(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置
(51)【国際特許分類】
B63B 13/00 20060101AFI20240806BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240806BHJP
【FI】
B63B13/00 Z
C02F1/32
(21)【出願番号】P 2020176098
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095080(JP,A)
【文献】特開2006-224030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0166590(US,A1)
【文献】華山伸一,“バラスト水処理装置の概説と将来の方向性”,日本船舶海洋工学会誌,日本海事協会,2017年09月10日,第74号,pp.11-16,ISSN:1880-3725
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 13/00
C02F 1/32
B63B 83/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通するバラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、
紫外線照射量を調整可能な紫外線リアクタと、
複数の運転モードから選択される1つの運転モードにより前記バラスト水処理装置を制御する制御手段と、
流通するバラスト水の塩分濃度を測定する塩分濃度測定手段と、
前記紫外線リアクタによる処理後のバラスト水をバラストタンクに貯留してから排出するまでの許容排出時間を取得する許容排出時間取得手段と、を備え、
前記複数の運転モードにはそれぞれ、
水域ごとであって且つ、紫外線透過率ごとに処理流量及び紫外線照射量が規定されるとともに、処理後のバラスト水を前記バラストタンクに保持しておく必要のあるタンク保持時間が設定されており、
前記制御手段は
、前記塩分濃度測定手段が測定した前記塩分濃度
に基づいて水域を特定し、
前記制御手段はさらに、前記許容排出時間取得手段が取得した前記許容排出時間
が前記複数の運転モードのうち前記タンク保持時間の最も長い運転モードの当該タンク保持時間よりも短い場合、前記タンク保持時間が最も短い運転モードを適切な運転モードと判断する、バラスト水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバラスト水処理装置であって
、
前記水域は、第1の水域と、当該第1の水域よりも前記塩分濃度の高い第2の水域とを含み、
前記制御手段は、
前記第1の水域において、前記許容排出時間取得手段が取得した前記許容排出時間が前記複数の運転モードのうち前記タンク保持時間の最も長い運転モードの当該タンク保持時間よりも短い場合、前記タンク保持時間が最も短い運転モードを適切な運転モードと判断する、バラスト水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
前記流通するバラスト水の紫外線透過率を取得する透過率取得手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記許容排出時間取得手段が取得した前記許容排出時間が前記複数の運転モードのうち前記タンク保持時間の最も長い運転モードの当該タンク保持時間と同じ又はこれより長い場合、前記透過率取得手段から取得した前記紫外線透過率を判定基準として適切な運転モードを判定する、バラスト水処理装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置であって、
前記流通するバラスト水の処理流量を調整する流量調整手段と、
前記流通するバラスト水の紫外線透過率を取得する透過率取得手段と、を備え
、
前記制御手段は、各運転モードにおいて、前記透過率取得手段により前記紫外線透過率を取得するとともに、判定した運転モードにおいて定められた前記処理流量及び前記紫外線照射量となるよう、前記流量調整手段及び前記紫外線リアクタを制御する、バラスト水処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のバラスト水処理装置であって、
前記複数の運転モードは、第1モードと第2モードとを備え、
前記紫外線透過率が所定値以上の場合の前記処理流量は、前記第2モードよりも前記第1モードが多くなり、
前記紫外線透過率が前記所定値未満の場合の前記処理流量は、前記第1モードよりも前記第2モードが多くなるよう設定されている、バラスト水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線リアクタを備えたバラスト水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶は、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、通常、バラスト水と呼ばれる水をバラストタンク内に貯留する。このような船舶には、バラスト水の注排水による生態系の破壊を防ぐため、バラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置が設けられている。
【0003】
