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特許7533060液体吐出装置、および液体吐出装置の調整方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】液体吐出装置、および液体吐出装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020157105
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050914
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】桜田 和昭
(72)【発明者】
【氏名】竹貫 淳一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 照幸
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221833(JP,A)
【文献】特開2020-138483(JP,A)
【文献】特開2018-134778(JP,A)
【文献】特開2020-023111(JP,A)
【文献】特開2020-111037(JP,A)
【文献】特開2018-086838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154654(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101138912(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液滴を吐出するノズルを複数有するヘッドと、
前記ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動方向に相対移動させる移動部と、
前記ヘッドおよび前記移動部を制御して前記記録媒体にテストパターンを記録し、前記テストパターンから得られる補正値に基づいて前記ヘッドおよび/または前記移動部の制御を補正して記録を行う制御部と、を備える液体吐出装置であって、
前記テストパターンは、前記相対移動方向における前記液滴が前記記録媒体に着弾する着弾位置を補正するための前記補正値の候補が複数得られる複数のパッチを有し、
前記複数のパッチは、矩形あるいは罫線とは異なる形状の複数のパターン画像を含み、
複数の前記パターン画像のそれぞれは、前記相対移動方向において隣り合うパターン画像とは間隙を有しており、かつ、前記相対移動方向において線対称の画像であり、
複数の前記パターン画像のそれぞれは、前記相対移動方向において隣り合う前記パターン画像とは異なる形状であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ヘッドは、前記ノズルがノズル列方向に列設された第1ノズル列と第2ノズル列とを有し、
前記複数のパッチは、前記第1ノズル列の前記ノズルから吐出される液滴の着弾位置と、前記第2ノズル列の前記ノズルから吐出される液滴の着弾位置と、の前記相対移動方向におけるずれ量が複数導出可能な複数のパッチを含む請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記複数のパッチは、
前記第1ノズル列の第1ノズルから吐出される液滴の吐出速度の複数の推定値と、
前記第2ノズル列の第2ノズルから吐出される液滴の吐出速度の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチを含む請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記複数のパッチは、
前記第1ノズル列の第3ノズルから吐出される液滴の吐出速度の複数の推定値と、
前記第2ノズル列の第4ノズルから吐出される液滴の吐出速度の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチを含む請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記複数のパッチは、
前記第1ノズル列の第1ノズルから前記記録媒体までの距離の複数の推定値と、
前記第2ノズル列の第2ノズルから前記記録媒体までの距離の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチを含む請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記複数のパッチは、
前記第1ノズル列の第3ノズルから前記記録媒体までの距離の複数の推定値と、
前記第2ノズル列の第4ノズルから前記記録媒体までの距離の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチを含む請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記ヘッドは、前記ノズルが列設された複数のノズル列から成る第1ノズルユニットと、前記第1ノズルユニットとは異なり、前記ノズルが列設された複数のノズル列から成る第2ノズルユニットと、を有し、
前記第1ノズル列は、前記第1ノズルユニットに含まれ、前記第2ノズル列は、前記第2ノズルユニットに含まれる請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記移動部は、前記ヘッドと前記記録媒体とを、前記ノズル列方向と交差する第1方向と、前記第1方向と逆方向の第2方向とに相対移動させ、
前記複数のパッチは、前記ヘッドが前記記録媒体に対して前記第1方向に移動しながら記録されるパッチと、前記ヘッドが前記記録媒体に対して前記第2方向に移動しながら記録されるパッチと、を含む請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記移動部は、前記ヘッドと前記記録媒体とを、前記ノズル列方向に相対移動させ、
前記複数のパッチは、前記ヘッドが前記記録媒体に対して前記ノズル列方向に相対移動する前後において記録されるパッチを含む請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
記録媒体に液滴を吐出するノズルを複数有するヘッドと、前記ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動方向に相対移動させる移動部と、を備える液体吐出装置の調整方法であって、
前記ヘッドおよび前記移動部を制御して、前記記録媒体に、前記相対移動方向における前記液滴が前記記録媒体に着弾する着弾位置を補正するための補正値の候補が複数得られる複数のパッチを有するテストパターンを記録するテストパターン記録工程と、
前記テストパターンから前記補正値の候補を複数導出する補正値候補導出工程と、
導出された複数の前記補正値の候補を統計処理して前記補正値を決定する補正値決定工程と、を含み、
前記複数のパッチは、矩形あるいは罫線とは異なる形状の複数のパターン画像を含み、
複数の前記パターン画像のそれぞれは、前記相対移動方向において隣り合うパターン画像とは間隙を有しており、かつ、前記相対移動方向において線対称の画像であり、
複数の前記パターン画像のそれぞれは、前記相対移動方向において隣り合う前記パターン画像とは異なる形状であることを特徴とする液体吐出装置の調整方法。
【請求項11】
前記パッチは、前記パッチが記録された記録位置をパターンマッチングにより検出可能とする前記相対移動方向において線対称のパターンであり、
複数の前記補正値の候補の内の、個々の補正値の候補の導出には、前記複数のパッチの内の2つのパッチの記録位置の差異情報を用い、
前記差異情報を得るための前記2つのパッチは、前記相対移動方向と交差する方向において隣接して記録する請求項10に記載の液体吐出装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、および液体吐出装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出装置の一例として、複数の有彩色インクや黒色インクをインク滴として吐出することでフルカラー画像を印刷するインクジェットプリンターが知られている。
特許文献1には、このような液体吐出装置が吐出する液滴の着弾位置のずれを補正する技術が記載されている。具体的には、特許文献1の液体吐出装置は、吐出部から液滴として吐出される液体の吐出速度を求めるための吐出速度テストパターンを形成し、吐出速度テストパターンから検知される液体の吐出速度に関連する吐出速度パラメーターに基づき、液体の吐出タイミングを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-111037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の着弾位置ずれの補正方法では、補正量を導出するための吐出速度テストパターンを形成する際の仕様に偏りが有った場合に、適切な補正を行うことができなくなってしまう場合があるという課題があった。具体的には、例えば、テストパターンが個体差の有る特定のノズルが吐出する液体により形成された場合や、テストパターンが形成される媒体の表面の平坦性に偏りが有った場合などに、適切なテストパターンが得られないために、適切な補正がされなくなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体吐出装置は、記録媒体に液滴を吐出するノズルを複数有するヘッドと、前記ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動方向に相対移動させる移動部と、前記ヘッドおよび前記移動部を制御して前記記録媒体にテストパターンを記録し、前記テストパターンから得られる補正値に基づいて前記ヘッドおよび/または前記移動部の制御を補正して記録を行う制御部と、を備える液体吐出装置であって、前記テストパターンは、前記相対移動方向における前記液滴が前記記録媒体に着弾する着弾位置を補正するための前記補正値の候補が複数得られる複数のパッチを有する。
