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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04014 20160101AFI20240806BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240806BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240806BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240806BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240806BHJP
【FI】
H01M8/04014
C01B3/02 H
C25B1/04
C25B15/02
H01M8/04 J
H01M8/04 Z
H01M8/0656
H01M8/12 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020170705
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062588
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土肥 康俊
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓
(72)【発明者】
【氏名】野口 仁志
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/210344(WO,A1)
【文献】特開2011-165666(JP,A)
【文献】特表2018-517233(JP,A)
【文献】特開2001-160404(JP,A)
【文献】特表2016-537782(JP,A)
【文献】特開2013-199675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0358123(US,A1)
【文献】特開2017-091631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電動作と電解動作とを切り替えて運転することができる燃料電池システム(1)であって、
アノード流路(21)とカソード流路(22)とを有する燃料電池(2)と、
上記アノード流路から排出されたアノードオフガスと上記カソード流路から排出されたカソードオフガスとを混合して燃焼させる燃焼器(3)と、
水素を含む上記アノードオフガスを回収する回収流路(4)と、
を有し、
上記電解動作時において、上記回収流路を流れる上記アノードオフガスの熱を、上記燃料電池へ移動させることができるよう構成されており、
上記回収流路の一部が、上記燃料電池に設けられた熱交換部(23)内を通っている、燃料電池システム。
【請求項2】
上記回収流路には、上記アノードオフガスの流れを制御する回収制御弁(41)が設けてある、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、発電動作と電解動作とを切り替えて行うことができるものが、特許文献1に開示されている。すなわち、水素を酸素と反応させて発電する発電動作と、水を電気分解して水素を生成する電解動作とを、同じ燃料電池にて行うことができる。この燃料電池システムは、アノードオフガスとカソードオフガスとを混合して燃焼させる燃焼器を有する。そして、特許文献1には、燃焼器から出た燃焼後の排ガスの熱によって、カソードに供給される酸化剤ガスを予熱する構成が開示されていると考えられる。これにより、酸化剤ガスを介して燃焼後のガスの熱を燃料電池に与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-537782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成は、燃焼後の排ガスの熱を燃料電池に与えるものである。それゆえ、燃料電池に与える熱を生じさせるために、アノードオフガスに含まれる水素を消費していることとなる。それゆえ、電解動作における水素の回収率が低下する。したがって、酸化剤ガスを介して燃料電池に熱を供給できても、全体として、エネルギー効率を高くすることが困難である。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率を向上させることができる燃料電池システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、発電動作と電解動作とを切り替えて運転することができる燃料電池システム(1)であって、