バラスト水処理装置の一種として、紫外線リアクタを備え、バラスト水中の微生物を紫外線を照射することによって殺滅するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなバラスト水処理装置を用いてバラスト水を浄化処理して貯留し、その後排出する場合、国際海事機関(IMO)やアメリカ沿岸警備隊(USCG)等の機関が定める排出規制を遵守する必要がある。そして、このような排出規制を実効あらしめるため、バラスト水処理装置は、排出規制を遵守した仕様にて所定の機関による型式承認を得なければならない。ただし、同一の排出規制(例えば、USCGの排出規制)についての型式承認を行う承認機関は複数存在しており、同一の排出規制について複数の仕様(運転モード)で型式承認を得ることも可能である。
【0006】
しかしながら、バラスト水処理装置が型式承認を得た複数の運転モードで運転可能な場合であっても、状況に応じて適切な運転モードを選択することは難しかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数の運転モードを有する場合に、適切な運転モードを判定することの可能なバラスト水処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、流通するバラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、紫外線照射量を調整可能な紫外線リアクタと、複数の運転モードから選択される1つの運転モードにより前記バラスト水処理装置を制御する制御手段と、流通するバラスト水の塩分濃度を測定する塩分濃度測定手段と、前記紫外線リアクタによる処理後のバラスト水をバラストタンクに貯留してから排出するまでの許容排出時間を取得する許容排出時間取得手段と、を備え、前記複数の運転モードにはそれぞれ、処理後のバラスト水を前記バラストタンクに保持しておく必要のあるタンク保持時間が設定されており、前記制御手段は、下記(1)及び/又は(2)を判定基準として適切な運転モードを判定する、バラスト水処理装置が提供される。
(1)前記塩分濃度測定手段が測定した前記塩分濃度
(2)前記許容排出時間取得手段が取得した前記許容排出時間と前記タンク保持時間の比較
【0009】
本発明によれば、上記(1)及び/又は(2)を適切な運転モードの判定基準とすることで、水域に応じて、また、許容排出時間に応じて適切な運転モードでバラスト水処理装置を運転することが可能となる。
【0010】
なお、タンク保持時間とは、バラストタンクに取り入れたバラスト水を、当該バラスト水に含まれる微生物が完全に死滅しないまま排出されないようにするために定められる時間である。上述した型式承認を得た運転モードの中には、水域ごとにタンク保持時間が設定されているものがあり、タンク保持時間は、運転モードごとに異なっている。したがって、ある水域において、ある運転モードでは許容排出時間がタンク保持時間よりも大きいため問題にならないが、他の運転モードでは許容排出時間がタンク保持時間よりも小さいため所望のタイミングでバラスト水を排出できないという問題が生じる。この点、本発明に係る制御手段は、現在の水域の情報に加えて許容排出時間取得手段が取得した前記許容排出時間とタンク保持時間とを比較することによって、そのような問題を生じさせないようにすることが可能となる。
【0011】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0012】
好ましくは、前記制御手段は、前記(1)を判定基準として水域を特定し、前記水域は、第1の水域と、当該第1の水域よりも前記塩分濃度の高い第2の水域とを含み、前記制御手段は、前記第1の水域において、前記(2)を判定基準として適切な運転モードを判定する。
【0013】
好ましくは、前記流通するバラスト水の処理流量を調整する流量調整手段と、前記流通するバラスト水の紫外線透過率を取得する透過率取得手段と、を備え、前記複数の運転モードにはそれぞれ、前記紫外線透過率に応じてバラスト水の前記処理流量及び前記紫外線照射量が定められており、前記制御手段は、各運転モードにおいて、前記透過率取得手段により前記紫外線透過率を取得するとともに、判定した運転モードにおいて定められた前記処理流量及び前記紫外線照射量となるよう、前記流量調整手段及び前記紫外線リアクタを制御する。
【0014】
好ましくは、前記制御手段は、前記(1)及び/又は前記(2)を判断基準とすることに加えて、前記透過率取得手段から取得した前記紫外線透過率を判定基準として適切な運転モードを判定する。
【0015】
好ましくは、前記複数の運転モードは、第1モードと第2モードとを備え、前記紫外線透過率が所定値以上の場合の前記処理流量は、前記第2モードよりも前記第1モードが多くなり、前記紫外線透過率が前記所定値未満の場合の前記処理流量は、前記第1モードよりも前記第2モードが多くなるよう設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバラスト水処理装置10及びこれを船舶のバラスト装置1に導入した様子を示す概念図である。
【
図2】
図1のバラスト水処理装置10の主要構成を示すブロック図である。
【
図3】第1モードM1及び第2モードM2のタンク保持時間を示す図表である。
【
図4】第1モードM1及び第2モードM2において規定される紫外線透過率と処理流量の関係を示すグラフである。
【
図5】
