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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/28 20060101AFI20240806BHJP
   B66C 1/42 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B66C1/28 K
B66C1/42 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020142868
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038385
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】福永 大輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】重藤 和英
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勝久
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-004582(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0140839(US,A1)
【文献】特開2012-240770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を1対のクランプ爪により挟持して押圧することにより前記把持対象物に固定されるとともに、前記把持対象物に固定された状態で把持されて動力が与えられることで前記把持対象物とともに移動を行うクランプ装置であって、
本体部と、
前記本体部から下方に突出して配置された前記1対のクランプ爪を有するクランプ部と、を備え、
前記本体部には、
前記把持対象物と係合し、前記把持対象物の位置が前記1対のクランプ爪の夫々から等距離となるようにセンタリングを行う係合部と、
前記係合部によってセンタリングされた前記把持対象物を、前記1対のクランプ爪により挟持する動作を操作する操作部と、
前記本体部の上部に配され上下動が可能であり、下降動作により下部が前記本体部内に侵入した状態において、前記1対のクランプ爪の動きをロックするロックピンと、を備え、
前記係合部は、
第1のセンタリング部と、第2のセンタリング部と、を有し、
前記第1のセンタリング部と前記第2のセンタリング部の間に、前記把持対象物の把持対象本体部から突出した突出部が入り込むことによりセンタリングを行い、
前記操作部は、
前記本体部内を貫通する軸の両端に接続されているとともに、前記本体部の両側面にそれぞれ配されている第1のハンドルと、第2のハンドルと、を有し、
前記ロックピンによるロックが解除された状態において、前記第1のハンドル又は前記第2のハンドルのいずれか一方への操作に応じて、前記1対のクランプ爪の開閉状態を操作可能である、
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路や鉄道などの遮音や発電のため、側部に支柱(H鋼)を等間隔に並べておき、この支柱に防音パネルや太陽光パネルなどのパネル部材を設置することがある。
【0003】
パネルの設置を行う際には、パネルは、トラックに積載されてH鋼前まで運搬され、トラックの荷台からH鋼前に運ばれた後に、組付け設置される。このパネルのトラックの荷台からH鋼前への運搬において、パネルはクランプ装置によってクランプされるとともに、吊られた状態となる。
【0004】
従来、このような分野の技術として、特開平08-198580号公報がある。この公報に記載されたクランプ装置では、把持対象物としての鋼材の上端部を、遠隔操作によって1対のカムによって挟持し、さらに該上端部をクランプで押圧することによって、把持対象物の上端部を固定した状態で、上方から把持を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-198580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のクランプ装置では、クランプ装置とパネルの相対位置が合っていることの確認と、手感で確認することを同時に行うことができない場合がある。例えば、パネルを設置する環境の足場が不安定であり、パネルを起こした状態でクランプを行うことがある。
【0007】
この場合、パネルを起こした状態にするとともに、パネルを人の手で支えながらクランプ装置を取り付けることが考えられるが、パネル自身が振動などによって揺れるため、不安定な状況下でのクランプ装置の取り付けとなる。さらに、パネルを起こした状態での取り付けでは、クランプ装置の中心にパネルが配置されているかが不明であり、さらに手感で確認しながら締め付け確認ができないという問題がある。
