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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】熱制御デバイス
(51)【国際特許分類】
   F28D 21/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
F28D21/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020174397
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065740
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】福井 健二
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019747(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00-21/00
F28F 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間における熱の移動を制御する熱制御デバイスであって、
前記第1部材と前記第2部材のそれぞれに接続される一対の部材であって、前記一対の部材の一方の部材と他方の部材との間隔が変更可能な一対の部材と、
前記一対の部材のそれぞれに接続され、自身の温度変化によって変形する変形部材であって、前記一方の部材との間の熱流量が、前記他方の部材との間の熱流量より大きい変形部材と、を備え、
前記変形部材は、
前記他方の部材に接続される断熱部と、
自身の温度変化によって膨張または収縮する長尺状の熱変形部であって、一方の端部が前記一方の部材の側面に接続され、他方の端部が前記断熱部を介して前記他方の部材の側面に接続される熱変形部と、を有し、
前記熱変形部は、前記一方の部材と前記他方の部材との間を跨ぐように、配置されており、
前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が変更されることで、前記第1部材と前記第2部材との間における熱流量が変化する、
熱制御デバイス。
【請求項2】
請求項に記載の熱制御デバイスであって、
前記熱変形部は、形状記憶合金から形成される、
熱制御デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の熱制御デバイスであって、
前記変形部材が前記一方の部材と接触する接触面積は、前記変形部材が前記他方の部材と接触する接触面積より大きい、
熱制御デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の熱制御デバイスは、さらに、
前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔を調整する調整部を備え、
前記調整部は、
前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が広げられるとき、前記間隔が広くなることを抑制し、
前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が狭められるとき、前記間隔が狭くなることを抑制する、
熱制御デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の熱制御デバイスであって、
前記一方の部材は、前記第1部材に接続される一方の接続部と、前記一方の接続部から前記他方の部材に向かって延伸する一方の延伸部と、を備え、
前記他方の部材は、前記第2部材に接続される他方の接続部と、前記他方の接続部から前記一方の部材に向かって延伸しており、先端が前記一方の延伸部の先端と前記一方の接続部との間に位置する他方の延伸部と、を備え、
前記一方の延伸部の先端と前記他方の延伸部の先端との間には、前記変形部材の変形によって変更される前記間隔が形成されており、
前記一方の接続部と前記他方の接続部との間の距離が前記変形部材の変形によって長くなるとき、前記間隔は狭くなる、
熱制御デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱制御デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの部材の間における熱の移動を制御する熱制御デバイスが知られている。例えば、非特許文献1、2には、2つの部材のそれぞれに接続される一対の伝熱部材の間隔を変更することで、2つの部材間での熱流量を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Menglong Hao、Efficient thermal management of Li-ion batteries with a passive interfacial thermal regulator based on a shape memory alloy、Nature Energy、2018、vol.3、p.899-906
【文献】Mahmoud Elzouka、High Temperature Near-Field NanoThermoMechanical Rectification & Sidy Ndao、Scientific Reports、2017、vol.7、Article number: 44901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱制御デバイスでは、2つの部材において、高温である一方から低温である他方への熱の移動を許容するが、高温である他方から低温である一方への熱の移動を抑制する技術が望まれていた。しかしながら、上述したような先行技術によっても、熱制御デバイスにおいて、一方向への熱の移動を許容し逆方向への熱の移動を抑制するように熱の移動方向を制御する技術については、なお改善の余地があった。非特許文献1の技術では、一対の伝熱部材の間隔は、一対の伝熱部材のそれぞれに接続される接続部材が変形することで変更される。例えば、温度が上昇することで接続部材が収縮する場合、一対の伝熱部材のいずれかの温度が上昇することで接続部材は収縮するため、一対の伝熱部材の間隔は0となり接触する。一対の伝熱部材が接触すると、一対の伝熱部材の一方と他方との温度関係によって、熱は、一方から他方、または、他方から一方に移動する。すなわち、非特許文献1の技術では、双方向に熱が移動することとなり、熱の移動方向を制御することは困難である。