(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】役物装置
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
(21)【出願番号】P 2020163606
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】川本 竜二
【審査官】佐藤 嘉純
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148143(JP,A)
【文献】特開2013-251053(JP,A)
【文献】特開2012-057776(JP,A)
【文献】特開平09-127397(JP,A)
【文献】特開2010-136852(JP,A)
【文献】特許第7463927(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
A63F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
役物と、該役物を動作させるボイスコイルモータと、を備え、
前記ボイスコイルモータは、
有底円筒状のケースと、
前記ケースの内側の中央底部に配設された円筒状の外周面を有する永久磁石と、
前記永久磁石における前記ケースとは反対側に配設された前記永久磁石と同径のヨークと、
ボビンと、
前記ボビンに巻回されたコイル部と、を備えたボイスコイルモータと、を備え、
前記役物は、前記ケース又は前記ボビンの何れか可動する方に取り付けられ、
前記コイル部は、
前記永久磁石による磁束と鎖交する、駆動コイルであると共に差動トランスの1次コイルを兼ねる駆動兼1次コイルと、
前記差動トランスの2つの2次コイルと、を含み、
前記ヨークは、前記コイル部の中央の空間に配設され、前記差動トランスの鉄芯を兼ねる役物装置。
【請求項2】
前記2つの2次コイルは、前記駆動兼1次コイルの外周に重ねて巻回されている請求項1に記載の役物装置。
【請求項3】
前記2つの2次コイルは、前記駆動兼1次コイルの軸方向の両側に巻回されている請求項1に記載の役物装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の役物装置の駆動制御装置であって、
高周波電流を発生させる発振器と、
前記ボイスコイルモータにおける可動側の目標位置を示す信号に前記発振器で発生させた高周波電流が重畳された信号を増幅して前記駆動兼1次コイルに供給する駆動部と、
前記ボイスコイルモータの前記2つの2次コイルに誘起される各電圧が入力され、該各電圧に基づいて前記可動側の位置を示す位置信号を出力する処理部と、
前記処理部より出力される前記位置信号に基づいて、前記駆動部に入力される前記目標位置を示す信号を補正する補正部と、を備える駆動制御装置。
【請求項5】
前記高周波電流の周波数は、ボイスコイルモータの応答周波数よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1、2又は3に記載の役物装置と、
請求項4又は5に記載の駆動制御装置と、を備える遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に搭載される役物装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技機の役物装置における直線可動(以下、直動とも記載する)の制御には、回転型ステッピングモータに、ラック&ピニオンやカム等の回転運動を直線往復運動に変換する回転直動変換機構を組み合わせる方式がある(例えば、特許文献1)。また、別の方式として、直線可動のボイスコイルモータ(以下、VCMと記載する)を電流制御する構成もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転直動変換機構を用いる構成では、回転直動変換機構におけるガタに起因して滑らかな動作が困難である。具体的には、直線可動の方向を反転させるときに、方向の反転を滑らかに行うことができない。そのため、例えば、物体が浮遊するような滑らかな動きを実現できない。また、周囲温度変化又は構成部品の個体差の影響を受けて、目標位置と動作位置との間にずれが生じるといった解題もある。
【0005】