図1のバラスト水処理装置10が適切な運転モードを判定するアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図6】
図1のバラスト装置1のバラスト動作時の流路を示す図である。
【
図7】
図1のバラスト装置1のデバラスト動作時の流路を示す図である。
【
図8】
図1のバラスト装置1の予備運転時の流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0018】
1.バラスト装置1の構成
図1は、本発明の実施形態に係る液体処理装置としてのバラスト水処理装置10を、船舶のバラスト装置1に導入した様子を示す概略図である。本願のバラスト装置1は、バラストタンク2及びバラストポンプ3を備え、バラストポンプ3によりバラストタンク2に対してバラスト水の注排水を行うものである。なお、海水等の船外の水をシーチェストSC1から船内に取り込んで複数のバラストタンク2に注水を行う動作をバラスト動作、バラストタンク2に貯留されたバラスト水を船外排出口SC2から排水する動作をデバラスト動作と呼ぶ。また、本明細書における「バラスト水」について、バラストタンク2に導入(流入)される前又はバラストタンク2から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現する。また、船内に取り込むバラスト水には、海水、淡水、汽水等が含まれるものとする。
【0019】
図1に示すように、バラスト装置1は、各構成要素を接続してバラスト水を流通させるラインLa~ラインLeと、これらのライン上に設けられる開閉弁Va~開閉弁Vfとを備える。ここで、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0020】
各ラインの接続関係を具体的に説明すると、ラインLaは、シーチェストSC1とバラストポンプ3を接続するラインであり、開閉弁Vaを有する。ラインLb及びラインLcは、バラストポンプ3とバラストタンク2を接続するラインである。バラスト水処理装置10がバラストポンプ3とバラストタンク2の間に配置されるため、バラスト水処理装置10よりも上流側をラインLb、バラスト水処理装置10よりも下流側をラインLcとしている。ラインLbは、開閉弁Vbを有し、ラインLcは、開閉弁Vc及び開閉弁Vdを有する。ラインLa~ラインLcを合わせて、バラストラインとも称する。
【0021】
ラインLdは、一端が開閉弁Vaとバラストポンプ3の間の位置においてラインLaと接続され、他端が開閉弁Vcよりもバラストタンク2側においてラインLcと接続される。ラインLdには、開閉弁Veが設置される。ラインLdは、デバラスト動作時に使用されるラインであり、デバラストラインとも称する。ラインLeは、一端がバラスト水処理装置10と開閉弁Vcの間の位置においてラインLcと接続され、他端は船外排出口SC2と接続される。ラインLeには、開閉弁Vfが設置される。
【0022】
なお、上述したバラスト装置1の構成は、本発明に係るバラスト水処理装置10を導入する対象であるバラスト装置の一例を示したに過ぎず、以下に説明するバラスト水処理装置10は、任意の構成のバラスト装置に適用することが可能である。
【0023】
2.バラスト水処理装置10の構成
次に、バラスト水処理装置10の構成を説明する。バラスト水処理装置10は、船内に取り込むバラスト水及び船内から排出するバラスト水を処理してバラスト水中に含まれる微生物・異物の含有量を低減するために導入されるものである。本実施形態のバラスト水処理装置10は、
図1に示すように、バラストポンプ3とバラストタンク2(あるいは船外排出口SC2)の間に設けられる。ここで、バラスト水処理装置10の流路について、ラインLbと接続されるバラストポンプ3側の接続部を上流側接続部P1、ラインLcと接続されるバラストタンク2側の接続部を下流側接続部P2とする。
【0024】
本実施形態のバラスト水処理装置10は、浄化手段として、フィルタによりバラスト水を濾過処理する濾過装置11と、バラスト水に紫外線を照射して微生物を殺菌処理する紫外線リアクタ12とを備える。また、バラスト水処理装置10は、
図2に示すように、流量計13と、紫外線センサ14と、入力装置15と、透過率取得手段16と、塩分濃度測定手段17と、判定結果出力手段18と、制御手段19と、を備える。なお、濾過装置11は既知の任意の構成を適用することができ、また、濾過装置11を省略することもできる。
【0025】
加えて、バラスト水処理装置10は、
図1に示すように、各構成要素を接続してバラスト水を流通させる第1ラインL1~第5ラインL5と、これらに設置される開閉弁V1~V4と、流量調整手段としての流量調整弁FCVとを備える。
【0026】
第1ラインL1は、浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)をバイパスして上流側接続部P1と下流側接続部P2を接続するライン(バイパスライン)であり、開閉弁V1を有する。第2ラインL2は、第1ラインL1と濾過装置11とを接続するラインであり、開閉弁V2を有する。第3ラインL3は、濾過装置11と紫外線リアクタ12とを接続するラインであり、開閉弁V3を有する。また、第4ラインL4は、一端が第1ラインL1の第2ラインL2との接続位置よりも下流側の位置であって開閉弁V1よりは上流側の位置に接続され、他端が第3ラインL3の開閉弁V3よりも下流側の位置に接続される。第4ラインL4は開閉弁V4を有する。第5ラインL5は、一端が紫外線リアクタ12に接続され、他端が第1ラインL1の開閉弁V1よりも下流側の位置に接続される。第5ラインL5には、流量計13と、開度調整の可能な流量調整弁FCVとが設けられる(
