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特許7533038成型体、それに用いられる熱可塑性樹脂組成物及び液状マスターバッチ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】成型体、それに用いられる熱可塑性樹脂組成物及び液状マスターバッチ組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240806BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20240806BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K5/11
C08J3/22 CEZ
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020148710
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043438
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠太
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-200363(JP,A)
【文献】特開2018-193424(JP,A)
【文献】特開2013-209637(JP,A)
【文献】特表2001-525447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と液状マスターバッチ組成物を含む熱可塑性樹脂組成物から形成されてなる成型体であって、
前記液状マスターバッチ組成物は、液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチルと帯電防止剤(B)を含み、
液体樹脂(A)は、25℃における粘度が5,000mPa・s未満、かつ水の溶解度が30mg/mL以下である、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかであり、
帯電防止剤(B)は、DSC融点が60℃以上240℃未満であり、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリアミド樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、成型体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記液状マスターバッチ組成物を0.1~10質量部含有する、請求項1記載の成型体。
【請求項3】
請求項1または2記載の成型体を形成するための熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の成型体を形成するための液状マスターバッチ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型体と、成型体を形成するために用いられる熱可塑性樹脂組成物及び液状マスターバッチ組成物とに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成型体は、成型加工が容易なことから、電気・電子機器部品、自動車部品、医療用部品、食品容器などの幅広い分野で使用されている。
【0003】
しかし一般的なプラスチックは、絶縁性のため帯電しやすく、埃や塵を引きつけて製品外観を損ねるといった問題がある。また、成型体がフィルムまたはシートの場合、帯電したフィルム同士で電撃が発生し、可燃性気体や粉塵があるところでは爆発事故を誘因する可能性がある。
【0004】
このような問題を解消するために、成型体を構成する樹脂に対して帯電を防止する処理がなされている。最も一般的な帯電防止処理方法は、樹脂に帯電防止剤を加える方法である。このような帯電防止剤には、成型体表面に塗布する塗布型のものと、樹脂を加工成型する際に添加する練り込み型のものとが挙げられるが、塗布型のものは、持続性に劣ることに加え、表面に大量の有機物が塗布されるために、その表面に触れたものが汚染されるという問題がある。
【0005】
そのため、練り込み型による帯電防止性の付与として、例えば、ポリ乳酸系樹脂組成物に対し0.05~10質量%のスルホン酸塩型界面活性剤を含有する樹脂組成物(特許文献1)や、特定のスルホン酸金属塩と特定のポリオキシアルキレン化合物を特定比率で含有したポリエステル系樹脂組成物(特許文献2)のような、樹脂に帯電防止剤を練りこんだマスターバッチ組成物を用いる技術が提案されている。
【0006】
また、このようなマスターバッチ組成物の例としては、粉末状であるドライカラーや、粒状着色剤組成物である固形マスターバッチ組成物、液状マスターバッチ組成物等が知られており、成型品のムラが少なくわずかな添加量で機能性の付与が可能であることから、液状マスターバッチ組成物を選択して使用するケースが増える傾向にある。
【0007】
しかしこのような液状マスターバッチ組成物は、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂のような成型時に高い温度を要する樹脂を成型体の主剤樹脂として用いる場合に、マスターバッチ製造時と成型時の二度熱履歴が加わることでマスターバッチ中の樹脂が劣化し、溶融粘度が低下(IV低下)することにより、ドローダウン等の成型不良を生じやすいといった問題がある。また、同様に帯電防止剤の劣化も促進され、黄変や、透明性の低下が起こるにもかかわらず、十分な帯電防止性能を得るためには帯電防止剤を多量に配合する必要が生じる。さらにそれに加えて、使用する液体樹脂や帯電防止剤の種類によっては、材料由来の水分により、主剤樹脂の加水分解が促進され、十分なフィルム強度が得られないといった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-263158号公報
