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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電子材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240806BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240806BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240806BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08G73/10
C09J7/35
C09J179/08
C09J11/06
H05K1/03 630H
H05K1/03 610P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020170926
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062795
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 裕士
(72)【発明者】
【氏名】石川 崇
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-325533(JP,A)
【文献】特開平09-040777(JP,A)
【文献】特開昭64-002037(JP,A)
【文献】特開昭64-016829(JP,A)
【文献】特開平02-180980(JP,A)
【文献】特開平02-147687(JP,A)
【文献】特開平01-313992(JP,A)
【文献】特開平02-198837(JP,A)
【文献】特開平02-063145(JP,A)
【文献】特開昭62-056948(JP,A)
【文献】特開平01-201334(JP,A)
【文献】特開2020-117631(JP,A)
【文献】特開2018-168369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C09J 7/35
C09J 179/08
C09J 11/06
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で示される芳香族ジアミン(A-1)およびダイマージアミンを含むジアミンとポリカルボン酸との反応物を含んでなり、
ダイマージアミンの量が、芳香族ジアミン(A-1)100質量部に対して、10~200質量部であり、
ポリカルボン酸が、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種である電子材料。
【化1】
(式中、Xは単結合、-CH-、-SO-、-C(=O)-、-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-COO-(CH)l-OCO-、又は-COO-CH-CH(-O-C(=O)-CH)-CH-OCO-を表し、lは、1~20を表す。)
【請求項2】
さらに、架橋剤及び/または有機溶剤を含む請求項1に記載の電子材料。
【請求項3】
接着剤である、請求項1または2に記載の電子材料。
【請求項4】
請求項記載の電子材料を加熱してなる接着層。
【請求項5】
請求項記載の接着層及び支持フィルムを含む、接着シート。
【請求項6】
請求項記載の接着層と、基材とを含んでなる積層体。
【請求項7】
基材が、銅箔及び/又は絶縁シートである請求項記載の積層体。
【請求項8】
請求項または記載の積層体が、銅箔を含み、かつ、さらに、前記銅箔に回路パターンを設置してなるプリント配線板積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、及び、これを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、プリント配線板をはじめとする電子材料には、薄型化、多層化、高精細化がますます要求されるようになっている。このような電子材料周辺に用いられる接着剤やコーティング剤として、例えば、具体的には次の(1)~(6)が挙げられる。
【0003】
(1)層間接着剤:回路基板同士を張り合わせるために用いられるもので、直接銅あるいは銀回路に接する。多層基板の層間に使用され、液状やシート状のものがある。
【0004】
(2)カバーレイフィルム用接着剤:カバーレイフィルム(回路の最表面を保護する目的で用いられるポリイミドフィルムなど)と、下地の回路基板と、を張り合わせるために用いられ、あらかじめポリイミドフィルムと、接着層とが一体化されているものが多い。
【0005】
(3)銅張フィルム(CCL)用接着剤:ポリイミドフィルムと銅箔とを張り合わせるために用いられる。銅回路形成時にエッチング等の加工が施される。
【0006】
(4)カバーレイ:回路の最表面を保護する目的で用いられ、回路上に印刷インクを印刷したり、接着シートを張り合わせたりした後、硬化させることで形成される。感光性や熱硬化性のものがある。
【0007】
(5)補強板用接着剤:配線板の機械的強度を補完する目的で、配線板の一部を、金属、ガラスエポキシ、ポリイミド等の補強板に固定するために用いられる。
【0008】
(6)電磁波シールド用接着剤:電子回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する目的で、フレキシブルプリント配線板に貼着される。
【0009】
これらの形態としては、液状(印刷用にインク化されたもの)やシート状(あらかじめフィルム化されたもの)等があり、用途に応じて適宜形態が選択される。
【0010】
こういった電子材料周辺部材への高い要求に応えるため、様々なポリイミド樹脂の検討が行われている。
【0011】
一方、ポリイミド樹脂は溶剤溶解性が低いことから、取扱いの困難さが課題として挙げられており、近年溶剤溶解性が良く誘電特性も良好なポリイミド樹脂の開発が行われてきた。
【0012】
例えば、特許文献1にはダイマージアミンをポリイミドに組み込むことで溶剤溶解性が良く、誘電特性が良好なポリイミドが合成できることが開示されている。
しかし、特許文献1に記載のポリイミドは熱分解温度は高いものの、樹脂のTgが低くなるため高温使用時に樹脂の変形が起こりやすく電子基板用としては十分な性能とは言えない。
【0013】
また、特許文献2にはダイマージアミンとフェニレンジアミン骨格を併用することで軟化点が向上することが開示されている。
