(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】回路構成体
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20240806BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240806BHJP
【FI】
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2020148266
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】森岡 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 有延
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131222(WO,A1)
【文献】特開2010-022117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力回路を構成する第1バスバー及び第2バスバーと、
第1電力端子、第2電力端子及び第1信号端子を有する第1半導体素子と、
第3電力端子、第4電力端子及び第2信号端子を有する第2半導体素子と、
前記第1電力端子と前記第3電力端子とを電気的に接続する電力用回路部と、
前記第1信号端子及び前記第2信号端子の両方を制御装置に電気的に接続するための制御用回路部と、
を備え、
前記第2電力端子が前記第1バスバーに電気的に接続されるとともに、前記第1半導体素子が前記第1バスバーに実装され、
前記第4電力端子が前記第2バスバーに電気的に接続されるとともに、前記第2半導体素子が前記第2バスバーに実装され
、
前記電力用回路部と前記制御用回路部との両方がフレキシブルな導電路を有している、回路構成体。
【請求項2】
請求項
1に記載の回路構成体であって、
1つのフレキシブル配線部材に、前記電力用回路部の前記導電路と、前記制御用回路部の前記導電路との両方が設けられている、回路構成体。
【請求項3】
請求項
2に記載の回路構成体であって、
前記フレキシブル配線部材の外縁に沿って前記制御用回路部の前記導電路が設けられ、
前記フレキシブル配線部材のうち前記制御用回路部の前記導電路に囲まれる領域に前記電力用回路部の前記導電路が設けられる、回路構成体。
【請求項4】
請求項
2又は請求項
3に記載の回路構成体であって、
前記第1バスバー及び前記第2バスバーの間に設けられた絶縁スペーサをさらに備え、
前記フレキシブル配線部材が前記第1バスバーから前記絶縁スペーサを越えて前記第2バスバーまでわたるように配置され、
前記第1電力端子と前記電力用回路部との接続部、及び前記第1信号端子と前記制御用回路部との接続部が前記第1バスバー上に位置し、
前記第3電力端子と前記電力用回路部との接続部、及び前記第2信号端子と前記制御用回路部との接続部が前記第2バスバー上に位置する、回路構成体。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の回路構成体であって、
前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子が複数組設けられ、
複数組の前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子における前記第1電力端子及び前記第3電力端子が1つの前記導電路を介して接続されている、回路構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体スイッチング素子とバスバーとが接続された回路構成体を開示している。特許文献1に記載の回路構成体では、半導体スイッチング素子におけるドレイン端子及びソース端子が、それぞれ第1バスバー及び第2バスバーに接続されるとともに、半導体スイッチング素子がバスバーに実装されている。
【0003】
特許文献2は、半導体素子と導電片とが接続された回路基板を開示している。特許文献2に記載の回路基板では、半導体素子における複数の端子のうちの一部の端子がFPC(フレキシブルプリント回路基板)を介して導電片に接続されている。これにより、半導体素子の配置に自由度を高めることができ、かつ、半導体素子の固定部にかかる応力を減少できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-96769号公報
