(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】粘着フィルム、および積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240806BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20240806BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240806BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240806BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240806BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/20
C09J11/06
C09J201/00
C09J175/04
B32B3/30
B32B27/00 D
B32B27/00 M
B32B27/18 D
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2020178131
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松沢 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】入江 剛史
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-218326(JP,A)
【文献】特開2020-045442(JP,A)
【文献】特開2005-309071(JP,A)
【文献】特開2018-041962(JP,A)
【文献】特開2018-009185(JP,A)
【文献】特開2014-133802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0253276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 7/20
C09J 11/06
C09J 201/00
C09J 175/04
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 3/30
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム、および該基材フィルムの片面に粘着層を有する粘着フィルムであって、
前記基材フィルムは、前記基材フィルムの粘着層が接していない表面(A)は帯電防止層を備えておらず、前記表面(A)のスキューネスSskが0.5以上であり、
前記粘着層が帯電防止剤を含む、
粘着フィルム。
【請求項2】
前記表面(A)における最大山高さSpが0.1μm以上、10μm以下である、請求項1記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記粘着層がウレタン系ポリマーを含有する、請求項1または2記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着層に含まれる帯電防止剤の量が0.001~10質量%である、請求項1~3いずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
シート状の被着体と、該被着体の第1の面および第2の面がそれぞれ第1の粘着フィルムおよび第2の粘着フィルムで仮保護されている積層体であって、
前記第1の粘着フィルムと前記第2の粘着フィルムが同一であるか、または異なり、
前記第1の粘着フィルムおよび前記第2の粘着フィルムは、それぞれ、基材フィルム、および該基材フィルムの片面に粘着層を有する粘着フィルムであり、
前記第1の粘着フィルムにおける基材フィルムの粘着層が接していない表面(1A)は帯電防止層を備えておらず、スキューネスSskが0.5以上であり、
前記第2の粘着フィルムにおける基材フィルムの粘着層が接していない表面(2A)は帯電防止層を備えておらず、スキューネスSskが0.5以上である、
前記第1の粘着フィルムにおける粘着層および前記第2の粘着フィルムにおける粘着層が帯電防止剤を含む、
積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ(TV)、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、および携帯情報端末等の電子機器には、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD)等のパネルディスプレイが広く使用されたり、前記パネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイが広く使用されたりしている。
パネルディスプレイやタッチパネルディスプレイは、様々な光学部材(即ち、ガラス基板、ガラス基板上にITO(インジウム酸化錫)膜が形成されたITO/ガラス基板、偏光板、位相差板、輝度向上フィルム、その他樹脂製の様々なフィルム)が粘着層を介して積層される。前記粘着層は、前記様々な光学部材と一体化し、パネルディスプレイやタッチパネルディスプレイを構成することとなる。
【0003】
パネルディスプレイやタッチパネルディスプレイは、当然のことながら傷や埃を嫌うので、その製造には、前記のような粘着層の他に、仮保護を目的として粘着フィルムが好適に用いられる。仮保護を目的とする粘着フィルムは表面保護フィルムと呼ばれることもある。
様々な光学部材は多くの段階を経て様々な処理・加工に付されるので、表面保護フィルムには、次の段階の処理・加工に付されるまでは、保護対象である各種光学部材を保護するとともに、搬送性に優れ、生産性に優れることが望まれる。
例えば、枚葉の光学部材は、次の段階の処理・加工までは両面を表面保護フィルムで保護する必要があり、両面が保護された状態で複数枚が積み重ねられることがある。積み重ねられた状態から1枚づつ所定の処理・加工場所に搬送する必要がある。
【0004】
特許文献1には、巻き取り時に巻き瘤の発生やフィルム同士のブロッキング防止を目的として、基材フィルムの表面性状を表面粗さRaで規定した表面保護フィルムが開示されている。
【0005】
特許文献2には、ブロッキングを改良するために、セパレータおよび表面保護フィルムの両方の最表面に帯電防止層を設けた補強用積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-063474号公報
【文献】特開2020-116762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
両面が表面保護フィルムで保護された枚葉の光学部材を、複数枚が積み重ねられた状態から、最上部の部材を1枚づつ搬送する場合の生産性向上のために、真空吸着部材を利用する自動搬送が検討されている。
本発明者らの検討によると、基材フィルムの粘着層が接していない表面の表面粗さRaが特定の範囲であっても、両面が保護された枚葉の光学部材を複数積み重ねると、基材フィルム同士が擦れることにより静電気が発生し、ブロッキングが生じ、最上部の光学部材を1枚づつ搬送する作業が困難となる場合があった。
また、表面保護フィルムの両方の最表面(即ち、表面保護フィルムを構成する基材層において粘着層が接していない表面)に帯電防止層を備えても、両面が保護された枚葉の光学部材を複数積み重ねると、高温高湿下で表面保護フィルム同士にブロッキングが生じ、最上部の光学部材を1枚づつ搬送するのが困難となる場合があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、積み重ねた状態での耐ブロッキング性に優れ、かつ優れた耐湿熱性を有する粘着フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粘着フィルムは、
