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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両サイドボディ補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240806BHJP
   B62D 25/02 20060101ALI20240806BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B62D25/02 B
B62D25/04 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020179579
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070488
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
(72)【発明者】
【氏名】ピンパルカレ ニナッド
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-189983(JP,U)
【文献】特開2010-285019(JP,A)
【文献】実開昭51-612(JP,U)
【文献】特開2018-192885(JP,A)
【文献】特開2014-218149(JP,A)
【文献】特開2012-116408(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105416404(CN,A)
【文献】特開2008-18750(JP,A)
【文献】特開2010-18087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/02
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側壁を形成するサイドインナと、
前記サイドインナよりも車外側に設けられて車両の意匠面を形成するサイドアウタと、
前記サイドインナの下部に接合されて車外側に屈曲しているホイールハウスアウタと、
前記サイドインナの車外側に接合されている1または複数のサイドインナ補強部とを備える車両サイドボディ補強構造において、
前記1または複数のサイドインナ補強部は、前記サイドインナのうち車両のサイドドアを留めるストライカ部品の設置箇所を補強するストライカリンフォースを含み、
前記1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、前記サイドインナと前記サイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端が前記ホイールハウスアウタに結合されることを特徴とする車両サイドボディ補強構造。
【請求項2】
前記サイドインナは、
前記車両のバックドア用開口に隣接する後端部と、
前記車両のサイドドアが取り付けられるサイドドア用開口の側縁部とを有し、
前記少なくとも1つのサイドインナ補強部は、前記後端部よりも前記側縁部に近接した位置で前記サイドインナに接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両サイドボディ補強構造。
【請求項3】
車両の側壁を形成するサイドインナと、
前記サイドインナよりも車外側に設けられて車両の意匠面を形成するサイドアウタと、
前記サイドインナの下部に接合されて車外側に屈曲しているホイールハウスアウタと、
前記サイドインナの車外側に接合されている1または複数のサイドインナ補強部とを備える車両サイドボディ補強構造において、
前記1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、前記サイドインナと前記サイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端が前記ホイールハウスアウタに結合されていて、
前記サイドインナは、前記車両のサイドドアが取り付けられるサイドドア用開口の側縁部を有し、
前記サイドドア用開口の側縁部は、
該側縁部の上部を形成していて該側縁部の上下方向の中央側から前方または後方の上方に傾斜して延びている上側傾斜縁と、
該側縁部の下部を形成していて前記中央側から前方または後方のうち前記上側傾斜縁と同じ方向の下方に傾斜して延びている下側傾斜縁とを有し、
前記1または複数のサイドインナ補強部は、
前記サイドインナと前記サイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端が前記ホイールハウスアウタに結合されて前記下側傾斜縁に沿って該サイドインナに接合される第1サイドインナ補強部と、
前記上側傾斜縁に沿って前記サイドインナと前記サイドアウタとを連結する第2サイドインナ補強部とを含んでいることを特徴とする車両サイドボディ補強構造。
【請求項4】
前記第2サイドインナ補強部のサイドインナに対する接続面積は、第1サイドインナ補強部のそれよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の車両サイドボディ補強構造。
【請求項5】
前記第2サイドインナ補強部は、前記第1サイドインナ補強部に対して所定の間隔を空けて上方に配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車両サイドボディ補強構造。
【請求項6】
車両の側壁を形成するサイドインナと、
前記サイドインナよりも車外側に設けられて車両の意匠面を形成するサイドアウタと、
前記サイドインナの下部に接合されて車外側に屈曲しているホイールハウスアウタと、