【文献】特開2020-13896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の回路構成体における半導体素子は、一方向の電流を制御することが想定されている。双方向リレーを構成する2つの半導体素子を有する回路構成体及びその軽量化が望まれている。
【0006】
そこで、双方向リレーを構成する2つの半導体素子を有する回路構成体において、軽量化を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の回路構成体は、電力回路を構成する第1バスバー及び第2バスバーと、第1電力端子、第2電力端子及び第1信号端子を有する第1半導体素子と、第3電力端子、第4電力端子及び第2信号端子を有する第2半導体素子と、前記第1電力端子と前記第3電力端子とを電気的に接続する電力用回路部と、前記第1信号端子及び前記第2信号端子の両方を制御装置に電気的に接続するための制御用回路部と、を備え、前記第2電力端子が前記第1バスバーに電気的に接続されるとともに、前記第1半導体素子が前記第1バスバーに実装され、前記第4電力端子が前記第2バスバーに電気的に接続されるとともに、前記第2半導体素子が前記第2バスバーに実装され、前記電力用回路部と前記制御用回路部とのうち少なくとも一方がフレキシブルな導電路を有する、回路構成体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、双方向リレーを構成する2つの半導体素子を有する回路構成体において、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態1にかかる回路構成体を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は
図1のII-II線に沿って切断された概略断面図である。
【
図4】回路構成体において、ケースが省略された概略平面図である。
【
図5】
図5はフレキシブル配線部材を示す平面図である。
【
図6】
図6はフレキシブル配線部材の変形例を示す平面図である。
【
図7】
図7はフレキシブル配線部材と制御回路基板との接続態様を示す模式図である。
【
図8】
図8はフレキシブル配線部材と制御回路基板との別の接続態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の回路構成体は、次の通りである。
【0012】
(1)電力回路を構成する第1バスバー及び第2バスバーと、第1電力端子、第2電力端子及び第1信号端子を有する第1半導体素子と、第3電力端子、第4電力端子及び第2信号端子を有する第2半導体素子と、前記第1電力端子と前記第3電力端子とを電気的に接続する電力用回路部と、前記第1信号端子及び前記第2信号端子の両方を制御装置に電気的に接続するための制御用回路部と、を備え、前記第2電力端子が前記第1バスバーに電気的に接続されるとともに、前記第1半導体素子が前記第1バスバーに実装され、前記第4電力端子が前記第2バスバーに電気的に接続されるとともに、前記第2半導体素子が前記第2バスバーに実装され、前記電力用回路部と前記制御用回路部とのうち少なくとも一方がフレキシブルな導電路を有する、回路構成体である。第1電力端子と第3電力端子とを電気的に接続する電力用回路部と、第1信号端子及び第2信号端子の両方を制御装置に電気的に接続するための制御用回路部とのうち少なくとも一方がフレキシブルな導電路を有する。電力用回路部がフレキシブルな導電路を有する場合、第1電力端子と第3電力端子とを電気的に接続する部材としてバスバーが用いられずに済み、回路構成体の軽量化が図られる。また、制御用回路部がフレキシブルな導電路を有する場合、第1信号端子及び第2信号端子の両方が1つのフレキシブルな導電路に接続されることによって、第1信号端子及び第2信号端子が別々のフレキシブルな導電路に接続される場合と比べて、回路構成体の軽量化が図られる。
【0013】
(2)(1)の回路構成体において、前記電力用回路部と前記制御用回路部との両方がフレキシブルな導電路を有していてもよい。これにより、回路構成体の軽量化の効果が高まる。
【0014】
(3)(2)の回路構成体において、1つのフレキシブル配線部材に、前記電力用回路部の前記導電路と、前記制御用回路部の前記導電路との両方が設けられていてもよい。これにより、フレキシブル配線部材を複数設けずに済み、コスト削減を図ることができる。
【0015】