図2も参照)。
【0027】
紫外線リアクタ12は、図示しない処理槽の内部に複数本の紫外線ランプ12a(
図2参照)が配置されて構成される。紫外線リアクタ12は、処理槽内を流通するバラスト水に対し、紫外線ランプ12aにより紫外線を照射して微生物を殺菌処理するものである。本実施形態の紫外線リアクタ12は、各紫外線ランプ12aのオンオフ及び/又は供給する電力を制御することで、バラスト水へ照射する紫外線の強度を調整可能となっている。
【0028】
流量計13は、紫外線リアクタ12を流通するバラスト水の流量を計測するものである。本実施形態において、流量計13は第5ラインL5に設けられているが、紫外線リアクタ12による殺滅処理を行う際のバラスト水の流路上であれば、他の位置に設けられていても良い。流量計13及び上述した流量調整弁FCVの開度調整により、バラスト水処理装置10を流通するバラスト水の流量(以下、処理流量と呼ぶ)を調整することが可能となる。
【0029】
紫外線センサ14は、紫外線リアクタ12に設置され、紫外線ランプ12aからの紫外線の照度を、バラスト水を介して測定するものである。流量計13により計測されるバラスト水の流量と紫外線センサ14により計測される紫外線の照度とから、単位流量あたりの紫外線の照射量である紫外線照射量が算出される。
【0030】
入力装置15は、船員等のユーザから各種入力を受け付ける装置である。入力装置15の例としては、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に接続されたマウス、キーボードあるいはタッチパネルによる入力が可能なディスプレイ、さらには、音声入力装置等が挙げられる。ただし、ユーザから各種入力を受け取ることが可能であれば、任意のデバイスを用いることができる。ここで、ユーザから受け付ける各種入力とは、船舶の現在位置の情報、貯留する必要のあるバラスト水の総量の情報、船舶の航行先(目的地)の情報、船舶が入港してから出港するまでの時間の情報、停泊中の船舶が出港してから航行先に入港するまでの(予想)時間の情報等である。
【0031】
なお、停泊中の船舶が出港してから航行先に入港するまでの時間からは、処理後のバラスト水をバラストタンク2に貯留してから排出するまでの許容排出時間を算出することができる。したがって、本実施形態の入力装置15は、紫外線リアクタ12による処理後のバラスト水をバラストタンク2に貯留してから排出するまでの許容排出時間を取得する許容排出時間取得手段として機能する。なお、許容排出時間は、船舶の次の港までの航行時間が長ければ影響は少ない一方、次の港までの航行時間が短ければ港についてもバラスト水を排出して荷役をすることができないという問題が生じるため重要である。入力装置15は、バラスト装置1の動作を制御するバラストコントローラに設置されることが好適である。
【0032】
透過率取得手段16は、紫外線リアクタ12を流通するバラスト水の紫外線透過率を取得するものである。本実施形態において、透過率取得手段16はバラスト水の紫外線透過率を計測可能な透過率測定センサである。透過率測定センサは、バラスト水処理装置10におけるバラスト水の流路上に設ける必要はなく、船舶における海水の取り込みが容易な任意の位置に設置される。
【0033】
塩分濃度測定手段17は、バラスト水処理装置10を流通するバラスト水の塩分濃度を測定するものである。本実施形態において、塩分濃度測定手段17は、バラスト水の電気伝導度を測定する電気伝導度計である。塩分濃度測定手段17は、
図1に示すように、例えば、第1ラインL1(バイパスライン)に設けられる。ただし、塩分濃度測定手段17をバラスト水処理装置10におけるバラスト水の流路上に設ける必要はなく、塩分濃度測定手段17は、船舶における海水の取り込みが容易な任意の位置に設置されていれば良い。
【0034】
塩分濃度測定手段17は、塩分濃度によって定められる水域を特定するために用いられる。具体的な水域とは、例えば、海水域、汽水域、淡水域である。後述する各運転モードM1~M3では、水域によって微生物の紫外線耐性が異なるため水域ごとに所定の紫外線照射量が定められている。そして、制御手段19が塩分濃度測定手段17により取得された塩分濃度から水域を特定することで、水域に応じた適切な紫外線照射量で浄化処理を行うことができる。
【0035】
判定結果出力手段18は、制御手段19の判定部92が判定した適切な運転モードをユーザに提示するためのものである。判定結果出力手段18としては、例えばディスプレイ等の表示装置が用いられる。入力装置15がディスプレイを備える場合は、これを共用することも好適である。
【0036】
制御手段19は、上述した開閉弁Va~Vf、開閉弁V1~V4及び流量調整弁FCVの開閉を制御することにより、バラスト水処理装置10内を流通するバラスト水の流量を調整する。また、制御手段19は、紫外線リアクタ12の紫外線ランプ12aの出力を制御することにより、バラスト水への紫外線照射量を調整する。流量調整弁FCVの開閉制御によるバラスト水の流量の調整及び紫外線リアクタ12の出力制御によるバラスト水への紫外線照射量の調整は、後述する第1モードM1~第3モードM3から選択される1つの運転モードにより行われる。制御手段19は、具体的には、
