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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】光干渉装置、及び、生体情報解析装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20240806BHJP
   A61B 5/021 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A61B5/026 120
A61B5/021
G01N21/17 610
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020142422
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038108
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】沢渡 彩映
(72)【発明者】
【氏名】江口 司
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽
(72)【発明者】
【氏名】土屋 仁
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0299251(US,A1)
【文献】国際公開第2015/132880(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0075843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
受光部と、
前記発光部から射出された光を、参照光と、生体に入射される測定光と、に分離する光
分離部と、
前記参照光を散乱光に変換する拡散板と、を備え、
前記光分離部は、内部に光学膜を有する長方体状のビームスプリッターであり、
前記拡散板は、前記ビームスプリッターの一面に設けられ、
前記測定光は、前記生体の内部で反射して検出光となり、
前記検出光は、前記参照光と合波して前記受光部に入射する、
光干渉装置。
【請求項2】
前記受光部の前段には、集光部が設けられ、
前記集光部は、前記検出光と、前記参照光とを合波した干渉光を前記受光部に集光させ
る、
請求項1に記載の光干渉装置。
【請求項3】
前記光分離部の前記光学膜は、ハーフミラー膜、又は、偏光分離膜である、
請求項1に記載の光干渉装置。
【請求項4】
発光部と、
受光部と、
前記発光部から射出された光を、参照光と、生体に入射される測定光と、に分離する光
分離部と、
前記参照光を散乱光に変換する拡散板と、を備え、
前記測定光は、前記生体の内部で反射して検出光となり、
前記検出光は、前記参照光と合波して前記受光部に入射し、
第1面において、前記発光部と前記受光部とが隣り合って設けられており、
前記第1面と対向する第2面は、前記生体に向い合う側の面であり、
前記第1面と前記第2面との間には、前記第1面から前記第2面に向かってV字状に配
置される第1光学膜と、第2光学膜とが設けられ、
前記第2光学膜の表面には、前記拡散板が設けられており、
前記第1光学膜は前記光分離部であり、前記発光部から射出された光は、前記第1光学
膜で前記参照光と、前記測定光とに分離され、
前記測定光は、前記第2面から前記生体に入射し、前記生体の内部で反射した検出光は
、前記第2光学膜、及び、前記拡散板を透過した後、前記受光部に進行し、
前記参照光は、前記拡散板に進行し、前記拡散板において散乱、及び、反射されて散乱
光に変換された前記参照光となり、前記検出光と合波して前記受光部に入射する、
干渉装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光干渉装置と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出光と、前記参照光とを合波した干渉光の干渉信号に基づいて、
生体の情報を解析する、