また、非特許文献2の技術では、2つの部材の間における熱の移動を輻射伝熱によって行っているため、輻射伝熱が有効な比較的高温での熱の移動にしか適用できない。このため、非特許文献2の技術では、例えば、100℃以下の比較的低温において熱の移動方向を制御することは困難である。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、2つの部材の間における熱の移動を制御する熱制御デバイスにおいて、熱の移動方向を制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、第1部材と第2部材との間における熱の移動を制御する熱制御デバイスが提供される。この熱制御デバイスは、前記第1部材と前記第2部材のそれぞれに接続される一対の部材であって、前記一対の部材の一方の部材と他方の部材との間隔が変更可能な一対の部材と、前記一対の部材のそれぞれに接続され、自身の温度変化によって変形する変形部材であって、前記一方の部材との間の熱流量が、前記他方の部材との間の熱流量より大きい変形部材と、を備え、前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が変更されることで、前記第1部材と前記第2部材との間における熱流量が変化する。
【0008】
この構成によれば、一対の部材のそれぞれに接続される変形部材は、自身の温度変化によって変形し、一方の部材と他方の部材との間隔を変更する。変形部材の温度は、一方の部材との間の熱流量の大きさと他方の部材との間の熱流量の大きさにより決定される。この構成では、変形部材と一方の部材との間の熱流量が、変形部材と他方の部材との間の熱流量より大きいため、変形部材の温度は、主に一方の部材との間の熱流量に影響される。すなわち、変形部材の温度は、一方の部材の温度によって決定されるため、一方の部材の温度に応じて一方の部材と他方の部材との間隔が変更され、第1部材と第2部材との間における熱流量が変化する。例えば、温度が上昇すると収縮する変形部材が、離れた状態の一対の部材のそれぞれに接続されている場合、一方の部材が変形部材より高温になると変形部材が収縮し、一方の部材と他方の部材とが接触する。これにより、一方の部材が他方の部材に比べ高温である場合、一方の部材から他方の部材に向かって、低温での伝熱に有効な伝導伝熱によって比較的多くの熱が移動する。一方の部材が変形部材より低温である場合、変形部材は収縮せずに伸びたままとなるため、一方の部材と他方の部材とは離れたままとなる。このため、他方の部材が一方の部材に比べ高温である場合では、伝導伝熱では熱は移動しないため、他方の部材から一方の部材に向かって熱は移動しにくくなる。これにより、一方の部材から他方の部材への熱の移動を許容し、他方の部材から一方の部材への熱の移動を抑制することができる。したがって、一方の部材が接続される第1部材と他方の部材が接続される第2部材との間において、熱の移動方向を制御し、熱が移動しやすい方向を1つの方向に限定することができる。
【0009】
(2)上記形態の熱制御デバイスにおいて、前記変形部材は、前記他方の部材に接続される断熱部と、自身の温度変化によって膨張または収縮する熱変形部であって、前記一方の部材に接続され、前記断熱部を介して前記他方の部材に接続される熱変形部と、を備えてもよい。この構成によれば、変形部材は、一方の部材に直接接続され、断熱部を介して他方の部材に接続されている。これにより、変形部材と一方の部材との間の熱流量は、変形部材と他方の部材との間の熱流量よりさらに大きくなるため、一方の部材の温度と変形部材の温度とがさらに近くなりやすい。したがって、一方の部材の温度変化に対する変形部材の変形の応答性を向上することができる。
【0010】
(3)上記形態の熱制御デバイスにおいて、前記熱変形部は、形状記憶合金から形成されていてもよい。この構成によれば、熱変形部は、形状記憶合金から形成されるため、一方の部材の温度に対応して変形しても、一方の部材の温度が元の温度に戻ることで初期状態に戻る復元力を有する。したがって、一方の部材と他方の部材との間隔を繰り返し変更することができるため、2つの部材の間における、一方向への熱の移動の許容と逆方向への熱の移動の抑制を繰り返すことができる。
【0011】
(4)上記形態の熱制御デバイスにおいて、前記変形部材が前記一方の部材と接触する接触面積は、前記変形部材が前記他方の部材と接触する接触面積より大きくてもよい。この構成によれば、変形部材が一方の部材と接触する接触面積は、変形部材が他方の部材と接触する接触面積より大きい。これにより、変形部材と一方の部材との間の熱流量は、変形部材と他方の部材との間の熱流量よりさらに大きくなるため、一方の部材の温度と変形部材の温度とがさらに近くなりやすい。したがって、一方の部材の温度変化に対する変形部材の変形の応答性を向上することができる。
【0012】
(5)上記形態の熱制御デバイスは、前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔を調整する調整部を備え、前記調整部は、前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が広げられるとき、前記間隔が広くなることを抑制し、前記変形部材の変形によって前記一方の部材と前記他方の部材との前記間隔が狭められるとき、前記間隔が狭くなることを抑制してもよい。この構成によれば、熱制御デバイスは、一方の部材と他方の部材との間隔を調整する調整部を備えている。この調整部は、変形部材の変形によって間隔が広げられるとき間隔が広くなることを抑制し、変形部材の変形によって間隔が狭められるとき間隔が狭くなることを抑制する。すなわち、調整部は、一方の部材と他方の部材との間隔が初期状態に戻るための復元力を有する。これにより、一方の部材と他方の部材との間隔を繰り返し変更することができるため、2つの部材の間における、一方向への熱の移動の許容と逆方向への熱の移動の抑制を繰り返すことができる。
【0013】
