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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】傾斜装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/24 20060101AFI20240806BHJP
   B66F 7/08 20060101ALI20240806BHJP
   A61G 7/05 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
B66F3/24 D
B66F7/08 B
A61G7/05
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020156234
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049930
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】村山 学
(72)【発明者】
【氏名】若林 尚之
(72)【発明者】
【氏名】濱田 信吾
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第02883064(FR,A)
【文献】実開平01-090523(JP,U)
【文献】特開2007-061361(JP,A)
【文献】特開2014-110870(JP,A)
【文献】特開2001-037822(JP,A)
【文献】特表2002-528175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0180130(US,A1)
【文献】中国実用新案第201042491(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 3/24;7/08;7/22
A61G 7/05
F16M 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被傾斜物が配置される側に設けられた上側可動板と、
前記上側可動板の下方に配置され、前記上側可動板と上側回動軸を介して回動可能に接続された中間可動板と、
前記上側可動板と前記中間可動板との間に配置された第1アクチュエータと、
前記中間可動板の下方に配置され、前記中間可動板と下側第1回動軸を介して回動可能に接続された下側第1可動板と、
前記中間可動板と前記下側第1可動板との間に配置された第2アクチュエータと、
前記上側可動板と前記中間可動板とが接続されている端部と反対方向である第1方向側の端部において前記上側可動板と第1連結回動軸を介して回動可能に接続されるとともに、前記第1方向と反対方向である第2方向側の端部において前記下側第1可動板と第2連結回動軸を介して回動可能に接続された第1連結部材と、を備え
前記第1連結部材は、前記上側可動板、前記中間可動板および前記下側第1可動板が互いに略平行に配置された状態で、前記上側可動板と前記下側第1可動板とに接続されている、傾斜装置。
【請求項2】
前記第1連結部材と前記上側可動板との前記第1連結回動軸は、前記中間可動板と前記下側第1可動板との前記下側第1回動軸と略同軸状に配置され、
前記第1連結部材と前記下側第1可動板との前記第2連結回動軸は、前記上側可動板と前記中間可動板との前記上側回動軸と略同軸状に配置される、請求項1に記載の傾斜装置。
【請求項3】
前記第1連結部材は、棒状形状を有しており、平面視において、前記上側回動軸、および、前記下側第1回動軸と交差する方向に延びるように構成されている、請求項2に記載の傾斜装置。
【請求項4】
前記第1連結部材は、平面視において、前記第1方向および前記第2方向と直交する方向の一方側である第3方向における前記上側可動板の端部および前記下側第1可動板の端部に設けられている、請求項2または3に記載の傾斜装置。
【請求項5】
前記上側可動板の前記上側回動軸に沿う方向の長さは、前記中間可動板の前記上側回動軸に沿う方向の長さよりも大きく、前記下側第1可動板の前記下側第1回動軸に沿う方向の長さは、前記中間可動板の前記下側第1回動軸に沿う方向の長さよりも大きく、
前記第1連結回動軸は、前記第3方向において、前記上側可動板の端部側で、かつ、前記下側第1回動軸よりも外側に設けられており、
前記第2連結回動軸は、前記第3方向において、前記下側第1可動板の端部側で、かつ、前記上側回動軸よりも外側に設けられている、請求項4に記載の傾斜装置。
【請求項6】
前記上側可動板のうち、前記第3方向において前記下側第1回動軸よりも外側に設けられ、前記上側可動板から前記下側第1可動板に向けて下方に突出する第1突出部と、
前記下側第1可動板のうち、前記第3方向において前記上側回動軸よりも外側に設けられ、前記下側第1可動板から前記上側可動板に向けて上方に突出する第2突出部とをさらに備え、
前記第1連結回動軸は、前記第1突出部のうちの下方側の端部に設けられ、
前記第2連結回動軸は、前記第2突出部のうちの上方側の端部に設けられている、請求項5に記載の傾斜装置。
【請求項7】
前記下側第1可動板の下方に配置され、前記下側第1可動板と下側第2回動軸を介して回動可能に接続された下側第2可動板と、
前記下側第1可動板と前記下側第2可動板との間に配置された第3アクチュエータと、
前記下側第2可動板の下方に配置され、前記下側第2可動板と下側第3回動軸を介して回動可能に接続された下側第3可動板と、
前記下側第2可動板と前記下側第3可動板との間に配置された第4アクチュエータと、
平面視において、前記第1方向と直交する方向の一方側の端部において前記下側第1可動板と第3連結回動軸を介して回動可能に接続されるとともに、平面視において、前記第1方向と直交する方向の他方側の端部において前記下側第3可動板と第4連結回動軸を介して回動可能に接続された第2連結部材とをさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の傾斜装置。
【請求項8】
前記第1アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋を含み、
前記第2アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第2膨張収縮袋を含み、
前記第1膨張収縮袋および前記第2膨張収縮袋への気体の供給および排気の制御を行うことにより、前記上側可動板の傾斜角度を調整する制御を行う制御部をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の傾斜装置。
【請求項9】
前記第1膨張収縮袋および前記第2膨張収縮袋への気体の供給および排気を行う流路と、
前記流路を切り替える流路切替部と、
前記第1膨張収縮袋および前記第2膨張収縮袋へ気体を供給および排気を行うポンプと、をさらに備え、
前記制御部は、前記流路切替部と前記ポンプとを制御することにより、前記第1膨張収縮袋および前記第2膨張収縮袋への気体の供給および排気を制御するように構成されている、請求項8に記載の傾斜装置。
【請求項10】
前記上側可動板が傾斜する前記傾斜角度を測定する角度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記角度センサによって測定された前記傾斜角度が所定の角度になった場合に、前記第1膨張収縮袋および前記第2膨張収縮袋への気体の供給または排気を停止させる制御を行うように構成されている、請求項8または9に記載の傾斜装置。
【請求項11】
前記第1膨張収縮袋の内部の圧力を測定する第1圧力センサと、
前記第2膨張収縮袋の内部の圧力を測定する第2圧力センサと、をさらに備え、
前記制御部は、前記第1圧力センサによって測定された前記第1膨張収縮袋の内部の圧力が所定の第1上限値を上回った場合に、前記第1膨張収縮袋への気体の給気を停止させ、前記第2圧力センサにより測定された前記第2膨張収縮袋の内部の圧力が所定の第2上限値を上回った場合に、前記第2膨張収縮袋への気体の給気を停止させる制御を行うように構成されている、請求項8~10のいずれか1項に記載の傾斜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜装置に関し、特に、人や物を傾斜させる傾斜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人や物を傾斜させる傾斜装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、基板と、基板上に取り付けられた2つの枕空気袋と、2つの枕空気袋の上面に支持される支持板と、支持板を基板に対し傾斜可能とするリンク機構とを備える傾斜装置が開示されている。上記特許文献1に開示されている傾斜装置は、2つの枕空気袋のいずれか一方が膨張した場合に、膨張した枕空気袋によって支持板の端部を持上げることにより、支持板を傾斜させるように構成されている。また、リンク機構は、支持板の一方側の端部を中心として支持板を回動させることにより、支持板を一方側に傾斜させることが可能なように保持するとともに、支持板の他方側の端部を中心として支持板を回動させることにより、支持板を他方側に傾斜させることが可能なように保持している。すなわち、上記特許文献1に開示されている傾斜装置は、膨張させる枕空気袋に応じて、支持板を傾斜させる向きを変更可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-058387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の傾斜装置では、リンク機構が、支持板(可動板)の一方側の端部を回動中心として可動板を回動させることにより、可動板を一方側に傾斜させることが可能なように保持しているとともに、可動板の他方側の端部を回動中心として可動板を回動させることにより、可動板を他方側に傾斜させることが可能なように保持している。そのため、被傾斜物が、可動板を傾斜させる際の回動軸となる端部とは反対側の端部に配置されている場合に、被傾斜物の自重により、傾斜させる方向とは反対方向である意図しない方向のモーメントが可動板に発生し、可動板が意図しない方向に傾斜することがあるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、傾斜装置を傾斜させる際に、被傾斜物の配置によって可動板が意図しない方向に傾斜することを抑制することが可能な傾斜装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による傾斜装置は、被傾斜物が配置される側に設けられた上側可動板と、上側可動板の下方に配置され、上側可動板と上側回動軸を介して回動可能に接続された中間可動板と、上側可動板と中間可動板との間に配置された第1アクチュエータと、中間可動板の下方に配置され、中間可動板と下側第1回動軸を介して回動可能に接続された下側第1可動板と、中間可動板と下側第1可動板との間に配置された第2アクチュエータと、上側可動板と中間可動板とが接続されている端部と反対方向である第1方向側の端部において上側可動板と第1連結回動軸を介して回動可能に接続されるとともに、第1方向と反対方向である第2方向側の端部において下側第1可動板と第2連結回動軸を介して回動可能に接続された第1連結部材と、を備え、第1連結部材は、上側可動板、中間可動板および下側第1可動板が互いに略平行に配置された状態で、上側可動板と下側第1可動板とに接続されている
【0008】