これに対し、直線可動のVCMを用いる構成は、回転直動変換機構を用いる構成に比べて直線可動の方向の反転は滑らかに行うことができる。しかしながら、回転直動変換機構と同様に、周囲温度変化又は構成部品の個体差の影響を受けて、目標位置と動作位置との間にずれが生じる。特に、永久磁石を用いているので、周囲温度の上昇又は通電による駆動コイルの発熱等によって永久磁石の温度が上昇すると磁力の低下が起こり、一定振幅の電流で駆動していても変位振幅が減少する。
【0006】
なお、目標位置と動作位置との間のずれは、変位センサを設けて動作位置を検出(変位検出)し、動作位置と目標位置とのずれを無くすように制御することで解決できる。しかしながら、その場合、役物を動作させる駆動機構が肥大化すると共にコストアップを招くという課題がある。
【0007】
本発明は、役物を動作させる駆動機構の肥大化およびコストアップを抑制しつつ、常に所望の動作を実現することが可能な役物装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用している。
【0009】
すなわち、本発明の一側面に係る役物装置は、役物と、該役物を動作させるボイスコイルモータと、を備え、前記ボイスコイルモータは、有底円筒状のケースと、前記ケースの内側の中央底部に配設された円筒状の外周面を有する永久磁石と、前記永久磁石における前記ケースとは反対側に配設された前記永久磁石と同径のヨークと、ボビンと、前記ボビンに巻回されたコイル部と、を備えたボイスコイルモータと、を備え、前記役物は、前記ケース又は前記ボビンの何れか可動する方に取り付けられ、前記コイル部は、前記永久磁石による磁束と鎖交する、駆動コイルであると共に差動トランスの1次コイルを兼ねる駆動兼1次コイルと、前記差動トランスの2つの2次コイルと、を含み、前記ヨークは、前記コイル部の中央の空間に配設され、前記差動トランスの鉄芯を兼ねる役物装置。
【0010】
上記構成によれば、駆動兼1次コイルに駆動電流を流すと、フレミング左手の法則に従って駆動兼1次コイルの軸方向に沿った推力(ローレンツ力)が発生し、ケース、永久磁石およびヨークを含む磁石側と、ボビンおよびコイル部を含むコイル側とが、相対的に変位する。さらに、駆動兼1次コイルと2つの2次コイルを含むコイル部と、コイル部の中央の空間に配設されたヨークとで、差動トランスからなる変位センサが構成される。駆動兼1次コイルを交流電源で駆動することで、2つの2次コイルに誘起される電圧の差から、磁石側とコイル側との相対位置を検出することができる。
【0011】
このように、上記構成によれば、ボイスコイルモータを構成するコイルおよびヨークを、変位を検出するための差動トランスの励起用の1次コイルおよび鉄芯に兼用している。したがって、部品的には2つの二次コイルを追加するだけで、相対位置を検出するための差動トランスをボイスコイルモータに内蔵させることができる。
【0012】
上記一側面に係る役物装置において、前記2つの2次コイルは、前記駆動兼1次コイルの外周に重ねて巻回されていてもよい。当該構成によれば、駆動機構であるボイスコイルモータの軸方向の外形サイズを変えることなく、差動トランスからなる変位センサを内蔵させることができる。
【0013】
上記一側面に係る役物装置において、前記2つの2次コイルは、前記駆動兼1次コイルの軸方向の両側に巻回されていてもよい。当該構成によれば、駆動機構であるボイスコイルモータの径方向の外形サイズを変えることなく、差動トランスからなる変位センサを内蔵させることができる。
【0014】
本発明の一側面に係る駆動制御装置は、上記一側面に係る役物装置の駆動制御装置であって、高周波電流を発生させる発振器と、前記ボイスコイルモータにおける可動側の目標位置を示す信号に前記発振器で発生させた高周波電流が重畳された信号を増幅して前記駆動兼1次コイルに供給する駆動部と、前記ボイスコイルモータの前記2つの2次コイルに誘起される各電圧が入力され、該各電圧に基づいて前記可動側の位置を示す位置信号を出力する処理部と、前記処理部より出力される前記位置信号に基づいて、前記駆動部に入力される前記目標位置を示す信号を補正する補正部と、を備える。
【0015】
