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特許7533107樹脂組成物、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20240806BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20240806BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20240806BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240806BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240806BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240806BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08G59/40
C08G59/42
C08G59/50
C08G73/10
C08K3/013
C08L63/00 A
C08L79/08 B
H05K1/03 610L
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020174131
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065507
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/076515(WO,A1)
【文献】特開2019-014827(JP,A)
【文献】特開2010-053223(JP,A)
【文献】特開平1-167332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/40
C08G 59/42
C08G 59/50
C08G 73/10
C08K 3/013
C08L 63/00
C08L 79/08
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C)下記式(c1)で表される構造単位を含むポリイミド樹脂とを含む樹脂組成物。
【化1】
[式(c1)中、
は、下記式(c1-1)で表される4価の基であり、
は、下記式(c1-2)で表される2価の基である。
【化2】
(式(c1-1)中、
Ar11、Ar12、Ar13及びAr14は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
11、L12及びL13は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc1は、0以上の整数を表す。)
【化3】
(式(c1-2)中、
Ar21、Ar22、Ar23及びAr24は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
21、L22及びL23は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc2は、2以上の整数を表す。)]
【請求項2】
式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、
式(c1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
式(c1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、
式(c1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分が、さらに下記式(c2)で表される構造単位を含む樹脂である、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(c2)中、
は、置換基を有していてもよい4価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい4価の芳香族基を表し、
は、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。但し、RがRと同じ場合、RはRとは異なり、RがRと同じ場合、RはRとは異なる。)
【請求項5】
が、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、当該置換基の1つが、炭素数1~6のアルキル基である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
が、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、かつ、イソホロンジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基である、請求項又はに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
がRと同じである、請求項の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C’)ポリイミド樹脂とを含み、
(C’)成分が、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物に由来する第1の骨格と、4,4’-[1,4-フェニレンビス[(1-メチルエチリデン)-4,1-フェニレンオキシ]]ビスベンゼンアミンに由来する第2の骨格とを含む樹脂である、樹脂組成物。
【請求項10】
(C’)成分が、第2の骨格とは異なる第3の骨格をさらに含む樹脂であり、当該第3の骨格が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物に由来する骨格である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
第3の骨格が、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物に由来する骨格である、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(C’)成分が、イソホロンジアミンに由来する骨格をさらに含む樹脂である、請求項11の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(C’)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である、請求項12の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C”)ポリイミド樹脂とを含み、
(C”)成分が、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、4,4’-[1,4-フェニレンビス[(1-メチルエチリデン)-4,1-フェニレンオキシ]]ビスベンゼンアミンとを少なくとも含有するモノマー組成物を重合させてイミド化することによって得られる樹脂である、樹脂組成物。
【請求項15】
前記モノマー組成物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物をさらに含有する、請求項14に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記モノマー組成物が、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物をさらに含有する、請求項14又は15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記モノマー組成物が、イソホロンジアミンをさらに含有する、請求項1416の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
(C”)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である、請求項1417の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
(B)成分が、(B-1)活性エステル化合物を含む、請求項1~18の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
さらに(D)無機充填材を含む、請求項1~19の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上である、請求項20に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
硬化物のガラス転移温度が140℃以上である、請求項1~21の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項23】
硬化物の誘電正接の値が0.003未満である、請求項1~22の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項24】
硬化物の誘電率の値が3.0以上である、請求項1~23の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項25】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1~24の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項26】
請求項1~25の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項27】
請求項1~25の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
【請求項28】
支持体と、当該支持体上に設けられた請求項1~25の何れか1項に記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
【請求項29】
請求項1~25の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備えるプリント配線板。
【請求項30】
請求項29に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリイミドが開示されている。斯かるポリイミドからなるポリイミドフィルムは、接着剤層を設けることにより、例えば、カバーレイフィルムに用いられる(特許文献1の段落[0063]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-014827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリント配線板の絶縁層に用いる硬化性樹脂材料には、パターニング後における歩留りに優れることが求められている。
【0005】
本発明の課題は、パターニング後における歩留りに優れる新規な樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成を有する樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C)下記式(c1)で表される構造単位を含むポリイミド樹脂とを含む樹脂組成物。
【化1】
[式(c1)中、
は、下記式(c1-1)で表される4価の基であり、
は、下記式(c1-2)で表される2価の基である。
【化2】
(式(c1-1)中、
Ar11、Ar12、Ar13及びAr14は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
11、L12及びL13は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc1は、0以上の整数を表す。)
【化3】
(式(c1-2)中、
Ar21、Ar22、Ar23及びAr24は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
21、L22及びL23は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc2は、1以上の整数を表す。)]
[2] 式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、
式(c1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 式(c1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、
式(c1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分が、さらに下記式(c2)で表される構造単位を含む樹脂である、[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(c2)中、
は、置換基を有していてもよい4価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい4価の芳香族基を表し、
は、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。但し、RがRと同じ場合、RはRとは異なり、RがRと同じ場合、RはRとは異なる。)
[5] Rが、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、当該置換基の1つが、炭素数1~6のアルキル基である、[4]に記載の樹脂組成物。
[6] Rが、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、かつ、イソホロンジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基である、[4]又は[5]に記載の樹脂組成物。
[7] RがRと同じである、[4]~[6]の何れかに記載の樹脂組成物。
[8] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である、[1]~[7]の何れかに記載の樹脂組成物。
[9] (A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C’)ポリイミド樹脂とを含み、
(C’)成分が、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物に由来する第1の骨格と、4,4’-[1,4-フェニレンビス[(1-メチルエチリデン)-4,1-フェニレンオキシ]]ビスベンゼンアミンに由来する第2の骨格とを含む樹脂である、樹脂組成物。
[10] (C’)成分が、第2の骨格とは異なる第3の骨格をさらに含む樹脂であり、当該第3の骨格が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物に由来する骨格である、[9]に記載の樹脂組成物。
[11] 第3の骨格が、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物に由来する骨格である、[10]に記載の樹脂組成物。
[12] (C’)成分が、イソホロンジアミンに由来する骨格をさらに含む樹脂である、[9]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物。
[13] (C’)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である、[9]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物。
[14] (A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C”)ポリイミド樹脂とを含み、
(C”)成分が、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、4,4’-[1,4-フェニレンビス[(1-メチルエチリデン)-4,1-フェニレンオキシ]]ビスベンゼンアミンとを少なくとも含有するモノマー組成物を重合させてイミド化することによって得られる樹脂である、樹脂組成物。
[15] 前記モノマー組成物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物をさらに含有する、[14]に記載の樹脂組成物。
[16] 前記モノマー組成物が、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物をさらに含有する、[14]又は[15]に記載の樹脂組成物。
[17] 前記モノマー組成物が、イソホロンジアミンをさらに含有する、[14]~[16]の何れかに記載の樹脂組成物。