【文献】特開2018-193424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、優れた帯電防止性を有しながら、透明性に優れ、かつフィルム強度も高い成型体を提供することである。また、前記成型体を形成するための、IV低下が少ない液状マスターバッチ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂と液状マスターバッチ組成物を含む熱可塑性樹脂組成物から形成されてなる成型体であって、前記液状マスターバッチは、液体樹脂(A)と帯電防止剤(B)を含み、前記液体樹脂(A)は、25℃における粘度が8,000mPa・s未満、かつ水の溶解度が45mg/mL以下の、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる少なくともいずれかであり、帯電防止剤(B)は、DSC融点が60℃以上240℃未満であり、熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかである、成型体であることにより、前記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来の液状マスターバッチを用いた場合と比較して、溶融粘度の低下(IV低下)が少ないといった効果を奏する。更に、得られた成型体は、製造時の熱劣化が抑制でき、優れた帯電防止性と高い透明性に加えて、高いフィルム強度を発現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の液状マスターバッチ組成物、熱可塑性樹脂組成物、及び成型体について詳細を説明するが、これに限定されない。
また、マスターバッチとは、樹脂に高濃度の添加剤を分散させた樹脂組成物であって、成型体の形成時に規定の倍率で主剤樹脂と混合し、プラスチックの成型体に機能を付与する役割を有する。
本発明における、液状マスターバッチ組成物とは、25℃において液状のマスターバッチのことを指す。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0013】
《液状マスターバッチ組成物》
本発明の液状マスターバッチ組成物は、25℃における粘度が8,000mPa・s以下である液体樹脂(A)、及びDSC融点が60℃以上240℃未満である帯電防止剤(B)を含む。この場合の「液状」とは、25℃において液状であることを指す。
このような液状マスターバッチ組成物と、後述する熱可塑性樹脂とを混合して用いることで、帯電防止性、透明性、およびフィルム強度に優れた成型体を形成することができる。
【0014】
<液体樹脂(A)>
本発明の液体樹脂(A)は、帯電防止剤(B)分散する分散媒の役割であり、加えて、帯電防止剤が成型体表面にブリードし、帯電防止性の効果発現を促進する効果を奏する。
前記液体樹脂(A)は、25℃における粘度が8,000mPa・s未満、かつ水の溶解度が45mg/mL以下の、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる少なくともいずれかである。
【0015】
液体樹脂(A)としては、主剤樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネートなどの高い成型温度が必要な場合にも、耐熱性が高く、また本発明の液状マスターバッチとすることで、帯電防止性も優れる点で、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、及びアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
【0016】
[脂肪酸ポリエステル樹脂]
脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られるポリエステル樹脂である。
【0017】
脂肪酸ポリエステル樹脂を構成する脂肪族多価カルボン酸は、カルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸であれば、特に制限されるものではなく、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、トリカルバリル酸、1,3,6-ヘキサントリカルボン酸、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0018】
脂肪酸ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールは、水酸基を2つ以上有するアルコールであれば、特に制限されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール等の脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0019】
脂肪酸ポリエステル樹脂の具体例として、アデカサイザーPN‐170(ADEKA社
製、25℃での粘度800mPa・s、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーP-200(ADEKA社製、25℃での粘度2,600mPa・s、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーPN-250(ADEKA社製、25℃での粘度4,500mPa・s、アジピン酸ポリエステル樹脂)等が挙げられる。
【0020】
[ポリアルキレングリコール樹脂]
ポリアルキレングリコール樹脂は一般的には炭素数が1~6の繰り返し単位を有するアルキレングリコールから構成されることが多いが、相溶性、吸水性、フィルム強度の観点から、炭素数が3以上の繰り返し単位を有するポリアルキレングリコール樹脂が好ましい。
【0021】