前記サイドインナの車外側に接合されている1または複数のサイドインナ補強部とを備える車両サイドボディ補強構造において、
前記1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、前記サイドインナと前記サイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端が前記ホイールハウスアウタに結合されていて、
前記サイドアウタは、
上方に向かって車内側に傾いて延びる第1傾斜部と、
前記第1傾斜部から上方に向かって該第1傾斜部よりも大きく車内側に傾いて延びる第2傾斜部とを有し、
前記1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、前記サイドアウタの第2傾斜部に接合されていることを特徴とする記載の車両サイドボディ補強構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つのサイドインナ補強部は、所定の接着剤によって該サイドアウタに接合されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両サイドボディ補強構造。
【請求項8】
当該車両サイドボディ補強構造はさらに、
前記ホイールハウスアウタの車内側にて前記サイドインナの下部に接合されて車内側の下方に湾曲して延びているホイールハウスインナと、
前記ホイールハウスインナの車内側に設けられて上下に延びるホイールハウス補強部材とを備え、
前記ホイールハウス補強部材の上端は、前記1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つのサイドインナ補強部の車内側に重なるよう配置され、
前記ホイールハウス補強部材の下端は、前記車両のサイドメンバにおけるクロスメンバの接続領域に接合されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の車両サイドボディ補強構造。
【請求項9】
車両の側壁を形成するサイドインナと、
前記サイドインナよりも車外側に設けられて車両の意匠面を形成するサイドアウタと、
前記サイドインナの下部に接合されて車外側に屈曲しているホイールハウスアウタと、
前記サイドインナの車外側に接合されている1または複数のサイドインナ補強部とを備える車両サイドボディ補強構造において、
前記1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、前記サイドインナと前記サイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端が前記ホイールハウスアウタに結合されていて、
当該車両サイドボディ補強構造はさらに、
前記ホイールハウスアウタの車内側にて前記サイドインナの下部に接合されて車内側の下方に湾曲して延びているホイールハウスインナと、
前記ホイールハウスインナの車内側に設けられる複数のホイールハウス補強部材とを備え、
前記複数のホイールハウス補強部材は、
前記複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つのサイドインナ補強部の車内側に重なるよう配置される第1ホイールハウス補強部材と、
前記第1ホイールハウス補強部材の延長上において前記車両のサイドメンバに接続される第2ホイールハウス補強部材とを含むことを特徴とする車両サイドボディ補強構造。
【請求項10】
前記第2ホイールハウス補強部材は、前記サイドメンバにおけるクロスメンバの接続領域に接続されることを特徴とする請求項9に記載の車両サイドボディ補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両サイドボディ補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両走行時、タイヤと路面の摩擦等によって起こる振動が、ホイールを介してサイドボディに伝われることがある。サイドボディの振動は、フロアパネルやルーフパネルにも伝わることがあり、結果として車室内にロードノイズと呼ばれる異音や騒音を起こす原因になりかねない。したがって、サイドボディには、振動等を抑制する対策が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1の車体後部構造では、走行中の振動等を抑えるために、補強部材32をリヤホイルハウス12付近に設けている。補強部材32は、閉断面を形成してピラー14とリヤホイルハウス12との接合部分の剛性を高めつつ、リヤサイドドア開口34の周りの変形を抑えていわゆるNV性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-116408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の車両には、重量の増加を抑えた構造が要望されている。例えば、上述したサイドボディの振動対策においても、補強部材の寸法を大きくしたり、補強部材の形状を剛性の高いものにしたりすることで振動抑制効果を高めることは可能である。