[18] (C”)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である、[14]~[17]の何れかに記載の樹脂組成物。
[19] (B)成分が、(B-1)活性エステル化合物を含む、[1]~[18]の何れかに記載の樹脂組成物。
[20] さらに(D)無機充填材を含む、[1]~[19]の何れかに記載の樹脂組成物。
[21] (D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上である、[20]に記載の樹脂組成物。
[22] 硬化物のガラス転移温度が140℃以上である、[1]~[21]の何れかに記載の樹脂組成物。
[23] 硬化物の誘電正接の値が0.003未満である、[1]~[22]の何れかに記載の樹脂組成物。
[24] 硬化物の誘電率の値が3.0以上である、[1]~[23]の何れかに記載の樹脂組成物。
[25] プリント配線板の絶縁層用である、[1]~[24]の何れかに記載の樹脂組成物。
[26] [1]~[25]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[27] [1]~[25]の何れかに記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
[28] 支持体と、当該支持体上に設けられた[1]~[25]の何れかに記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
[29] [1]~[25]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を備えるプリント配線板。
[30] [29]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パターニング後における歩留りに優れる新規な樹脂組成物;並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置を提供することができる。
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C)第1の特定ポリイミド樹脂、(C’)第2の特定ポリイミド樹脂又は(C”)第3の特定ポリイミド樹脂とを含むことを特徴とする。第1~第3の特定ポリイミド樹脂については後述する。
【0010】
エポキシ硬化系において(C)成分、(C’)成分又は(C”)成分を含む本発明の樹脂組成物(以下、それぞれ、「第1の実施形態に係る樹脂組成物」、「第2の実施形態に係る樹脂組成物」、「第3の実施形態に係る樹脂組成物」ともいう。また、これらを総称して「本発明の樹脂組成物」ともいうことがある)は、パターニング後における歩留りに優れる硬化物をもたらす。さらには、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電特性、耐熱性といった特性においても優れる傾向を示す。また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、低粗度であり、かつ、めっきに対する密着性(以下、「めっき密着性」ともいう)に優れる傾向を示す。したがって、本発明の樹脂組成物は、優れた特性を有する硬化物(絶縁層)の提供を実現するものであり、昨今のプリント配線板及び半導体装置における高機能化の要求に著しく寄与するものである。
【0011】
[第1の実施形態に係る樹脂組成物]
本発明の第1の実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C)第1の特定ポリイミド樹脂とを含むことを特徴とする。
【0012】
-(A)エポキシ樹脂-
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、エポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0014】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0015】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。(A)成分は、液体状エポキシ樹脂であるか、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との組み合わせであることが好ましく、液体状エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0016】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP-4032-SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0020】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
固体状エポキシ樹脂の液状エポキシ樹脂に対する質量比(固体状エポキシ樹脂/液状エポキシ樹脂)は、特に限定されるものではないが、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは1以下、さらにより好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.1以下である。
【0023】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~2,000g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~1,000g/eq.、さらにより好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの化合物の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0024】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0025】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上又は5質量%以上である。樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、80質量%以下、60質量%以下、40質量%以下又は30質量%以下である。
【0026】
-(B)エポキシ硬化剤-
本発明の樹脂組成物は、(B)エポキシ硬化剤を含有する。エポキシ硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0027】
エポキシ硬化剤としては、(B-1)活性エステル化合物と、(B-2)活性エステル化合物以外のエポキシ硬化剤が挙げられる。誘電特性に優れる硬化物をもたらす観点から、(B)成分は、(B-1)活性エステル化合物を含むことが好ましい。
【0028】
(B-1)活性エステル化合物としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0029】
具体的には、(B-1)活性エステル化合物としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、及びナフタレン型活性エステル化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物がさらに好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0030】
(B-1)活性エステル化合物の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」、(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」(DIC社製)、;りん含有活性エステル化合物として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0031】
(B-1)活性エステル化合物の活性エステル基の当量は、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、活性エステル基1当量あたりの化合物の質量である。
【0032】
樹脂組成物中の(B-1)活性エステル化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、2質量%以上、4質量%以上、6質量%以上又は10質量%以上である。樹脂組成物中の(B-1)活性エステル化合物の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下である。一実施形態において、(B-1)成分の含有量は(A)成分の含有量よりも多く、好ましくは(A)成分の含有量の2倍量以下である。
【0033】
(B-2)活性エステル化合物以外のエポキシ硬化剤としては、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、チオール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤が挙げられる。一実施形態において、(B-1)成分と組み合わせる(B-2)成分としてフェノール系硬化剤が用いられる。フェノール系硬化剤の市販品としては、DIC社製「LA-3018-50P」(トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤)が挙げられる。
【0034】
(B-2)成分の活性エステル基当量は、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、活性エステル基1当量あたりの化合物の質量である。
【0035】
樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下又は2質量%以下とし得る。樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量の下限は、0質量%(すなわち不含)であり、特に限定されるものではないが、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上とし得る。(B-2)成分の含有量は、(B-1)成分の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0036】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、2質量%以上、4質量%以上、6質量%以上又は10質量%以上である。樹脂組成物中の(B)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下である。一実施形態において、(B)成分の含有量(質量部)は、(A)成分の含有量(質量部)よりも多く、好ましくは(A)成分の含有量の2倍量以下である。
【0037】
-(C)第1の特定ポリイミド樹脂-
本発明の第1の実施形態に係る樹脂組成物は、(C)成分として第1の特定ポリイミド樹脂を含有する。(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。本発明の第1の実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ硬化系において(C)成分を含むことにより、後述する実施例の欄において例証されるとおり、本発明の所期の効果を奏することができる。
【0038】
第1の特定ポリイミド樹脂は、下記式(c1)で表される構造単位(以下、「構造単位(c1)」ともいう)を含む。第1の特定ポリイミド樹脂中において、構造単位(c1)の数は、1以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。構造単位(c1)が複数である場合、構造単位(c1)を繰り返し単位として互いに連結されていてもよいし、互いに連結されていなくてもよい。互いに連結されていない場合、複数の構造単位(c1)は、それらの間に、他の構造単位(例えば、後述する式(c2)で表される構造単位)が介在することが好ましい。
【0039】
構造単位(c1)は、下記式(c1)で表される。
【化5】
[式(c1)中、
は、下記式(c1-1)で表される4価の基であり、
は、下記式(c1-2)で表される2価の基である。
【0040】
【化6】
(式(c1-1)中、
Ar11、Ar12、Ar13及びAr14は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
11、L12及びL13は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc1は、0以上の整数を表す。)
【0041】
【化7】
(式(c1-2)中、
Ar21、Ar22、Ar23及びAr24は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
21、L22及びL23は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc2は、1以上の整数を表す。)]
【0042】
式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が表す芳香族環(以下、「芳香族環C」ともいう)は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の芳香族環であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の芳香族炭素環である。したがって、好適な一実施形態において、式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である。ここで、「芳香族環」という用語は、本明細書において、環上のπ電子系に含まれる電子数が4n+2個(nは自然数)であるヒュッケル則に従う環を意味し、単環式の芳香族環、及び2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合芳香族環を含む。芳香族環は、炭素環又は複素環であり得る。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式の芳香族環;ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合環;インダン環、フルオレン環、テトラリン環等の1個以上の単環式の芳香環に1個以上の単環式の非芳香族環が縮合した縮合環等が挙げられる。このうち、炭素原子数6~14の芳香族炭素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0043】
式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が置換基を有する芳香族環を表す場合、該置換基の数は限定されない。そのような置換基(以下、「置換基S」ともいう)としては、互いに独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基、アルキリデン基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びオキソ基が挙げられる。
【0044】
式(c1-1)中、L11、L12及びL13が表す2価の連結基は、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基である。2価の連結基の例としては、-SO-、-CO-、-COO-、-O-、-S-、-O-C-O-(ここで、-C-は、フェニレン基を表す。)、-O-C-C(CH-C-O-、-COO-(CH-OCO-(ここで、qは、1~20の整数を表す。)、-COO-HC-HC(-O-C(=O)-CH)-CH-OCO-、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR-(ここで、Rは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)及び-C(=O)-NR-が挙げられる。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ジメチルメチレン基等が挙げられ、ジメチルメチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。上述のアルキル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、さらに置換基を有していてもよい。当該置換基の例は、置換基Cの例と同じである。L11、L12及びL13が表す2価の連結基は、芳香族環を含まないことが好ましい。一実施形態において、L11が表す2価の連結基とL13が表す2価の連結基とが互いに同じであり、L11が表す2価の連結基とL12が表す2価の連結基とが互いに異なる。好適な一実施形態において、式(c1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、より好適な一実施形態において、式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、かつ、式(c1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基である。さらに好適な一実施形態において、式(c1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12がジメチルメチレン基である。