【0008】
本発明は、把持対象物が位置の位置ずれが発生することを抑制した状態でクランプ爪による把持を行うクランプ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるクランプ装置は、把持対象物を1対のクランプ爪により挟持して押圧することにより前記把持対象物に固定されるとともに、前記把持対象物に固定された状態で把持されて動力が与えられることで前記把持対象物とともに移動を行うクランプ装置であって、本体部と、前記本体部から下方に突出して配置された前記1対のクランプ爪を有するクランプ部と、を備え、前記本体部には、前記把持対象物と係合し、前記把持対象物の位置が前記1対のクランプ爪の夫々から等距離となるようにセンタリングを行う係合部と、前記係合部によってセンタリングされた前記把持対象物を、前記1対のクランプ爪により挟持する動作を操作する操作部と、を備える。
これにより、把持対象物の把持を行う前に、把持対象物とクランプ装置とをセンタリングすることができる。
【発明の効果】
【0010】
これにより、把持対象物の位置ずれが発生することを抑制した状態でクランプ爪による把持を行うクランプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかるクランプ装置の図である。
図2】実施の形態1にかかる把持対象物をクランプ装置でクランプした状態を示す図である。
図3】実施の形態1にかかる把持対象物にクランプ装置をセットした状態でハンドルを回転させる様子を示した図である。
図4】実施の形態1にかかるクランプ装置の本体部の内部の一例を示した図である。
図5】実施の形態1にかかるクランプ爪の構成の一例を示した図である。
図6】実施の形態1にかかるA-A断面図である。
図7】実施の形態1にかかるロックピンの状態を示す拡大図である。
図8】実施の形態1にかかるクランプ装置を斜め下方から示した図である。
図9】実施の形態1にかかるクランプ装置をY方向から示した図である。
図10】実施の形態1にかかる係合部と把持対象物の拡大図である。
図11】実施の形態1にかかる係合部に把持対象物が係合する状態を示した図である。
図12】実施の形態1にかかる作業者による把持対象物の運搬を示した図である。
図13】実施の形態2にかかる伸長した状態のクランプ爪を示した図である。
図14】実施の形態2にかかる収縮した状態のクランプ爪を示した図である。
図15】実施の形態2にかかる収縮した状態のクランプ爪を示したB-B断面図である。
図16】実施の形態2にかかる収縮した状態のクランプ爪を示したC-C断面図である。
図17】実施の形態3にかかるクランプ爪をX方向からの視点で示した図である。
図18】実施の形態3にかかるクランプ爪をX方向からの視点で示した図である。
図19】実施の形態4にかかるハンドルが片側にのみ設けられているクランプ装置の一例を示す図である。
図20】実施の形態5にかかるハンドルが設けられていないクランプ装置の一例を示す図である。
図21】実施の形態6にかかる係合部を把持対象物の穴部に差し込む前の状態を示す図である。
図22】実施の形態6にかかる係合部を把持対象物の穴部に差し込む前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、クランプ装置1は、本体部11と、本体部11から下方に突出して設けられた1対のクランプ爪12a,12bを有するクランプ部12と、把持対象物2のセンタリングを行う係合部13と、クランプ部12のクランプ爪12a,12bを動作させるハンドル14a,14bを有する操作部14と、本体部11の上部に設けられた吊り部15と、を備える。
【0013】
ここで図1に示すように、以下では、クランプ装置1における上下方向をZ方向、クランプ爪12a,12bが対向している方向であるとともに、クランプ爪12a,12b同士の間隔を狭める、又は広げるように水平方向に移動する方向をX方向とし、X方向及びZ方向に対して垂直である水平方向をY方向とする。
【0014】
また図2に示すように、クランプ装置1は、把持対象物2の上端部をクランプする治具である。以下では、把持対象物2はパネルであるものとする。
【0015】
さらに図3に示すように、クランプ装置1は、把持対象物2において、Y方向に延びる上端部を、X方向から挟持するように配置される。また以下では、把持対象物2を挟持できるようにクランプ爪12a,12bの間隔が十分に狭められた状態を閉状態、クランプ爪12a,12bの間隔が十分に開かれている状態を開状態として説明する。
【0016】