この発明の一の局面による傾斜装置では、上方から下方に上側可動板、中間可動板、および、下側第1可動板が配置される構成において、上側可動板と第1連結回動軸を介して回動可能に接続されるとともに、下側第1可動板と第2連結回動軸を介して回動可能に接続された第1連結部材を備える。ここで、上側可動板を上側可動板と中間可動板との上側回動軸の軸線回りに回動させる場合、第1連結部材は、第1連結部材と下側第1可動板との第2連結回動軸の軸線回りに上側可動板と一体的に回動する。したがって、第1連結部材が上側可動板と第1連結回動軸を介して接続するように構成することにより、上側回動軸回りの回転方向に上側可動板を回動させることにより上側可動板を傾斜させる際に、被傾斜物が上側回動軸とは反対側の端部に配置されている場合でも、第1連結回動軸を介して上側可動板に接続される第1連結部材によって、上側可動板の上側回動軸が移動することを規制することができる。その結果、被傾斜物の自重によって上側可動板に意図しない方向のモーメントが発生することを抑制することが可能となるので、傾斜装置を傾斜させる際に、被傾斜物の配置によって可動板が意図しない方向に傾斜することを抑制することが可能な傾斜装置を提供することができる。
【0009】
上記一の局面による傾斜装置において、好ましくは、第1連結部材と上側可動板との第1連結回動軸は、中間可動板と下側第1可動板との下側第1回動軸と略同軸状に配置され、第1連結部材と下側第1可動板との第2連結回動軸は、上側可動板と中間可動板との上側回動軸と略同軸状に配置される。ここで、中間可動板と下側第1可動板との下側第1回動軸の軸線回りに中間可動板を回動させる場合、上側可動板は、第1連結部材と上側可動板との第1連結回動軸の軸線回りに中間可動板と一体的に回動する。この場合に、下側第1回動軸と第1連結回動軸とが略同軸状に配置されていないと、上側可動板の回動中心と中間可動板の回動中心とにずれが生じる。上側可動板の回動中心と中間可動板の回動中心とにずれが生じた場合には、上側可動板と中間可動板とを一体的に回動させることができなくなる。
【0010】
また、上側可動板を上側可動板と中間可動板との上側回動軸の軸線回りに回動させる場合に、上側回動軸と第2連結回動軸とが略同軸状に配置されていないと、上側可動板の回動中心と第1連結部材の回動中心とがずれが生じる。上側可動板の回動中心と第1連結部材の回動中心とにずれが生じた場合には、上側可動板と第1連結部材とを一体的に回動させることができなくなる。
【0011】
そこで、上記のように第1連結回動軸と下側第1回動軸とを略同軸状に配置するように構成すれば、第1連結可動軸と下側第1回動軸とにずれが生じることを抑制することができる。その結果、中間可動板を下側第1回動軸の軸線回りに回動させる場合に、中間可動板を回動させることができなくなることを抑制することができる。また、上側回動軸と第2連結回動軸とを略同軸状に配置するように構成すれば、上側回動軸と第2連結回動軸とにずれが生じることを抑制することができる。その結果、上側可動板を第1回動軸の軸線回りに回動させる場合に、上側可動板を回動させることができなくなることを抑制することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1連結部材は、棒状形状を有しており、平面視において、上側回動軸、および、下側第1回動軸と交差する方向に延びるように構成されている。このように構成すれば、第1連結部材が上側回動軸および下側第1回動軸と交差する方向に延びるように構成されているので、上側可動板が上側回動軸回りに回動する際、および、中間可動板が下側第1回動軸回りに回動する際に、第1連結部材が、上側可動板の回動、および、中間可動板の回動に干渉することを抑制することができる。
【0013】
上記第1連結回動軸が下側第1回動軸と略同軸状に配置され、第2連結回動軸と上側回動軸とが略同軸状に配置される構成において、好ましくは、第1連結部材は、平面視において、第1方向および第2方向と直交する方向の一方側である第3方向における上側可動板の端部および下側第1可動板の端部に設けられている。このように構成すれば、第3方向において、第1連結部材を、上側回動軸および下側第1回動軸の外側に配置することができる。その結果、第1連結部材が、第3方向において、上側回動軸および下側第1回動軸の内側に配置される構成と比較して、中間可動板に第1連結部材を通過させる開口などを設けなくてよいため、装置構成が複雑化することを抑制することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、上側可動板の上側回動軸に沿う方向の長さは、中間可動板の上側回動軸に沿う方向の長さよりも大きく、下側第1可動板の下側第1回動軸に沿う方向の長さは、中間可動板の下側第1回動軸に沿う方向の長さよりも大きく、第1連結回動軸は、第3方向において、上側可動板の端部側で、かつ、下側第1回動軸よりも外側に設けられており、第2連結回動軸は、第3方向において、下側第1可動板の端部側で、かつ、上側回動軸よりも外側に設けられている。このように構成すれば、第1連結部材を上側回動軸および下側第1回動軸の外側に配置した場合でも、平面視において、第1連結部材が上側可動板および下側第1可動板の外側に配置されることを抑制することができる。その結果、装置が大型化することを抑制することができる。
【0015】
上記第1連結回動軸が下側第1回動軸よりも外側に設けられており、第2連結回動軸が上側回動軸よりも外側に設けられている構成において、好ましくは、上側可動板のうち、第3方向において下側第1回動軸よりも外側に設けられ、上側可動板から下側第1可動板に向けて下方に突出する第1突出部と、下側第1可動板のうち、第3方向において上側回動軸よりも外側に設けられ、下側第1可動板から上側可動板に向けて上方に突出する第2突出部とをさらに備え、第1連結回動軸は、第1突出部のうちの下方側の端部に設けられ、第2連結回動軸は、第2突出部のうちの上方側の端部に設けられている。このように構成すれば、第1突出部が下方に突出しているので、第1突出部の下方側の端部に第1連結回動軸を設けることにより、上下方向における第1連結回動軸の位置を、下側第1回動軸の位置と略同じ位置に配置することができる。その結果、下側第1回動軸と第1連結回動軸とを容易に略同軸状に配置することができる。また、第2突出部が上方に突出しているので、第2突出部の上方側の端部に第2連結回動軸を設けることにより、上下方向における第2連結回動軸の位置を、上側回動軸の位置と略同じ位置に配置することができる。その結果、上側回動軸と第2連結回動軸とを容易に略同軸状に配置することができる。
【0016】
上記一の局面における傾斜装置において、好ましくは、下側第1可動板の下方に配置され、下側第1可動板と下側第2回動軸を介して回動可能に接続された下側第2可動板と、下側第1可動板と下側第2可動板との間に配置された第3アクチュエータと、下側第2可動板の下方に配置され、下側第2可動板と下側第3回動軸を介して回動可能に接続された下側第3可動板と、下側第2可動板と下側第3可動板との間に配置された第4アクチュエータと、平面視において、第1方向と直交する方向の一方側の端部において下側第1可動板と第3連結回動軸を介して回動可能に接続されるとともに、平面視において、第1方向と直交する方向の他方側の端部において下側第3可動板と第4連結回動軸を介して回動可能に接続された第2連結部材とをさらに備える。このように構成すれば、可動板の枚数に応じて可動板が傾斜する方向を増やした場合でも、下側第2可動板が意図しない方向に傾斜することを抑制することができる。その結果、たとえば、前後方向と左右方向とに可動板が傾斜する方向を増やすことにより複雑な傾斜の動作を行う構成においても、意図しない方向へ可動板が傾斜することを抑制することができる。
【0017】
上記一の局面における傾斜装置において、好ましくは、第1アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋を含み、第2アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第2膨張収縮袋を含み、第1膨張収縮袋および第2膨張収縮袋への気体の供給および排気の制御を行うことにより、上側可動板の傾斜角度を調整する制御を行う制御部をさらに備える。このように構成すれば、第1膨張収縮袋および第2膨張収縮袋への気体の供給および排気によって、上側可動板の傾斜角度を調整することが可能となるので、傾斜装置の構成を簡素化することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、第1膨張収縮袋および第2膨張収縮袋への気体の供給および排気を行う流路と、流路を切り替える流路切替部と、第1膨張収縮袋および第2膨張収縮袋へ気体を供給および排気を行うポンプと、をさらに備え、制御部は、流路切替部とポンプとを制御することにより、第1膨張収縮袋および第2膨張収縮袋への気体の供給および排気を制御するように構成されている。このように構成すれば、流路切替部によって気体の流路を切り替えることにより、単一のポンプによって第1膨張収縮袋および第2膨張収縮袋を膨張および収縮させることができる。その結果、第1膨張収縮袋および第2膨張収縮袋のそれぞれに、ポンプを設ける構成と比較して、部品点数の増加による傾斜装置の複雑化および大型化を抑制することができる。
【0019】
上記制御部が上側可動板の傾斜角度を調整する制御を行う構成において、好ましくは、上側可動板が傾斜する傾斜角度を測定する角度センサをさらに備え、制御部は、角度センサによって測定された傾斜角度が所定の角度になった場合に、第1膨張収縮袋または第2膨張収縮袋への気体の供給または排気を停止させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、傾斜角度が所定の角度になった場合に給気を停止させることができるため、傾斜角度が所定の角度以上になることを抑制することができる。また、傾斜角度が所定の角度になった場合に排気を停止させることができるので、所定角度をたとえば0度に設定することにより上側可動板が水平状態に戻ったときに排気を停止させることができる。
【0020】
上記制御部が上側可動板の傾斜角度を調整する制御を行う構成において、好ましくは、第1膨張収縮袋の内部の圧力を測定する第1圧力センサと、第2膨張収縮袋の内部の圧力を測定する第2圧力センサと、をさらに備え、制御部は、第1圧力センサによって測定された第1膨張収縮袋の内部の圧力が所定の第1上限値を上回った場合に、第1膨張収縮袋への気体の給気を停止させ、第2圧力センサにより測定された第2膨張収縮袋の内部の圧力が所定の第2上限値を上回った場合に、第2膨張収縮袋への気体の給気を停止させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第1膨張収縮袋が過度に膨張することを抑制することができる。また、第2膨張収縮袋が過度に膨張することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、傾斜装置を傾斜させる際に、被傾斜物の配置によって可動板が意図しない方向に傾斜することを抑制することが可能な傾斜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態による傾斜装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態による傾斜装置の可動部および駆動装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態による可動部の斜視図である。
図4図3とは異なる方向から見た第1実施形態による可動部の斜視図である。
図5】第1実施形態による可動部の平面視における模式図である。
図6図5における300-300線の断面図である。
図7図5における400-400線の断面図である。
図8】第1連結部材の構成を説明するための模式図である。
図9】第1連結部材の平面視における模式図である。
図10】上側回動軸の構成を説明するための模式図である。