【0006】
本発明の液体吐出装置の調整方法は、記録媒体に液滴を吐出するノズルを複数有するヘッドと、前記ヘッドを前記記録媒体に対して相対移動方向に相対移動させる移動部と、を備える液体吐出装置の調整方法であって、前記ヘッドおよび前記移動部を制御して、前記記録媒体に、前記相対移動方向における前記液滴が前記記録媒体に着弾する着弾位置を補正するための補正値の候補が複数得られる複数のパッチを有するテストパターンを記録するテストパターン記録工程と、前記テストパターンから前記補正値の候補を複数導出する補正値候補導出工程と、導出された複数の前記補正値の候補を統計処理して前記補正値を決定する補正値決定工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る液体吐出装置としての印刷装置の構成を示す正面図である。
図2】実施形態1に係る液体吐出装置としての印刷装置の構成を示すブロック図である。
図3】ヘッドの下面から見た、ノズル列の配置の例を示す模式図である。
図4】インク滴が印刷媒体に着弾する着弾位置が変動する要素について説明するための概念図である。
図5】インク滴が印刷媒体に着弾する着弾位置が変動する要素について説明するための概念図である。
図6】インク滴が印刷媒体に着弾する着弾位置が変動する要素について説明するための概念図である。
図7】インク滴が印刷媒体に着弾する着弾位置が変動する要素について説明するための概念図である。
図8】インク滴が印刷媒体に着弾する着弾位置が変動する要素について説明するための概念図である。
図9】テストパターンの例を示す図である。
図10】テストパターンに含まれるパッチの画像の例を示す図である。
図11】パッチ内の各画像の印刷仕様を、対応する表意文字で示すマップ図である。
図12】パッチ内の各画像の印刷仕様を示す表である。
図13】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図14】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図15】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図16】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図17】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図18】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図19】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図20】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図21】テストパターンから得られるインク滴の着弾位置に係る情報を説明するための印刷仕様のマップ図である。
図22】実施形態2に係る液体吐出装置としての印刷装置の構成を示す正面図である。
図23】実施形態2に係る液体吐出装置としての印刷装置の構成を示すブロック図である。
図24】実施形態2に係る液体吐出装置としての印刷装置が備えるヘッドの下面から見た、ノズル列の配置の例を示す模式図である。
図25】実施形態2に係るテストパターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態1
本実施形態に係る液体吐出装置としての印刷装置1の構成について、図1図2を参照して説明する。
なお、図面に付記する座標においては、Z軸方向が上下方向、+Z方向が上方向、X軸方向が前後方向、-X方向が前方向、Y軸方向が左右方向、+Y方向が左方向、X-Y平面が水平面としている。
また、本実施形態では、記録の1形態である画像や文字、記号などの印刷について説明する。記録には、画像や文字、記号などの印刷の他に、記録媒体の所望の位置に液滴を付与することにより行うデジタル情報の記録や、製品の構成材料や造形材料の付与なども含まれる。
【0009】
印刷装置1は、印刷部100、および、印刷部100に接続される画像処理部110によって構成されている。
印刷部100は、画像処理部110から受信する印刷データに基づいて、記録媒体としての、ロール状に巻かれた状態でセットされる長尺状の印刷媒体5に、液体としてのインクを付与することにより所望の画像を印刷するインクジェット式のシリアルプリンターである。
【0010】
画像処理部110は、画像制御部111、入力部112、表示部113、記憶部114などを備え、印刷部100に印刷を行わせる印刷ジョブの制御を行う。また、画像処理部110は、画像データに基づく所望の画像の印刷を印刷部100に実行させるための印刷データを生成する。画像処理部110は、好適例としてパーソナルコンピューターを用いて構成している。
画像処理部110が動作するソフトウェアには、印刷する画像データを扱う一般的な画像処理アプリケーションソフトウェアや、印刷部100の制御や印刷部100に印刷を実行させるための印刷データを生成するプリンタードライバーソフトウェア、印刷データの生成に必要な色変換ルックアップテーブルを作成する色変換ルックアップテーブル作成プログラムが含まれる。以下の説明では、画像処理アプリケーションソフトウェアを単に画像処理アプリケーションと言い、プリンタードライバーソフトウェアを単にプリンタードライバーと言う。
ここで、画像データとは、バーコードなどのコード情報や、線画、テキストデータを含むRGBのデジタル画像情報である。
【0011】
画像制御部111は、CPU115や、ASIC116、DSP117、メモリー118、装置内インターフェイス119、汎用インターフェイス120などを備え、印刷装置1全体の集中管理を行う。CPUは、Central Processing Unit、ASICは、Application Specific Integrated Circuit、DSPは、Digital Signal Processorを意味する。
入力部112は、ユーザーインターフェイスとしての情報入力手段である。具体的には、例えば、キーボードやマウスポインターなどである。
表示部113は、ユーザーインターフェイスとしての情報表示手段であり、画像制御部111の制御の基に、入力部112から入力される情報や、印刷部100に印刷する画像、印刷ジョブに関係する情報などが表示される。
【0012】
記憶部114は、ハードディスクドライブやメモリーカードなどの書き換え可能な記憶媒体であり、画像処理部110が動作するソフトウェアとしての画像制御部111で動作するプログラムや、印刷する画像、印刷ジョブに関係する情報などが記憶される。
メモリー118は、CPU115が動作するプログラムを格納する領域や動作する作業領域などを確保する記憶媒体であり、RAM、EEPROMなどの記憶素子によって構成される。RAMは、Random access memory、EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryを意味する。
汎用インターフェイス120は、例えば、LANインターフェイスやUSBインターフェイスなど、外部電子機器を接続できるインターフェイスである。LANは、Local Area Network、USBは、Universal Serial Busを意味する。
【0013】
印刷部100は、インク付与部10、移動部20、印刷制御部30などから構成されている。画像処理部110から印刷データを受信した印刷部100は、印刷データに基づき、印刷制御部30によってインク付与部10、移動部20を制御し、印刷媒体5に画像を印刷する。
印刷データは、画像データを、画像処理部110が備える画像処理アプリケーションおよびプリンタードライバーによって印刷部100で印刷できるように変換処理した画像形成用のデータであり、印刷部100を制御するコマンドを含んでいる。
【0014】
インク付与部10は、ヘッドユニット11、インク供給部12、ギャップ調整部15などから構成されている。
移動部20は、走査部40、搬送部50などから構成されている。
走査部40は、キャリッジ41、ガイド軸42、キャリッジモーターなどから構成されている。キャリッジモーターは、図示を省略している。
搬送部50は、供給部51、収納部52、搬送ローラー53、プラテン55などから構成されている。
【0015】
ヘッドユニット11は、印刷用のインクをインク滴として吐出する複数のノズル131を備えるヘッド13およびヘッド制御部14を備えている。ヘッドユニット11は、キャリッジ41に搭載され、すなわちヘッド13は、キャリッジ41に搭載され、走査方向としてのX軸方向に移動するキャリッジ41に伴ってX軸方向に往復移動する。
【0016】
インクには、好適例としてシアンC、マゼンタM、イエローY、ライトシアンLC、ライトマゼンタLM、ライトイエローLY、ライトブラックLK、ブラックKの8色のインクセットを用いている。
【0017】
インク供給部12は、インクタンクおよびインクタンクからヘッド13にインクを供給するインク供給路などを備えている。インクタンクおよびインク供給路については、図示を省略する。
ヘッド13は、図3に示すように、X軸方向に並ぶヘッドユニット135a~135hの8個のヘッドユニット135から構成されている。
各ヘッドユニット135は、Y軸方向に並ぶ個別ヘッド134a~134hの8個の個別ヘッド134から構成されている。
各個別ヘッド134は、ノズルチップ133a~133dの4個のノズルチップ133から構成されている。ノズルチップ133a~133dは、+Y側から-Y側に向かってノズルチップ133a~133dがX軸方向に互い違いに配置されている。ノズルチップ133aとノズルチップ133cとは、ノズルチップ133bとノズルチップ133dより-X側に配置されている。