【0045】
式(c1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が表す芳香族環及び当該芳香族環が有していてもよい置換基の例は、それぞれ、芳香族環C及び置換基Sの例と同じである。したがって、好適な一実施形態において、式(c1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である。また、好適な一実施形態において、式(c1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、より好適な一実施形態において、式(c1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、かつ、式(c1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である。さらに好適な一実施形態において、式(c1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22がジメチルメチレン基である。特に好適な一実施形態において、式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、かつ、式(c1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である。また、別の特に好適な一実施形態において、式(c1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、かつ、式(c1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である。より特に好適な一実施形態において、式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、式(c1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、式(c1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、かつ、式(c1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である。
【0046】
式(c1-1)中、nc1は、好ましくは1以上の整数を表す。nc1が表す整数の上限は、特に制限されるものではないが、例えば50、40、30又は20とし得る。
【0047】
式(c1-2)中、nc2は、好ましくは2以上の整数を表す。nc2が表す整数の上限は、特に制限されるものではないが、例えば60、50、40又は30とし得る。ある実施形態において、式(c1-1)中、nc2が示す整数は、nc1が示す整数よりも大きく、かつ、nc1+5よりも小さい。特定の実施形態において、式(c1-1)中、nc1が1であり、かつ、nc2が2である。
【0048】
上述した構造単位(c1)は、例えば公知のポリイミド樹脂の製造方法、典型的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法又はテトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法にしたがって得ることが可能である。なお、第1の特定ポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0049】
上記特定の実施形態における構造単位(c1)は、例えば、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(下記式(I)で表される化合物;以下、「BPADA」ともいう)と、4,4’-[1,4-フェニレンビス[(1-メチルエチリデン)-4,1-フェニレンオキシ]]ビスベンゼンアミン(下記式(II)で表される化合物;以下、「BPPAN」ともいう)と、を反応させることによって得ることが可能である。すなわち、斯かる構造単位(c1)におけるRは、BPADAに由来する骨格であり、かつ、Rは、BPPANに由来する骨格である。
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
また、第1の特定ポリイミド樹脂は、さらに下記式(c2)で表される構造単位(以下、「構造単位(c2)」ともいう)を含む樹脂であってもよい。したがって、ある実施形態において、(C)成分が、さらに下記式(c2)で表される構造単位を含む樹脂である。第1の特定ポリイミド樹脂中において、構造単位(c2)の数は、0以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。構造単位(c2)は、そのイミド基の窒素原子を介して、構造単位(c1)の基Rと連結されていてもよいし、構造単位(c1)と連結されていなくてもよい。構造単位(c2)が複数である場合、構造単位(c2)を繰り返し単位として互いに連結されていてもよいし、互いに連結されていなくてもよい。互いに連結されていない場合、複数の構造単位(c2)は、それらの間に、他の構造単位(例えば、構造単位(c1))が介在することが好ましい。
【0053】
構造単位(c2)は、下記式(c2)で表される。
【化10】
(式(c2)中、
は、置換基を有していてもよい4価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい4価の芳香族基を表し、
は、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。但し、RがRと同じ場合、RはRとは異なり、RがRと同じ場合、RはRとは異なる。)
【0054】
式(c2)中、Rが表す4価の脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる4価の基である。式(c2)中、Rが表す4価の脂肪族基は、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の4価の脂肪族基である。式(c2)中、Rが置換基を有する4価の脂肪族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0055】
式(c2)中、Rが表す4価の芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、式(c1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が表す芳香族環の例と同じである。式(c2)中、Rが置換基を有する4価の芳香族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0056】
が表す4価の芳香族基としては、置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物から2つの酸無水物基を除いた基が挙げられる。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物の具体例を挙げると、BPADA、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0057】
式(c2)中、Rが表す2価の脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基である。式(c2)中、Rが表す2価の脂肪族基は、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の2価の脂肪族基である。式(c2)中、Rが置換基を有する2価の脂肪族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じであり、例えば、炭素数1~6のアルキル基である。したがって、ある実施形態において、Rが、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、当該置換基の1つが、炭素数1~6のアルキル基である。また、特定の実施形態において、Rが、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、かつ、イソホロンジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基である。
【0058】
が置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表す場合、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンから選択される、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。これらジアミン化合物は、その脂肪族基が直鎖型であることに特徴がある。
【0059】
が置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表す場合、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンから選択される、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。これらジアミン化合物は、その脂肪族基が分岐型であることに特徴がある。
【0060】
が置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表す場合、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ジアミノアダマンタン、3,3’-ジアミノ-1,1’-ビアダマンチル及び1,6-ジアミノアダマンタンから選択される、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。これらジアミン化合物は、その脂肪族基が脂環式炭素環を含むことに特徴がある。
【0061】
式(c2)中、Rが表す2価の芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の2価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の2価の芳香族炭素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。式(c2)中、Rが置換基を有する2価の芳香族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0062】
が、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す場合、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-フェニレンジアミン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンから選択される、置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。
【0063】
但し、RがRと同じ場合、RはRとは異なり、RがRと同じ場合、RはRとは異なる。ある実施形態において、RがRと同じである。すなわち、構造単位(c2)は、構造単位(c1)とは異なる。
【0064】
上述した構造単位(c2)は、例えば、公知のポリイミド樹脂の製造方法にしたがって得ることが可能である。上記特定な実施形態における構造単位(c2)は、例えば、BPADAと、イソホロンジアミンとを反応させることによって得ることが可能である。すなわち、斯かる構造単位(c2)におけるRは、BPADAに由来する骨格であり、かつ、Rは、イソホロンジアミンに由来する骨格である。RがRと同じである場合、R及びRは、BPADAに由来する骨格である。なお、第1の特定ポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0065】
(C)成分は、構造単位(c1)を有する限り、その末端構造は特に限定されない。例えば、(C)成分の末端構造は、(C)成分の原料化合物(例えばBPADA等の酸、BPPAN等のアミン化合物)由来の酸無水物基又はカルボキシル基やアミノ基であってもよい。原料化合物にマレイン酸無水物がさらに含まれる場合、(C)成分の末端構造はマレイミド基であってもよい。
【0066】
(C)成分のガラス転移温度Tg(c)(℃)は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらにより好ましくは160℃以上、特に好ましくは170℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度Tg(c)(℃)の測定は、後述する<耐熱性の評価>と同様の方法に従って測定することができる。
【0067】
(C)成分における構造単位(c1)の含有割合(百分率)は、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。(C)成分の構造単位(c1)の含有割合(百分率)は、例えば、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下又は85質量%以下とし得る。ここで、構造単位(c1)の含有割合(百分率)は、(C)成分を合成するために用いた各材料の仕込み量(質量部)の割合から算出することができ、これに代えて、(C)成分の分子量と、構造単位(c1)の式量とを特定し、構造単位(c1)の式量の分子量に対する割合として算出してもよい。(C)成分が重合体である場合には、重合度から推定される構造単位(c1)の含有割合(百分率)が前記の範囲内となることが好ましい。
【0068】
(C)成分がさらに構造単位(c2)を含む樹脂である場合、当該構造単位(c2)の含有割合(百分率)は、0質量%(すなわち構造単位(c2)不含)を許容し、本発明の効果を過度に損なわない限りその上限は限定されない。そこで、(C)成分における構造単位(c2)の含有割合(百分率)は、例えば、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下とし得る。ここで、構造単位(c2)の含有割合(百分率)は、構造単位(c1)の含有割合(百分率)と同様に算出される。(C)成分が重合体である場合には、重合度から推定される構造単位(c2)の含有割合(百分率)が前記の範囲内となることが好ましい。
【0069】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であり、好ましくは1,00~10,000、より好ましくは1,000~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0070】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上又は0.7質量%以上である。樹脂組成物中の(C)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下とし得る。したがって、好適な一実施形態において、(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である。
【0071】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.9質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上又は2.1質量%以上である。樹脂組成物中の(C)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下又は30質量%以下とし得る。樹脂組成物中の樹脂成分とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち後述する(D)無機充填材を除いた成分を表す。
【0072】
-(D)無機充填材-
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として無機充填材を含んでいてもよい。好適な一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、(D)無機充填材をさらに含む。また、樹脂組成物が(D)成分を含むことで、耐熱性(例えば、ガラス転移温度)に優れる硬化物をもたらすことができる。