(6)上記形態の熱制御デバイスにおいて、前記一方の部材は、前記第1部材に接続される一方の接続部と、前記一方の接続部から前記他方の部材に向かって延伸する一方の延伸部と、を備え、前記他方の部材は、前記第2部材に接続される他方の接続部と、前記他方の接続部から前記一方の部材に向かって延伸しており、先端が前記一方の延伸部の先端と前記一方の接続部との間に位置する他方の延伸部と、を備え、前記一方の延伸部の先端と前記他方の延伸部の先端との間には、前記変形部材の変形によって変更される前記間隔が形成されており、前記一方の接続部と前記他方の接続部との間の距離が前記変形部材の変形によって長くなるとき、前記間隔は狭くなってもよい。この構成によれば、他方の延伸部の先端は、一方の延伸部の先端と一方の接続部との間に位置している。一方の部材の先端と他方の部材の先端との間には、変形部材の変形によって変更される間隔が形成されている。これにより、一方の接続部と他方の接続部との間の距離が変形部材の変形によって長くなるとき、間隔を狭くすることができる。例えば、温度が上昇することで変形部材が膨張する場合でも、変形部材の膨張によって一方の部材と他方の部材とを接触させることができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、熱制御デバイスを備える装置、熱制御デバイスおよび熱制御デバイスを備える装置の制御方法、熱制御デバイスによる熱流の制御方法、これらの制御方法を実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図2】第1実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図3】第2実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図4】第3実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図5】第3実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図6】第4実施形態の熱制御デバイスの作動を説明する図である。
図7】第5実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図8】第6実施形態の熱制御デバイスの模式図である。
図9】第7実施形態の熱制御デバイスの斜視図である
図10】第7実施形態の熱制御デバイスの正面図と側面図である。
図11】第7実施形態の熱制御デバイスについての第1の計算結果である。
図12】第7実施形態の熱制御デバイスについての第2の計算結果である。
図13】第1実施形態の熱制御デバイスの変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の熱制御デバイス1の模式図である。第1実施形態の熱制御デバイス1は、一対の部材10、20と、変形部材30と、を備える。本実施形態の熱制御デバイス1は、図1に示すように、離れた位置に配置されている第1部材Aと第2部材Bとの間における熱の移動を制御する。このとき、熱制御デバイス1は、第1部材Aから第2部材Bへの熱の移動を許容し、第2部材Bから第1部材Aへの熱の移動を抑制する。
【0017】
一対の部材10、20のうちの一方の部材10は、略直方体形状の部材であって、連結部11を介して第1部材Aに熱的に接続されている。一方の部材10は、熱伝導性が優れている金属、例えば、銅などから形成されており、自身の温度が第1部材Aと同じ程度の温度となるように連結部11によって第1部材Aに接続されている。一対の部材10、20のうちの他方の部材20は、一方の部材10に比べ小さい略直方体形状の部材であって、連結部21を介して第2部材Bに熱的に接続されている。他方の部材20は、第2部材Bとの熱的な接続を維持したまま、一方の部材10に対して移動可能である(図1の白抜き矢印M20)。他方の部材20は、一方の部材10と同様に、熱伝導性が優れている金属、例えば、銅などから形成されており、自身の温度が第2部材Bと同じ程度の温度になるように連結部21によって第2部材Bに接続されている。一方の部材10と他方の部材20とは、図1に示すように、一方の部材10の側面12と、他方の部材20の側面22とが対向するように配置されている。これにより、一方の部材10の側面12と他方の部材20の側面22との間隔Gpが変更可能である。図1の状態では、間隔Gpは、0より大きく、一方の部材10と他方の部材20とは離れた状態となっている。
【0018】
変形部材30は、熱変形部31と、断熱部32と、を備える。熱変形部31は、自身の温度が低下すると収縮し温度が上昇すると膨張する材料、例えば、形状記憶合金から形成されている。熱変形部31の一方の端部31aは、一方の部材10の上面13に接続されている。熱変形部31の他方の端部31bには、断熱部32が設けられている。断熱部32は、熱変形部31に比べ熱伝導性が低い材料から形成されている。断熱部32は、熱変形部31の他方の端部31bと他方の部材20の上面23とを接続する。なお、断熱部32は、熱変形部31と他方の部材20との間の熱流量を小さくするものであればよく、必ずしも断熱しなくてもよい。
【0019】
変形部材30には、一方の部材10と他方の部材20とのそれぞれの間において熱流が発生する。本実施形態では、熱変形部31は、一方の部材10には直接接続されている一方、他方の部材20には断熱部32を介して接続されている。これにより、熱変形部31では、一方の部材10との間の熱流量が、他方の部材20との間の熱流量より大きいため、熱変形部31の温度は、一方の部材10の温度に近くなりやすい。
【0020】
図2は、第1実施形態の熱制御デバイス1の作動を説明する図である。図2では、図面の都合から、第1部材Aと第2部材Bのそれぞれを省略し、連結部11、21のそれぞれに、第1部材Aの温度と第2部材Bの温度とを比較した状態(「高温側」、「低温側」)を示している。図2(a)は、第1部材Aが「高温側」で第2部材Bが「低温側」であるときの熱制御デバイス1の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材30の温度より高い場合、変形部材30は、一方の部材10によって温度が上昇するため、膨張する。変形部材30が膨張すると、一方の部材10と他方の部材20との間には、間隔Gpが形成される。この状態において、「高温側」の一方の部材10から「低温側」の他方の部材20には、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図2(a)の点線矢印H11参照)。しかしながら、比較的低温の条件下、例えば、100℃以下の条件下では、輻射伝熱では熱は伝わりにくい。なお、本実施形態では、図2(a)に示す熱制御デバイス1の状態を初期状態とする。
【0021】
図2(b)は、第1部材Aが「低温側」で第2部材Bが「高温側」であるときの熱制御デバイス1の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材30の温度より低い場合、変形部材30は、一方の部材10によって温度が低下するため、収縮する。変形部材30が収縮すると、断熱部32を介して熱変形部31が接続されている他方の部材20は、白抜き矢印M21の方向に移動し、図2(b)に示すように、一方の部材10と接触する。この状態において、「高温側」の他方の部材20から「低温側」の一方の部材10に向かって、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図2(b)の点線矢印H12参照)。なお、本実施形態では、図2(a)に示す熱制御デバイス1の状態を初期状態であるとしたが、熱制御デバイス1の初期状態を、一方の部材10が低温となっているときの図2(b)に示す状態としてもよい。