なお、図3に示している実線矢印は、作業者によって後述する順方向(第1の方向)にハンドル14aが回される方向を示し、点線矢印はハンドル14aの回転に伴ってハンドル14bが同時に回転しているとともに、クランプ爪12a,12bが開状態から閉状態となる様子を示している。なお、ハンドル14a,14bにおける順方向(第1の方向)とは反対方向の回転方向を逆方向(第2の方向)とする。この場合にはクランプ爪12a,12bが閉状態から開状態となる。
【0017】
図4は、本体部11の内部構造の一例を示した図である。本体部11内には、クランプ爪12a,12bの夫々の上部の一部が下方から挿入されている。
【0018】
ここで、クランプ爪12a,12bの構成について説明する。図1図3に示すように、1対のクランプ爪12a,12bは、X方向に互いに対向するように配置されている。1対のクランプ爪12a,12bは、互いに近接する閉状態となることで、本体部11の下方において把持対象物2を把持することができる。
【0019】
図5は、クランプ爪12aの一例を示している。なお、クランプ爪12bについてもクランプ爪12aと同様の構成である。そのため以下の記載において、特段の説明が無い場合には、クランプ爪12a,12bのうちいずれか一方の構成や動作についての記載内容は、他方についても同様とする。
【0020】
クランプ爪12aは、X方向に面を有し、クランプ爪12bに対してX方向の面が対向しているクランプ爪本体部31と、クランプ爪本体部31の下端部に設けられた爪32と、を有する。ここで爪32は、クランプ爪本体部31の下端からクランプ爪12bに向けて屈曲するように形成されている。
【0021】
なお、クランプ爪本体部31において、クランプ爪12bに対向している面を対向面31aとする。言い換えると、対向面31aとは、クランプ爪12a,12bにおいて、X方向における内側面である。
【0022】
また、クランプ爪12aのクランプ爪本体部31の上部近傍には、クランプ爪本体部31をX方向に貫通するタップ穴33と、クランプ爪本体部31をX方向に貫通する複数のキリ穴34と、が形成されている。ここでキリ穴34は2つであるものとする。さらに、タップ穴33と複数のキリ穴34は、それぞれZ方向の位置が揃うようにY方向に連続して配置されているとともに、タップ穴33はY方向において2つのキリ穴34に挟まれて配置されている。
【0023】
タップ穴33には、軸21が挿入される。一方、キリ穴34には、ガイド22が挿入される。
【0024】
図3に示すように、また、タップ穴33及びキリ穴34が形成されているクランプ爪12a,12bの上部の箇所は、本体部11内に配置される。なお、クランプ爪本体部31において、タップ穴33が形成される箇所の近傍はY方向に厚く形成された形状とする等、形状を適宜変更してもよい。
【0025】
本体部11内には、X方向に貫通し、両端にハンドル14a,14bが取り付けられた本体部11をX方向に貫通する軸21と、軸21の回転力をクランプ爪12a,12bのX方向の移動に変換するカム機構と、クランプ爪12a,12bのX方向への移動量を調整するガイド22と、を備える。
【0026】
軸21は、クランプ爪12a,12bに設けられているタップ穴33を、X方向に貫通するように配置されている。例えば、軸21はネジ状であり、軸21が順方向に回転することによりクランプ爪12a,12bにX方向に移動する動力が与えられる。典型的には、軸21は、カム機構を介してクランプ爪12aに接続されている。同様に、軸21は、カム機構を介してクランプ爪12bに接続されている。そのため後に詳述するように、作業者がハンドル14a又はハンドル14bのいずれかを操作することにより、軸21を回転動作させると、クランプ爪12aとクランプ爪12bが同時に動作する。
【0027】
X方向に延在するガイド22は、クランプ爪12a,12bのキリ穴34を貫通するように配置されている。これによりガイド22は、軸21の動作によって水平移動する動力が与えられたクランプ爪12a,12bに対して、X方向に、所定の距離だけ動作可能であるようにガイドを行う。
【0028】
図6はロックピン23の近傍の拡大図である。本体部11の上部には、上方に突出して配置され、上下動可能であるロックピン23が設けられている。ここでロックピン23は、Z方向に延在するピンである。
【0029】
図7(a)に示すように、クランプ爪12a,12bが閉状態のときにロックピン23を下降させることで、ロックピン23の下部が本体部11内に侵入し、クランプ爪12aのX方向外側面31bの外側に配置された状態となる。これにより、ロックピン23はクランプ爪12a,12bが閉状態から開状態とならないようにロックすることができる。
【0030】
一方、図7(b)に示すように、ロックピン23が上昇した状態である場合には、ロックピン23は、本体部11の内部に入っていない状態となるためクランプ爪12a,12bに干渉しない。すなわち作業者は、ロックピン23を上昇させた状態とすることで、クランプ爪12a,12bのロックを解除できる。言い換えると、ロックピン23が上昇した状態では、クランプ爪12a,12bは閉状態と開状態との間で自在に状態を変更できる。