しかしながら、特許文献2記載の発明においてもTgの向上は不十分であり、加えてフェニレンジアミン骨格がポリイミド間の相互作用を強くするため相溶性が十分でなく、絶縁シートやテフロン(登録商標)といった、濡れ性が十分高くない基材に塗工する際に樹脂ワニスが十分濡れ広がることができず、誘電特性や耐熱性等の所物性が低下するといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2018-168369公報
【文献】特開2020-117631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、塗工時に基材への濡れ性が良く、誘電特性が良好で且つTgが高いポリイミドを使用した電子材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下発明〔1〕~〔9〕に関する。
【0017】
〔1〕 下記一般式で示される芳香族ジアミン(A-1)とポリカルボン酸との反応物を含んでなる電子材料。
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、Xは単結合、-CH-、-SO-、-C(=O)-、-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-COO-(CH)l-OCO-、又は-COO-CH-CH(-O-C(=O)-CH)-CH-OCO-を表し、lは、1~20を表す。)
【0020】
〔2〕 ジアミンが、さらにダイマージアミンを含み、
前記ダイマージアミンの量が、芳香族ジアミン(A-1)100質量部に対して、10~200質量部である〔1〕に記載の電子材料。
【0021】
〔3〕 さらに、架橋剤及び/または有機溶剤を含む〔1〕または〔2〕に記載の電子材料。
【0022】
〔4〕 接着剤である、〔1〕~〔3〕いずれか記載の電子材料。
【0023】
〔5〕 〔4〕記載の電子材料を加熱してなる接着層。
【0024】
〔6〕 〔5〕記載の接着層及び支持フィルムを含む、接着シート。
【0025】
〔7〕 〔6〕記載の接着層と、基材とを含んでなる積層体。
【0026】
〔8〕 基材が、銅箔及び/又は絶縁シートである〔7〕記載の積層体。
【0027】
〔9〕 〔7〕または〔8〕記載の積層体が、銅箔を含み、かつ、さらに、前記銅箔に回路パターンを設置してなるプリント配線板積層体。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、基材への濡れ性が良く、高いTgと誘電特性を両立した電子材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<芳香族ジアミン(A-1)>
本発明は、ジアミンとポリカルボン酸との反応物を含んでなる電子材料である。ジアミンは、芳香族ジアミン(A-1)を含む。
芳香族ジアミン(A-1)として、下記構造で表されるものが含まれる。
【0030】
【化1】
【0031】
(式中、Xは単結合、-CH-、-SO-、-C(=O)-、-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-COO-(CH)l-OCO-、又は-COO-CH-CH(-O-C(=O)-CH)-CH-OCO-を表し、lは、1~20を表す。)
【0032】
具体的には、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、
4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルエーテル、4,4’-3,3-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルケトン、2,2-ビス(4-アミノ-3-エチル-5-ジメチルフェノキシフェニル)プロパン等が挙げられる。これのうち、基材へのヌレ性とTgを向上させることに優れていることから、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンが特に好ましい。
【0033】
芳香族ジアミン(A-1)は、単独、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
<ダイマージアミン>
ポリカルボン酸と反応させるアミンは、更にダイマージアミン含むことができる。
本発明においてダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の二量体として得られる環式又は非環式ダイマー酸の全てのカルボキシル基を一級アミノ基に置換したものである。
ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」や、BASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。
ダイマージアミンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0035】
ダイマージアミンの含有量は、柔軟性、接着性、相溶性に優れることから、前記芳香族ジアミン(A-1)100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましく、より好ましくは40質量% 以上100 質量% 以下である。
【0036】
本発明で用いるジアミンには、前記芳香族ジアミン(A-1)及びダイマージアミン以外のジアミンを用いても構わない。前記芳香族ジアミン(A-1)及びダイマージアミン以外のジアミンを大別すると、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられる。好ましいものとしては以下の構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化3】
【0038】
【化4】
(lは1~3の整数である)
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
【化7】
【0042】
<ポリカルボン酸>
本発明は、特定ジアミンとポリカルボン酸との反応物を含んでなる電子材料である。ポリカルボン酸は、酸無水物の形態であってもよい。
本発明に用いられるポリカルボン酸として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物、1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物、等が例示される。