【0022】
熱制御デバイス1では、一方の部材10の温度に対応した変形部材30の変形に応じて、伝熱の方法が異なる。このうち、輻射伝熱における熱流量は、伝導伝熱における熱流量に比べ小さいため、伝導伝熱によって熱が移動する図2(b)の状態では熱が移動しやすい一方、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する図2(a)の状態では熱が移動しにくい。このように、熱制御デバイス1では、第1部材Aと第2部材Bとの間において熱が移動しやすい方向が、第2部材Bから第1部材Aへの1つの方向に限定される。
【0023】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、一対の部材10、20のそれぞれに接続される変形部材30は、自身の温度変化によって自律的に変形し、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを変更する。ここで、変形部材30の温度は、一方の部材10との間の熱流量の大きさと他方の部材20との間の熱流量の大きさにより決定される。熱制御デバイス1では、変形部材30と一方の部材10との間の熱流量が、変形部材30と他方の部材20との間の熱流量より大きいため、変形部材30の温度は、主に一方の部材10との間の熱流量に影響される。すなわち、変形部材30の温度は、一方の部材10の温度によって決定されるため、一方の部材10の温度に応じて一方の部材10と他方の部材20との間隔が変更され、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱流量が変化する。熱制御デバイス1では、変形部材30は、温度が低下すると収縮するため、一方の部材10が「低温側」で他方の部材20が「高温側」であるとき、一方の部材10と他方の部材20とが接触し、伝導伝熱によって熱が他方の部材20から一方の部材10に向かって移動する。一方、一方の部材10が「高温側」で他方の部材20が「低温側」であるとき、変形部材30は膨張したままとなるため、一方の部材10と他方の部材20とは離れたままとなり、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が一方の部材10から他方の部材20に向かって移動する。このように、熱制御デバイス1は、一方の部材10から他方の部材20への熱の移動を許容し、他方の部材20から一方の部材10への熱の移動を抑制するため、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱を整流する。これにより、第1部材Aと第2部材Bとの間において熱の移動方向を制御し、熱が移動しやすい方向を1つの方向に限定することができる。
【0024】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20とを接触させることができるため、第1部材Aと第2部材Bとの間において、伝導伝熱によって熱を移動させることができる。これにより、輻射伝熱では有効でない比較的低温の条件下であっても、第1部材Aと第2部材Bとの間で、熱を移動させることができる。
【0025】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、伝導伝熱によって、第1部材Aと第2部材Bとの間で熱を移動させることができる。これにより、輻射伝熱に比べ多くの熱を第1部材Aと第2部材Bとの間で移動させることができる。
【0026】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、変形部材30は、一方の端部31aが一方の部材10に直接接続され、他方の端部31bが断熱部32を介して他方の部材20に接続されている。これにより、変形部材30と一方の部材10との間の熱流量は、変形部材30と他方の部材20との間の熱流量よりさらに大きくなるため、一方の部材10の温度と変形部材30の温度とがさらに近くなりやすい。したがって、一方の部材10の温度変化に対する変形部材30の変形の応答性を向上することができる。
【0027】
また、本実施形態の熱制御デバイス1によれば、熱変形部31は、形状記憶合金から形成されるため、一方の部材10の温度に対応して変形(図2(b)の状態)しても、一方の部材10の温度が上昇することで元の形状(図2(a)の初期状態)に戻る復元力を有する。したがって、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを繰り返し変更することができるため、2つの部材A、Bの間における、一方向への熱の移動の許容と逆方向への熱の移動の抑制を繰り返すことができる。
【0028】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態の熱制御デバイス2の作動を説明する図である。第2実施形態の熱制御デバイス2は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、変形部材の特性が異なる。なお、図3では、図面の便宜上、第1部材Aと第2部材Bのそれぞれを省略し、連結部11、21のそれぞれに、第1部材Aの温度と第2部材Bの温度とを比較した状態(「高温側」、「低温側」)を示している。
【0029】
第2実施形態の熱制御デバイス2は、一対の部材10、20と、変形部材40と、を備える。変形部材40は、一対の部材10、20のそれぞれに接続されている部材である。変形部材40は、熱変形部41と、断熱部32とを備える。熱変形部41は、自身の温度が低下すると膨張し温度が上昇すると収縮する形状記憶合金から形成されている。熱変形部41の一方の端部41aは、一方の部材10の上面13に接続されている。熱変形部31の他方の端部41bには、断熱部32が設けられている。
【0030】
図3(a)は、第1部材Aが「高温側」で第2部材Bが「低温側」であるときの熱制御デバイス2の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材40の温度より高い場合、変形部材40は、一方の部材10によって温度が上昇するため、収縮する。変形部材40が収縮すると、一方の部材10と他方の部材20とは接触する。この状態において、「高温側」の一方の部材10から「低温側」の他方の部材20に向かって、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図3(a)の点線矢印H21参照)。なお、本実施形態では、図3(a)に示す熱制御デバイス2の状態を初期状態とする。