(4)(3)の回路構成体において、前記フレキシブル配線部材の外縁に沿って前記制御用回路部の前記導電路が設けられ、前記フレキシブル配線部材のうち前記制御用回路部の前記導電路に囲まれる領域に前記電力用回路部の前記導電路が設けられてもよい。これにより、1層のフレキシブル配線部材に電力用回路部の導電路及び制御用回路部の導電路が設けられることができる。これにより、フレキシブル配線部材に複数層の回路を設けずに済み、コスト削減を図ることができる。
【0016】
(5)(3)又は(4)の回路構成体において、前記第1バスバー及び前記第2バスバーの間に設けられた絶縁スペーサをさらに備え、前記フレキシブル配線部材が前記第1バスバーから前記絶縁スペーサを越えて前記第2バスバーまでわたるように配置され、前記第1電力端子と前記電力用回路部との接続部、及び前記第1信号端子と前記制御用回路部との接続部が前記第1バスバー上に位置し、前記第3電力端子と前記電力用回路部との接続部、及び前記第2信号端子と前記制御用回路部との接続部が前記第2バスバー上に位置してもよい。これにより、互いに熱膨張係数の異なるバスバー及び絶縁スペーサが熱膨張・収縮する際、フレキシブル配線部材が変形することによって接続部間の変位を吸収でき、もって接続部における電気的接続状態が切れることが抑制される。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの回路構成体において、前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子が複数組設けられ、複数組の前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子における前記第1電力端子及び前記第3電力端子が1つの前記導電路を介して接続されていてもよい。これにより、第1電力端子及び第3電力端子を接続する導電路の電気抵抗を下げることができ、大電流が流れたときの発熱量を抑えることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の回路構成体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる回路構成体10について説明する。
図1は実施形態1にかかる回路構成体10を示す概略平面図である。
図2は
図1のII-II線に沿って切断された概略断面図である。
図3は
図2の部分拡大図である。
図4は回路構成体10において、ケース80が省略された概略平面図である。
【0020】
回路構成体10は、例えば、自動運転機能にかかるメインシステムとサブシステムとを備える車両に搭載される。回路構成体10は、例えば、メインシステムが失陥し、サブシステムに切り替える際、メインシステム及びサブシステム間を電気的に切り離すスイッチング装置として機能する。回路構成体10は、第1バスバー20、第2バスバー30、第1半導体素子40、第2半導体素子50、電力用回路部及び制御用回路部を備える。ここでは、回路構成体10は、ケース80に収容されている。
【0021】
第1バスバー20及び第2バスバー30は電力回路を構成する。第1バスバー20及び第2バスバー30は、それぞれ銅又は銅合金などの導電性材料によって板状に形成されている。第1バスバー20は、第1素子接続部22と第1外部接続部24とを有する。第2バスバー30は、第2素子接続部32と第2外部接続部34とを有する。第1素子接続部22は第1半導体素子40と接続される部分である。第2素子接続部32は第2半導体素子50と接続される部分である。第1外部接続部24及び第2外部接続部34は、ワイヤーハーネスの端部などが接続される部分である。ここでは、第1素子接続部22及び第2素子接続部32はそれぞれ平板状に形成されてケース80内に収まる。第1素子接続部22と第2素子接続部32とは、互いに間隔をあけつつ主面同士が面一となるように並んでいる。第1素子接続部22と第2素子接続部32との間には、後述する絶縁スペーサ82が設けられている。第1外部接続部24及び第2外部接続部34は、それぞれ平板状に形成されてケース80のうち第1素子接続部22と第2素子接続部32とを囲うケース本体の外に突出する。例えば、第1外部接続部24及び第2外部接続部34には、それぞれ貫通孔が形成される。第1外部接続部24及び第2外部接続部34は、当該貫通孔を用いて、ワイヤーハーネスの端子とボルト接続される。
【0022】