ポリアルキレングリコール樹脂の具体例としては、例えばいずれも繰り返し単位中の炭素数が3であるポリトリメチレングリコールおよびポリプロピレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が4であるポリテトラメチレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられる。なかでも、比較的、吸水性が低く、水の溶解度が低いといった点で、繰り返し単位中の炭素数が3以上である、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、またはポリブチレングリコールが好ましい。とくに好ましくは、主剤樹脂との相溶性がよく、優れた成型体とできる点でポリプロピレングリコールである。
【0022】
[ポリエーテルエステル樹脂]
ポリエーテルエステル樹脂は、上記脂肪族多価カルボン酸と上記アルキレングリコールをエステル化させたものである。
【0023】
ポリエーテルエステル樹脂の具体例として、アデカサイザーRS‐107(ADEKA社製、25℃での粘度20mPa・s、アジピン酸エーテルエステル系樹脂)、アデカサイザーRS-700(ADEKA社製、25℃での粘度30mPa・s、ポリエーテルエステル系樹脂)等が挙げられる。
【0024】
本発明の液体樹脂(A)は、前述の、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、及びアセチルクエン酸トリブチルからなる群より選ばれる少なくともいずれかであって、さらに25℃における粘度が8,000mPa・s以下であり、かつ液体樹脂(A)に対する水の溶解度が45mg/mL以下である。
【0025】
25℃における粘度は、10~5,000mPa・sがより好ましく、100~3,000mPa・sが更に好ましい。上記範囲内であると、帯電防止性の点で好ましい。
また、より、高い透明性とIV低下の少ない液状マスターバッチ組成物としやすい点で好ましい。
なお、本明細書における粘度はJIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0026】
液体樹脂(A)に対する水の溶解度が45mg/mL以下であることが好ましく、30mg/mL以下であることがさらに好ましく、20mg/mL以下が特に好ましい。上記範囲内にあることで、フィルム強度の点で好ましい。また、水の溶解度は、0mg/mLに近いほど好ましい。
水の溶解度は、液体樹脂の構造、および分子量等により制御することができる。
なお、本明細書における水の溶解度とは、溶媒と水の相互溶解度のうち、その溶媒に飽和溶解する水の量であり、溶媒に水が飽和溶解した溶液1mL中の水の含有量である。
具体的には、室温23℃、湿度65%の雰囲気下で100mLの液体樹脂に0.5g(500mg)ずつ精製水を加えていき、液体の分離や透明性の低下、白濁が生じた際の合計添加量の値として求めることができる。
【0027】
具体的には、たとえば、脂肪酸ポリエステル樹脂の例として、アデカサイザーRS-107(粘度20mPa・s、水の溶解度5mg/mL以下)が、ポリアルキレングリコール樹脂の例として例えば、ユニオールD-1200(粘度200mPa・s、水の溶解度10mg/mL)が、アセチルクエン酸トリブチルの例として例えば、アデカサイザーPN-6810(粘度43mPa・s、水の溶解度5mg/mL以下)が挙げられる。
【0028】
また、液体樹脂(A)は、数平均分子量(Mn)が、100~3000であることが好ましく、200~2000であることがより好ましく、500~1500がさらに好ましく、1000~1500が特に好ましい。Mnが100以上であることによりフィルム製造適性と透明性、フィルム強度の点で好ましく、Mnが3000以下であることにより、分散性と帯電防止性の点で好ましい。
【0029】
液体樹脂(A)の含有率は、液状マスターバッチ組成物100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~80質量%である。この範囲内であることにより、製造時の撹拌および分散工程で流動性を維持でき、マスターバッチ製造適性に優れ、分散性の点で好ましく、また、成型体の透明性、フィルム強度の点で好ましい。
【0030】
<帯電防止剤(B)>
本発明に用いられる帯電防止剤(B)は、DSC融点が60℃以上、240℃未満であり、140℃以上、200℃未満であることが好ましい。上記の範囲内にあることで、製造時の熱劣化が抑制でき、液状マスターバッチを用いたフィルム製造適性が良好となり、得られた成型体の帯電防止性、透明性、およびフィルム強度が良好となる。
なお、本明細書におけるDSC融点とは、示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度のことを指す。
【0031】
また、帯電防止剤(B)は、液状マスターバッチ組成物100質量%中、10~40質量%の範囲内であることが好ましく、20~30質量%の範囲内であることが更に好ましい。10質量%以上であることにより帯電防止性の点で好ましく、40質量%以下であることにより、フィルム製造適性、透明性の点で好ましい。
【0032】
また、本発明における帯電防止剤は、DSC融点が上記範囲内であれば、一般に分子量が数千~数万程度の高分子型帯電防止剤や、分子量が数百~数千程度の界面活性剤型帯電防止剤などが使用でき、制限されない。なかでも、帯電防止性、および透明性に優れることから、界面活性剤型帯電防止剤が好ましく、なかでも、高い帯電防止性が得られることから、アニオン系帯電防止剤が特に好ましい。
【0033】
[高分子型帯電防止剤]
高分子型帯電防止剤の例としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体などがあり、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によって結合しているものが挙げられる。
【0034】
疎水性ブロックとしては、例えば、ポリオレフィンブロックを挙げることができ、ポリオレフィンブロックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体からなるブロック等を挙げることができる。ここで、ポリオレフィンブロックは、フッ素変性されていてもよい。また、疎水性ブロックは、疎水性であればよく、例えば、アルキレン基や芳香族基等の疎水性基を有している疎水性アミン、疎水性エステル、疎水性アミド、疎水性イミド、及び、疎水性エステルアミド等であってもよい。また、疎水性ブロックは、例えば、アルキル基等の疎水性の側鎖を有していてもよい。