【0018】
各ノズルチップ133は、X軸方向に隣接して並ぶノズル列132Aとノズル列132Bとから構成されている。ノズル列132Aは、ノズル列132Bの+X側に配置されている。
各ノズル列132Aと各ノズル列132Bには、ノズル列方向としてのY軸方向に沿って、400個のノズル131が列設されている。
各ノズル131は、各ヘッドユニット135をX軸方向から見たときに、Y軸方向の全体に亘って所定の間隔に並び、各ノズル列132に供給されるインクを、-Z方向に吐出できるように形成されている。
各ノズルチップ133は、例えばシリコンウエハーを基本材料として、半導体プロセスを応用したMEMS製造プロセスによって製造され、各ノズルチップ133が有するノズル131は、インク吐出特性が同一の、あるいは近似する、ノズルグループを構成している。ここで、MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsを意味している。
【0019】
ヘッドユニット135aが有するノズル列132A、およびヘッドユニット135hが有するノズル列132Bには、ライトイエローLYのインクが供給される。
ヘッドユニット135aが有するノズル列132B、およびヘッドユニット135hが有するノズル列132Aには、イエローYのインクが供給される。
ヘッドユニット135bが有するノズル列132A、およびヘッドユニット135gが有するノズル列132Bには、マゼンタMのインクが供給される。
ヘッドユニット135bが有するノズル列132B、およびヘッドユニット135gが有するノズル列132Aには、シアンCのインクが供給される。
ヘッドユニット135cが有するノズル列132A、およびヘッドユニット135fが有するノズル列132Bには、ライトブラックLKのインクが供給される。
ヘッドユニット135cが有するノズル列132B、およびヘッドユニット135fが有するノズル列132Aには、ライトマゼンタLMが供給される。
ヘッドユニット135dが有するノズル列132A、およびヘッドユニット135eが有するノズル列132Bには、ライトシアンLCのインクが供給される。
ヘッドユニット135dが有するノズル列132B、およびヘッドユニット135eが有するノズル列132Aには、ブラックKのインクが供給される。
インクタンク、インク供給路、および同一インクを吐出するノズル131までのインク供給経路は、インクごとに独立して設けられている。
【0020】
ギャップ調整部15は、印刷媒体5の厚さに応じて、ヘッド13の下面、つまり、ノズル131が開口するノズル面と、印刷媒体5を支持するプラテン55の上面との距離を変更することができる。ギャップ調整部15は、印刷制御部30の制御に基づき、ガイド軸42の支持位置あるいは、プラテン55の支持位置をZ軸方向において変更可能な支持機構を備えている。この支持機構の図示、および具体的な説明は省略する。
【0021】
移動部20、つまり走査部40および搬送部50は、印刷制御部30の制御の下に、印刷媒体5をヘッド13に対し相対移動させる。
ガイド軸42は、X軸方向に延在してキャリッジ41を摺接可能な状態で支持する。また、キャリッジモーターは、キャリッジ41をガイド軸42に沿って往復移動させる際の駆動源となる。つまり、走査部40は、印刷制御部30の制御の下にキャリッジ41を、つまりは、ヘッド13をガイド軸42に沿ってX軸方向に移動させる。すなわち、移動部20は、ヘッド13と印刷媒体5とを、ノズル列方向であるY軸方向と交差するX軸方向における第1方向と、第1方向と逆方向の第2方向とに相対移動させる。キャリッジ41に搭載されたヘッドユニット11に備えられたヘッド13が、X軸方向に移動しながら印刷制御部30の制御の下に、プラテン55に支持される印刷媒体5にインク滴を吐出することによって、X軸方向に沿った複数のドット列が印刷媒体5に形成される。
なお、本実施形態においては、画像制御部111と印刷制御部30とによって、画像データに基づきヘッド13と移動部20とを制御し印刷を行う制御部60を構成している。
【0022】
供給部51は、印刷媒体5がロール状に巻かれたリールを回転可能に支持し、印刷媒体5を搬送経路に送り出す。収納部52は、印刷媒体5を巻き取るリールを回転可能に支持し、印刷が完了した印刷媒体5を搬送経路から巻き取る。
搬送ローラー53は、印刷媒体5を移動させる駆動ローラーや印刷媒体5の移動に伴って回転する従動ローラーなどから成り、プラテン55の上面において印刷媒体5を走査方向と交差する搬送方向としてのY軸方向に移動させる。搬送ローラー53は、印刷媒体5を供給部51からインク付与部10の印刷領域を経由し、収納部52に搬送する搬送経路を構成する。印刷領域は、プラテン55の上面でヘッド13がX軸方向に移動する領域である。
プラテン55は、X-Y平面方向に延在し、印刷領域において印刷媒体5を下面から支持する平板である。
【0023】
印刷制御部30は、装置内インターフェイス31、CPU32、メモリー33、駆動制御部34などを備え、印刷部100の制御を行う。
装置内インターフェイス31は、画像処理部110の装置内インターフェイス119に接続され、画像処理部110と印刷部100との間でデータの送受信を行う。
CPU32は、印刷部100全体の制御を行うための演算処理装置である。
メモリー33は、CPU32が動作するプログラムを格納する領域や動作する作業領域などを確保する記憶媒体であり、RAM、EEPROMなどの記憶素子によって構成される。
CPU32は、メモリー33に格納されているプログラム、および画像処理部110から受信した印刷データに従って、駆動制御部34を介してインク付与部10、移動部20を制御する。
【0024】
駆動制御部34は、CPU32の制御に基づいて動作するファームウェアを含み、インク付与部10のヘッドユニット11、インク供給部12、ギャップ調整部15や、移動部20の走査部40、搬送部50の駆動を制御する。
駆動制御部34は、移動制御信号生成回路35、吐出制御信号生成回路36、駆動信号生成回路37、ギャップ制御回路38などを含む駆動制御回路、これら駆動制御回路を制御するファームウェアを内蔵するROMやフラッシュメモリーなどから構成されている。駆動制御回路を制御するファームウェアを内蔵するROMやフラッシュメモリーについては、図示を省略している。ここで、ROMは、Read-Only Memoryを意味する。
【0025】
移動制御信号生成回路35は、印刷データに基づき、CPU32からの指示に従って、移動部20の走査部40や搬送部50を制御する信号を生成する回路である。
吐出制御信号生成回路36は、印刷データに基づき、CPU32からの指示に従って、インクを吐出するノズル131の選択、吐出する量の選択、吐出するタイミングの制御などをするためのヘッド制御信号を生成する回路である。
駆動信号生成回路37は、ヘッド13が備える圧力発生室を駆動する駆動信号を生成する回路である。
ギャップ制御回路38は、ギャップ調整部15が有する支持機構、すなわち、ガイド軸42の支持位置あるいは、プラテン55の支持位置をZ軸方向において変更可能な支持機構を駆動制御する回路である。
【0026】
以上の構成により、印刷制御部30は、供給部51、搬送ローラー53によって印刷領域に供給された印刷媒体5に対し、ガイド軸42に沿ってヘッド13を支持するキャリッジ41をX軸方向移動させながらヘッド13からインク滴を吐出する動作と、搬送ローラー53によりX軸方向と交差する+Y方向に印刷媒体5を移動させる動作とを繰り返すことにより、印刷媒体5に所望の画像を印刷する。
【0027】
ところで、ノズル131から吐出されるインク滴が印刷媒体5に着弾する着弾位置、つまり、インク滴によってドットが形成される位置は、ヘッド13がインク滴を吐出するタイミング、インク滴を吐出するノズルの位置、ヘッド13と印刷媒体5との相対移動速度、インク滴の吐出速度、ヘッド13から印刷媒体5までの距離、インク滴を吐出する方向、印刷媒体5の搬送精度などにより変動する。インク滴の着弾位置がばらつき、所定の着弾位置からずれる度合いが大きくなるほど、印刷品質が低下してしまうことになる。そのため、予め、着弾位置のばらつきが推定される場合には、そのばらつきの状態を把握しておくことで、例えば、インク滴を吐出するタイミングや、ヘッド13と印刷媒体5との相対移動量を補正することにより、所定の着弾位置に近づけることが可能となり、印刷品質の低下を抑制することができる。
【0028】
図4図8を参照して、ノズル131から吐出されるインク滴が印刷媒体5に着弾する着弾位置が変動する要素について具体的に説明する。
以下の説明において、ノズル131が-Z方向に吐出するインク滴の吐出速度をVm0、ヘッド13の移動速度を、つまりX軸方向における印刷媒体5に対するノズル131の相対移動の速度をVcr、インク滴の飛翔速度をVm1、ノズル131の先端から印刷媒体5までの距離であるワークギャップをWG1、WG2とする。WG1、WG2は、設定可能な2つのワークギャップ、あるいは、設定されたワークギャップWGに対する実際の2つのワークギャップであり、ΔWG=WG2-WG1>0とする。
【0029】
図4に示すように、X軸方向におけるインク滴の吐出位置P0から着弾位置までのずれ量δ1は、以下の式で求められる。
δ1=WG1/Vm0×Vcr
従って、インク滴の吐出速度Vm0、ヘッド13の移動速度Vcr、ワークギャップWG1にばらつきが有った場合も、ずれ量δ1は変動する。
【0030】
また、図5に示すように、ワークギャップがWG1からWG2に変化した場合の、δ1に対する着弾位置のずれ量δ2は、以下の式で求められる。
δ2=WG2/Vm0×Vcr-WG1/Vm0×Vcr=ΔWG/Vm0×Vcr
ΔWG=WG2-WG1は、例えば、ワークギャップの設定値WG1に対して、実際のワークギャップがWG2である場合、ワークギャップのばらつき量として見ることもでき、ずれ量δ2は、このばらつきΔWGによる着弾位置のずれ量となる。