上記構成によれば、駆動部は、可動側の目標位置を示す信号に発振器で発生させた高周波電流が重畳された信号を増幅して駆動兼1次コイルに供給する。処理部は、2つの2次コイルに誘起される各電圧に基づいて前記可動側の位置を示す位置信号を出力する。つまり、磁石側とコイル側との相対位置を示す位置信号を出力する。補正部は、処理部より出力された位置信号に基づいて、駆動部に入力される目標位置を示す信号を補正する。
【0016】
上記一側面に係る駆動制御装置において、前記高周波電流の周波数は、ボイスコイルモータの応答周波数よりも高い構成としてもよい。当該構成によれば、重畳される高周波電流によってボイスコイルモータが変位することが起らず、高精度な位置制御が可能となる。
【0017】
上記一側面に係る駆動制御装置において、前記高周波電流の周波数は、ボイスコイルモータの応答周波数よりも高い構成としてもよい。当該構成によれば、重畳される高周波電流によってボイスコイルモータが変位することが起らず、高精度な位置制御が可能となる。
【0018】
本発明の一側面に係る遊技機は、上記一側面に係る役物装置と、上記一側面に係る駆動制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、役物を動作させる駆動機構の肥大化およびコストアップを抑制しつつ、常に所望の動作を実現することが可能な役物装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施の形態に係る役物装置の部分縦断面図である。
【
図2】本実施の形態に係る役物装置が備えるVCMの分解斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係る役物装置が備えるVCMの駆動兼1次コイルに流す駆動電流の一例を示す波形図である。
【
図4】
図3に示す駆動電流を駆動兼1次コイルに流した場合のVCMの変位の一例を示す図である。
【
図5】本実施の形態に係る役物装置が備えるVCMにおける変位センサの動作原理を説明する図である。
【
図6】本実施の形態に係る役物装置が備えるVCMにおける、可動部の変位と、その際の2次コイル上および2次コイル下に誘起される電圧信号の一例を示す図である。
【
図7】本実施の形態に係る役物装置が備えるVCMおよびコントロールドライバを含む制御ブロック図である。
【
図8】本実施の形態に係る役物装置の斜視図である。
【
図9】本実施の形態に係る役物装置における可動部の変位による役物の動きのイメージを示す図である。
【
図10】本実施の形態に係る役物装置が搭載された遊技機の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一側面に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0022】
§1 適用例
まず、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図10は、本実施形態に係る役物装置50の適用例を例示するもので、役物装置50が搭載されている遊技機100の構成を示す斜視図である。遊技機100はパチンコ機であるが、パチスロ機、ゲーム機等であってもよい。
【0023】
図10に示すように、遊技機100は、遊技領域101、ハンドル102、上球皿103、下球皿104等を備えている。遊技領域101は、ハンドル102によって打ち出された遊技球(遊技媒体)が移動する領域である。ハンドル102は、遊技球の発射操作を行うための装置であり、利用者がハンドル102を回した状態で保持すると、遊技球が連続発射されて遊技領域101に打ち出される。
【0024】
上球皿103は、遊技において獲得した遊技球、または、球貸し操作にて貸し出された遊技球が貯留され、下球皿104は、上球皿103から溢れた遊技球が貯留される。つまり、遊技領域101に設けられた入賞口(不図示)に遊技球が入賞すると、入賞口に応じて設定されている数の遊技球が、遊技機100の背面側に設置された球払出装置(不図示)より上球皿103または下球皿104に払い出される。
【0025】
役物装置50の駆動機構であるボイスコイルモータ(以下、VCMと記載)1は、VCM本体の部品を差動トランスからなる変位センサに兼用して用いることで、外形形状の肥大化およびコスト上昇を抑制しつつ、変位検出が可能となる。これにより、大きな設置スペースを必要とすることなく、かつコスト上昇を極力おさえつつ、
図9に示すような、可動部20に取り付けられた役物51が、ゆらゆらと水面に浮いているように滑らかに上下動する浮遊動作を行う役物装置を実現できる。