基材フィルム、および該基材フィルムの片面に粘着層を有する粘着フィルムであって、
前記基材フィルムは、前記基材フィルムの粘着層が接していない表面(A)に帯電防止層を備えておらず、前記表面(A)のスキューネスSskが0.5以上であり、
前記粘着層が帯電防止剤を含む、
粘着フィルムである。
【0010】
本発明の粘着フィルムは、フィルム基材の表面(A)における最大山高さSpが0.1μm以上、1.5μm以下のものとすることができる。
本発明の粘着フィルムは、粘着層がウレタン系ポリマーを含有することができる。
本発明の粘着フィルムは、粘着層に含まれる帯電防止剤の量が0.001~10質量%とすることができる。
【0011】
本発明の積層体は、シート状の被着体と、該被着体の第1の面および第2の面がそれぞれ第1の粘着フィルムおよび第2の粘着フィルムで仮保護されている積層体であって、
前記第1の粘着フィルムと前記第2の粘着フィルムが同一であるか、または異なり、
前記第1の粘着フィルムおよび前記第2の粘着フィルムは、それぞれ、基材フィルム、および該基材フィルムの片面に粘着層を有する粘着フィルムであり、
前記第1の粘着フィルムにおける基材フィルムの粘着層が接していない表面(1A)に帯電防止層を備えておらず、前記表面のSskが0.5以上であり、
前記第2の粘着フィルムにおける基材フィルムの粘着層が接していない表面(2A)に帯電防止層を備えておらず、前記表面のSskが0.5以上である、
前記第1の粘着フィルムにおける粘着層および前記第2の粘着フィルムにおける粘着層が帯電防止剤を含む、
積層体である。
以下、シート状の被着体を被着体と略すことがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐ブロッキング性に優れ、かつ優れた耐湿熱性を有し、搬送性に優れ生産性に優れる粘着フィルムの提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る粘着フィルムの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。フィルム、シートおよびテープは平たいものという意である。被着体とは、粘着フィルムを貼り付ける相手方をいう。
【0015】
本発明は、基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面上に形成された粘着層とを有する粘着フィルムに関する。
【0016】
本発明において、基材フィルムは、粘着層が接していない表面(A)に帯電防止層を備えておらず、前記表面(A)のSskが0.5以上であることを特徴とする。
本発明において、粘着層は帯電防止剤を含む。
【0017】
[基材フィルム]
基材フィルムとしては、粘着層が接していない表面(A)側に帯電防止層を備えておらず、前記表面(A)のSskが0.5以上であることを特徴とする。
【0018】
粘着層が接していない表面(A)側に帯電防止層を備えると、通常条件下では問題なく使用できるが、高温高湿下での搬送において、フィルム基材同士のブロッキングや、被着体の両面に粘着フィルムを貼付した積層体同士のブロッキングが生じ、複数積み重なったまま搬送されてしまい、1枚ずつ搬送する作業が困難となる場合があった。
【0019】
本発明において、基材フィルムは、
図1に示すように、山部1aおよび谷部1bからなる凹凸表面を有し、その表面におけるスキューネスSskが特定の範囲に制御されているので、被着体の両面に粘着フィルムを貼り合わせた積層体を複数積み重ねた場合でも、ブロッキングを抑制できる。
【0020】
<スキューネスSsk>
スキューネスSskは、凹凸表面の平均面を基準とした高さ分布の対称性を示し、スキューネスSskが0の場合には高さ分布が平均面に対して対称的な表面となる一方、0よりも小さい場合には高さ分布が平均面に対し上側に偏った、山が多い表面となり、0よりも大きい場合には高さ分布が平均面に対し下側に偏った、谷が多い表面となる。
【0021】
基材フィルム11の表面(A)におけるスキューネスSskが小さい、すなわち谷が十分には多くない凹凸表面であると、粘着フィルムを貼付した積層体を複数積み重ねた際、基材フィルムの表面(A)の上部の空隙が狭くて密着しやすく、基材フィルムが擦れることにより静電気が発生し、ブロッキングしやすくなる。さらに、空隙が狭くて密着しやすい場合、後述する静電気減衰が生じにくくなる。
【0022】
そのため、基材フィルム11の表面(A)のスキューネスSskを0.5以上とし、谷が多く、高さ分布を上下に非対称な表面にすることにより、基材フィルム11の表面(A)の上部に広い空隙を確保することで、ブロッキングを抑制させることできる。
【0023】
したがって、スキューネスSskは、谷を多くしてブロッキングを抑制させる観点から、0.5以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上である。スキューネスSskが0.5以上10以下であれば、粘着フィルム付き被着体を複数積み重ねた積層体の、基材フィルムの傷付を抑制しながら、最上部の積層体を1つずつ真空吸着部材に吸着させ、搬送できる。
また、傷付防止の観点から、特定の範囲で山部1aを有することが好ましく、スキューネスSskは、10以下、好ましくは7以下、より好ましくは5以下である。
【0024】
スキューネスSskが0.5以上の基材フィルムは、特に限定されず、フィルム成膜時に所定のスキューネスSskが付与された型を用いてその表面形状を転写する方法や、最表層部にシリカを偏在化させる方法などにより、得ることができる。また、スキューネスSskが0.5未満のフィルムの表面を物理的方法や化学的方法で加工することにより、谷部を増やし、スキューネスSskが0.5以上の基材フィルムとすることもできる。
【0025】
<最大山高さSp>
また、本発明において、基材フィルム11は、粘着層が接していない表面(A)における最大山高さSpが0.1μm以上、1.5μm以下であることが好ましい。
最大山高さSpは、表面の平均面からの高さの最大値を表し、最大山高さSpが大きいほど高い山を有する表面となる。
【0026】
基材フィルム11の表面における最大山高さSpが小さい場合、すなわち最も高い山の山高さが低い表面であると、粘着フィルムを貼付した積層体を複数積み重ねると、基材フィルムの表面(A)の上部の空隙が狭くて密着しやすく、基材フィルム11が擦れることにより静電気が発生し、ブロッキングしやすくなる。さらに、空隙が狭くて密着しやすい場合、後述する静電気減衰が生じにくくなる。
そのため、基材フィルム11の表面の最大山高さSpを0.1μm以上とし、最も高い山の山高さを特定の範囲とすることにより、基材フィルム11の表面(A)の上部に広い空隙を確保することで、ブロッキングを抑制させることできる。
したがって、最大山高さSpは、基材フィルム11同士の面間距離を増大させ、ブロッキングを抑制させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.17μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上である。また、傷付防止の観点から、1.5μm以下、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
このように最大山高さSpを特定の範囲に制御することで、ブロッキングを抑制させ、被着体の両面に粘着フィルムを貼り合わせた積層体を複数積み重ねた場合でも、ブロッキングを抑制させることができる。
【0027】