【0031】
また、図6に示すように、インク滴の吐出角度が、+X方向にθずれた場合のδ1に対する着弾位置のずれ量δ3は、以下の式で近似することができる。
δ3=WG1×tanθ
吐出角度のずれは、例えば、ヘッド13における、個別ヘッド134やヘッドユニット135の取り付け角度のばらつき、ノズルチップ133の成型精度ばらつきなどによって発生する。
【0032】
また、図7に示すように、ノズル131の取り付け位置が+X方向にΔxずれた場合のδ1に対する着弾位置のずれ量δ4は、以下の式で求められる。
δ4=Δx
【0033】
上述したそれぞれのずれ量δ1~δ4の期待値に対して、つまり設定された条件によって決定されるずれ量δ1~δ4の設計値に対して、実際に観測されるずれ量δ1~δ4が異なった場合には、例えば、インク滴を吐出するタイミングを補正することで、所定の着弾位置に近づけることができる。インク滴を吐出するタイミングの補正は、例えば、駆動信号生成回路37が生成する駆動信号の波形の立ち上がり、立ち下りタイミングを補正することで可能となる。
また、ずれ量δ1~δ4のずれ方向とは異なるY軸方向、つまり印刷媒体5の搬送方向における着弾位置のずれは、搬送部50による印刷媒体5の搬送量の補正をすることで、所定の着弾位置に近づけることができる。
【0034】
本実施形態の印刷装置1は、印刷媒体5に、インク滴の着弾位置を観測するためのテストパターンを印刷し、テストパターンを解析することによって得られる情報に基づいて、ヘッド13および/または移動部20の制御を補正して印刷を行うことができる。
なお、テストパターンの印刷を上述した印刷方法において行う場合、つまり、ヘッド13を走査方向に移動させながらインク滴を吐出することにより印刷を行う場合、ずれ量δ1~δ4の起点となるX軸方向におけるインク滴の吐出位置P0を印刷媒体5に記録するのは難しい。そこで、図8に示すように、走査移動における往路、つまり+X方向への移動における吐出位置P0でインク滴を吐出したときの着弾位置と、走査移動における復路、つまり-X方向への移動における吐出位置P0でインク滴を吐出したときの着弾位置との中間位置として吐出位置P0を求めるようにすることができる。また、ずれ量δ1は、これらの着弾位置の距離の2分の1の値として得ることができる。ここで求められる吐出位置P0やずれ量δ1は、往路と復路におけるヘッド13の移動速度Vcrが等しく、インク滴の吐出方向が、-Z方向に対して傾きの無いことが前提となる。
【0035】
図9図12を参照し、本実施形態におけるテストパターンTpについて説明する。
図9は、テストパターンTpの内、ヘッドユニット135a~135hの1行目の個別ヘッド134に対応するテストパターンTpkを示している。ここで、k=a~hであり、個別ヘッド134a~134hに対応する。従って、テストパターンTpは、テストパターンTpkが、Y軸方向に8個並ぶテストパターンTp=テストパターンTpa~Tphから構成される。
テストパターンTpkは、図9に示すように、m=4行、n=8列のパッチPtmn=Pt11~Pt48の32個のパッチから構成されている。m=4行のパッチPtmnは、順に、それぞれの個別ヘッド134のノズルチップ133a~133dに対応している。
パッチPtmnは、4隅をパッチ認識用のマークMkによって囲まれており、図10に示すように、j=12行、k=5列の画像Gjk=G11~G125の60個のパターン画像から構成されている。
【0036】
画像Gjkは、画像認識によるパターンマッチングにより、その位置の特定を容易とする画像であり、ヘッド13と印刷媒体5との相対移動方向において線対称の画像である。本実施形態では、相対移動方向が、走査方向、つまりX軸方向だけでなく、搬送方向、つまりY軸方向もあるため、画像Gjkは、点対称の画像となっている。
図10に示す例では、画像Gjkは、列毎に異なる形状の画像となっているが、同じ形状の画像であってもよい。
【0037】
パターンマッチングにより特定する画像Gjkの位置とは、個々の画像Gjkの代表点の位置であり、例えば、画像Gjkの中心点である。特定された画像Gjkの位置は、その画像Gjkの印刷に用いた1個あるいは複数のノズル131が吐出したインク滴の着弾位置情報の代表値として扱うことができる。
画像認識によるパターンマッチングの処理は、例えば、デジタルカメラやスキャナーなどでテストパターンTpを画像データとして取り込み、教師データとなるパッチPtmnの元画像データと、取り込まれた各パッチPtmnの画像データとの階調値比較により行う。従って、各画像Gjkのサイズは、デジタルカメラやスキャナーの解像度の整数倍であることが好ましく、各画像Gjkの形状は、パターンマッチング処理におけるずれ量と階調値差との関係がリニアであることが好ましい。
【0038】
次に、図11図12を参照し、各画像Gjkを印刷する仕様について説明する。
図11は、パッチPtmn内の各画像Gjkの印刷仕様を、対応する表意文字a~iで示している印刷仕様のマップ図である。
図12の表において、記号は、印刷方向、WG、ノズル列によって決められる印刷仕様に対応する表意文字を示している。印刷方向は、該当する画像Gjkを印刷する際のヘッド13の移動方向であり、往路を+X方向、復路を-X方向で示している。また、WGは、該当する画像Gjkを印刷する際のノズル131の先端から印刷媒体5までの距離であるワークギャップの設定値がWG1であるかWG2であるかを示している。ノズル列は、吐出するノズル131が、ノズルチップ133のノズル列132Aに属するノズルか、ノズル列132Bに属するノズルかを示している。また、記号bのノズル列はSAとしているが、これは、ヘッド13が有する256個のノズル列132Aと256個のノズル列132Bの内で基準とする1個のノズル列132Aに含まれるノズル131で印刷することを示している。以下の説明において、基準とする1個のノズル列132Aを基準ノズル列132SAと言う。基準ノズル列132SAは、ヘッド13を平面視したときの略中心付近に配置されるノズル列132Aから選択している。
なお、図11に示す印刷仕様のマップ図において、同じ記号であっても、Y軸方向で異なる位置に示されている記号による印刷は、Y軸方向において異なるノズル131によって印刷を行う。
【0039】
また、それぞれのパッチPtmnを印刷するヘッドユニット135は、次のようにしている。
1列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt11、パッチPt21、パッチPt31、パッチPt41は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135aにより行う。
2列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt12、パッチPt22、パッチPt32、パッチPt42は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135bにより行う。
3列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt13、パッチPt23、パッチPt33、パッチPt43は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135cにより行う。
4列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt14、パッチPt24、パッチPt34、パッチPt44は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135dにより行う。
5列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt15、パッチPt25、パッチPt35、パッチPt45は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135eにより行う。
6列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt16、パッチPt26、パッチPt36、パッチPt46は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135fにより行う。
7列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt17、パッチPt27、パッチPt37、パッチPt47は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135gにより行う。
8列目のパッチPtmn、すなわち、パッチPt18、パッチPt28、パッチPt38、パッチPt48は、記号bの印刷仕様による印刷を行う画像Gjkを除き、ヘッドユニット135hにより行う。
【0040】
次に、以上に説明したテストパターンTpを解析することによって得られる着弾位置ずれの情報について、図13図21を参照して説明する。
まず、図13の太線で囲んだ記号aによる画像Gjk=G11~G15と、記号bによる画像Gjk=G21~G25とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131が含まれる8個のヘッドユニット135間の着弾位置ずれのずれ量を検出することができる。
具体的に説明すると、記号bによる画像Gjk=G21~G25は、基準ノズル列132SAに含まれるノズル131によって印刷された画像である。また、この画像の+Y側に隣接する記号aによる画像Gjk=G11~G15は、記号bによる画像Gjk=G21~G25と同じ印刷仕様、つまり、同じ印刷方向、同じワークギャップ、同じA側のノズル列による印刷であって、8個のヘッドユニット135のそれぞれに含まれるノズル131によって印刷された画像である。