第1半導体素子40及び第2半導体素子50それぞれは、電流のオン・オフを制御する半導体スイッチング素子である。かかる半導体スイッチング素子は、2つの電力端子と、ゲート端子とを有する。半導体スイッチング素子において、ゲート端子を通じてゲートのオン・オフが制御されることにより、2つの電力端子の間の電流のオン・オフが制御される。この際、半導体スイッチング素子には、ゲートのオフ時に、一方の電力端子側から他方の電力端子側への電流の流れは遮断しつつ、他方の電力端子側から一方の電力端子側への電流の流れは完全に遮断することができないものがある。このような半導体スイッチング素子によってオン・オフが制御される電流が大電流の場合、ゲートのオフ時に他方の電力端子側から一方の電力端子側へ漏れる電流が無視できないものとなり得る。そこで、2つの半導体スイッチング素子(本例の第1半導体素子40及び第2半導体素子50)が、2つの電力端子の向きが互いに反対になるように直列に接続されることによって、一方の半導体スイッチング素子が一方向の電流を遮断し、他方の半導体スイッチング素子が他方向の電流を遮断し、もって回路構成体において双方向の電流を遮断可能とされる。なお、このような半導体スイッチング素子として、例えば、MOSFET(金属酸化膜型電界効果トランジスタ;Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などが挙げられる。
【0023】
第1半導体素子40は、第1電力端子42、第2電力端子43及び第1信号端子44を有する。第1半導体素子40は第1バスバー20に実装される。第2半導体素子50は、第3電力端子52、第4電力端子53及び第2信号端子54を有する。第2半導体素子50は第2バスバー30に実装される。第1電力端子42と第3電力端子52とが電力用回路部を介して電気的に接続される。第2電力端子43が第1バスバー20に電気的に接続されるとともに、第4電力端子53が第2バスバー30に電気的に接続される。第1信号端子44及び第2信号端子54は、制御用回路部を介して制御装置に接続される。例えば、第1半導体素子40及び第2半導体素子50がMOSFETである場合、第1電力端子42及び第3電力端子52がソース端子であり、第2電力端子43及び第4電力端子53がドレイン端子であり、第1信号端子44及び第2信号端子54がゲート端子である。以下では、第1電力端子42及び第3電力端子52をソース端子42、52と称することがある。また、第2電力端子43及び第4電力端子53をドレイン端子43、53と称し、第1信号端子44及び第2信号端子54をゲート端子44、54と称することがある。
【0024】
図1に示す例では、第1半導体素子40の端子配列と、第2半導体素子50の端子配列とは同じである。第1半導体素子40において、本体41の一方側面にソース端子42及びゲート端子44が設けられ、他方側面にドレイン端子43が設けられる。第2半導体素子50においても同様に、本体51の一方側面にソース端子52及びゲート端子54が設けられ、他方側面にドレイン端子53が設けられる。第1半導体素子40及び第2半導体素子50は、本体41、51におけるソース端子42、52が設けられる一方側面同士が対向するように互いに逆向きに配置される。第1半導体素子40及び第2半導体素子50は、ソース端子42、52同士が対向するように、ソース端子42、52及びゲート端子44、54の並ぶ方向にずれて配置される。第1半導体素子40のゲート端子44と、第2半導体素子50のゲート端子54とがずれた位置にある。第1半導体素子40のゲート端子44は、第2半導体素子50と対向しない。第2半導体素子50のゲート端子54は、第1半導体素子40と対向しない。
【0025】
電力用回路部は、第1電力端子42と第3電力端子52とを接続する回路部である。電力用回路部には、第1電力端子42との接続部と、第3電力端子52との接続部とが設けられる。制御用回路部は、制御装置からの制御信号を受信、もしくは制御装置との通信を行い、第1信号端子44及び第2信号端子54の両方に対しオン・オフ信号を発するための回路部であり、電流・電圧などの検知機能や、MOSFETの故障などに対する保安機能が含まれていても良い。制御用回路部には、第1信号端子44との接続部と、第2信号端子54との接続部とが設けられる。かかる制御装置は、例えば、回路構成体10の外部に設けられたECU(電子制御ユニット;Electronic Control Unit)が想定されている。このECUと回路構成体10とは、ワイヤーハーネスを介して接続されることが想定されている。このため、制御用回路部には、ハーネス接続部が設けられている。
【0026】
電力用回路部と制御用回路部とのうち少なくとも一方がフレキシブルな導電路62、64を有する。ここでは電力用回路部と制御用回路部との両方がフレキシブルな導電路62、64を有する。ここでは電力用回路部のフレキシブルな導電路62と、制御用回路部のフレキシブルな導電路64とが、1つのフレキシブル配線部材60に設けられる。以下、フレキシブル配線部材60について、
図1から
