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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電圧増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20240806BHJP
   H03F 3/70 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/70
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020147175
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041766
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高▲瀬▼ 恭英
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122635(JP,A)
【文献】特開2012-165148(JP,A)
【文献】特表2007-508755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反転入力端子、非反転入力端子および出力端子を備える演算増幅回路と、
一方の端子が前記演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が前記演算増幅回路の出力端子に接続された帰還容量と、
一方の端子が前記演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が信号入力端子に接続された入力容量と、
第1の電界効果トランジスタにおけるドレイン・ソース端子間の抵抗成分を疑似抵抗とし、一方の端子が前記演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が前記演算増幅回路の出力端子に接続された第1疑似抵抗回路と、
第2の電界効果トランジスタにおけるドレイン・ソース端子間の抵抗成分を疑似抵抗とする第2疑似抵抗回路を備えて構成され、前記演算増幅回路の出力端子に現れる出力電圧のうちの信号帯域または信号帯域より高い周波数成分を減衰させた信号を出力する積分回路と、
前記第1の電界効果トランジスタおよび前記第2の電界効果トランジスの各ゲート端子に印加する同一のゲート電圧を前記第1似抵抗回路の端子間電圧を基に制御することで、前記第1疑似抵抗回路および前記第2疑似抵抗回路によって生成される各疑似抵抗の印加電圧変化による疑似抵抗値変動を抑制して、前記第1疑似抵抗回路および前記第2疑似抵抗回路の各電圧依存性を補償する1つの制御回路と、
前記積分回路の出力を前記演算増幅回路の非反転入力端子、または非反転入力端子が基準電位に接続された状態における前記演算増幅回路の反転入力端子の電位に加算する加算回路と
を備える電圧増幅回路。
【請求項2】
前記積分回路は、前記第2疑似抵抗回路によって生成される疑似抵抗を抵抗分とするCRフィルタを前記演算増幅回路の出力端子との間に備えることを特徴とする請求項1に記載の電圧増幅回路。
【請求項3】
前記入力容量は圧電素子の有する容量によって構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電圧増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転入力端子、非反転入力端子および出力端子を備える演算増幅回路を用いて構成される電圧増幅回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電圧増幅回路としては、例えば、特許文献1に開示された電荷検出回路に用いられているものがある。電荷検出回路は、同文献の図3に示されるように、疑似抵抗回路と、第3の演算増幅器と、コンデンサとを備えて構成される。この電荷検出回路は、電荷出力センサからの検出信号が第3の演算増幅器の反転入力端子に入力されることで、その出力端子に電圧増幅した検出信号を出力する。この際、疑似抵抗回路は、第3の演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続された第1の電界効果トランジスタのゲート電圧を制御して、そのドレイン・ソース間に擬似的に高抵抗を生成する。ゲート電圧は、第3の演算増幅器の出力端子電圧が考慮されて、疑似抵抗回路内の歪補償バイアス源によって生成される。このゲート電圧により、第1の電界効果トランジスタへの印加電圧変化による疑似抵抗値の非線形性が改善される。