生体情報解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉装置、及び、当該光干渉装置を備えた生体情報解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非侵襲で血流や血圧等の生体情報を解析する測定技術が提案されている。例えば、特許文献1には、レーザードップラー法を用いた血液速度の測定装置が開示されている。当該測定装置では、光源から射出されたビームをサンプルビームと、基準ビームとに分割し、サンプルビームを生物試料中の領域へ導き、その領域から反射したサンプルビームと反射された基準ビームとの干渉を検出することで血液の速度を測定するとしている。
【0003】
また、サンプルビームと基準ビームは少なくともその進行経路の一部分にわたって光ファイバに結合するという記載や、特許文献1の図5の描写から、両ビームの導光距離はかなりの長さがあるものと推測される。なお、サンプルビームのことを測定光、測定光が生体の内部で反射した光を検出光、基準ビームのことを参照光ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-206086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の測定装置では、S/N比の高い計測が困難であるという課題があった。詳しくは、生体からの検出光、及び、参照光の導光距離が長いため、受光部で受光される光の強度が小さかった。さらに、生体の内部で反射された検出光は散乱光であり、検出光が等方的に広がるのに対して、参照光はコヒーレントで直進性の高いレーザー光である。このため、検出光と参照光とにおける光線のベクトル成分の大部分は重ならないため、検出光と参照光とを合せた干渉光における光ビート信号は非常に小さいものとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る光干渉装置は、発光部と、受光部と、前記発光部から射出された光を、参照光と、生体に入射される測定光と、に分離する光分離部と、前記参照光を散乱光に変換する拡散板と、を備え、前記測定光は、前記生体の内部で反射して検出光となり、前記検出光は、前記参照光と合波して前記受光部に入射する。
【0007】
本願に係る生体情報解析装置は、上記の光干渉装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出光と、前記参照光とを合波した干渉光の干渉信号に基づいて、生体の情報を解析する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る解析装置の側面図。
図2】解析装置の機能ブロック図。
図3】光ビート信号の説明図。
図4】光ビート信号の単位時間における出力電圧を示すグラフ図。
図5】パワースペクトルを示すグラフ図。
図6】血流量の変化を示すグラフ図。
図7】光干渉装置の構成図。
図8】実施形態2の光干渉装置の構成図。
図9】実施形態3の光干渉装置の構成図。
図10】従来の光干渉装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
***生体情報解析装置の概要***
図1は、実施形態1に係る解析装置の側面図である。
解析装置100は、被験者の生体情報を非侵襲的に測定する生体情報解析装置である。
解析装置100は、被験者の生体における特定の部位の血流量、及び、血圧を生体情報として測定する。以下の説明では、好適例として被験者の手首を生体Hとして例示する。なお、測定部位となる生体Hは、内部に細動脈が存在する生体部位であれば良く、例えば、上腕や、首などであっても良い。
【0010】
解析装置100は、筐体部12とベルト14とを具備する腕時計型の携帯機器であり、好適例において手首に装着される。
筐体部12には、光干渉装置10や、表示装置21などが内蔵されており、光干渉装置10は、手首の内側に面している。表示装置21は、測定結果を表示する液晶パネルなどの表示部であり、光干渉装置10の反対側の面に設けられており、被験者が視認可能となっている。
ベルト14の長さ調整や、筐体部12のデザインにより、手首への装着状態において、光干渉装置10が手首の動脈位置と対向する位置に配置される。
【0011】
図2は、解析装置の機能ブロック図である。
解析装置100の筐体部12には、光干渉装置10、表示装置21に加えて、制御部としての制御装置20、記憶装置22などが内蔵されている。なお、光干渉装置10の詳細は、後述する。
