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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】壁面構造体及び壁面構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240806BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G09F9/00 302
G09F9/00 304
G09F9/00 351
E04F13/08 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020169261
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061327
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】武田 忠
(72)【発明者】
【氏名】桑村 健介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 丈太郎
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219480(JP,A)
【文献】特開2016-031396(JP,A)
【文献】特開2012-180464(JP,A)
【文献】特開2012-051379(JP,A)
【文献】特開2020-002594(JP,A)
【文献】特開2015-174937(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122485(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H05B 33/00-33/28
44/00
45/60
H10K 50/00-99/00
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイと、
前記ディスプレイを保護する保護板と、
前記ディスプレイおよび前記保護板の前面にあって映像光を透過する化粧シートと、
前記ディスプレイを支持する支持体と、を備え、
前記保護板は、透明樹脂及びガラス繊維を含有し、
前記化粧シートは木目模様又は石目調のうち少なくともいずれかの絵柄を有し、
前記支持体は、開口部及び設置対象の壁面に接合可能な接合部を有する枠状部材であり、前記開口部が縦長形状であって該開口部内に配置された前記ディスプレイの高さ方向の位置を調整可能に構成されている
ことを特徴とする壁面構造体。
【請求項2】
前記保護板は、透過性を有する樹脂複合板であって前記化粧シートと貼り合わされている
ことを特徴とする請求項1に記載の壁面構造体。
【請求項3】
前記ガラス繊維はガラスクロスであって、前記ガラスクロスの坪量が50g/m以上200g/m以下の範囲である
ことを特徴する請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項4】
前記ガラス繊維の厚みが0.5mm以上4.0mm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の壁面構造体。
【請求項5】
前記透明樹脂として、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂又はジアレルフタレート系樹脂のうち少なくともいずれか一種類の硬化性樹脂を用いる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の壁面構造体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の壁面構造体の製造方法であって、
前記壁面側から順に、前記ディスプレイを支持する前記支持体、前記保護板、及び前記化粧シートを積層し、
前記ディスプレイの前面側に配置される前記保護板は、前記透明樹脂及び前記ガラス繊維を熱プレス成型して形成された化粧板である
ことを特徴とする壁面構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイを内蔵した壁面に関し、特にディスプレイ消灯時には普通の壁面に見えており、ディスプレイ点灯時には壁に画像が出現する壁面の構造に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
一見壁面に見えて、実は内部にディスプレイを内蔵しており、必要な時に必要な情報が表示される壁面構造としてディスプレイ内蔵壁面が知られている。ディスプレイ内蔵壁面においては、画像が鮮明であることが重要である。画像が鮮明なディスプレイ内蔵壁面としては、例えばディスプレイの保護板(表蓋)の裏側にディスプレイ収納部を設けて、ディスプレイと擬似壁面(保護板に貼付された化粧シート)との間に隙間が生じ難くする構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-219480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のディスプレイ内蔵壁面では、保護板としてアクリル板が用いられていた。しかしながら、アクリル板にはディスプレイが発する熱によって歪みが生じる場合があり、耐熱性について改善の余地があった。また、アクリル板に歪みが生じることに伴いディスプレイの表示(画像等)の視認性が低減していた。
