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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/0638 20060101AFI20240806BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240806BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20240806BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20240806BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20240806BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F16D25/0638
B60K6/48
B60K6/40 ZHV
B60K6/387
F16D25/12 C
B60K17/04 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020141807
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2021055835
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019178103
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】表 賢司
(72)【発明者】
【氏名】石井 克久
(72)【発明者】
【氏名】森田 桂史
(72)【発明者】
【氏名】山下 真吾
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 優
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185028(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187597(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00-25/12
B60K 6/48
B60K 6/40
B60K 6/387
B60K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
ステータ、及び前記ステータに対して径方向の内側に配置されたロータを有し、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記回転電機の側から伝達される回転を前記車輪の側へ伝達する動力伝達機構と、
前記ロータを支持するロータ支持部材と、
軸方向に並んで配置された第1摩擦板及び第2摩擦板、並びに前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板を前記軸方向に押圧する第1ピストン部を有する第1係合装置と、を備え、
前記第1係合装置は、前記入力部材と前記回転電機との間の動力伝達経路に配置されている、車両用駆動装置であって、
前記第1摩擦板を前記径方向の外側から支持する第1外側支持部材と、
前記第2摩擦板を前記径方向の内側から支持する第1内側支持部材と、を更に備え、
前記第1内側支持部材は、前記軸方向に沿って延在する筒状に形成されて、前記第2摩擦板を支持する筒状支持部と、前記筒状支持部から前記径方向の内側に延在するように形成された径方向延在支持部と、を備え、
前記径方向延在支持部は、前記入力部材と前記第1内側支持部材とが一体的に回転するように、前記入力部材に連結され、
前記第1ピストン部は、前記径方向延在支持部に対して前記軸方向の一方側である軸方向第1側に配置され、
前記ロータ支持部材は、前記軸方向に沿って延在する筒状に形成されて、前記ロータを前記径方向の内側から支持する筒状部と、前記筒状部に対して前記径方向の内側において前記径方向に沿って延在するように形成されて、前記筒状部に連結されたフランジ部と、を備え、
前記フランジ部に対して前記軸方向第1側であって、前記筒状部に対して前記径方向の内側に、前記第1係合装置が配置され、
前記第1外側支持部材は、前記軸方向第1側に向けて開口すると共に、前記筒状部と一体的に回転するように構成され、
前記筒状部の内周部には、周方向に沿って延在する環状に形成された環状部材が固定され、
前記環状部材は、前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板に対して前記軸方向第1側であって、前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第1ピストン部及び前記第2摩擦板の少なくとも一方と重複する位置に配置され、
前記第1ピストン部は、前記環状部材に対して前記軸方向第1側とは反対側である軸方向第2側において、前記第2摩擦板に前記軸方向第1側から当接することにより、前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板を前記軸方向に押圧する、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記筒状部の内周面の直径をD1とし、
前記第1ピストン部の最外径をD2とし、
前記筒状部の内周面から前記環状部材の内周端までの前記径方向の距離をD3とし、
D1-D2<D
である、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記筒状部には、前記ロータの冷却用の油路に連通する第1供給孔が形成され、
前記第1供給孔は、前記環状部材に対して、前記軸方向第2側において、前記筒状部の内周部に開口するように形成されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1内側支持部材の内周部に対して、前記径方向の内側から油を供給する供給部を更に備え、
前記第1内側支持部材には、当該第1内側支持部材を前記径方向に貫通する第2供給孔が形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記軸方向に並んで配置された第3摩擦板及び第4摩擦板、並びに前記第3摩擦板及び前記第4摩擦板を前記軸方向に押圧する第2ピストン部を有する第2係合装置と、
前記第3摩擦板を前記径方向の外側から支持する第2外側支持部材と、
前記第4摩擦板を前記径方向の内側から支持する第2内側支持部材と、を更に備え、
前記第2係合装置は、前記第1係合装置に対して前記軸方向第2側に隣接して配置され、
前記第2外側支持部材は、前記ロータ支持部材と一体的に回転するように構成され、
前記第2ピストン部は、前記ロータ支持部材と一体的に回転するように支持されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記第2係合装置よりも前記径方向の内側まで延在している、請求項5に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記第2係合装置は、前記回転電機と前記動力伝達機構との間の動力伝達経路に配置されている、請求項5又は6に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記動力伝達機構は、変速比が異なる複数の変速段を備え、前記回転電機の側から伝達される回転を、形成された前記変速段に応じた変速比で変速する変速機である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、ステータ、及び当該ステータに対して径方向の内側に配置されたロータを有し、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機の側から伝達される回転を車輪の側へ伝達する動力伝達機構と、ロータを支持するロータ支持部材と、摩擦係合装置と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置(1)では、ロータ支持部材(30)は、軸方向(L)に沿って延在する筒状に形成されて、ロータ(Ro)を径方向(R)の内側(R1)から支持する筒状部(31)と、当該筒状部(31)から径方向(R)の内側(R1)に延在するように形成されて、第1係合装置(CL1)に対して軸方向(L)の一方側(L2)に隣接して配置されたフランジ部(35)と、を備えている。つまり、ロータ支持部材(30)は、軸方向(L)の他方側(L1)に向けて開口する有底筒状に形成されている。そして、フランジ部(35)に対して軸方向(L)の一方側(L1)であって、筒状部(31)に対して径方向(R)の内側(R1)に、摩擦係合装置としての第1係合装置(CL1)及び第2係合装置(CL2)が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/057190号(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用駆動装置(1)の製造工程においては、ロータ(Ro)、ロータ支持部材(30)、及び摩擦係合装置(CL1,CL2)等を一体的に組み付けて第1アセンブリを作製する。その後、第1アセンブリを、当該第1アセンブリとは別の第2アセンブリに組み付ける。一般的に、第1アセンブリの第2アセンブリへの組み付け作業は、ロータ(Ro)の回転軸心(X)が鉛直方向に沿うように、第1アセンブリの姿勢を維持した状態で行われる。しかし、第1アセンブリを構成する一部の要素が、ロータ支持部材(30)に対して軸方向に相対移動可能に組み付けられている場合、当該要素の自重により、ロータ支持部材(30)の開口から第1アセンブリの一部が脱落する場合があった。そのため、脱落防止用の治具を取り付けるなどの対策が必要となり、製造工程が複雑化する問題があった。
【0006】
そこで、ロータとロータ支持部材と摩擦係合装置とを含む第1アセンブリを、当該第1アセンブリとは別の第2アセンブリに組み付ける場合に、第1アセンブリの一部がロータ支持部材の開口を介して脱落することを規制できる構造を備えた車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
ステータ、及び前記ステータに対して径方向の内側に配置されたロータを有し、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、
前記回転電機の側から伝達される回転を前記車輪の側へ伝達する動力伝達機構と、
前記ロータを支持するロータ支持部材と、
軸方向に並んで配置された第1摩擦板及び第2摩擦板、並びに前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板を前記軸方向に押圧する第1ピストン部を有する第1係合装置と、を備え、
前記第1係合装置は、前記入力部材と前記回転電機との間の動力伝達経路に配置されている、車両用駆動装置であって、
前記第1摩擦板を前記径方向の外側から支持する第1外側支持部材と、
前記第2摩擦板を前記径方向の内側から支持する第1内側支持部材と、を更に備え、
前記第1内側支持部材は、前記軸方向に沿って延在する筒状に形成されて、前記第2摩擦板を支持する筒状支持部と、前記筒状支持部から前記径方向の内側に延在するように形成された径方向延在支持部と、を備え、
前記径方向延在支持部は、前記入力部材と前記第1内側支持部材とが一体的に回転するように、前記入力部材に連結され、
前記第1ピストン部は、前記径方向延在支持部に対して前記軸方向の一方側である軸方向第1側に配置され、
前記ロータ支持部材は、前記軸方向に沿って延在する筒状に形成されて、前記ロータを前記径方向の内側から支持する筒状部と、前記筒状部に対して前記径方向の内側において前記径方向に沿って延在するように形成されて、前記筒状部に連結されたフランジ部と、を備え、