制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)、又は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理装置であり、解析装置100の全体を制御する。また、制御装置20には、演算部25が含まれている。演算部25は、後述の制御プログラム実行時において各種演算を行う仮想部位である。詳細は後述するが、制御装置20は、光干渉装置10が検出した干渉光の干渉信号に基づいて、演算部25や、記憶装置22と共働して、血流量や、血圧などの生体の情報を解析する。
【0012】
記憶装置22は、RAM(Random Access Memory)、及び、ROM(Read Only Memory)を備えて構成される。RAMは、各種データ等の一時記憶に用いられ、ROMは、解析装置100の動作を制御するための制御プログラムや、付随するデータなどを記憶する。制御プログラムには、解析装置100を起動させるときの処理の順序と内容を指示する起動プログラムや、血流量の測定における処理の順序と内容を規定した血流量測定プログラムや、血流量から血圧を導出するアルゴリズムを含む血圧演算プログラムなどが含まれている。付随データには、血圧演算の際に用いられる血管径指標テーブルなどが含まれている。
【0013】
なお、制御装置20の機能を複数の集積回路に分散した構成や、制御装置20の一部または全部の機能を専用の電子回路で実現した構成であっても良い。
また、図2では制御装置20と記憶装置22とを別個の要素としたが、記憶装置22を内包する制御装置20を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により実現した構成であっても良い。
【0014】
***血流量の測定原理***
図3は、光ビート信号の説明図。図4は、光ビート信号の単位時間における出力電圧を示すグラフ。図5は、パワースペクトルを示すグラフ。図6は、血流量の変化を示すグラフである。図10は、従来の光干渉装置の構成図である。
【0015】
まず、従来の光干渉装置90による血流量の測定原理について説明する。
図10に示す、従来の光干渉装置90は、発光部1、ビームスプリッター2、ミラー4、受光部7を備えたマイケルソン干渉計である。また、図10では、測定に寄与する光を抜粋して図示している。他の図面においても、同様である。
発光部1はコヒーレンスなレーザー光を出射するレーザー光源であり、出射されたレーザー光70は、キューブ状のビームスプリッター2のハーフミラー膜3で、生体Hに向かう測定光71と、ミラー4に向かう参照光72とに分割される。測定光71が生体Hの内部で反射した検出光75の一部は、ハーフミラー膜3を介して受光部7に入射する。また、ミラー4で反射した参照光76の一部は、ハーフミラー膜3で反射して、受光部7に入射する。受光部7は、フォトダイオード等の受光素子を備えている。なお、ここでは、血流量の測定に寄与する検出光75を主体に説明したが、ハーフミラー膜3で反射されて発光部1に向かう検出光75もあるが、図示を省略している。また、同様に、参照光76においても、ハーフミラー膜3を透過して、発光部1に向かう参照光76もある。
【0016】
生体Hに入射する測定光71の周波数を周波数f0としたときに、入射した測定光71は、生体Hの組織内において散乱と反射を繰り返しながら伝搬することで散乱光となり、その一部が検出光75として受光部7に入射する。
ここで、生体Hの表面の皮膚や、皮下組織といった静止組織で反射された測定光71による検出光の周波数は、周波数f0のままである。これに対して、血管55内において、ある流速で移動する血液中の赤血球56などの血球で反射された測定光71による検出光75の周波数は、ドップラ効果によって流速に応じた周波数変化が生じ、周波数f0とは異なる周波数fdとなる。
【0017】
一般的に、レーザー光の周波数は数100THzであり、既存のフォトダイオードなどの受光素子の応答特性では、ドップラシフト周波数を直接計測することが困難であった。
このため、図3に示すように、静止組織における周波数f0の検出光と、血球からの周波数fdの検出光とが干渉して生じた光ビート信号を検出し、ドップラシフト周波数fbを計測することにより、血流の速度情報を取得することができる。これにより、光学計測により、非侵襲で生体Hの血流速度情報が取得可能となる。なお、光ビート信号のことをうなり信号ともいう。
【0018】
詳細に説明する。