【0073】
(D)成分としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(D)成分の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0075】
(D)成分の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。(D)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0076】
(D)成分の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、3m/g以上又は5m/g以上である。該比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは80m/g以下、さらに好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。(D)成分の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM-1210」)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0077】
(D)成分は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(D)成分の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物;シラザン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0079】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、好ましくは0.2~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0080】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。(D)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0081】
樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、本発明の所期の効果を高める観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、60質量%超、65質量%以上又は70質量%以上である。(D)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではなく、樹脂成分の含有量に応じて定まる。したがって、好適な一実施形態において、(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上である。
【0082】
-(E)ラジカル重合性化合物-
本発明の樹脂組成物は、(E)成分としてラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。ただし、(E)成分からは、エポキシ基を有する化合物及び(C)成分(並びに後述する(C’)成分及び(C”)成分)は除かれる。(E)ラジカル重合性化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0083】
(E)ラジカル重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物であり得る。ラジカル重合性不飽和基としては、ラジカル重合可能である限り特に限定されるものではないが、末端又は内部に炭素-炭素二重結合を有するエチレン性不飽和基が好ましく、具体的に、アリル基、3-シクロヘキセニル基等の不飽和脂肪族基;p-ビニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、スチリル基等の不飽和脂肪族基含有芳香族基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基、フマロイル基等のα,β-不飽和カルボニル基等であり得る。(E)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性不飽和基を1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましい。
【0084】
(E)ラジカル重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物を広く使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、(E-1)マレイミド化合物、(E-2)ビニルベンジル化合物、(E-3)マレイミド化合物及びビニルベンジル化合物以外のラジカル重合性化合物等が挙げられる。
【0085】
--(E-1)マレイミド化合物--
(E-1)マレイミド化合物は、エポキシ基不含の化合物であって、1分子中に、1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基を含有する有機化合物である。(E-1)マレイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(E-1)マレイミド化合物は、例えば、(A)成分以外の(E-1-1)マレイミド末端ポリイミド、(E-1-2)芳香族マレイミド化合物、及び(E-1-3)脂肪族マレイミド化合物から選ばれる少なくとも1種のマレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0086】
---(E-1-1)マレイミド末端ポリイミド---
(E-1-1)マレイミド末端ポリイミドは、両末端にマレイミド基を有する鎖状ポリイミドである。(E-1-1)マレイミド末端ポリイミドは、例えば、ジアミン化合物とマレイン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる成分であり得る。
【0087】
一実施形態において、(E-1-1)マレイミド末端ポリイミドは、例えば、下記の式(E11a)で表されるビスマレイミド化合物である。
【0088】
【化11】
【0089】
上記式(E11a)中、n+1個のBは、それぞれ独立して、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる2個以上(例えば2~3000個、2~1000個、2~100個、2~50個)の骨格原子(好ましくは炭素原子)からなる2価の有機基(好ましくは2価の環(例えば単環式の非芳香環、芳香環)含有有機基)を示し;n個のBは、それぞれ独立して、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる2個以上(例えば2~3000個、2~1000個、2~100個、2~50個)の骨格原子(好ましくは炭素原子)からなる4価の有機基(好ましくは4価の環(例えば単環式の非芳香環、芳香環、好ましくは芳香環)含有有機基)を示し;nは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、特に好ましくは1~20の整数)を示す。なお、n単位は、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、式(E11a)は、Bは先述のRではないとの条件、及び、Bは先述のRではないとの条件の少なくとも一方を満たす。
【0090】
他の実施形態において、(E-1-1)マレイミド末端ポリイミドは、好ましくは、下記の式(E11b)で表されるビスマレイミド化合物である。
【0091】
【化12】
【0092】
上記式(E11b)中、Y31は、それぞれ独立して、単結合、アルキレン基又はアルケニレン基を示し;Y32は、それぞれ独立して、単結合又は連結基を示し;Xは、それぞれ独立して、単結合又は連結基を示し;Z及びZは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい単環式の非芳香環、又は置換基を有していてもよい芳香環を示し;Rは、それぞれ独立して、置換基(好ましくはアルキル基)を示し;aは、それぞれ独立して、0~2の整数を示し;bは、それぞれ独立して、0又は1を示し;eは、0又は1以上の整数を示し;nは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、特に好ましくは1~20の整数)を示す。
【0093】
(E-1-1)マレイミド末端ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500~50000、より好ましくは1000~20000である。
【0094】
(E-1-1)マレイミド末端ポリイミドのマレイミド基の官能基当量は、好ましくは300g/eq.~20000g/eq.、より好ましくは500g/eq.~10000g/eq.である。
【0095】
(E-1-1)マレイミド末端ポリイミドの市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」等が挙げられる。
【0096】
---(E-1-2)芳香族マレイミド化合物---
(E-1-2)芳香族マレイミド化合物は、エポキシ基不含かつ(E-1-1)成分には該当しないマレイミド化合物であって、1分子中に、1個以上の芳香環を含み且つ1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基を含有するマレイミド化合物を意味する。一実施形態において、(E-1-2)芳香族マレイミド化合物は、付加重合型の芳香族マレイミドであり得る。(E-1-2)芳香族マレイミド化合物は、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド等の1個の芳香環を有するマレイミド化合物であってもよいし、2個以上の芳香環を有するマレイミド化合物でもよいが、2個以上の芳香環を有するマレイミド化合物であることが好ましい。
【0097】
一実施形態において、(E-1-2)芳香族マレイミド化合物は、例えば、下記の式(E12)で表されるマレイミド化合物である。
【0098】
【化13】
【0099】
上記式(E12)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を示し;Xは、それぞれ独立して、単結合又は連結基(好ましくは単結合又はアルキレン基)を示し;Zは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい単環式の非芳香環、又は置換基を有していてもよい芳香環(好ましくは置換基を有していてもよい芳香環、特に好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環)を示し;sは、1以上の整数を示し;tは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;uは、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは0)を示す。
【0100】
(E-1-2)芳香族マレイミド化合物は、好ましくは、下記の式(E12a)、(E12b)、(E12c)及び(E12d)のいずれかで表されるマレイミド化合物である。
【0101】
【化14】
【0102】
【化15】
【0103】
【化16】
【0104】
【化17】
【0105】
上記式(E12a)~(E12d)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;Xc1及びXc2は、それぞれ独立して、単結合又はアルキレン基を示し;sは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、さらに好ましくは1~20の整数)を示し;t’は、1~5の整数を示し;u1、u2及びu3は、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。なお、上記式(E12a)~(E12d)中、s単位、t単位、t’単位、u単位、u1単位、u2単位及びu3単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0106】
(E-1-2)芳香族マレイミド化合物のマレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは150g/eq.~700g/eq.、特に好ましくは200g/eq.~500g/eq.である。
【0107】
(E-1-2)芳香族マレイミド化合物の市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキルノボラック型ポリマレイミド);ケイアイ化成社製「BMI-50P」;大和化成工業社製の「BMI-1000」、「BMI-1000H」、「BMI-1100」、「BMI-1100H」、「BMI-4000」、「BMI-5100」;ケイアイ化成社製「BMI-4,4’-BPE」、「BMI-70」、ケイアイ化成社製「BMI-80」等が挙げられる。(E-1-2)芳香族マレイミド化合物としては、後述する合成例3で調製されるマレイミド樹脂e1a又はその改変物を挙げることができる。
【0108】
---(E-1-3)脂肪族マレイミド化合物---
(E-1-3)脂肪族マレイミド化合物とは、非芳香族炭化水素(好ましくは炭素原子数2~50)を基本骨格とし且つ1分子中に2個以上(好ましくは2個)のマレイミド基を有する化合物である。
【0109】
一実施形態において、(E-1-3)脂肪族マレイミド化合物は、例えば、式(E13)で表されるマレイミド化合物である。
【0110】
【化18】
【0111】
上記式(E13)中、Xは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン基又はアルケニレン基(好ましくはアルキレン基又はアルケニレン基)を示し;Zは、それぞれ独立して、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよい単環式の非芳香環(好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよいモノシクロアルカン環又はモノシクロアルケン環)を示し;xは、0又は1以上の整数(好ましくは1以上の整数、特に好ましくは1)を示す。なお、上記式(E13)中、x単位は単位毎に単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0112】
(E-1-3)脂肪族マレイミド化合物の具体例としては、N,N’-エチレンジマレイミド、N,N’-テトラメチレンジマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンジマレイミド等の鎖状の脂肪族ビスマレイミド化合物;1-マレイミド-3-マレイミドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPBM)、1,1’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレン)ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(CBM)、1,1’-(4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MBCM)等の脂環式ビスマレイミド化合物;ダイマー酸骨格含有ビスマレイミド等が挙げられる。
【0113】
ダイマー酸骨格含有ビスマレイミドとは、ダイマー酸の二つの末端カルボキシ基(-COOH)を、マレイミド基又はマレイミドメチル基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イルメチル基)に置き換えたビスマレイミド化合物を意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数11~22のもの、特に好ましくは炭素数18のもの)を二量化することにより得られる既知の化合物であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されている。ダイマー酸は、とりわけ安価で入手しやすいオレイン酸、リノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36のダイマー酸を主成分とするものが容易に入手できる。また、ダイマー酸は、製造方法、精製の程度等に応じ、任意量のモノマー酸、トリマー酸、その他の重合脂肪酸等を含有する場合がある。また、不飽和脂肪酸の重合反応後には二重結合が残存するが、本明細書では、さらに水素添加反応させて不飽和度を低下させた水素添加物もダイマー酸に含めるものとする。
【0114】