【0031】
図8図9及び図10に示すように、係合部13は、本体部11のY方向側の面上に接合して配置されている第1のセンタリング部41と、本体部11の下面に配置されている第2のセンタリング部42と、を備える。係合部13では、第1のセンタリング部41及び第2のセンタリング部42を利用して、クランプ装置1と把持対象物2のセンタリングを行う。
【0032】
第1のセンタリング部41は、XZ方向に長く形成され、Y方向に薄く形成されている板状である。なお第1のセンタリング部41は、本体部11の2つのY方向面の夫々に設けられている。
【0033】
第1のセンタリング部41は、本体部11に当接する平板部41aと、平板部41aのX方向の両端部近傍からそれぞれ下方に突出する突出部41b,41cが形成されている。ここで、突出部41b及び突出部41cのX方向における内側同士の距離を長さAとする。
【0034】
なお典型的には、突出部41b,41cの夫々のX方向内側の下側の角部は、面取りにより角が削られており、テーパ形状となっている。
【0035】
第2のセンタリング部42は、Z方向に薄く形成されている直方体状である。ここで第2のセンタリング部42のY方向の長さは、本体部11のY方向の長さと同等となるように長く形成されている。1個の第2のセンタリング部42は、X方向において、クランプ爪12a,12bの内側であって、本体部11の下部に対して上部が連結されて配置されている。
【0036】
第2のセンタリング部42は、X方向に長さBで形成されている。この長さBは、前述の長さAより僅かに短く設定されている。
【0037】
なお典型的には、第2のセンタリング部42のX方向端部近傍の下側の角部では、面取りにより角が削られており、テーパ形状となっている。
【0038】
ここで、把持対象物2の形状について説明する。図9及び図10は、クランプ装置1の下方に把持対象物2が設けられた状態を示している。
【0039】
把持対象物2は、Y方向に延在する把持対象本体部2aと、X方向において所定の間隔をあける状態で、それぞれZ方向に突出している第1の突出部2bと第2の突出部2cが形成されている。なお把持対象本体部2aは、クランプ爪12a,12bによって把持される箇所である。また、第1の突出部2b及び第2の突出部2cは、把持対象本体部2aと同様に、それぞれY方向に延在するように形成されている。
【0040】
典型的には、第1の突出部2bと第2の突出部2cのX方向の間隔Cは、突出部41b及び突出部41cのX方向における内側同士の距離を長さAより短く、第2のセンタリング部42のX方向の長さである長さBと同程度の長さである。
【0041】
把持対象物2に対してクランプ装置1を設置する際には、図11(a)及び図11(b)に示すようにY方向の視点において、第1の突出部2bが、第1のセンタリング部41の突出部41bのX方向内側面41dと第2のセンタリング部42のX方向面42aの間に配置される。第2の突出部2cが、第1のセンタリング部41の突出部41cのX方向内側面41eと第2のセンタリング部42のX方向面42bの間に入り込むように配置される。なお、図11(a)はクランプ装置1の係合部13に把持対象物2をセットする前の状態であり、図11(b)はセットした後の状態である。
【0042】
なおこのとき、第1の突出部2bと第2の突出部2cの夫々のX方向の厚さは、図11(b)に示しているように、Y方向からの視点における第1のセンタリング部41と第2のセンタリング部42の隙間に入り込むことが可能な厚さである。
【0043】
これにより、把持対象物2の把持対象本体部2aに対して、係合部13を用いてクランプ装置1の位置を調整することができる。より具体的には、係合部13を用いた把持対象物2との係合により、クランプ装置1は、クランプ装置1のクランプ爪12a,12bにおいてクランプ爪本体部31の下端から爪32が延びる方向が、把持対象物2のYZ方向に対して垂直であるX方向となるように角度を調整できる。また、係合部13を用いた把持対象物2との係合により、クランプ装置1は、把持対象物2に対してセンタリングを実行できる。
【0044】
操作部14には、ハンドル14a及びハンドル14bが設けられている。ハンドル14a,14bは、それぞれ本体部11のX方向の両側面に1つずつ設けられている。ハンドル14a,14bは軸21の両端に連結されている。言い換えると、ハンドル14a,14bは、作業者がいずれか一方を回転動作させると、軸21が回転し、一対のクランプ爪12a,12bが水平方向に動作する。このようにして、操作部14では、1対のクランプ爪12a,12bによって把持対象物2を挟持する動作を操作する。
【0045】