ポリカルボン酸は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
ポリカルボン酸成分は、芳香族ジアミン(A-1)との相溶性、接着性、及び耐熱性に優れることから、好ましくは2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0044】
ポリカルボン酸とジアミンとの反応は、非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で行うことができる。非プロトン性極性溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルジグライム、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサンなどが例示できる。非プロトン性極性溶媒は、一種類のみ用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても問題なく、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30質量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が30質量%以上では溶媒の溶解力が向上しポリアミック酸が析出しにくくなるためである。テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応は、良く乾燥したジアミン成分を脱水精製した前述反応溶媒に溶解し、これに良く乾燥したポリカルボン酸二無水物を添加して反応を進める方法が好ましい。
【0045】
前記ポリカルボン酸とジアミンとの反応は、ランダム反応及びブロック反応のいずれでも構わない。反応物は、例えば、ジアミン成分毎別々に反応したホモ反応物を混合しても構わないし、場合により反応物をさらに再結合反応させても構わない。例えば、予めポリカルボン酸二無水物過剰で調製した酸末端オリゴマーとジアミン過剰で調整したアミン末端オリゴマーを混合して更に反応しても構わない。
【0046】
前記反応は、例えば10~80℃程度の比較的低温で反応させてポリアミック酸とし、ついで前記ポリアミック酸を熱イミド化又は化学イミド化して得ることができる。あるいは、ポリアミック酸とする工程を省略して、有機溶媒中例えば130℃~250℃程度の比較的高温で重合かつイミド化する一段反応によって得ることもできる。
【0047】
熱イミド化は例えば200℃~400℃程度の温度で行う事ができ、化学イミド化する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミンなどの有機塩基と、無水酢酸などの存在下で行うことができる。このときの温度としては-20~200℃の任意の温度を選択することができる。
【0048】
本発明の電子材料は、前記ポリアミック酸を熱イミド又は化学イミド化して得られたポリイミド重合体(A)を重合溶液のまま使用することもできる。また、メタノール、エタノールなどの貧溶媒を加えて樹脂を沈殿させ、これを単離・回収し粉末として使用することもできる。
【0049】
<架橋剤>
本発明の電子材料には、耐熱性と接着性向上のために更に架橋剤を含有することができる。架橋剤としてはエポキシ含有化合物、イソシアネート含有化合物等が挙げられる。
【0050】
<エポキシ基含有化合物>
本発明において含有するエポキシ基含有化合物としては、エポキシ基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するものを好ましく用いることができる。エポキシ基有化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂、グリジシルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、又は環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を用いることができる。
【0051】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸テトラグリシジルエステル、トリ(カルボキシエチル)イソシアヌレートトリグリシジルエステル、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリグリシジルエステル、2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラグリシジルエステル、ビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、又はジグリシジルテトラヒドロフタレート、3’,4’-エポキシシクロへキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどが挙げられる。
【0052】
<イソシアネート基含有化合物>
イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。
1分子中にイソシアネート基を1個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
また、1,6-ジイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4’-ジフェニルメタン、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4-ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4-メチル-m-フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、P-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と、水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物もイソシアン酸エステル化合物として使用することができる。
【0053】
1分子中にイソシアネート基を2個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネー
ト、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、
ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレ
ンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、
3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0054】
また、1分子中にイソシアネート基を3個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、前記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0055】
イソシアネート基含有化合物としては、さらに例示した種々のイソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基がε-カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたブロック化イソシアネート基含有化合物も用いることができる。
具体的には、前記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε-カプロラクタム、メチルエチルケトン(以下、MEKという)オキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。特に、イソシアヌレート環を有し、MEKオキシムやピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体は、本発明に使用した場合、ポリイミドや銅に対する接着強度や耐熱性に優れるため、非常に好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂、イソシアネート化合物の含有量は耐久性、接着性の観点から、ポリイミド100質量部に対して、1~30質量部含有することが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。
【0057】
<その他の添加剤>
本発明の電子材料は、さらに、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよく、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を含有してもよい。
【0058】
<接着剤>
本発明の電子材料は、接着剤の形態をとることができる。接着剤は上記ポリイミド樹脂を樹脂単体、及び硬化剤、フィラー、添加剤等と任意の割合で混合してなる接着剤を適当な支持フィルムに塗工し、加熱して有機溶剤を揮発させることによって硬化させ、該支持フィルムから剥離することによって得られる。接着層の厚みは、3μm以上40μm以下程度が好ましい。
【0059】
<接着層>
接着層を製造する際、上記接着剤と上記接着剤以外の各種公知の接着剤とを併用してもよい。同様に上記接着剤と上記接着剤以外の各種公知の接着剤とを併用してもよい。
【0060】
<接着シート>
本発明の接着シートは、例えば、以下のようにして得ることができる。
溶液ないし分散液状態の熱硬化性接着剤を、支持フィルムの少なくとも片面に、塗布後、通常40~150℃で乾燥することにより、未硬化状態(いわゆるBステージ状態)の熱硬化性接着シートにシート状基材の付いたものを得ることができる。次いで熱硬化性接着シートの他方の面を他のシート状基材で覆うことにより、本発明の支持フィルム付き熱硬化性接着シートを得ることができる。
用いる支持フィルムの少なくとも一方は、剥離性の支持フィルムであることが好ましい。すなわち、剥離性の支持フィルムに、溶液ないし分散液状態の熱硬化性接着剤を塗布・乾燥し、熱硬化性接着シートを形成し、次いで熱硬化性接着シートの他方の面を他の剥離性の支持フィルムで覆うこともできるし、被着体となる剥離性のない支持フィルムで覆うこともできる。あるいは、被着体となる剥離性のない支持フィルムに、溶液ないし分散液状態の熱硬化性接着剤を塗布・乾燥し、熱硬化性接着シートを形成し、次いで熱硬化性接着シートの他方の面を他の剥離性のシート状基材で覆うこともできる。
【0061】
熱硬化性接着シートの乾燥膜厚は、充分な接着性、ハンダ耐熱性を発揮させる為、また取り扱い易さの点から、5~500μmであることが好ましく、更に好ましくは10~100μmである。
塗布方法としては、例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等が挙げられる。
【0062】
<支持フィルム>
用いられる支持フィルムのうち剥離性のないものとしては、各種プラスチックフィルムが挙げられ、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルムが挙げられる。
用いられる支持フィルムのうち剥離性のあるものとしては、各種プラスチックフィルムに剥離処理をしたものや、紙に剥離処理をしたもの等が挙げられる。剥離処理の対象とされる各種プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0063】
<シート状硬化物>、<保護シート付きプリント配線板>
本発明のシート状硬化物とは、本発明の熱硬化性接着シートを熱硬化、例えば40~200℃程度の温度で硬化してなるものと定義する。
【0064】
<積層体>
本発明の積層体は、ポリイミド樹脂接着剤、フィルム状接着剤、接着シートが少なくとも2つの基材の間に積層されたものである。例えば、銅箔とポリイミド等の支持フィルムを積層する際に用いることができる。例えば、本発明の接着剤である電子材料を用いて第1の基材に接着層を形成したもの、あるいは、さらに、前記接着層に第2の基材を重ね合わせたものである。
基材は、特に限定されず、例えば、シート状または板状であり、従来公知のプラスチックフィルム、金属箔等が挙げられ、2つの基材を用いたときは、同種のものでも異種のものでも良い。
また、接着剤は繊維基材に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)状態にした後、金属箔やプラスチックフィルムへと積層、硬化させ接着シートとして使用することもできる。繊維基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Sガラス、低誘電ガラス、Qガラス等の無機物繊維;低誘電ガラスポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;並びにそれらの混合物などが挙げられる。特に、誘電特性の観点から、無機物繊維が好ましく、低誘電ガラス、Qガラスがより好ましい。