(E-1-3)脂肪族マレイミド化合物のマレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは200g/eq.~600g/eq.、特に好ましくは300g/eq.~400g/eq.である。
【0115】
(E-1-3)脂肪族マレイミド化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-689」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」等が挙げられる。
【0116】
--(E-2)ビニルベンジル化合物--
(E-2)ビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル基を有するラジカル重合性化合物である。ビニルベンジル化合物は、1分子あたり2個以上のビニルベンジル基を有することが好ましい。ビニルベンジル基は、4-ビニルベンジル基が好ましい。
【0117】
一実施形態において、(E-2)ビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル基及びポリフェニレンエーテル骨格を有するビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテルである。ビニルベンジル基及びポリフェニレンエーテル骨格を有するビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテルは、好ましくは、下記の式(E2a)で表される繰り返し単位(繰り返し単位数は好ましくは2~300、より好ましくは2~100)及びビニルベンジル基を有するビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテルであり、より好ましくは、ポリフェニレンエーテルの両末端水酸基の水素原子をビニルベンジル基に置き換えた両末端ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテルである。
【0118】
【化19】
【0119】
上記式(E2a)中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基(好ましくは水素原子又はアルキル基、特に好ましくは水素原子又はメチル基)を示す。
【0120】
他の実施形態において、(E-2)ビニルベンジル化合物は、下記式(E2b)で表される繰り返し単位(繰り返し単位数は好ましくは2~200)を有するポリビニルベンゼン重合体である。
【0121】
【化20】
【0122】
上記式(E2b)中、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基(好ましくは水素原子)を示す。
【0123】
式(E2b)で表される繰り返し単位を有するポリビニルベンゼン重合体は、さらに、スチレン単位、エチルスチレン単位等のその他のスチレン骨格単位を有する共重合体であってもよい。その他のスチレン骨格単位を有する場合、式(E2b)の繰り返し単位の割合は、全スチレン骨格単位に対して5~70モル%であることが好ましい。
【0124】
(E-2)ビニルベンジル化合物の数平均分子量は、好ましくは500~100000、より好ましくは700~80000である。(E-2)ビニルベンジル化合物のビニル基の官能基当量は、好ましくは200g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは200g/eq.~2000g/eq.である。
【0125】
(E-2)ビニルベンジル化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル);日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「ODV-XET-X03」、「ODV-XET-X04」、「ODV-XET-X05」(ジビニルベンゼン重合体)等が挙げられる。
【0126】
--(E-3)マレイミド化合物及びビニルベンジル化合物以外のラジカル重合性化合物--
(E-3)マレイミド化合物及びビニルベンジル化合物以外のラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物が挙げられる。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するラジカル重合性化合物である。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、1分子あたり2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有することが好ましい。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基並びにポリフェニレンエーテル骨格を有する(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテルが好ましい。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、下記の式(E3)で表される繰り返し単位(繰り返し単位数は好ましくは2~300、より好ましくは2~100)並びにアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテルであることが好ましい。
【0127】
【化21】
【0128】
上記式(E3)中、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基(好ましくは水素原子又はアルキル基、特に好ましくは水素原子又はメチル基)を示す。
【0129】
式(E3)で表される繰り返し単位並びにアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルの両末端水酸基の水素原子をアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基に置き換えた両末端(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル)であることがより好ましい。
【0130】
(E-3)成分の数平均分子量は、好ましくは500~10000、より好ましくは700~5000である。(E-3)(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物のアクリロイル基及びメタクリロイル基の官能基当量は、好ましくは200g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは300g/eq.~2000g/eq.である。
【0131】
(E-3)成分の市販品としては、例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)等が挙げられる。
【0132】
樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下とし得る。一実施形態において、(E)成分の含有量は、(C)成分の含有量よりも少ない。樹脂組成物中の(E)成分の含有量の下限は、0質量%(すなわり不含)であり、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、2質量%以上等とし得る。
【0133】
-(F)有機充填材-
本発明の樹脂組成物は、(F)成分として有機充填材を含んでいてもよい。(F)有機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0134】
(F)有機充填材は、樹脂組成物中に粒子状の形態で存在する。(F)有機充填材としては、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、本発明においては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、ゴム粒子を用いることが好ましい。
【0135】
ゴム粒子に含まれるゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソブチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられ、好ましくは、オレフィン系熱可塑性エラストマーであり、より好ましくは、スチレン-ブタジエン共重合体である。さらにゴム成分には、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムを混合してもよい。ゴム粒子に含まれるゴム成分は、ガラス転移温度が例えば0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。
【0136】
(F)有機充填材は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、コア-シェル型ゴム粒子であることが好ましい。コア-シェル型ゴム粒子とは、上記で挙げたようなゴム成分を含むコア粒子と、それを覆う1層以上のシェル部からなる粒子状の有機充填材である。さらに、コア-シェル型粒子は、上記で挙げたようなゴム成分を含むコア粒子と、コア粒子に含まれるゴム成分と共重合可能なモノマー成分をグラフト共重合させたシェル部からなるコア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子であることが好ましい。ここでいうコア-シェル型とは、必ずしもコア粒子とシェル部が明確に区別できるもののみを指しているわけではなく、コア粒子とシェル部の境界が不明瞭なものも含み、コア粒子はシェル部で完全に被覆されていなくてもよい。
【0137】
ゴム成分は、コア-シェル型ゴム粒子中に、40質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。コア-シェル型ゴム粒子中のゴム成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、コア粒子をシェル部で十分に被覆する観点から、例えば、95質量%以下、90質量%であることが好ましい。
【0138】
コア-シェル型ゴム粒子のシェル部を形成するモノマー成分は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミド;マレイミド;マレイン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;スチレン、4-ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル等を含み、中でも、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを含むことがより好ましい。
【0139】
コア-シェル型ゴム粒子の市販品としては、例えば、チェイルインダストリーズ社製の「CHT」;UMGABS社製の「B602」;ダウ・ケミカル日本社製の「パラロイドEXL-2602」、「パラロイドEXL-2603」、「パラロイドEXL-2655」、「パラロイドEXL-2311」、「パラロイド-EXL2313」、「パラロイドEXL-2315」、「パラロイドKM-330」、「パラロイドKM-336P」、「パラロイドKCZ-201」、三菱レイヨン社製の「メタブレンC-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンW-450A」「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエースM-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースMR-01」等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
(F)有機充填材の平均粒径(平均一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは80nm以上、特に好ましくは100nm以上である。(F)有機充填材の平均粒径(平均一次粒子径)の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは5,000nm以下、より好ましくは2,000nm以下、さらに好ましくは1,000nm以下、特に好ましくは500nm以下である。(F)有機充填材の平均粒径(平均一次粒子径)は、ゼータ電位粒度分布測定装置等を用いて測定できる。
【0141】
樹脂組成物中の(F)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下又は15質量%以下とし得る。一実施形態において、(F)成分の含有量は、(C)成分の含有量よりも少ない。樹脂組成物中の(F)成分の含有量の下限は、0質量%(すなわり不含)であり、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、2質量%以上等とし得る。
【0142】
-(G)硬化促進剤-
本発明の樹脂組成物は、(G)成分として硬化促進剤を含んでいてもよい。(G)硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0143】
(G)硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。一実施形態において、(G)硬化促進剤は、イミダゾール系硬化促進剤を含む。
【0144】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0145】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0146】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0147】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0148】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0149】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0150】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0151】
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0152】
樹脂組成物中の(G)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下又は1質量%以下とし得る。樹脂組成物中の(G)成分の含有量の下限は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0質量%(すなわり不含)であり、本発明の所期の効果を高める観点からは、0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
【0153】
-その他成分-
本発明の樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0154】
樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0155】
本発明において、樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に(A)成分、(B)成分及び(C)成分、また、必要に応じて(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、その他の添加剤や有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0156】
先述のとおり、(A)成分及び(B)成分を含むエポキシ硬化系において(C)成分を含む本発明の樹脂組成物は、パターニング後における歩留りに優れる硬化物をもたらす。さらには、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電特性、耐熱性といった特性においても優れる傾向を示す。また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、低粗度であり、かつ、めっきに対する密着性(以下、「めっき密着性」ともいう)に優れる傾向を示す。したがって、本発明の樹脂組成物は、優れた特性を有する硬化物(絶縁層)の提供を実現するものであり、昨今のプリント配線板及び半導体装置における高機能化の要求に著しく寄与するものである。