アノード流路(21)とカソード流路(22)とを有する燃料電池(2)と、
上記アノード流路から排出されたアノードオフガスと上記カソード流路から排出されたカソードオフガスとを混合して燃焼させる燃焼器(3)と、
水素を含む上記アノードオフガスを回収する回収流路(4)と、
を有し、
上記電解動作時において、上記回収流路を流れる上記アノードオフガスの熱を、上記燃料電池へ移動させることができるよう構成されており、
上記回収流路の一部が、上記燃料電池に設けられた熱交換部(23)内を通っている、燃料電池システムにある。
【発明の効果】
【0007】
上記燃料電池システムは、上記電解動作時において、上記回収流路を流れる上記アノードオフガスの熱を、上記燃料電池へ移動させることができるよう構成されている。それゆえ、回収される水素を含むアノードオフガスの熱を、燃料電池に与えることとなる。そのため、燃料電池に熱を与えるために水素を消費することがない。つまり、水素の回収率を低下させることなく、燃料電池に熱を与えることができる。その結果、燃料電池システム全体として、エネルギー効率を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、エネルギー効率を向上させることができる燃料電池システムを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1参考形態1における、燃料電池システムの説明図。
図2参考形態2における、燃料電池システムの説明図。
図3参考形態3における、燃料電池システムの説明図。
図4】実施形態4における、燃料電池システムの説明図。
図5参考形態5における、発電動作時の燃料電池システムの説明図。
図6参考形態5における、電解動作時の燃料電池システムの説明図。
図7参考形態6における、燃料電池システムの説明図。
図8参考形態7における、燃料電池システムの説明図。
図9参考形態8における、燃料電池システムの説明図。
図10参考形態9における、燃料電池システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
参考形態1
燃料電池システムに係る参考形態について、図1を参照して説明する。
本形態の燃料電池システム1は、発電動作と電解動作とを切り替えて運転することができる燃料電池システムである。
【0011】
燃料電池システム1は、図1に示すごとく、燃料電池2と燃焼器3と回収流路4とを有する。燃料電池2は、アノード流路21とカソード流路22とを有する。燃焼器3は、アノード流路21から排出されたアノードオフガスとカソード流路22から排出されたカソードオフガスとを混合して燃焼させる。回収流路4は、水素を含むアノードオフガスを回収する。
【0012】
そして、燃料電池システム1は、電解動作時において、回収流路4を流れるアノードオフガスの熱を、燃料電池2へ移動させることができるよう構成されている。
【0013】
発電動作は、燃料電池2において、水素を燃料として電気エネルギーを生み出す動作である。電解動作は、燃料電池2において、電気エネルギーによって、水蒸気から水素を生成する動作である。
【0014】
回収流路4は、アノードオフガスの一部を回収する。そして、回収したアノードオフガスに含まれる水素は、例えば、当該燃料電池システム1において再利用される。本形態においては、燃料電池2のアノード流路21と燃焼器3とは、アノード排出路13にて接続されている。また、燃料電池2のカソード流路22と燃焼器3とは、カソード排出路14にて接続されている。
【0015】
回収流路4とアノード排出路13とは、アノード流路21から引き出され、途中で互いに分岐している。ここで、アノード流路21に接続されたアノード排出路13と回収流路4との共通部分は、アノード排出路13でもあり、回収流路4でもある。
【0016】
本形態の燃料電池システム1において、回収流路4には、アノードオフガスの流れを制御する回収制御弁41が設けてある。回収制御弁41は、アノード排出路13との分岐部よりも下流側の回収流路4に設けてある。回収制御弁41は、回収するアノードオフガスの回収量を制御する。回収制御弁41は、例えば、開閉のみが制御可能で、回収流路4におけるアノードオフガスの回収を行うか行わないかの2段階のみの制御ができるような構成とすることができる。あるいは、回収制御弁41は、例えば、開閉のみならず、回収流路4におけるアノードオフガスの流量を増減させるよう構成することもできる。回収制御弁41は、例えば、電磁弁等にて構成することができる。
【0017】