【0026】
§2 構成例
以下、本発明の一側面における実施の形態を、
図1~
図9に基づいて例示する。
【0027】
(VCM1の構成)
図1は、本実施の形態に係る役物装置50の部分縦断面図である。
図2は、本実施の形態に係る役物装置50が備えるVCM1の分解斜視図である。
図1、
図2に示すように、VCM1は、ボビン2と、コイル部3と、リード線4と、裏蓋5と、ケース6と、永久磁石7と、ヨーク兼鉄芯8と、を備える。
【0028】
ボビン2は、コイル部3を巻回させるための有底筒状の部品であり、一般的には樹脂より形成されている。コイル部3は、駆動兼1次コイル11と、2つの2次コイル12A,12Bと、を含み、ボビン2における円筒部2aに巻回されている。
【0029】
駆動兼1次コイル11は、永久磁石7を有する可動部20を駆動させるためのVCM本体の駆動コイルであると共に、可動部20の位置を検出する差動トランスからなる変位センサ9の励起用の1次コイルでもある。2次コイル12A,12Bは、変位センサ9の検出用の2つの2次コイルである。詳細については後述するが、変位センサ9は、駆動兼1次コイル11と、2つの2次コイル12A,12Bと、ヨーク兼鉄芯8と、から構成されている。
【0030】
本実施形態では、円筒部2aに駆動兼1次コイル11が巻回され、該駆動兼1次コイル11の外周に、2つの2次コイル12A,12Bが重ねて巻回されている。2つの2次コイル12A,12Bは、軸方向に並んで配置されている。軸方向とは、コイル部3の中心軸線X(
図2参照)の方向であり、ここでは上下方向である。以降、上側に位置する2次コイル12Aを2次コイル上12A、下側に位置する2次コイル12Bを2次コイル下12Bと称する。
【0031】
コイル部3のこれら各コイル11,12A,12Bは、ボビン2の底部2bの裏側においてリード線4と半田付けされている。各コイル11,12A,12Bは、リード線4を介して外部機器と接続される。なお、
図2においては、リード線4を2本のみ記載している。底部2bの裏側には裏蓋5が配され、半田付け部分を保護するようになっている。また、底部2bは、鍔状に延設され、延設された部分にVCM1を筐体等に螺子(図示せず)等で固定するための取り付け穴2cが形成されている。つまり、本実施の形態においては、駆動兼1次コイル11のある側が固定されるようになっており、ボビン2、コイル部3、リード線4および裏蓋5にて、固定部10が構成されている。
【0032】
ケース6は、有底円筒状をなし、該ケース6内側の中央底部に円筒状の外周面を有する永久磁石7が配設されている。永久磁石7は、ケース6に吸着または接着することで固定されている。
【0033】
ヨーク兼鉄芯8は、永久磁石7におけるケース6とは反対側に配設されている。ヨーク兼鉄芯8は、永久磁石7に吸着または接着することで固定されている。ヨーク兼鉄芯8は、永久磁石7と同径に構成されており、VCM本体のヨークであると共に、変位センサ9の鉄芯でもある。ケース6およびヨーク兼鉄芯8は、鉄より形成されるのが一般的である。
【0034】
なお、本実施の形態では、永久磁石7およびヨーク兼鉄芯8はそれぞれリング状に形成されているが、同径の円柱状であってもよい。これらケース6、永久磁石7およびヨーク兼鉄芯8にて、可動部20が構成されている。
【0035】
永久磁石7は、軸方向より平面視した可動部20の中央部に位置し、軸方向と平行な着磁方向を有する。ケース6およびヨーク兼鉄芯8は、永久磁石7を着磁方向に挟むように配置されている。
【0036】
永久磁石7の磁束は、図中の矢印Xに示すように、ヨーク兼鉄芯8を経由して、エアギャップG(磁気空隙)を飛び、ケース6を通って永久磁石7へ戻る。駆動兼1次コイル11は、永久磁石7による磁束と鎖交するように、エアギャップGに配置されている。
【0037】
(VCM1の動作)
エアギャップに鎖交する駆動兼1次コイル11に通電することで、フレミングの左手の法則に従う方向に電磁力が発生する。本例では駆動兼1次コイル11が固定されているため、反力にて永久磁石7を有する側が可動部20となり、軸方向に沿った推力を発生する。なお、本例とは逆に、永久磁石7を有する側を固定し、駆動兼1次コイル11を有する側を可動させる構成とすることもできる。
【0038】
(駆動電流と可動部20の変位との関係)