【0003】
また、従来、非特許文献1に開示された電圧増幅回路もある。この電圧増幅回路は、DCサーボ回路を構成し、演算増幅回路の出力端子に現れる出力電圧のうち、信号帯域よりも低い周波数成分を積分回路中のローパスフィルタによって取り出し、積分して演算増幅回路のいずれかの入力端子に負帰還することで、演算増幅回路のオフセットと低周波雑音とを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/178271号
【非特許文献】
【0005】
【文献】ELECTRONICS LETTERS 20th November 2014 Vol. 50 No. 24 pp. 1808-1809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された電圧増幅回路を構成する第3の演算増幅器では、その入力端子に生じる直流オフセット電圧が、第3の演算増幅器を含む増幅回路全体の直流での利得によって増幅され、その出力端子に現れる出力電圧を飽和させてしまう問題があった。
【0007】
また、上記従来の特許文献2に開示された電圧増幅回路では、DCサーボループにおけるローパスフィルタが出力電圧のうちの信号帯域の成分を遮断しなければならない。したがって、信号周波数が直流に近い場合には、積分回路中でローパスフィルタを構成する抵抗として、特許文献1に開示された疑似抵抗回路が生成する疑似抵抗と同レベルの高抵抗が必要とされる。このため、上記従来の特許文献2に開示された電圧増幅回路では、回路基板においてその高抵抗を形成しようとすると、回路面積が大きくなってしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
反転入力端子、非反転入力端子および出力端子を備える演算増幅回路と、
一方の端子が演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が演算増幅回路の出力端子に接続された帰還容量と、
一方の端子が演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が信号入力端子に接続された入力容量と、
第1の電界効果トランジスタにおけるドレイン・ソース端子間の抵抗成分を疑似抵抗とし、一方の端子が演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が演算増幅回路の出力端子に接続された第1疑似抵抗回路と、
第2の電界効果トランジスタにおけるドレイン・ソース端子間の抵抗成分を疑似抵抗とする第2疑似抵抗回路を備えて構成され、演算増幅回路の出力端子に現れる出力電圧のうちの信号帯域または信号帯域より高い周波数成分を減衰させた信号を出力する積分回路と、
第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスの各ゲート端子に印加する同一のゲート電圧を第1似抵抗回路の端子間電圧を基に制御することで、第1疑似抵抗回路および第2疑似抵抗回路によって生成される各疑似抵抗の印加電圧変化による疑似抵抗値変動を抑制して、第1疑似抵抗回路および第2疑似抵抗回路の各電圧依存性を補償する1つの制御回路と、
積分回路の出力を演算増幅回路の非反転入力端子、または非反転入力端子が基準電位に接続された状態における演算増幅回路の反転入力端子の電位に加算する加算回路と
を備え、電圧増幅回路を構成した。
【0009】
本構成によれば、演算増幅回路の入力端子に現れる直流オフセット電圧は、その出力端子に現れる出力電圧の信号帯域およびそれより高い周波数成分が積分回路によって積分されて、出力端子に現れる出力電圧の信号帯域より低い周波数成分が取り出され、その積分回路の出力が、演算増幅回路の反転入力端子または非反転入力端子の電位に加算回路によって加算されて負帰還されることで、低減される。このため、演算増幅回路の入力端子に現れる直流オフセット電圧によって、出力端子に現れる出力電圧を飽和させてしまう問題は解消される。
【0010】
この際、積分回路中のローパスフィルタに用いられる抵抗には、第2疑似抵抗回路によって生成される高抵抗の疑似抵抗が用いられるため、大きな回路面積を使って高抵抗の抵抗を形成することなく、出力端子に現れる出力電圧のうちの信号帯域より低い周波数成分を積分回路において効果的に取り出すことができる。
【0011】