また、燃料電池システム1は、アノード供給路11及びカソード供給路12を有する。アノード供給路11は、燃料電池2のアノード流路21に供給されるアノード供給ガスが流れる流路である。カソード供給路12は、燃料電池2のカソード流路22に供給されるカソード供給ガスが流れる流路である。
【0018】
アノード供給路11には、例えば、メタンを主成分とする炭化水素系の燃料ガスFが導入される。燃料ガスFとしては、例えば、都市ガスを用いることができる。また、アノード供給路11には、水蒸気供給路111が接続され、燃料ガスFに水蒸気Wが合流するよう構成されている。また、アノード供給路11には、改質器112が設けてある。改質器112においては、燃料ガスFが改質され、水素が生成される。このとき、燃料ガスの改質に、水蒸気が利用される。すなわち、本形態において、改質器112は、水蒸気改質反応によって水素を生成する。
【0019】
カソード供給路12には、酸化剤ガスAが導入される。本形態において、酸化剤ガスAとしては空気を用いる。
回収流路4とカソード供給路12との間には、カソード予熱器42が設けてある。カソード予熱器42は、アノードオフガスの熱によってカソード供給ガスを予熱する。予熱されたカソード供給ガス(すなわち、予熱された酸化剤ガス)は、燃料電池2のカソード流路22に供給される。これにより、燃料電池2に熱が供給される。すなわち、電解動作時には、カソード供給ガスである酸化剤ガスを介して、アノードオフガスの熱が、燃料電池2に移動する。
【0020】
燃料電池2は、アノード流路21とカソード流路22との間に配設された電解質体を有している。本形態においては、電解質体として固体酸化物セラミックスを用いた、固体酸化物型燃料電池(すなわち、SOFC)を、燃料電池2とすることができる。この場合、電解動作時においては、燃料電池2は、固体酸化物型電解セル(すなわち、SOEC)となる。
【0021】
発電動作においては、燃料電池2のアノード流路21に、水素を含むアノード供給ガスが供給され、カソード流路22に、酸素を含む酸化剤ガスであるカソード供給ガスが供給される。これにより、燃料電池2の電解質体において、水素と酸素とを反応させ、電気エネルギーを生じさせる。アノード流路21において反応に用いられなかった余剰の水素を含むアノードオフガスは、アノード排出路13に排出される。また、カソード流路22において反応に用いられなかった余剰の酸素を含むカソードオフガスは、カソード排出路14に排出される。
【0022】
発電動作時においては、回収流路4における回収制御弁41を閉じておく。これにより、アノードオフガスは燃焼器3に導入される。また、カソードオフガスも燃焼器3に導入される。燃焼器3において、アノードオフガス中の水素とカソードオフガス中の酸素とが混合され、燃焼する。
【0023】
電解動作においては、燃料電池2のアノード流路21に、水蒸気を含むアノード供給ガスが供給される。電解動作時における水蒸気の供給量は、発電動作における水蒸気の供給量よりも多い。また、電解動作においても、アノード供給ガスには、水素を含む燃料ガスが含まれている。これにより、燃料電池2のアノード流路21を還元雰囲気に保つことができる。また、電解動作において、燃料電池2のカソード流路22には、酸化剤ガスであるカソード供給ガスが供給される。
【0024】
そして、燃料電池2における電解質体に電力を供給することで、水蒸気が電気分解され、水素が生成される。このときの燃料電池2の電解質体における電解反応は、吸熱反応である。それゆえ、電解動作時においては、電解質体に熱を供給する必要も生じるが、後述のように予熱されたカソード供給ガス(すなわち酸化剤ガス)が燃料電池2に供給されることで、電解質体に熱も供給されることとなる。
【0025】
生成された水素は、アノード流路21から、アノードオフガスとして、アノード排出路13に排出される。この水素を含むアノードオフガスの一部が、回収流路4を介して回収される。つまり、電解動作時においては、回収制御弁41を開放しておき、回収流路4にアノードオフガスが導入されるようにしておく。
【0026】
そして、回収流路4を流れる水素を含む高温のアノードオフガスが、カソード予熱器42において、カソード供給路12を流れるカソード供給ガス(すなわち酸化剤ガス)と熱交換をする。つまり、水素を含む高温のアノードオフガスが、カソード供給ガスを予熱する。予熱されたカソード供給ガスが燃料電池2に導入されることで、燃料電池2の温度が高く維持されやすくなる。その結果、上述の吸熱反応である電解動作が効率的に行われることとなる。
【0027】
本形態の燃料電池システム1は、例えば燃料電池車等の車両に搭載されるものとすることができる。
発電動作と電解動作との切り替えは、燃料電池2への電力供給の有無、アノード供給ガスの組成(例えば、水蒸気の含入量等)を切り替えることにより、行うことができる。
【0028】