図4に加えて
図5を参照しつつ説明する。
図5はフレキシブル配線部材60を示す平面図である。
【0027】
フレキシブル配線部材60は、フレキシブルな導電路62、64と、絶縁部66とを有する。導電路62、64は、導体箔、又は薄い導体板などによって構成される。絶縁部66は、絶縁フィルム等によって構成される。導電路62、64及び絶縁部66は、共に曲げ容易とされる。例えば、フレキシブル配線部材60はFPC(フレキシブルプリント回路基板;Flexible Printed Circuit)である。FPCの絶縁部66は、例えばポリイミドフィルムなどによって構成された基板本体である。基板本体上に銅箔などによって構成された導電路62、64が設けられる。フレキシブルな導電路62、64は、例えば、可撓性基板(フレキシブルプリント基板)上に形成された導電路である。FPCにおいて、導電路62、64は第1半導体素子40のソース端子42、ゲート端子44及び第2半導体素子50のソース端子52、ゲート端子54との各接続部において露出している。導電路62、64は半導体素子40、50の端子42、44、52、54との接続部以外の部分においてカバーフィルム等によって適宜覆われていてもよい。フレキシブル配線部材60は、FPC以外の部材、例えば、FFC(フレキシブルフラットケーブル;Flexible Flat Cable)などであってもよい。
【0028】
ここでは、電力用回路部が導電路62を有し、制御用回路部が導電路64を有する。ここでは、1組のソース端子42、52が同じ導電路62に接続される。従って、電力用回路部は、接続部材を除き、実質的に導電路62のみで構成される。制御用回路部は、導電路64のほかに、制御回路基板70に設けられた制御基板回路部をさらに有している。制御用回路部のうち第1信号端子44との接続部と、第2信号端子54との接続部とは導電路64に設けられ、ハーネス接続部が制御基板回路部に設けられている。半導体素子40、50の各端子42、44、52、54と導電路62、64との各接続部における接続態様は特に限定されるものではなく、例えば、半田S、端子などによって接続可能である。
図2及び
図3には、半田Sを介して接続されている様子が記載されている。
【0029】
ここでは、フレキシブル配線部材60において、2つの導電路62、64が1層の導体層に形成される。フレキシブル配線部材60の外縁に沿って導電路64の一部が設けられる。フレキシブル配線部材60のうち絶縁部66に囲まれる領域に導電路62が設けられる。このとき、導電路62は、1組の第1半導体素子40及び第2半導体素子50と接続可能な大きさに形成される。つまり、1つのフレキシブル配線部材は導電路62を複数有し、複数組の第1半導体素子40及び第2半導体素子50は、それぞれ異なる導電路62に接続される。
【0030】
図6はフレキシブル配線部材60の変形例を示す平面図である。
【0031】
変形例にかかるフレキシブル配線部材160は、複数組の第1半導体素子40及び第2半導体素子50におけるソース端子42、52が1つのフレキシブルな導電路162を介して接続可能に構成される。
図6に示す例では、導電路162が、上記導電路62と比べて、複数の第1半導体素子40の並列方向に長く形成されて、複数(ここでは2つ)の第1半導体素子40に対応する長さを有している。そして、2組の第1半導体素子40及び第2半導体素子50が1つの導電路162に接続可能とされる。なお、
図6に示す例では、4組の第1半導体素子40及び第2半導体素子50が、2組ずつ分かれて、それぞれ異なる導電路162に接続可能とされる。4組の第1半導体素子40及び第2半導体素子50が、1つの電力回路部用のフレキシブルな導電路に接続可能とされてもよい。
【0032】
絶縁スペーサ82は第1バスバー20及び第2バスバー30の間を仕切る。例えば、絶縁スペーサ82はケース80の一部である。フレキシブル配線部材60は、第1バスバー20から絶縁スペーサ82を越えて第2バスバー30までわたるように配置される。ソース端子42と導電路62との接続部、及びゲート端子44と導電路64との接続部が第1バスバー20上に位置する。ソース端子52と導電路62との接続部、及びゲート端子54と導電路64との接続部が第2バスバー30上に位置する。
【0033】