また、第1疑似抵抗回路の他端と、第2疑似抵抗回路の一端とは相互に接続されるため、同電位になる。また、第1疑似抵抗回路の一端が接続される演算増幅回路の反転入力端子と、第2疑似抵抗回路の他端が積分回路を介して接続される演算増幅回路の非反転入力端子とは、演算増幅回路の反転入力端子および非反転入力端子間のイマジナリーショートによって同電位となる。また、第2疑似抵抗回路の他端と演算増幅回路の非反転入力端子との間には積分回路が存在するが、この積分回路によって、出力電圧のうちの信号帯域より低い周波数成分が演算増幅回路の非反転入力端子に負帰還される電圧は、負帰還ループにおけるループゲインによってごく小さな値に低減される。したがって、第2疑似抵抗回路の他端と演算増幅回路の非反転入力端子との間における電圧降下はごく僅かなため、第2疑似抵抗回路の他端と演算増幅回路の非反転入力端子とはほぼ同電位と考えられる。この結果、第1疑似抵抗回路の端子間電圧と、第2疑似抵抗回路の端子間電圧とは略等しく、第1疑似抵抗回路および第2疑似抵抗回路によって略同じ値の疑似抵抗が生成されるものと、考えることができる。
【0012】
よって、第1疑似抵抗回路および第2疑似抵抗回路によって生成される各疑似抵抗の印加電圧変化による変動は、1つの制御回路の制御によって抑制して、第1疑似抵抗回路および第2疑似抵抗回路の各電圧依存性を補償することができる。このため、第1疑似抵抗回路および第2疑似抵抗回路のそれぞれに別個に制御回路を設ける必要がないので、回路面積を大きくすることなく、直流オフセット電圧によって出力電圧を飽和させることのない電圧増幅回路を構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路面積を大きくすることなく、直流オフセット電圧によって出力電圧を飽和させることのない電圧増幅回路を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態による電圧増幅回路の概略構成を示す回路図である。
図2】本発明の第2の実施形態による電圧増幅回路の概略構成を示す回路図である。
図3】本発明の第3の実施形態による電圧増幅回路の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の電圧増幅回路を実施するための形態について、説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態による電圧増幅回路1Aの概略構成を示す回路図である。
【0017】
電圧増幅回路1Aは、演算増幅回路2、帰還容量3、入力容量4、第1疑似抵抗回路5、第2疑似抵抗回路6を備えて構成される積分回路7A、制御回路10および加算回路11を備えて構成される。
【0018】
演算増幅回路2は、反転入力端子2a、非反転入力端子2bおよび出力端子2cを備える。帰還容量3は、一方の端子が演算増幅回路2の反転入力端子2aに接続され、他方の端子が演算増幅回路2の出力端子2cに接続されている。出力端子2cは、電圧増幅回路1Aの信号出力端子Voutに接続されている。入力容量4は、一方の端子が演算増幅回路2の反転入力端子2aに接続され、他方の端子が信号入力端子Vinに接続されている。第1疑似抵抗回路5は、一方の端子5aが演算増幅回路2の反転入力端子2aに接続され、他方の端子5bが演算増幅回路2の出力端子2cに接続されている。
【0019】
積分回路7Aは、第2疑似抵抗回路6とコンデンサ8から構成されるローパスフィルタと、演算増幅回路9とから構成される。演算増幅回路9は、反転入力端子9a、非反転入力端子9bおよび出力端子9cを備える。第2疑似抵抗回路6は、一方の端子6aが演算増幅回路2の出力端子2cに接続され、他方の端子6bが演算増幅回路9の反転入力端子9aに接続されている。コンデンサ8は、一方の端子が演算増幅回路9の反転入力端子9aに接続され、他方の端子6bが演算増幅回路9の出力端子9cに接続されている。演算増幅回路9の非反転入力端子9bは基準電位に接続されている。積分回路7Aは、演算増幅回路2の出力端子2cに現れる出力電圧のうちの信号帯域または信号帯域より高い周波数成分を減衰させた信号を出力する。つまり、積分回路7Aは、演算増幅回路2の出力端子2cに現れる出力電圧のうちの信号帯域より低い周波数成分を出力する。
【0020】
制御回路10は、1つ設けられ、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6によって生成される各疑似抵抗の端子間への印加電圧変化による疑似抵抗値変動を抑制して、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6の各電圧依存性を補償する。加算回路11は、積分回路7Aの出力を演算増幅回路2の反転入力端子2aまたは非反転入力端子2bの電位に加算する。本実施形態では、加算回路11は、演算増幅回路9の出力端子9cと演算増幅回路2の非反転入力端子2bとを接続する配線および演算増幅回路2の非反転入力端子2bによって構成され、積分回路7Aの出力を演算増幅回路2の非反転入力端子2bの電位に加算する。