基材フィルムとして好ましくは透明なプラスチックフィルムに適用することによって、光学部材用の表面保護粘着フィルム、すなわち光学部材用保護フィルムを好適に得ることができる。
プラスチックフィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、処理ポリオレフィンフィルム、未処理ポリオレフィンフィルム、;これらの組合せ等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。基材の厚みは特に制限されず、好ましくは15~300μmである。
また、基材フィルムの粘着層を形成する側の面(B)には、必要に応じて、コロナ放電処理等の易接着処理が施されていてもよい。
【0028】
[粘着層]
粘着層は、1種以上の帯電防止剤(AS)を含む。粘着層が帯電防止剤を含むことによって、基材フィルムが表面(A)に帯電防止層を備えていなくても、基材フィルムに生じた静電気を効率的に減衰できる。
<帯電防止剤(AS)>
帯電防止剤(AS)としては、無機塩、イオン性液体、イオン固体、および界面活性剤等が挙げられ、中でもイオン性液体およびイオン固体が好ましい。なお、「イオン性液体」は常温溶融塩ともいい、25℃で流動性がある塩である。
【0029】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体としては、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0031】
ピリジニウムイオンを含むイオン液体としては、例えば、1-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、および1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0032】
アンモニウムイオンを含むイオン液体としては、例えば、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミ
ド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。
【0033】
その他、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびスルホニウム塩等の市販のイオン液体を適宜使用できる。
【0034】
イオン固体は、イオン液体同様、カチオンとアニオンの塩であるが、常圧下25℃において固体の性状を示す物質である。カチオンとしては例えば、アルカリ金属イオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、およびアンモニウムイオン等が好ましい。
【0035】
アルカリ金属イオンを含むイオン固体としては例えば、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、リチウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、リチウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド、ナトリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ナトリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、ナトリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、ナトリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、カリウムビスフルオロスルホニルイミド、カリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、カリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、カリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、およびカリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0036】
ホスホニウムイオンを含むイオン固体としては例えば、テトラブチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、およびテトラオクチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0037】
ピリジニウムイオンを含むイオン固体としては例えば、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスフルオロスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、および1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0038】
アンモニウムイオンを含むイオン固体としては例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリブチルメチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルメチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、オクチルトリブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラブチルビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、およびテトラブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0039】
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン固体を適宜使用できる。
【0040】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤が挙げられ、いずれのタイプも低分子界面活性剤と高分子界面活性剤とに分類される。
【0041】
非イオン性の低分子界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、および脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
アニオン性の低分子界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびアルキルホスフェート等が挙げられる。
両性の低分子界面活性剤としては、アルキルベタインおよびアルキルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。
【0042】
非イオン性の高分子界面活性剤としては、ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド-エピクロルヒドリン型、およびポリエーテルエステル型等が挙げられる。
アニオン性の高分子界面活性剤としては、ポリスチレンスルホン酸型等が挙げられる。
両性の高分子界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、および高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
粘着層に含まれる帯電防止剤の量は、後述する静電気減衰の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。また、HAZE、耐湿熱性の観点から、10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0044】