【0005】
本発明はこのような点を解決するためになされたものであり、優れた耐熱性を有し、保護板の歪みを抑制可能であってディスプレイ表示の視認性が良好な壁面構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である壁面構造体は、ディスプレイと、前記ディスプレイを保護する保護板と、前記ディスプレイおよび前記保護板の前面にあって映像光を透過する化粧シートと、前記ディスプレイを支持する支持体と、を備え、前記保護板は、透明樹脂及びガラス繊維を含有し、前記化粧シートは木目模様又は石目調のうち少なくともいずれかの絵柄を有し、前記支持体は、開口部及び設置対象の壁面に接合可能な接合部を有する枠状部材であり、前記開口部が縦長形状であって該開口部内に配置された前記ディスプレイの高さ方向の位置を調整可能に構成されている
また上記課題を解決するために、本発明の一態様である上記壁面構造体の製造方法は、前記壁面側から順に、前記ディスプレイを支持する前記支持体、前記保護板、及び前記化粧シートを積層し、前記ディスプレイの前面側に配置される前記保護板は、前記透明樹脂及び前記ガラス繊維を熱プレス成型して形成された化粧板である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、優れた耐熱性を有し、保護板の歪みを抑制可能であるとともに、画像の視認性が良好な壁面構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面の一例を示した平面模式図であり、ディスプレイが点灯した状態を示したものである。
図2】本発明の第1実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面の一例を示した平面模式図であり、ディスプレイが消灯した状態を示したものである。
図3】本発明の第1実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面を高さ方向に切断した断面構造を模式的に示した断面模式図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面を幅方向に切断した断面構造を模式的に示した断面模式図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面における支持体と下地壁面との接合例を示す断面模式図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面を高さ方向に切断した断面構造を模式的に示した断面模式図である。
図7】本発明の第2実施形態の変形例に係るディスプレイ内蔵壁面を模式的に示した部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明を行う。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部材の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
また、以下、本発明の実施形態によるディスプレイ内蔵壁面の説明において、ディスプレイ内蔵壁面の正面に相対した人物から見て左側を左とし、当該人物から見て右側を右とし、当該人物から見て上側を上とし、当該人物から見て下側を下とし、当該人物から見て手前側を前とし、当該人物から見て奥側を後とする。
【0011】
<第1実施形態>
[ディスプレイ内蔵壁面の構成]
図1は、本発明の第1実施形態(以下「本実施形態」という)に係るディスプレイ内蔵壁面の一例を示した平面模式図であり、ディスプレイが点灯した状態を示したものである。また図2は、ディスプレイが消灯した状態を示したものである。いずれも壁面の一部分を拡大して示したものである。
【0012】
図1図2に示すように、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1においては、壁面を構成する表蓋3の表面に化粧シート6が貼付されている。本例において、化粧シート6は木目模様の絵柄を有しているため、薄型ディスプレイ20は、表面からは見えないようになっている。図1に示すように、薄型ディスプレイ20が点灯した状態では、画像のみが化粧シート越しに視認できる。一方、図2に示すように、薄型ディスプレイ20が消灯あるいは無信号の状態では、普通の壁面にとして視認される。
【0013】
次に、図3から図5を用いて、本実施形態によるディスプレイ内蔵壁面1の各構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1の厚さ方向の断面構造を模式的に示した断面模式図である。また図4は、ディスプレイ内蔵壁面1の幅方向の断面構造を模式的に示した断面模式図である。