【0021】
第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6は、本実施形態では、電界効果トランジスタにおけるドレイン・ソース間の抵抗成分を疑似抵抗とし、特許文献1に開示された電圧増幅回路におけるものと同様な構成をしている。すなわち、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6は、それぞれ、図示しない第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタを備えて構成される。第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタは、典型的には、同じ型のMOSFETである。第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタは、それぞれ、弱反転領域で動作させることによって高抵抗の擬似抵抗素子として機能する。第1疑似抵抗回路5を構成する第1の電界効果トランジスタのドレイン端子Dは、第1疑似抵抗回路5の他方の端子5bに接続され、ソース端子Sは、第1疑似抵抗回路5の一方の端子5aに接続される。また、ゲート端子Gは、制御回路10に接続される。また、第2疑似抵抗回路6を構成する第2の電界効果トランジスタのドレイン端子Dは、第2疑似抵抗回路6の他方の端子6bに接続され、ソース端子Sは、第2疑似抵抗回路6の一方の端子6aに接続される。また、ゲート端子Gは、制御回路10に接続される。
【0022】
制御回路10は、一方の端子10aが第1疑似抵抗回路5の一方の端子5aに、他方の端子10bが第1疑似抵抗回路5の他方の端子5bに接続され、特許文献1に開示された電圧増幅回路における歪補償バイアス源と同様な動作をする。すなわち、制御回路10は、第1の電界効果トランジスタの特性を基に、一方の端子10aと他方の端子10bの各電圧から第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタの各ゲート電圧を生成し、第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタに印加することで、第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタの各擬似抵抗値を所定値に安定的に維持させる。
【0023】
第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6は、それらを構成する第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタに印加するゲート電圧が制御回路10によって制御されることで、ドレイン・ソース間に形成されるチャネルの抵抗値、つまり、疑似抵抗値が制御される。制御回路10によって第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタに印加するゲート電圧が低く設定されると、それぞれのゲート電極下のチャネル領域の反転状態がより深い弱反転状態となって、それぞれのドレイン・ソース間に疑似抵抗として現れるチャネル抵抗成分は高抵抗となる。このチャネル抵抗成分は、第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタの各ゲート電圧に応じて変化するため、第1の電界効果トランジスタのドレイン・ソース間に印加される電圧変化に応じて、制御回路10によって第1の電界効果トランジスタおよび第2の電界効果トランジスタの各ゲート電圧を制御することで、一定に保つことが可能となる。
【0024】
このような本実施形態による電圧増幅回路1Aによれば、演算増幅回路2の反転入力端子2aおよび非反転入力端子2bに現れる直流オフセット電圧は、その出力端子2cに現れる出力電圧の信号帯域より低い周波数成分が積分回路7Aによって取り出され、その積分回路7Aの出力が、演算増幅回路2の反転入力端子2aまたは非反転入力端子2bの電位に加算回路11によって加算されて負帰還されることで、低減される。このため、演算増幅回路2の反転入力端子2aおよび非反転入力端子2bに現れる直流オフセット電圧によって、出力端子2cに現れる出力電圧を飽和させてしまう従来の問題は解消される。
【0025】