従って、基準ノズル列132SAに含まれるノズル131が吐出するインクの着弾位置に対する、8個のヘッドユニット135に含まれるノズル131が吐出するインクの着弾位置のずれ量を検出することができる。
【0041】
ここで、基準ノズル列132SAを第1ノズル列とし、基準ノズル列132SAを有するヘッドユニット135以外の7個のヘッドユニット135のそれぞれに含まれるノズル列132Aを第2ノズル列とすることができる。すなわち、ヘッド13は、ノズル131がノズル列方向に列設された第1ノズル列と、第2ノズル列とを有し、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、第2ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、の相対移動方向におけるずれ量が複数導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
また、基準ノズル列132SAを有するヘッドユニット135を第1ノズルユニットとし、それ以外のヘッドユニット135を第2ノズルユニットとすることができる。すなわち、ヘッド13は、ノズル131が列設された複数のノズル列から成る第1ノズルユニットと、第1ノズルユニットとは異なり、ノズル131が列設された複数のノズル列から成る第2ノズルユニットと、を有し、第1ノズル列は、第1ノズルユニットに含まれ、第2ノズル列は、第2ノズルユニットに含まれている。
【0042】
また、ヘッドユニット135間の着弾位置ずれの情報は、基準ノズル列132SAとの差異情報として、個別ヘッド134毎に、5個/パッチPtmn×4パッチPtmn=20個、つまり、ヘッドユニット135毎に、20個×8個別ヘッド134=160個得ることができる。
得られた160個の着弾位置ずれの情報に基づき、8個のヘッドユニット135間の着弾位置ずれを抑制するための補正値を導出することができる。例えば、前述したように、X軸方向における着弾位置ずれは、インク滴を吐出するタイミングを補正することで抑制することはできる。
吐出タイミングの補正値は、得られた160個の着弾位置ずれの情報の個々の値に対応させ、補正値の候補として導出することができる。すなわち、テストパターンTpは、相対移動方向におけるインク滴が印刷媒体5に着弾する着弾位置を補正するための補正値の候補が複数得られる複数のパッチPtmnを有している。
【0043】
ヘッドユニット135毎にインク滴を吐出するタイミングを補正する補正値を導出する方法としては、各種統計処理の手法を活用することができる。
例えば、得られた160個の着弾位置ずれの情報を平均し、得られた平均値に対応する吐出タイミングの補正値として導出する。
あるいは、得られた160個の着弾位置ずれの情報の中に、特異な値を示す情報が含まれる場合には、特異な値を示す情報を除いた上で平均値を求め、得られた平均値に対応する吐出タイミングの補正値として導出する。特異な値とは、正常な印刷においては検出されない値であり、例えば、印刷媒体5の皺や浮き、ノズル131のインク詰まりなどに起因するパッチPtmn位置の異常やパッチPtmnの形状の異常により検出されてしまう値である。
また、得られた160個の着弾位置ずれの値のメジアンやモードを代表値として抽出し、この代表値に対応する補正値を吐出タイミングの補正値とする方法であってもよい。
また、ヘッドユニット135毎にインク滴を吐出するタイミングを補正するのではなく、ノズルチップ133毎にインク滴を吐出するタイミングを補正する方法であってもよい。その場合、同一ノズルチップ133の5組のパッチPtmnの組み合わせから得られる5つの着弾位置ずれの情報を元にして、その平均値、もしくはメジアンをずれ量の代表値として採用する。
【0044】
ここで、本実施形態を、印刷媒体5にインク滴を吐出するノズル131を複数有するヘッド13と、ヘッド13を印刷媒体5に対して相対移動方向に相対移動させる移動部20と、を備える印刷装置1の調整方法として捉えた場合、印刷装置1の調整方法は、ヘッド13および移動部20を制御して、印刷媒体5に、相対移動方向におけるインク滴が印刷媒体5に着弾する着弾位置を補正するための補正値の候補が複数得られる複数のパッチPtmnを有するテストパターンTpを印刷するテストパターン記録工程と、テストパターンTpから補正値の候補を複数導出する補正値候補導出工程と、導出された複数の補正値の候補を統計処理して補正値を決定する補正値決定工程と、を含んでいる。
【0045】
また、前述したように、パッチPtmnは、パッチPtmnが印刷された印刷位置をパターンマッチングにより検出可能とする相対移動方向において線対称のパターンであり、複数の補正値の候補の内の、個々の補正値の候補の導出には、複数のパッチPtmnの内の2つのパッチPtmnの印刷位置の差異情報を用いる。
テストパターン記録工程では、記号bによる画像Gjk=G21~G25と、記号aによる画像Gjk=G11~G15のように、また、以降の説明にも記述するように、差異情報を得るための2つのパッチPtmnは、着弾位置ずれを検出する相対移動方向、つまりX軸方向と交差する方向、つまりY軸方向において隣接して印刷されている。
【0046】
次に、図14の太線で囲んだ記号cによる画像Gjk=G31、G33、G35、G72、G74と、記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131のインク滴の吐出速度Vm0の推定値を、それぞれのヘッドユニット135毎に、求めることができる。
具体的に説明すると、記号cによる画像Gjk=G31、G33、G35、G72、G74の印刷と、これらにY軸方向において隣接する記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84の印刷とでは、ワークギャップWGのみが異なる。印刷方向はそれぞれ-X方向であり、ノズル列は、それぞれノズル列132Aである。
図5に示すように、
δ2=(WG2-WG1)/Vm0×Vcr
であることから、
Vm0=(WG2-WG1)/δ2×Vcr
であり、ワークギャップWG1、WG2、ヘッド13の移動速度Vcrが既知の値である場合には、記号cによる画像Gjk=G31、G33、G35、G72、G74と、記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84とからδ2を検出することで、ノズル131のインク滴の吐出速度Vm0を推定値として求めることができる。求められたインク滴の吐出速度Vm0に基づき、例えば、ワークギャップWGを変更したときや、ワークギャップWGにばらつきが検出されたときには、図5に示すように、
δ2=ΔWG/Vm0×Vcr
であることから、δ2を導出することができ、また、δ2に対応するインク滴の吐出タイミングなどの補正値を導出することができる。
【0047】
δ2は、テストパターンTpから、ヘッドユニット135毎に160個求めることができる。160個のδ2からノズル131のインク滴の吐出速度Vm0を導出する方法としては、上述した補正値の導出と同様に、各種統計処理の手法を活用することができる。
【0048】
次に、図15の太線で囲んだ記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84と、記号aによる画像Gjk=G51、G53、G55、G92、G94とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131の先端から印刷媒体5までの距離であるワークギャップWGを、それぞれのヘッドユニット135毎に、推定値として求めることができる。
具体的に説明すると、記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84と、これらにY軸方向において隣接する記号aによる画像Gjk=G51、G53、G55、G92、G94とでは、印刷方向のみが異なる。
インク滴の吐出速度Vm0、およびヘッド13の移動速度Vcrが既知の値であり、往路と復路におけるヘッド13の移動速度Vcrが等しく、インク滴の吐出方向が、-Z方向に対して傾きの無いことを前提とした場合に、図8に示すように、
δ1×2=WG1/Vm0×Vcr×2
であることから、
WG1=(δ1×2)×Vm0/Vcr/2
であり、記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84と、記号aによる画像Gjk=G51、G53、G55、G92、G94とから、δ1×2を検出することにより、WG1を求めることができる。つまり、設定したワークギャップWGに対して、実際のワークギャップWG1を求めることができる。その結果、ワークギャップWGにばらつきが検出されたときには、図5に示すように、
δ2=ΔWG/Vm0×Vcr
であることから、δ2を導出することができ、また、δ2に対応する補正値を導出することができる。
【0049】
δ1×2の値は、テストパターンTpから、ヘッドユニット135毎に160個求めることができる。160個のδ1×2の値からワークギャップWG1を導出する方法としては、上述した補正値の導出と同様に、各種統計処理の手法を活用することができる。
【0050】
ところで、上述したように、記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84と、これらにY軸方向において隣接する記号aによる画像Gjk=G51、G53、G55、G92、G94とでは、印刷方向のみが異なる。すなわち、移動部20は、ヘッド13と印刷媒体5とを、ノズル列方向と交差する第1方向と、第1方向と逆方向の第2方向とに相対移動させ、複数のパッチPtmnは、ヘッド13が印刷媒体5に対して第1方向に移動しながら印刷されるパッチPtmnと、ヘッド13が印刷媒体5に対して第2方向に移動しながら印刷されるパッチPtmnと、を含んでいる。
【0051】