一定速度で移動する血球で反射した検出光75の周波数fdは、数式(1)の通り、速度Vel、入射光波長λ、速度ベクトルと入射光ベクトルのなす角θで決定する。
【0019】
【数1】
しかし、生体計測では組織での入射光の散乱による入射角θの分布や、血管内の血流速度Velの分布があるため、様々なドップラシフト周波数のうなりが重畳した信号が受光部7に入射する。
【0020】
図4は、光ビート信号の単位時間における出力電圧を示すグラフであり、横軸に時間t(ms)、縦軸に出力電圧(V)を取っている。
光ビート信号I(t)を、図4における時間ta単位で周波数展開すると、図5に示すパワースペクトルが得られる。図5のパワースペクトルは血流速度分布を示しており、横軸の周波数f(kHz)は血球の速度に相当し、縦軸のパワーP(f)は動いている血球数に相当する。換言すれば、パワーP(f)は、光ビート信号I(t)の交流成分を周波数展開したものである。
そして、周波数で重み付けしたパワースペクトルを、所定の周波数帯域で積分した数値は、血流量の相対値であるFLOWと定義することができる。よって、図6に示すように、縦軸のFLOWを時間t単位ごとにプロットすることにより、FLOWの過渡応答が得られる。なお、横軸は、時間t(ms)を取っている。
【0021】
図10に戻る。
前述の通り、ドップラシフトした生体Hからの検出光75はハーフミラー膜3を介して受光部7に進行し、ミラー4で反射した参照光76はハーフミラー膜3で反射して受光部7に進行し、両者は合波して干渉し、受光部7に入射する。但し、前述したように、生体の内部で反射された検出光75は散乱光であり、検出光75が等方的に広がるのに対して、参照光76はコヒーレントで直進性の高いレーザー光であるため、検出光75と参照光76とにおける光線のベクトル成分の大部分は重ならないため、両者を合せた干渉光における光ビート信号は小さいものであった。なお、図10では、直進光を実線で示し、散乱光を破線で示している。他の図でも同様である。
ここで、検出光75と参照光76との光路差が時間変動しない場合、両者が干渉した光ビート信号の強度I(t)は数式(2)で表される。
【0022】
【数2】
なお、数式(2)において、検出光の電場強度をAs、参照光の電場強度をArとしている。また、右辺の第1項と第2項は直流成分として、第3項は交流成分として観測される。
【0023】
フーリエスペクトルF(f)は、光ビート信号の強度I(t)をフーリエ変換した周波数の関数であり、数式(3)で表される。
そして、図5のパワースペクトルP(f)は、数式(4)に示すように、検出光強度Isと参照光強度Irとの積に比例する。
【0024】
【数3】
【0025】
パワースペクトルP(f)と同様、数式(5)に示すように、図6の血流量の相対値FLOWも、検出光強度Isと参照光強度Irとの積に比例する。
【0026】
【数4】
【0027】
ここまで、血流量の計測原理について説明した。
血圧については、血流量と、生体Hの細動脈の血管径とが解れば、演算により導出することができる。詳しくは、血圧は、血流量、及び、血管径と相関関係があるため、両者が解れば、導出可能である。血流量と血管径(血管抵抗)の相対値は、レーザードップラー計測にて取得することができる。
【0028】
発明者等の実験結果によれば、生体計測において検出光強度Isを大きくすることは困難であるが、数式(4)からすると、参照光強度Irを大きくすることができれば、パワースペクトル、及び、FLOWを大きくできることが解る。
【0029】
***光干渉装置の構成***
図7は、本実施形態の光干渉装置の構成図であり、図10に対応している。
本実施形態の光干渉装置10は、発光部1、光分離部としてのビームスプリッター2、拡散板5、集光部としてのレンズ6、受光部7などから構成されている。なお、図7では、光干渉装置10の基本的な光学構成を示している。
【0030】
発光部1は、狭帯域でコヒーレントなレーザー光70を出射するレーザー光源である。好適例では、共振器内の共振によりレーザー光を出射する半導体レーザーや、ガスレーザーを用いることができる。
【0031】