【0031】
図3(b)は、第1部材Aが「低温側」で第2部材Bが「高温側」であるときの熱制御デバイス2の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材40の温度より低い場合、変形部材40は、一方の部材10によって温度が低下するため、膨張する。変形部材40が膨張すると、他方の部材20は、白抜き矢印M22の方向に移動し、図3(b)に示すように、一方の部材10から離れる。一方の部材10と他方の部材20とが離れると、「高温側」の他方の部材20から「低温側」の一方の部材10に向かって、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図3(b)の点線矢印H22参照)。
【0032】
熱制御デバイス2では、一方の部材10の温度に対応して変形部材40が変形することで、一方の部材10から他方の部材20に向けて熱が移動しやすい一方、他方の部材20から一方の部材10に向けては熱が移動しにくくなる。このように、熱制御デバイス2では、第1部材Aと第2部材Bとの間において熱が移動しやすい方向が、第1部材Aから第2部材Bへの1つの方向に限定される。
【0033】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス2によれば、変形部材40は、温度が低下すると膨張するため、一方の部材10が「低温側」で他方の部材20が「高温側」であるとき、変形部材40は膨張し、一方の部材10と他方の部材20とは離れる。これにより、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が他方の部材20から一方の部材10に向かって移動する。一方、一方の部材10が「高温側」で他方の部材20が「低温側」であるとき、変形部材40は収縮したままとなるため、一方の部材10と他方の部材20とが接触したままとなり、伝導伝熱によって熱が一方の部材10から他方の部材20に向かって移動する。このように、熱制御デバイス2は、一方の部材10から他方の部材20への熱の移動を許容し、他方の部材20から一方の部材10への熱の移動を抑制することで、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱を整流する。これにより、第1部材Aと第2部材Bとの間におい、熱の移動方向を制御し、熱が移動しやすい方向を1つの方向に限定することができる。
【0034】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の熱制御デバイス4の模式図である。第3実施形態の熱制御デバイス4は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、一方の部材および他方の部材の形状が異なる。
【0035】
第3実施形態の熱制御デバイス3は、一対の部材15、25と、変形部材50と、を備える。一対の部材15、25のうちの一方の部材15は、連結部11を介して第1部材Aに熱的に接続されている。他方の部材25は、連結部21を介して第2部材Bに熱的に接続されたまま、図4に示す白抜き矢印M20の方向に移動可能である。一対の部材15、25のそれぞれは、熱伝導性が優れている金属、例えば、銅などから形成されている。なお、図4には、一対の部材15、25が互いに対向する方向をx軸方向とし、一対の部材15、25に対して変形部材50が配置される方向をz軸方向とし、z軸とz軸とのそれぞれに直交する方向をy軸方向とする。
【0036】
一方の部材15は、接続部16と、延伸部17と、を備える。接続部16は、自身の温度が、第1部材Aと同じ程度の温度となるように、連結部11を介して第1部材Aに熱的に接続されている。延伸部17は、接続部16において、他方の部材25側に設けられている。延伸部17は、接続部16から他方の部材25の方向、すなわち、x軸のプラス方向に向かって延伸したのち、図4に示すように、先端17aが、z軸のマイナス方向に延びている。延伸部17の先端17aには、図4に示すように、接続部16側に接触面17bが形成されている。接触面17bは、x軸方向に対して傾斜している。
【0037】
他方の部材25は、接続部26と、延伸部27と、を備える。接続部26は、自身の温度が、第2部材Bと同じ程度の温度となるように、連結部21を介して第2部材Bに熱的に接続されている。延伸部27は、接続部26において、一方の部材15の接続部16側に設けられている。延伸部27は、接続部26から接続部16の方向、すなわち、x軸のマイナス方向に向かって延伸したのち、図4に示すように、先端27aが、z軸のプラス方向に延びている。延伸部27の先端27aには、図4に示すように、接続部26側に接触面27bが形成されている。接触面27bは、x軸方向に対して傾斜しており、接触面17bに対向している。
【0038】
本実施形態では、変形部材50は、一対の部材15、25のそれぞれに接続されており、熱変形部31と、断熱部52と、を備える。熱変形部31の一方の端部31aは、一方の部材15の上面18に接続されている。熱変形部31の他方の端部31bには、断熱部52が設けられている。熱変形部31は、第1実施形態の熱変形部と同様に、自身の温度が低下すると収縮し温度が上昇すると膨張する形状記憶合金から形成されている。断熱部52は、熱変形部31に比べ熱伝導性が低い材料から形成されている。断熱部52は、熱変形部31の他方の端部31bと、他方の部材25の上面28と一方の部材15側の側面29とを接続する。
【0039】
図5は、本実施形態の熱制御デバイス3の作動を説明する図である。本実施形態では、変形部材50の変形によって変更される間隔Gpは、一方の部材15の接触面17bと、他方の部材25の接触面27bとによって形成される(図5(b)の間隔Gp参照)。図5(a)は、第1部材Aが「高温側」で第2部材Bが「低温側」であるときの熱制御デバイス3の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材50の温度より高い場合、変形部材50は、一方の部材10によって温度が上昇するため、膨張する。変形部材50が膨張すると、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは離れる一方、接触面17bと接触面27bとは接触する。この状態において、「高温側」の一方の部材10から「低温側」の他方の部材20には、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図5(a)の点線矢印H31参照)。なお、本実施形態では、図5(a)に示す熱制御デバイス3の状態を初期状態とする。