燃料電池システム1には、図示しない制御装置が設けられている。制御装置は、燃料電池システム1を構成する各制御対象機器の作動を制御する。制御装置は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
発電動作と電解動作との切り替え、回収制御弁41の開閉制御は、上記制御装置によって行うことができる。なお、上記制御装置は、例えば、ECU(すなわち、電子制御ユニット)内に構成されている。
【0029】
次に、本形態の作用効果につき、説明する。
上記燃料電池システム1は、電解動作時において、回収流路4を流れるアノードオフガスの熱を、燃料電池2へ移動させることができるよう構成されている。それゆえ、回収される水素を含むアノードオフガスの熱を、燃料電池2に与えることとなる。そのため、燃料電池2に熱を与えるために水素を消費することがない。つまり、水素の回収率を低下させることなく、燃料電池2に熱を与えることができる。その結果、燃料電池システム1全体として、エネルギー効率を向上させることができる。
【0030】
また、回収流路4には回収制御弁41が設けてある。これにより、回収流路4におけるアノードオフガスの流れを、容易に制御することができる。それゆえ、例えば、電解動作時においては、回収流路4にアノードオフガスを流して、発電動作時においては、回収流路4にアノードオフガスを流さないという制御を行うことも容易となる。これにより、電解動作時における燃料電池2の吸熱反応に、アノードオフガスの熱を利用することが容易となる。また、電解動作時において発生した水素を、効率的に回収することができる。
【0031】
また、回収制御弁41が流量の調整を行うこともできるよう構成されている場合には、例えば、電解動作の状態(例えば、水素の生成量等)に応じて、回収流路4に流れるアノードオフガスの流量を変動させることもできる。同様に、発電動作の状態(例えば、発電量等)に応じて、回収流路4にも、アノードオフガスを、その流量を調整しながら流通させることもできる。
【0032】
また、回収流路4とカソード供給路12との間に、カソード予熱器42が設けてある。カソード予熱器42は、アノードオフガスの熱によってカソード供給ガスを予熱する。これにより、カソード供給ガスを介して、水素を含むアノードオフガスの熱を燃料電池2へ移動させることができる。これにより、容易かつ効率的に燃料電池2へ熱を与えることができる。
【0033】
以上のごとく、本形態によれば、エネルギー効率を向上させることができる燃料電池システムを提供することができる。
【0034】
参考形態2
本形態は、図2に示すごとく、回収制御弁41を、回収流路4における、カソード予熱器42よりも下流側に設けた形態である。
その他は、参考形態1と同様である。なお、参考形態2以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0035】
本形態においては、回収流路4のうち、カソード供給路12の酸化剤ガスに熱を与えた後のアノードオフガスが流れる位置に回収制御弁41を設けることとなる。すなわち、回収制御弁41を、回収流路4における、比較的温度の高くなり難い位置に設けることができる。それゆえ、耐熱温度が比較的低い回収制御弁41を用いることが可能となる。その結果、安価な燃料電池システム1を得ることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0036】
参考形態3
本形態は、図3に示すごとく、回収流路4とアノード排出路13との共通部分とカソード供給路12との間に、カソード予熱器42を設けた形態である。
本形態の場合には、回収制御弁41の開閉に関わらず、アノードオフガスとカソード供給ガス(すなわち、酸化剤ガス)との熱交換が行われることとなる。すなわち、本形態においては、発電動作時にも、電解動作時にも、アノードオフガスがカソード予熱器42を通過し、酸化剤ガスを予熱することとなる。
【0037】
そして、電解動作時においては、回収制御弁41を開放して、水素を含むアノードオフガスの一部を、回収流路4を介して回収することができる。
その他は、参考形態2と同様である。
【0038】
本形態においても、電解動作時に、水素を含むアノードオフガスの熱を、酸化剤ガスを介して燃料電池2に与えることができる。
その他、参考形態2と同様の作用効果を有する。
【0039】
(実施形態4)
本形態は、図4に示すごとく、回収流路4の一部を、燃料電池2に設けた熱交換部23を通すよう構成した形態である。
【0040】
熱交換部23は、燃料電池2の電解質体と熱的に接触している。また、熱交換部23を通過する回収流路4とも熱的に接触している。これにより、回収流路4を流れるアノードオフガスと電解質体との間で、熱交換を行うことができる。そして、アノードオフガスの熱を、熱交換部23を介して、燃料電池2の電解質体に与えることができる。