しかし、そのような手法は、補強部材の重量の増加を招くため、好ましいものではない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、重量増加を抑えた簡潔な構成でサイドボディの振動を抑制可能な車両サイドボディ補強構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両サイドボディ補強構造の代表的な構成は、車両の側壁を形成するサイドインナと、サイドインナよりも車外側に設けられて車両の意匠面を形成するサイドアウタと、サイドインナの下部に接合されて車外側に屈曲しているホイールハウスアウタと、サイドインナの車外側に接合されている1または複数のサイドインナ補強部とを備える車両サイドボディ補強構造において、1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、サイドインナとサイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端がホイールハウスアウタに結合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重量増加を抑えた簡潔な構成でサイドボディの振動を抑制可能な車両サイドボディ補強構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施例にかかる車両サイドボディ補強構造を示した図である。
図2図1(a)の補強構造を別方向から示した斜視図である。
図3図2(a)の補強構造の各断面図である。
図4】本発明の第2実施例にかかる車両サイドボディ補強構造を示した図である
図5図4(b)の補強構造のD-D断面図である
図6図2(b)のホイールハウス補強部材等の各変形例である。
図7図1(b)のホイールハウス補強部材等の第3変形例である。
図8図7(b)の第1サイドインナ補強部および第2サイドインナ補強部のE-E断面図である。
図9図2(b)のホイールハウス補強部材等の第4変形例である。
図10図3(b)の第1サイドインナ補強部の各変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両サイドボディ補強構造は、車両の側壁を形成するサイドインナと、サイドインナよりも車外側に設けられて車両の意匠面を形成するサイドアウタと、サイドインナの下部に接合されて車外側に屈曲しているホイールハウスアウタと、サイドインナの車外側に接合されている1または複数のサイドインナ補強部とを備える車両サイドボディ補強構造において、1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、サイドインナとサイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端がホイールハウスアウタに結合されることを特徴とする。
【0011】
上記構成では、サイドインナ補強部がサイドインナとサイドアウタとを連結し、さらに当該サイドインナ補強部の下端がホイールハウスアウタにまで延びて当該ホイールハウスアウタに結合されている。すなわち、上記構成では、サイドインナ補強部がサイドインナ等の3つの部材の間で梁のように機能し、各部材からの荷重を圧縮方向に受けて吸収することで、重量を抑えた簡潔な構成でサイドボディを補強し、振動および騒音の発生を効率よく抑えることが可能となる。
【0012】
上記のサイドインナは、車両のバックドア用開口に隣接する後端部と、車両のサイドドアが取り付けられるサイドドア用開口の側縁部とを有し、少なくとも1つのサイドインナ補強部は、後端部よりも側縁部に近接した位置でサイドインナに接合されていてもよい。
【0013】
車両のうちバックドア用開口の周辺は、バックドアを閉めるときの荷重に耐えるため、さらには走行中の捩じり振動に耐えるために、サイドドア用開口の周辺に比べて、剛性が高く設定されている。したがって、サイドインナ補強部は、サイドインナのうち、バックドア用開口に隣接する後端部よりも相対的に剛性の低いサイドドア用開口の側縁部の近くに設けることで、サイドボディの振動を効率よく抑えることが可能となる。
【0014】
上記のサイドインナは、車両のサイドドアが取り付けられるサイドドア用開口の側縁部を有し、サイドドア用開口の側縁部は、側縁部の上部を形成していて前方または後方に傾斜している上側傾斜縁と、側縁部の下部を形成していて前方または後方のうち上側傾斜縁と同じ方向に傾斜している下側傾斜縁とを有し、1または複数のサイドインナ補強部は、サイドインナとサイドアウタとを連結しつつ上下方向の下端がホイールハウスアウタに結合されて下側傾斜縁に沿ってサイドインナに接合される第1サイドインナ補強部と、上側傾斜縁に沿ってサイドインナとサイドアウタとを連結する第2サイドインナ補強部とを含んでいてもよい。
【0015】
上記構成によれば、第1および第2サイドインナ補強部を利用して、サイドドア用開口の周辺の振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0016】
上記の第2サイドインナ補強部のサイドインナに対する接続面積は、第1サイドインナ補強部のそれよりも大きくてもよい。この構成によって、第2サイドインナ補強部の設置剛性を高めてサイドボディの振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0017】
上記の第2サイドインナ補強部は、第1サイドインナ補強部に対して所定の間隔を空けて上方に配置されていてもよい。この構成によっても、第1および第2サイドインナ補強部を利用して、サイドドア用開口の周辺の振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0018】
上記のサイドアウタは、上方に向かって車内側に傾いて延びる第1傾斜部と、第1傾斜部から上方に向かって第1傾斜部よりも大きく車内側に傾いて延びる第2傾斜部とを有し、1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つは、サイドアウタの第2傾斜部に接合されていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、サイドアウタに傾斜量の異なる第1傾斜部および第2傾斜部を設けることで、サイドアウタの断面二次モーメントを高め、さらに第2傾斜部をサイドインナ補強部によってサイドインナにつなぐことで、サイドボディの振動をより抑えることが可能になる。