【0157】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、パターニング後における歩留りに優れるという特徴を呈する。例えば、後述する<歩留り性の評価>欄に記載の方法にしたがって樹脂シートがラミネートされた部分を観察した場合に、樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmより内側の部分に、不均一な部分(ムラ)が観察されない。例えば、後述する<歩留り性の評価>欄に記載の方法にしたがってデスミア(粗化処理)後の硬化基板を観察した場合に、銅層と絶縁層との層間剥離(クラック)が確認されない。したがって、より好適な一実施形態では、上記の不均一な部分(ムラ)が観察されず、かつ、上記層間剥離(クラック)が確認されないため、歩留りにより優れる硬化物をもたらす樹脂組成物が提供される。
【0158】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電特性に優れるという特徴を呈する傾向にある。例えば、後述する<誘電特性の評価>欄に記載の方法で測定した誘電正接(Df)の値は、0.003未満、0.0025以下、又は0.0022以下となり得る。したがって、好適な一実施形態では、硬化物の誘電正接の値が0.003未満である樹脂組成物が提供される。例えば、後述する<誘電特性の評価>欄に記載の方法で測定した誘電率(Dk)の値は、3.0以上、3.1以上、又は3.2以上となり得る。したがって、好適な一実施形態では、硬化物の誘電率の値が3.0以上である樹脂組成物が提供される。
【0159】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、耐熱性に優れるという特徴を呈する傾向にある。例えば、後述する<耐熱性の評価>欄に記載の方法で測定したガラス転移温度(TMA法)は、140℃以上、142℃以上、144℃以上、146℃以上又は148℃以上となり得る。上限は、樹脂組成物の組成等に応じておのずと定まる。したがって、好適な一実施形態では、硬化物のガラス転移温度が140℃以上である樹脂組成物が提供される。より好適な一実施形態では、硬化物の誘電正接の値が0.003未満であり、硬化物の誘電率の値が3.0以上であり、かつ、硬化物のガラス転移温度が140℃以上である樹脂組成物が提供される。
【0160】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、低粗度であるという特徴を呈する傾向にある。例えば、後述する<低粗度性の評価>欄に記載の方法で測定した算術平均粗さ(Ra)は、100nm未満、90nm以下、80nm以下、60nm以下となり得る。下限は、樹脂組成物の組成等に応じておのずと定まる。
【0161】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、めっきに対する密着性に優れるという特徴を呈する傾向にある。後述する<めっき密着性の評価>欄に記載の方法で測定しためっきピール強度は、0.40kgf/cm以上、0.42kgf/cm以上、又は0.44kgf/cm以上となり得る。上限は、樹脂組成物の組成等に応じておのずと定まる。
【0162】
本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶層間縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性の良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、その上に導体層(再配線層を含む)が設けられる絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0163】
[第2の実施形態に係る樹脂組成物]
本発明の第2の実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C’)第2の特定ポリイミド樹脂とを含むことを特徴とする。(C’)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。第2の実施形態に係る樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、任意の添加剤及び有機溶剤は第1の実施形態と同一であるので、その説明を割愛する。
【0164】
-(C’)第2の特定ポリイミド樹脂-
第2の特定ポリイミド樹脂は、BPADAに由来する第1の骨格と、BPPANに由来する第2の骨格とを含む樹脂である。第1の骨格は、BPADAに由来する骨格と同一の骨格であれば、その材料は、BPADAに限られない。第2の骨格は、BPPANに由来する骨格と同一の骨格であれば、その材料は、BPPANに限られない。第2の特定ポリイミド樹脂中において、第1の骨格の数は、1以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。第2の特定ポリイミド樹脂中において、第2の骨格の数は、1以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。
【0165】
上述した第1の骨格及び第2の骨格は、例えば公知のポリイミド樹脂の製造方法、典型的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法に由来して生じ得る。なお、第1の骨格及び第2の骨格は、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法に由来しても生じ得る。したがって、第2の特定ポリイミド樹脂は、第1の特定ポリイミド樹脂が含む構造単位(c1)を含み得ることから、第2の実施形態は、第1の実施形態と同等の効果を奏する。なお、第2の特定ポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0166】
また、第2の特定ポリイミド樹脂は、第2の骨格とは異なる第3の骨格をさらに含む樹脂であってもよい。この第3の骨格は、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物に由来する骨格である。したがって、ある実施形態において、(C’)成分が、第2の骨格とは異なる第3の骨格をさらに含む樹脂であり、当該第3の骨格が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物に由来する骨格である。第2の特定ポリイミド樹脂中において、第3の骨格の数は、0以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。
【0167】
ジアミン化合物が、脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、当該脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる基であり、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の脂肪族基である。当該脂肪族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0168】
ジアミン化合物が、芳香族基を有するジアミン化合物である場合、当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0169】
第3の骨格は、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物に由来する骨格であってもよい。また、第3の骨格は、イソホロンジアミンに由来する骨格であってもよい。したがって、ある実施形態において、(C’)成分が、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物に由来する骨格をさらに含む樹脂である。その具体例を挙げると、第3の骨格が、イソホロンジアミンに由来する骨格である。イソホロンジアミン(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン)に由来する骨格は、5-イソシアナト-1-(イソシアナトメチル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンに由来する骨格であってもよい。
【0170】
第3の骨格は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-フェニレンジアミン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、芳香族基を有することに特徴がある。
【0171】
第3の骨格は、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、脂肪族基が直鎖型であることに特徴がある。
【0172】
第3の骨格は、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、脂肪族基が分岐型であることに特徴がある。
【0173】
第3の骨格は、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ジアミノアダマンタン、3,3’-ジアミノ-1,1’-ビアダマンチル及び1,6-ジアミノアダマンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、脂肪族基が脂環式炭素環を含むことに特徴がある。
【0174】
上述した第3の骨格は、例えば、第1の骨格の材料となり得るテトラカルボン酸二無水物と、第2の骨格の材料となり得るジアミン化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法において、モノマー組成物に、第3の骨格の材料となり得るジアミン化合物又はジイソシアネート化合物を含ませるか又は重合時に順次混合することに由来して第2のポリイミド樹脂中に生じ得る。したがって、第2の特定ポリイミド樹脂は、第1の特定ポリイミド樹脂が含み得る構造単位(c2)を含み得る。なお、第2の特定ポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0175】
また、第2の特定ポリイミド樹脂は、第1の骨格とは異なる第4の骨格をさらに含む樹脂であってもよい。この第4の骨格は、BPADA以外の酸からなる群から選択される1種以上の酸に由来する骨格である。第2の特定ポリイミド樹脂中において、第4の骨格の数は、0以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。
【0176】
BPADA以外の酸としては、置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の芳香族炭素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物の具体例を挙げると、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0177】
(C’)成分のガラス転移温度Tg(c’)(℃)は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらにより好ましくは160℃以上、特に好ましくは170℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度Tg(c’)(℃)の測定は、後述する<耐熱性の評価>と同様の方法に従って測定することができる。
【0178】
(C’)成分における第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計は、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは19質量%以上、さらにより好ましくは29質量%以上、特に好ましくは39質量%以上である。第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計は、例えば、97質量%以下、94質量%以下、89質量%以下又は84質量%以下とし得る。ここで、第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計は、(C’)成分を合成するために用いた各材料の反応に寄与する仕込み量(質量部)の割合から算出することができ、これに代えて、(C’)成分の分子量と、樹脂に組み込まれた第1の骨格及び第2の骨格の式量とを特定し、第1の骨格及び第2の骨格の式量の合計の分子量に対する割合として算出してもよい。(C’)成分が重合体である場合には、重合度から推定される第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計が前記の範囲内となることが好ましい。
【0179】
(C’)成分がさらに第3の骨格を含む樹脂である場合、当該第3の骨格の含有割合(百分率)は、0質量%(すなわち第3の骨格不含)を許容し、本発明の効果を過度に損なわない限りその上限は限定されない。そこで、(C’)成分における第3の骨格の含有割合(百分率)は、例えば、0質量%超、4質量%以上、9質量%以上、19質量%以上又は29質量%以上、94質量%以下、89質量%以下、79質量%以下、69質量%以下又は59質量%以下とし得る。ここで、第3の骨格の含有割合(百分率)は、第1の骨格の含有割合(百分率)や第2の骨格の含有割合(百分率)と同様に算出される。(C’)成分が重合体である場合には、重合度から推定される第3の骨格の含有割合(百分率)が前記の範囲内となることが好ましい。(C’)成分がさらに第4の骨格を含む樹脂である場合、当該第4の骨格の含有割合(百分率)は、当該第3の骨格の含有割合(百分率)と同様である。
【0180】
(C’)成分は、BPADAに由来する第1の骨格と、BPPANに由来する第2の骨格とを含む樹脂である限り、その末端構造は特に限定されない。例えば、(C’)成分の末端構造は、(C’)成分の原料化合物(例えばBPADA等の酸、BPPAN等のアミン化合物)由来の酸無水物基又はカルボキシル基やアミノ基であってもよい。原料化合物にマレイン酸無水物がさらに含まれる場合、(C’)成分の末端構造はマレイミド基であってもよい。
【0181】
(C’)成分の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であり、好ましくは1,00~10,000、より好ましくは1,000~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0182】
樹脂組成物中の(C’)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上又は0.7質量%以上である。樹脂組成物中の(C’)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下とし得る。したがって、好適な一実施形態において、(C’)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である。
【0183】
樹脂組成物中の(C’)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.9質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上又は2.1質量%以上である。樹脂組成物中の(C’)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下又は30質量%以下とし得る。樹脂組成物中の樹脂成分とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち先述の(D)無機充填材を除いた成分を表す。
【0184】
[第3の実施形態に係る樹脂組成物]
本発明の第3の実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ硬化剤と、(C”)第3の特定ポリイミド樹脂とを含むことを特徴とする。(C”)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。第3の実施形態に係る樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、任意の添加剤及び有機溶剤は第1の実施形態と同一であるので、その説明を割愛する。
【0185】
-(C”)第3の特定ポリイミド樹脂-
本発明の第3の実施形態に係る樹脂組成物は、(C”)成分として第3の特定ポリイミド樹脂を含有する。本発明の第3の実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ硬化系において(C”)成分を含むことにより、後述する実施例の欄において例証されるとおり、本発明の所期の効果を奏することができる。
【0186】