図11】上側回動軸が上側可動板および中間可動板に接続される構成を説明するための模式図である。
図12】第1連結回動軸の構成を説明するための模式図である。
図13】第1実施形態による可動板の平面視における大きさを説明するための模式図である。
図14】第1実施形態による可動板を正方向に回動させる構成を説明するための模式図である。
図15】第1実施形態による可動板を負方向に回動させる構成を説明するための模式図である。
図16】第1実施形態による傾斜装置による被傾斜物の傾斜を説明するための模式図である。
図17】比較例による傾斜装置において、可動板が意図しない方向に傾斜する例を説明するための図である。
図18】第1実施形態による傾斜装置において、可動板が意図しない方向に傾斜することを抑制する構成を説明するための図である。
図19】第1実施形態による傾斜装置において、第1連結部材によって上側可動板の移動が規制される構成を説明するための模式図である。
図20】上側回動軸と第2連結回動軸との位置の誤差の許容範囲を説明するための模式図である。
図21】第1実施形態による傾斜装置の流路切替部のブロック図である。
図22】第1実施形態の傾斜装置の制御部による異常検出処理制御のフローチャートである。
図23】第2実施形態による傾斜装置の構成を示す図である。
図24】第2実施形態による可動部の斜視図である。
図25】第2実施形態による傾斜装置のブロック図である。
図26】第2実施形態による可動板の平面視における大きさを説明するための模式図である。
図27】変形例による第1連結回動軸の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1図21を参照して、本発明の第1実施形態による構成について説明する。
【0025】
第1実施形態における傾斜装置100は、図1に示すように、可動部1と、駆動装置2と、を備えている。傾斜装置100は、駆動装置2により可動部1を傾斜させることにより、可動部1に配置された被傾斜物Tを傾斜させるように構成されている。
【0026】
図1に示すように、可動部1は、上側可動板10と、中間可動板11と、下側第1可動板12とを備える。
【0027】
図2に示すように、可動部1は、第1アクチュエータと、第2アクチュエータとを含む。また、図2に示すように、駆動装置2は、制御部3、流路切替部4、ポンプ5、通信部6、および、操作部7を備える。
【0028】
第1アクチュエータは、上側可動板10と中間可動板11との間に配置されている。第1アクチュエータは、上側可動板10を回動させるように構成されている。第1アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋30を含む。第2アクチュエータは、中間可動板11と下側第1可動板12との間に配置されている。第2アクチュエータは、中間可動板11とともに、上側可動板10を回動させるように構成されている。第2アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第2膨張収縮袋31を含む。第1膨張収縮袋30、および、第2膨張収縮袋31は、気体(空気)の給気および排気により、膨張および収縮されるように構成されている。なお、第1実施形態では、給気および排気される「気体」の一例として、(駆動装置2周辺の)空気を用いた例を示すが、給気および排気される気体は、容易に入手可能な酸素、二酸化炭素、窒素および水蒸気でもよいし、安定な気体であるヘリウム、ネオンおよびアルゴンなどの希ガスでもよい。また、給気および排気される気体は、上記の気体の混合気体でもよい。
【0029】
図2に示ように、可動部1は、第1角度センサ70を備える。第1角度センサ70は、上側可動板10が傾斜する傾斜角度θ1(図16参照)を検出するためのセンサであり、上側可動板10の下面に設置されている。なお、傾斜角度θ1は、可動部1が、後述する正方向または負方向に回動する場合の水平面に対する上側可動板10の傾斜角度である。また、「第1角度センサ70」は、特許請求の範囲の「角度センサ」の一例である。
【0030】
また、第1角度センサ70は、駆動装置2の制御部3に接続されており、検出した傾斜角を制御部3に送信するように構成されている。また、第1角度センサ70は、重力加速度の方向を検知可能に構成されてる。第1角度センサ70は、たとえば、加速度を基準にセンサの傾きを検出する加速度センサを含む。
【0031】
制御部3は、流路切替部4とポンプ5とを制御することにより、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気を制御するように構成されている。また、制御部3は、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気の制御を行うことにより、上側可動板10の傾斜角度θ1(図16参照)を調整する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部3は、通信部6により受信した指示および操作部7により受け付けた操作に基づいて、流路切替部4およびポンプ5を制御して、各膨張収縮袋を膨張および収縮させ、上側可動板10を回動軸線回りに回動させるように構成されている。
【0032】
また、第1実施形態では、制御部3は、後述するように上側可動板10の傾斜角度θ1(図16参照)に基づいて、上側可動板10を傾斜させるように第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体(空気)の給気および排気の制御を行う。
【0033】
また、図2に示すように、傾斜装置100は、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気を行う流路60を備えている。流路60は、第1膨張収縮袋30とポンプ5とを接続する第1流路60aと、第2膨張収縮袋31とポンプ5とを接続する第2流路60bとを含む。
【0034】
流路切替部4は、流路60を切り替えるように構成されている。具体的には、流路切替部4は、第1膨張収縮袋30への気体(空気)の給気および排気を行う際には、第1流路60aとポンプ5とを接続するように構成されている。また、流路切替部4は、第2膨張収縮袋31への気体(空気)の給気および排気を行う際には、第2流路60bとポンプ5とを接続するように構成されている。流路切替部4は、電磁弁を含み、制御部3に接続されている。
【0035】
ポンプ5は、可動部1に設けられた第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31に流路60を介して接続されており、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31へ気体を供給および排気を行うように構成されている。
【0036】
通信部6は、無線および有線の少なくとも一方の通信より、外部の上位装置から送信された傾斜装置100の制御を行うための動作指示を受信するように構成されている。通信部6は、制御部3に接続されており、受信された動作指示は、制御部3に送信される。
【0037】
操作部7は、操作者が傾斜装置100の操作を行うために設けられ、操作者の入力操作を受け付けるように構成されている。受け付けられた操作は、制御部3に送信される。
【0038】
また、駆動装置2は、第1膨張収縮袋30の内部の圧力を測定する第1圧力センサ80と、第2膨張収縮袋31の内部の圧力を測定する第2圧力センサ81と、を備える。第1圧力センサ80および第2圧力センサ81は、制御部3に接続されており、圧力の測定結果を制御部3に送信するように構成されている。
【0039】
(可動部の構成)
図3に示すように、上側可動板10は、被傾斜物T(図1参照)が配置される側に設けられる。言い換えると、上側可動板10は、可動部1のうち、最も上方に配置される。中間可動板11は、上側可動板10の下方に配置され、上側可動板10と上側回動軸20を介して回動可能に接続されている。下側第1可動板12は、中間可動板11の下方に配置され、中間可動板11と下側第1回動軸21を介して回動可能に接続されている。上側回動軸20、および、下側第1回動軸21は、たとえば、蝶番などを含む。なお、以下では、上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向、下方向をZ2方向とする。また、Z方向と直交する面内において、互いに直交する2方向を、X方向およびY方向とする。X方向のうち、一方側をX1方向、他方側をX2方向とする。Y方向のうち、一方側をY1方向、他方側をY2方向とする。
【0040】
上側可動板10、中間可動板11、および、下側第1可動板12の各々は、ハニカム構造体と、ハニカム構造体を挟み込む一対のアルミニウム材とを含む板状の部材を含む。なお、各可動板は、厚さに比べて、平面上に十分に大きい長さを有する外形形状の部材であればよい。たとえば、各可動板は、中空の板部材のみならず、中実の部材でもよい。または、穴が形成された部材でもよいし、格子状の部材でもよい。
【0041】
また、図3に示すように、可動部1は、上側可動板10と下側第1可動板12とを接続する第1連結部材40を含む。図3に示すように、第1連結部材40は、棒状形状を有している。第1連結部材40は、第2連結回動軸23を介して下側第1可動板12と接続している。第2連結回動軸23は、たとえば、ピン部材(図示せず)と孔部(図示せず)とにより構成される。第1連結部材40は、軽量化のため厚さの薄い板材をL型に曲げて、補強することが好ましい。
【0042】
また、図3に示すように、可動部1は、第1突出部50と、第2突出部51とを含む。また、第2突出部51は、下側第1可動板12のうち、第3方向において上側回動軸20よりも外側に設けられ、下側第1可動板12から上側可動板10に向けて上方に突出するように構成されている。第1実施形態では、図3に示すように、第2連結回動軸23は、第2突出部51のうちの上方側の端部51aに設けられている。
【0043】
図4に示すように、第1連結部材40は、第1連結回動軸22を介して上側可動板10と接続している。第1連結回動軸22は、たとえば、孔部50d(図12参照)に挿通されたピン部材22a(図12参照)により構成される。第1連結回動軸22の詳細な構成は、後述する。また、図4に示すように、第1突出部50は、上側可動板10のうち、第3方向(Y1方向)において下側第1回動軸21よりも外側(Y1方向側)に設けられ、上側可動板10から下側第1可動板12に向けて下方(Z2方向)に突出するように構成されている。第1実施形態では、図4に示すように、第1連結回動軸22は、第1突出部50のうちの下方側の端部50aに設けられている。
【0044】
(可動部の形状および回動軸が延びる方向)
図5は、可動部1をZ1方向側から見た平面図である。なお、図5に示す例では、中間可動板11を、破線で図示している。また、図5に示す例では、第1連結部材40を一点鎖線で図示している。
【0045】
図5に示すように、第1連結部材40は、平面視において、上側回動軸20、および、下側第1回動軸21と交差する方向に延びるように構成されている。本実施形態では、たとえば、上側回動軸20および下側第1回動軸21は、平面視において、概ねY方向に延びており、第1連結部材40は、平面視において、X方向に延びるように構成されている。具体的には、上側回動軸20は、Y方向に対して、角度α分、外側(X2方向側)に傾いた状態で設けられている。また、下側第1回動軸21は、Y方向に対して、角度β分外側(X1方向側)に傾いた状態で設けられている。また、図5に示すように、第1連結部材40は、平面視において、第1方向(X1方向)および第2方向(X2方向)と直交する方向(Y方向)の一方側である第3方向(Y1方向)における上側可動板10の端部10cおよび下側第1可動板12の端部12cに設けられている。
【0046】