前記フランジ部に対して前記軸方向第1側であって、前記筒状部に対して前記径方向の内側に、前記第1係合装置が配置され、
前記第1外側支持部材は、前記軸方向第1側に向けて開口すると共に、前記筒状部と一体的に回転するように構成され、
前記筒状部の内周部には、周方向に沿って延在する環状に形成された環状部材が固定され、
前記環状部材は、前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板に対して前記軸方向第1側であって、前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第1ピストン部及び前記第2摩擦板の少なくとも一方と重複する位置に配置されている点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、ロータとロータ支持部材と第1係合装置とを含む第1アセンブリを、当該第1アセンブリとは別の第2アセンブリに組み付ける場合において、第1係合装置がロータ支持部材に対して軸方向第1側に相対移動したとしても、第1ピストン部及び第2摩擦板の少なくとも一方が環状部材に当接する。これにより、第1係合装置の第1摩擦板が、ロータ支持部材の軸方向第1側の開口よりも軸方向第1側へ相対移動することを規制できる。つまり、第1摩擦板がロータ支持部材から外れることを規制することができる。したがって、ロータとロータ支持部材と第1係合装置とを含む第1アセンブリを、当該第1アセンブリとは別の第2アセンブリに組み付ける場合に、第1アセンブリの一部がロータ支持部材の開口を介して脱落することを規制できる構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図
図3】実施形態に係る車両用駆動装置の部分拡大断面図
図4】実施形態に係る車両用駆動装置の部分拡大断面図
図5】第1アセンブリの構成を示す分解図
図6】第1アセンブリの第2アセンブリへの組み付け作業を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。図1に示すように、車両用駆動装置100は、内燃機関EG及び回転電機MGの双方を備えた車両(ハイブリッド車両)を駆動するための装置である。具体的には、車両用駆動装置100は、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
【0011】
以下の説明では、特に明記している場合を除き、回転電機MGの回転軸心を基準として、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向」を定義している。そして、径方向Rにおいて、回転電機MGの回転軸心側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。
なお、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。
【0012】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、入力部材Iと、回転電機MGと、動力伝達機構Tと、第1係合装置CL1と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、第2係合装置CL2と、カウンタギヤ機構CGと、差動歯車機構DFと、一対の出力部材Oと、を更に備えている。本実施形態では、入力部材Iの一部、出力部材Oの一部、第1係合装置CL1、第2係合装置CL2、回転電機MG、動力伝達機構T、カウンタギヤ機構CG、及び差動歯車機構DFが、ケース1内に収容されている。
【0013】
回転電機MGは、車輪Wの駆動力源として機能する。回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、蓄電装置(バッテリやキャパシタ等)と電気的に接続されている。回転電機MGは、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関EGのトルクや車両の慣性力により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0014】
内燃機関EGは、回転電機MGと同様に、車輪Wの駆動力源として機能する。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0015】
入力部材Iは、内燃機関EGに駆動連結されている。本実施形態では、入力部材Iは、伝達されるトルクの変動を減衰するダンパ装置(図示を省略)を介して内燃機関EGの出力軸(クランクシャフト等)に駆動連結されている。
【0016】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0017】
第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2のそれぞれは、2つの回転要素間の動力伝達を断接する係合装置である。図2に示すように、本実施形態では、第1係合装置CL1と第2係合装置CL2とは、軸方向Lに並んで配置されている。また、本実施形態では、回転電機MGと動力伝達機構Tとが、軸方向Lに並んで配置されている。そして、第2係合装置CL2が、第1係合装置CL1に対して軸方向Lにおける動力伝達機構Tの側に配置されている。
【0018】
以下の説明では、軸方向Lにおいて、第2係合装置CL2に対して第1係合装置CL1が配置された側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、第1係合装置CL1は、入力部材Iと回転電機MGとの間の動力伝達経路に配置されている。そのため、第1係合装置CL1は、入力部材Iと回転電機MGとを連結又は連結解除する。本実施形態では、第1係合装置CL1は、当該第1係合装置CL1に供給される油圧に基づいて、係合の状態(直結係合状態/スリップ係合状態/解放状態)が制御される。
【0020】
本実施形態では、第2係合装置CL2は、回転電機MGと動力伝達機構Tとの間の動力伝達経路に配置されている。そして、第2係合装置CL2は、動力伝達機構Tと回転電機MGとを連結又は連結解除する。本実施形態では、第2係合装置CL2は、当該第2係合装置CL2に供給される油圧に基づいて、係合の状態(直結係合状態/スリップ係合状態/解放状態)が制御される。
【0021】
動力伝達機構Tは、回転電機MGの側から伝達される回転を車輪Wの側へ伝達するように構成されている。本実施形態では、動力伝達機構Tは変速機TMである。
【0022】
変速機TMは、変速比が異なる複数の変速段を備え、回転電機MGの側から伝達される回転を、形成された変速段に応じた変速比で変速する装置である。本実施形態では、変速機TMは、当該変速機TMの入力要素である変速入力軸Mに入力される回転及びトルクを、各時点における変速比に応じて変速するとともにトルク変換して、変速機TMの出力要素である変速出力ギヤG1に伝達する。また、本実施形態では、変速機TMは、複数の変速用係合装置を備え、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動有段変速機である。なお、変速機TMとして、変速比を無段階に変更可能な自動無段変速機や、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式有段変速機等を用いても良い。
【0023】
カウンタギヤ機構CGは、カウンタ入力ギヤG2と、カウンタ出力ギヤG3と、を備えている。カウンタ入力ギヤG2は、カウンタギヤ機構CGの入力要素である。カウンタ入力ギヤG2は、変速出力ギヤG1に噛み合っている。カウンタ出力ギヤG3は、カウンタギヤ機構CGの出力要素である。カウンタ出力ギヤG3は、カウンタ入力ギヤG2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、カウンタ出力ギヤG3は、軸方向Lに沿って延在するカウンタ軸Sを介して、カウンタ入力ギヤG2と連結されている。図示の例では、カウンタ出力ギヤG3は、カウンタ入力ギヤG2よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0024】
差動歯車機構DFは、カウンタギヤ機構CGのカウンタ出力ギヤG3と噛み合う差動入力ギヤG4を備えている。差動歯車機構DFは、差動歯車機構DFは、差動入力ギヤG4の回転を、それぞれ車輪Wに駆動連結された一対の出力部材Oに分配する。
【0025】
以上のように構成された車両用駆動装置100は、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の係合の状態を切り替えることにより、内燃機関EG及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。なお、本実施形態に係る車両用駆動装置100では、入力部材Iと変速入力軸Mとが同軸上に配置されると共に、一対の出力部材Oが入力部材I及び変速入力軸Mとは異なる軸上に互いに平行に配置された複軸構成とされている。このような構成は、例えばFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載される車両用駆動装置100の構成として適している。
【0026】
また、車両用駆動装置100では、第1係合装置CL1を直結係合状態として、回転電機MGの駆動力により内燃機関EGを始動する際に、第2係合装置CL2を滑り係合状態とすることにより、内燃機関EGの始動動時のトルク変動を車輪Wに伝達しないようにすることができる。ここで、「直結係合状態」とは、摩擦係合装置の一対の摩擦板間に回転速度差(滑り)がない係合状態である。また、「滑り係合状態」とは、摩擦係合装置の一対の摩擦板間に回転速度差(滑り)がある係合状態である。
【0027】
図2に示すように、本実施形態では、ケース1は、第1側壁部11と、第2側壁部12と、筒状突出部13と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係るケース1は、軸方向Lにおける第1側壁部11と第2側壁部12との間において、回転電機MGを径方向外側R2から覆う周壁部を備えている。
【0028】
第1側壁部11は、径方向Rに沿って延在している。第1側壁部11は、回転電機MG及び第1係合装置CL1に対して軸方向第1側L1に配置されている。第1側壁部11には、入力部材Iが軸方向Lに貫通している。なお、入力部材Iにおける第1側壁部11よりも軸方向第1側L1の部分は、上述のダンパ装置に連結されている。
【0029】
第2側壁部12は、径方向Rに沿って延在している。第2側壁部12は、回転電機MG及び第2係合装置CL2に対して、軸方向第2側L2に配置されている。第2側壁部12には、変速入力軸Mが軸方向Lに貫通している。
【0030】
筒状突出部13は、第2側壁部12から軸方向Lに突出する筒状に形成されている。本実施形態では、筒状突出部13は、第2側壁部12から軸方向第1側L1に突出するように形成されている。そして、筒状突出部13は、変速入力軸Mの径方向外側R2を覆う筒状に形成されている。また、本実施形態では、筒状突出部13の軸方向第1側L1の端部は、入力部材Iの軸方向第2側L2の端部よりも軸方向第2側L2に位置している。つまり、筒状突出部13は、入力部材Iに対して軸方向Lに離間している。
【0031】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、筒状突出部13は、内側突出部131と、外側突出部132と、を有している。内側突出部131と外側突出部132とは、内側突出部131の外周面と外側突出部132の内周面とが接触した状態で互いに連結されている。外側突出部132の軸方向第1側L1の端部は、内側突出部131の軸方向第1側L1の端部よりも軸方向第1側L1に位置している。
【0032】
本実施形態では、入力部材Iは、軸方向Lの一方側(ここでは、軸方向第2側L2)の端面が開口する筒状に形成された入力筒状部Iaを備えている。そして、変速入力軸Mは、入力筒状部Iaの径方向内側R1に挿入された挿入部Maを備えている。なお、入力部材Iと変速入力軸Mとは、相対的に回転するように構成されている。