本発明の電子材料は、接着剤を支持フィルムである繊維基材に含侵させた場合、接着剤は連続した接着層を形成するので、接着層内に基材を有する形態となるが、本発明の電子材料の使用形態のひとつである。もちろん、接着シートは、シート状基材と接着層とが独立した積層体であってもよい。
【0065】
接着剤が、熱硬化性である場合、これを用いた接着シートを熱硬化性接着シートともいう。また、当該接着剤からなる層を、熱硬化性接着層という。
熱硬化性接着シートの片面を剥離性基材が覆い、他方の面をシート状基材(例えば、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム)が覆っている剥離性基材付き熱硬化性接着シートを用いる場合について説明する。
剥離性基材付き熱硬化性接着シートから剥離性基材を剥がす。露出した熱硬化性接着層に被着体(例えば、導電性回路を有するプリント配線板の前記回路面側)を重ねる。次いで、加熱・加圧することによって、シート状基材と被着体に挟まれた熱硬化性接着層を熱硬化して、熱硬化性接着層は、シート状硬化物となる。
このようにすれば、シート状硬化物を介して、導電性回路を有するプリント配線板の前
記回路面が、シート状基材(保護シート)で保護されてなる、保護シート付きプリント配線板を得ることができる。
【0066】
次に、熱硬化性接着シートの両面を2つの剥離性基材がそれぞれ覆っている剥離性基材付き熱硬化性接着シートを用いる場合について説明する。
剥離性基材付き熱硬化性接着シートから一方の剥離性基材を剥がす。露出した熱硬化性接着層に被着体(例えば、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム)を重ねる。熱硬化性接着層の他方の面を覆っていた他の剥離性基材を剥がす。露出した熱硬化性接着層に他の被着体(例えば、導電性回路を有するプリント配線板の前記回路面側)を重ねる。次いで、加熱・加圧することによって、両被着体に挟まれた熱硬化性接着層を熱硬化する。剥離性基材を最初に剥がした面に、導電性回路を有するプリント配線板の前記回路面側を重ねた後、熱硬化性接着層の他方の面にポリイミドフィルムやポリエステルフィルムを重ねることもできる。
【0067】
導電性回路を有するプリント配線板積層体(以下配線板ともいう)としては、ポリエステルやポリイミド等の可とう性、絶縁性のあるプラスチックフィルム上に、導電性回路を形成したフレキシブルプリント配線板が挙げられる。
導電性回路を設ける方法としては、例えば、接着層を介して又は介さずにベースフィルム上に銅箔を設けてなるフレキシブル銅張板の銅箔上に感光性エッチングレジスト層を形成し、回路パターンを持つマスクフィルムを通して露光させて、露光部のみを硬化させ、次いで未露光部の銅箔をエッチングにより除去した後、残っているレジスト層を剥離するなどして、銅箔から導電性回路を形成することができる。
あるいは、ベースフィルム上にスパッタリングやめっき等の手段で必要な回路のみを設ける方法も挙げられる。
あるいは、銀や銅の粒子を含有する導電性インキを用い、プリント技術によってベースフィルム上に導電性回路を形成する方法も挙げられる。
【0068】
<複数のフレキシブルプリント配線の多層化>
本発明の熱硬化性接着シートは、保護シート付きプリント配線板の製造に好適に用いられる他、以下のように用いることもできる。
複数のフレキシブルプリント配線の間に、本発明の熱硬化性接着シートを挟み、加熱・加圧することによって、熱硬化性接着シートを硬化させ、多層フレキシブルプリント配線板を得ることもできる。
【0069】
<フレキシブルプリント配線板用のベースフィルムと銅箔との貼り合わせ>
例えば、ポリイミドフィルムと銅箔との間に、本発明の熱硬化性接着シートを挟み、加熱・加圧することによって、熱硬化性接着シートを硬化させることもできる。
【0070】
<導電接着シート>
本発明の熱硬化性接着シートは、ポリイミド樹脂、硬化剤、特定量のアルカリ金属化合物の他に、銅や銀などの導電性金属フィラー、カーボンなどの導電性フィラーを配合し、分散してなる熱硬化性組成物をシート状にした導電性の熱硬化性接着シートとして用いることができる。
【0071】
<電磁波シールド>
さらに本発明の熱硬化性接着シートは、上記で作製した導電性の熱硬化性接着シートを用いて絶縁層との多層構成とすることで、電磁波シールドとしても用いることができる。また、導電層部分だけでなく、本発明の熱硬化性接着シートは絶縁層としても用いることができる。
【0072】
<熱伝導接着シート>
さらに本発明の熱硬化性接着シートは、ポリイミド樹脂、硬化剤、特定量のアルカリ金属化合物の他に、熱伝導性のある無機フィラー、金属フィラーなどを分散して配合し、分散してなる熱硬化性組成物をシート状にした熱伝導性の熱硬化性接着シートとして用いることができる。
【実施例
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の部、%は、特に指定がない場合は質量部、質量%を意味する。
【0074】
<数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mn、Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC-8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0075】
実施例中で使用する化合物の略称は、次の通りである。
MED-J:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン 製品名 キュアハードMED-J(クミアイ化学社製)
DMDO:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルエーテル(東京化成社製)
ОDA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル 和歌山精化工業社製
ダイマージアミン:製品名 プリアミン1075(クローダジャパン社製)
6FDA:2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル) 和歌山精化工業社製
BPAF:9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物 JFEケミカル社製
BISDA:1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物 SABICジャパン社製