図2に示すように、情報取得部90と、記憶部91と、判定部92と、動作制御部93とを備える。
【0037】
情報取得部90は、流量計13から流通するバラスト水の流量を取得し、入力装置15に入力された船員からの各種入力を取得し、透過率取得手段16からバラスト水の紫外線透過率を取得する。また、情報取得部90は、塩分濃度測定手段17からバラスト水の塩分濃度を取得する。
【0038】
記憶部91は、各種データを記憶する機能を有する。記憶部91は、第1モードM1~第3モードM3それぞれにおいて紫外線透過率ごとに規定される処理流量及び紫外線照射量を記憶する。なお、各運転モードにおいて紫外線透過率ごとに規定される処理流量及び紫外線照射量は、水域によって異なっている。また、記憶部91は、後述する第1モードM1のタンク保持時間T11,T12及び第2モードM2のタンク保持時間T2を記憶する。
【0039】
判定部92は、情報取得部90が取得した情報と記憶部91に記憶された情報とから、適切な運転モードを判定する。
【0040】
動作制御部93は、第1モードM1~第3モードM3の何れかの運転モードにより、流量調整弁FCVの開度及び紫外線リアクタ12の紫外線ランプ12aの強度を制御する。これにより、バラスト水の処理流量とバラスト水への紫外線照射量とが調整される。
【0041】
なお、上記構成の制御手段19は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段19の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段19の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0042】
3.バラスト水処理装置10の動作
本実施形態のバラスト水処理装置10は、複数の運転モードとして第1モードM1~第3モードM3の3つの運転モードを備えている。バラスト水処理装置10は、バラスト動作において実行されるバラスト水の浄化処理の際、まず、モード判定工程によって適切な運転モードを判定した後、判定した運転モードにより浄化工程を実行する。
【0043】
各運転モードでは、水域ごとであって且つ、紫外線透過率ごとに処理流量及び紫外線照射量が規定されており、紫外線透過率ごとの処理流量及び紫外線照射量は記憶部91に記憶されている。制御手段19は、各運転モードで規定される処理流量及び紫外線照射量で浄化処理が行われるよう、流量調整弁FCVの開度及び紫外線リアクタ12の紫外線ランプ12aの強度を制御する。なお、いずれの運転モードでも、処理流量は、紫外線透過率が高いほど多くなるよう設定されている。これは、同じ紫外線ランプ12aの出力であっても紫外線透過率が高いほど紫外線照射量が多くなるからである。
【0044】
<各運転モードについて>
ところで、本実施形態において、第1モードM1及び第2モードM2は、アメリカ沿岸警備隊(USCG)が定める排出規制を遵守した運転モードである。すなわち、第1モードM1及び第2モードM2は、いずれもアメリカ沿岸警備隊(USCG)が定める機関により型式承認を得た運転モードである。一方、第3モードM3は、国際海事機関(IMO)が定める排出規制を遵守した運転モードであり、国際海事機関(IMO)が定める機関により型式承認を得た運転モードである。したがって、船舶の航行先がアメリカ合衆国又はその近海(以下、海域Aと呼ぶ)である場合は第1モードM1又は第2モードM2で運転し、船舶の航行先が海域Aではない場合は第3モードM3で運転することで、各排出規制が遵守される。
【0045】
また、アメリカ沿岸警備隊(USCG)による排出規制では、一度貯留したバラスト水は、所定時間が経過するまで排出してはならないと定められており、排出してはならない時間は「タンク保持時間」あるいは「ホールディングタイム」と呼ばれている。したがって、第1モードM1~第3モードM3のうちの一部のモードである第1モードM1及び第2モードM2では、処理後のバラスト水をバラストタンク2に貯留してから排出するまでの時間(以下、許容排出時間と呼ぶ)を所定のタンク保持時間より長くとらなければならない。そして、許容排出時間がタンク保持時間よりも短い場合には、目的地に入港してもタンク保持時間が経過するまではバラスト水を排出することができない。
【0046】
タンク保持時間は、第1モードM1と第2モードM2とで異なっている。また、タンク保持時間は、第1モードM1においては、第1の水域としての淡水・汽水域と第2の水域としての海水域とでも異なっている(逆に、第2モードM2では、タンク保持時間は水域によらず同一である)。ここで、
図3に示すように、第1モードM1の淡水・汽水域におけるタンク保持時間をT11、第1モードM1の海水域におけるタンク保持時間をT12、第2モードM2におけるタンク保持時間をT2とする。これら第1モードM1のタンク保持時間T11,T12及び第2モードM2のタンク保持時間T2は、記憶部91に記憶されている。本実施形態において、第1モードM1の汽水・淡水域におけるタンク保持時間T11は、同モードの海水域におけるタンク保持時間T12よりも長い(T11>T12)。また、第2モードM2のタンク保持時間T2は、第1モードM1の海水域におけるタンク保持時間T12よりも短い(T12>T2)。ただし、第1モードM1の汽水・淡水域におけるタンク保持時間T11と同モードの海水域におけるタンク保持時間T12との差(T11とT12の差)と比較して、第1モードM1の海水域におけるT12と第2モードM2のタンク保持時間T2の差は僅かである。