【0033】
図2に示すように、回転電機MGは、ステータStと、当該ステータStに対して径方向内側R1に配置されたロータRoと、を備えている。ステータStは、非回転部材に固定されている。本実施形態では、ステータStは、ボルト等の固定部材によってケース1の第1側壁部11に固定されている。本実施形態では、ステータStは、ステータコアStcと、当該ステータコアStcから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)に突出するコイルエンド部Ceが形成されるようにステータコアStcに巻装されたコイルCと、を有している。ロータRoは、ステータStに対して回転自在に構成されている。本実施形態では、ロータRoは、ロータコアRocと、当該ロータコアRocを軸方向Lの両側から保持する一対の保持部材Hと、ロータコアRoc内に配置された永久磁石PMと、を有している。本実施形態では、ステータコアStc及びロータコアRocのそれぞれは、円環板状の磁性体(例えば、電磁鋼板等)を軸方向Lに複数積層して形成されている。
【0034】
車両用駆動装置100は、ロータRoを支持するロータ支持部材2を備えている。ロータ支持部材2は、筒状部21と、フランジ部22と、を備えている。
【0035】
筒状部21は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されて、ロータRoを径方向内側R1から支持する。筒状部21は、ロータRoと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、筒状部21の外周面に、ロータRoが取り付けられている。なお、筒状部21の外周面へのロータRoの取り付けは、例えば、溶接、かしめ等によって行われる。
【0036】
フランジ部22は、筒状部21に対して径方向内側R1において径方向Rに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、フランジ部22は、第2係合装置CL2に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。また、本実施形態では、フランジ部22は、第2側壁部12に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、本実施形態では、フランジ部22は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状に形成されている。
【0037】
フランジ部22は、筒状部21と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、フランジ部22は、筒状部21とは独立した部材であり、例えば、溶接、かしめ等によって筒状部21と接合されている。つまり、別部材である筒状部21とフランジ部22とが接合して構成されている。図示の例では、フランジ部22の径方向外側R2の端部と筒状部21の軸方向第2側L2の端部とが互いに連結するように、フランジ部22と筒状部21とが溶接によって接合されている。
【0038】
第1係合装置CL1は、筒状部21に対して径方向内側R1であって、フランジ部22に対して軸方向第1側L1に配置されている。このように、ロータ支持部材2において、筒状部21に対して径方向内側R1であって、フランジ部22に対して軸方向第1側L1には、第1係合装置CL1を配置するためのスペースが確保されている。そのため、ロータ支持部材2は、軸方向第1側L1に向けて開口する有底筒状に形成されている。更に、本実施形態では、第2係合装置CL2が、軸方向Lにおける第1係合装置CL1とフランジ部22との間に配置されている。ここで、上述したように、第1係合装置CL1と第2係合装置CL2とが、軸方向Lに並んで配置されている。そのため、第2係合装置CL2は、第1係合装置CL1に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。
【0039】
本実施形態では、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2が、ロータRoに対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視でロータRoと重複する位置に配置されている。ここで、「径方向内側R1」とは、軸方向Lの位置を問わず、対象となる要素に対して径方向Rの内側であることを指す。なお、「径方向外側R2」についても同様である。また、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0040】
図3に示すように、第1係合装置CL1は、軸方向Lに並んで配置された第1内側摩擦材411及び第1外側摩擦材412と、当該第1内側摩擦材411及び第1外側摩擦材412を軸方向Lに押圧する第1ピストン部42と、を備えている。本実施形態では、第1係合装置CL1は、第1ピストン部42の作動用の油が供給される第1作動油室43と、入力部材Iに対して径方向外側R2に延在し、入力部材Iと一体的に回転するように連結された油室形成部材46と、を更に備えている。
【0041】
第1内側摩擦材411及び第1外側摩擦材412は、いずれも円環板状に形成されており、互いに回転軸心を一致させて配置されている。また、第1内側摩擦材411及び第1外側摩擦材412は複数枚ずつ備えられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1内側摩擦材411及び第1外側摩擦材412は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。なお、以下の説明では、第1内側摩擦材411と第1外側摩擦材412とを総称して「第1摩擦部材41」と記す場合がある。
【0042】
第1外側摩擦材412は、「第1摩擦板」に相当する。第1外側摩擦材412は、第1外側支持部材48によって支持されている。第1外側支持部材48は、第1外側摩擦材412を径方向外側R2から支持する部材である。第1外側支持部材48は、軸方向第1側L1に向けて開口している。第1外側支持部材48は、筒状部21と一体的に回転するように構成されている。本実施形態では、第1外側支持部材48は、筒状部21と一体的に形成されている。図示の例では、筒状部21の内周部には、軸方向Lの全域に亘って軸方向Lに延在する複数のスプラインが、周方向に分散して形成されている。一方、第1外側摩擦材412の外周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士を係合させることで、第1外側摩擦材412が筒状部21により径方向外側R2から支持される。こうして、第1外側摩擦材412は、筒状部21に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0043】
第1内側摩擦材411は、「第2摩擦板」に相当する。第1内側摩擦材411は、第1内側支持部材44によって支持されている。第1内側支持部材44は、第1内側摩擦材411を径方向内側R1から支持する部材である。第1内側支持部材44は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成された第1筒状支持部441と、当該第1筒状支持部441から径方向内側R1に延在するように形成された第1径方向延在部442と、を備えている。
【0044】
第1筒状支持部441は、第1内側摩擦材411を径方向内側R1から支持している。図示の例では、第1筒状支持部441の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが、軸方向Lの全域に亘って、周方向に分散して形成されている。一方、第1内側摩擦材411の内周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士を係合させることで、第1内側摩擦材411が第1筒状支持部441により径方向内側R1から支持される。こうして、第1内側摩擦材411は、第1筒状支持部441に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0045】
第1径方向延在部442は、「径方向延在支持部」に相当する。第1径方向延在部442は、第1筒状支持部441と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1径方向延在部442は、第1筒状支持部441とは独立した部材であり、例えば、溶接、かしめ等によって第1筒状支持部441と接合されている。図示の例では、第1径方向延在部442の軸方向第1側L1の面と、第1筒状支持部441の軸方向第2側L2の面とが接触した状態で、第1径方向延在部442と第1筒状支持部441とが溶接によって互いに接合されている。また、第1径方向延在部442は、入力部材Iと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1径方向延在部442の径方向内側R1の端部が、入力部材Iの外周面に連結されている。図示の例では、第1径方向延在部442の径方向内側R1の端部と、入力部材Iの外周面に形成されたフランジ状の突出部とが、溶接により接合されている。また、本実施形態では、第1径方向延在部442は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状に形成されている。
【0046】
本実施形態では、第1係合装置CL1は、第1摩擦部材41に対して、軸方向Lにおける第1ピストン部42の側とは反対側(ここでは、軸方向第2側L2)から当接する当接部442aを有している。図示の例では、当接部442aは、第1径方向延在部442と一体的に形成されている。具体的には、当接部442aは、第1径方向延在部442における、第1筒状支持部441よりも径方向外側R2に延在した部分により形成されている。本実施形態では、当接部442aは、最も軸方向第2側L2の第1内側摩擦材411に、軸方向第2側L2から当接するように配置されている。
【0047】
第1径方向延在部442は、油路形成部材45と軸方向Lに接触している。本実施形態では、第1径方向延在部442は、油路形成部材45に対して軸方向第2側L2から当接している。
【0048】
油路形成部材45は、第1係合装置CL1において油路を形成する部材である。本実施形態では、油路形成部材45は、軸方向Lにおける第1径方向延在部442と第1ピストン部42との間に配置されている。更に、本実施形態では、油路形成部材45は、第1筒状支持部441に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視で第1筒状支持部441と重複する位置に配置されている。本実施形態では、油路形成部材45は、連結部451と、仕切部452と、を有している。
【0049】
連結部451は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。連結部451は、第1内側支持部材44の第1筒状支持部441と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、連結部451は、第1筒状支持部441に対して径方向内側R1に隣接した状態で、第1筒状支持部441と連結されている。具体的には、第1筒状支持部441の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。一方、連結部451の外周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、連結部451が第1筒状支持部441と一体的に回転するように連結されている。
【0050】
仕切部452は、連結部451から径方向内側R1に延在するように形成されている。本実施形態では、仕切部452の径方向外側R2の端部と連結部451の軸方向第2側L2の端部とが互いに連結するように、仕切部452と連結部451とが一体的に形成されている。仕切部452は、第1ピストン部42と第1内側支持部材44との間の空間を隔てるように配置されている。