第3の特定ポリイミド樹脂は、BPADAと、BPPANとを少なくとも含有するモノマー組成物を重合させてイミド化することによって得られる樹脂である。重合及びイミド化は、特に限定されるものではないが、通常、溶媒中で実施される。重合に際し、BPADAとBPPANの配合比は、各成分が有する官能基の数の合計に応じて定められることが好ましく、一実施形態において、モノマー組成物中におけるBPPANが有するアミノ基の数の合計:BPADAが有する酸無水物基の数の合計の比は、0.1:1~10:1の範囲内、好ましくは0.5:1~10:1の範囲内、より好ましくは0.8:1~10:1の範囲内、さらに好ましくは0.9:1~10:1の範囲内にある。イミド化は、特に限定されるものではないが、通常、溶媒中で実施され、触媒不存在下での加熱により、触媒存在下での加熱により、又は、常温での触媒存在下で実施される。本発明の所期の効果を高める観点からは、イミド化は、触媒不存在下での加熱により行われることが好ましい。第3の特定ポリイミド樹脂は、ランダム共重合体、交互共重体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。第3の特定ポリイミド樹脂は、斯かる重合及びイミド化の製法に限定されない。第3の特定ポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。このようにして得られる第3の特定ポリイミド樹脂は、第1の特定ポリイミド樹脂が含む先述の構造単位(c1)を含むことから、第3の実施形態は、第1の実施形態と同等の効果を奏する。また、このようにして得られる第3の特定ポリイミド樹脂は、第2の特定ポリイミド樹脂が含む先述の第1の骨格及び第2の骨格を含むことから、第3の実施形態は、第2の実施形態と同等の効果を奏する。
【0187】
上記モノマー組成物は、他のモノマーとして、BPADA以外の酸及び/又はBPPAN以外のジアミン化合物を含んでいてもよいし、他のモノマーを反応途中に添加してもよい。
【0188】
BPADA以外の酸としては、置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物の具体例を挙げると、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。モノマー組成物における、BPADAの含有量に対するBPADA以外の酸の含有量のモル比は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5以下、0.4以下、0.3以下とし得る。
【0189】
ある実施形態において、前記モノマー組成物は、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物をさらに含有する。モノマー組成物における、BPPANの含有量に対するBPPAN以外のジアミン化合物の含有量のモル比は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5以下、0.4以下、0.3以下とし得る。
【0190】
ジアミン化合物が、脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、当該脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる基であり、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の脂肪族基である。当該脂肪族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0191】
ジアミン化合物が、芳香族基を有するジアミン化合物である場合、当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物である場合、その例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-フェニレンジアミン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上が挙げられる。
【0192】
ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、その第1の例としては、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。この第1の例に係るジアミン化合物は、脂肪族基が直鎖型であることに特徴がある。
【0193】
ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、その第2の例としては、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。この第2の例に係るジアミン化合物は、脂肪族基が分岐型であることに特徴がある。
【0194】
ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、その第3の例としては、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ジアミノアダマンタン、3,3’-ジアミノ-1,1’-ビアダマンチル及び1,6-ジアミノアダマンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。この第3の例に係るジアミン化合物は、脂肪族基が脂環式炭素環を含むことに特徴がある。
【0195】
以上によれば、ある実施形態において、前記モノマー組成物が、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物をさらに含有する。また、特定の実施形態において、前記モノマー組成物が、イソホロンジアミンをさらに含有する。
【0196】
(C”)成分は、前記モノマー組成物を重合させてイミド化することによって得られる樹脂である限り、その末端構造は特に限定されない。例えば、(C”)成分の末端構造は、(C”)成分のモノマー組成物に含まれる原料化合物(例えばBPADA等の酸、BPPAN等のアミン化合物)由来の酸無水物基又はカルボキシル基やアミノ基であってもよい。原料化合物にマレイン酸無水物がさらに含まれる場合、(C”)成分の末端構造はマレイミド基であってもよい。
【0197】
(C”)成分の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であり、好ましくは1,00~10,000、より好ましくは1,000~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0198】
樹脂組成物中の(C”)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上又は0.7質量%以上である。樹脂組成物中の(C”)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下とし得る。したがって、好適な一実施形態において、(C”)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%~30質量%である。
【0199】
樹脂組成物中の(C”)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.9質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上又は2.1質量%以上である。樹脂組成物中の(C”)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下又は30質量%以下とし得る。樹脂組成物中の樹脂成分とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち先述の(D)無機充填材を除いた成分を表す。
【0200】
[樹脂シート]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0201】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0202】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物の層(以下、単に「樹脂組成物層」という。)とを含んでなり、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0203】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0204】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0205】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0206】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0207】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0208】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0209】
支持体としてはまた、薄い金属箔に剥離が可能な支持基材を張り合わせた支持基材付き金属箔を用いてよい。一実施形態において、支持基材付き金属箔は、支持基材と、該支持基材上に設けられた剥離層と、該剥離層上に設けられた金属箔とを含む。支持体として支持基材付き金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、金属箔上に設けられる。
【0210】
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材として、銅箔を用いる場合、電解銅箔、圧延銅箔であってよい。また、剥離層は、支持基材から金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
【0211】
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
【0212】
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、10μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましい。また、金属箔の厚さは、例えば、0.1μm~10μmの範囲としてよい。
【0213】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0214】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0215】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0216】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0217】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0218】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0219】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0220】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0221】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0222】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。
【0223】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0224】
プリント配線板は、例えば、上記の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0225】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0226】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
【0227】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0228】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0229】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0230】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。なお、支持体として、金属箔を使用した場合、支持体を剥離することなく、該金属箔を用いて導体層を形成してよい。また、支持体として、支持基材付き金属箔を使用した場合、支持基材(と剥離層)を剥離すればよい。そして、金属箔を用いて導体層を形成することができる。
【0231】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0232】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは130℃~240℃、さらに好ましくは140℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。
【0233】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0234】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0235】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0236】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0237】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0238】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0239】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0240】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0241】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0242】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0243】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0244】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0245】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0246】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0247】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0248】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0249】
あるいは、樹脂シートの支持体として、金属箔や、支持基材付き金属箔を使用した場合、該金属箔を用いて導体層を形成してよいことは先述のとおりである。
【0250】
また、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージを製造するに際して、再配線層を形成するための絶縁層を形成するための樹脂組成物(再配線層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。樹脂組成物(樹脂シート)を使用して半導体チップパッケージを製造する技術は、当分野において広く知られており、本発明の樹脂組成物や樹脂シートは、何れの方法・技術にも適用可能である。
【0251】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板又は半導体パッケージを用いて製造することができる。
【0252】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0253】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、第1の実施形態に係る樹脂組成物、第2の実施形態に係る樹脂組成物及び第3の実施形態に係る樹脂組成物に共通する実施例及びその比較例が例示されていると解釈されるべきである。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0254】
-合成例1乃至3-