【0047】
加えて、
図4に示すように、第1モードM1と第2モードM2を比較すると、紫外線透過率が所定値Ux以上の場合の処理流量は、第2モードM2よりも第1モードM1が多くなり、紫外線透過率が所定値Ux未満の場合の処理流量は、第1モードM1よりも第2モードM2が多くなるよう設定されている。すなわち、紫外線透過率の所定値Uxは、第1モードM1と第2モードM2の処理流量の大小が切り替わる値である。なお、淡水・汽水域と海水域において、第1モードM1と第2モードM2それぞれの紫外線透過率に対応する処理流量は異なっている(海水域の処理流量のほうが多い)。しかしながら、
図4に示される第1モードM1と第2モードM2の紫外線透過率と処理流量の関係と、所定値Uxにおいて第1モードM1と第2モードM2の処理流量の大小が切り替わる点は、淡水・汽水域においても海水域においても同じである(
図4は概念図であって、紫外線透過率の処理流量が切り替わる所定値Uxが淡水・汽水域と海水域とで同一である必要はない)。
【0048】
以下、
図5を参照して、適切な運転モードを判定するアルゴリズムの一例を説明する。モード判定工程は、船員等がモード判定を要求したタイミング、あるいは船舶が港に入港したタイミングで開始される。
【0049】
<モード判定工程>
モード判定工程では、まず、ステップS1において、制御手段19の情報取得部90は、入力装置15に入力された船舶の次の航行先の情報を取得する。ここで、記憶部91には、航行先の港が海域Aに属するかどうかの情報が記憶されており、入力された船舶の航行先の情報と当該情報とから、判定部92は、航行先が海域Aに属するか否かを判定する。判定部92は、航行先が海域Aでなければ、適切な運転モードは第3モードM3であると判定して、モード判定工程を終了する。航行先が海域Aであれば、次のステップS2に進む。なお、渡航先が海域Aに属するかどうかを直接、入力装置15に入力させるよう構成することも可能である。
【0050】
次に、ステップS2において、情報取得部90は、塩分濃度測定手段17が測定した流通するバラスト水の塩分濃度を取得する。判定部92は、情報取得部90が取得した塩分濃度から、現在の水域を特定し、現在の水域が海水域であるか否かを判定する。判定部92は、現在の水域が海水域であれば、次のステップS3をスキップしてステップS4に進む。一方、現在の水域が海水域でなければ、すなわち、現在の水域が汽水域又は淡水域であれば、次のステップS3に進む。
【0051】
次に、ステップS3において、情報取得部90は、入力装置15に入力された許容排出時間を取得する。また、情報取得部90は、汽水・淡水域における第1モードM1のタンク保持時間T11(第2モードM2のタンク保持時間T2よりも長い)を記憶部91から読み出す。判定部92は、許容排出時間が第1モードM1のタンク保持時間T11未満の場合、つまり、第1モードM1で運転すれば許容排出時間を超えてバラスト水を保持しなければならない場合は、適切な運転モードはタンク保持時間の短い第2モードM2であると判定して、モード判定工程を終了する。許容排出時間が第1モードM1のタンク保持時間T11よりも長い場合は、次のステップS4に進む。
【0052】
なお、ステップS2において、現在の水域が海水域の場合にこのステップS3をスキップしてステップS4に進むのは、第1モードM1の海水域におけるタンク保持時間T12と第2モードM2のタンク保持時間T2の差が僅かだからである。すなわち、タンク保持時間の長い第1モードM1を選択したとしても、数時間待てばバラスト水を排出可能となり、海水域においてはタンク保持時間を判定基準として運転モードを判定するステップS3を実行するメリットが少ないからである。特に、第1モードM1の海水域におけるタンク保持時間T12が船舶の標準的な航行時間と同程度以下である場合には、バラスト水を排出するタイミングでタンク保持時間T12が経過していることになるので、ステップS3を実行する必要は全くない。
【0053】
一方、水域が淡水域・汽水域である場合は、第1モードM1のタンク保持時間T11と第2モードM2のタンク保持時間T2の差が大きい(T11>>T2)。そのため、許容排出時間が短い場合に第1モードM1を選択してしまうと、次の港に着いても、長時間にわたってバラスト水を排出できず荷役を行うことができなくなってしまう。したがって、水域が淡水域・汽水域である場合には、このステップS3を実行することが特に好適なのである。
【0054】
次に、ステップS4において、情報取得部90は、透過率取得手段16から現在地において取水されたバラスト水の紫外線透過率を取得する。判定部92は、透過率取得手段16から取得した紫外線透過率と、現在の水域における第1モードM1と第2モードM2の処理流量の大小が切り替わる所定値Uxとを比較する。判定部92は、紫外線透過率が現在の水域における所定値Ux以上であれば、適切な運転モードはこの範囲において処理流量の多い第1モードM1であると判定して(
図4参照)、モード判定工程を終了する。一方、判定部92は、紫外線透過率が現在の水域における所定値Ux未満であれば、適切な運転モードはこの範囲において処理流量の多い第2モードM2であると判定して(
図4参照)、モード判定工程を終了する。
【0055】
