上含まれている場合に、第1インクを使用することを示すインク色情報を含むフッターを付加した印刷ジョブを生成する構成であってもよい。この構成の場合、利用者によって印刷対象の版として指定されていたとしても、実際には当該版においてインク滴が吐出される画素が1画素もない場合には、プレビュー画像表示対象から除外するということも可能である。画像形成装置側ではprnファイルを受信すると、ヘッダーに加え、フッターの内容も解析し、フッターに含まれるインク色情報から印刷対象の版を判別する。
【0065】
prnファイルに含まれるラスターイメージデータは、インク色毎のラスターイメージデータであればよく、ハーフトーン処理後のハーフトーンデータであってもよいし、ハーフトーン処理前のインク量データであってもよい。また、ハーフトーンデータは、インク滴を吐出するか否かを示す2値データであってもよい。
【0066】
送信部は、生成した印刷ジョブを画像形成装置に送信することができればよく、種々の構成を採用可能である。例えば、印刷ジョブとしてのprnファイルを作成し終える前に送信し始めても良いし、prnファイルの作成を終えてから送信する構成であってもよい。また、prnファイルは、有線または無線通信で送信されてもよいし、リムーバブルメモリーを介してprnファイルの受け渡しが行われても良い。
【0067】
受信部は、送信部から送信された印刷ジョブを受信することができればよい。prnファイルを受信し不揮発性メモリーに記録した後、自動的に後述する処理部による処理が起動する構成であってもよいし、受信したprnファイルを利用者が選択したことにより、後述する処理部が起動する構成であってもよい。
【0068】
処理部は、印刷ジョブに含まれるインク色情報に基づいて、印刷に使用されるインク色と使用されないインク色を判別することができればよく、種々の構成を採用可能である。インク色情報は、複数のインク色を含むインク色グループのうちのいずれかのインク色が使用される場合に、当該インク色グループが印刷に使用されることを示す情報であってもよい。また、インク色情報は、印刷に使用されるか否かをインク色毎に示す情報であってもよい。例えば、印刷ジョブにインク色情報が含まれるか否かによって判別方法を切り替えることができてもよい。印刷ジョブにインク色情報が含まれる場合、ラスターイメージデータに基づいて各画素についてインク吐出の有無を判定することなくインク色情報に基づいて使用されるインク色を判別するように構成されてよい。印刷ジョブにインク色情報が含まれない場合、ラスターイメージデータに基づいて各画素についてインク吐出の有無を判定し、インクを吐出する画素が1画素以上含まれているか否かに基づいて、印刷に使用されるインク色を判別するように構成されてもよい。
【0069】
処理部において、ハーフトーンデータをインク量データに変換する際に、上記実施形態においては、ハーフトーン値(S,M,L)を(100,180,255)のような1対1のインク量値に変換する構成を採用していたが、例えば周囲のハーフトーン値の分布状況に応じて(S,M,L)の変換後の各値が既定範囲内で変動する構成であってもよい。
【0070】
表示制御部は、処理部の判別機能による判別結果に基づいて、印刷に使用されるインク色のラスターイメージが示すプレビュー画像を表示部に表示することができればよい。インク色毎に表示してもよいし、1以上のインク色からなるグループにおいて合成されたプレビュー画像を表示してもよい。
【0071】
印刷に使用されないインク色の版については、プレビュー画像を表示しない構成であってもよいし、例えば画像の大きさを示す枠だけを表示して空である(この版においてインクは吐出されない)ことを示す構成であってもよい。
【0072】
プレビュー画像生成処理のステップS300において、不揮発性メモリーからRAMに読み出すハーフトーンデータは、印刷対象の版のハーフトーンデータだけであってもよい。例えば印刷対象の版がバーニッシュ版だけである場合、不揮発性メモリーからRAMに読み出されるハーフトーンデータもバーニッシュ版のみとし、カラー版とホワイト版は読み出されなくても良い。そうすることによって、ハーフトーンデータの読み出しに要する時間を短縮でき、その結果、プレビュー画像生成に要する時間も短縮できる。また、縦方向のラインを間引き、対象とするラインのハーフトーンデータを読み出し間引かれたラインのハーフトーンデータは読み出さない構成と組み合わせることにより、さらにプレビュー画像生成に要する時間を短縮できる。
【0073】
上記実施形態において、カラー、ホワイト、バーニッシュの全てが印刷対象である例に全体プレビュー画像と、カラー版プレビュー画像と、ホワイト版プレビュー画像と、バーニッシュ版プレビュー画像が生成されることを説明した。すなわち全体プレビュー画像と、版毎のプレビュー画像を生成することを説明したが、全ての版数より少ない複数の版を合成したプレビュー画像が生成されてもよい。従って上述の例においては、カラー版とホワイト版を合成したプレビュー画像と、ホワイト版とバーニッシュ版を合成したプレビュー画像と、バーニッシュ版とカラー版を合成したプレビュー画像がさらに生成されてもよい。そして、表示制御部では、複数の版をプレビュー対象として選択することができ、複数の版が選択された場合に選択された版の組み合わせに応じたプレビュー画像を表示することができてもよい。
【0074】
さらに、本発明のように、コンピューターが実行するプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリーであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0075】
10…版選択部、11…プレビュー画像表示部、12…展開ボタン、13…印刷ボタン、100…印刷ジョブ生成装置、120…プロセッサー、120a…印刷ジョブ生成部、120b…送信部、130…不揮発性メモリー、140…UI部、150…通信部、200…画像形成装置、220…プロセッサー、220a…受信部、220b…処理部、220c…表示制御部、230…不揮発性メモリー、240…UI部、250…通信部、260…印刷部