【0051】
本実施形態では、油路形成部材45における第1径方向延在部442との接触面には、径方向Rに沿う径方向溝45aが形成されている。本実施形態では、仕切部452の径方向Rの全域における少なくとも一部の領域において、仕切部452が軸方向第1側L1から第1径方向延在部442に当接している。そして、仕切部452における第1径方向延在部442との接触面に、径方向溝45aが形成されている。径方向溝45aは、仕切部452における第1径方向延在部442との接触面の径方向Rの全域に亘って連続するように形成されている。つまり、径方向溝45aは、仕切部452と第1径方向延在部442との接触部分に対して径方向内側R1と径方向外側R2とを連通するように形成されている。本実施形態では、複数の径方向溝45aが、周方向に分散して形成されている。
【0052】
第1ピストン部42は、第1内側支持部材44の第1径方向延在部442に対して、軸方向第1側L1に配置されている。本実施形態では、第1ピストン部42は、第1内側支持部材44と一体的に回転するように支持されている。本実施形態では、図示は省略するが、連結部451が、第1ピストン部42と一体的に回転するように、連結部451に対する第1ピストン部42の相対回転を規制している。ここで、上述したように、連結部451は、第1内側支持部材44の第1筒状支持部441と一体的に回転するように連結されている。そのため、本実施形態では、第1ピストン部42は、連結部451を介して第1内側支持部材44と一体的に回転するように支持されている。
【0053】
本実施形態では、第1ピストン部42は、第1作動油室43に供給された油圧に応じた圧力で第1摩擦部材41を軸方向Lに押圧するように構成されている。第1ピストン部42は、第1摺動部421と、第1押圧部422と、を有している。
【0054】
第1摺動部421は、径方向Rに沿って延在している。本実施形態では、第1摺動部421は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状に形成されている。第1摺動部421は、第1シリンダ部C1内を軸方向Lに摺動するように構成されている。本実施形態では、第1摺動部421は、第1摩擦部材41に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視で第1摩擦部材41と重複する位置に配置されている。
【0055】
第1シリンダ部C1は、軸方向Lに沿う筒状に形成されている。本実施形態では、第1シリンダ部C1は、入力部材Iと油路形成部材45とによって形成されている。具体的には、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの外周面の一部が、第1摺動部421の径方向内側R1の端部が摺動する摺動面として機能する。また、油路形成部材45における連結部451の内周面の一部が、第1摺動部421の径方向外側R2の端部が摺動する摺動面として機能する。
【0056】
第1押圧部422は、第1摩擦部材41に対して軸方向Lに隣接するように、第1摺動部421から径方向外側R2に延在している。本実施形態では、第1押圧部422は、第1摩擦部材41に対して、軸方向Lにおける第1径方向延在部442の当接部442aの側とは反対側(ここでは、軸方向第1側L1)に配置されている。そのため、第1押圧部422は、第1摺動部421の径方向外側R2の端部から、第1筒状支持部441に対して軸方向第1側L1を通って迂回しつつ、径方向外側R2に延在するように形成されている。
【0057】
本実施形態では、第1ピストン部42は、第1付勢部材42aによって軸方向第1側L1に向けて付勢されている。第1付勢部材42aは、軸方向Lにおける第1摺動部421と油路形成部材45の仕切部452との間に配置されている。本実施形態では、複数の第1付勢部材42aが、周方向に分散して配置されている。第1付勢部材42aとしては、例えば戻しばね等を用いることができる。こうして、第1ピストン部42は、油圧制御装置(図示を省略)から所定油圧の油が第1作動油室43に供給されると、当該油圧に応じて第1付勢部材42aの付勢力に抗して軸方向第2側L2に摺動し、第1摩擦部材41を軸方向第2側L2へ押圧する。
【0058】
第1作動油室43は、第1ピストン部42に対して軸方向Lに隣接して配置されている。本実施形態では、第1作動油室43は、第1ピストン部42と油室形成部材46との間に形成されている。具体的には、第1作動油室43は、軸方向Lにおける第1ピストン部42の第1摺動部421と油室形成部材46との間に形成されている。
【0059】
本実施形態では、第1作動油室43は、径方向Rに沿う径方向視で、第1摩擦部材41と重複するように配置されている。また、本実施形態では、第1作動油室43は、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1摩擦部材41と重複しないように配置されている。
【0060】
本実施形態では、油室形成部材46は、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの外周面に接するように配置されている。また、本実施形態では、油室形成部材46は、第1ピストン部42に対して軸方向第1側L1に配置されている。ここでは、油室形成部材46は、第1ピストン部42の第1摺動部421に対して、軸方向第1側L1に隣接して配置されている。
【0061】
本実施形態では、油室形成部材46の最外周部の径方向Rの寸法は、第1筒状支持部441の内周面の径方向Rの寸法よりも小さい。また、本実施形態では、油室形成部材46は、油路形成部材45の連結部451よりも径方向内側R1に配置されている。そのため、径方向Rにおける油室形成部材46と連結部451との間を通って、第1ピストン部42が軸方向第1側L1に延出し、更に径方向外側R2へ延出するように形成されていることで、第1押圧部422が連結部451よりも径方向外側R2に配置されている。
【0062】
本実施形態では、第1ピストン部42に対して、軸方向Lにおける第1作動油室43の側とは反対側(ここでは、軸方向第2側L2)には、第1キャンセル油室47が形成されている。第1キャンセル油室47は、第1作動油室43で発生する遠心油圧に対抗する油圧を生じさせるための空間である。本実施形態では、第1キャンセル油室47は、第1ピストン部42と油路形成部材45との間に形成されている。つまり、第1ピストン部42と第1内側支持部材44との間の空間における、油路形成部材45の仕切部452に対して軸方向第1側L1の部分が、第1キャンセル油室47として機能する。
【0063】
図3に示すように、第2係合装置CL2は、軸方向Lに並んで配置された第2内側摩擦材511及び第2外側摩擦材512と、当該第2内側摩擦材511及び第2外側摩擦材512を軸方向Lに押圧する第2ピストン部52と、を備えている。本実施形態では、第2係合装置CL2は、第2ピストン部52の作動用の油が供給される第2作動油室53を更に備えている。
【0064】
第2内側摩擦材511及び第2外側摩擦材512は、いずれも円環板状に形成されており、互いに回転軸心を一致させて配置されている。また、第2内側摩擦材511及び第2外側摩擦材512は複数枚ずつ備えられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第2内側摩擦材511及び第2外側摩擦材512は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。なお、以下の説明では、第2内側摩擦材511と第2外側摩擦材512とを総称して「第2摩擦部材51」と記す場合がある。
【0065】
第2内側摩擦材511は、「第4摩擦板」に相当する。第2内側摩擦材511は、第2内側支持部材54によって支持されている。第2内側支持部材54は、第2内側摩擦材511を径方向内側R1から支持する部材である。本実施形態では、第2内側支持部材54は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成された第2筒状支持部541と、当該第2筒状支持部541から径方向内側R1に延在するように形成された第2径方向延在部542と、を備えている。
【0066】
第2筒状支持部541は、第2内側摩擦材511を径方向内側R1から支持している。図示の例では、第2筒状支持部541の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが、軸方向Lの全域に亘って、周方向に分散して形成されている。一方、第2内側摩擦材511の内周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士を係合させることで、第2内側摩擦材511が第2筒状支持部541により径方向内側R1から支持される。こうして、第2内側摩擦材511は、第2筒状支持部541に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0067】
第2径方向延在部542は、第2筒状支持部541と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2径方向延在部542は、第2筒状支持部541とは独立した部材であり、例えば、溶接、かしめ等によって第2筒状支持部541と接合されている。図示の例では、第2径方向延在部542の径方向外側R2の端部と第2筒状支持部541の軸方向第1側L1の端部とが互いに連結するように、第2径方向延在部542と第2筒状支持部541とが溶接によって接合されている。本実施形態では、第2径方向延在部542は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状に形成されている。
【0068】
また、第2径方向延在部542は、変速入力軸Mと一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2径方向延在部542の径方向内側R1の端部が、変速入力軸Mの外周面に連結されている。図示の例では、第2径方向延在部542の径方向内側R1の端部に形成された筒状部分の内周面には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。一方、変速入力軸Mの外周面にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、第2径方向延在部542と変速入力軸Mとが一体的に回転するように連結されている。
【0069】
第2外側摩擦材512は、「第3摩擦板」に相当する。第2外側摩擦材512は、第2外側支持部材55によって支持されている。第2外側支持部材55は、第2外側摩擦材512を径方向外側R2から支持する部材である。本実施形態では、第2外側支持部材55は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。図示の例では、第2外側支持部材55の内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。一方、第2外側摩擦材512の外周部にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士を係合させることで、第2外側摩擦材512が第2外側支持部材55により径方向外側R2から支持される。こうして、第2外側摩擦材512は、第2外側支持部材55に対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0070】