この際、演算増幅回路2の反転入力端子2aおよび出力端子2c間に並列に第1疑似抵抗回路5が接続されるため、信号入力端子Vinに接続される入力容量4に入力される信号周波数が低い場合にも、第1疑似抵抗回路5によって生成される高抵抗の疑似抵抗と帰還容量3とによって演算増幅回路2のカットオフ周波数を下げることができるので、低周波数の入力信号を電圧増幅することができる。また、積分回路7A中のローパスフィルタに用いられる抵抗には、第2疑似抵抗回路6によって生成される高抵抗の疑似抵抗が用いられるため、大きな回路面積を使って高抵抗の抵抗を形成することなく、出力端子2cに現れる出力電圧のうちの信号帯域より低い周波数成分を積分回路7Aにおいて効果的に取り出すことができる。
【0026】
また、第1疑似抵抗回路5の他方の端子5bと、第2疑似抵抗回路6の一方の端子6aとは相互に接続されるため、同電位になる。また、第1疑似抵抗回路5の一方の端子5aが接続される演算増幅回路2の反転入力端子2aと、第2疑似抵抗回路6の他方の端子6bが積分回路7Aを介して接続される演算増幅回路2の非反転入力端子2bとは、演算増幅回路2の反転入力端子2aおよび非反転入力端子2b間のイマジナリーショートによって同電位となる。また、第2疑似抵抗回路6の他方の端子6bと演算増幅回路2の非反転入力端子2bとの間には積分回路7Aが存在するが、この積分回路7Aによって、出力電圧のうちの信号帯域より低い周波数成分が演算増幅回路2の非反転入力端子2bに負帰還される電圧は、負帰還ループにおけるループゲインによってごく小さな値に低減される。したがって、第2疑似抵抗回路6の他方の端子6bと演算増幅回路2の非反転入力端子2bとの間における電圧降下はごく僅かなため、第2疑似抵抗回路6の他方の端子6bと演算増幅回路2の非反転入力端子2bとはほぼ同電位と考えられる。この結果、第1疑似抵抗回路5の端子間電圧Vaと、第2疑似抵抗回路6の端子間電圧Vbとは略等しく、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6によって略同じ値の疑似抵抗が生成されるものと、考えることができる。
【0027】
よって、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6によって生成される各疑似抵抗の端子間への印加電圧変化による疑似抵抗値変動は、1つの制御回路10の制御によって抑制して、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6の各電圧依存性を補償することができる。このため、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6のそれぞれに別個に制御回路10を設ける必要がないので、回路面積を大きくすることなく、直流オフセット電圧によって出力電圧を飽和させることのない電圧増幅回路1Aを構成することができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態による電圧増幅回路について説明する。
【0029】
図2は、本発明の第2の実施形態による電圧増幅回路1Bの概略構成を示す回路図である。なお、図2において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0030】
第2の実施形態による電圧増幅回路1Bは、積分回路7Bの構成が第1の実施形態による電圧増幅回路1Aの積分回路7Aの構成と異なる。また、DCサーボループによる負帰還が、第1の実施形態による電圧増幅回路1Aでは、演算増幅回路2の出力を演算増幅回路9で反転して、加算回路11によって演算増幅回路2の非反転入力端子2bに帰還させることで行われたが、第2の実施形態による電圧増幅回路1Bでは、演算増幅回路2の出力を演算増幅回路9で反転せずに、加算回路11によって演算増幅回路2の反転入力端子2aに帰還させることで行われる。第2の実施形態による電圧増幅回路1Bは、これら以外の構成は、第1の実施形態による電圧増幅回路1Aと同様である。
【0031】
積分回路7Bは、第2疑似抵抗回路6によって生成される疑似抵抗を抵抗分とする一次CRフィルタ12を、演算増幅回路2の出力端子2cとの間に備える。一次CRフィルタ12は、第2疑似抵抗回路6とコンデンサ13とから構成される。一次CRフィルタ12の出力は、演算増幅回路9の非反転入力端子9bに与えられる。演算増幅回路9の出力端子9cと反転入力端子9aとの間にはコンデンサ14が接続され、演算増幅回路9の反転入力端子9aと基準電位との間には抵抗15が接続されている。また、演算増幅回路9の出力端子9cに出力される電圧は直列接続された抵抗16,17で分圧されて、演算増幅回路2の反転入力端子2aに与えられる。
【0032】