ビームスプリッター2は、2つの三角柱のプリズムを貼り合わせたキューブ状のビームスプリッターであり、ハーフミラー膜3を備えている。なお、ビームスプリッター2の形状は、立方体に限らず、直方体であっても良い。発光部1からのレーザー光70は、ハーフミラー膜3で反射して生体Hに向かう測定光71と、ハーフミラー膜3を透過して拡散板5に向かう参照光72とに分割される。好適例において分割比は50:50としているが、レーザー光70の強度や、光学構成に応じて、ハーフミラー膜3の透過/反射率を調節して、分割比を適宜設定すれば良い。透過/反射率は、ハーフミラー膜3を構成する複数層の光学薄膜の積層構成や、厚さを変更することにより調整できる。なお、ハーフミラー膜に限定するものではなく、同様の光学機能を有する光学膜であれば良く、例えば、無偏光ビームスプリッターや、偏光ビームスプリッターであっても良い。
【0032】
拡散板5は、入射する参照光72を散乱光に変える拡散板である。好適例では、発泡樹脂加工PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)などのフッ素樹脂発泡体シート製の反射板や、すりガラスなどの散乱板を用いることができる。なお、図7では、ビームスプリッター2と拡散板5との間を空けて描写されているが、ビームスプリッター2の面に、拡散板5を貼り付けても良い。また、拡散板5の背面に反射ミラーを配置しても良い。反射ミラーを重ねることで、光の利用効率を高めることができる。
【0033】
レンズ6は、検出光75、及び、参照光76を集光して受光部7へ導く集光レンズである。好適例では、凸レンズや、コリメータレンズを用いることができる。また、ビームスプリッター2の内部に集光レンズを作り込んだ構成であっても良い。
受光部7は、検出光75、及び、参照光76を受光し、電気量に変換する光センサである。好適例では、受光強度に応じた電荷を発生するフォトダイオードを用いることができる。光センサは、発光部1の出射波長に応じて受光素子を選定することが好ましい。光源波長が近赤外領域の場合、感度が高いInGaAs(インジウムガリウム砒素)や、GaAs(ガリウム砒素)で光電変換層が形成された光センサが好適である。光源波長が可視光から近赤外領域(~900nm)では、シリコンで形成された光センサが好適である。
【0034】
また、ビームスプリッター2の生体H側の面に、カバー部材(図示せず)を設けても良い。カバー部材は、生体Hの皮膚表面と接触し、生体Hに測定光71を照射するとともに、生体Hからの検出光75を含む光を取り込むための透明な光学部材である。好適例では、低反射コートを備える光学ガラス、光学プラスチックや、フレネルレンズなどを用いることができる。
【0035】
ビームスプリッター2において、レンズ6側の面を第1面としたとき、第1面と対向し、生体H側と向い合う面が第2面である。ビームスプリッター2において、発光部1側の面を第3面としたとき、第3面と対向する第4面側には、拡散板5が配置されている。
ビームスプリッター2のハーフミラー膜3は、発光部1からのレーザー光70の進行方向に対して約45°の角度を持って配置されており、ハーフミラー膜3で反射された測定光71は、第2面に略直角に入射し、生体H側に射出される。
【0036】
***光干渉装置による検出態様***
図7を用いて、本実施形態の光干渉装置10による検出態様を説明する。
発光部1から出射されたコヒーレンスなレーザー光70は、ビームスプリッター2のハーフミラー膜3で、生体Hに向かう測定光71と、拡散板5に向かう参照光72とに分離される。
【0037】
生体Hに入射した測定光71は、生体Hの組織内において散乱と反射を繰り返しながら伝搬することで散乱光となり、その一部が検出光75としてビームスプリッター2に入射する。ビームスプリッター2に入射した検出光75の一部は、ハーフミラー膜3を介してレンズ6に入射し、集光されて受光部7に入射する。
【0038】
他方、拡散板5に入射した参照光72は、拡散板5において散乱、及び、反射されて散乱光に変換された参照光76となり、その一部がビームスプリッター2に入射する。ビームスプリッター2に入射した参照光76の一部は、ハーフミラー膜3で反射してレンズ6に入射し、集光されて受光部7に入射する。
ここで、図7に示すように、拡散板5で反射された参照光76は、破線で示された散乱光となっている。参照光76は、同じ散乱光である検出光75と合波して干渉光となり、受光部7に入射される。
【0039】
以上述べた通り、本実施形態の光干渉装置10、及び、解析装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