<粘着剤>
粘着層を構成する粘着剤は特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば感圧接着剤、ホットメルト接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ホットメルト粘着剤などが挙げられ、これらのものを1種類又は2種類以上併用して用いることができる。
これら粘着剤を構成する成分は特に限定されず、例えば、ウレタンポリマー、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、エチレン―酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ、シリコーン、フェノール、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、天然ゴムなどをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができ、ウレタンポリマーおよびアクリルポリマー等が好ましく、より好ましくはウレタンポリマーである。
【0045】
本発明においてウレタン系ポリマーは、ポリオールおよびポリイソシアネートを反応させて合成できる。ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等が好ましい。
【0046】
ポリエステルポリオールは、酸成分とグリコール成分を反応させて得られる。
酸成分は、例えばテレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。
グリコール成分は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオール成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は500~5,000が好ましい。数平均分子量が500以上になることで合成時の反応制御がより容易になる、また、数平均分子量が5,000以下になることで反応完了までの時間を短縮しやすくなり、粘着剤層の凝集力を維持し易くなることで再剥離性がより向上する。ポリエステルポリオールは、ウレタンポリマーの合成に使用するポリオールの合計100モル%のうち10~70モル%が好ましい。
【0048】
ポリエーテルポリオールは、例えばポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールの製造は、低分子量ポリオールを開始剤として用いて環状エーテル化合物を重合させることで得られる。
低分子量ポリオールは、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
環状エーテル化合物は、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0049】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は1,000~5,000が好ましい。数平均分子量が1,000以上になることで合成時の反応制御がより容易になる、また、数平均分子量が5,000以下になることで反応完了までの時間を短縮しやすくなり、粘着剤層の凝集力を維持し易くなることで再剥離性がより向上する。またポリエーテルポリオールは、通常2つの水酸基を有するが、3つ以上の水酸基を有することもできる。3つ以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを使用すると粘着剤層の凝集力の調整が容易になる。ポリエーテルポリオールは、ウレタンポリマーの合成に使用するポリオールの合計100モル%のうち30~90モル%が好ましい。
【0050】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ3-メチル(ペンタメチレン)カーボネートジオールや、これらの共重合物などの他、エチレングリコール、1,3-トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,18-オクタデカンジオールなどの多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートとの脱アルコール反応等で得られるポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0051】
本発明においてポリオールは、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールを併用することで剥離力および粘着力をより向上できる。
【0052】
<ポリイソシアネート>
ウレタン系ポリマーの原料であるポリイソシアネートとしては公知のものを使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネートは、1種または2種以上用いることができる。ポリイソシアネートの官能基数は特に制限されず、2官能であることが好ましい。すなわち、1種以上のポリイソシアネートは、主として、2官能のポリイソシアネートを含むことが好ましく、1種以上のポリイソシアネートは2官能のポリイソシアネートであることがより好ましい。
【0053】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0056】
その他、ポリイソシアネートとしては、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット体、アロファネート体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0057】
ウレタン系ポリマーの好ましい原料配合比は、以下の通りである。
複数種のポリオールの有する活性水素基の総モル数に対するポリイソシアネートの有するイソシアネート基(NCO)のモル数の比(NCO/H比)が0.20~0.95、より好ましくは0.40~0.80となるように、原料配合比を決定することが好ましい。NCO/H比が1に近くなる程、ウレタン系ポリマーの合成時にゲル化しやすくなる傾向がある。NCO/H比が0.95以下であれば、ウレタン系ポリマー合成時のゲル化を効果的に抑制することができる。
【0058】
<触媒>
ウレタン系ポリマーの重合には必要に応じて、1種以上の触媒を用いることができる。触媒としては公知のものを使用でき、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
有機金属系化合物としては、錫系化合物および非錫系化合物等が挙げられる。錫系化合物としては、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系;2-エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系;安息香酸コバルトおよび2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;ナフテン酸亜鉛および2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系が挙げられる。
触媒の種類および添加量は、反応が良好に進む範囲で適宜設計することができる。
【0059】
反応性の異なる複数種のポリオールを併用する場合、これらの反応性の相違により、単一触媒の系では重合安定性の不良または反応溶液の白濁が生じやすくなる恐れがある。この場合、2種以上の触媒を用いることにより、反応(例えば反応速度等)を制御しやすく、上記問題を解決することができる。反応性の異なる複数種のポリオールを併用する系では、2種以上の触媒を用いることが好ましい。2種以上の触媒の組合せは特に制限されず、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、および錫系/錫系等が挙げられる。好ましくは錫系/錫系、より好ましくはジオクチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫である。