【0035】
親水性ブロックとしては、例えば、ポリエーテルブロック、ポリエーテル含有親水性ポリマーブロック、カチオン性ポリマーブロック及びアニオン性ポリマーブロックを挙げることができる。ポリエーテルブロックは、典型的には、ポリエーテルジオールであり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体などを挙げることかできる。ポリエーテル含有親水性ポリマーブロックとは、ポリエーテルセグメントを有するものであり、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド及びエーテルウレタン等を挙げることができる。また、ポリエーテルブロック及びポリエーテルのセグメントは、直鎖状であってもよく、分岐していてもよい。また、カチオン性ポリマーブロックには、BF4-、PF6-、BF3Cl-、及び、PF5Cl-等の超強酸アニオンを対イオンする4級アンモニウム塩構造、又は、はホスホニウム塩構造が、非イオン性分子鎖で隔てられたているカチオン性ポリマーブロックを挙げることができる。また、アニオン性ポリマーブロックには、スルホニル基のみが塩となったスルホニル基を有する芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と、ジオール又はポリエーテとが共重合したポリマーブロックを挙げることができる。
【0036】
[界面活性剤型帯電防止剤]
界面活性剤型帯電防止剤の例としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が挙げられ、高い帯電防止性が得られることから、アニオン系帯電防止剤が特に好ましい。
【0037】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0038】
ノニオン系界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤;ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット若しくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0039】
カチオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明は、液状のマスターバッチである為、帯電防止剤の表面近傍への移行が促進され、高い帯電防止性を発現することができる。
【0041】
本発明の液状マスターバッチ組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止剤(B)以外の帯電防止剤、アルカリ金属やアルカリ土類金属または亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ハロゲン系、リン系または金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、ブロッキング防止剤などを含有させることができる。
【0042】
<液状マスターバッチ組成物の製造方法>
本発明における液状マスターバッチ組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、液状樹脂(A)と帯電防止剤(B)と、更に必要に応じて各種添加剤とを加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合し、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)を用いて分散することで、液状マスターバッチ組成物を得ることができる。分散装置は、上記以外にもニーダー、ロールミル、ボールミル、サンドミル等、任意の装置を使用することができる。成型加工が容易で分散性に優れるといった理由からシルバーソンミキサーやロールミルを用いることが好ましい。
【0043】
また、粗大粒子によるブツやゲル物の発生を抑制でき、フィルム上で均一な帯電防止性能を得ることができるという点から、液状マスターバッチ組成物の粒度は、100μm未満が好ましく、80μm未満がさらに好ましく、50μm未満が特に好ましい。
【0044】
《成型体》
成型体は、本発明の液状マスターバッチ組成物と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物より形成してなる。
成型体は、押出し成型により得られる、厚み数十~数百μm程度のシート・フィルムや、インジェクション成型やブロー成型により得られる厚み数百μm以上の容器・ボトル等が挙げられる。
なかでも、透明性に優れ、高い帯電防止性を発現できることから、シート・フィルム状の成型体において特に大きな効果を奏することができる。
【0045】
熱可塑性樹脂組成物は、成型体形成用として、例えば、ペレット状、粉末状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状とすることもでき、中でもペレット状が好ましい。
熱可塑性樹脂組成物をペレット状とするための製造方法としては、押出機による押出成形の後、ペレタイザーを用いてカッティングするといった一般的な方法をとることができ、また、これらのペレット状成型体を粉砕することで、粉末状あるいは顆粒状の成型体を得ることができる。同様に、押出成形した後、アンダーウォーターカッター等でカッティングすることにより、ビーズ状の成型体を得ることができる。
【0046】
また、液状マスターバッチ組成物と熱可塑性樹脂とを溶融混練した熱可塑性樹脂組成物とし、そのまま成形することもできる。
【0047】