また、図5に示すように、第1実施形態では、第1連結回動軸22は、第3方向(Y1方向)において、上側可動板10の端部10c側で、かつ、下側第1回動軸21よりも外側(Y1方向側)に設けられている。また、第2連結回動軸23は、第3方向(Y1方向)において、下側第1可動板12の端部12c側で、かつ、上側回動軸20よりも外側(Y1方向側)に設けられている。
【0047】
(可動板および第1連結部材の接続)
図6は、図5の300-300線の断面を、Y1方向側から見た模式図である。図6に示すように、上側可動板10のX2方向側の端部10bと、中間可動板11のX2方向側の端部11bとが、上側回動軸20を介して接続されている。上側回動軸20は、第1スペーサ部材15aを介して、上側可動板10に設けられている。これにより、第1スペーサ部材15aの上下方向(Z方向)の大きさを変更することによって、上側回動軸20の高さ位置を調節することができる。また、中間可動板11のX1方向側の端部11aと、下側第1可動板12のX1方向側の端部12aとが、下側第1回動軸21を介して接続されている。下側第1回動軸21は、第2スペーサ部材15bを介して、下側第1可動板12に設けられている。これにより、第2スペーサ部材15bの上下方向(Z方向)の大きさを変更することによって、下側第1回動軸21の高さ位置を調節することができる。
【0048】
図7は、図5の400-400線の断面を、Y1方向から見た模式図である。図7に示すように、第1連結部材40は、上側可動板10と中間可動板11とが接続されている端部10bと反対方向である第1方向(X1方向)側の端部10aにおいて上側可動板10と第1連結回動軸22を介して回動可能に接続される。言い換えると、第1連結部材40のX1方向側の端部40aは、第1連結回動軸22を介して、上側可動板10のX1方向側の端部10aと接続している。
【0049】
また、第1連結部材40は、第1方向(X1方向)と反対方向である第2方向(X2方向)側の端部12bにおいて下側第1可動板12と第2連結回動軸23を介して回動可能に接続されている。言い換えると、第1連結部材40のX2方向側の端部40bは、第2連結回動軸23を介して、下側第1可動板12のX2方向側の端部12bと接続している。
【0050】
(第1連結部材)
図8は、第1連結部材40をY1方向側から見た模式図である。図8に示すように、第1連結部材40のX1方向側の端部40aには、第1連結回動軸22が設けられている。また、第1連結部材40のX1方向側の端部40aには、第1突出部50が設けられている。また、第1連結部材40のX1方向側の端部40aの近傍には、切り欠き40cが設けられている。これにより、下側第1可動板12を、切り欠き40cの内側に配置することによって、第1連結部材40の下側(Z2方向側)に配置される下側第1可動板12の下端部の位置を、上側(Z1方向側)にずらすことが可能となるので、上下方向(Z方向)における可動部1の大きさを低減することができる。
【0051】
また、図8に示すように、第1連結部材40のX2方向側の端部40bには、第2連結回動軸23が設けられている。また、第1連結部材40のX2方向側の端部40bには、第2突出部51が設けられている。また、第1連結部材40のX2方向側の端部40bの近傍には、切り欠き40dが設けられている。これにより、上側可動板10を、切り欠き40dの内側に配置することによって、第1連結部材40の上側(Z1方向側)に配置される上側可動板10の上端部の位置を、下側(Z2方向側)にずらすことが可能となるので、上下方向(Z方向)における可動部1の大きさを低減することができる。
【0052】
図9は、第1連結部材40をZ1方向から見た模式図である。第1実施形態では、下側第1回動軸21(図5参照)が、角度β分外側(X1方向側)に傾斜した状態で設けられている。上側可動板10と中間可動板11とが下側第1回動軸21の軸線回りに回動する場合、第1連結部材40も、上側可動板10とともに、第2連結回動軸23の軸線周りに同じ方向に回動する。そのため、下側第1回動軸21と第1連結回動軸22とは、互いに略等しい方向を向くことが好ましい。したがって、第1実施形態では、第1連結回動軸22を水平方向(X方向)に対して角度βで傾斜させるために、第1連結部材40のX1方向側の端部40aに対して角度βで曲げ加工が施されている。
【0053】
また、第1実施形態では、上側回動軸20(図5参照)が、角度α分外側(X1方向側)に傾斜した状態で設けられている。中間可動板11が第1連結回動軸22の軸線回りに回動する場合、上側可動板10が上側回動軸20の軸線回りに回動する場合、第1連結部材40は回動しない。しかしながら、上側可動板10は、第1連結回動軸22によって、第1連結部材40と接続されている。したがって、中間可動板11とともに上側可動板10が回動する場合、上側可動板10は、下側第1回動軸21の軸線周りに回動するとともに第2連結回動軸23の軸線周りにも回動する。そのため、下側第1回動軸21と第2連結回動軸23とは、互いに略等しい方向を向くことが好ましい。したがって、第1実施形態では、第2連結回動軸23を水平方向(X方向)に対して角度αで傾斜させるために、第1連結部材40のX2方向側の端部40bに対して角度αで曲げ加工が施されている。
【0054】
(上側回動軸の構成)
次に、図10および図11を参照して、上側回動軸20の構成について説明する。なお、下側第1回動軸21の構成は、上側回動軸20と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
図10に示すように、上側回動軸20は、第1接続部20aと、第2接続部20bと、回動軸部20cとを含む。回動軸部20cは、第1接続部20aと第2接続部20bとを回動可能に接続している。また、第1接続部20aには、複数の孔部20dが設けられている。これにより、第1接続部20aは、たとえば、ビスなどにより、上側可動板10に固定することができる。また、第2接続部20bには、複数の孔部20eが設けられている。これにより、第2接続部20bは、たとえば、ビスなどにより、中間可動板11に固定することができる。
【0056】
また、図11に示すように、上側回動軸20は、第1スペーサ部材15aを介して、上側可動板10に固定されている。図11に示す例では、第1接続部20aが、第1スペーサ部材15aに固定されており、第2接続部20bが、中間可動板11に固定されている。これにより、第1スペーサ部材15aのZ方向における大きさを変更することにより、上側回動軸20のZ方向の高さ位置を調節することができる。
【0057】
(第1連結回動軸の構成)
次に、図12を参照して、第1連結回動軸22の構成について説明する。なお、第2連結回動軸23の構成は、第1連結回動軸22の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
図12に示すように、第1連結回動軸22は、ピン部材22aと、ワッシャ22bと、第1ナット22cと、第2ナット22dとを含む。また、第1突出部50は、孔部50dが設けられた環状部50bと、ねじ山が設けられたねじ部50cとを含む。第1突出部50は、環状部50bを回転させることにより、高さ位置を調節可能に構成されている。第1突出部50は、たとえば、アイボルトを含む。
【0059】
第1実施形態では、第1連結回動軸22は、ピン部材22aを孔部50dに挿通した状態で、ワッシャ22b、第1ナット22c、および、第2ナット22dによって固定することにより、第1連結部材40を回動可能に固定するように構成されている。
【0060】
(各可動板の大きさ)
図13は、上側可動板10、中間可動板11、および、下側第1可動板12をZ1方向からZ2方向に向けて見た平面図である。なお、図13に示す例では、説明のため、各可動板をX方向にずらした状態で図示している。
【0061】
図13に示すように、上側可動板10は、平面視において、互いに平行な長辺と短辺とを有する台形形状を有している。具体的には、上側可動板10は、上側回動軸20(図3参照)に沿う方向(Y方向)に延びる辺10dと、平面視において、上側回動軸20と直交する方向(X方向)に延びる辺10eとを有している。辺10dの長さは、長さD1であり、辺10eの長さは、長さD2である。
【0062】
また、中間可動板11は、平面視において、互いに平行な長辺と短辺とを有する台形形状を有している。具体的には、中間可動板11は、上側回動軸20(図3参照)に沿う方向(Y方向)に延びる辺11cおよび辺11eと、平面視において、上側回動軸20と直交する方向(X方向)に延びる辺11dとを有している。辺11cおよび辺11eの長さは、長さD3であり、辺11dの長さは、長さD4である。
【0063】
また、下側第1可動板12は、平面視において、互いに平行な長辺と短辺とを有する台形形状を有している。具体的には、下側第1可動板12は、上側回動軸20(図3参照)に沿う方向(Y方向)に延びる辺12dと、平面視において、上側回動軸20と直交する方向(X方向)に延びる辺12eとを有している。辺12dの長さは、長さD5であり、辺12eの長さは、長さD6である。
【0064】
第1実施形態では、図13に示すように、上側可動板10の上側回動軸20に沿う方向(Y方向)の長さD1は、中間可動板11の上側回動軸20に沿う方向(Y方向)の長さD3よりも大きい。また、下側第1可動板12の下側第1回動軸21に沿う方向(Y方向)の長さD5は、中間可動板11の下側第1回動軸21に沿う方向(Y方向)の長さD3よりも大きい。なお、辺10dの長さD1と、辺12dの長さD5とは、互いに略等しい大きさである。また、辺10eの長さD2と、辺11dの長さD4と、辺12eの長さD6とは、互いに略等しい大きさである。したがって、上側可動板10、中間可動板11、および、下側第1可動板12は、平面視において、重なるように配置される。また、第1連結部材40は、中間可動板11のY1方向側であり、かつ、上側可動板10の長さD1と中間可動板11の長さD2との差分である幅W1の間に配置される。
【0065】
(可動部の回動方向)
次に、図14および図15を参照して、可動部1の回動方向について説明する。図14に示す例は、可動部1を正方向に回動させた場合を示している。なお、正方向とは、Y1方向側からY2方向側に向けてみた場合に、上側可動板10を、上側回動軸20(第2連結回動軸23)の軸線周りに時計回りに回動させる際の回動方向である。可動部1を正方向に回動させる場合、制御部3は、第1膨張収縮袋30を膨張させる。
【0066】
可動部1を正方向に回動させる場合、上側可動板10が上側回動軸20を中心に正方向に回動した際に、第1連結部材40は、第2連結回動軸23を中心に上側可動板10と一緒に回動する。そのため、上側回動軸20と第2連結回動軸23とは、略同軸からずれないように保たれる。したがって、上側回動軸20の動きが制限されるので、中間可動板11が、後述する負方向に回動することが抑制され、上側可動板10の上昇も抑制される。
【0067】
図15に示す例は、可動部1を負方向に回動させた場合を示している。なお、負方向とは、Y1方向側からY2方向側に向けてみた場合に、上側可動板10を、下側第1回動軸21(第1連結回動軸22)の軸線周りに反時計回りに回動させる際の回動方向である。可動部1を負方向に回動させる場合、制御部3は、第2膨張収縮袋31を膨張させる。
【0068】
可動部1を負方向に回動させる場合、第2膨張収縮袋31の膨張に伴い、下側第1回動軸21を中心に、中間可動板11が負方向回動する。上側可動板10は、上側回動軸20を介して中間可動板11と接続されているため、中間可動板11の回動に伴って、中間可動板11と一緒に負方向に回動する。そのため、下側第1回動軸21と第1連結回動軸22とは、略同軸からずれないように保たれる。したがって、第1連結回動軸22の動きが制限されるので、第1連結部材40が負方向に回動することが抑制され、上側可動板10の上昇も抑制される。