【0041】
なお、熱交換部23は、例えば、回収流路4内のアノードオフガスと燃料電池2との間を伝熱にて熱交換する熱交換器とすることができる
その他は、参考形態2と同様である。
【0042】
本形態においては、電解動作時に、水素を含むアノードオフガスの熱を、直接燃料電池2に与えることができる。
その他、参考形態2と同様の作用効果を有する。
【0043】
参考形態5
本形態は、図5図6に示すごとく、参考形態1の構成をベースにして、具体化を進めた燃料電池システム1の形態である。
本形態においては、アノード供給路11に、改質器112のほかに、脱硫器113と、蒸発器114と、循環装置115とを設けている。脱硫器113と、蒸発器114と、循環装置115とは、改質器112よりも上流側において、上流側からこの順に、アノード供給路11に設けてある。
【0044】
また、本形態の燃料電池システム1は、下記の第1循環路131と第2循環路132とを有する。第1循環路131は、アノードオフガスをアノード排出路13から循環装置115に循環させる。第2循環路132は、アノード供給路11において、改質器112の下流側かつ燃料電池2の上流側からアノード供給ガスを循環装置115よりも上流側に循環させる。
【0045】
本形態において、循環装置115は、エジェクタにて構成することができる。以下において、循環装置115をエジェクタ115として説明する。エジェクタ115は、アノード供給路11を流れる燃料ガスを駆動流として、第1循環路131からアノードオフガスを吸引する。エジェクタ115は、ノズル部115aと吸引部115bと吐出部115cとを有する。ノズル部115aは、アノード供給路11の上流側から導入された燃料ガスを、駆動流として噴射する。吸引部115bは、ノズル部115aから噴射される駆動流によって第1循環路131からアノードオフガスを、吸引流として吸引する。吐出部115cは、駆動流と吸引流とを混合した混合流を、アノード供給路11の下流側へ吐出する。
【0046】
脱硫器113は、燃料ガスFとしての都市ガス等に含まれる硫黄分を除去する。本形態において、脱硫器113は、水素を用いて硫黄分を除去する水添脱硫器とすることができる。また、本形態においては、第2循環路132は、改質器112と燃料電池2との間のアノード供給路11から、脱硫器113よりも上流側のアノード供給路11に、燃料ガスを循環させるよう構成されている。それゆえ、第2循環路132によって循環されるガスは、特に水素を多く含んだ燃料ガスとなる。それゆえ、脱硫器113に導入される水素の量を多くすることができ、効果的な脱硫を行うことができる。
【0047】
蒸発器114には、水蒸気供給路111も接続されている。この蒸発器114において、水蒸気Wと燃料ガスFとが混合されると共に加熱され、混合ガスが生成される。蒸発器114において水蒸気と混合された燃料ガスは、エジェクタ115に駆動流として導入される。そして、上述のように、エジェクタ115においてアノードオフガスと混合された燃料ガスが、エジェクタ115から吐出され、改質器112に導入される。改質器112において改質された、水素を含む燃料ガスであるアノード供給ガスが、燃料電池2のアノード流路21に導入される。
【0048】
また、本形態においては、第1循環路131から、回収流路4が分岐している。すなわち、回収流路4は、アノード排出路13と共通する部分と、第1循環路131と共通する部分と、第1循環路131から分岐した部分とを有する。そして、回収流路4は、カソード予熱器42においてカソード供給ガス(すなわち酸化剤ガス)と熱交換したのち、回収される。また、本形態においては、回収制御弁41は、回収流路4における、カソード予熱器42よりも上流側に設けてある。
【0049】
また、本形態の燃料電池システム1は、水蒸気供給路111から蒸発器114をバイパスするように、アノード供給路11に合流するバイパス路116を有する。本形態において、バイパス路116の下流端は、エジェクタ115と改質器112との間のアノード供給路11に接続されている。そして、バイパス路116には、バイパス路116を通過する水蒸気の流れを制御するバイパス制御弁117が設けてある。
【0050】
バイパス制御弁117も、回収制御弁41と同様に、例えば、開閉のみが制御可能で、バイパス路116に水蒸気を通すか通さないかの2段階のみの制御ができるような構成とすることができる。あるいは、バイパス制御弁117は、例えば、開閉のみならず、バイパス路116における水蒸気の流量を増減させるよう構成することもできる。バイパス制御弁117は、例えば、電磁弁等にて構成することができる。
【0051】