【0014】
図3および図4に示すように、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面(壁面構造体の一例)1は、薄型ディスプレイ20を内蔵した壁面構造である。具体的には、ディスプレイ内蔵壁面1は、薄型ディスプレイ20と、薄型ディスプレイ20を保護する保護板である表蓋3と、薄型ディスプレイ20および保護板の前面にあって映像光を透過する化粧シート6と、を備えている。
【0015】
詳しくは後述するが、図1および2に示すように、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、薄型ディスプレイ20は枠状の支持体4に支持されている。ディスプレイ内蔵壁面1は、支持体4が冶具や取り付け金具等によって下地壁面10に固定されることで、例えば設置空間の床11上に安定して設置される。なお、ディスプレイ内蔵壁面1は、設置空間において床11に接していなくてもよく、例えばディスプレイ内蔵壁面1は、床11との間に間隙を有する状態で下地壁面10に設置されていてもよい。ディスプレイ内蔵壁面1は、床11との間に間隙を有するように設置されてもよいし、間隙を有しないように設置されてもよい。
【0016】
ディスプレイ内蔵壁面1は、下地壁面10側から順に、薄型ディスプレイ20を支持する支持体4、表蓋3、化粧シート6が積層された構成を有している。化粧シート6は、支持体4の左右側部および表蓋3の前面を覆うように配置されている。ディスプレイ内蔵壁面1において、最前面が化粧シート6に覆われていることにより薄型ディスプレイ20が消灯あるいは無信号の状態であっても違和感のない壁面の一部として種々の空間に設置することができる。
【0017】
(薄型ディスプレイ)
本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1に用いる薄型ディスプレイ20としては、特に種類や輝度を限定するものではなく、任意のディスプレイを用いることができる。例えば、薄型ディスプレイ20は、LEDディスプレイや、通常の液晶ディスプレイの他、バックライトにLEDを用いた液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等であってもよいし、デジタルサイネージであってもよい。
【0018】
(支持体)
本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、支持体4は、薄型ディスプレイ20の周囲を囲む枠状の板金部材である。支持体4の材料は、薄型ディスプレイ20を支持可能な強度を確保できるものであればよく、特に限定するものではない。例えば、支持体4には、鉄製のカバー部材を用いることができる。また、支持体4の表面は、消灯時の薄型ディスプレイ20の画面や周縁部の色(例えば黒色)の近似色に着色されていることが好ましい。これにより、支持体4と薄型ディスプレイ20とに一体感が生じるとともに、化粧シート6による隠蔽性を向上することができる。
【0019】
支持体4は、矩形状の開口部4aを有している。図3および図4に示すように、薄型ディスプレイ20は、開口部4a内に配置されている。薄型ディスプレイ20は、左右側部が開口部4aの内周部に把持されるように支持されている。また、薄型ディスプレイ20の左右側部と支持体4の開口部4aの周縁とは、例えばアルミテープによって固定されてもよい。
【0020】
また、本実施形態において、支持体4の開口部4aは縦長形状であって、高さ方向において、薄型ディスプレイ20の高さ方向の長さよりも長く形成されている。このため、支持体4は、開口部4a内における薄型ディスプレイ20の高さ方向の位置を調整可能に構成されている。このため、例えば施工時において、ディスプレイ内蔵壁面1におけるディスプレイ表示の高さ方向の位置を、設置空間や用途に合わせて調整することができる。また、支持体4には、開口部4aにおいて薄型ディスプレイ20を固定するための固定装置が設けられていてもよい。これにより、支持体4は、薄型ディスプレイ20をより強固に支持することができる。
【0021】
図5は、下地壁面10に対して支持体4を接合する方法の一例を示す図である。図5に示すように、支持体4は、設置対象の壁面(本例では下地壁面10)に接合可能な接合部40を有している。本例では、支持体4の裏面に接合部40が設けられており、下地壁面10に設けられた台座12を介して、L字金具13をにより支持体4の接合部40が下地壁面10に固定(接合)されている。この場合、支持体4の接合部40には、例えばL字金具13を取り付けるためのねじ孔が設けられている。なお、本発明における支持体4と下地壁面10との接合方法は本例に限られない。支持体4と下地壁面10との接合には、設置環境等に応じて種々の治具を選択して用いればよい。例えば支持体4は、接合部40が下地壁面10に直接ねじ止めされることにより、下地壁面に対して固定されてもよい。
【0022】