【0069】
(可動板の傾斜)
図16を参照して、第1実施形態による傾斜装置100が、被傾斜物Tを傾斜させる構成について説明する。制御部3は、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気を制御することにより、可動部1を、第1傾斜状態、および、第2傾斜状態のどちらかに切り替える。
【0070】
図16に示すように、第1傾斜状態は、たとえば、第1膨張収縮袋30を膨張させることにより、上側可動板10を上側回動軸20(図3参照)の軸線回りに回動させる。また、第1傾斜状態は、第2膨張収縮袋31を膨張させないことにより、中間可動板11および下側第1可動板12を回動させない状態を維持する。すなわち、第1傾斜状態は、上側可動板10のみを下側第1可動板12に対して傾斜させた状態である。言い換えると、第1傾斜状態は、正方向に傾斜角度θ1で回動した状態である。
【0071】
また、第2傾斜状態は、たとえば、第2膨張収縮袋31を膨張させることにより、中間可動板11を下側第1回動軸21(図3参照)の軸線回りに回動させるとともに、上側可動板10を第1連結回動軸22(図3参照)の軸線回りに回動させる。また、第2傾斜状態は、第1膨張収縮袋30を膨張させないことにより、上側可動板10と中間可動板11との間の角度を変化させない状態を維持する。また、第2傾斜状態においても、下側第1可動板12は回動させない。すなわち、第2傾斜状態は、上側可動板10とともに中間可動板11を下側第1可動板12に対して傾斜させた状態である。言い換えると、第2傾斜状態は、上側可動板10が負方向に傾斜角度θ1で回動するとともに、中間可動板11が負方向に傾斜角度θ1で回動した状態である。
【0072】
(可動板の意図しない方向への傾斜)
ここで、本実施形態では、第1連結部材40を設けることにより、被傾斜物T(図1参照)が、上側可動板10のうち、上側回動軸20と反対側の端部10a(図6参照)に配置されている場合でも、意図しない傾斜が生じないように構成されている。
【0073】
まず、図17を参照して、比較例の可動部101において、意図しない傾斜が生じる構成について説明する。図17に示す比較例の可動部101は、上側可動板110と、中間可動板111と、下側第1可動板112とを備える。比較例による上側可動板110と、中間可動板111とは、上側回動軸120を介して接続されている。また、比較例による中間可動板111と下側第1可動板112とは、下側第1回動軸121を介して接続されている。
【0074】
また、比較例による可動部101は、上側可動板110と中間可動板111との間に、第1膨張収縮袋130が設けられている。また、比較例による可動部101は、中間可動板111と下側第1可動板112との間に、第2膨張収縮袋131が設けられている。比較例による可動部101は、第1膨張収縮袋130および第2膨張収縮袋131の膨張および収縮により、上側可動板110および中間可動板111を回動可能に構成されている。比較例による可動部101は、第1連結部材40を備えていない点以外は、第1実施形態による可動部1と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0075】
比較例では、第1膨張収縮袋130を膨張させることにより、上側可動板110を上側回動軸120の軸線回りに回動させ、上側可動板110を傾斜させることを想定している。比較例では、図17(A)に示すように、被傾斜物Tが、上側可動板110の回動軸(上側回動軸120)と反対側の端部110aに配置されている状態で、第1膨張収縮袋130の膨張を開始する。第1膨張収縮袋130の膨張を開始させると、矢印90に示すように、上側可動板110に対して、Z1方向の力が印加される。上側可動板110は、上側回動軸120を介して中間可動板111と接続されているため、上側可動板110に対してZ1方向の力が印加されると、矢印91に示すように、上側回動軸120を中心とする図中時計回転方向のモーメントが生じる。
【0076】
ここで、図17(A)に示すように、被傾斜物Tの自重により、被傾斜物Tから上側可動板110に対して矢印92に示す方向に力が印加される。比較例では、上側可動板110と下側第1可動板112とが接続されていないため、上側可動板110のX1方向側の端部110aの移動が規制されず、上側回動軸120の軸線回りに自由に回動する。また、上側可動板110の端部110aの移動が規制されていないため、上側可動板110の端部110aの移動に伴い、上側回動軸120も移動する場合がある。そのため、上側回動軸120の軸線回りに回動する際に、上側可動板110の端部110aと、下側第1可動板112のX2方向側の端部113aとの間の距離が変化する場合がある。被傾斜物Tが、上側可動板110の回動軸(上側回動軸120)と反対側の端部110aに配置されている場合、図17(B)の矢印93に示すように、上側可動板110、中間可動板111、下側第1可動板112、および、第1膨張収縮袋130により構成された構造体に対して、下側第1回動軸121を中心とした図中反時計回転方向のモーメントが生じる。
【0077】
矢印93の示すような方向においてモーメントが生じた状態において、さらに第1膨張収縮袋130の膨張を継続した場合、図17(C)に示すように、矢印91に沿った方向の第1膨張収縮袋130による上側可動板110の回動の図中時計回転方向のモーメントよりも、矢印93に沿った方向の回動の図中反時計回転方向のモーメントのほうが大きくなる場合がある。この場合、上側可動板110は、矢印91に沿った方向ではなく、矢印93に沿った方向である下側第1回動軸121の軸線回りに回動する。すなわち、上側可動板110が意図しない方向に傾斜する。
【0078】
(意図しない方向への傾斜の抑制)
次に、図18を参照して、第1実施形態による可動部1が上側可動板10を回動させる構成について説明する。図18に示す例でも、第1膨張収縮袋30を膨張させることにより、上側可動板10を上側回動軸20の軸線回りに回動させ、上側可動板10を傾斜させる。
【0079】
図18(A)に示すように、第1膨張収縮袋30の膨張を開始すると、第1膨張収縮袋30から矢印94に沿った方向の力が上側可動板10に印加され、矢印95に沿った方向の図中時計回転方向のモーメントが発生する。すなわち、上側可動板10は、上側回動軸20の軸線回りに回動を開始する。この場合も、矢印96に示すように、上側可動板10には、被傾斜物Tの自重による力が印加される。ここで、第1実施形態では、上側可動板10と下側第1可動板12が第1連結部材40によって接続されている。したがって、上側可動板10の端部10aは、第1連結部材40によって、移動が規制される。また、第1連結部材40によって上側可動板10の端部10aの移動が規制されるので、上側回動軸20の移動も規制される。
【0080】
そのため、第1実施形態による可動部1は、図18(B)に示すように、第1膨張収縮袋30の膨張を継続した場合でも、上側可動板10の端部10aと下側第1可動板12のX2方向側の端部12aとの間の距離が変化しないため、上側可動板10に対して下側第1回動軸21の軸線回りに回動するモーメントが生じない。したがって、図18(C)に示すように、第1膨張収縮袋30の膨張を継続した場合でも、意図しない方向へ上側可動板10が傾斜することなく、上側可動板10を所望の角度に傾斜させることができる。
【0081】
(第1連結部材による移動の規制)
図19に示すように、第1連結部材40は、第2連結回動軸23の軸線回りに回動することにより、第2連結回動軸23を中心とした、円C1上を移動することが可能である。また、上側可動板10は、上側回動軸20の軸線回りに回動することにより、上側回動軸20を中心とした円C2上を移動することができる。
【0082】
第1実施形態では、第1連結部材40が上側可動板10と下側第1可動板12とを接続することにより、上側可動板10の端部10aは、円C1と円C2との交点の位置に移動が規制される。すなわち、第1実施形態では、上側可動板10の端部10aと、下側第1可動板12の端部12bとの間の距離が、円C1の半径から変化しなくなる。言い換えると、上側可動板10の端部10aと、下側第1可動板12の端部12bとの間の距離が、第1連結部材40の長さに規制され、変化しなくなる。
【0083】
一方、比較例による上側可動板110のように、第1連結部材40が設けられていない場合、上側可動板110は、円C2上を自由に移動することができるため、上側可動板110の端部110a(図17参照)と、下側第1可動板112の端部110a(図17参照)との間の距離が変化し得る。なお、図19において、比較例による上側可動板110を破線で図示している。
【0084】
(各回動軸の配置)
ここで、上側可動板10が上側回動軸20の軸線回りに回動する場合、第1連結部材40も、上側可動板10と同じ方向に回動する。上側可動板10の回動中心と、第1連結部材40の回動中心とがずれている場合、上側可動板10のうちの少なくとも一方に第1連結部材40に変形が生じる場合がある。したがって、第1実施形態では、第1連結部材40と上側可動板10との第1連結回動軸22は、中間可動板11と下側第1可動板12との下側第1回動軸21と略同軸状に配置される。なお、第1実施形態では、第1膨張収縮袋30が収縮した状態の場合に、下側第1回動軸21と第1連結回動軸22とが略同軸状に配置される。
【0085】
また、中間可動板11が第1連結回動軸22の軸線回りに回動する場合、上側可動板10も中間可動板11とともに第1連結回動軸22の軸線回りに回動する。この際、第1連結部材40は回動しない。第1連結回動軸22と第2連結回動軸23とが略同軸状に配置されていない場合、上側可動板10および第1連結部材40のうちの少なくとも一方に変形が生じる場合がある。したがって、第1実施形態では、第1連結部材40と下側第1可動板12との第2連結回動軸23は、上側可動板10と中間可動板11との上側回動軸20と略同軸状に配置される。なお、第1実施形態では、第2膨張収縮袋31が収縮した状態の場合に、上側回動軸20と第2連結回動軸23とが略同軸状に配置される。
【0086】
(回動軸の誤差の許容範囲)
次に、図20を参照して、各回動部が設けられる位置の誤差について説明する。なお、図20では、上側回動軸20と、第2連結回動軸23との位置のずれの許容範囲について説明する。下側第1回動軸21と第1連結回動軸22との位置のずれの許容範囲については、上側回動軸20と、第2連結回動軸23との位置のずれの許容範囲と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0087】
図20に示す例は、上側回動軸20と第2連結回動軸23との位置が、距離Ad1だけずれた状態を示している。また、図20に示す例は、上側可動板10を角度θ2で回動させる場合を示している。また、図20に示す例は、第1連結部材40を角度θ3で回動させる場合を示している。
【0088】
上側回動軸20と第2連結回動軸23との位置が、距離Ad1だけずれた状態において上側可動板10および第1連結部材40を回動させた場合、上側可動板10の端部10aと、第1連結部材40の端部40aとは、距離Ad2分ずれる。具体的には、第1連結部材40が、距離Ad2分短尺になるような位置ずれが生じる。しかしながら、第1実施形態では、上側可動板10と第1連結部材40とが接続されているため、上側可動板10に撓み変形が生じるか、第1連結部材40に伸びる変形が生じないと、上側可動板10および第1連結部材40は回動しない。
【0089】