上述したモード判定工程のステップS1~S4によって何れかのモードが適切な運転モードであると判定された後は、制御手段19は判定された適切な運転モードを判定結果出力手段18によって船員等のユーザに提示する。ユーザは、判定結果出力手段18に提示された判定結果を参考にして、実際にどの運転モードでバラスト動作を行うかを選択し、入力装置15により実行する動作モードを入力する。制御手段19の動作制御部93は、入力された運転モードによって、以下に示すバラスト動作を開始する。なお、判定された適切な運転モードを表示手段に表示させることなく、自動的に判定された運転モードを選択し、バラスト動作を開始するよう構成しても良い。また、判定結果出力手段18には、適切と判断された判定結果だけでなく、例えば、ステップS3における許容排出時間と各運転モードM1,M2におけるタンク保持時間の差や、ステップS4における処理流量の差を表示するようにしても良い。この場合は、許容排出時間とタンク保持時間との差や運転モードごとの処理流量の差がわずかであれば、上記以外の他の条件に基づいて、ユーザは適切と判断された運転モード以外の運転モードを選択することもできるようになる。
【0056】
<浄化工程>
次に、判定した運転モードによる浄化工程について説明する。なお、浄化工程の各動作は制御手段19により制御されるが、一部又は全部の動作を、船員により手動に行うことも可能である。
【0057】
図6は、バラスト装置1によるバラスト動作時のバラスト水の流路を示す図である。太線で示されるラインLa~ラインLcがバラスト水の流れる流路であり、この動作時は、バラスト装置1の開閉弁Va~Vdが開かれ、その他の開閉弁Ve,Vfが閉じられる。このとき、バラスト水処理装置10においては、制御手段19の動作制御部93が、開閉弁V2,V3及び流量調整弁FCVを開くとともに、開閉弁V1,V4を閉じる制御を行う。これにより、バラスト水は第1ラインL1の一部、第2ラインL2、第3ラインL3及び第5ラインL5を流通し、濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通する。この際、動作制御部93は、これら濾過装置11及び紫外線リアクタ12の起動命令も出力する。動作制御部93は、流量調整弁FCVの開度と紫外線ランプ12aの強度を制御することで、バラスト水の処理流量とバラスト水への紫外線照射量とを、モード判定工程において選択された運転モードで規定された数値となるよう調整する。このような制御により、バラスト水は、濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通することで浄化され、バラストタンク2に貯留される。
【0058】
なお、
図7は、バラスト装置1のデバラスト動作時の流路を示す図である。太線で示されるラインLaの一部、ラインLb、ラインLcの一部、ラインLd、ラインLeがデバラスト動作時にバラスト水が流れる流路であり、この動作時には、開閉弁Vb,Vd~Vfが開かれ、その他の開閉弁Va,Vcが閉じられる。このとき、バラスト水処理装置10においては、制御手段19の動作制御部93が、開閉弁V4及び流量調整弁FCVを開くとともに、開閉弁V1~V3を閉じる制御を行う。これにより、バラスト水は第1ラインL1の一部、第4ラインL4、第3ラインL3の一部及び第5ラインL5を流通し、濾過装置11をバイパスし、紫外線リアクタ12のみを流通する。また、動作制御部93は、紫外線リアクタ12の起動命令も出力する。バラストタンク2に貯留されていたバラスト水を紫外線リアクタ12に流通させることにより、貯留中に繁殖した微生物・異物を浄化することが可能となる。なお、船外へ排出するバラスト水には濾過装置11による濾過処理を行わないのは、バラストタンク2内のバラスト水は、バラスト動作時に一度濾過処理を行っているためである。
【0059】
4.作用効果
以上のように、本実施形態のバラスト水処理装置10は、塩分濃度測定手段17と、許容排出時間取得手段としての入力装置15とを備え、制御手段19が(1)塩分濃度測定手段17の測定した塩分濃度及び(2)入力装置15の取得した許容排出時間とタンク保持時間の比較を判定基準として適切な運転モードを判定する。これにより、状況に応じた適切な運転モードでバラスト水処理装置10を運転することが可能となっている。
【0060】
具体的には、バラスト水処理装置10の制御手段19は、ステップS2において、塩分濃度測定手段17の測定した塩分濃度から水域を特定する。そして、ステップS2及びステップS3において、淡水域又は汽水域であった場合は、入力装置15の取得した許容排出時間と記憶部91から読み出した汽水・淡水域における第1モードM1のタンク保持時間T11とを比較して、比較結果を運転モードの判定基準とする。一方、水域が海水域であった場合は、このような比較を行わず、運転モードの判定基準としない。まとめると、制御手段19は、上記(1)を判定基準として汽水・淡水域と海水域とを特定し、汽水・淡水域においてのみ、上記(2)を判定基準として適切な運転モードを判定するようになっている。これにより、タンク保持時間が長い淡水域又は汽水域においては、次の港についても長期間にわたってバラスト水を排出できないという状況を避けることができる。一方、タンク保持時間が短い海水域では、タンク保持時間の影響が大きくない。したがって、他の条件、具体的には、ステップS4の紫外線透過率を判定基準とした運転モードの判定により、処理するバラスト水の紫外線透過率に応じて処理流量の多い運転モードを適切な運転モードと判定することができ、バラスト動作を迅速に完了させることが可能となっている。