第2外側支持部材55は、ロータ支持部材2と一体的に回転するように構成されている。本実施形態では、第2外側支持部材55は、ロータ支持部材2の筒状部21によって径方向外側R2から支持されている。図示の例では、第2外側支持部材55の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。一方、上述したように、筒状部21の内周部にも、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン同士を係合させることで、第2外側支持部材55が筒状部21により径方向外側R2から支持される。こうして、第2外側摩擦材512は、第2外側支持部材55を介して、ロータ支持部材2の筒状部21に支持されている。
【0071】
本実施形態では、第2係合装置CL2は、第2摩擦部材51に当接する当接部材56を備えている。当接部材56は、第2摩擦部材51に対して、軸方向Lにおける第2ピストン部52の側とは反対側(ここでは、軸方向第1側L1)から当接するように配置されている。本実施形態では、当接部材56は、最も軸方向第1側L1の第2外側摩擦材512に、軸方向第1側L1から当接するように配置されている。
本実施形態では、当接部材56が筒状部21によって径方向外側R2から支持されている。図示の例では、当接部材56の外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。そして、これらのスプラインが、筒状部21の内周部に形成された複数のスプラインに係合されることによって、当接部材56は、筒状部21に対して相対回転が規制されていると共に軸方向Lに摺動可能な状態で、筒状部21により径方向外側R2から支持されている。また、図示の例では、円環状の固定部材56aが、軸方向第1側L1から当接部材56に当接するように、筒状部21の内周部に固定されている。こうして、当接部材56の軸方向第1側L1への移動が、固定部材56aによって規制されている。本実施形態では、固定部材56aは、スナップリングである。
【0072】
本実施形態では、第2ピストン部52は、第2作動油室53に供給された油圧に応じた圧力で第2摩擦部材51を軸方向Lに押圧するように構成されている。また、本実施形態では、第2ピストン部52は、第2摩擦部材51よりも軸方向第2側L2に配置されている。つまり、第2ピストン部52は、径方向Rに沿う径方向視で第2摩擦部材51と重複しないように配置されている。第2ピストン部52は、第2摺動部521と、第2押圧部522と、を有している。
【0073】
第2摺動部521は、第2シリンダ部C2内を軸方向Lに摺動するように構成されている。第2シリンダ部C2は、軸方向Lに沿う筒状に形成されている。本実施形態では、第2シリンダ部C2は、フランジ部22のシリンダ形成部23によって形成されている。つまり、本実施形態では、フランジ部22の一部が、第2係合装置CL2の一部を構成している。
【0074】
シリンダ形成部23は、第2ピストン部52が摺動する第2シリンダ部C2を形成するように軸方向第2側L2に突出している。本実施形態では、シリンダ形成部23は、内側筒状部231と、外側筒状部232と、径方向連結部233と、を有している。
【0075】
内側筒状部231は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。内側筒状部231の外周面の一部は、第2摺動部521の径方向内側R1の端部が摺動する摺動面として機能する。本実施形態では、内側筒状部231は、ケース1の筒状突出部13の径方向外側R2を覆うように配置されている。
【0076】
外側筒状部232は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。外側筒状部232は、内側筒状部231に対して径方向外側R2に配置されている。外側筒状部232の内周面の一部は、第2摺動部521の径方向外側R2の端部が摺動する摺動面として機能する。
【0077】
径方向連結部233は、内側筒状部231と外側筒状部232とを連結するように、径方向Rに沿って延在している。本実施形態では、径方向連結部233は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状に形成されている。また、本実施形態では、径方向連結部233の径方向内側R1の端部は、内側筒状部231の軸方向第2側L2の端部に連結されている。そして、径方向連結部233の径方向外側R2の端部は、外側筒状部232の軸方向第2側L2の端部に連結されている。また、フランジ部22における、シリンダ形成部23よりも径方向外側R2の部分は、径方向R及び周方向に沿って延在する円環板状に形成されており、外側筒状部232の軸方向第1側L1の端部に連結されている。図示の例では、内側筒状部231と外側筒状部232と径方向連結部233とを含むフランジ部22が、1つの部材により一体的に形成されている。
【0078】
第2押圧部522は、第2摺動部521から径方向外側R2に延在している。本実施形態では、第2押圧部522は、第2摩擦部材51に対して、軸方向Lにおける当接部材56の側とは反対側(ここでは、軸方向第2側L2)に配置されている。
【0079】
第2ピストン部52は、ロータ支持部材2と一体的に回転するように支持されている。本実施形態では、図示は省略するが、ロータ支持部材2のフランジ部22が、第2ピストン部52と一体的に回転するように、フランジ部22に対する第2ピストン部52の相対回転を規制している。
【0080】
本実施形態では、第2ピストン部52は、取付部材57に取り付けられた第2付勢部材52aによって軸方向第2側L2に向けて付勢されている。第2付勢部材52aは、軸方向Lにおける第2摺動部521と取付部材57との間に配置されている。本実施形態では、複数の第2付勢部材52aが、周方向に分散して配置されている。第2付勢部材52aとしては、例えば戻しばね等を用いることができる。こうして、第2ピストン部52は、油圧制御装置(図示を省略)から所定油圧の油が第2作動油室53に供給されると、当該油圧に応じて第2付勢部材52aの付勢力に抗して軸方向第1側L1に摺動し、第2摩擦部材51を軸方向第1側L1へ押圧する。
【0081】
取付部材57は、シリンダ形成部23の内側筒状部231に対して径方向外側R2に配置されている。本実施形態では、取付部材57は、内側筒状部231の外周面に接するように配置されている。また、本実施形態では、取付部材57は、第2ピストン部52の第2摺動部521に対して、軸方向第1側L1に隣接して配置されている。
【0082】
第2作動油室53は、第2ピストン部52に対して軸方向Lに隣接して配置されている。本実施形態では、第2作動油室53は、第2ピストン部52とシリンダ形成部23との間に形成されている。具体的には、第2作動油室53は、軸方向Lにおける第2ピストン部52の第2摺動部521とシリンダ形成部23の径方向連結部233との間に形成されている。
【0083】
本実施形態では、第2作動油室53は、軸方向Lに沿う軸方向視で、第2摩擦部材51と重複するように配置されている。また、本実施形態では、第2作動油室53は、径方向Rに沿う径方向視で、第2摩擦部材51と重複しないように配置されている。
【0084】
本実施形態では、第2ピストン部52に対して、軸方向Lにおける第2作動油室53の側とは反対側(ここでは、軸方向第1側L1)には、第2キャンセル油室58が形成されている。第2キャンセル油室58は、第2作動油室53で発生する遠心油圧に対抗する油圧を生じさせるための空間である。本実施形態では、第2キャンセル油室58は、第2ピストン部52と取付部材57との間に形成されている。
【0085】
本実施形態では、フランジ部22は、第2係合装置CL2よりも径方向内側R1まで延在している。図示の例では、フランジ部22の内周端は、第2ピストン部52の内周端よりも径方向内側R1に位置している。
【0086】
図3に示すように、車両用駆動装置100は、筒状部21の内周部に固定された環状部材10を備えている。環状部材10は、周方向に沿って延在する環状に形成されている。本実施形態では、環状部材10は、スナップリングである。環状部材10は、筒状部21の内周部に形成された第2固定溝21d(図5参照)に嵌め込まれることにより、筒状部21に固定されている。第2固定溝21dは、筒状部21の内周部に周方向に連続して形成された溝である。本例では、上述したように、筒状部21の内周部には軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。そして、第2固定溝21dは、このような複数のスプラインにおける、径方向内側R1に突出した突条部分に少なくとも形成されている。
【0087】
環状部材10は、第1内側摩擦材411及び第1外側摩擦材412に対して軸方向第1側L1であって、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1ピストン部42及び第1内側摩擦材411の少なくとも一方と重複する位置に配置されている。図示の例では、第1ピストン部42の外周縁と第1内側摩擦材411の外周縁とが、径方向Rのほぼ同じ位置に配置されている。そのため、環状部材10は、第1ピストン部42の第1押圧部422及び第1内側摩擦材411の双方と重複するように構成されている。なお、第1ピストン部42の外周縁と第1内側摩擦材411の外周縁との径方向Rの位置が異なる場合には、環状部材10は、第1ピストン部42と第1内側摩擦材411とのうちの少なくとも径方向外側R2に配置される方と、軸方向視で重複するように配置される。
【0088】
図2に示すように、本実施形態では、下記の式(1)が成立する。
D1-D2<D3・・・(1)
【0089】
上記式(1)において、D1は、筒状部21の内周面の直径である。そして、D2は、第1ピストン部42の最外径である。また、D3は、筒状部21の内周面から環状部材10の内周端までの径方向Rの距離である。ここで、筒状部21の内周面は、筒状部21の径方向内側R1を向く円筒状の面である。図示の例では、筒状部21の内周面は、筒状部21の内周部に形成された複数のスプラインの径方向内側R1の端部を繋いで形成される仮想面を指す。また、本実施形態では、第1ピストン部42の最外径は、第1押圧部422の外縁の直径である。
【0090】
図3に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、ロータRoの回転を検出する回転センサ3を備えている。回転センサ3は、ステータStに対するロータRoの回転方向の位置、及びロータRoの回転速度の少なくとも一方を検出するためのセンサである。このような回転センサ3としては、例えばレゾルバを用いることができる。回転センサ3は、回転体31と、固定体32と、を備えている。本実施形態では、回転体31及び固定体32のそれぞれは、ロータRoの回転軸心を基準とする円環状に形成されている。
【0091】
回転体31は、シリンダ形成部23の外周面に支持されている。つまり、回転体31は、シリンダ形成部23に対して径方向外側R2であって、径方向Rに沿う径方向視でシリンダ形成部23と重複する位置に配置されている。本実施形態では、回転体31は、シリンダ形成部23における外側筒状部232の外周面に配置されている。そして、回転体31は、外側筒状部232と一体的に回転するように連結されている。図示の例では、シリンダ形成部23(ここでは外側筒状部232)の外周面には、軸方向Lに延在する複数のスプラインが周方向に分散して形成されている。一方、回転体31の内周面にも、同様のスプラインが形成されている。そして、それらのスプライン同士が係合することで、回転体31とロータ支持部材2とが一体的に回転するように連結されている。また、図示の例では、円環状の規制部材31aが、軸方向第2側L2から回転体31に当接するように、外側筒状部232の外周面に固定されている。こうして、回転体31の軸方向第2側L2への移動が、規制部材31aによって規制されている。
【0092】
固定体32は、回転体31に対して径方向外側R2に配置されている。固定体32は、非回転部材に支持されている。本実施形態では、固定体32は、ケース1の第2側壁部12に設けられたセンサ支持部14に支持されている。
【0093】