このように、液状マスターバッチ組成物を含む熱可塑性樹脂組成物を成形加工して成型体を得る際の成形方法は、キャップ等の成型に用いられる射出成型や、容器やボトルなどの成型に用いられる押出成型、ブロー成型などを用いることができ、特に限定されるものではないが、高い帯電防止性、透明性が要求されることからTダイ成形やインフレーション成形によるシートやフィルム形状のものが好適である。
【0048】
本発明の成型体は、製造時の熱劣化が抑制されるため、280℃以上の条件のような、高い温度で成型を行う場合にも、透明性の低下を抑制することができ、優れた帯電防止性と、高いフィルム強度を達成することが可能である。
【0049】
「熱可塑性樹脂組成物」
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の液状マスターバッチ組成物と、熱可塑性樹脂を含有し、成型体を形成するための樹脂組成物である。
また、熱可塑性樹脂100質量部に対する液状マスターバッチ組成物の含有量は、フィルム製造適性及び透明性の点より、0.1~10質量部であることが好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0050】
また、帯電防止剤(B)の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.05~0.50質量部であることが好ましく、0.10~0.35質量部であることが更に好ましい。上記範囲内にあることにより、フィルム製造適性、透明性の点で好ましい。
【0051】
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂は、成型体を形成する際、液状マスターバッチ組成物と一緒に配合して使用する主剤樹脂であって、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかである。ただし、25℃における粘度が8,000mPa・s以下である液体樹脂は除く。
本発明では、これらの熱可塑性樹脂のような、成型時に高い温度を要する樹脂を成型体の主剤樹脂として用いた場合に、本発明の液状マスターバッチと共に用いることで、これらの相溶性が良好となり、高い帯電防止性および透明性と、優れたフィルム強度とのすべてを満たすことができるものとなる。
【0052】
液体樹脂(A)と、熱可塑性樹脂の好ましい組合せとしては、液体樹脂(A)が、ポリアルキレングリコール樹脂である場合、熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂、またはポリアミド樹脂であることがフィルム製造適性の点で好ましく、特に好ましくは、ポリエステル樹脂である。
これらの組み合わせである場合、液体樹脂(A)が、熱可塑性樹脂(D)の中に含浸されやすく、成型機周辺への汚染が少ないといった点で好ましい。
【0053】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分(カルボキシル基を有する化合物)と水酸基成分(水酸基を有する化合物)とを重合することによって得ることができる。
【0054】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0055】
ポリエステル樹脂を構成する水酸基成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、1、6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3-メチルペンタンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール等のジオールの他、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の水酸基を3つ以上有する多官能アルコールが挙げられる。
【0056】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂は、例えば、上述したカルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物を反応させることによって得ることができる。例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて得ることができる。
【0057】
アミノ基を2個以上有する化合物(Am)としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3-ジアミノ-2-プロパノール、1,4-ジアミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-オール、4-(2-アミノエチル)-4,7,10-トリアザデカン-2-オール、3-(2-ヒドロキシプロピル)-o-キシレン-α,α’-ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
【0058】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体とを反応させることにより容易に製造される。反応は公知の反応、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、また炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法により得ることができる。
【0059】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類4,4´-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用される。これらの他にピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´-ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。更に、フロログルシン等の多官能性化合物を併用した分岐を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも出来る。