このような第2の実施形態による電圧増幅回路1Bにおいても、演算増幅回路2の反転入力端子2aおよび非反転入力端子2bに現れる直流オフセット電圧は、その出力端子2cに現れる出力電圧の信号帯域より低い周波数成分が積分回路7Bによって取り出され、その積分回路7Bの出力が、演算増幅回路2の反転入力端子2aの電位に加算回路11によって加算されて負帰還されることで、低減される。このため、演算増幅回路2の反転入力端子2aおよび非反転入力端子2bに現れる直流オフセット電圧によって、出力端子2cに現れる出力電圧を飽和させてしまう従来の問題は解消される。
【0033】
また、積分回路7B中でローパスフィルタとして用いられる一次CRフィルタ12の抵抗には、第2疑似抵抗回路6によって生成される高抵抗の疑似抵抗が用いられるため、大きな回路面積を使って高抵抗の抵抗を形成することなく、出力端子2cに現れる出力電圧のうちの信号帯域より低い周波数成分を積分回路7Bにおいて効果的に取り出すことができる。
【0034】
また、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6によって生成される各疑似抵抗の端子間への印加電圧変化による疑似抵抗値変動は、1つの制御回路10の制御によって抑制して、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6の各電圧依存性を補償することができる。このため、第1疑似抵抗回路5および第2疑似抵抗回路6のそれぞれに別個に制御回路10を設ける必要がないので、回路面積を大きくすることなく、直流オフセット電圧によって出力電圧を飽和させることのない電圧増幅回路1Bを構成することができる。
【0035】
さらに、第2の実施形態による電圧増幅回路1Bよれば、演算増幅回路2の出力端子2cに現れる出力電圧のうちの交流成分は、高抵抗の抵抗分を持つ一次CRフィルタ12によって減衰させられる。このため、積分回路7Bに入力される交流信号成分の振幅が小さくなるので、積分回路7Bの構成を簡素にして回路面積を小さくすることができ、さらに、消費電力を低減することができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態による電圧増幅回路について説明する。
【0037】
図3は、本発明の第3の実施形態による電圧増幅回路1Cの概略構成を示す回路図である。なお、図3において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0038】
第3の実施形態による電圧増幅回路1Cは、入力容量4に代えて圧電素子18が演算増幅回路2の反転入力端子2aに接続されている点が、第1の実施形態による電圧増幅回路1Aと異なる。その他の構成は第1の実施形態による電圧増幅回路1Aと同様である。
【0039】
第3の実施形態による電圧増幅回路1Cでは、入力容量4が圧電素子18の有する容量によって構成される。このような第3の実施形態による電圧増幅回路1Cによっても、第1の実施形態による電圧増幅回路1Aと同様な作用効果が奏される。
【0040】
さらに、第3の実施形態による電圧増幅回路1Cによれば、圧電素子18によって検出される電荷検出信号が、圧電素子18の有する容量を入力容量として演算増幅回路2によって電圧増幅される。したがって、電圧増幅回路1Cが電荷検出回路を同時に構成するため、少ない回路素子で電荷検出回路を実現することが可能になる。また、入力容量に絶縁抵抗の低い圧電素子18を用いた場合には、演算増幅回路2の信号増幅率は、第1疑似抵抗回路5が生成する高抵抗と圧電素子18の絶縁抵抗の低い抵抗分とによって大きな値となる。したがって、直流オフセット電圧がこの大きな増幅率で増幅されて演算増幅回路2の出力端子2cに現れることとなるが、その直流オフセット電圧がDCサーボループにおける積分回路7Aで取り出されて、演算増幅回路2の非反転入力端子2bに負帰還されることで、直流オフセット電圧の出力への影響は低減される。このため、入力容量に絶縁抵抗の低い圧電素子18を用いても、演算増幅回路2の出力端子2cに現れる出力電圧が飽和することなく、信号増幅を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1A,1B,1C…電圧増幅回路
2,9…演算増幅回路
2a,9a…反転入力端子
2b,9b…非反転入力端子
3c,9c…出力端子
3…コンデンサ(帰還容量)
4…コンデンサ(入力容量)
5…第1疑似抵抗回路
6…第2疑似抵抗回路
7A,7B…積分回路
8,13,14…コンデンサ
10…制御回路
11…加算回路
12…一次CRフィルタ
15,16,17…抵抗
18…圧電素子
図1
図2
図3