2-エチルヘキサン酸錫とジオクチル錫ジラウレートとの質量比(2-エチルヘキサン酸錫/ジオクチル錫ジラウレート)は特に制限されず、好ましくは0超1未満、より好ましくは0.2~0.8である。当該質量比が1未満であれば、触媒活性のバランスが良く、反応溶液のゲル化および白濁を効果的に抑制し、重合安定性がより向上する。
【0060】
1種以上の触媒の使用量は特に制限されず、1種以上のポリオールと1種以上のポリイソシアネートとの合計量に対して、好ましくは0.01~1.0質量%である。
【0061】
<溶剤>
ウレタン系ポリマーの重合には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。ウレタン系ポリマーの溶解性および溶剤の沸点等の点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0062】
<ウレタン系ポリマーの重合方法>
ウレタン系ポリマーの重合方法としては特に制限されず、塊状重合法および溶液重合法等の公知重合方法を適用することができる。
ウレタン系ポリマーの重合手順としては、
手順1)1種以上のポリオール、1種以上のポリイソシアネート、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
手順2)1種以上のポリオール、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上のポリイソシアネートを滴下添加する手順等が挙げられる。
ポリオールおよび/またはポリイソシアネートを複数種用いる場合には、複数段階で反応を行ってもよい。
【0063】
触媒を使用する場合の反応温度は、好ましくは100℃未満、より好ましくは50~95℃、特に好ましくは60~85℃である。反応温度が100℃以上では、反応速度および重合安定性等の制御が困難となり、所望の分子量を有するウレタン系ポリマーの生成が困難となる恐れがある。触媒を使用しない場合の反応温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。
【0064】
(多官能イソシアネート化合物(I))
多官能イソシアネート化合物(I)としては公知のものを使用でき、ウレタン系ポリマーの原料であるポリイソシアネートとして例示した化合物(具体的には、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、これらのトリメチロールプロパンアダクト体/ビウレット体/アロファネート体/3量体)を用いることができる。
多官能イソシアネート化合物(I)は、1種または2種以上用いることができる。多官能イソシアネート化合物(I)の官能基数は特に制限されず、3官能以上であることが好ましい。すなわち、1種以上の多官能イソシアネート化合物(I)は、主として、3官能以上のポリイソシアネートを含むことが好ましく、1種以上の多官能イソシアネート化合物(I)は3官能以上のポリイソシアネートであることがより好ましい。
【0065】
<可塑剤(P)>
粘着層の粘着力の制御および濡れ広がり性向上の観点から、粘着剤は必要に応じて、1種以上の可塑剤(P)を含むことができる。ここで言う「可塑剤」は、一般的に粘着剤において濡れ広がり性を向上するために添加される公知の可塑剤であり、可塑剤(P)としては特に制限されず、他の成分との相溶性等の観点から、有機酸エステルが好ましい。
【0066】
一塩基酸または多塩基酸とアルコールとのエステルとしては、例えば、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソセチル、アセチルクエン酸トリブチル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリオレイル、およびトリメリット酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0067】
その他の酸とアルコールとのエステルとしては、例えば、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸等の不飽和脂肪酸または分岐酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビタン等のアルコールとのエステルが挙げられる。
【0068】
一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステルとしては、例えば、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ-2-エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0069】
濡れ広がり性向上等の観点から、有機酸エステルの分子量(式量またはMn)は、好ましくは250~1,000、より好ましくは400~900、特に好ましくは500~850である。分子量が250以上であれば粘着層の耐熱性が良好となり、分子量が1,000以下であれば粘着剤の濡れ広がり性が良好となる。
【0070】
<溶剤>
粘着剤は必要に応じて、1種以上の溶剤を含むことができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。ウレタン系ポリマーの溶解性および溶剤の沸点等の観点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0071】
<変質防止剤>
粘着剤は必要に応じて、1種以上の変質防止剤を含むことができる。これにより、粘着層の長期使用による各種特性の低下を抑制することができる。変質防止剤としては、耐加水分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および光安定剤等が挙げられる。
【0072】
<耐加水分解剤>
(湿)熱環境下等において粘着層に加水分解反応が生じてカルボキシ基が生成した場合、このカルボキシ基を封鎖するために、耐加水分解剤を用いることができる。耐加水分解剤としては、カルボジイミド系、オキサゾリン系、およびエポキシ系等が挙げられる。中でも、加水分解抑制効果の観点から、カルボジイミド系が好ましい。
【0073】
カルボジイミド系耐加水分解剤は、1つ以上のカルボジイミド基を有する化合物である。
モノカルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、およびナフチルカルボジイミド等が挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させて生成することができる。ここで、ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。カルボジイミド化触媒としては、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、およびこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。
【0074】
オキサゾリン系耐加水分解剤としては、例えば、2,2’-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレンビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレンビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、および2,2’-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等が挙げられる。