本実施形態では、回転センサ3は、第2ピストン部52の第2摺動部521に対して径方向外側R2であって、径方向Rに沿う径方向視で当該第2摺動部521と重複する位置に配置されている。また、本実施形態では、回転センサ3は、軸方向Lに沿う軸方向視で、第2摩擦部材51と重複するように配置されている。図示の例では、回転体31が、軸方向視で、第2摩擦部材51に加えて、第2ピストン部52の第2押圧部522とも重複するように配置されている。更に、本実施形態では、回転センサ3は、軸方向Lに沿う軸方向視で、ロータRoと重複するように配置されている。図示の例では、固定体32の径方向外側R2の部分が、軸方向視でロータRoと重複するように配置されている。
【0094】
図3に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、ロータ支持部材2を回転可能に支持する第1軸受B1及び第2軸受B2と、入力部材Iを回転可能に支持する第3軸受B3と、を備えている。本実施形態では、第1軸受B1、第2軸受B2、及び第3軸受B3のそれぞれは、玉軸受である。
【0095】
第1軸受B1は、ロータ支持部材2の筒状部21を回転可能に支持している。本実施形態では、第1軸受B1は、第1内側支持部材44の第1筒状支持部441よりも径方向外側R2に配置されている。本実施形態では、第1軸受B1は、ロータRoに対して軸方向第1側L1に配置されている。また、本実施形態では、第1軸受B1は、筒状部21の外周面に配置されている。具体的には、筒状部21は、ロータRoよりも軸方向第1側L1に突出する軸受支持部211を有している。そして、軸受支持部211の外周面に第1軸受B1の内周面が接するように、第1軸受B1が取り付けられている。また、本実施形態では、第1軸受B1は、ケース1における第1側壁部11の軸受支持部11aに支持されている。軸受支持部11aは、軸方向第2側L2に突出し、径方向外側R2から第1軸受B1を支持している。こうして、第1軸受B1は、筒状部21を第1側壁部11に対して回転可能に支持している。
【0096】
本実施形態では、第1軸受B1は、径方向Rに沿う径方向視で、第1ピストン部42と重複するように配置されている。具体的には、第1軸受B1は、径方向視で、第1ピストン部42の第1押圧部422と重複するように配置されている。また、本実施形態では、第1軸受B1は、軸方向Lに沿う軸方向視で、ロータRoと重複するように配置されている。また、本実施形態では、第1軸受B1は、径方向Rに沿う径方向視で、ステータStのコイルエンド部Ceと重複するように配置されている(図2参照)。
【0097】
本実施形態では、筒状部21には、ロータRoに対して軸方向第1側L1において、筒状部21の外周面から径方向外側R2に突出する突起部21aが形成されている。ここでは、突起部21aは、周方向の全域に亘って連続的に形成されている。そして、突起部21aは、ロータRoと第1軸受B1とにより軸方向Lの両側から挟まれるように配置されている。具体的には、ロータRoが、軸方向第2側L2から突起部21aに当接するように配置されている。また、第1軸受B1が、軸方向第1側L1から突起部21aに当接するように配置されている。
【0098】
第2軸受B2は、ロータ支持部材2のフランジ部22を回転可能に支持している。本実施形態では、第2軸受B2は、径方向Rに沿う径方向視で、第2ピストン部52と重複するように配置されている。また、本実施形態では、第2軸受B2は、フランジ部22のシリンダ形成部23に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視でシリンダ形成部23と重複する位置に配置されている。そして、第2軸受B2は、ロータ支持部材2を径方向内側R1から支持している。図示の例では、第2軸受B2は、ロータ支持部材2の内側筒状部231と、ケース1の筒状突出部13(具体的には、外側突出部132)との間に介装されている。
【0099】
本実施形態では、第3軸受B3は、第1ピストン部42の少なくとも一部に対して径方向内側R1であって、径方向Rに沿う径方向視で第1ピストン部42と重複する位置に配置されている。ここでは、第3軸受B3は、第1ピストン部42の第1押圧部422に対して径方向内側R1に配置されている。また、第3軸受B3は、径方向視で第1押圧部422と重複するように配置されている。更に、本実施形態では、第3軸受B3は、油室形成部材46に対して軸方向第1側L1に配置されている。また、第3軸受B3は、油室形成部材46の一部に対して径方向内側R1に配置されている。
【0100】
本実施形態では、第3軸受B3は、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの外周面に配置されている。具体的には、入力筒状部Iaの外周面に第3軸受B3の内周面が接するように、第3軸受B3が取り付けられている。また、第3軸受B3は、ケース1の第1側壁部11に、径方向外側R2から支持されている。こうして、第3軸受B3は、入力部材Iを第1側壁部11に対して回転可能に支持している。
【0101】
本実施形態では、第3軸受B3のインナレースが、入力筒状部Iaの外周面に形成された段差部に軸方向第1側L1から当接している。そして、第3軸受B3のアウタレースが、第1側壁部11に軸方向第2側L2から当接している。こうして、第3軸受B3は、入力筒状部Iaと第1側壁部11とによって軸方向Lの移動が規制されている。その結果、第3軸受B3は、当該第3軸受B3が支持する入力部材Iに作用するスラスト荷重を支持することが可能となっている。
【0102】
図3に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1作動油室43に油を供給して第1ピストン部42を作動させるための油路を備えている。この油路は、第1作動油路P11と、第1作動接続油路P12と、第2軸内油路P13と、を含む。
【0103】
第1作動油路P11は、第1作動油室43と連通する油路である。第1作動油路P11は、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの内周面から外周面に亘って形成されている。
【0104】
第1作動接続油路P12は、第1作動油路P11と第2軸内油路P13とを接続する油路である。第1作動接続油路P12は、変速入力軸Mの挿入部Maに形成されている。本実施形態では、第1作動接続油路P12は、挿入部Maの内部の第2軸内油路P13から外周面まで径方向Rに沿って形成されている。
【0105】
第2軸内油路P13は、変速入力軸Mの内部に形成された油路である。本実施形態では、第2軸内油路P13は、軸方向Lに沿って形成されている。
【0106】
また、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第2作動油室53に油を供給して第2ピストン部52を作動させるための油路を備えている。この油路は、第2作動油路P21と、第2作動接続油路P22と、第2径方向油路P23と、を含む。
【0107】
第2作動油路P21は、ロータ支持部材2の径方向内側R1と第2作動油室53とを連通する油路である。本実施形態では、第2作動油路P21は、シリンダ形成部23の内側筒状部231に形成されている。そして、第2作動油路P21は、内側筒状部231の内周面から外周面に亘って形成されている。
【0108】
第2作動接続油路P22は、第2径方向油路P23と第2作動油路P21とを接続する油路である。第2作動接続油路P22は、ケース1の筒状突出部13に形成されている。本実施形態では、第2作動接続油路P22は、内側突出部131の外周面と外側突出部132の内周面との当接部において軸方向Lに沿って延在するように形成された軸方向溝P22aと、外側突出部132の外周面において周方向に沿って延在するように形成された周方向溝P22bと、前記軸方向溝P22aと前記周方向溝P22bとを接続するように径方向Rに沿って形成された接続孔P22cとを有している。
【0109】
第2径方向油路P23は、ケース1の第2側壁部12に形成された油路である。第2径方向油路P23は、径方向Rに沿って形成されている。
【0110】
図4に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1摩擦部材41に油を供給して第1摩擦部材41を潤滑するための油路を備えている。この油路は、第1潤滑油路P31と、潤滑接続油路P32と、第1軸内油路P33と、を含む。なお、このように第1摩擦部材41に供給される油は、第1摩擦部材41を冷却する役割も果たす。
【0111】
第1潤滑油路P31は、第1摩擦部材41の潤滑用の油を、第1内側支持部材44の第1連通孔44aに供給する油路である。第1潤滑油路P31は、入力部材Iにおける入力筒状部Iaの内周面から外周面に亘って形成されている。本実施形態では、第1潤滑油路P31は、第1ピストン部42と第1内側支持部材44との間の空間に連通している。第1連通孔44aは、第1内側支持部材44を径方向Rに貫通する「第2供給孔」に相当する。本実施形態では、第1連通孔44aは、第1内側支持部材44の第1筒状支持部441を径方向Rに貫通するように形成されている。
【0112】
潤滑接続油路P32は、第1潤滑油路P31と第1軸内油路P33とを接続する油路である。潤滑接続油路P32は、変速入力軸Mの挿入部Maに形成されている。本実施形態では、潤滑接続油路P32は、挿入部Maの内部の第1軸内油路P33から外周面まで径方向Rに沿って形成されている。
【0113】
第1軸内油路P33は、変速入力軸Mの内部に形成された油路である。本実施形態では、第1軸内油路P33は、軸方向Lに沿って形成されている。本実施形態では、第1軸内油路P33は、第2軸内油路P13とは独立して形成されている。
【0114】
本実施形態では、第1軸内油路P33、潤滑接続油路P32、及び第1潤滑油路P31を順に流動した油は、第1ピストン部42と第1内側支持部材44との間の空間に流入する。そして、この空間に流入した油は、第1内側支持部材44と油路形成部材45との間の空間と、第1ピストン部42と油路形成部材45との間の空間(第1キャンセル油室47)とに分岐して径方向外側R2に向かって流動する。ここで、第1ピストン部42と油路形成部材45との間の空間である第1キャンセル油室47は、第1潤滑油路P31との連通部分以外は閉じた空間とされている。そのため、第1キャンセル油室47が油で満たされた状態となった後は、第1潤滑油路P31からの油は、主に第1内側支持部材44と油路形成部材45との間の空間に流入する。そして、第1内側支持部材44と油路形成部材45との間の空間に流入した油は、径方向溝45aを通り、第1筒状支持部441の内周部に到達する。本実施形態では、このような第1筒状支持部441の内周部までの油の流動経路が、第1内側支持部材44の内周部に対して径方向内側R1から油を供給する供給部SPとして機能する。
【0115】
そして、第1筒状支持部441の内周部に供給された油は、第1連通孔44aを通って、第1摩擦部材41に到達する。こうして、第1摩擦部材41が油によって潤滑及び冷却される。その後、第1摩擦部材41に供給された油は、第1内側摩擦材411と第1外側摩擦材412との隙間等を通って、筒状部21の内周部に到達する。
【0116】
図3に示すように、本実施形態では、筒状部21の内周部に供給された油は、ロータ冷却孔21bを通って、ロータRoの冷却用の油路に供給される。ロータ冷却孔21bは、ロータRoの冷却用の油路に連通する「第1供給孔」に相当する。本実施形態では、筒状部21の外周面とロータコアRocの内周面との隙間GがロータRoの冷却用の油路として機能する。本例では、この隙間Gに供給された油は、ロータコアRocの内周面に沿って軸方向Lに流通してロータRoを冷却した後、図示しない排出孔から排出されてステータStのコイルエンド部Ce等へ供給される。
【0117】
本実施形態では、ロータ冷却孔21bは、環状部材10に対して軸方向第2側L2において、筒状部21の内周部に開口するように形成されている。また、本実施形態では、ロータ冷却孔21bは、突起部21aに対して軸方向第2側L2において、筒状部21の外周部に開口するように形成されている。図示の例では、2つのロータ冷却孔21bが軸方向Lに並んで形成されている。