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 三菱化学社製
α-BPDA:2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 JFEケミカル社製
【0076】
(製造例1)ポリイミド樹脂(1)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、6FDA119部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン34部を1時間かけて滴下した後、MED-J54部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約16,929、質量平均分子量約32,831のポリイミド樹脂(1)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0077】
(製造例2)ポリイミド樹脂(2)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、BPAF120部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン33部を1時間かけて滴下した後、MED-J52部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約17,389、質量平均分子量約34,331のポリイミド樹脂(2)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0078】
(製造例3)ポリイミド樹脂(3)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、BISDA126部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン31部を1時間かけて滴下した後、MED-J49部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約16,075、質量平均分子量約32,621のポリイミド樹脂(3)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0079】
(製造例4)ポリイミド樹脂(4)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、BPDA97部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン42部を1時間かけて滴下した後、MED-J66部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約12,929、質量平均分子量約25,180のポリイミド樹脂(4)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0080】
(製造例5)ポリイミド樹脂(5)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、α-BPDA97部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン42部を1時間かけて滴下した後、MED-J66部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約13,156、質量平均分子量約26,735のポリイミド樹脂(5)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0081】
(製造例6)ポリイミド樹脂(6)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、BISDA125部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン30部を1時間かけて滴下した後、DMDO51部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約13,489、質量平均分子量約26,809のポリイミド樹脂(6)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0082】
(製造例7)ポリイミド樹脂(7)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、6FDA126部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン8部を1時間かけて滴下した後、MED-J72部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約11,832、質量平均分子量約23,154のポリイミド樹脂(7)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0083】
(製造例8)ポリイミド樹脂(8)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、6FDA109部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン64部を1時間かけて滴下した後、MED-J32部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約14,320、質量平均分子量約28,920のポリイミド樹脂(8)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0084】
(製造例9)ポリイミド樹脂(9)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、6FDA129部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。MED-J77部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約11,562、質量平均分子量約23,145のポリイミド樹脂(9)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0085】