本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1は、例えば支持体4の開口部4aに薄型ディスプレイ20を配置し、支持体4を下地壁面10と接合させた後に、表蓋3を支持体4に取り付け、さらに支持体4の側部および表蓋3の前面を化粧シート6で覆うことにより設置することができる。なお、ディスプレイ内蔵壁面1の設置対象となる下地壁面10は、強固な壁であることが望ましいが、これに限られない。また下地壁面10の表面は平坦面であってもよいし、例えば格子状の隙間のある構成であってもよい。また、ディスプレイ内蔵壁面1の設置対象は建造物の壁部に限られず、例えば可動式のパネル等に設置されてもよい。
【0023】
(表蓋)
本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、表蓋(保護板の一例)3は、薄型ディスプレイ20を保護する透明な板状部材であり、薄型ディスプレイ20の前面側に配置されている。本実施形態において表蓋3は、透過性を有する樹脂複合板であって化粧シート6と貼り合わされている。
【0024】
また本実施形態において、表蓋3は、透明樹脂及びガラス繊維を含有している。例えば、表蓋3を構成する板状部材は、透明樹脂にガラス繊維を練り込んで、形成されている。具体的には、表蓋3は、透明樹脂及びガラス繊維を熱プレス成型した板状部材として形成されている。ガラス繊維は耐熱性に優れているため、表蓋3にガラス繊維が含有されることで、薄型ディスプレイ20が発する熱によって表蓋3に歪みが発生することを抑制できる。ここで、表蓋にアクリル材を用いる場合とガラス繊維を用いる場合とにおける、耐熱性に関する比較結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
従来のディスプレイ内蔵壁面では、表蓋の材料としてアクリル材が用いられていた。しかしながら、表1に示すようにアクリル材を用いた表蓋の耐熱温度は80℃であり、ディスプレイの表面温度(モニター温度)が50℃の場合、表蓋に生じたパネル反りは1.2mmであった。ここで、パネル反りの値は、例えば支持体4を側面視した際の凸量及び凹量を、測定器にて測定することで得た値である。つまり、ディスプレイの発熱によってアクリル材を用いた表蓋には歪み(例えばS字状の反り)が生じ得る。表蓋に歪みが生じると、表蓋が平坦な状態に比べてディスプレイ表示の視認性が低減することとなる。
【0027】
これに対し、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1においてガラス繊維が含有される表蓋3の耐熱温度は180℃であり、アクリル材を用いる場合と比べて耐熱温度が100℃向上している。また、ガラス繊維を用いた場合、モニター温度が50℃の状態において、表蓋3におけるパネル反りは0mmであり、歪みが生じなかった。つまり、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1では、ガラス繊維が表蓋3に含有されることにより、薄型ディスプレイ20の発熱による歪みが表蓋3に生じず、表蓋3の表面が平坦な状態に維持される。このため、ディスプレイ表示について良好な視認性を確保することができる。
【0028】
このように、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1によれば、表蓋3に透明樹脂及びガラス繊維を含有することにより、優れた耐熱性を有し、保護板の歪みを抑制可能であってディスプレイ表示の視認性が良好な壁面構造体を提供することができる。
【0029】
本実施形態において表蓋3に用いるガラス繊維は、薄型ディスプレイ20の表示内容の透過を阻害しないガラス形態であればよく、編み込状であってもよいし、フィラー状であってもよい。例えば表蓋3には、ガラス繊維としてガラスクロスを用いてもよい。この場合、ガラスクロスの坪量が50g/m以上200g/m以下の範囲であることが好ましい。これにより、表蓋3の軽量化を図ることができるとともに、支持体4に対する負荷を軽減して支持体の劣化抑制を図ることができる。また熱膨張や重量との兼ね合いから、表蓋3に用いるガラス繊維の厚みは、0.5mm以上4.0mm以下の範囲内が好ましい。
【0030】
また表蓋3は、耐熱性に優れたガラス繊維を含有することにより、従来よりも厚み(肉厚)を低減することができる。これにより、ディスプレイ内蔵壁面1の薄型化が実現され、設置が容易になるとともに、種々の環境に設置することができる。例えば、薄型化(薄肉化)が実現することで、従来よりも狭い空間においても、ディスプレイ内蔵壁面1の設置を行うことができるようになる。また、多くの人が通行する場所でも、通行を妨げることなくディスプレイ内蔵壁面1を設置することができる。
【0031】