ここで、上側可動板10が回動する角度θ2、第1連結部材40が回動する角度θ3、および、距離Ad2は、上側回動軸20と第1連結回動軸22とのずれ量である距離Ad1によって変化する。角度θ2および角度θ3の増加に対して距離Ad2も増加するが、この割合が距離Ad1に対して一定になっている。また、距離Ad2は、第1連結部材40を第1連結回動軸22および第2連結回動軸23に設置する際の公差の和と捉えることができる。そして、距離Ad1は上側回動軸20の回動軸上からのズレ量の許容範囲と捉えることができる。そのため、開き角度(角度θ2および角度θ3)が45度の場合、第1連結部材40の両端の回転中心の公差の和(距離Ad2)に対して、距離Ad1が距離Ad2の4倍以下となる配置が、上側回動軸20と第1連結回動軸22とが略同軸状に配置されているとみなすことができる。すなわち、開き角度が45度の場合、距離Ad2の4倍以下を、距離Ad1の許容範囲とすることが好ましい。
【0090】
また、開き角度(角度θ2および角度θ3)が60度の場合、第1連結部材40の両端の回転中心の公差の和(距離Ad2)に対して、距離Ad1が距離Ad2の2倍以下となる配置が、上側回動軸20と第1連結回動軸22とが略同軸状に配置されているとみなすことができる。すなわち、開き角度が60度の場合、距離Ad2の2倍以下を、距離Ad1の許容範囲とすることが好ましい。また、開き角度(角度θ2および角度θ3)が90度の場合、第1連結部材40の両端の回転中心の公差の和(距離Ad2)に対して、距離Ad1が距離Ad2の1倍以下となる配置が、上側回動軸20と第1連結回動軸22とが略同軸状に配置されているとみなすことができる。すなわち、開き角度が90度の場合、距離Ad2の1倍以下を、距離Ad1の許容範囲とすることが好ましい。
【0091】
(流路切替部)
第1実施形態では、図21に示すように、第1膨張収縮袋30、および、第2膨張収縮袋31の空気を吸気および排気するためのポンプ5が、空気の流路60上に設けられる。また、各膨張収縮袋に空気を吸気および排気するための流路60上には、流路切替部4、流路給気電磁弁8aおよび流路排気電磁弁8bが設けられている。なお、流路給気電磁弁8aは、流路60の給気を行う際に開放される電磁弁であり、流路排気電磁弁8bは、流路60の排気を行う際に開放される電磁弁である。
【0092】
また、流路切替部4は、各膨張収縮袋の空気を吸気および排気するための流路60上に設けられた、第1給気電磁弁4a、第1排気電磁弁4b、第2給気電磁弁4c、および、第2排気電磁弁4dにより構成されている。電磁弁は、各膨張収縮袋に排気用電磁弁および給気用電磁弁が、各流路60にそれぞれ一つずつ設けられている。第1給気電磁弁4aは、第1膨張収縮袋30の給気を行う際に開放される電磁弁であり、第1排気電磁弁4bは、第1膨張収縮袋30の排気を行う際に開放される電磁弁である。また、第2給気電磁弁4cは、第2膨張収縮袋31の給気を行う際に開放される電磁弁であり、第2排気電磁弁4dは、第2膨張収縮袋31の排気を行う際に開放される電磁弁である。
【0093】
また、第1実施形態では、制御部3は、ポンプ5の制御を行うとともに、流路60上に設けられた各電磁弁の開閉の制御を行うことにより、第1膨張収縮袋30、および、第2膨張収縮袋31の空気を吸気および排気の制御を個別に行っている。また、これらの制御は、前述したように各角度センサにより、検出された傾斜角度θ1(図16参照)に基づいて、上側可動板10を傾斜させるように制御部3が行っている。
【0094】
また、第1実施形態では、制御部3は、第1角度センサ70によって測定された傾斜角度θ1(図16参照)が所定の角度になった場合に、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体(空気)の供給を停止させる制御を行うように構成されている。
【0095】
また、第1実施形態では、各膨張収縮袋と各電磁弁との間には、各膨張収縮袋内の圧力を個別に測定する圧力センサ(第1圧力センサ80、および、第2圧力センサ81)が設けられている。制御部3は、第1圧力センサ80によって測定された第1膨張収縮袋30の内部の圧力が所定の第1上限値を上回った場合に、第1膨張収縮袋30への気体(空気)の給気を停止させ、第2圧力センサ81により測定された第2膨張収縮袋31の内部の圧力が所定の第2上限値を上回った場合に、第2膨張収縮袋31への気体(空気)の給気を停止させる制御を行うように構成されている。
【0096】
制御部3は、可動部1を正方向に回動させる場合、まず、第2排気電磁弁4d、および、流路排気電磁弁8bのみを開く。次に、制御部3は、ポンプ5を駆動させて、第2膨張収縮袋31の空気を全て排気させる。なお、制御部3は、第2圧力センサ81が負圧になることを検出し、全量の空気が排気されたことを検出してもよい。次に、制御部3は、第1給気電磁弁4a、および、流路給気電磁弁8aのみを開き、第1角度センサ70によって検知される上側可動板10の傾斜角度θ1が所望の角度になるまでポンプ5を駆動させて第1膨張収縮袋30に給気する。その後、制御部3は、全ての弁を閉じる制御を行う。これにより、可動部1の正方向への回動が完了する。
【0097】
また、制御部3は、可動部1を負方向に回動させる場合、まず、第1排気電磁弁4b、および、流路排気電磁弁8bのみを開く。次に、制御部3は、ポンプ5を駆動させて、第1膨張収縮袋30の空気を全て排気させる。なお、制御部3は、第1圧力センサ80が負圧になることを検出し、全量の空気が排気されたことを検出してもよい。次に、制御部3は、第2給気電磁弁4c、および、流路給気電磁弁8aのみを開き、第1角度センサ70によって検知される上側可動板10の傾斜角度θ1が所望の角度になるまでポンプ5を駆動させて第2膨張収縮袋31に給気する。その後、制御部3は、全ての弁を閉じる制御を行う。これにより、可動部1の負方向への回動が完了する。
【0098】
また、第1実施形態では、傾斜装置100は、第1連結部材40を備えることにより、第1膨張収縮袋30と第2膨張収縮袋31とが同時に膨張している状態(すなわち、上側可動板10が上昇する状態)にはならないような構成にしている。このため、流路切替部4およびポンプ5の少なくともいずれかの誤作動により、一方の膨張収縮袋を全排気せずに他方の膨張収縮袋に給気しても、機構的に膨張収縮袋の膨張に制限がかかるので、他方の膨張収縮袋に給気をすると、圧力が急上昇するため、圧力異常を検出することができる。また、圧力異常を検出した際に、制御部3が、ポンプ5を停止させる制御を行うようにしておけば、安全に給気を停止させることができる。
【0099】
(異常検出処理)
次に、図22を参照して、第1実施形態の傾斜装置100の制御部3による異常検出処理の一例をフローチャートに基づいて説明する。
【0100】
ステップS1において、制御部3は、動作指示があったか否かを判別する。通信部6または操作部7から、制御部3に動作指示が送信された場合には、ステップS2に移行する。また、動作指示がなかった場合には、処理を終了する。
【0101】
ステップS2において、制御部3は、各膨張収縮袋内の圧力が上限値を超えたか否かを判別する。制御部3は、各膨張収縮袋(第1膨張収縮袋30、および、第2膨張収縮袋31)の流路60上に個別に設けられた各圧力センサ(第1圧力センサ80、および、第2圧力センサ81)の測定結果に基づいて、膨張収縮袋内の圧力が上限値を超えたか否かを判別する。第1膨張収縮袋30、および、第2膨張収縮袋31のいずれか1つの膨張収縮袋内の圧力が上限値を超えていた場合には、ステップS5に移行する。また、全ての膨張収縮袋内の圧力が上限値を超えていない場合には、ステップS3に移行する。
【0102】
ステップS3において、制御部3は、各膨張収縮袋内の圧力が下限値未満であるか否かを判別する。制御部3は、各膨張収縮袋の流路上に個別に設けられた各圧力センサの測定結果に基づいて、各膨張収縮袋内の圧力が下限値未満であるか否かを判別する。いずれか1つの膨張収縮袋内の圧力が下限値未満であった場合には、ステップS5に移行する。また、全ての膨張収縮袋内の圧力が下限値未満でない場合には、ステップS4に移行する。
【0103】
ステップS4において、制御部3は、所定の動作を実施する。所定の動作とは、通信部6から制御部3に送信された動作指示、または、操作部7の操作に基づいた動作である。制御部3は、与えられた動作指示、または、操作部7の操作に基づいて、所望の傾斜角度θ1になるように、流路切替部4およびポンプ5の制御を行い、各膨張収縮袋への空気の給気および排気を行う。所定の動作の終了後、ステップS1へと戻る。
【0104】
ステップS5において、制御部3は、ポンプ5を停止させる。ポンプ5の停止後、ステップS1へと戻る。なお、ステップS2の処理と、ステップS3の処理とは、どちらを先に実行してもよい。
【0105】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0106】
第1実施形態では、上記のように、傾斜装置100は、被傾斜物Tが配置される側に設けられた上側可動板10と、上側可動板10の下方に配置され、上側可動板10と上側回動軸20を介して回動可能に接続された中間可動板11と、上側可動板10と中間可動板11との間に配置された第1アクチュエータと、中間可動板11の下方に配置され、中間可動板11と下側第1回動軸21を介して回動可能に接続された下側第1可動板12と、中間可動板11と下側第1可動板12との間に配置された第2アクチュエータと、上側可動板10と中間可動板11とが接続されている端部10bと反対方向である第1方向側の端部10aにおいて上側可動板10と第1連結回動軸22を介して回動可能に接続されるとともに、第1方向と反対方向である第2方向側の端部12bにおいて下側第1可動板12と第2連結回動軸23を介して回動可能に接続された第1連結部材40と、を備える。
【0107】
ここで、上側可動板10を上側可動板10と中間可動板11との上側回動軸20の軸線回りに回動させる場合、第1連結部材40は、第1連結部材40と下側第1可動板12との第2連結回動軸23の軸線回りに上側可動板10と一体的に回動する。したがって、第1連結部材40が上側可動板10と第1連結回動軸22を介して接続するように構成することにより、上側回動軸20回りの回転方向に上側可動板10を回動させることにより上側可動板10を傾斜させる際に、被傾斜物Tが上側回動軸20とは反対側の端部10aに配置されている場合でも、第1連結回動軸22を介して上側可動板10に接続される第1連結部材40によって、上側可動板10の上側回動軸20が移動することを規制することができる。その結果、被傾斜物Tの自重によって上側可動板10に意図しない方向のモーメントが発生することを抑制することが可能となるので、傾斜装置100を傾斜させる際に、被傾斜物Tの配置によって可動板が意図しない方向に傾斜することを抑制することが可能な傾斜装置100を提供することができる。
【0108】
また、第1実施形態では、上記のように、第1連結部材40と上側可動板10との第1連結回動軸22は、中間可動板11と下側第1可動板12との下側第1回動軸21と略同軸状に配置され、第1連結部材40と下側第1可動板12との第2連結回動軸23は、上側可動板10と中間可動板11との上側回動軸20と略同軸状に配置される。ここで、中間可動板11と下側第1可動板12との下側第1回動軸21の軸線回りに中間可動板11を回動させる場合、上側可動板10は、第1連結部材40と上側可動板10との第1連結回動軸22の軸線回りに中間可動板11と一体的に回動する。この場合に、下側第1回動軸21と第1連結回動軸22とが略同軸状に配置されていないと、上側可動板10の回動中心と中間可動板11の回動中心とにずれが生じる。上側可動板10の回動中心と中間可動板11の回動中心とのずれが生じた場合には、上側可動板10と中間可動板11とを一体的に回動させることができなくなる。
【0109】
また、上側可動板10を上側可動板10と中間可動板11との上側回動軸20の軸線回りに回動させる場合に、上側回動軸20と第2連結回動軸23とが略同軸状に配置されていないと、上側可動板10の回動中心と第1連結部材40の回動中心とがずれが生じる。上側可動板10の回動中心と第1連結部材40の回動中心とがずれが生じた場合には、上側可動板10と第1連結部材40とを一体的に回動させることができなくなる。