【0060】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
【0061】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~30,000が好ましく、16,000~27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
【0062】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、ユーピロンH-4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS-3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
【0063】
[シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂]
COC樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性の熱可塑性重合体である。脂環構造の種類としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好適に用いることができる。ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。
【0064】
COC樹脂の具体例としては、JSR ARTON F4520(JSR社製、ノルボルネン共重合体)等が挙げられる。
【0065】
[フッ素樹脂]
フッ素樹脂は含フッ素モノマーの共重合によって得ることができる。含フッ素モノマーとしてはフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアクリル酸、パーフルオロメタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキルエステル等のフッ素含有エチレン性不飽和化合物や シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル等のフッ素非含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。また含フッ素モノマーと共重合するモノマーとしてはブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のフッ素非含有ジエン化合物でもよい。フッ素樹脂としては例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマーであるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF樹脂)、テトラフルオロエチレンのホモポリマーであるポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE樹脂)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体であるエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE樹脂)等が挙げられる。
【0066】
フッ素樹脂の具体例としてKFポリマーW#1100(クレハ社製、PVDF樹脂)、フルオンPTFE CD123E(旭硝子社製、PTFE樹脂)、フルオンETFE C-55AP(旭硝子社製、ETFE樹脂)等が挙げられる。
【実施例
【0067】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、部および%は、特に断りがない場合は、それぞれ、質量部および質量%を表す。
【0068】
<粘度>
粘度は、JIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0069】
<DSC融点>
DSC融点は、示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度であり、以下の条件で測定を行った。
装置名:セイコーインスツルメンツ社製DSC6200 加熱速度:10℃/分
【0070】
<水の溶解度>
水の溶解度は、室温23℃、湿度65%の雰囲気下で、100mLの液体樹脂に0.5g(500mg)ずつ精製水を加えていき、液温23℃において液体の分離や透明性の低下、白濁が生じた際の合計添加量の値から求めた。
【0071】
<粒度>
粒度は、JISK5600-2-5に従い、グラインドメーターを用いて25℃で測定した値である。
【0072】
<数平均分子量>
数平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)を2本直列で用いることにより測定されるものである。
【0073】
<粘度平均分子量>
粘度平均分子量とは、溶媒としてメチレンクロライドを用い25℃で測定した溶液粘度より換算された値である。
【0074】
使用した材料を以下に列挙する。
<液体樹脂>
(A1):ユニオールD-1200(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量1200、粘度200mPa・s、水の溶解度10mg/mL)
(A2):ユニオールD-400(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度100mPa・s、水の溶解度25mg/mL)
(A3):アデカサイザーRS-107(ADEKA社製、エーテルエステル樹脂、アジピン酸エーテルエステル樹脂、数平均分子量430、粘度20mPa・s、水の溶解度5mg/mL以下)
(A4):アデカサイザーPN-6810(ADEKA社製、アセチルクエン酸トリブチル、数平均分子量190、粘度43mPa・s、水の溶解度5mg/mL以下)
(A5):アデカサイザーPN-250(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量2100、粘度4,500mPa・s、水の溶解度5mg/mL以下)