本実施形態において、表蓋3における透明樹脂には、硬化性樹脂を用いればよい。ここで、表蓋3に用いる硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアレルフタレート系樹脂等を挙げることができる。表蓋3における透明樹脂には、これらの硬化性樹脂を単体で、又は複数を混合して用いることができる。つまり、表蓋3における透明樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂又はジアレルフタレート系樹脂のうち少なくともいずれか一種類の硬化性樹脂を用いることができる。
【0032】
本実施形態において、表蓋3は裏面側において支持体4の前面と固定されている。例えば、表蓋3の支持体4への固定にはアルミテープを用いてもよいし、両面テープを用いてもよい。また、表蓋3と支持体4とを固定する固定装置をもうけてもよい。また本発明はこれに限られず、表蓋3が支持体4および薄型ディスプレイ20の両方に固定されていてもよい。この場合、例えば表蓋3の裏面全体に所定の接着剤(例えば光学粘着材等)を塗布し、支持体4および薄型ディスプレイ20の前面と接着させてもよい。なお、表蓋3と薄型ディスプレイ20との間には原則的に隙間が生じない方が好ましいが、ディスプレイ内蔵壁面1の設置環境等の必要に応じて、表蓋3と薄型ディスプレイ20との間に空気層を設けてもよい。
【0033】
また、図3および図4に示すように、本実施形態における表蓋3は、薄型ディスプレイ20を支持する支持体4の前面を覆うように配置されているが、本発明はこれに限られない。例えば、表蓋3は、少なくとも支持体4の開口部4aの前面を覆うように設けられていればよい。
【0034】
また、表蓋3は板状部材に限られず、例えば支持体4の周囲(例えば上下、左右および前面)を囲むような五面体の蓋状に加工されてもよい。この場合、五面体のうち支持体4の開口部4aに対向する領域、すなわち薄型ディスプレイ20に対向する領域に透明樹脂及びガラス繊維を含有する透明板状部材を配置すればよく、薄型ディスプレイ20に対向する領域以外は所定の板状部材を配置してもよい。
【0035】
(化粧シート)
図3および図4に示すように、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、化粧シート6は、支持体4の左右側部および表蓋3の前面を覆うように配置されている。表蓋3の表面(前面)に化粧シート6を貼付することにより、薄型ディスプレイ20が消灯している場合には、薄型ディスプレイ20が外側からは見えず、通常の壁面として視認される。薄型ディスプレイ20が点灯すると、化粧シート6が透光性を有するため、薄型ディスプレイ20に表示された画像が化粧シート6を透過して外側から認識できるようになる。
【0036】
このような透光性を有する化粧シート6としては、合成樹脂製基材シートにグラビア印刷方式等を用いて任意の絵柄を印刷した化粧シートに、裏面タック加工を施した化粧シート(タックシート)が好適に用いられる。この場合、裏面に塗布された粘着材により化粧シート6を表蓋3の表面(前面)および支持体4の側面に貼付することができる。また、任意の絵柄を印刷した化粧シート6の裏面の周縁に両面テープを設けることで、化粧シート6を表蓋3の表面および支持体4の側面に貼付してもよい。
【0037】
化粧シート6を構成する合成樹脂製基材シートとしては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂等のベース樹脂に、フィラー、着色剤、安定剤等を添加した樹脂組成物をシート状に加工した着色合成樹脂シートを用いることができる。なお、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0038】
化粧シート6の表面には、透明な保護層を設けることで、絵柄層の耐摩耗性や耐光性等を向上させることができる。
【0039】
化粧シート6の絵柄や色調については、任意であり、設置場所のインテリアに応じて選択される。例えば、化粧シート6は、木目模様又は石目調のうち少なくともいずれか一方の絵柄を有していればよい。これにより、薄型ディスプレイ20が隠蔽されて、ディスプレイ内蔵壁面1においてディスプレイ表示が行われていない場合にも、インテリアの一部として違和感なく、ディスプレイ内蔵壁面1を種々の空間に設置することができる。また規則的な抽象柄よりも、木目模様や石目調のように、ある程度不規則な模様の方が、内部のディスプレイ装置を隠蔽し易い。
また、化粧シート6において、絵柄の印刷された層の裏面に白ベタ印刷を施してもよい。これにより、ディスプレイ表示の視認性を維持しつつ、内部のディスプレイ装置(薄型ディスプレイ20)の隠蔽性を向上することができる。
【0040】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1は、薄型ディスプレイ20を保護する表蓋3と、薄型ディスプレイ20および表蓋3の前面にあって映像光を透過する化粧シート6と、を備え、表蓋3は、透明樹脂及びガラス繊維を含有し、化粧シート6木目模様又は石目調のうち少なくともいずれかの絵柄を有する。
このような構成であれば、従来技術と比較して、優れた耐熱性を有し、保護板(本例では表蓋3)の歪みを抑制可能であってディスプレイ表示の視認性が良好な壁面構造体を提供することができる。また、最前面に化粧シート6が配置されることで薄型ディスプレイ20が隠蔽され、ディスプレイ表示が行われていない場合にも、違和感のない壁面構造体として種々の空間に設置することができる。