【0110】
そこで、上記のように第1連結回動軸22と下側第1回動軸21とを略同軸状に配置するように構成すれば、第1連結回動軸22と下側第1回動軸21とにずれが生じることを抑制することができる。その結果、中間可動板11を下側第1回動軸21の軸線回りに回動させる場合に、中間可動板11を回動させることができなくなることを抑制することができる。また、上側回動軸20と第2連結回動軸23とを略同軸状に配置するように構成すれば、上側回動軸20と第2連結回動軸23とにずれが生じることを抑制することができる。その結果、上側可動板10を上側回動軸20の軸線回りに回動させる場合に、上側可動板10を回動させることができなくなることを抑制することができる。
【0111】
また、第1実施形態では、上記のように、第1連結部材40は、棒状形状を有しており、平面視において、上側回動軸20、および、下側第1回動軸21と交差する方向に延びるように構成されている。これにより、第1連結部材40が上側回動軸20および下側第1回動軸21と交差する方向に延びるように構成されているので、上側可動板10が上側回動軸20回りに回動する際、および、中間可動板11が下側第1回動軸21回りに回動する際に、第1連結部材40が、上側可動板10の回動、および、中間可動板11の回動に干渉することを抑制することができる。
【0112】
また、第1実施形態では、上記のように、第1連結部材40は、平面視において、第1方向および第2方向と直交する方向の一方側である第3方向(Y1方向)における上側可動板10の端部10cおよび下側第1可動板12の端部12cに設けられている。これにより、第3方向において、第1連結部材40を、上側回動軸20および下側第1回動軸21の外側に配置することができる。その結果、第1連結部材40が、第3方向において、上側回動軸20および下側第1回動軸21の内側に配置される構成と比較して、中間可動板11に第1連結部材40を通過させる開口などを設けなくてよいため、装置構成が複雑化することを抑制することができる。
【0113】
また、第1実施形態では、上記のように、上側可動板10の上側回動軸20に沿う方向の長さは、中間可動板11の上側回動軸20に沿う方向の長さよりも大きく、下側第1可動板12の下側第1回動軸21に沿う方向の長さは、中間可動板11の下側第1回動軸21に沿う方向の長さよりも大きく、第1連結回動軸22は、第3方向において、上側可動板10の端部側で、かつ、下側第1回動軸21よりも外側に設けられており、第2連結回動軸23は、第3方向において、下側第1可動板12の端部側で、かつ、上側回動軸20よりも外側に設けられている。これにより、第1連結部材40を上側回動軸20および下側第1回動軸21の外側に配置した場合でも、平面視において、第1連結部材40が上側可動板10および下側第1可動板12の外側に配置されることを抑制することができる。その結果、装置が大型化することを抑制することができる。
【0114】
また、第1実施形態では、上記のように、上側可動板10のうち、第3方向において下側第1回動軸21よりも外側に設けられ、上側可動板10から下側第1可動板12に向けて下方に突出する第1突出部50と、下側第1可動板12のうち、第3方向において上側回動軸20よりも外側に設けられ、下側第1可動板12から上側可動板10に向けて上方に突出する第2突出部51とをさらに備え、第1連結回動軸22は、第1突出部50のうちの下方側の端部50aに設けられ、第2連結回動軸23は、第2突出部51のうちの上方側の端部51aに設けられている。これにより、第1突出部50が下方に突出しているので、第1突出部50の下方側の端部50aに第1連結回動軸22を設けることにより、上下方向における第1連結回動軸22の位置を、下側第1回動軸21の位置と略同じ位置に配置することができる。その結果、下側第1回動軸21と第1連結回動軸22とを容易に略同軸状に配置することができる。また、第2突出部51が上方に突出しているので、第2突出部51の上方側の端部51aに第2連結回動軸23を設けることにより、上下方向における第2連結回動軸23の位置を、上側回動軸20の位置と略同じ位置に配置することができる。その結果、上側回動軸20と第2連結回動軸23とを容易に略同軸状に配置することができる。
【0115】
また、第1実施形態では、上記のように、第1アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋30を含み、第2アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第2膨張収縮袋31を含み、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気の制御を行うことにより、上側可動板10の傾斜角度θ1を調整する制御を行う制御部3をさらに備える。これにより、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気によって、上側可動板10の傾斜角度θ1を調整することが可能となるので、傾斜装置100の構成を簡素化することができる。
【0116】
また、第1実施形態では、上記のように、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気を行う流路60と、流路60を切り替える流路切替部4と、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31へ気体を供給および排気を行うポンプ5と、をさらに備え、制御部3は、流路切替部4とポンプ5とを制御することにより、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給および排気を制御するように構成されている。これにより、流路切替部4によって気体の流路60を切り替えることにより、単一のポンプ5によって第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31を膨張および収縮させることができる。その結果、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31のそれぞれに、ポンプ5を設ける構成と比較して、部品点数の増加による傾斜装置100の複雑化および大型化を抑制することができる。
【0117】
また、第1実施形態では、上記のように、上側可動板10が傾斜する傾斜角度θ1を測定する第1角度センサ70をさらに備え、制御部3は、第1角度センサ70によって測定された傾斜角度θ1が所定の角度になった場合に、第1膨張収縮袋30および第2膨張収縮袋31への気体の供給または排気を停止させる制御を行うように構成されている。これにより、傾斜角度θ1が所定の角度になった場合に給気を停止させることができるため、傾斜角度θ1が所定の角度以上になることを抑制することができる。また、傾斜角度θ1が所定の角度になった場合に排気を停止させることができるので、所定角度をたとえば0度に設定することにより上側可動板10が水平状態に戻ったときに排気を停止させることができる。
【0118】
また、第1実施形態では、上記のように、第1膨張収縮袋30の内部の圧力を測定する第1圧力センサ80と、第2膨張収縮袋31の内部の圧力を測定する第2圧力センサ81と、をさらに備え、制御部3は、第1圧力センサ80によって測定された第1膨張収縮袋30の内部の圧力が所定の第1上限値を上回った場合に、第1膨張収縮袋30への気体の給気を停止させ、第2圧力センサ81により測定された第2膨張収縮袋31の内部の圧力が所定の第2上限値を上回った場合に、第2膨張収縮袋31への気体の給気を停止させる制御を行うように構成されている。これにより、第1膨張収縮袋30が過度に膨張することを抑制することができる。また、第2膨張収縮袋31が過度に膨張することを抑制することができる。
【0119】
[第2実施形態]
次に、図23図26を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態による傾斜装置200は、図23に示すように、可動部201と駆動装置202とを備える。また、図23に示すように、可動部201は、上側可動板10、中間可動板11、下側第1可動板12、下側第2可動板13、および、下側第3可動板14を備える。
【0120】
図24に示すように、第2実施形態による可動部201は、第1実施形態による可動部1の構成に加えて、下側第2可動板13と、下側第3可動板14と、第3膨張収縮袋32と、第4膨張収縮袋33と、第2連結部材41と、第3突出部52と、第4突出部53と、をさらに備えている。なお、第1実施形態と同じ部分は、同様の符号を付する。また、「第3膨張収縮袋32」および「第4膨張収縮袋33」は、それぞれ、特許請求の範囲の「第3アクチュエータ」および「第4アクチュエータ」の一例である。
【0121】
図24に示すように、下側第2可動板13は、下側第1可動板12の下方に配置され、下側第1可動板12と下側第2回動軸24を介して回動可能に接続される。また、下側第3可動板14は、下側第2可動板13の下方に配置され、下側第2可動板13と下側第3回動軸25を介して回動可能に接続される。下側第2回動軸24および、下側第3回動軸25は、たとえば、蝶番などを含む。また、図24に示すように、下側第2回動軸24は、第3スペーサ部材15cを介して下側第1可動板12に設けられている。これにより、下側第2回動軸24の高さ位置を調節することができる。また、下側第3回動軸25は、第4スペーサ部材15dを介して、下側第3可動板14に設けられている。これにより、下側第3回動軸25の高さ位置を調節することができる。
【0122】
図24に示すように、第3膨張収縮袋32は、下側第1可動板12と下側第2可動板13との間に配置されている。また、第4膨張収縮袋33は、下側第2可動板13と下側第3可動板14との間に配置される。
【0123】
図24に示すように、第2連結部材41は、平面視において、第1方向と直交する方向(Y方向)の一方側の端部12f(Y2方向側の端部)において下側第1可動板12と第3連結回動軸26を介して回動可能に接続されるとともに、平面視において、第1方向と直交する方向(Y方向)の他方側の端部14a(Y1方向側の端部)において下側第3可動板14と第4連結回動軸27を介して回動可能に接続される。第3連結回動軸26および、第4連結回動軸27は、たとえば、ピン部材(図示せず)と孔部(図示せず)とにより構成される。
【0124】
図24に示すように、第2連結部材41は、棒状形状を有しており、平面視において、下側第2回動軸24、および、下側第3回動軸25と交差する方向(Y方向)に延びるように構成されている。第2連結部材41は、平面視において、第2方向(X2方向)における下側第1可動板12の端部12gおよび下側第3可動板14の端部14bに設けられている。すなわち、第2連結部材41は、第1連結部材40と交差する方向に延びるように設けられている。すなわち、第2実施形態による可動部201は、第1実施形態による可動部1の機構を、回動軸の位相ずらして複数段積み重ねた構成である。
【0125】
また、図24に示すように、第3突出部52は、下側第1可動板12のY2方向側の端部12fに設けられ、下側第3可動板14に向けて下方に突出するように構成されている。また、第4突出部53は、下側第3可動板14のY1方向側の端部14aに設けられ、下側第1可動板12に向けて上方に突出するように構成されている。第2連結部材41は、一方側(Y2方向側)の端部41aが、第3突出部52の下方側の端部52aに設けられ、他方側(Y1方向側)の端部41bが、第4突出部53の上方側の端部53aに設けられている。
【0126】