次に、図16の太線で囲んだ記号aによる画像Gjk=G51、G53、G55、G92、G94と、記号eによる画像Gjk=G61、G63、G65、G102、G104とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131のインク滴の吐出速度Vm0の推定値を、それぞれのヘッドユニット135毎に、求めることができる。
図14を参照して説明した内容との違いは、画像Gjkを印刷するノズル131の位置が異なること、および、印刷方向と2種類のワークギャップWGの組み合わせの違いだけであるが、同一のノズル列132Aにおいて、異なる条件で導出されたインク滴の吐出速度Vm0の情報を求めることができため、より有効な補正値を導出することが可能となる。
【0052】
次に、図17の太線で囲んだ記号fによる画像Gjk=G32、G34、G71、G73、G75と、記号gによる画像Gjk=G42、G44、G81、G83、G85とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131のインク滴の吐出速度Vm0の推定値を、それぞれのヘッドユニット135毎に、求めることができる。
図14を参照して説明した内容との違いは、画像Gjkを印刷するノズル131が含まれるノズル列が、ノズル列132Aからノズル列132Bになっていることであるが、異なるノズル列のノズル131が吐出するインク滴の吐出速度Vm0の情報を求めることができるため、より有効な補正値を導出することが可能となる。
【0053】
ここで、図14に示す記号cによる画像Gjk=G31、G33、G35、G72、G74と、記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84を、同じノズル列132Aに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第1ノズルとし、ノズル列132Aを第1ノズル列とすることができる。
また、図17に示す記号fによる画像Gjk=G32、G34、G71、G73、G75と、記号gによる画像Gjk=G42、G44、G81、G83、G85を、同じノズル列132Bに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第2ノズルとし、そのノズル列132Bを第2ノズル列とすることができる。
すなわち、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列の第1ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度の複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
【0054】
また、ここで、図14に示す記号cによる画像Gjk=G31、G33、G35を、同じノズル列132Aに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第1ノズルとし、図14に示す記号cによる画像Gjk=G72、G74を、第1ノズルが含まれる同じノズル列132Aに含まれる第1ノズルと異なるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第3ノズルとすることができる。
また、図17に示す記号fによる画像Gjk=G32、G34を、同じノズル列132Bに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第2ノズルとし、図17に示す記号fによる画像Gjk=G71、G73、G75を、第2ノズルが含まれる同じノズル列132Bに含まれる第2ノズルと異なるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第4ノズルとすることができる。
すなわち、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列の第3ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度の複数の推定値と、第2ノズル列の第4ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
【0055】
次に、図18の太線で囲んだ記号gによる画像Gjk=G42、G44、G81、G83、G85と、記号hによる画像Gjk=G52、G54、G91、G93、G95とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131の先端から印刷媒体5までの距離であるワークギャップWGを、それぞれのヘッドユニット135毎に、推定値として求めることができる。
図15を参照して説明した内容との違いは、画像Gjkを印刷するノズル131が含まれるノズル列が、ノズル列132Aからノズル列132Bになっていることであるが、異なるノズル列のノズル131の先端から印刷媒体5までの距離であるワークギャップWGの推定値を求めることができるため、より有効な補正値を導出することが可能となる。
【0056】
ここで、図15に示す記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45、G82、G84と、記号aによる画像Gjk=G51、G53、G55、G92、G94を、同じノズル列132Aに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第1ノズルとし、ノズル列132Aを第1ノズル列とすることができる。
また、図18に示す記号gによる画像Gjk=G42、G44、G81、G83、G85と、記号hによる画像Gjk=G52、G54、G91、G93、G95を、同じノズル列132Bに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第2ノズルとし、そのノズル列132Bを第2ノズル列とすることができる。
すなわち、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列の第1ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
【0057】
また、ここで、図15に示す記号dによる画像Gjk=G41、G43、G45を、同じノズル列132Aに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第1ノズルとし、図15に示す記号dによる画像Gjk=G82、G84を、第1ノズルが含まれる同じノズル列132Aに含まれる第1ノズルと異なるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第3ノズルとすることができる。
また、図18に示す記号gによる画像Gjk=G42、G44を、同じノズル列132Bに含まれるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第2ノズルとし、図18に示す記号gによる画像Gjk=G81、G83、G85を、第2ノズルが含まれる同じノズル列132Bに含まれる第2ノズルと異なるノズル131で印刷する場合、そのノズル131を第4ノズルとすることができる。
すなわち、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列の第3ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、第2ノズル列の第4ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
【0058】
次に、図19の太線で囲んだ記号hによる画像Gjk=G52、G54、G91、G93、G95と、記号iによる画像Gjk=G62、G64、G101、G103、G105とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131のインク滴の吐出速度Vm0の推定値を、それぞれのヘッドユニット135毎に、求めることができる。
図16を参照して説明した内容との違いは、画像Gjkを印刷するノズル131が含まれるノズル列が、ノズル列132Aからノズル列132Bになっていることであるが、異なるノズル列のノズル131が吐出するインク滴の吐出速度Vm0の情報を求めることができるため、より有効な補正値を導出することが可能となる。
【0059】
次に、図20の太線で囲んだ記号hによる画像Gjk=G111、G112、G113、G114、G115と、記号aによる画像Gjk=G121、G122、G123、G124、G125とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131が含まれるノズル列間の着弾位置ずれのずれ量を、それぞれのヘッドユニット135毎に、検出することができる。
具体的に説明すると、記号hによる画像Gjk=G111、G112、G113、G114、G115は、ノズル列132Bに含まれるノズル131によって印刷された画像である。また、この画像の-Y側に隣接する記号aによる画像Gjk=G121、G122、G123、G124、G125は、ノズル列132Aに含まれるノズル131によって印刷された画像であり、それ以外は同じ印刷仕様、つまり、同じ印刷方向、同じワークギャップによる印刷である。
従って、それぞれのヘッドユニット135毎に、ノズル列132Aに含まれるノズル131が吐出するインクの着弾位置に対する、ノズル列132Bに含まれるノズル131が吐出するインクの着弾位置のずれ量を検出することができる。また、得られたずれ量に対応するインク滴の吐出タイミングなどの補正値を導出することができる。
【0060】