【0040】
図5(b)は、第1部材Aが「低温側」で第2部材Bが「高温側」であるときの熱制御デバイス3の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材50の温度より低い場合、変形部材50は、一方の部材15によって温度が低下するため、収縮する。変形部材50が収縮すると、他方の部材25は、白抜き矢印M23の方向に移動する。これにより、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは近づく一方、接触面17bと接触面27bとは離れる。接触面17bと接触面27bとが離れると、「高温側」の他方の部材25から「低温側」の一方の部材15に向かって、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図5(b)の点線矢印H32参照)。
【0041】
熱制御デバイス3では、一方の部材15の温度に対応して変形部材50が変形することで、一方の部材15から他方の部材25に向けて熱が移動しやすい一方、他方の部材25から一方の部材15に向けては熱が移動しにくくなる。このように、熱制御デバイス3では、第1部材Aと第2部材Bとの間において熱が移動しやすい方向が、第1部材Aから第2部材Bへの1つの方向に限定される。
【0042】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス3によれば、他方の部材25の延伸部27の先端27aは、一方の部材15の延伸部17の先端17aと接続部16との間に位置している。一方の部材15の先端17aと他方の部材25の先端27aとの間には、変形部材50の変形によって変更される間隔Gpが形成されている。これにより、一方の部材15の接続部16と他方の部材25の接続部26との間の距離が変形部材50の変形によって長くなるときでも、間隔Gpを狭くすることができる。したがって、熱変形部31の特性に合わせて熱の移動方向を制御し、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱を整流することができる。
【0043】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態の熱制御デバイス4の作動を説明する図である。第4実施形態の熱制御デバイス4は、第3実施形態の熱制御デバイス3(図4)と比較すると、変形部材の特性が異なる。
【0044】
第4実施形態の熱制御デバイス4は、一対の部材15、25と、変形部材60とを備える。変形部材60は、一対の部材15、25のそれぞれに接続されており、熱変形部41と、断熱部52と、を備える。熱変形部41は、第2実施形態の熱変形部と同様に、自身の温度が低下すると膨張し温度が上昇すると収縮する形状記憶合金から形成されている。本実施形態では、熱変形部41の一方の端部41aには、一方の部材15の接続部16が接続されており、他方の端部41bには、断熱部52が設けられている。
【0045】
本実施形態では、変形部材60の変形によって変更される間隔Gpは、一方の部材15の接触面17bと、他方の部材25の接触面27bとによって形成される(図6(a)の間隔Gp参照)。図6(a)は、第1部材Aが「高温側」で第2部材Bが「低温側」であるときの熱制御デバイス4の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材60の温度より高い場合、変形部材60は、一方の部材15によって温度が上昇するため、収縮する。変形部材60が収縮すると、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは近づく一方、接触面17bと接触面27bとは離れる。この状態において、「高温側」の一方の部材15から「低温側」の他方の部材25に向かって、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する(図6(a)の点線矢印H41参照)。なお、本実施形態では、図6(a)に示す熱制御デバイス4の状態を初期状態とする。
【0046】
図6(b)は、第1部材Aが「低温側」で第2部材Bが「高温側」であるときの熱制御デバイス4の状態を示している。第1部材Aの温度が変形部材60の温度より低い場合、変形部材60は、一方の部材15によって温度が低下するため、膨張する。変形部材60が膨張すると、他方の部材25は、白抜き矢印M24の方向に移動する。これにより、一方の部材15の接続部16と、他方の部材25の接続部26とは離れる一方、接触面17bと接触面27bとは接触する。この状態において、「高温側」の他方の部材25から「低温側」の一方の部材15に向かって、主に伝導伝熱によって熱が移動する(図6(a)の点線矢印H42参照)。
【0047】
熱制御デバイス4では、一方の部材15の温度に対応して変形部材60が変形することで、他方の部材25から一方の部材15に向けて熱が移動しやすい一方、一方の部材15から他方の部材25に向けては熱が移動しにくくなる。このように、熱制御デバイス4では、第1部材Aと第2部材Bとの間において熱が移動しやすい方向が、第2部材Bから第1部材Aへの1つの方向に限定される。
【0048】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス4によれば、一方の部材15の接続部16と他方の部材25の接続部26との間の距離が変形部材60の変形によって長くなるとき、間隔Gpを狭くすることができる。したがって、熱制御デバイス4は、熱変形部41の特性に合わせて熱の移動方向を制御し、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱を整流することができる。
【0049】
<第5実施形態>
図7は、第5実施形態の熱制御デバイス5の作動を説明する図である。第5実施形態の熱制御デバイス5は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、一対の部材の間隔を調整する調整部を備える点が異なる。
【0050】
本実施形態の熱制御デバイス5は、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱の移動を制御する装置であって、一対の部材10、20と、変形部材30と、ばね71と、を備える。ばね71は、一方の部材10と他方の部材20とに接続されている。ばね71は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制するように、一方の部材10と他方の部材20とを付勢する。ばね71は、特許請求の範囲の「調整部」に該当する。