図3は、本実施の形態に係る役物装置50が備えるVCM1の駆動兼1次コイル11に流す駆動電流の一例を示す波形図である。
図4は、
図3に示す駆動電流を駆動兼1次コイル11に流した場合のVCM1の変位(可動部20の変位)の一例を示す図である。
【0039】
図3に示すように、駆動兼1次コイル11には、通常の可動部20を上下動させるための矩形波の駆動電流Cに、変位検出のための高周波電流Fが重畳された形で流される。
図3において、縦軸の数値は、後述する駆動電流がゼロの下位置(
図5の符号502で示す図)から中央位置(
図5の符号500で示す図)に可動部20をポップアップさせるために必要な直流電流Pに加算する電流値(加算電流値)である。中央位置が可動部20の変位の基準位置である。
【0040】
図4に示すように、加算電流値がゼロの状態で可動部20は変位ゼロの位置を保持する。加算電流値が正である場合、駆動電流は直流電流Pよりも大きくなるので、可動部20は現在位置から上方に向かって移動する。加算電流値が負である場合、駆動電流は直流電流Pよりも小さく、あるいは逆向きの電流となるため、可動部20は現在位置から下方に向かって移動する。可動部20の移動加速度は、加算電流値の絶対値に比例し、加算電流値が大きい程加速度が増す。
【0041】
(変位センサ9)
図1、
図2に示すように、可動部20の位置を検出する変位センサ9は、駆動兼1次コイル11と、2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bと、ヨーク兼鉄芯8とから構成される。このうち、駆動兼1次コイル11およびヨーク兼鉄芯8は、VCM本体の構成部品であり、兼用している。変位センサ9の動作原理は差動トランスと同じである。
【0042】
図5を用いて変位センサ9の動作原理を説明する。
図5は、本実施の形態に係る役物装置50が備えるVCM1における変位センサ9の動作原理を説明する図である。符号500で示す図が、可動部20が中央位置にある状態を示し、符号501で示す図が、可動部20が中央位置よりずれた上位置にある状態を示し、符号502で示す図が、可動部20が中央位置よりずれた下位置にある状態を示す。中央位置が、
図3において加算電流ゼロの状態の位置であり、
図4における変位ゼロの基準位置である。
【0043】
駆動電流Cに重畳された高周波電流Fにて駆動兼1次コイル11に励起された磁束は、ヨーク兼鉄芯8を通って駆動兼1次コイル11に戻る。これにより、2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bに電圧が誘起される。2次コイル上12Aに誘起される電圧と、2次コイル下12Bに誘起される電圧とには、ヨーク兼鉄芯8の位置によって差が生じる。
【0044】
詳細には、ヨーク兼鉄芯8とコイル部3との相対位置の変化により、2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bの、駆動兼1次コイル11に対応する相互インダクタンスが変化する。符号500の可動部20が中央位置にある状態では、ヨーク兼鉄芯8はコイル部3の上下方向の真中にある。コイル部3の上下方向の真中を一点鎖線Yにて示す。この状態では、駆動兼1次コイル11と2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bとの相互インダクタンスが等しい。そのため、2次コイル上12Aの出力電圧および2次コイル下12Bの出力電圧は等しくなり、差分はゼロとなる。
【0045】
符号501の可動部20が上位置にある状態では、ヨーク兼鉄芯8は、コイル部3の上下方向の上側にある。この状態では、駆動兼1次コイル11と2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bとの相互インダクタンスは、2次コイル上12Aで増加し、2次コイル下12Bで減少する。そのため、2次コイル上12Aと2次コイル下12Bとの間には、各々の誘起電圧の差に相当する電圧が生じる。
【0046】
符号502で示す、可動部20が下位置にある状態では、ヨーク兼鉄芯8は、コイル部3の上下方向の下側にある。この状態では、駆動兼1次コイル11と2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bとの相互インダクタンスは、2次コイル上12Aで減少し、2次コイル下12Bで増加する。そのため、2次コイル上12Aと2次コイル下12Bとの間には、各々の誘起電圧の差に相当する電圧が生じる。可動部20が上位置にある状態と下位置にある状態とでは、差に相当する電圧の極性が逆になる。