(製造例10)ポリイミド樹脂(10)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、6FDA144部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ODA62部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約13,533、質量平均分子量約27,513のポリイミド樹脂(10)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0086】
(製造例11)ポリイミド樹脂(11)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、6FDA131部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ダイマージアミン30部を1時間かけて滴下した後、ODA45部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約11,966、質量平均分子量約23,682のポリイミド樹脂(11)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0087】
(製造例12)ポリイミド樹脂(12)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサノン483部、BISDA150部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。ODA56部を滴下し、140℃に昇温して14時間脱水反応を行い、数平均分子量約14,344、質量平均分子量約28,690のポリイミド樹脂(12)を得た。樹脂固形分濃度は30%であった。
【0088】
[実施例1]
製造例1で得られたポリイミド樹脂(1)をブレードコーターを用いて剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように均一に塗工して乾燥させ、乾燥後ポリエステルフィルムからフィルム状のポリイミド樹脂を剥離することで接着シートを得た。
[実施例2~9、比較例1~3]
表1記載の材料及び配合量を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、接着シートを得た。
【0089】
(ガラス転移温度 Tgの測定)
得られた接着シートについて、株式会社島津製作所製「示差走査熱量計DSC-60 PLUS」を用いて、開始温度25℃、終了温度250℃、昇温速度10.0℃/minの条件にて、試料10mgを用いて、1回目の昇温後に開始温度まで急冷し、同条件で2サイクル目に測定した時のピーク値から測定行った。
【0090】
(濡れ性の評価)
得られた接着シートについて、外観を目視観察し、以下の基準にて評価した。
◎:直径1mm以下の小さな気泡状の模様が観察されない(非常に良好)
○:直径1mm以下の小さな気泡状の模様が多少観察される(良好)
△:直径1mm以下の小さな気泡状の模様が多数観察される(使用可能)
×:直径1mm以上の大きな気泡状の模様が多数観察される(使用不可)
【0091】
(比誘電率の評価)
エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が10GHzにおける比誘電率を求め、以下の基準にて評価した。
◎:比誘電率2.7未満(非常に良好)
○:比誘電率2.7以上2.8未満(良好)
△:比誘電率2.8以上3.1未満(使用可能)
×:比誘電率3.1以上(使用不可)
【0092】
(誘電正接の評価)
エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が10GHzにおける誘電正接を求め、以下の基準にて評価した。
◎:誘電正接0.005未満(非常に良好)
○:誘電正接0.005以上0.007未満(良好)
△:誘電正接0.007以上0.015未満(使用可能)
×:誘電正接0.015以上(使用不可)
【0093】
【表1】
【0094】
(銅箔基材付き接着シートの作製)
実施例1で作成した接着シートの接着面に、18μm厚の電解銅箔(商品名「F2-WS」、古河サーキットフォイル(株)製)の処理面を重ね合わせ、圧力10MPa、180℃及び1分間の条件で加熱プレスした後、更に200℃で1時間加熱することにより、基材付き接着シートを作製した。
【0095】
(ポリイミドフィルム基材付き接着シートの作成)
製造例1~12で得られたポリイミド樹脂をそれぞれ、カプトン(R)Hタイプ(東レ・デュポン社製)に乾燥後の厚みが30μmとなるようブレードコーターにて塗布し、200℃で30分間加熱することにより接着シートを得た。得られたポリイミドフィルム基材付き接着シートに関して、上記剥離処理されたポリエステルフィルム上と同様に濡れ性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(積層体の作製)
ポリイミドフィルム基材付き接着シートの接着剤面に、前記電解銅箔(F2-WS)の処理面を重ね合わせた後、圧力10MPaおよび200℃の条件で1分間加熱プレスすることにより積層体を作製した。
【0097】
表1に示すように、本発明の電子材料から得られた接着シートは、濡れ性が良いためポリイミド樹脂を均一に作成し易く、作業性が良好であり、比誘電率、誘電正接等の誘電特性に優れ、且つ比較的高いガラス転移温度を有している。
特に、ダイマージアミンを芳香族アミン(A-1)に対して10~200部併用した実施例1~8は優れた誘電特性を示した。
また、その中でも40質量%以上100質量%以下である実施例1~5は優れた誘電特性と高いガラス転移温度を両立している。
その中でも特に、フッ素含有ポリカルボン酸無水物を使用した実施例1は誘電特性が特に優れていた。
【0098】
(プリント配線板の作製)
実施例1に係る接着剤組成物を、カプトン(R)Hタイプに乾燥後の厚みが30μmとなるようブレードコーターにて塗布し、180℃で3分間乾燥させることによって、接着シートを得た。次いで、該接着シートの接着剤面に前記電解銅箔(F2-WS)の処理面を重ね合わせ、180℃のラミネートロールで圧着した後、200℃,2時間処理することによって積層体を得た。この積層体の銅表面をソフトエッチング処理し、銅回路を形成し、その上にさらに前記方法で得た基材つき接着シートのポリイミド面を重ねあわせ、圧力10MPa、180℃及び1分間の条件で加熱プレスした後、更に200℃で1時間加熱することにより、フレキシブルプリント配線板を作製することができた。また、他の実施例の接着剤組成物についても同様にしてフレキシブルプリント配線板を作製できたことを確認した。