図25に示すように、可動部201は、第1角度センサ70に加えて、第2角度センサ71を備える。第2角度センサ71は、下側第1可動板12の傾斜角度を検出するためのセンサであり、下側第1可動板12の上面に設置されている。なお、第2角度センサ71は、重力加速度の方向を検知可能に構成されている。第2角度センサ71は、たとえば、加速度を基準にセンサの傾きを検出する加速度センサを含む。
【0127】
また、図25に示すように、駆動装置202は、制御部3および流路切替部4の代わりに、制御部203および流路切替部204を備える点で、第1実施形態による駆動装置2の構成とは異なる。また、第2実施形態による傾斜装置200は、流路60の代わりに、流路260を備える点で、第1実施形態による傾斜装置100とは異なる。
【0128】
流路260は、第1流路60aおよび第2流路60bに加えて、第3流路60cおよび第4流路60dを備える。第3流路60cは、第3膨張収縮袋32とポンプ5とを接続する流路である。また、第4流路60dは、第4膨張収縮袋33とポンプ5とを接続する流路である。
【0129】
流路切替部204は、第1流路60a~第4流路60dを切り替えるように構成されている。
【0130】
制御部203は、流路切替部204とポンプ5とを制御することにより、第1膨張収縮袋30~第4膨張収縮袋33への気体の供給および排気を制御することにより、被傾斜物T(図23参照)を傾斜させるように構成されている。
【0131】
図26に示すように、下側第2可動板13は、平面視において、互いに平行な長辺と短辺とを有する台形形状を有している。具体的には、下側第2可動板13は、平面視において、下側第2回動軸24(図24参照)と直交する方向(Y方向)に延びる辺13aと、下側第2回動軸24に沿う方向(X方向)に延びる辺13bとを有している。辺13aの長さは、長さD7であり、辺13bの長さは、長さD8である。
【0132】
また、下側第3可動板14は、平面視において、互いに平行な長辺と短辺とを有する台形形状を有している。具体的には、下側第3可動板14は、平面視において、下側第3回動軸25(図24参照)と直交する方向(Y方向)に延びる辺14cと、下側第3回動軸25に沿うと直交する方向(X方向)に延びる辺14dとを有している。辺14cの長さは、長さD9であり、辺14dの長さは、長さD10である。
【0133】
辺13aの長さD7および辺14cの長さD9は、辺10dの長さD1と互いに略等しい大きさである。また、辺13bの長さD8は、辺10eの長さD2よりも小さく、辺14dの長さD10は、辺10eの長さD2と略等しい大きさである。したがって、上側可動板10~下側第3可動板14は、平面視において、重なるように配置される。また、第2連結部材41は、下側第2可動板13のX2方向側であり、かつ、上側可動板10の長さD2と下側第2可動板13の長さD8との差分である幅W2の間に配置される。
【0134】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0135】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0136】
第2実施形態では、上記のように、傾斜装置200は、下側第1可動板12の下方に配置され、下側第1可動板12と下側第2回動軸24を介して回動可能に接続された下側第2可動板13と、下側第1可動板12と下側第2可動板13との間に配置された第3膨張収縮袋32と、下側第2可動板13の下方に配置され、下側第2可動板13と下側第3回動軸25を介して回動可能に接続された下側第3可動板14と、下側第2可動板13と下側第3可動板14との間に配置された第4膨張収縮袋33と、平面視において、第1方向(X1方向)と直交する方向(Y方向)の一方側の端部12fにおいて下側第1可動板12と第3連結回動軸26を介して回動可能に接続されるとともに、平面視において、第1方向と直交する方向の他方側の端部14aにおいて下側第3可動板14と第4連結回動軸27を介して回動可能に接続された第2連結部材41とをさらに備える。これにより、可動板の枚数に応じて可動板が傾斜する方向を増やした場合でも、下側第2可動板13が意図しない方向に傾斜することを抑制することができる。その結果、たとえば、前後方向と左右方向とに可動板が傾斜する方向を増やすことにより複雑な傾斜の動作を行う構成においても、意図しない方向へ可動板が傾斜することを抑制することができる。
【0137】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0138】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0139】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、第1突出部50が、いわゆるアイボルトによって構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図27に示す変形例のように、第1突出部50が、L型に形成され、孔部50fが設けられた板状部材50eと、スペーサ部材50gとによって構成されていてもよい。第1突出部50が板状部材50eとスペーサ部材50gとによって構成される場合、板状部材50eに設けられた孔部50fに挿通されたピン部材22aが、ワッシャ22b、第1ナット22c、および、第2ナット22dによって固定されることにより、第1連結部材40を回動可能に保持するように構成すればよい。なお、第2突出部51、第3突出部52、および、第4突出部53についても、同様に構成してもよい。
【0140】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、可動板が平面視において互いに平行な長辺と短辺とを有する台形形状を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、可動板は、平面視において、台形形状以外の形状を有していてもよい。各可動板は、たとえば、矩形形状を有していてもよいし、六角形形状を有していてもよい。また、各可動板は、互いに平行な辺を有していなくてもよい。
【0141】
また、上記第1および第2実施形態では、第1連結部材40および第2連結部材41が棒状形状を有する構成の例を示したが、本発明は、これに限られない。たとえば、本発明では、第1連結部材40および第2連結部材41は、板状形状を有していてもよい。また、第1連結部材40および第2連結部材41は、鋼板などの板金、金属棒材、布等のシート、鋼製などの金属ワイヤー、繊維からなる紐などを含んでいてもよい。引張力に対する伸びが小さい材料であり、上側可動板10(下側第1可動板12)と下側第1可動板12(下側第3可動板14)とに接続され、上側可動板10の上側回動軸20(下側第1可動板12の下側第2回動軸24)が移動することを規制することが可能であれば、第1連結部材40(第2連結部材41)は、どのような形状を有していてもよい。
【0142】
また、上記第1および第2実施形態では、中間可動板11の第3方向(Y1方向)の長さD3が、上側可動板10の第3方向の長さD1および下側第1可動板12の第3方向の長さD5よりも小さい構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、中間可動板11の第3方向(Y1方向)の長さD3は、上側可動板10の第3方向の長さD1および下側第1可動板12の第3方向の長さD5と略等しくてもよい。しかしながら、中間可動板11の第3方向(Y1方向)の長さD3が、上側可動板10の第3方向の長さD1および下側第1可動板12の第3方向の長さD5と略等しい場合、第1連結部材40を設ける位置が、Y方向において、上側可動板10および下側第1可動板12の外側(Y1方向側)になるため、可動部1の大きさが大きくなる。したがって、傾斜装置100が大型化する。そのため、中間可動板11の第3方向(Y1方向)の長さD3は、上側可動板10の第3方向の長さD1および下側第1可動板12の第3方向の長さD5よりも小さいことが好ましい。
【0143】
また、上記第1および第2実施形態では、流路切替部4と各膨張圧縮袋との間の流路60に、圧力センサを設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、各膨張収縮袋の全排気を検出ために、ポンプ5の入力側に圧力センサを設けてもよい。また、各膨張収縮袋の給気時の圧力を検出するために、ポンプ5の出力側に圧力センサを設けてもよい。
【0144】
また、上記第1および第2実施形態では、第1連結部材40の端部40aが角度βで曲げ加工され、第1連結部材40の端部40bが角度αで曲げ加工されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1連結部材40の端部40aおよび端部40bは、機械加工精度によって所定の角度となるように構成されていてもよいし、角度を調節することが可能に構成されていてもよい。
【0145】
また、上記第1および第2実施形態では、傾斜装置100および傾斜装置200が、角度センサと圧力センサとを備える例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、傾斜装置が、角度センサと圧力センサとのいずれか一方を備える構成であってもよい。
【0146】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、制御部3および制御部203が、操作部7の操作により設定された数値に基づき制御を行う例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、たとえば、制御部3は、予め設定された設定値に基づいて制御を行ってもよい。
【0147】
また、上記第1実施形態では、上側回動軸20および下側第1回動軸21がY方向に沿って延びている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上側回動軸20および下側第1回動軸21はX方向に沿って延びていてもよい。上側回動軸20および下側第1回動軸21がX方向に沿って延びている場合、第1連結部材40は、Y方向に沿って延びるように構成すればよい。
【0148】
また、上記第1および第2実施形態では、各アクチュエータが、膨張収縮袋を含む構成の例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、アクチュエータは、膨張収縮袋以外のたとえばジャッキなどの傾斜装置を備えていてもよい。
【0149】
また、上記第1実施形態では、説明の便宜上、本発明の制御部3による可動部1の回動を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部3による処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0150】
3、203 制御部
4、204 流路切替部
5 ポンプ
10、310 上側可動板
11、311 中間可動板
12、312 下側第1可動板
13 下側第2可動板
14 下側第3可動板
20 上側回動軸
21 下側第1回動軸
22 第1連結回動軸
23 第2連結回動軸
24 下側第2回動軸
25 下側第3回動軸
26 第3連結回動軸
27 第4連結回動軸
30 第1膨張収縮袋(第1アクチュエータ)
31 第2膨張収縮袋(第2アクチュエータ)
32 第3膨張収縮袋(第3アクチュエータ)
33 第4膨張収縮袋(第4アクチュエータ)
60、260 流路
70 第1角度センサ(角度センサ)
80 第1圧力センサ
81 第2圧力センサ
100、200 傾斜装置
T 被傾斜物
θ1 傾斜角度(上側可動板の傾斜角度)
図1
図2
図3
図4
図5
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