すなわち、ここで、ノズル列132Aを第1ノズル列とし、ノズル列132Bを第2ノズル列として見たとき、ヘッド13は、ノズル131がノズル列方向に列設された第1ノズル列と、第2ノズル列とを有し、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、第2ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、の相対移動方向におけるずれ量が複数導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
【0061】
次に、図21の上下に並ぶ二つのパッチPtmnの内の、上のパッチPtmnにおける太線で囲んだ記号aによる画像Gjk=G121~G125と、下のパッチPtmnにおける太線で囲んだ記号aによる画像Gjk=G11~G15とから、これらの画像Gjkを印刷するノズル131が含まれるノズル列間の着弾位置ずれのずれ量を、それぞれのヘッドユニット135毎に、検出することができる。
具体的には、例えば、上のパッチPtmnにおける太線で囲んだ記号aによる画像Gjk=G121~G125を、ノズルチップ133aに属するノズル131によって印刷し、下のパッチPtmnにおける太線で囲んだ記号aによる画像Gjk=G11~G15をノズルチップ133bに属するノズル131によって印刷した場合、ノズルチップ133aとノズルチップ133bとの着弾位置ずれのずれ量を、それぞれのヘッドユニット135毎に、検出することができる。
【0062】
すなわち、ここで、ノズルチップ133aに含まれるノズル列を第1ノズル列とし、ノズルチップ133bに含まれるノズル列を第2ノズル列として見たとき、ヘッド13は、ノズル131がノズル列方向に列設された第1ノズル列と、第2ノズル列とを有し、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、第2ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、の相対移動方向におけるずれ量が複数導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
【0063】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
印刷装置1は、印刷媒体5にインク滴を吐出するノズル131を複数有するヘッド13と、ヘッド13を印刷媒体5に対して相対移動方向に相対移動させる移動部20と、ヘッド13および移動部20を制御して印刷媒体5にテストパターンTpを印刷し、テストパターンTpから得られる補正値に基づいてヘッド13および/または移動部20の制御を補正して印刷を行う制御部60と、を備えている。テストパターンTpは、相対移動方向におけるインク滴が印刷媒体5に着弾する着弾位置を補正するための補正値の候補が複数得られる複数のパッチPtmnを有している。これにより、着弾位置を補正するための補正値の候補が複数得られるため、得られた複数の補正値の候補を統計処理することにより、適切な補正値を導出することができる。例えば、得られた複数の補正値の候補の中に、偏りのある特異データが含まれる場合であっても、例えば、特異データを排除するなどの統計処理を行うことにより、偏りの無い、適切な補正値の候補に基づいた補正値の導出を行うことができる。そのため、着弾位置の適切な補正が適用された印刷を行うことが可能となる。
【0064】
ヘッド13は、ノズル131がノズル列方向に列設された第1ノズル列と第2ノズル列とを有し、図20を参照して説明したように、複数のパッチPtmnは、第1ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、第2ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、の相対移動方向におけるずれ量が複数導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
第1ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置と、第2ノズル列のノズル131から吐出されるインク滴の着弾位置との理想的なずれ量と、テストパターンTpから得られるこれらのずれ量とを比較することにより、理想的なずれ量での印刷を行うための補正を行うことができる。例えば、理想的なずれ量が0である場合に、テストパターンTpから得られるずれ量が0になるようにヘッド13および/または移動部20の制御を補正することで、適切な補正が行われる。
本実施形態では、テストパターンTpから複数のずれ量のデータが得られるため、得られた複数のずれ量のデータの中に、偏りのある特異データが含まれる場合であっても、例えば、特異データを排除するなどの統計処理を行うことにより、偏りの無い、複数の適切なずれ量のデータに基づいた補正値の導出を行うことができる。そのため、着弾位置の適切な補正が適用された印刷を行うことが可能となる。
【0065】
複数のパッチPtmnは、図14、および図17を参照して説明したように、第1ノズル列の第1ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度Vm0の複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度Vm0の複数の推定値と、を含む推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
吐出されるインク滴の吐出速度Vm0を求めておくことで、ヘッド13と印刷媒体5との相対移動速度や、ヘッド13から印刷媒体5までの距離の設定を変えた場合に、変化する着弾位置を推定することができ、対応する着弾位置の補正を適切に行うことができる。
本実施形態では、インク滴の着弾位置を補正するための補正値の候補を得るための複数のパッチPtmnに、第1ノズル列の第1ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度Vm0の複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度Vm0の複数の推定値と、を含む推定値が導出可能な複数のパッチPtmnが含まれている。そのため、得られた複数の推定値の中に、偏りのある特異データが含まれる場合であっても、例えば、特異データを排除するなどの統計処理を行うことにより、偏りの無い、複数の適切な吐出速度Vm0の推定値に基づいた吐出速度Vm0の推定値の導出を行うことができる。また、第1ノズル列の第1ノズルと第2ノズル列の第2ノズルとで別々にインク滴の吐出速度Vm0の推定値を導出することができる。その結果、インク滴の吐出速度Vm0の推定値に基づいた着弾位置の補正を適切に行うことができる。例えば、ヘッド13と印刷媒体5との相対移動速度や、ヘッド13から印刷媒体5までの距離の設定を変えた場合であっても、変化する着弾位置に対する適切な補正を行うことができる。
【0066】
複数のパッチPtmnは、図14、および図17を参照して説明したように、第1ノズル列の第1ノズルおよび第3ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度Vm0の複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルおよび第4ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度Vm0の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
同じノズル列であっても、ノズル131によって、導出される吐出速度Vm0の推定値に差異が見られる場合が有る。第1ノズル列と第2ノズル列のそれぞれで異なるノズル131の吐出速度Vm0の推定値が適切に導出されるため、同じノズル列内のノズル131に個体差が有った場合に、例えばこれらの平均を求めることなどにより、これらの影響を排除したり、低減したりすることが可能となる。
【0067】
複数のパッチPtmnは、図15および図18を参照して説明したように、第1ノズル列の第1ノズルから印刷媒体5までの距離、つまりワークギャップWGの複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、を含む推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
ヘッド13を印刷媒体5に対して相対移動させながらインク滴を吐出する場合に、ノズル131から印刷媒体5までの距離が変わることで、インク滴の着弾位置が変わってくる。そのため、ノズル131から印刷媒体5までの距離の推定値を適切に求めることで、着弾位置の補正を適切に行うことができるようになる。
本実施形態では、インク滴の着弾位置を補正するための補正値の候補を得るための複数のパッチPtmnに、第1ノズル列の第1ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、を含む推定値が導出可能な複数のパッチPtmnが含まれている。そのため、得られた複数の推定値の中に、偏りのある特異データが含まれる場合であっても、例えば、特異データを排除するなどの統計処理を行うことにより、偏りの無い、複数の適切な推定値に基づいて、ノズル131から印刷媒体5までの距離の適切な推定値の導出を行うことができる。また、第1ノズル列の第1ノズルと第2ノズル列の第2ノズルとで別々にそれぞれのノズル131から印刷媒体5までの距離の推定値を導出することができる。その結果、ノズル131から印刷媒体5までの距離の推定値に基づいた着弾位置の補正を適切に行うことができる。例えば、ヘッド13と印刷媒体5との相対移動速度や、ヘッド13から印刷媒体5までの距離の設定を変えた場合であっても、変化する着弾位置に対する適切な補正を行うことができる。
【0068】
複数のパッチPtmnは、図15および図18を参照して説明したように、第1ノズル列の第1ノズルおよび第3ノズルから印刷媒体5までの距離、つまりワークギャップWGの複数の推定値と、第2ノズル列の第2ノズルおよび第4ノズルから印刷媒体5までの距離の複数の推定値と、を含む複数の推定値が導出可能な複数のパッチPtmnを含んでいる。