より具体的には図3に示すように、作業者が、ハンドル14a又はハンドル14bを順方向(第1の方向)に回転動作させると、本体部11内に配置された軸21が順方向(第1の方向)に回転し、クランプ爪12a,12bの間隔が互いに狭まる方向に動作する。また作業者が、ハンドル14a又はハンドル14bを逆方向(第2の方向)に回転動作させることによって、本体部11内に配置された軸21が逆方向(第2の方向)に回転し、クランプ爪12a,12bの間隔が互いに広がる方向に動作する。
【0046】
吊り部15は、本体部11の上部に設けられている取手である。吊り部15は、クランプ装置1がクランプ爪12a,12bを用いて把持対象物2を把持した後に、作業者や、他の装置によって把持することができる。これにより、クランプ装置1ごと把持対象物2の運搬を容易に行うことができる。
【0047】
ここで、クランプ装置1を利用して把持対象物2を移動させる手順について説明する。なお、把持対象物2の運搬前の状態ではハンドル14aを操作することでクランプ爪12a,12bを操作し、運搬後の状態ではハンドル14bを操作することでクランプ爪12a,12bを操作するものとして説明する。
【0048】
最初に、クランプ装置1を把持対象物2の上に載置する(ステップS1)。この際、クランプ装置1の係合部13を、把持対象物2の上部の第1の突出部2b及び第2の突出部2cに合わせて配置する。すなわち係合部13は、把持対象物2と係合し、把持対象本体部2aは、クランプ装置1の1対のクランプ爪12a,12bの夫々から等距離となるようにセンタリングされる。
【0049】
作業者は、ハンドル14aを回転動作させる(ステップS2)。すなわち作業者は、ハンドル14aを順方向に回転させることで、軸21を順方向に回転させる。これにより、クランプ爪12aとクランプ爪12bは、互いの距離が狭まるように、それぞれがX方向に動作する。ここで、クランプ爪12a,12bは、それぞれのクランプ爪本体部31における対向面31aが、把持対象本体部2aの側面に当接する状態となるまで動作する。これにより、把持対象物2を1対のクランプ爪12a,12bにより挟持し、押圧することで把持対象物2に固定された状態となる。
【0050】
さらにこのとき、クランプ爪12a,12bのそれぞれの爪32は、把持対象本体部2aの下面より僅かに下方に入り込むように配置された状態となる。
【0051】
作業者は、ロックピン23を下降させ、クランプ爪12a,12bをロック状態にする(ステップS3)。なお作業者は、ロックピン23を下降させた後に、ハンドル14aを逆回転させるように力を加えることを試し、逆回転が行われず、クランプ爪12a,12bがロックされて開かないことを確認する。
【0052】
作業者は、吊り部15を持ち上げ、把持対象物2を移動させる(ステップS4)。具体的には、作業者は、把持対象物2を運搬先であるH鋼まで移動させ、H鋼に把持対象物2を取り付ける。すなわちクランプ装置1は、把持対象物2に固定された状態で作業者に把持され、動力が与えられることで把持対象物2とともに移動を行う。
【0053】
H鋼への把持対象物2の取り付けが完了したら、作業者は、ロックピン23を上昇させる(ステップS5)。これにより、ロックピン23によるロック状態が解除される。
【0054】
作業者は、ハンドル14bを逆方向に回転させることによって、軸21を逆方向に回転させる(ステップS6)。これにより、クランプ爪12a,12bが互いに十分に開いた状態となる。これにより、クランプ装置1を把持対象物2から取り外すことができる。
【0055】
ここで図12に示すように輸送前の把持対象物2では、作業者の位置からはハンドル14aを操作することが容易であるが、ハンドル14bを操作することが困難となる場合がある。その一方、輸送後の把持対象物2では、作業者の位置からはハンドル14aを操作することが困難であるが、ハンドル14bを操作することが容易となる場合がある。
【0056】
特に、把持対象物2として用いられるパネルの高さが2m程度である場合、クランプ装置1の本体部11の両側にそれぞれハンドル14a,14bが設けられていることにより、パネルを乗り越えずにクランプ装置1の着脱を行うことができる。したがって、作業者によるクランプ装置1の操作性を高めることができる。
【0057】
なお、把持対象物2を設置する環境が上記の例と異なる場合であっても、ハンドル14aとハンドル14bは軸21を介して連動していることから、適宜、作業者が操作しやすいハンドルを操作して、クランプ装置1を着脱することができる。
【0058】
また上記では、把持対象物2に対して、1つのクランプ装置1を取り付けて運搬するものとして説明しているが、複数のクランプ装置1を取り付けて運搬に利用してもよい。クランプ装置1の個数は、把持対象物2の形状や重量等に応じて適宜変更することができる。
【0059】
実施の形態2.