【0075】
エポキシ系耐加水分解剤としては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、およびポリアルキレングリコール等の脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル;ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセロール、およびトリメチロールプロパン等の脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル;シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、およびセバシン酸等の脂肪族または芳香族の多価カルボン酸のジグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル;レゾルシノール、ビス-(p-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス-(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス-(p-ヒドロキシフェニル)メタン、および1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタン等の多価フェノールのジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテル;N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、およびN,N,N',N'-テトラグリシジル-ビス-(p-アミノフェニル)メタン等のアミンのN-グリシジル誘導体;アミノフェノールのトリグリシジル誘導体;トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、およびトリグリシジルイソシアヌレート;オルソクレゾール型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0076】
耐加水分解剤の添加量は特に制限されず、粘着層固形分中、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~4.5質量%、特に好ましくは0.5~3質量%である。
【0077】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、ラジカル捕捉剤および過酸化物分解剤等が挙げられる。ラジカル捕捉剤としては、フェノール系化合物およびアミン系化合物等が挙げられる。過酸化物分解剤としては、硫黄系化合物およびリン系化合物等が挙げられる。
【0078】
フェノール系化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、およびトコフェロール等が挙げられる。
【0079】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0080】
リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤を用いることで、ウレタン系ポリマーの熱劣化を防ぐことができる。
酸化防止剤の添加量は特に制限されず、粘着層固形分中、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、特に好ましくは0.2~2質量%である。
【0082】
酸化防止剤としては、安定性と酸化防止効果の観点から、ラジカル捕捉剤であるフェノール系化合物を1種以上用いること好ましく、ラジカル捕捉剤である1種以上フェノール系化合物と過酸化物分解剤である1種以上リン系化合物とを併用することがより好ましい。
また、酸化防止剤として、ラジカル捕捉剤であるフェノール系化合物と過酸化物分解剤であるリン系化合物とを併用し、これら酸化防止剤と前述の耐加水分解剤とを併用することが特に好ましい。
【0083】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびトリアジン系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は、活性エネルギー線照射によるラジカル重合性単量体(M)の重合の開始および進行が阻害されず、かつ、蛍光灯の光および太陽光等の環境光により容易にラジカル重合性単量体(M)の反応が開始されない範囲内で、適宜設計することができる。ラジカル重合性単量体(M)が紫外線硬化性である場合、紫外線吸収剤の添加量は、紫外線吸収剤の種類、および、粘着層に照射される紫外線の波長域と積算光量に応じて設計される。紫外線吸収剤の添加量は、粘着層固形分中、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.1~2.5質量%、特に好ましくは0.2~2質量%である。
【0084】
<光安定剤>
光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物およびヒンダードピペリジン系化合物等が挙げられる。光安定剤の添加量は特に制限されず、粘着層固形分中、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%、特に好ましくは0.2~1質量%である。
【0085】
<レベリング剤>
粘着剤は必要に応じて、レベリング剤を含むことができる。レベリング剤を添加することで、粘着層のレベリング性を向上させることができる。レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、およびシリコーン系レベリング剤等が挙げられる、粘着フィルム再剥離後の被着体汚染抑制の観点から、アクリル系レベリング剤等が好ましい。
【0086】
レベリング剤の添加量は特に制限されず、粘着フィルム再剥離後の被着体汚染抑制と粘着層のレベリング性向上の観点から、粘着層固形分中、好ましくは0.001~2質量%、より好ましくは0.01~1.5質量%、特に好ましくは0.1~1質量%である。
【0087】
<他の任意成分>
粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の任意成分を含むことができる。他の任意成分としては、触媒、ウレタン系樹脂以外の他の樹脂、充填剤(タルク、炭酸カルシウム、および酸化チタン等)、金属粉、着色剤(顔料等)、箔状物、軟化剤、導電剤、シランカップリング剤、潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、重合禁止剤、および消泡剤等が挙げられる。
粘着剤が触媒を含む場合、粘着剤のポットライフを向上させる目的で、アセチルアセトン等の公知の触媒作用抑制剤を添加することが好ましい。
【0088】
[粘着フィルム]
本発明の粘着フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルムの一方の面上に形成された粘着層とを含む。粘着層は、上記の粘着剤の塗工乾燥物からなり、帯電防止剤を含む。
粘着層の厚みは特に制限されず、用途等に応じて適宜設計できる。表面保護フィルム等の用途において、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは30~200μm、特に好ましくは50~200μm、最も好ましくは75~150μmである。