制御回路基板70は、絶縁材料によって形成された基板本体と、導電材料によって形成された制御基板回路部とを有する。ここでは制御回路基板70は、基板本体がリジッドタイプであるプリント基板が想定されるが、基板本体がフレキシブルタイプであるプリント基板などであってもよい。制御基板回路部には、導電路64と接続される接続部が設けられる。制御回路基板70には、ハーネス接続部としてコネクタ72が設けられていてもよい。コネクタ72は、絶縁樹脂製のコネクタハウジングと、制御回路基板と外部導体とを電気的に接続するコネクタ端子とを有する。制御回路基板70は、例えば、ケース80に固定されていてもよいし、バスバー20、30に固定されていてもよい。例えば、制御回路基板70は、バスバー20、30と間隔をあけてケース80に支持されていてもよい。
【0034】
ケース80は、絶縁性を有する樹脂を材料として形成される。ケース80は、第1バスバー20及び第2バスバー30をインサート部品としてインサート成形された成形品である。ケース80は、絶縁スペーサ82、第1バスバー保持部84、第2バスバー保持部86を有する。絶縁スペーサ82は第1バスバー20及び第2バスバー30の間に設けられて、第1バスバー20及び第2バスバー30を仕切る部分である。絶縁スペーサ82の一方側面は第1バスバー20に接し、他方側面が第2バスバー30に接する。絶縁スペーサ82の上面は第1バスバー20の主面及び第2バスバー30の主面と面一に形成されるとよい。
【0035】
第1バスバー保持部84は、第1バスバー20を保持する部分である。第1バスバー20のうち、絶縁スペーサ82に接する外縁部とは反対側の外縁部が第1バスバー保持部84に保持される。また第1バスバー20のうち、第1素子接続部22と第1外部接続部24との連結部分が第1バスバー保持部84に保持される。第2バスバー保持部86は、第2バスバー30を保持する部分である。第2バスバー30のうち、絶縁スペーサ82に接する外縁部とは反対側の外縁部が第2バスバー保持部86に保持される。また第2バスバー30のうち、第2素子接続部32と第2外部接続部34との連結部分が第2バスバー保持部86に保持される。例えば第1バスバー保持部84は、第1バスバー20を厚み方向に挟んで保持する。同様に第2バスバー保持部86は、第2バスバー30を厚み方向に挟んで保持する。第1バスバー20のうち第1バスバー保持部84に保持される部分には貫通孔25が形成されている。第1バスバー保持部84のうち第1バスバー20の一方側を覆う部分と他方側を覆う部分とが、貫通孔25内の連結部を通じてつながっている。同様に第2バスバー30のうち第2バスバー保持部86に保持される部分には貫通孔35が形成されている。第2バスバー保持部86においても、第2バスバー30の一方側を覆う部分と他方側を覆う部分とが、貫通孔35内の連結部を通じてつながっている。
【0036】
ケース80には、制御回路基板70を固定するための固定部、カバーを固定するための固定部などが設けられていてもよい。かかる固定部は、例えば、ねじ穴であってもよい。また例えば、かかる固定部は、相手側部材との係止構造に用いられる係止凸部及び係止凹部のいずれかであってもよい。
【0037】
フレキシブル配線部材60の導電路64は、他端側で制御回路基板70の制御基板回路部と接続されている。
図7はフレキシブル配線部材60と制御回路基板70との接続態様を示す模式図である。
図8はフレキシブル配線部材60と制御回路基板70との別の接続態様を示す模式図である。例えば、フレキシブル配線部材60は、一端部においてバスバー20、30に接するとともに他端部において制御回路基板70に接しつつ、その間の部分で厚み方向に曲がっていてもよい。フレキシブル配線部材60は、
図7に示す例のように、一端部と他端部との間で厚み方向に折り返されていてもよい。フレキシブル配線部材60は、
図8に示す例のように、一端部と他端部との間で厚み方向に折り返されずに曲がっていてもよい。フレキシブル配線部材60は、一端部と他端部との間で厚み方向に折り返されたり曲げられたりされていなくてもよい。導電路64と制御基板回路部とは、例えば、半田、端子、コネクタなどを介して接続されることができる。
【0038】
このほかのフレキシブル配線部材60と制御回路基板70との接続態様として、フレキシブル配線部材60と制御回路基板70とが接することなく、接続されていてもよい。この場合、例えば、フレキシブル配線部材60と制御回路基板70とのいずれか一方に設けられた端子がいずれか他方まで延びて、フレキシブル配線部材60と制御回路基板70とが当該端子を介して接続されてもよい。
【0039】
<実施形態1の効果等>
ソース端子42、52を電気的に接続する電力用回路部と、ゲート端子44、54の両方を制御装置に電気的に接続するための制御用回路部とのうち少なくとも一方が導電路62、64を有する。ここでは、電力用回路部と制御用回路部との両方が導電路62、64を有している。電力用回路部が導電路62を有する場合、ソース端子42、52を電気的に接続する部材としてバスバーが用いられずに済み、回路構成体10の軽量化が図られる。また、制御用回路部が導電路64を有する場合、ゲート端子44、54の両方が1つの導電路64に接続されることによって、ゲート端子44、54が別々の導電路に接続される場合と比べて、回路構成体10の軽量化が図られる。