またクランプ爪は、把持対象物2の把持対象本体部2aのZ方向の厚みに対応できるように、実施の形態1に示した本体部11が上下方向に伸縮するような構造を有してもよい。図13に示すように、このクランプ爪本体部が上下方向に伸縮する構造を有するクランプ爪を、クランプ爪16a,16bとして説明する。このクランプ爪16a,16bは、実施の形態1に示したクランプ装置1において、クランプ爪12a,12bに代えて利用することができる。ここで図13はクランプ爪16a,16bを伸長させた状態であり、図14はクランプ爪16a,16bを収縮させた状態である。また図15は、図13のB-B断面図であり、図16図14のC-C断面図である。
【0060】
なお、ここではクランプ爪16aの構成の一例について説明するが、クランプ爪16aに対向して配置されるクランプ爪16bについても同様の構成である。
【0061】
クランプ爪16aは、クランプ爪本体上部51と、クランプ爪本体下部52と、クランプ爪本体上部51に対してクランプ爪本体下部52を上下動させる動力を与えるボルト53と、クランプ爪本体下部52の上下動の動きをガイドするガイド54と、を有する。
【0062】
クランプ爪本体上部51には、実施の形態1に示したクランプ爪12aの上部と同様に、上端部近傍においてX方向に貫通するタップ穴、及びX方向に貫通する複数のキリ穴が形成されている。クランプ爪本体上部51の上部において、タップ穴及びキリ穴が形成されている上端部近傍の箇所は、本体部11の内部に配置される。
【0063】
図15及び図16に示すように、クランプ爪本体上部51には、下面から上方に向けて延在する爪上部側ボルト挿入穴51a、及び複数の爪上部側ガイド挿入穴51bが形成されている。典型的には、爪上部側ボルト挿入穴51a及び2つの爪上部側ガイド挿入穴51bは、X方向の位置が略同一であるようにY方向に一直線上に連続して配置されているとともに、2つの爪上部側ガイド挿入穴51bに挟まれるように爪上部側ボルト挿入穴51aが配置されている。
【0064】
例えば、爪上部側ボルト挿入穴51aは内ネジが形成されている。この爪上部側ボルト挿入穴51aの内ネジは、ボルト53の外ネジに係合する。
【0065】
なお典型的には、それぞれの爪上部側ガイド挿入穴51bの挿入部近傍には、ガイドブッシュが形成されている。
【0066】
クランプ爪本体下部52には、上面から下方に向けて延在する爪下部側ボルト挿入穴52a、及び複数の爪下部側ガイド挿入穴52bが形成されている。典型的には、爪下部側ボルト挿入穴52a及び2つの爪下部側ガイド挿入穴52bは、X方向の位置が略同一であるようにY方向に一直線上に連続して配置されているとともに、2つの爪下部側ガイド挿入穴52bに挟まれるように爪下部側ボルト挿入穴52aが配置されている。
【0067】
なお典型的には、爪下部側ボルト挿入穴52aの挿入部近傍には、ブッシュが形成されている。
【0068】
ボルト53は、外ネジ形状を有しているとともに、上下方向に延在するように配置されている。典型的には、ボルト53の頭部53aは下側に配置されており、先端側が上側に配置されている。また、ボルト53の頭部53aやその近傍の箇所は、爪下部側ボルト挿入穴52a内に配置されており、ボルト53の先端部は、爪上部側ボルト挿入穴51aに挿入された状態のまま上下方向に可動である。
【0069】
またボルト53は、クランプ爪本体下部52の下方から工具を差し込み、ボルト53の頭部53aと工具とを係合させた状態で作業者が操作することで、回転可能である。典型的には、ボルト53の頭部53aには六角穴が形成されており、差し込む工具として六角レンチを用いることができる。
【0070】
ボルト53は、ボルト53の外ネジと、爪上部側ボルト挿入穴51aに設けられた内ネジとの噛み合いにより、作業者が回転動作させることでクランプ爪本体下部52に上下動する力が発生する。
【0071】
ガイド54は、上下方向に延在する棒状である。ガイド54の下部は、爪下部側ガイド挿入穴52bに挿入された状態で固定されている。一方、ガイド54の上部は、少なくとも一部が爪上部側ガイド挿入穴51bに挿入された状態のまま上下方向に可動である。これにより、ガイド54は、クランプ爪本体下部52の上下動の方向がずれないように調整することができる。