【0061】
5.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0062】
上記実施形態では、バラスト水の透過率を取得する透過率取得手段16として、紫外線リアクタ12とは別の箇所に配置される透過率測定センサが用いられていた。しかしながら、透過率取得手段16として透過率測定センサを設置する代わりに、バラスト水をバラストタンク2に貯留することなく排出する予備運転(
図8参照)において制御手段19に紫外線透過率を算出させることも可能である。具体的には、予備運転において紫外線ランプ12aを点灯させるとともに、紫外線ランプ12aの強度を紫外線センサ14により計測する。これにより、紫外線ランプ12aの強度と紫外線センサ14により計測された紫外線の照度とから、制御手段19に紫外線透過率を算出させることが可能となる。
【0063】
上記実施形態では、
図5に示すように、モード判定工程は、ステップS1~ステップS4の4つのステップを有していた。しかしながら、モード判定工程は、これらのステップS1~ステップS4のうち、1つ以上のステップを有していなくても良い。例えば、第1モードM1と第2モードM2とで紫外線透過率にごとの処理流量に差がなければ、ステップS4を有していなくても良い。この場合、ステップS3における許容排出時間も各運転モードM1,M2のタンク保持時間より長ければ、何れのモードで運転しても良いことになる。このような場合には、判定結果出力手段18によって船員等のユーザにその旨を提示し、入力装置15によりユーザから実行すべき運転モードを受け付けることが好適である。
【0064】
上記実施形態では、第1モードM1のタンク保持時間が第1の水域としての淡水・汽水域と第2の水域としての海水域とで異なっていた(T11,T12)。しかしながら、第1モードM1のタンク保持時間が淡水域、汽水域、海水域の3つの水域でそれぞれ異なっていても良い。この場合、塩分濃度が低い水域ほど微生物の紫外線耐性があるため、淡水域のタンク保持時間がもっとも長く、海水域のタンク保持時間がもっとも短い。この場合、第1の水域を淡水域、第2の水域を汽水域及び海水域として、淡水域でのみ、入力装置15(許容排出時間取得手段)が取得した許容排出時間と淡水域における各運転モードのタンク保持時間とを比較して運転モードの判定基準とする(上述したステップS3を実行する)ことも考えられる。このような構成であっても、タンク保持時間が長い淡水域においては長期間にわたってバラスト水を排出できないという状況を避けつつ、汽水域及び海水域においては他の条件に基づいて適切な運転モードを判定することができる。また、塩分濃度に応じて水域を4つ以上に区分する場合にも、塩分濃度の低いいくつかの水域においてのみ上述したステップS3を実行することで、同様の効果を得ることができる。
【0065】
上記実施形態では、アメリカ沿岸警備隊(USCG)が定める排出規制を遵守した運転モード、すなわちタンク保持時間が定められた運転モードは第1モードM1と第2モードM2の2つであった。しかしながら、アメリカ沿岸警備隊(USCG)が定める排出規制を遵守した運転モードを3つ以上備えていても良い。この場合も、制御手段19が塩分濃度測定手段17の測定した塩分濃度及び入力装置15の取得した許容排出時間とタンク保持時間の比較を判定基準として適切な運転モードを判定することで、状況に応じた適切な運転モードでバラスト水処理装置10を運転することが可能である。
【0066】
上記実施形態では、塩分濃度、許容排出時間とタンク保持時間の比較、及び紫外線透過率を判断基準として運転モードを判定していた。しかしながら、これら以外の条件を判断基準として、運転モードを判定しても良い。例えば、運転モードによって処理可能な紫外線透過率の下限値が異なっていれば、バラスト水の紫外線透過率と各運転モードにおける当該下限値の比較も判断基準として適切な運転モードを判定しても良い。また、運転モードによって消費電力が異なっていれば、消費電力も判断基準として適切な運転モードを判定しても良い。さらに、運転モードによって紫外線透過率ごとの処理流量が異なっていれば、船員等から取得したバラスト動作に費やすことのできる許容処理時間と各運転モードの処理流量から算出される必要処理時間の比較も判断基準として適切な運転モードを判定しても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 :バラスト装置
2 :バラストタンク
3 :バラストポンプ
10 :バラスト水処理装置
11 :濾過装置
12 :紫外線リアクタ
12a :紫外線ランプ
13 :流量計
14 :紫外線センサ
15 :入力装置(許容排出時間取得手段)
16 :透過率取得手段
17 :塩分濃度測定手段
18 :判定結果出力手段
19 :制御手段
90 :情報取得部
91 :記憶部
92 :判定部
93 :動作制御部
A :海域
FCV :流量調整弁
L1 :第1ライン
L2 :第2ライン
L3 :第3ライン
L4 :第4ライン
L5 :第5ライン
La~Le :ライン
M1 :第1モード
M2 :第2モード
M3 :第3モード
P1 :上流側接続部
P2 :下流側接続部
S1~S4 :ステップ
SC1 :シーチェスト
SC2 :船外排出口
T11,T12,T2 :タンク保持時間
Ux :所定透過率
V1~V4 :開閉弁
Va~Vf :開閉弁