光干渉装置10は、発光部1から射出されたレーザー光70を、参照光72と、生体Hに入射される測定光71と、に分離するビームスプリッター2と、参照光72を散乱光に変換する拡散板5と、を備え、測定光71は、生体Hの内部で反射して検出光75となり、検出光75は、散乱光に変換された参照光76と合波して受光部7に入射する。
生体Hの内部で反射された検出光75は散乱光となっている。そして、拡散板5で反射された参照光76も散乱光となっている。
よって、共に散乱光である、検出光75と参照光76との光線のベクトル成分の重なりが多くなり、干渉に関与する光線数が増えるため、従来に比べてS/N比の高い光ビート信号による計測ができる。
従って、S/N比の高い計測が可能な光干渉装置10を提供することができる。
【0040】
また、光分離部としてのビームスプリッターが備えるハーフミラー膜3の透過/反射率の分割比を変更して、反射率を高めることにより、参照光強度Irを大きくすることができる。
よって、パワースペクトル、及び、FLOWを大きくできるため、従来に比べてS/N比の高い光ビート信号による計測ができる。
また、光分離部は、同様の光学機能を有する光学膜であれば良く、例えば、無偏光ビームスプリッターや、偏光ビームスプリッターなどの偏光分離膜であっても良い。
【0041】
また、受光部7の前段には、集光部としてのレンズ6が設けられており、レンズ6は、検出光75と参照光76とを合波した干渉光を受光部7に集光させる。
これによれば、検出光75と参照光76とを効率良く受光部7に入射させることができる。
【0042】
また、生体情報の解析装置100は、光干渉装置10と、制御装置20と、を備え、制御装置20は、検出光75と参照光76とを合波した干渉光の干渉信号に基づいて、生体の情報を解析する。
これによれば、解析装置100は、S/N比の高い計測が可能な光干渉装置10を備えている。従って、非侵襲で感度の良い生体情報の解析装置100を提供することができる。
【0043】
実施形態2
***光干渉装置の異なる態様(1)***
図8は、本実施形態の光干渉装置の構成図であり、図7に対応している。
本実施形態の光干渉装置10bは、実際の製品への組込み性を考慮した小型な構成となっている。詳しくは、光干渉装置10bは、実施形態1の光干渉装置10の各部位を、ビームスプリッター2の周囲に集めた構成である。基本的な光学作用は、実施形態1の光干渉装置10と同じであり、同一の部位には同一の附番を附し、重複する説明は省略する。
【0044】
光干渉装置10bは、略腕時計サイズの筐体部12(図1)の内部に収納するために、コンパクトな構成となっており、約5mm角のビームスプリッター2の周囲に各部を配置した構成となっている。
光干渉装置10bは、発光部11、ビームスプリッター2、拡散板15、カバー部材18、ミラー19、集光部としてのレンズ16、受光部17などから構成されている。
【0045】
発光部11は、実施形態1の発光部1と同様な機能を有するレーザー光源であるが、ビームスプリッター2の一面に収まる小型サイズのレーザー光源を用いている。好適例では、発光部11のサイズを約2mm角としている。
ビームスプリッター2は、一辺の長さが約5mmのキューブ状の光分離部であり、ハーフミラー膜3を備えている。
拡散板15は、実施形態1の拡散板5と同様な拡散板であるが、ビームスプリッター2の発光部11が配置された面の反対側の面に合せたサイズで、当該面に貼り付けられている。
【0046】
カバー部材18は、ビームスプリッター2の生体H側に設けられた光学部材である。カバー部材18は、生体Hの皮膚表面と接触し、生体Hに測定光71を照射するとともに、生体Hからの検出光75を含む光を取り込むための透明な光学部材である。好適例では、低反射コートを備える光学ガラスを用いている。
ミラー19は、拡散板15の裏側に重ねられた反射ミラーである。拡散板15とミラー19は、予め両者が貼り合わされた大判シート部材から、約5mm角にカットされた部品をビームスプリッター2に貼り付けると効率が良い。
【0047】
受光部17は、実施形態1の受光部7と同様な光センサであるが、約2mm角の小さなフォトダイオードを用いている。受光部17の受光面には、凸レンズからなるレンズ16が設けられている。または、ビームスプリッター2の内部に集光レンズを作り込んだ構成であっても良い。
なお、上記では各部位における好適例を挙げたが、一例であり、同様の機能を有する部材に変更しても良い。例えば、実施形態1において各部位の選択肢として記載された部材と入替ても良い。