【0040】
また、1つのフレキシブル配線部材60に、電力用回路部の導電路62と、制御用回路部の導電路64との両方が設けられている。これにより、フレキシブル配線部材60を複数設けずに済み、コスト削減を図ることができる。
【0041】
また、フレキシブル配線部材60の外縁に沿って制御用回路部の導電路64が設けられ、フレキシブル配線部材60のうち制御用回路部の導電路64に囲まれる領域に電力用回路部の導電路62が設けられる。これにより、1層のフレキシブル配線部材60に電力用回路部及び制御用回路部が設けられることができる。フレキシブル配線部材60に複数層の導電路を設けずに済み、コスト削減を図ることができる。
【0042】
また、フレキシブル配線部材60が第1バスバー20から絶縁スペーサ82を越えて第2バスバー30までわたるように配置され、ソース端子42と電力用回路部との接続部、及びゲート端子44と制御用回路部との接続部が第1バスバー20上に位置し、ソース端子52と電力用回路部との接続部、及びゲート端子54と制御用回路部との接続部が第2バスバー30上に位置する。これにより、互いに熱膨張係数の異なるバスバー20、30と、絶縁スペーサ82とが熱膨張・収縮する際、フレキシブル配線部材60が変形することによって接続部間の変位を吸収でき、もって接続部における電気的接続状態が切れることが抑制される。
【0043】
また、フレキシブル配線部材160が採用された場合、複数組の第1半導体素子40及び第2半導体素子50におけるソース端子42、52が1つの導電路162を介して接続されている。これにより、ソース端子42、52を接続する導電路162の電気抵抗を下げることができ、大電流が流れたときの発熱量を抑えることができる。
【0044】
[変形例]
これまで、電力用回路部と制御用回路部との両方が導電路62、64を有しているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。電力用回路部と制御用回路部とのうち電力用回路部のみが導電路62を有してもよいし、制御用回路部のみが導電路64を有してもよい。電力用回路部のみが導電路62を有している場合、例えば、ゲート端子44、54が制御回路基板70に設けられた端子などを介して導電路64を介さずに制御回路基板70に直接的に接続されていてもよい。制御用回路部のみが導電路64を有している場合、例えば、ソース端子42、52が第1バスバー20及び第2バスバー30とは別に設けられた第3バスバーを介して接続されていてもよい。
【0045】
またこれまで、1つのフレキシブル配線部材60に電力用回路部の導電路62と、制御用回路部の導電路64とが設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。電力用回路部用の導電路62を有するフレキシブル配線部材と、制御用回路部用の導電路64を有するフレキシブル配線部材とが別に設けられてもよい。
【0046】
またこれまで、1つのフレキシブル配線部材60において、電力用回路部の導電路62と、制御用回路部の導電路64とが、同じ層に設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。1つのフレキシブル配線部材が導電層を複数層有し、電力用回路部の導電路と、制御用回路部の導電路とが、別の導電層に設けられてもよい。
【0047】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 回路構成体
20 第1バスバー
22 第1素子接続部
24 第1外部接続部
25 貫通孔
30 第2バスバー
32 第2素子接続部
34 第2外部接続部
35 貫通孔
40 第1半導体素子
41 本体
42 ソース端子(第1電力端子)
43 ドレイン端子(第2電力端子)
44 ゲート端子(第1信号端子)
50 第2半導体素子
51 本体
52 ソース端子(第3電力端子)
53 ドレイン端子(第4電力端子)
54 ゲート端子(第2信号端子)
60、160 フレキシブル配線部材
62、162 導電路(電力用回路部)
64 導電路(制御用回路部)
66 絶縁部
70 制御回路基板
72 コネクタ
80 ケース
82 絶縁スペーサ
84 第1バスバー保持部
86 第2バスバー保持部
S 半田