同じノズル列であっても、ノズル131によって、ノズル131から印刷媒体5までの距離として導出される推定値に差異が見られる場合が有る。第1ノズル列と第2ノズル列のそれぞれで異なるノズル131から印刷媒体5までの距離の推定値が適切に導出されるため、同じノズル列内において差異が見られる場合であっても、例えばこれらの平均を求めることなどにより、これらの影響を排除したり、低減したりすることが可能となる。
【0069】
ヘッド13は、図13を参照して説明したように、ノズル131が列設された複数のノズル列から成る第1ノズルユニット、つまり、基準ノズル列132SAを有するヘッドユニット135と、第1ノズルユニットとは異なり、ノズル131が列設された複数のノズル列から成る第2ノズルユニット、つまり、第1ノズルユニット以外のヘッドユニット135と、を有し、第1ノズル列は、第1ノズルユニットに含まれ、第2ノズル列は、第2ノズルユニットに含まれている。そのため、第1ノズルユニットと第2ノズルユニットとの着弾位置ずれの補正を適切に行うことができる。
【0070】
移動部20は、ヘッド13と印刷媒体5とを、ノズル列方向と交差する第1方向と、第1方向と逆方向の第2方向とに相対移動させ、複数のパッチPtmnは、ヘッド13が印刷媒体5に対して第1方向に移動しながら印刷されるパッチPtmnと、ヘッド13が印刷媒体5に対して第2方向に移動しながら印刷されるパッチPtmnと、を含んでいる。そのため、第1方向と第2方向との双方向の相対移動において発生する着弾位置ずれに対する適切な補正が適用された印刷を行うことができる。
【0071】
印刷装置1の調整方法は、ヘッド13および移動部20を制御して、印刷媒体5に、相対移動方向におけるインク滴が印刷媒体5に着弾する着弾位置を補正するための補正値の候補が複数得られる複数のパッチPtmnを有するテストパターンTpを印刷するテストパターンTp記録工程と、テストパターンTpから補正値の候補を複数導出する補正値候補導出工程と、導出された複数の補正値の候補を統計処理して補正値を決定する補正値決定工程と、を含んでいる。
導出された複数の補正値の候補を統計処理することにより、適切な補正値を得ることができる。例えば、得られた複数の補正値の候補の中に、偏りのある特異データが含まれる場合であっても、例えば、特異データを排除するなどの統計処理を行うことにより、偏りの無い、適切な補正値の候補に基づいた補正値の導出を行うことができる。そのため、着弾位置の適切な補正が適用された印刷を行うことが可能となる。
【0072】
パッチPtmnは、パッチPtmnが印刷された印刷位置をパターンマッチングにより検出可能とする相対移動方向において線対称のパターンであり、複数の補正値の候補の内の、個々の補正値の候補の導出には、複数のパッチPtmnの内の2つのパッチPtmnの印刷位置の差異情報を用い、差異情報を得るための2つのパッチPtmnは、相対移動方向と交差する方向において隣接して印刷する。
パッチPtmnが印刷された印刷位置の特定を、カメラが撮像した画像データに基づくパターンマッチングにより行う場合には、カメラが有するレンズの収差の影響を排除することが好ましい。
本実施形態によれば、印刷位置の差異情報を検出する2つのパッチPtmnは、相対移動方向と交差する方向において隣接して印刷されるため、レンズの収差の影響を低減することができる。
【0073】
2.実施形態2
次に、図22図24を参照し、実施形態2に係る液体吐出装置としての印刷装置1Lについて説明する。なお、説明にあたり、上述した実施形態と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
実施形態1では、印刷装置1が備える印刷部100が、シリアルプリンターである場合について説明したが、ラインプリンターであっても良い。
印刷装置1Lは、実施形態1における印刷部100に代わり、印刷部100Lを備えている。印刷部100Lは、画像処理部110から受信する印刷データに基づいて、印刷媒体5に所望の画像を印刷するインクジェット式のラインプリンターである。
【0074】
印刷部100Lは、インク付与部10L、移動部20L、印刷制御部30などから構成されている。画像処理部110から印刷データを受信した印刷部100Lは、印刷データに基づき、印刷制御部30によってインク付与部10L、移動部20Lを制御し、印刷媒体5に画像を印刷する。
インク付与部10Lは、ヘッドユニット11L、インク供給部12、ギャップ調整部15Lなどから構成されている。
移動部20Lは、搬送部50などから構成されている。搬送部50は、供給部51、収納部52、搬送ローラー53、プラテン55などから構成されている。
【0075】
ヘッドユニット11Lは、ヘッド13Lおよびヘッド制御部14Lを備えている。ヘッドユニット11Lは、ヘッド13Lの下面が、プラテン55が印刷媒体5を支持する印刷領域に対向して配置されるように固定支持されている。
図24に示すように、ヘッド13Lは、図3に示すヘッド13を下面から見て左に90°回転させた構成になっている。なお、ヘッド13Lは、説明を簡単にするため、配置される向きを除いて、ヘッド13と同じ構成で示しているが、ヘッドユニット135の長さ、つまり、ヘッドユニット135が有する個別ヘッド134の数は、印刷部100が印刷の対象とする印刷媒体5の最大幅に対応させた数であることが望ましい。
ギャップ調整部15Lは、印刷制御部30の制御に基づき、ヘッドユニット11Lの支持位置あるいは、プラテン55の支持位置をZ軸方向において変更可能な支持機構を備えている。
【0076】
印刷制御部30は、供給部51、搬送ローラー53によって印刷領域に供給された印刷媒体5に対し、ヘッド13Lからインク滴を吐出する動作と、搬送ローラー53によりY軸方向に印刷媒体5を移動させる動作とを繰り返すことにより、印刷媒体5に所望の画像を印刷する。
【0077】
本実施形態においては、相対移動方向が、搬送方向、つまりY軸方向となる。従って、図4図8を参照して説明した着弾位置ずれは、Y軸方向で発生する。
本実施形態のテストパターンとしては、実施形態1におけるテストパターンTpに代り、図25に示すテストパターンTpLとなる。テストパターンTpLは、Y軸方向におけるインク滴の着弾位置のずれに係る情報が検出できるパッチPtmnを有すれば良いため、必ずしも、実施形態1と同じ形状の画像Gjkを有する必要はない。テストパターンTpLとして印刷される画像Gjkは、ヘッド13Lと印刷媒体5との相対移動方向、つまりY軸方向において線対称であればよい。
【0078】
すなわち、印刷装置1Lにおいて、移動部20は、ヘッド13Lと印刷媒体5とを、ノズル列方向に相対移動させ、複数のパッチPtmnは、ヘッド13Lが印刷媒体5に対してノズル列方向に相対移動する前後において印刷されるパッチPtmnを含んでいる。
【0079】
本実施形態の液体吐出装置においても、ヘッド13Lと印刷媒体5との相対移動方向において発生するインク滴の着弾位置ずれを補正するための補正値の候補が複数得られるため、得られた複数の補正値の候補を統計処理することにより、適切な補正値を導出することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態では、それぞれ、テストパターンTp、テストパターンTpLが1つの場合について説明したが、それぞれ、テストパターンTp、テストパターンTpLを複数印刷し、複数のテストパターンTp、テストパターンTpLから得られる複数のインク滴の着弾位置ずれに係る情報に基づき適切な補正値を導出するように構成してもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、印刷部100、印刷部100Lが、ロール状に巻かれた状態で供給される長尺状の印刷媒体5を対象とするインクジェットプリンターであるとして説明したが、印刷媒体としては、ロール状の印刷媒体5に限定するものではなく、枚葉式の単票紙などであっても良い。枚葉式の用紙の場合には、供給部51に換わり、例えば、用紙を1枚ずつ供給するためのセパレーターを含む供給機構が備えられる構成となり、また収納部52に換わり、例えば、印刷後に排出される用紙を収納する収納トレーなどが備えられる構成となる。このような印刷装置の場合、インク滴の着弾位置ずれを補正するための補正値の候補が複数得られる複数のパッチPtmnを有するテストパターンであれば、複数の用紙に亘って印刷されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…印刷装置、5…印刷媒体、10…インク付与部、11…ヘッドユニット、12…インク供給部、13…ヘッド、14…ヘッド制御部、15…ギャップ調整部、20…移動部、30…印刷制御部、31…装置内インターフェイス、32…CPU、33…メモリー、34…駆動制御部、35…移動制御信号生成回路、36…吐出制御信号生成回路、37…駆動信号生成回路、38…ギャップ制御回路、40…走査部、41…キャリッジ、42…ガイド軸、50…搬送部、51…供給部、52…収納部、53…搬送ローラー、55…プラテン、60…制御部、100…印刷部、110…画像処理部、111…画像制御部、112…入力部、113…表示部、114…記憶部、115…CPU、116…ASIC、117…DSP、118…メモリー、119…装置内インターフェイス、120…汎用インターフェイス、131…ノズル、132…ノズル列、132A…ノズル列、132B…ノズル列、132SA…基準ノズル列、133…ノズルチップ、134…個別ヘッド、135…ヘッドユニット、Ptmn…パッチ、Gjk…画像、Tp…テストパターン、WG…ワークギャップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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