【0051】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス5によれば、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを調整するばね71を備えている。ばね71は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制する。すなわち、ばね71は、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが図7に示す初期状態に戻るための復元力を有する。これにより、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを繰り返し変更することができるため、2つの部材A、Bの間における、一方向への熱の移動の許容と逆方向への熱の移動の抑制を繰り返すことができる。
【0052】
<第6実施形態>
図8は、第6実施形態の熱制御デバイス6の作動を説明する図である。第6実施形態の熱制御デバイス6は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、一対の部材の間隔を調整する調整部を備える点が異なる。
【0053】
本実施形態の熱制御デバイス6は、第1部材Aと第2部材Bとの間における熱の移動を制御する装置であって、一対の部材10、20と、変形部材30と、ばね72と、を備える。ばね72は、他方の部材20と第2部材Bとに接続されている。ばね72は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制するように、他方の部材20を付勢する。ばね72は、特許請求の範囲の「調整部」に該当する。
【0054】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス6によれば、熱制御デバイス6は、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを調整するばね72を備えている。ばね72は、変形部材30の変形によって一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが狭められるとき、間隔Gpが狭くなることを抑制する。すなわち、ばね72は、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpが図8に示す初期状態に戻るための復元力を有する。これにより、一方の部材10と他方の部材20との間隔Gpを繰り返し変更することができるため、2つの部材A、Bの間における、一方向への熱の移動の許容と逆方向への熱の移動の抑制を繰り返すことができる。
【0055】
<第7実施形態>
図9は、第7実施形態の熱制御デバイス7の斜視図である。図10は、第7実施形態の熱制御デバイス7の正面図と側面図である。第7実施形態の熱制御デバイス7は、第1実施形態の熱制御デバイス1(図1)と比較すると、変形部材の形状、および、一方の部材の形状が異なる。
【0056】
第7実施形態の熱制御デバイス7は、一対の部材80、90と、変形部材100と、を備える。一対の部材80、90のうちの一方の部材80は、第1部材Aに接続され、他方の部材90は、第2部材Bに接続されている。
【0057】
一方の部材80は、略直方体形状の部材であって、熱制御デバイス7において、z軸方向のマイナス側に位置している。一方の部材80は、接続部81と、2つのガイド部82と、を備える。接続部81は、直方体形状の部材であって、第1部材Aに接続される。2つのガイド部82のそれぞれは、接続部81においてx軸方向の両側のそれぞれに設けられている。ガイド部82は、接続部81からz軸方向のプラス側に延伸している。2つのガイド部82のうち、例えば、接続部81においてx軸のプラス側に設けられているガイド部82には、図9に示すように、2つの溝82aが形成されている。2つの溝82aのそれぞれは、z軸方向に沿うように形成される。接続部81においてx軸のマイナス側に設けられるガイド部82についても、同様に、z軸方向に沿っている2つの溝82aが形成されている。
【0058】
他方の部材90は、直方体形状の部材であって、図9に示すように、熱制御デバイス7において、z軸方向のプラス側に位置している。他方の部材90は、一方の部材80が有する2つのガイド部82の間に配置されている。他方の部材90は、2つのガイド部82の内側において、z軸方向に移動可能である。
【0059】
本実施形態では、一方の部材80と他方の部材90との間には、板ばね73が設けられている。板ばね73は、一方の部材80と他方の部材90とが離れるように、一方の部材80と他方の部材90とに弾性力を作用させる。これにより、板ばね73を挟んで積層されている一方の部材80と他方の部材90とは、相対位置を変更可能である。
【0060】
変形部材100は、熱変形部101と、断熱部102と、係合部103と、を備える。熱変形部101は、線状の部材であって、熱制御デバイス7を囲むように配置されている。熱変形部101は、温度が上昇すると収縮し温度が低下すると膨張する形状記憶合金から形成されている。
【0061】
断熱部102は、断熱材から形成されている円柱形状の部材である。本実施形態では、変形部材100は、4個の断熱部102を備えており、他方の部材90の側面90a、90bのそれぞれに2つずつx軸方向に突出するように設けられている。4個の断熱部102のそれぞれは、一方の部材80に形成されている4つの溝82aのそれぞれに挿通されている。
【0062】
係合部103は、熱伝導性が比較的高い材料から形成されている円柱形状の部材である。係合部103は、一方の部材80の2つの側面81a、81bのそれぞれに、2個ずつ配置されている。
【0063】
変形部材100では、図9に示すように、熱変形部101は、4個の断熱部102のz軸のプラス側と、4個の係合部103のz軸のマイナス側とのそれぞれにおいて、断熱部102および係合部103と係合している。これにより、変形部材100は、一方の部材80と他方の部材90とに接続している。
【0064】
熱変形部101は、断熱部102を介して他方の部材90に接続されている一方、一方の部材80に対しては、図10に示すように、一方の部材80の4つの側面81a、81b、81c、81dと、ガイド部82の外側の側面82b、82cに接触している。これにより、熱変形部101では、一方の部材80との間の熱流量が、他方の部材90との間の熱流量より大きい。