【0041】
(2)また、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、表蓋3は透過性を有する樹脂複合板であって化粧シート6と貼り合わされていてもよい。
このような構成であれば、化粧シート6による薄型ディスプレイ20の隠蔽性を向上と、ディスプレイ表示の視認性とを両立させることができる。
【0042】
(3)また、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、表蓋3に用いられるガラス繊維はガラスクロスであって、前記ガラスクロスの坪量が50g/m以上200g/m以下の範囲であってもよい。
このような構成であれば、表蓋3の軽量化を図ることができる。
【0043】
(4)また、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、表蓋3に用いるガラス繊維の厚みは0.5mm以上4.0mm以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、表蓋3の軽量化および薄肉化を図るとともに、熱膨張を抑制することができる。
【0044】
(5)また、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、表蓋3には、透明樹脂として、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂又はジアレルフタレート系樹脂のうち少なくともいずれか一種類の硬化性樹脂を用いてもよい。
(6)また、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1において、表蓋3は、透明樹脂及びガラス繊維を熱プレス成型して形成された化粧板であってもよい。
このような構成であれば、表蓋3の耐熱性の向上および軽量化を図ることができる。
(7)また、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面1は、薄型ディスプレイ20を支持する支持体4をさらに備え、支持体4は、設置対象の下地壁面10に接合可能な接合部40を有する。
このような構成であれば、ディスプレイ内蔵壁面1を確実に下地壁面10に設置することができる。
【0045】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の第2実施形態(以下、「本実施形態」という)に係るディスプレイ内蔵壁面100の一構成例を説明するための断面図である。
【0046】
ディスプレイ内蔵壁面100は、下地壁面10に固定される裏蓋2を有し、表蓋3が裏蓋2に固定され、裏蓋2に被さる構成である点で、上記第1実施形態と異なる。
【0047】
裏蓋2としては、金属製や合成樹脂製の他、木製、あるいはこれらの複合でも良い。裏蓋2は、タッピングねじ等によって下地壁面に固定する。取り付けに当たっては、ディスプレイそのものを取り付ける場合と異なり、特に厳密な水平出し等の必要はなく、長孔を利用した角度調整も容易である。なお裏蓋2には、表蓋3を固定するための受け治具を備えている必要がある。
【0048】
また、ディスプレイ内蔵壁面100において、表蓋3の裏面には、支持体104が設けられている。支持体104は、ポケット状の治具であり、薄型ディスプレイ20を落とし込んで、保持できるように設置する点で、上記第1実施形態における支持体4と相違している。支持体104の材質は、特に制約は無く、金属製や合成樹脂製が可能であってもよい。また、表蓋3の材質と同じ材質としてもよい。
【0049】
次に、本実施形態に係るディスプレイ内蔵壁面100の変形例について図7を用いて説明する。図7は、本実施形態の変形例によるディスプレイ内蔵壁面100の一構成例を説明するための部分断面模式図である。図7に示すように、支持体104には圧着装置5を設けても良い。圧着装置5は、薄型ディスプレイ20の表面を表蓋3の裏面に圧着するための装置である。圧着装置5としては、図7に示したような、ねじで押し付ける方式でも良いし、特に図示しないが、板ばねで押すような方式でも良い。
【0050】
圧着装置5を備えた場合、支持体104の寸法に余裕を持たせることができるので、薄型ディスプレイ20の挿入が容易になり、また表蓋3の裏面と薄型ディスプレイ20の表面との隙間を最小限に保つことが容易に可能となる。
【0051】
なお、本発明のディスプレイ内蔵壁面は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1、100 ディスプレイ内蔵壁面
2 裏蓋
3 表蓋
4、104 支持体
4a 開口部
5 圧着装置
6 化粧シート
10 下地壁面
11 床
12 台座
13 L字金具
20 薄型ディスプレイ
40 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7