粘着層の厚みが上記範囲内であれば、LCD等のパネルディスプレイおよびタッチパネルディスプレイ、並びに、その製造工程で製造または使用される基板および光学部材等の表面保護フィルムとして充分な透明性を有する粘着フィルムが得られやすい。
必要に応じて、粘着層の露出面は、剥離フィルムで被覆することができる。なお、剥離フィルムは、粘着フィルムを被着体に貼着する前に剥離される。
【0089】
図1に、本発明に係る粘着フィルムの模式断面図を示す。
図1中、符号10は粘着フィルム、符号11は基材フィルム、符号12は粘着層、(剥離フィルムは不図示)である。粘着フィルムは、基材フィルムの片面に粘着層が形成された片面粘着フィルムである。
図2に、本発明に係る積層体の模式断面図を示す。即ち、本発明に係る積層体は、被着体の両面に粘着フィルムを貼付したものである。
図2中、符号20、20’は粘着フィルム、符号21、21’は基材フィルム、符号22、22’は粘着層、符号23は被着体である。被着体は粘着フィルムから見ると仮保護の対象ということができる。
【0090】
[剥離フィルム]
剥離フィルムとしては特に制限されず、樹脂フィルムまたは紙等の基材フィルムの表面に剥離剤塗布等の公知の剥離処理が施された公知の剥離フィルムを用いることができる。
【0091】
[粘着フィルムの製造方法]
粘着フィルムは、公知方法にて製造することができる。
はじめに、基材フィルムの表面に粘着剤を塗工して、粘着剤からなる塗工層を形成する。塗布方法は公知方法を適用でき、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、およびグラビアコーター法等が挙げられる。次に、塗工層を加熱乾燥して、粘着層を形成する。加熱乾燥温度は特に制限されず、60~150℃程度が好ましい。粘着層の厚み(乾燥後の厚み)は、用途に応じ、適宜設計することができる。
次に必要に応じて、公知方法により粘着層の露出面に剥離フィルムを貼着する。
以上のようにして、片面粘着フィルムを製造することができる。
【0092】
上記方法とは逆に、剥離フィルムの表面に粘着剤を塗工して、粘着剤からなる塗工層を形成し、次いで塗工層を加熱乾燥して粘着層を形成し、粘着層の露出面に基材フィルムを積層してもよい。
【0093】
粘着フィルムの製造方法は好ましくは、基材フィルム上に粘着剤を塗工する塗工工程と、形成された塗工層を加熱乾燥して粘着層を形成する加熱工程と、得られた粘着フィルムを巻芯に巻取って粘着フィルムロールの形態とする巻取工程と、粘着フィルムロールを養生する養生工程とを含む。
【0094】
本発明では、粘着層が帯電防止剤を含むことにより、基材フィルムに蓄えられた静電気を減衰させることができる。さらに、基材フィルムの粘着層が接していない表面(A)のSskを0.5以上の特定の範囲とすることにより、積層した際に基材フィルムの表面(A)の上部に広い空隙を確保することができ、基材フィルムに蓄えられた静電気を減衰させることができる。その結果、静電気による密着を効果的に抑制でき、搬送工程で1枚づつ搬送することができる。
【0095】
[用途]
本発明の粘着フィルムは、テープ、ラベル、シール、および両面テープ等の形態で、使用することができる。本発明の粘着フィルムは、表面保護フィルム、化粧用フィルム、および滑り止めフィルム等として好適に使用される。
本発明の粘着フィルムは、パネルディスプレイやタッチパネルディスプレイ等の製造に供される各種光学部材の表面保護フィルムとして好適に用いられる。
【実施例】
【0096】
以下、合成例、本発明に係る実施例、および比較例について説明する。なお、以下の記載において、特に明記しない限り、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味し、「RH」は相対湿度を意味するものとする。特に明記しない限り、表中の配合量の単位は「質量部」である。特に明記しない限り、溶剤以外の成分の配合量は、不揮発分換算値である。
【0097】
[分子量の測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF-804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:1mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.2%、
試料注入量:200μL。
【0098】
(表面形状の測定)
基材フィルムの表面に対し、ISO25178に準拠し、レーザー顕微鏡((株)キーエンス社製(VK-X3000))を用いて、スキューネスSsk、最大高さSpなどの表面形状を測定した。測定条件は、10倍の対物レンズで、白色干渉方式にて表面形状を取得した。得られた表面形状画像を解析アプリケーションの表面粗さ測定にて、全領域を選択し、傾き補正とうねり除去を行い、表面形状を測定した。上記測定を異なる4箇所で行い測定値の平均値を用いる。
【0099】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
<基材フィルム>
・基材フィルムA:厚み50μmのポリエチレンテレフタレート、HAZEが1.2%、Sskが1.6、Spが0.18μm。表面のSskが1.8、Spが0.20μmのロールを用いて成膜。
・基材フィルムB:厚み50μmのポリエチレンテレフタレート、HAZEが0.9%、Sskが0.9、Spが0.17μm。表面のSskが1.2、Spが0.20μmのロールを用いて成膜。
・基材フィルムC:厚み50μmのポリエチレンテレフタレート、HAZEが1.0%、Sskが0.9、Spが0.21μm。表面のSskが1.2、Spが0.23μmのロールを用いて成膜。
・基材フィルムD:厚み50μmのポリエチレンテレフタレート、HAZEが4.0%、Sskが0.5、Spが0.04μm。ポリエステル樹脂、シリカ含有ポリエステル樹脂を、2台の二軸押出機に各々供給し、積層エチレンテレフタレートフィルムを得た。表面形状はシリカ含有ポリエステル樹脂面を測定した。
【0100】
・基材フィルムE:厚み50μmのポリエチレンテレフタレート、(東洋紡社製:A4300)、HAZE0.9%、Ssk0.3、Sp0.04μm。
【0101】
・基材フィルムF
アクリル樹脂[ダイヤナールBR115、三菱レイヨン(株)製、重量平均分子量55000、Tg50℃、酸価0mgKOH/g]19.3部を、酢酸エチル22.6部、イソプロピルアルコール22.6部に混合溶解させて得たワニスに、帯電防止剤としてエレコンドPQ50B(綜研化学社製、重量平均分子量60000、OH価0mgKOH/g、NV50%)15部、メチルエチルケトン5部、メタノール5部、メチルプロピレングリコール5部、ハイフラットX98247(岐阜セラック社製、ポリエチレンワックス、NV20%)6部を加え、羽根付きディスパーにて充分攪拌し帯電防止ワニス組成物を得た。
得られた帯電防止ワニス組成物を基材フィルムAの表面形状を測定した面に、バーコーターを用いて乾燥膜厚が約2μmとなるように塗工し、80℃で1分間乾燥させて、基材フィルムFを得た。
得られた基材フィルムFの塗布面側の表面形状は、Sskが1.5、Spが0.16μmであった。
【0102】
・基材フィルムG:基材フィルムAの表面形状を測定した面にサンドブラス塗加工処理を行い、HAZE76.7%の基材フィルムGを得た。得られた基材フィルムGの処理面側の表面形状は、Sskが0.1、Spが2.3μmであった。
【0103】
<樹脂>
(ウレタン-1):水酸基含有ウレタン系樹脂(トーヨーケム社製)、重量平均分子量Mw93,000、水酸基価18.2、
(ウレタン-2):水酸基含有ウレタン系樹脂(トーヨーケム社製)、重量平均分子量Mw69,000、水酸基価16.7、
(アクリル-1):水酸基含有アクリル系樹脂(トーヨーケム社製)、重量平均分子量Mw123,000、水酸基価17.4、
【0104】
<硬化剤>