【0255】
[合成例1-ポリイミド樹脂ca含有ワニスの調製-]
溶媒としてのN,N-ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」ともいう)400g中に、BPADA49.6gと、BPPAN50.4gと、溶媒としてのトルエン40gとを混合することで得られるモノマー組成物を、常温、大気圧中で3時間撹拌、反応させた。これにより、ポリアミド酸の溶液を得た。
【0256】
引き続き、ポリアミド酸の溶液を昇温した後、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び、水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却した。これにより、ポリイミド樹脂(以下、「ポリイミド樹脂ca」ともいう)を不揮発成分として20質量%含むワニスを得た。
【0257】
ポリイミド樹脂caは、上記反応経路から、下記式(c1a)で表される構造単位を含むことが推定された。また、ポリイミド樹脂caは、上記反応経路から、BPADAに由来する第1の骨格と、BPPANに由来する第2の骨格とを含むことが推定された。
【0258】
【化22】
【0259】
また、ポリイミド樹脂caのガラス転移温度Tg(c)(℃)を、上述した方法にしたがって測定したところ、210℃であった。
【0260】
[合成例2-ポリイミド樹脂cb含有ワニスの調製-]
モノマー組成物において、合成例1のBPADAの仕込み量を49.6gから53.3gへ変更し、BPPANの仕込み量を50.4gから43.3gに変更したこと、並びに、アミン化合物としてのイソホロンジアミン3.5gを上記モノマー組成物中に混合したこと以外は、合成例1と同様にして、ポリアミド酸の溶液を得た。さらに、ポリアミド酸の溶液から、合成例1と同様にして、ポリイミド樹脂(以下、「樹脂cb」ともいう)を不揮発成分として20質量%含むワニスを得た。
【0261】
ポリイミド樹脂cbは、上記反応経路から、上記式(c1a)で表される構造単位を含み、かつ、上記反応経路から、さらに下記式(c1b)又は下記式(c1b’)で表される構造単位を含むことが推定された。また、ポリイミド樹脂cbは、上記反応経路から、上記第1の骨格と、上記第2の骨格とを含み、かつ、上記反応経路から、イソホロンジアミンに由来する第3の骨格をさらに含むことが推定された。
【0262】
【化23】
【0263】
【化24】
【0264】
また、ポリイミド樹脂cbのガラス転移温度Tg(c)(℃)を、上述した方法にしたがって測定したところ、140℃以上であることが確認された。
【0265】
[合成例3-マレイミド樹脂e1aの調製-]
【0266】
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成されたマレイミド樹脂e1aのメチルエチルケトン(MEK)溶液(不揮発成分:70質量%)を用意した。このマレイミド樹脂e1aは、下記式(式中、nは0以上の数である。)で表される構造を有するマレイミド樹脂であって少なくともトリメチルインダン骨格含有マレイミド化合物(n≧1)を含むマレイミド樹脂であった。
【0267】
【化25】
【0268】
-実施例1乃至9並びに比較例1乃至4-
以下、(A)成分、(B)成分並びに(C)成分、(C’)成分及び(C”)成分(以下、これらをまとめて便宜上「(C)成分」とする)から選択された成分を含む樹脂組成物の態様について、実施例及び比較例を例示的に示す。
【0269】
[実施例1]
(1) 樹脂ワニスの調製
(A)成分としてのエポキシ樹脂(DIC社製ナフタレン型エポキシ樹脂「HP-4032-SS」(1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)、エポキシ当量:144g/eq.)12部を、ソルベントナフサ35部に撹拌しながら加熱溶解させ、その後、室温にまで冷却して、混合溶液を得た。
【0270】
(D)成分としての無機充填材d(アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」;平均粒径:0.5μm、比表面積:5.8m/g)を用意した。無機充填材d2115部、及び、(F)成分としての有機充填材(ダウ・ケミカル日本社製ゴム粒子「EXL-2655」)2部を、前記の混合溶液に添加し、3本ロールで混練して均一に分散させて、ロール分散物を得た。
【0271】
そのロール分散物へ、(B-1)成分としての活性エステル化合物b1aの溶液(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル化合物の活性基当量:223g/eq.、不揮発成分:65質量%(トルエン溶液))40部、(B-2)成分としてのエポキシ硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」(トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤)、官能基当量(水酸基当量):151g/eq.、不揮発成分:50質量%(2-メトキシプロパノール溶液))2部、(C)成分としてのポリイミド樹脂caを含むワニス(不揮発成分:20質量%)7.5部、及び、(G)成分としての硬化促進剤(四国化成工業社製イミダゾール系硬化促進剤「1B2PZ」(1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール))0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス(不揮発成分量:157.7質量部)を調製した。このようにして調製される樹脂ワニスを「樹脂ワニスA」ともいう。
【0272】
(2) 樹脂シートの作製
支持体として、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ:38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように、前記の樹脂ワニスAを均一に塗布した。その後、80℃~120℃(平均100℃)で5分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を有する樹脂シートを得た。このようにして作製される樹脂シートを「樹脂シートB」ともいう。
【0273】
(3) 評価
樹脂シートBを用いて後述の「-測定方法・評価方法-」に記載する各種測定・評価を行った。
【0274】
[実施例2及び3]
(B-1)成分としての活性エステル化合物b1aの溶液40部に代えて、実施例2では、活性エステル化合物b1b(DIC社製「HPC-8150-62T」(ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤)、不揮発成分:62質量%(トルエン溶液)、活性エステル化合物の活性基当量:229g/eq.)43部を用い、実施例3では、活性エステル化合物b1c(エア・ウォーター社製「PC1300-02-65MA」(活性エステル化合物の活性基当量:200g/eq、ビニル基当量:1400g/eq.、不揮発成分65質量%のメチルアミルケトン溶液)40部を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製し、かつ、樹脂シートBを用いて評価を行った。
【0275】
[実施例4~8]
各実施例において、下記の点以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスAを調製した。実施例4において、(E-1a)成分としてのマレイミド樹脂e1a(不揮発成分:70質量%)1部を、ロール分散物へさらに混合した。実施例5において、(E-1a)成分としてのマレイミド樹脂e1b(日本化薬社製ビフェニル骨格含有マレイミド化合物「MIR-3000-70MT」、不揮発成分70質量%のMEK/トルエン混合溶液)1部を、ロール分散物へさらに混合した。実施例6において、(E-1a)成分としてのマレイミド樹脂e1c(デザイナーモレキュールズ社製脂肪族マレイミド化合物「BMI-1500」)1部を、ロール分散物へさらに混合した。実施例7において、(E-2a)成分としてのラジカル重合性化合物e2a(三菱ガス化学社製ビニルベンジル化合物「OPE-2St」、数平均分子量:1200、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)1部を、ロール分散物へさらに混合した。実施例8において、(E-2a)成分としてのラジカル重合性化合物e2b(日鉄ケミカル&マテリアル社製ビニルベンジル化合物「ODV-XET-X04」、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)1部を、ロール分散物へさらに混合した。上記の点以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスAを用いて樹脂シートBを作製し、かつ、樹脂シートBを用いて評価を行った。
【0276】
[実施例9]
(C)成分としてのポリイミド樹脂caを含むワニス(不揮発成分:20質量%)7.5部に代えて、ポリイミド樹脂cbを含むワニス(不揮発成分:20質量%)7.5部を用いた以外は、実施例8と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製し、かつ、樹脂シートBを用いて評価を行った。
【0277】
[比較例1~3]
(C)成分としてのポリイミド樹脂caを含むワニス(不揮発成分:20質量%)7.5部に代えて、(C’-1)成分としてフェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部を用いた以外は、比較例1~3において、それぞれ、実施例1~3と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製し、かつ、樹脂シートBを用いて評価を行った。
【0278】
[比較例4]
(C)成分としてのポリイミド樹脂caを含むワニス(不揮発成分:20質量%)7.5部に代えて、(C’-2)成分としてポリイミド樹脂(荒川化学工業社製インダン骨格含有ポリイミド樹脂「PIAD(登録商標)130」、不揮発成分20質量%のシクロヘキサノン・メチルシクロヘキサン溶液)5部を用いた以外は、実施例3と同様にして、樹脂ワニスAを調製し、樹脂シートBを作製し、かつ、樹脂シートBを用いて評価を行った。
【0279】
-測定方法・評価方法-
続いて、各種測定方法・評価方法について説明する。
【0280】
<誘電特性の評価-誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定->
実施例及び比較例で得られた樹脂シートBを190℃のオーブンで90分硬化した。オーブンから取り出した樹脂シートBから支持体を剥がすことにより、樹脂組成物層の硬化物を得た。その硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価用硬化物とした。
【0281】
各評価用硬化物について、アジレントテクノロジーズ(AgilentTechnologies)社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電率(Dk)の値及び誘電正接の値(Df値)を測定した。2本の試験片にて測定を実施し、その平均を算出した。
【0282】
<耐熱性の評価-ガラス転移温度(Tg)の測定->
実施例及び比較例で得られた樹脂シートBを190℃のオーブンで90分硬化し、更に支持体から剥がすことで硬化フィルムを得た。この硬化フィルムを長さ20mm、幅6mmに切り出し評価サンプルとした。各評価サンプルについてリガク社製TMA装置を用い25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度でガラス転移温度(Tg)を測定した。同一の試験片について2回測定を行い、2回目の値を記録した。
【0283】
<低粗度性の評価-算術平均粗さ(Ra)の測定->
(1)内層基板の用意
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0284】
(2)樹脂シートBのラミネート
バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、樹脂シートBを内層基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0285】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
その後、樹脂シートBがラミネートされた内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層基板及び絶縁層をこの順に有する硬化基板Cを得た。
【0286】
(4)粗化処理
硬化基板Cに、粗化処理としてのデスミア処理を行った。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
【0287】
(湿式デスミア処理)
硬化基板Cを、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間浸漬した。次いで、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。
【0288】
(5)粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)の測定
粗化処理後の硬化基板(以下、「硬化基板D」ともいう)の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)を、非接触型表面粗さ計(ブルカー社製WYKO NT3300)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めた。それぞれ10点の平均値を求めることにより測定した。
【0289】
<導体密着性の評価-めっきピール強度の測定->
(1)銅めっき導体層の形成
セミアディティブ法に従って、表面粗度の評価に際し得られた硬化基板Dの絶縁層の粗化面に導体層を形成した。すなわち、硬化基板Dを、PdClを含む無電解めっき液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの導体層を形成し、アニール処理を190℃にて60分間行った。得られた基板を「評価基板E」と称する。
【0290】
(2)めっきピール強度の測定
評価基板Eのめっきピール強度の測定は、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。具体的には、評価基板Eの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、剥離強度(めっきピール強度)を求めた。測定には、引っ張り試験機(TSE社製「AC-50C-SL」)を使用した。
【0291】
<歩留り性の評価-ラミネート後の絶縁層表面のムラ及びデスミア後のクラックの観察並びに評価->
【0292】
1.硬化基板のムラの観察
硬化基板Cの両面について、樹脂シートがラミネートされた部分(積層板とは反対側の絶縁層表面)の表面均一性を目視にて観察した。樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmの部分のみにムラが観察され、それより内側の部分は完全に均一な表面であるかどうかを下記のとおり判断した。
なし:樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmの部分のみにムラが観察され、それより内側の部分は完全に均一な表面である。
あり:樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmより内側の部分に、不均一な部分が観察される。
【0293】
2.デスミア(粗化処理)後のクラックの観察
硬化基板Dについて行った。具体的には、硬化基板Dを、水洗し、空気吹きつけにより水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥させることにより試料を得た。得られた試料について銅層と絶縁層との層間剥離を目視で観察した。確認結果を下記のとおり判断した。
なし:層間剥離が確認されなかった。
あり:層間剥離が確認された。
【0294】
3.歩留り性の評価
上記1.及び2.の硬化基板のムラの観察結果及びデスミア後のクラックの観察結果に基づき、パターニング後における歩留り性を、下記評価基準に従って評価した。
【0295】
歩留り性評価基準:
○:硬化基板のムラの観察結果が「なし」であり、かつ、硬化基板のムラの観察結果が「なし」と判断された。
×:硬化基板のムラの観察結果及び硬化基板のムラの観察結果の一方又は双方が「あり」と判断された。
【0296】
実施例1乃至9の結果を表1に示し、比較例1乃至4の結果を表2に示す。
【0297】
【表1】
【0298】
【表2】