【0048】
***光干渉装置による検出態様***
図8を用いて、本実施形態の光干渉装置10bによる検出態様を説明する。
発光部11から出射されたコヒーレンスなレーザー光70は、ビームスプリッター2のハーフミラー膜3で、生体Hに向かう測定光71と、拡散板15に向かう参照光72とに分離される。
【0049】
生体Hに入射した測定光71は、生体Hの組織内において散乱と反射を繰り返しながら伝搬することで散乱光となり、その一部が検出光75としてビームスプリッター2に入射する。ビームスプリッター2に入射した検出光75の一部は、ハーフミラー膜3を介してレンズ16に入射し、集光されて受光部17に入射する。
【0050】
他方、拡散板15に入射した参照光72は、拡散板15において散乱、及び、反射されて散乱光に変換された参照光76となり、ビームスプリッター2に入射する。拡散板15を透過した一部の光は、ミラー19で反射されて拡散板15に入射する。ビームスプリッター2に入射した参照光76は、その一部がハーフミラー膜3で反射してレンズ16に入射し、集光されて受光部17に入射する。
ここで、図8に示すように、拡散板15で反射された参照光76は、破線で示された散乱光となっている。参照光76は、同じ散乱光である検出光75と合波して干渉光となり、受光部17に入射される。
【0051】
以上述べた通り、本実施形態の光干渉装置10bによれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
拡散板15は、長方体状のビームスプリッター2の一面に設けられるため、光干渉装置10bを小型に構成できる。さらに、発光部11、受光部17も、ビームスプリッター2に面して設けられている。
従って、略腕時計サイズの筐体部12(図1)の内部に収納可能なコンパクトな光干渉装置10bを提供することができる。
【0052】
実施形態3
***光干渉装置の異なる態様(2)***
図9は、本実施形態の光干渉装置の構成図であり、図7図8に対応している。
本実施形態の光干渉装置10cも、実際の製品への組込み性を考慮した小型な構成となっている。基本的な光学作用は、上記実施形態の光干渉装置10、光干渉装置10bと同じであり、同一の部位には同一の附番を附し、重複する説明は省略する。
【0053】
光干渉装置10cは、略腕時計サイズの筐体部12(図1)の内部に収納するために、コンパクトな構成となっており、全体では約5mm角の立方体に収まるサイズである。
光干渉装置10bは、枠体30、発光部11、受光部17、ハーフミラー33,34、拡散板35、カバー部材18、集光部としてのレンズ36などから構成されている。
【0054】
枠体30は、ハーフミラー33,34を含む各部を所定の位置に配置する筐体であり、側面視において長方形状をなしている。長方形の一方の長辺は生体H側に面しており、他方の長辺側の面には、発光部11と受光部17とが並んで配置されている。なお、枠体30において、発光部11と受光部17とが配置される面が第1面であり、第1面と対向し、生体H側の面が第2面である。好適例において、枠体30は黒色の硬質の樹脂で構成されており、長辺の長さは約5mmである。なお、枠体30の内面で光が反射しなければ他の材質であっても良く、例えば、金属板をプレス加工した物であっても良い。金属板を用いる場合、内面には黒色の無反射塗装を施す。また、枠体30は内部が空間の構成に限定するものではなく、同様の機能を備えていれば良く、例えば、3角柱のプリズムを3つ組み合わせた構成であっても良い。
【0055】
枠体30の第1面には、発光部11と受光部17とが並んで配置されている。発光部11、受光部17は、実施形態2での説明と同様の小型部品を用いている。発光部11、受光部17は、基板39に実装された状態で、出射口、受光面を枠体30に向けて取り付けられている。
枠体30の内部には、V字状に2枚のハーフミラー33,34、及び、レンズ36が配置されている。ハーフミラー33は、発光部11の直下に約45°の傾きを持って配置されている。ハーフミラー34は、受光部17の直下に、ハーフミラー33とは逆方向に約45°の傾きを持って配置されている。なお、ハーフミラー33が第1光学膜に相当し、ハーフミラー34が第2光学膜に相当する。レンズ36については、後述する。これらの部位以外の枠体30の内部は空間であり、空気層となっている。
【0056】