【0065】
熱制御デバイス7では、一方の部材80の温度が熱変形部101の温度より低い場合、一方の部材80と他方の部材90とは、板ばね73の弾性力によって離れた状態となる。したがって、この場合では、一方の部材80と他方の部材90との間では、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が移動する。一方の部材80の温度が熱変形部101の温度より高い場合、熱変形部101の温度が上昇し、熱変形部101が収縮する。熱変形部101が収縮すると、断熱部102にz軸のマイナス方向の力が作用するとともに、係合部103にz軸のプラス方向の力が作用するため、一方の部材80と他方の部材90とが板ばね73の弾性力に抗して接触する。これにより、一方の部材80と他方の部材90との間では、主に伝導伝熱によって熱が移動する。
【0066】
次に、本実施形態の熱制御デバイス7について、伝熱の状態を評価する評価試験について説明する。この評価試験では、図9および図10を用いて説明した熱制御デバイス7において、一方の部材80の温度と他方の部材90の温度を所定の温度に設定し、一方の部材80と他方の部材90における温度分布を計算した。
【0067】
図11は、熱制御デバイス7についての第1の計算結果である。図11は、一方の部材80の温度を20℃に設定し、他方の部材90の温度を90℃に設定したときの熱制御デバイス7の温度分布を示している。この温度設定では、熱制御デバイス7の変形部材100は、一方の部材80によって温度が低下するため、一方の部材80と他方の部材90とを接触させるほど収縮しない。このため、一方の部材80と他方の部材90との間では、対流伝熱と輻射伝熱によって熱が伝わる。しかしながら、輻射伝熱による伝熱量は比較的小さいため、図11に示すように、一方の部材80と他方の部材90のそれぞれでの温度分布は、設定温度から大きく変化しないことが確認された。
【0068】
図12は、熱制御デバイス7についての第2の計算結果である。図12は、一方の部材80の温度を90℃に設定し、他方の部材90の温度を20℃に設定したときの熱制御デバイス7の温度分布を示している。この温度設定では、熱制御デバイス7の変形部材100は、一方の部材80によって温度が上昇するため収縮し、一方の部材80と他方の部材90とを接触させる。これにより、一方の部材80と他方の部材90との間で、主に伝導伝熱によって熱が伝わる。したがって、図12に示すように、一方の部材80において、他方の部材90側に向かうにしたがって温度が低下しており、他方の部材90において、一方の部材80側に向かうにしたがって温度が上昇することが確認された。すなわち、熱制御デバイス7は、一方の部材80から他方の部材90に向かって熱の移動を許容する一方、他方の部材90から一方の部材に向かって熱の移動を規制する。
【0069】
以上説明した、本実施形態の熱制御デバイス7によれば、熱制御デバイス7は、一方の部材80と他方の部材90との間隔を調整することが可能な板ばね73を備えている。これにより、熱制御デバイス7では、板ばね73によって間隔を所望の大きさに調整することで、一対の部材80、90が接触する条件を設定しやすくなる。したがって、一対の部材80、90の間で移動する熱流量の大きさを高精度に調整することができる。
【0070】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0071】
[変形例1]
上述の実施形態では、変形部材は、自身の温度によって変形する熱変形部と、他方の部材に接続される断熱部と、を備えるとした。しかしながら、変形部材の構成は、これに限定されない。熱変形部のみであってもよい。
【0072】
図13は、第1実施形態の熱制御デバイス1の変形例の模式図である。図13に示す熱制御デバイス1の変形例は、変形部材30は、自身の温度によって変形する材料のみから形成されている。図13に示すように、変形部材30は、一方の部材10に接触する接触面積が面積30aとなっている。一方、変形部材30は、他方の部材20に接触する接触面積が、面積30aより小さい面積30bとなっている。これにより、熱制御デバイス1では、変形部材30と一方の部材10との間の熱流量は、変形部材30と他方の部材20との間の熱流量より大きくなるため、一方の部材10から他方の部材20への熱の移動を許容し、他方の部材20から一方の部材10への熱の移動を抑制することができる。また、変形部材30は、一方の部材10の温度に応じて変形しやすくなるため、一方の部材10の温度変化に対する変形部材30の変形の応答性を向上することができる。
【0073】
[変形例2]
第5実施形態および第6実施形態では、一方の部材10と他方の部材20との間隔を調整するばね71、72を備えるとした。しかしながら、一対の部材の間隔を調整する部材は、ばねを限定されない。磁力によって間隔を調整してもよい。また、第5実施形態および第6実施形態では、ばねは、変形部材の変形によって一方の部材と他方の部材との間隔が狭められるとき、間隔が狭くなることを抑制するとした。ばねは、変形部材の変形によって一方の部材と他方の部材との間隔が広げられるとき、間隔が広くなることを抑制する圧縮ばねであってもよい。
【0074】
[変形例3]
第5実施形態、第6実施形態、および、第7実施形態が備えるばねは、第3実施形態および第4実施形態に適用してもよい。
【0075】
[変形例4]
上述の実施形態では、熱変形部は、形状記憶合金から形成されるとした。しかしながら、熱変形部を形成する材料はこれに限定されない。自身の温度変化によって変形する材料から形成されていればよく、温度変化による変形量が大きい方が望ましい。
【0076】
[変形例5]
上述の実施形態では、一対の部材のうち他方の部材のみが移動可能であるとした。しかしながら、一対の部材の両方が移動可能であってもよい。
【0077】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0078】
1,2,3,4,5,6,7…熱制御デバイス
10,15,80…一方の部材
16…(一方の部材の)接続部
17…(一方の部材の)延伸部
17a…(一方の部材の延伸部の)先端
20,25,90…他方の部材
26…(他方の部材の)接続部
27…(他方の部材の)延伸部
27a…(一方の部材の延伸部の)先端
30,40,50,60,100…変形部材
30a,30b…面積
31,41,101…熱変形部
31,41…熱変形部
32,52,102…断熱部
71,72…ばね
A…第1部材
B…第2部材
Gp…間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13