一方、カソード供給路12には、カソード予熱器42のほかに、前段予熱器122と、後段予熱器123とが設けてある。前段予熱器122は、カソード供給路12における、カソード予熱器42よりも上流側に設けてある。後段予熱器123は、カソード供給路12における、カソード予熱器42よりも下流側に設けてある。
【0052】
前段予熱器122は、燃焼器3から排出された燃焼ガスの熱によって、カソード供給路12のカソード供給ガス(すなわち酸化剤ガス)を予熱するよう構成されている。また、前段予熱器122に導入される前の燃焼ガスは、改質器112に熱的に接触した燃焼触媒133において、改質器112へ熱を与える。また、前段予熱器122を通過した燃焼ガスは、蒸発器114において燃料ガスに熱を与えたのち、排出される。
【0053】
後段予熱器123は、暖機燃焼器123aから熱を受けて、カソード供給路12のカソード供給ガス(すなわち酸化剤ガス)を予熱するよう構成されている。暖機燃焼器123aは、外部から供給される燃料ガスF1と酸化剤ガスA1とを混合して燃焼させる。暖機燃焼器123aの排ガスは、カソード排出路14を介して、燃焼器3に導入される。
【0054】
本形態の燃料電池システム1において、発電動作を行う際は、図5に示すごとく、回収制御弁41及びバイパス制御弁117を閉じる。
【0055】
この状態において、アノード供給路11においては、燃料ガスFを、脱硫器113、蒸発器114、エジェクタ115を介して、改質器112に導入する。また、蒸発器114においては、燃料ガスFが、水蒸気供給路111を介して供給された水蒸気と混合されると共に蒸発して、水蒸気との混合気体となり、エジェクタ115を介して改質器112に送られる。改質器112において改質された、水素を含む燃料ガスは、アノード供給ガスとして、燃料電池2のアノード流路21に供給される。
【0056】
一方、カソード供給路においては、酸化剤ガスAを、前段予熱器122、カソード予熱器42、後段予熱器123を介して、燃料電池2のカソード流路22に供給する。これにより、燃料電池2において、燃料ガス中の水素と、酸化剤ガス中の酸素とを反応させて発電し、電力を得る。
【0057】
また、アノード流路21から排出されたアノードオフガスと、カソード流路22から排出されたカソードオフガスとが、燃焼器3において混合されて燃焼する。また、アノード排出路13から、アノードオフガスが、第1循環路131を介して、エジェクタ115に循環し、改質前のアノード供給ガスに合流する。なお、本形態においては、発電動作時に回収制御弁41を閉じている。それゆえ、発電動作時においては、第1循環路131から回収流路4を介してカソード予熱器42にアノードオフガスが導かれることはない。つまり、発電動作時においては、酸化剤ガスがカソード予熱器42においてアノードオフガスから受熱することはない。
【0058】
また、アノード供給路11における改質器112と燃料電池2との間から、改質後の燃料ガスが、第2循環路132を通って、脱硫器113の上流側に循環する。また、本形態において、発電動作時には、バイパス制御弁117を閉じている。そのため、水蒸気がバイパス路116を介して、蒸発器114を迂回することはない。
【0059】
本形態の燃料電池システム1において、電解動作を行う際は、図6に示すごとく、回収制御弁41及びバイパス制御弁117を開放する。
【0060】
この状態において、カソード供給路においては、酸化剤ガスAを、前段予熱器122、カソード予熱器42、後段予熱器123を介して、燃料電池2のカソード流路22に供給する。
【0061】
アノード供給路11においては、水蒸気W及び燃料ガスFを、燃料電池2のアノード流路21に供給する。水蒸気と共に燃料ガスを供給するのは、アノード流路21を還元雰囲気にするためである。また、水蒸気は、バイパス路116を通過して改質器112の上流側におけるアノード供給路11に合流する。電解時における水蒸気の供給量は、発電時における水蒸気の供給量よりも多い。そこで、電解動作時は、上述のようにバイパス制御弁117を開放し、水蒸気を、バイパス路116に通し蒸発器114を迂回させて、アノード供給路11に合流させる。水蒸気は、改質器112において予熱されて、燃料電池2に供給される。
【0062】
そして、電解動作時においては、燃料電池2に電力を供給する。これにより、アノード流路21に導入された水素を含む燃料ガスが、電気分解され、水素を生成する。生成された水素の少なくとも一部は、アノードオフガスに含まれた状態にて、回収流路4を介して、回収される。
【0063】
電解動作時において、酸化剤ガスは、前段予熱器122及び後段予熱器123に加え、カソード予熱器42においても、予熱される。すなわち、電解動作時においては、回収制御弁41が開放されている。これにより、カソード予熱器42においては、水素を含むアノードオフガスの熱によって、酸化剤ガスが予熱される。