(A’1):アデカサイザーPN-350(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量4500、粘度10,000mPa・s、水の溶解度5mg/mL以下)
(A’2):PEG-400(三洋化成工業社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエチレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度90mPa・s水の溶解度50mg/mL)
【0075】
<帯電防止剤>
(B1):デノンV-57S(丸菱油化工業社製、アニオン系界面活性剤、アルカンスルホン酸ナトリウム、DSC融点:191℃)
(B2):エレクトロストリッパーPC-3(花王社製、アニオン系界面活性剤、アルカンスルホン酸ナトリウム、DSC融点:166℃)
(B3):エレクトロストリッパーTS-5(花王社製、ノニオン系界面活性剤、グリセリンモノステアレート、DSC融点:70℃)
(B4):ペレクトロンAS(三洋化成工業社製、高分子型帯電防止剤、ポリアミド-ポリエーテル共重合体、DSC融点:195℃)
(B’1):エレクトロストリッパーTS-11B(花王社製、ノニオン系界面活性剤、DSC融点:44℃)
【0076】
<熱可塑性樹脂>
(D1):ポリエステルMA-2101M(ポリエステル樹脂、ユニチカ製、粘度平均分子量20,000)
(D2):ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)
(D3):アミランCM3001-N(ポリアミド樹脂、東レ製、粘度平均分子量50,000)
(D’1):アクリペットVH(ポリメチルメタクリレート系樹脂、三菱ケミカル社製、粘度平均分子量50,000)
【0077】
[実施例1]
液体樹脂(A1)70質量部、及び帯電防止剤(B1)30質量部を、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)にて混合、分散し、液状マスターバッチ組成物を得た。
続いて、得られた液状マスターバッチ組成物1質量部、及び熱可塑性樹脂(D1)100質量部を混合し、Tダイ成型機を用いて、280℃でフィルム成形し、厚さ100μmの単層フィルムを得た。
【0078】
[実施例2~14、比較例2~4]
表1に示した原料及び配合量(質量部)とした以外は、実施例1と同様の方法で液状マスターバッチ組成物及び成型体を得た。
【0079】
[比較例1]
液体樹脂(A’1)70重量部、及び帯電防止剤(B)30重量部を、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)にて混合、分散したものの、得られた液状マスターバッチ組成物の粒度は100μm以上であり、実用可能な分散性の液状マスターバッチ組成物を得ることはできなかった。
【0080】
<液状マスターバッチ組成物の評価>
得られた液状マスターバッチ組成物の製造適性について、以下の方法及び基準に基づいて評価した。結果を表1、2に示す。
【0081】
(分散性評価)
得られた液状マスターバッチ組成物の粒度を測定し、下記基準で評価を行った。
〇:粒度が50μm未満であり、良好
△:粒度が50μm以上100μm未満で実用可能
×:粒度が100μm以上であり、不可
【0082】
<フィルムの評価>
得られたフィルムを用いて、固有粘度(フィルム製造適性)、HAZE(透明性)、表面抵抗(帯電防止性)、静摩擦係数及び動摩擦係数(ブロッキング防止性)を、以下の方法及び基準に基づいて評価した。結果を表3~5に示す。
【0083】
(フィルム製造適性評価)
得られたフィルムを、柴山科学製作所社製SS-600-L2を用いて、固有粘度(IV)を測定し、配合した熱可塑性樹脂(D)を100%とした場合の保持率をもとに、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:IV保持率が95%以上であり、良好。
△:IV保持率が90%以上95%未満であり、実用可能。
×:IV保持率が90%未満であり、不可。
【0084】
(透明性評価)
作製したフィルムを23℃‐65%RH雰囲気化で24時間静置し、ガードナー社製ヘイズガードプラスを用いて、HAZE(%)を測定し、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:20%未満であり、良好。
△:20%以上、25%未満であり、実用可能。
×:25%以上であり、不可。
【0085】
(帯電防止性評価)
作製したフィルムを23℃‐65%RH雰囲気化で24時間静置し、ADVANTEST社製R8340 High Resistance Meterを用いて表面抵抗値を測定し、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:1.0×1011Ω/□未満であり、良好。
△:1.0×1011Ω/□以上、1.0×1013Ω/□未満であり、実用可能。
×:1.0×1013Ω/□以上であり、不可。
【0086】
(フィルム強度評価)
作製したフィルムを幅10mm、長さ160mmにカットし、引張試験機(東洋精機社製)を用いて、速度300mm/分で長さ方向に引張り、フィルムの破断強度を測定した。JIS K7127:1999に準拠し、測定を行い、下記基準で評価を行った。
[評価基準]
〇:破断強度が40MPa以上であり、良好。
△:破断強度が30MPa以上40MPa未満であり、実用可能。
×:破断強度が30MPa未満であり、不可。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
表1、2に示すように、本発明の成型体は、使用する液状マスターバッチ中に特定の液体樹脂と、特定の帯電防止剤(B)を含有し、かつ液状であるため、少ない添加量で優れた帯電防止性を示した。また、得られた成型体は、優れた帯電防止性と高い透明性に加えて、高いフィルム強度を有することが確認できた。