【0072】
このように、クランプ爪16a,16bでは、クランプ爪本体下部52の上下方向の位置を調整することで、クランプ爪本体部を上下方向に伸縮させることができる。したがって、把持対象物2の把持対象本体部2aの上下方向の厚みが大きい場合であっても、その厚みに応じてクランプ爪本体下部52の上下方向の位置調整を行い、把持対象本体部2aの下面に爪部が入り込んだ状態とすることができる。
【0073】
実施の形態3.
また、実施の形態2に示したクランプ爪本体上部51とクランプ爪本体下部52との位置の調整を、他の構造により行うこととしてもよい。この他の構造を有するクランプ爪について、クランプ爪17a,17bとして説明する。クランプ爪17a,17bは、実施の形態1に示したクランプ装置1において、クランプ爪12a,12bに代えて利用することができる。なお以下では、クランプ爪17aについて説明するが、クランプ爪17aに対向するクランプ爪17bについても同様である。
【0074】
図17及び図18に示すように、クランプ爪17aは、クランプ爪本体上部61と、クランプ爪本体下部62と、クランプ爪本体上部61とクランプ爪本体下部62とを接続するプレート63と、を備える。より具体的には、クランプ爪本体上部61のX方向外側面にはプレート63の上部が当接し、クランプ爪本体下部62のX方向外側面にはプレート63の下部が当接するように配置されている。ここで図17はクランプ爪17aをX方向からの視点で示したものであり、図18はクランプ爪17aをY方向からの視点で示した図である。
【0075】
クランプ爪本体上部61のX方向外側面には、X方向内側に延びるボルト穴61aが形成されている。このボルト穴61aには、プレート63の上部近傍においてX方向に貫通しているボルト64の先端が挿入され固定される。これにより、クランプ爪本体上部61のX方向外側面に対して、プレート63の上部が当接した状態で固定される。
【0076】
なおクランプ爪本体上部61には、実施の形態1に示したクランプ爪12aの上部と同様に、上端部近傍においてX方向に貫通するタップ穴、及びX方向に貫通する複数のキリ穴が形成されている。クランプ爪本体上部61の上部において、タップ穴及びキリ穴が形成されている上端部近傍の箇所は、本体部11の内部に配置される。
【0077】
クランプ爪本体下部62のX方向外側面には、X方向内側に延びる複数のボルト穴62aが形成されている。この複数のボルト穴62aは、上下方向に連続して形成されている。言い換えると、この複数のボルト穴62aはY方向の位置が揃った状態で、Z方向に一直線上に連続するように形成されている。
【0078】
このボルト穴62aには、プレート63の下部近傍においてX方向に貫通しているボルト64の先端が挿入され固定される。これにより、クランプ爪本体下部62のX方向外側面に対して、プレート63の下部が当接した状態で固定される。
【0079】
このとき、クランプ爪本体下部62に設けられている複数のボルト穴62aのうち、いずれのボルト穴62aにボルト64を挿入してプレート63を固定するかを選択することにより、クランプ爪本体下部62の高さを決定することができる。
【0080】
このように、クランプ爪17a,17bでは、クランプ爪本体下部62の上下方向の位置を調整することで、クランプ爪本体部を上下方向に伸縮させることができる。したがって、把持対象物2の把持対象本体部2aの上下方向の厚みが大きい場合であっても、その厚みに応じてクランプ爪本体下部62の上下方向の位置調整を行い、把持対象本体部2aの下面に爪部が入り込んだ状態とすることができる。
【0081】
なお図17に示しているように、クランプ爪本体上部61とクランプ爪本体下部62とを接続するプレート63は複数枚とすることができる。この場合、クランプ爪本体上部61のボルト穴61a及びクランプ爪本体下部62の複数のボルト穴62aは、それぞれプレート63の設置箇所にあわせて形成しておくことができる。
【0082】
実施の形態4.