【0118】
図4に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第2摩擦部材51に油を供給して第2摩擦部材51を潤滑するための油路を備えている。この油路は、第2潤滑油路P41と、第1径方向油路P42と、を含む。なお、このように第2摩擦部材51に供給される油は、第2摩擦部材51を冷却する役割も果たす。
【0119】
第2潤滑油路P41は、第2摩擦部材51の潤滑用の油を、第2内側支持部材54の第2連通孔54aに供給する油路である。第2連通孔54aは、第2内側支持部材54を径方向Rに貫通するように形成されている。本実施形態では、第2連通孔54aは、第2内側支持部材54の第2筒状支持部541を径方向Rに貫通するように形成されている。
【0120】
第2潤滑油路P41は、ケース1の筒状突出部13に形成されている。本実施形態では、第2潤滑油路P41は、内側突出部131の外周面と外側突出部132の内周面との当接部において軸方向Lに沿って延在するように形成された軸方向溝P41aと、内側突出部131の軸方向第1側L1の端部よりも軸方向第1側L1において外側突出部132の内周面に囲まれて形成された筒状油路P41bと、当該筒状油路P41bと外側突出部132の外周面とを接続するように径方向Rに沿って形成された接続孔P41cとを有している。
【0121】
第1径方向油路P42は、ケース1の第2側壁部12に形成された油路である。第1径方向油路P42は、径方向Rに沿って形成されている。本実施形態では、第1径方向油路P42は、第2径方向油路P23とは独立して形成されている。
【0122】
本実施形態では、第1径方向油路P42、及び第2潤滑油路P41を順に流動した油は、接続孔P41c、及び、筒状油路P41bの軸方向第1側L1の端部の開口から、フランジ部22と第2内側支持部材54との間の空間に流入する。
【0123】
そして、このように流入する油のうち、接続孔P41cから流入する油は、第1貫通孔24a、及び第2貫通孔231aを順に通って、第2キャンセル油室58に到達する。第1貫通孔24aは、嵌合部材24を径方向Rに貫通するように形成されている。嵌合部材24は、第2軸受B2に対して軸方向第1側L1から当接するように、シリンダ形成部23の内側筒状部231の内周面に嵌合された部材である。第2貫通孔231aは、シリンダ形成部23の内側筒状部231を径方向Rに貫通するように形成されている。第2貫通孔231aの径方向外側R2の開口部は、第2キャンセル油室58に開口している。ここで、第2キャンセル油室58は、第2貫通孔231aとの連通部分以外は閉じた空間とされている。そのため、第2キャンセル油室58が油で満たされた状態となった後は、第2潤滑油路P41からの油は、主に筒状油路P41bの軸方向第1側L1の端部の開口から流出する。
【0124】
このように、筒状油路P41bの軸方向第1側L1の端部の開口から流出した油は、嵌合部材24と第2内側支持部材54の第2径方向延在部542との間を通り、更に第2連通孔54aを通って、第2摩擦部材51に到達する。
【0125】
以下では、図5及び図6を参照して、ロータRoとロータ支持部材2と第1係合装置CL1とを含む第1アセンブリAS1を、当該第1アセンブリAS1とは別の第2アセンブリAS2に組み付ける作業の一例について説明する。本例では、ロータRoとロータ支持部材2と第1係合装置CL1とを含む第1アセンブリAS1を、変速機TMを含む第2アセンブリAS2に組み付ける作業が行われる(図6参照)。本例では、第1アセンブリAS1は、以下のように作製される。
【0126】
まず、図5に示すように、ロータ支持部材2と、ロータRoと、回転センサ3の回転体31と、第2ピストン部52と、取付部材57と、第2外側支持部材55とが一体的に回転するように、それらを組み付ける。更に、ロータ支持部材2に第2軸受B2を組み付ける。第2軸受B2は、当該第2軸受B2の外周面と、シリンダ形成部23の内側筒状部231の内周面とが接触するように、軸方向第1側L1から内側筒状部231の径方向内側R1に挿入される。その後、嵌合部材24が、第2軸受B2に対して軸方向第1側L1から当接するように、内側筒状部231の内周面に嵌合される。
【0127】
次に、第2内側摩擦材511と第2外側摩擦材512とが軸方向Lに交互に並ぶように配置した状態で、第2内側支持部材54の第2筒状支持部541と複数の第2内側摩擦材511とをスプライン係合させる。そして、複数の第2外側摩擦材512と第2外側支持部材55とをスプライン係合させると共に、最も軸方向第1側L1の第2外側摩擦材512に軸方向第1側L1から当接させた当接部材56を、筒状部21とスプライン係合させる。その後、筒状部21の内周部に形成された第1固定溝21cよりも当接部材56が軸方向第2側L2に位置した状態で、第1固定溝21cに固定部材56aを取り付ける。第1固定溝21cは、筒状部21の内周部に周方向に連続して形成された溝である。
【0128】
続いて、第1内側摩擦材411と第1外側摩擦材412とが軸方向Lに交互に並ぶように配置した状態で、第1内側支持部材44の第1筒状支持部441と複数の第1内側摩擦材411とをスプライン係合させる。ここで、第1内側支持部材44と入力部材Iとは一体的に連結されている。更に、入力部材Iに対して、油路形成部材45と、第1ピストン部42と、油室形成部材46とを組み付ける。これにより、入力部材Iと、第1内側支持部材44と、油路形成部材45と、第1ピストン部42と、油室形成部材46とが一体的に回転するように連結される。そして、複数の第1外側摩擦材412と筒状部21とをスプライン係合させる。その後、筒状部21の内周部に形成された第2固定溝21dよりも第1ピストン部42の第1押圧部422が軸方向第2側L2に位置した状態で、第2固定溝21dに環状部材10を取り付ける。なお、第2固定溝21dは、第1固定溝21cよりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0129】
図6に示すように、第1アセンブリAS1の第2アセンブリAS2への組み付け作業は、ロータRoの回転軸心(軸方向L)が鉛直方向に沿うように、第1アセンブリAS1の姿勢を維持した状態で行われる。本例では、第1アセンブリAS1については、第1係合装置CL1よりも第2係合装置CL2が下方に位置するように、入力部材Iを保持装置(図示を省略)によって保持する。一方、第2アセンブリAS2については、変速入力軸Mの挿入部Maが上方を向くように配置される。そして、第1アセンブリAS1を第2アセンブリAS2に対して上方から接近させ、入力部材Iの入力筒状部Iaの径方向内側R1に変速入力軸Mの挿入部Maを挿入させる。
【0130】
このとき、ロータ支持部材2の筒状部21によって支持されたロータRo等の自重により、第1外側摩擦材412とスプライン係合された筒状部21を含むロータ支持部材2が、第2係合装置CL2及び第2内側支持部材54等と共に入力部材Iに対して下方へ移動する。しかし、筒状部21の内周部に固定された環状部材10が、第1ピストン部42の第1押圧部422に上方から当接することにより、ロータ支持部材2等の更なる下方への移動が規制される。これにより、第1外側摩擦材412が、ロータ支持部材2の軸方向第1側L1の開口よりも上方へ相対移動することを規制できる。したがって、第1外側摩擦材412と筒状部21とのスプライン係合が解除されて、ロータ支持部材2等が脱落することを規制できる。つまり、第1アセンブリAS1の一部がロータ支持部材2の開口を介して脱落することを規制できる構造となっている。
【0131】
また、このとき、上記式(1)が成立しているため、入力部材Iとロータ支持部材2との軸心の位置がずれて、第1ピストン部42の外周部が筒状部21の内周面に接触した場合であっても、環状部材10が軸方向視で第1ピストン部42と重複した状態を維持できる。したがって、第1アセンブリAS1の一部がロータ支持部材2の開口を介して脱落することを確実性高く規制できる構造となっている。
【0132】
また、この際、第2係合装置CL2等の自重により、第2外側摩擦材512を支持する第2外側支持部材55が、第2内側支持部材54等と共に下方へ移動する。しかし、第2外側支持部材55の更なる下方への移動がフランジ部22によって規制される。また、第2ピストン部52の下方への移動もフランジ部22によって規制される。
【0133】
なお、第1アセンブリAS1には、ステータSt、第1軸受B1、及び第3軸受B3が取り付けられた第1側壁部11が組み付けられる。この組み付け作業は、第1アセンブリAS1の第2アセンブリAS2への組み付け作業の前及び後のいずれに行っても良い。
【0134】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1外側支持部材48が筒状部21と一体的に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1外側支持部材48が、第2外側支持部材55と同様に、筒状部21とは独立した別部材であっても良い。
【0135】
(2)上記の実施形態では、第1供給孔としてのロータ冷却孔21bが、突起部21aに対して軸方向第2側L2において、筒状部21の外周部に開口するように形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、ロータ冷却孔21bが、突起部21aに対して軸方向第1側L1において、筒状部21の外周部に開口するように形成されていても良い。或いは、ロータ冷却孔21bを備えていない構成としても良い。
【0136】
(3)上記の実施形態では、筒状部21の外周面とロータコアRocの内周面との隙間GがロータRoの冷却用の油路として機能する構成を例として説明したが、そのような構成に限定されない。ロータRoの冷却用の油路は、ロータ支持部材2、保持部材H、及びロータRoのいずれかに形成され、或いはこれらの境界部分の隙間に形成されると良い。例えば、ロータRoの冷却用の油路が、保持部材HとロータRoとの境界部分の隙間に形成されていても良い。
【0137】
(4)上記の実施形態では、第1内側支持部材44の内周部に対して径方向内側R1から油を供給する供給部SPを備え、第1内側支持部材44を径方向Rに貫通する第2供給孔として第1連通孔44aが形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1連通孔44aが形成されず、第1摩擦部材41に対して径方向内側R1以外の方向から油を供給する構成としても良い。或いは、供給部SPを備えていない構成としても良い。
【0138】
(5)上記の実施形態では、第2係合装置CL2が第1係合装置CL1に対して軸方向第2側L2に隣接して配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第2係合装置CL2が第1係合装置CL1に対して径方向Rにずれた位置に配置された構成としても良い。或いは、第2係合装置CL2を備えていない構成としても良い。
【0139】
(6)上記の実施形態では、第1アセンブリAS1と第2アセンブリAS2とを組み付ける場合に、第1係合装置CL1よりも第2係合装置CL2が下方に位置するように、入力部材Iを保持することを例として説明した。しかし、そのような方法に限定されることなく、第1アセンブリAS1と第2アセンブリAS2とを組み付ける場合に、第1係合装置CL1よりも第2係合装置CL2が上方に位置するように、ロータ支持部材2を保持しても良い。この場合には、第1ピストン部42の第1押圧部422が環状部材10に上方から当接することにより、第1係合装置CL1及び入力部材I等の更なる下方への移動が規制される。したがって、この方法であっても、第1アセンブリAS1の一部がロータ支持部材2の開口を介して脱落することを規制できる。
【0140】