【0047】
このように、可動部20の位置に応じて2次コイル上12Aと2次コイル下12Bに誘起される電圧に差が生じるため、これら2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bから出力される信号から、可動部20の変位を示す電圧信号(以下、変位信号)を得ることができる。
【0048】
図6は、本実施の形態に係る役物装置50が備えるVCM1における、可動部20の変位と、その際の2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bに誘起される電圧信号の一例を示す図である。
図6に示すように、可動部20が中央位置にある変位ゼロの時間T0,T2,T4,T6、T8,T10,T12、T14では、2次コイル上12Aの出力電圧(振幅)および、2次コイル下12Bの出力電圧(振幅)は等しくなる。
【0049】
可動部20が中央位置よりも上方に変位している時間(期間)T1,T5,T9,T13では、2次コイル上12Aの出力電圧(振幅)が大きくなり、2次コイル下12Bの出力電圧(振幅)が小さくなる。
【0050】
逆に可動部20が中央位置よりも下方に変位している時間(期間)T3,T7,T11では、2次コイル下12Bの出力電圧(振幅)が大きくなり、2次コイル上12Aの出力電圧(振幅)が小さくなる。
【0051】
(VCM1の制御ブロック)
図7は、本実施の形態に係る役物装置50が備えるVCM1およびコントロールドライバ30を含む制御ブロック図である。コントロールドライバ(駆動制御装置)30は、VCM1の駆動を制御する駆動制御装置である。コントロールドライバ30には、主制御部40から可動部20の目標位置が入力される。コントロールドライバ30は、可動部20の位置が目標位置となるようにVCM1を駆動する。主制御部40は、例えば遊技機100に搭載されている演出用の制御装置である。
【0052】
コントロールドライバ30は、ドライバ回路(駆動部)31と、センサ処理回路(処理部)32と、PID演算器(補正部)33と、発振器34と、を備えている。
【0053】
発振器34は、変位検出のための高周波電流Fを生成する。ドライバ回路31は、主制御部40から入力されるVCM1の可動部(可動側)20の目標位置を示す信号に発振器34で発生させた高周波電流が重畳された信号を増幅して駆動兼1次コイルに供給する。目標位置を示す信号を増幅したものが駆動電流Cであり、駆動電流Cには、高周波電流Fが重畳されている(
図3参照)。
【0054】
センサ処理装置32には、VCM1の2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bより出力される各電圧信号が入力される。センサ処理装置32は、入力された2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bの各電圧信号に基づいて、可動部20の変位に比例した現在位置を示す現在位置信号に変換する。つまり、センサ処理装置32は、入力された2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bの各電圧信号に基づいて可動部20の位置を示す位置信号を出力する。
【0055】
PID(比例積分微分)演算器33は、センサ処理装置32より出力された位置信号に基づいて、ドライバ回路31に入力される目標位置を示す信号を補正する。PID演算器33には、主制御部40から送信される目標位置と現在位置信号に示される現在位置との差分が入力される。PID演算器33は、目標位置と現在位置との差分を比例積分微分演算し、可動部20を目標位置へ移動させるための演算結果の信号(補正された目標位置を示す信号)を出力する。PID演算器33からの演算結果の信号に発振器34で生成した高周波電流Fが重畳されてドライバ回路31へ送られる。
【0056】
ドライバ回路31は、高周波電流Fが加算されたPID演算器33からの演算結果の信号を電力増幅して高周波電流Fが重畳された駆動電流を生成し、VCM1の駆動兼1次コイル11に供給する。これにより、可動部20が目標位置に正確に移動する。