【0064】
前段予熱器122及び後段予熱器123に加え、カソード予熱器42によっても予熱された酸化剤ガスが、燃料電池2に供給されることで、燃料電池2の温度を向上させることができる。この熱の少なくとも一部が、電解動作における吸熱反応に利用されることとなる。
【0065】
なお、後段予熱器123も、発電動作時には作動させず、電解動作時に作動させるようにすることもできる。つまり、特に燃料電池2において熱が必要となる電解動作時において、燃料電池2に導入されるカソード供給ガス(すなわち酸化剤ガス)を予熱し、それ以外のときは、カソード供給ガスを予熱しない、という制御を行うこともできる。
その他は参考形態1と同様であり、同様の作用効果を有する。
【0066】
参考形態6
本形態は、図7に示すごとく、参考形態5の変形形態であって、回収制御弁41を、回収流路4における、カソード予熱器42よりも下流側に設けた形態である。
その他は、参考形態5と同様である。
【0067】
本形態においては、参考形態2と同様に、回収制御弁41を、回収流路4における、比較的温度の高くなり難い位置に設けることができる。その結果、安価な燃料電池システム1を得ることができる。
その他、参考形態5と同様の作用効果を有する。
【0068】
参考形態7
本形態は、図8に示すごとく、回収流路4とアノード供給路11との間に、アノード予熱器43を有する燃料電池システム1の形態である。
アノード予熱器43は、アノードオフガスの熱によってアノード供給ガスを予熱する。そして、これによって予熱されたアノード供給ガスが燃料電池2に導入されることで、燃料電池2に熱が付与される。つまり、アノード供給ガスを介して、水素を含むアノードオフガスの熱を、燃料電池2の電解質体に伝えることができる。
【0069】
本形態において、アノード予熱器43は、アノード供給路11おける改質器112と燃料電池2との間に設けてある。また、本形態においては、回収制御弁41は、回収流路4における、アノード予熱器43よりも上流側に設けてある。
【0070】
本形態において、発電動作時は、回収制御弁41を閉じておくことができる。そして、電解動作時において、回収制御弁41を開放する。これにより、電解動作によって燃料電池2において生成された水素を含むアノードオフガスが、回収流路4を介して、回収される。
【0071】
そして、アノード予熱器43において、水素を含むアノードオフガスの熱がアノード供給ガスに与えられる。すなわち、燃料電池2に供給される前の水蒸気及び燃料ガスが、回収される水素を含むアノードオフガスによって予熱される。アノード予熱器43において受熱したアノード供給ガス(すなわち、水蒸気及び燃料ガス)が、燃料電池2に導入される。これにより、水素を含むアノードオフガスの熱を、燃料電池2の電解質体に与えることができる。この熱の少なくとも一部が、電解動作時の吸熱反応に利用される。
【0072】
その他は、参考形態5と同様である。
本形態においては、アノード供給ガスを介して、水素を含むアノードオフガスの熱を燃料電池2に与えることができる。
その他、参考形態5と同様の作用効果を有する。
【0073】
参考形態8
本形態は、図9に示すごとく、回収制御弁41を、回収流路4における、アノード予熱器43よりも下流側に設けた形態である。
その他は、参考形態7と同様である。
【0074】
本形態においては、参考形態2と同様に、回収制御弁41を、回収流路4における、比較的温度の高くなり難い位置に設けることができる。その結果、安価な燃料電池システム1を得ることができる。
その他、参考形態7と同様の作用効果を有する。
【0075】
参考形態9
本形態は、図10に示すごとく、回収流路4がアノード排出路13と分岐する前の位置に、アノード予熱器43を設けた形態である。
つまり、回収流路4とアノード排出路13との共通部分において、アノードオフガスとアノード供給ガスとの熱交換を行うような構成としている。
【0076】
その他は、参考形態8と同様である。ただし、図10においては、構成を簡素化した燃料電池システム1を表している。本形態においても、上記の相違点以外は、参考形態8図9参照)と同様の構成を備えたものとすることもできる。
【0077】
本形態においても、アノード供給ガスを介して、水素を含むアノードオフガスの熱を燃料電池2に与えることができる。その他、参考形態8と同様の作用効果を有する。
【0078】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 燃料電池システム
2 燃料電池
21 アノード流路
22 カソード流路
3 燃焼器
4 回収流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10