(7)上記の実施形態では、動力伝達機構Tが、変速比が異なる複数の変速段を備え、回転電機MGの側から伝達される回転を、形成された変速段に応じた変速比で変速する変速機TMである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、動力伝達機構Tが、回転電機MGの側から伝達される回転を、一定の変速比で変速する固定変速比の変速機(減速機又は増速機)であっても良い。或いは、動力伝達機構Tが、回転電機MGの側から伝達される回転を、そのままの回転速度で変速出力ギヤG1に伝達するように構成されていても良い。
【0141】
(8)上記の実施形態では、車両用駆動装置100が、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている場合を例として説明した。しかし、そのような構成には限定されない。車両用駆動装置100が内燃機関EGと2つの回転電機を備えた、いわゆるシリーズ・パラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置であっても良く、或いは、内燃機関EGと2つの回転電機と動力分配用の差動歯車機構(例えば遊星歯車機構)とを備え、当該差動歯車機構によって、内燃機関EGの駆動力を、主に発電機として機能する第1回転電機と、車輪及び主に電動機として機能する第2回転電機とに分配する、いわゆるスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置であっても良い。
【0142】
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0143】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0144】
車両用駆動装置(100)は、
内燃機関(EG)に駆動連結される入力部材(I)と、
ステータ(St)、及び前記ステータ(St)に対して径方向(R)の内側(R1)に配置されたロータ(Ro)を有し、車輪(W)の駆動力源として機能する回転電機(MG)と、
前記回転電機(MG)の側から伝達される回転を前記車輪の側へ伝達する動力伝達機構(T)と、
前記ロータ(Ro)を支持するロータ支持部材(2)と、
軸方向(L)に並んで配置された第1摩擦板(412)及び第2摩擦板(411)、並びに前記第1摩擦板(412)及び前記第2摩擦板(411)を前記軸方向(L)に押圧する第1ピストン部(42)を有する第1係合装置(CL1)と、を備え、
前記第1係合装置(CL1)は、前記入力部材(I)と前記回転電機(MG)との間の動力伝達経路に配置されている、車両用駆動装置(100)であって、
前記第1摩擦板(412)を前記径方向(R)の外側(R2)から支持する第1外側支持部材(48)と、
前記第2摩擦板(411)を前記径方向(R)の内側(R1)から支持する第1内側支持部材(44)と、を更に備え、
前記第1内側支持部材(44)は、前記軸方向(L)に沿って延在する筒状に形成されて、前記第2摩擦板(411)を支持する筒状支持部(441)と、前記筒状支持部(441)から前記径方向(R)の内側(R1)に延在するように形成された径方向延在支持部(442)と、を備え、
前記径方向延在支持部(442)は、前記入力部材(I)と前記第1内側支持部材(44)とが一体的に回転するように、前記入力部材(I)に連結され、
前記第1ピストン部(42)は、前記径方向延在支持部(442)に対して前記軸方向(L)の一方側である軸方向第1側(L1)に配置され、
前記ロータ支持部材(2)は、前記軸方向(L)に沿って延在する筒状に形成されて、前記ロータ(Ro)を前記径方向(R)の内側(R1)から支持する筒状部(21)と、前記筒状部(21)に対して前記径方向(R)の内側(R1)において前記径方向(R)に沿って延在するように形成されて、前記筒状部(21)に連結されたフランジ部(22)と、を備え、
前記フランジ部(22)に対して前記軸方向第1側(L1)であって、前記筒状部(21)に対して前記径方向(R)の内側(R1)に、前記第1係合装置(CL1)が配置され、
前記第1外側支持部材(48)は、前記軸方向第1側(L1)に向けて開口すると共に、前記筒状部(21)と一体的に回転するように構成され、
前記筒状部(21)の内周部には、周方向に沿って延在する環状に形成された環状部材(10)が固定され、
前記環状部材(10)は、前記第1摩擦板(412)及び前記第2摩擦板(411)に対して前記軸方向第1側(L1)であって、前記軸方向(L)に沿う軸方向視で、前記第1ピストン部(42)及び前記第2摩擦板(411)の少なくとも一方と重複する位置に配置されている。
【0145】
この構成によれば、ロータ(Ro)とロータ支持部材(2)と第1係合装置(CL1)とを含む第1アセンブリ(AS1)を、当該第1アセンブリ(AS1)とは別の第2アセンブリ(AS2)に組み付ける場合において、第1係合装置(CL1)がロータ支持部材(2)に対して軸方向第1側(L1)に相対移動したとしても、第1ピストン部(42)及び第2摩擦板(411)の少なくとも一方が環状部材(10)に当接する。これにより、第1係合装置(CL1)の第1摩擦板(412)が、ロータ支持部材(2)の軸方向第1側(L1)の開口よりも軸方向第1側(L1)へ相対移動することを規制できる。つまり、第1摩擦板(412)がロータ支持部材(2)から外れることを規制することができる。したがって、ロータ(Ro)とロータ支持部材(2)と第1係合装置(CL1)とを含む第1アセンブリ(AS1)を、当該第1アセンブリ(AS1)とは別の第2アセンブリ(AS2)に組み付ける場合に、第1アセンブリ(AS1)の一部がロータ支持部材(2)の開口を介して脱落することを規制できる構造となっている。
【0146】
ここで、前記筒状部(21)の内周面の直径をD1とし、
前記第1ピストン部(42)の最外径をD2とし、
前記筒状部(21)の内周面から前記環状部材(10)の内周端までの前記径方向(R)の距離をD3とし、
D1-D2<D
であると好適である。
【0147】
この構成によれば、入力部材(I)が偏心して、第1ピストン部(42)の外周部が筒状部(21)の内周面に接触した場合であっても、環状部材(10)が軸方向視で第1ピストン部(42)と重複した状態を維持できる。これにより、第1アセンブリ(AS1)を第2アセンブリ(AS2)に組み付ける際に、第1アセンブリ(AS1)の一部がロータ支持部材(2)の開口を介して脱落する可能性を確実性高く規制できる。
【0148】
また、前記筒状部(21)には、前記ロータ(Ro)の冷却用の油路(G)に連通する第1供給孔(21b)が形成され、
前記第1供給孔(21b)は、前記環状部材(10)に対して、前記軸方向第1側(L1)とは反対側である軸方向第2側(L2)において、前記筒状部(21)の内周部に開口するように形成されていると好適である。
【0149】
この構成によれば、筒状部(21)の内周部に供給された油が、環状部材(10)により軸方向第1側(L1)への流動を規制されるため、多くの油を第1供給孔(21b)に供給することができる。これにより、第1供給孔(21b)を介して効率良くロータ(Ro)を冷却することができる。
【0150】
また、前記第1内側支持部材(44)の内周部に対して、前記径方向(R)の内側(R1)から油を供給する供給部(SP)を更に備え、
前記第1内側支持部材(44)には、当該第1内側支持部材(44)を前記径方向(R)に貫通する第2供給孔(44a)が形成されていると好適である。
【0151】
この構成によれば、車両用駆動装置(100)に設けられたロータ支持部材(2)等の回転部材の遠心力を利用して、第1内側支持部材(44)の内周部に対して径方向(R)の内側(R1)から適切に油を供給することができる。そして、第1内側支持部材(44)の内周部に供給された油を、第2供給孔(44a)を介して第2摩擦板(411)に供給することができる。したがって、対となる第1摩擦板(412)及び第2摩擦板(411)を適切に潤滑及び冷却することができる。
【0152】
また、前記軸方向(L)に並んで配置された第3摩擦板(512)及び第4摩擦板(511)、並びに前記第3摩擦板(512)及び前記第4摩擦板(511)を前記軸方向(L)に押圧する第2ピストン部(52)を有する第2係合装置(CL2)と、
前記第3摩擦板(512)を前記径方向(R)の外側(R2)から支持する第2外側支持部材(55)と、
前記第4摩擦板(511)を前記径方向(R)の内側(R1)から支持する第2内側支持部材(54)と、を更に備え、
前記第2係合装置(CL2)は、前記第1係合装置(CL1)に対して前記軸方向第1側(L1)とは反対側である軸方向第2側(L2)に隣接して配置され、
前記第2外側支持部材(55)は、前記ロータ支持部材(2)と一体的に回転するように構成され、
前記第2ピストン部(52)は、前記ロータ支持部材(2)と一体的に回転するように支持されていると好適である。
【0153】
この構成によれば、第2係合装置(CL2)に対して軸方向第2側(L2)に、フランジ部(22)が配置されている。これにより、第2係合装置(CL2)の軸方向第2側(L2)への移動をフランジ部(22)によって規制することができる。したがって、ロータ(Ro)とロータ支持部材(2)と第1係合装置(CL1)と第2係合装置(CL2)とを一体的に組み付けた第1アセンブリ(AS1)を、当該第1アセンブリ(AS1)とは別の第2アセンブリ(AS2)に組み付ける場合において、ロータ支持部材(2)の開口が上方を向いた状態とすることで、第2係合装置(CL2)がロータ支持部材(2)から脱落することを規制できる。
【0154】
前記第2係合装置(CL2)を備えた構成において、
前記フランジ部は、前記第2係合装置よりも前記径方向の内側まで延在していると好適である。
【0155】
この構成によれば、ロータ支持部材(2)の開口が上方を向いた状態で、第1アセンブリ(AS1)を第2アセンブリ(AS2)に組み付ける場合において、第2係合装置(CL2)がロータ支持部材(2)から脱落することを確実性高く規制できる。
【0156】
また、前記第2係合装置(CL2)は、前記回転電機(MG)と前記動力伝達機構(T)との間の動力伝達経路に配置されていると好適である。
【0157】
この構成によれば、第1係合装置(CL1)と第2係合装置(CL2)との係合の状態を切り替えることにより、動力伝達機構(T)に対して回転電機(MG)及び内燃機関(EG)のうちの回転電機(MG)のみが連結された状態と、動力伝達機構(T)に対して回転電機(MG)及び内燃機関(EG)の双方が連結された状態と、回転電機(MG)と内燃機関(EG)とを連結してそれらを動力伝達機構(T)から分離した状態と、を切り替えることができる。
【0158】
また、前記動力伝達機構(T)は、変速比が異なる複数の変速段を備え、前記回転電機(MG)の側から伝達される回転を、形成された前記変速段に応じた変速比で変速する変速機(TM)であると好適である。
【0159】
この構成によれば、車輪(W)に伝達する駆動力を必要に応じて変化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本開示に係る技術は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、ステータ、及び当該ステータに対して径方向の内側に配置されたロータを有し、車輪の駆動力源として機能する回転電機と、当該回転電機の側から伝達される回転を車輪の側へ伝達する動力伝達機構と、ロータを支持するロータ支持部材と、摩擦係合装置と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0161】
100 :車両用駆動装置
2 :ロータ支持部材
21 :筒状部
22 :フランジ部
CL1 :第1係合装置
411 :第1内側摩擦材(第2摩擦板)
412 :第1外側摩擦材(第1摩擦板)
42 :第1ピストン部
44 :第1内側支持部材
441 :第1筒状支持部(筒状支持部)
442 :第1径方向延在部(径方向延在支持部)
48 :第1外側支持部材
10 :環状部材
MG :回転電機
St :ステータ
Ro :ロータ
T :動力伝達機構
W :車輪
L :軸方向
L1 :軸方向第1側
L2 :軸方向第2側
R :径方向
R1 :径方向内側
R2 :径方向外側
図1
図2
図3
図4
図5
図6