(I-1):スミジュール HT、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75%、住化コベストロウレタン社製、
(I-2):タケネート D-110N、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75%、三井化学社製。
【0105】
<酸化防止剤(O)>
(O-1):イルガノックス1135、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製。
【0106】
<帯電防止剤(AS)>
(AS-1):トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド。
(AS-2):1-ブチル-3-メチルピリゾニウムビス(トリフルオロメタンスルホニ
ル)イミド。
(AS-3):IL-P14、イオン性液体、広栄化学工業社製。
【0107】
「実施例1」
前記ウレタン-1:100部、前記硬化剤I-1:10重量部、前記酸化防止剤O-1を1重量部、前記帯電防止剤AS-1を1.12重量部(粘着層中に1重量%)、溶剤としてトルエンを20重量部配合攪拌し粘着剤を作製した。
得られた粘着剤を基材フィルムAの表面形状を測定した面と反対側に乾燥後の厚さが10μmになるように塗工、乾燥して形成し、粘着フィルムを得た。
この粘着剤層側に、厚さ38μmの剥離フィルム(スーパーステックSP-PET38、リンテック社製)を貼着して、23℃-50%RHの雰囲気下で1週間養生した後、各種評価用フィルムを作成し、測定した。
【0108】
「実施例2~18、比較例1~5」
粘着剤の組成および基材フィルムの種類を表1、2に示すように変更した以外は実施例1と同様に行うことでそれぞれ実施例2~18、比較例1~5の粘着フィルムを作製した。
【0109】
[評価項目および評価方法]
粘着フィルムの評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(HAZE)
評価用フィルムから剥離フィルムを取り除き、粘着フィルムの外観を目視判定するとともに、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製「NDH5000W」)を用いて、JISK7136に示される試験法によりHAZEを測定し、視認性を評価した。
◎:HAZEが1.5未満。優良、
○:HAZEが1.5以上3.0未満。良好、
△:HAZEが3.0以上6.0未満。
×:HAZEが6.0以上。実用不可。
【0110】
(表面形状の測定)
評価用フィルムの基材フィルム側表面のスキューネスSsk、最大高さSpを前述の方法に従い、求めた。
【0111】
(静電気減衰性)
得られた評価用フィルムから幅45mm・長さ45mmの大きさの試験片を切り出し、基材フィルム側を上にして、帯電電荷減衰測定器(Static Honestmeter H-0110-S4,シシド静電気株式会社製)に設置する。印加部の針電極の先端から評価用フィルムまでの距離を20mm、受電部の電極から評価用フィルムまでの距離を20mmに各々調整し、イオナイザーを用いて試料を除電してから、ターンテーブルを回転し、印加部の電極から-10kVを2秒間加え、コロナ放電で生成した空気イオンを照射して試料を帯電させる。印加部の電極の電圧を止め(t=0)、ターンテーブルを回転させたままにすると、試料に帯電した電荷が徐々に減衰する。印加を止めてから60秒後の帯電圧の数値を採用した。
◎:-2.4kV以上0kV以下、優良。
○:-2.6kV以上-2.4kV未満、良好。
△:-2.9kV以上-2.6kV未満。
×:-2.9kV未満、実用不可。
【0112】
(常態ピックアップ性)
評価は、25℃相対湿度50%の環境下で行う。
粘着テープ(日東電工社製「31Bテープ」)を幅25mm×長さ60mmの大きさにカットし、粘着面が外側になるように長辺側を曲げて、端部揃え、端部から20mm分を治具で固定し、ループ状テープを準備する。
得られた評価用フィルムから幅100mm・長さ100mmの大きさの試験片を2つ切り出し、各々の基材フィルムが接触するように重ね、アース接続した幅150mm・長さ150mmの大きさの35μm厚の圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製、厚さ35μm)の粗化処理面の上に置き、その上から3000mm/分の速度で2kgローラーを1往復し、ピックアップ性評価用フィルムとし、30秒後に以下の試験をする。
ピックアップ性評価用フィルムの中心点から左右に40mm離れたセンターライン上の2カ所に、前記センターラインに対して前記粘着テープの幅方向が直交するように、一対のループ状テープを2~3mm程度圧着し、ピックアップ性評価用フィルムが水平を維持するように、同時に持ち上げる。ピックアップ性評価用フィルムを5組用意し、測定を5回行う。
◎:5回全てでピックアップ性評価用フィルムから評価用フィルムが1枚だけ持ち上がる、優良。
○:5回中4回、評価用フィルムが1枚だけ持ち上がる、良好。
△:5回中2~3回、評価用フィルムが1枚だけ持ち上がる。
×:5回中0~1回、評価用フィルムが1枚だけ持ち上がる、実用不可。
【0113】
(加湿後ピックアップ性)
得られた評価用フィルムから幅100mm・長さ100mmの大きさの試験片を2つ切り出し、各々の基材フィルムが接触するように重ね、60℃相対湿度90%の環境下で3日間保管した後、23℃相対湿度50%の雰囲気下に取り出して1分以内に、アース接続した幅150mm・長さ150mmの大きさの35μm厚の圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製、厚さ35μm)の粗化処理面の上に置き、その上から3000mm/分の速度で2kgローラーを1往復し、ピックアップ性評価用フィルムとし、30秒後に、常態におけるピックアップ性試験と同様の試験を行う。評価基準はピックアップ性試験と同じ。
【0114】
【0115】
【0116】
[評価結果のまとめ]
実施例1~18で得られた粘着フィルムは、基材フィルム面に-10kV2秒間印加し、印加を止めてから60秒後の基材フィルム面の帯電圧がいずれも-3.0kV~0kVであり、静電気減衰性が良好であった。
これら実施例で得られた粘着フィルムの基材フィルム面側のSskは、いずれも0.5以上であり、積層した際に基材フィルムの表面(A)の上部に広い空隙を確保することで、基材フィルムに蓄えられた静電気を減衰させ、静電気による密着を抑制することで、1枚ずつピックアップさせることができた。
【0117】
Ssk0.3の基材フィルムEを用いた比較例1では、静電気減衰性は良好なものの、2枚重ねた際の基材フィルムの表面(A)の上部の空隙が狭くて密着しているため、静電気減衰が生じにくく、ピックアップ性試験(常態、加湿)において、1枚ずつ持ち上がることが5回中2回になった。
【0118】
帯電防止ワニス組成物を片面に塗布した基材フィルムFを用いた比較例2、3では、高温高湿下において基材フィルム同士の密着が強くなってしまい、加湿ピックアップ性試験において、1枚ずつ持ち上がることが5回中0回になった。
【0119】
帯電防止剤を含まない粘着剤を用いた比較例4、5で得られた粘着フィルムは、基材フィルム面に-10kV2秒間印加し、印加を止めてから60秒後の基材フィルム面の帯電圧が-10kV~-3.0kVであり、静電気減衰性が不良であった。そのため、発生した静電気がとどまりやすく、ピックアップ性試験(常態、加湿)において、1枚ずつ持ち上がることが5回中0回になった。
【0120】
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
10、20、20’:粘着フィルム
11、21、21’:基材フィルム
12、22、22’:粘着層
23:被着体
24:積層体
1a:山部
1b:谷部