ハーフミラー34の受光部17側の面には、拡散板35が設けられている。拡散板35は、実施形態1の拡散板5と同様の拡散板であるが、ハーフミラー34のサイズで、当該面に貼り付けられている。
カバー部材18は、実施形態2での説明と同様の透明な板状部材であり、枠体30の生体H側の面に設けられている。
レンズ36は、好適例では凸レンズであり、受光部17の前段に配置されている。なお、実施形態2のレンズ16のように、受光部17の受光面にレンズが設けられる構成であっても良い。
上記では各部位における好適例を挙げたが、一例であり、同様の機能を有する部材に変更しても良い。例えば、実施形態1において各部位の選択肢として記載された部材と入替ても良い。
【0057】
***光干渉装置による検出態様***
図9を用いて、本実施形態の光干渉装置10cによる検出態様を説明する。
発光部11から出射されたコヒーレンスなレーザー光70は、ハーフミラー33で、生体Hに向かう測定光71と、拡散板35に向かう参照光72とに分離される。
【0058】
生体Hに入射した測定光71は、生体Hの組織内において散乱と反射を繰り返しながら伝搬することで散乱光となり、その一部が検出光75としてハーフミラー34に入射する。ハーフミラー34に入射した検出光75の一部は、ハーフミラー34、及び、拡散板35を介して、散乱光のままレンズ36に入射し、集光されて受光部17に入射する。
【0059】
他方、拡散板35に入射した参照光72は、拡散板35において散乱、及び、反射されて散乱光に変換された参照光76となり、その一部がレンズ36に入射する。
ここで、図9に示すように、拡散板35で反射された参照光76は、破線で示された散乱光となっている。参照光76は、同じ散乱光である検出光75と合波して干渉光となり、受光部17に入射される。
【0060】
以上述べた通り、本実施形態の光干渉装置10cによれば、上記実施形態での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
枠体30の第1面において、発光部11と受光部17とが隣り合って設けられており、第1面と対向する第2面は、生体Hに向い合う側の面であり、第1面と第2面との間には、第1面から第2面に向かってV字状に配置されるハーフミラー33と、ハーフミラー34とが設けられ、ハーフミラー34の表面には、拡散板35が設けられており、ハーフミラー33は光分離部であり、発光部11から射出された光は、ハーフミラー33で参照光72と、測定光71とに分離され、測定光71は、第2面から生体Hに入射し、生体Hの内部で反射した検出光75は、ハーフミラー34、及び、拡散板35を透過した後、受光部17に進行し、参照光72は、拡散板35に進行し、拡散板35において散乱、及び、反射されて散乱光に変換された参照光76となり、検出光75と合波して受光部17に入射する。
【0061】
よって、共に散乱光である、検出光75と参照光76との光線のベクトル成分の重なりが多くなり、干渉に関与する光線数が増えるため、従来に比べてS/N比の高い光ビート信号による計測ができる。
従って、S/N比の高い計測が可能な光干渉装置10cを提供することができる。
【0062】
光干渉装置10cの内部には、ハーフミラー33,34、拡散板35、レンズ36が収納されている。発光部11、受光部17は基板39に実装された状態で枠体30の第2面に設けられている。さらに、カバー部材18は、枠体30の第2面に設けられている。
このように、各部位が、小さな枠体30の内部や、周囲に配置されているため、光干渉装置10cを小型に構成できる。
従って、略腕時計サイズの筐体部12(図1)の内部に収納可能なコンパクトな光干渉装置10cを提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…発光部、2…ビームスプリッター、3…ハーフミラー膜、4…ミラー、5…拡散板、6…レンズ、7…受光部、10,10b,10c…光干渉装置、11…発光部、12…筐体部、14…ベルト、15…拡散板、16…レンズ、17…受光部、18…カバー部材、19…ミラー、20…制御装置、21…表示装置、22…記憶装置、30…枠体、33,34…ハーフミラー、35…拡散板、36…レンズ、39…基板、70…レーザー光、71…測定光、72…参照光、75…検出光、76…参照光、100…解析装置。
図1
図2
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