【0057】
ここで、発振器34にて生成される高周波電流Fの周波数は、VCM1の応答周波数よりも高いことが好ましい。これにより、重畳される高周波電流FによってVCM1が変位することがなく、高精度な位置制御が可能となる。
【0058】
(VCM1の効果)
上記構成によれば、VCM1の駆動コイルを差動トランスからなる変位センサ9の1次コイルに兼用して駆動兼1次コイル11とし、駆動電流Cに可動部20の位置を検出するための高周波電流Fを重畳させる。そして、VCM1の永久磁石7と一体に動くヨークを変位センサの鉄芯に兼用してヨーク兼鉄芯8として用いる。これにより、2つの2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bを追加するのみで、変位センサ9を内蔵させて、可動部20の位置を示す信号をVCM1から出力することができ、位置フィードバック制御が可能となる。
【0059】
VCMの部品を兼用して変位センサ9を構成することで、変位検知器又は容量センサ等の別部品を外付けする構成に比べて、外形を小型化し、かつ、コストの削減も可能になる。
【0060】
また、検出用の2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bは、駆動兼1次コイル11と同一ボビンに、マグネットワイヤーを巻回する構造であり、スケール等をネジ止めする構成に比べて、VCM本体と一体化されている。したがって、変位検知器又は容量センサ等をVCM本体に外付けする構成の場合に生じる取り付け誤差が生じず、検出精度がより高くなる。また、経年による位置ずれなどの誤差要因も本質的に発生しない。
【0061】
さらに、上記構成では、2次コイル上12Aおよび2次コイル下12Bを駆動兼1次コイルの外周に重ねて巻回している。このような構成とすることで、軸方向の外形サイズを変えることなく、変位センサ9を内蔵させることができる。
【0062】
また、別の構成として、2つの2次コイルを、駆動兼1次コイルの軸方向の両側に巻回してもよい。このような構成とすることで、径方向の外形サイズを変えることなく、変位センサ9を内蔵させることができる。
【0063】
(VCM1を用いた役物装置)
図8は、本実施の形態に係る役物装置50の斜視図である。可動部20におけるケース6の上面にアヒルの役物51が取り付けられている。
図9は、役物装置50における可動部20の変位による役物51の動きのイメージを示す図である。
【0064】
VCM1からは、可動部20の位置を示す信号は出力されるので、該信号を用いてコントロールドライバ30にて、位置フィードバック制御が可能となる。その結果、可動側に含まれる部材(役物51、ケース6、永久磁石7、およびヨーク兼鉄芯8)の重さのバラツキに起因する負荷重量のばらつきがあっても、可動部20、つまり役物51を目標位置に正確に移動させることができる。
【0065】
同様に、周囲温度の変化、通電による駆動兼1次コイル11の自己発熱等により永久磁石7の温度が上昇して磁力の低下が起こっても、つまり役物51を目標位置に正確に移動させることができる。
【0066】
役物51を目標位置に正確に移動させることができることで、例えば、
図9に示すような、役物51がゆらゆらと水面に浮いているように滑らかに上下動する浮遊動作を行わせることができる。
【0067】
(ソフトウェアによる実現例)
コントロールドライバ30の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0068】
後者の場合、コントロールドライバ30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0069】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 VCM(ボイスコイルモータ)
2 ボビン
3 コイル部
6 ケース
7 永久磁石
8 ヨーク兼鉄芯
9 変位センサ
10 固定部
11 駆動兼1次コイル
12A 2次コイル上
12B 2次コイル下
20 可動部
30 コントロールドライバ(駆動制御装置)
31 ドライバ回路(駆動部)
32 センサ処理装置(処理部)
33 PID演算器(補正部)
34 発振器
40 主制御部
50 役物装置
51 役物
100 遊技機