また、実施の形態1では操作部14として、2つのハンドル14a,14bが本体部11のX方向側の側面のそれぞれに設けられているものとして説明したが、図19に示すように、ハンドルを片側の1つのみとすることができる。
【0083】
この場合、クランプ装置としての体積が小さくなるため、特に狭い作業環境で作業を行う場合に利便性が向上する。
【0084】
実施の形態5.
また、実施の形態1では操作部14として、2つのハンドル14a,14bが本体部11のX方向側の側面のそれぞれに設けられているものとして説明したが、図20(a)及び図20(b)に示すように、ハンドルを設けない構成とすることができる。なお図20(a)はクランプ装置の外観を示し、図20(b)は内部構造の一例を示している。
【0085】
この場合、クランプ爪12a,12bはそれぞれ独立してX方向に動作することができ、作業者は、クランプ爪12a,12bを、それぞれ個別に操作してX方向にスライド動作させることができる。
【0086】
さらにこの場合には、本体部11には、クランプ爪12aを閉状態で維持させるロックピン23aと、クランプ爪12bを閉状態で維持させるロックピン23bと、を設けておくことができる。
【0087】
このように、クランプ爪12a,12bを、ハンドル操作ではなく作業者によって直接スライド動作させる機構とすることで、ハンドルを回転させるより速くクランプ爪12a,12bを動作させることができる。また、クランプ爪12a,12bにより把持対象物2を挟んだ後に、夫々のクランプ爪12a,12bに対応しているロックピン23a,23bを下降させることで、固定することができる。
【0088】
実施の形態6.
また、実施の形態1の係合部13では、Y方向からの視点において第1のセンタリング部41と、第2のセンタリング部42との間に、把持対象物2の一部を挟み込むことによってセンタリングを行うこととしていたが、センタリングを行う方法はこれに限られない。
【0089】
例えば図21(a)及び図21(b)に示すように、把持対象物2の上面には、第1のセンタリング部41において、下方に突出している第1の突出部41b、及び第2の突出部41cが挿入可能である穴部2dが形成されている。
【0090】
図22(a)及び図22(b)に示すように、この穴部2dには、第1の突出部41b及び第2の突出部41cが上方から挿入された状態となる。このとき、クランプ装置1は、把持対象物2に対してセンタリングされた状態となる。
【0091】
このようにして、係合部13によって把持対象物2の一部を挟み込む以外の方法によっても、把持対象物2とクランプ装置1の相対位置を調整することができる。すなわち、把持対象物2の上部の構造に応じて、して、把持対象物2とクランプ装置1のセンタリングを行うための方法を変更することができる。
【0092】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 クランプ装置
2 把持対象物
2a 把持対象本体部
2b 第1の突出部
2c 第2の突出部
2d 穴部
11 本体部
12 クランプ部
12a,12b クランプ爪
13 係合部
14 操作部
14a,14b ハンドル
15 吊り部
16a,16b クランプ爪
17a,17b クランプ爪
21 軸
22 ガイド
23 ロックピン
23a,23b ロックピン
31 クランプ爪本体部
31a 対向面
32 爪
33 タップ穴
34 キリ穴
41 第1のセンタリング部
41a 平板部
41b,41c 突出部
41d X方向内側面
41e X方向内側面
42 第2のセンタリング部
42a X方向面
42b X方向面
51 クランプ爪本体上部
51a 爪上部側ボルト挿入穴
51b 爪上部側ガイド挿入穴
52 クランプ爪本体下部
52a 爪下部側ボルト挿入穴
52b 爪下部側ガイド挿入穴
53 ボルト
54 ガイド
61 クランプ爪本体上部
61a ボルト穴
62 クランプ爪本体下部
62a ボルト穴
63 プレート
64 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22