【0020】
上記の少なくとも1つのサイドインナ補強部は、所定の接着剤によってサイドアウタに接合されていてもよい。この構成によれば、車両の意匠面を形成するサイドアウタに溶接跡等が残らないので、車両の美感を保つことができる。
【0021】
当該車両サイドボディ補強構造はさらに、ホイールハウスアウタの車内側にてサイドインナの下部に接合されて車内側の下方に湾曲して延びているホイールハウスインナと、ホイールハウスインナの車内側に設けられて上下に延びるホイールハウス補強部材とを備え、ホイールハウス補強部材の上端は、1または複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つのサイドインナ補強部の車内側に重なるよう配置され、ホイールハウス補強部材の下端は、車両のサイドメンバにおけるクロスメンバの接続領域に接合されてもよい。
【0022】
上記のホイールハウス補強部材を備えることによって、サイドボディおよびホイールハウスを補強して、走行中の振動および騒音を効率よく抑えることが可能になる。
【0023】
当該車両サイドボディ補強構造はさらに、ホイールハウスアウタの車内側にてサイドインナの下部に接合されて車内側の下方に湾曲して延びているホイールハウスインナと、ホイールハウスインナの車内側に設けられる複数のホイールハウス補強部材とを備え、複数のホイールハウス補強部材は、複数のサイドインナ補強部のうち少なくとも1つのサイドインナ補強部の車内側に重なるよう配置される第1ホイールハウス補強部材と、第1ホイールハウス補強部材の延長上において車両のサイドメンバに接続される第2ホイールハウス補強部材とを含んでもよい。
【0024】
上記の第1ホイールハウス補強部材および第2ホイールハウス補強部材を備えることによっても、サイドボディおよびホイールハウスをさらに補強して、走行中の振動および騒音を効率よく抑えることが可能になる。
【0025】
上記の第2ホイールハウス補強部材は、サイドメンバにおけるクロスメンバの接続領域に接続されてもよい。この構成によっても、ホイールハウスの周辺における走行中の振動および騒音を効率よく抑えることが可能になる。
【実施例
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例にかかる車両サイドボディ補強構造(以下、補強構造100)を示した図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0028】
図1(a)は、当該補強構造100を車外側前方から示した斜視図である。当該サイドボディ補強構造100は、車両のサイドボディ102を補強して振動を抑え、走行中におけるロードノイズを低減することを目的としている。本実施例では、サイドボディ102のうち、特にリアサイドドアの後方のCピラーとして機能する領域を補強している。
【0029】
サイドボディ102は、側壁を形成するサイドインナパネル104を中止にして、ホイールハウス106を形成するホイールハウスアウタパネル108とホイールハウスインナパネル110、および車両の意匠面を形成するサイドアウタパネル112などのパネル部品によって形成されている。
【0030】
当該補強構造100は、サイドインナパネル104に接合される複数のサイドインナ補強部を含んでいる。第1サイドインナ補強部114は、ホイールハウスアウタパネル108の上側に設置されている。第2サイドインナ補強部116は、第1サイドインナ補強部114の上方に設置されていて、第1サイドインナ補強部114よりも上下方向の寸法が短く、ホイールハウスアウタパネル108とは連結しない構成に設定されている。
【0031】
本実施例の複数のサイドインナ補強部には、ストライカリンフォース118およびブレース120も含んでいる。ストライカリンフォース118は、リアサイドドアを留めるストライカ部品の設置個所を補強する部材である。ストライカリンフォース118は、サイドインナパネル104のサイドドア用開口の側縁部122からホイールハウスアウタパネル108の上面にかけて設置されていて、第3のサイドインナ補強部として機能する。
【0032】
ブレース120は、サイドインナパネル104に設置された状態で、ストライカリンフォース118と第1サイドインナ補強部114とにかけ渡されていて、第4のサイドインナ補強部として機能する。これら、第1から第4のサイドインナ補強部は、サイドインナパネル104およびホイールハウスアウタパネル108にスポット溶接によって接合されている。
【0033】
図1(b)は、図1(a)の補強構造100を車内側前方から示した斜視図である。当該補強構造100は、主にホイールハウス106を補強する部材として、ホイールハウス補強部材124を備えている。ホイールハウス補強部材124は、ホイールハウスインナパネル110の車内側に上下方向にわたるように設けられていて、サイドインナパネル104、ホイールハウスインナパネル110およびサイドメンバ126をつないで補強する筋交部品として機能する。
【0034】
図2は、図1(a)の補強構造100を別方向から示した斜視図である。図2(a)は、図1(a)の補強構造100を車外側から示した図である。図2(a)では、図1(b)のホイールハウス補強部材124を透過して破線で示している。
【0035】
サイドインナパネル104は、リアサイドドアが取り付けられるサイドドア用開口の側縁部122を有している。側縁部122は、サイドドア用開口の後側を形成する部分であり、上側傾斜縁122aと下側傾斜縁122bとを含んでいる。上側傾斜縁122aは、サイドドア用開口の側縁部122の上部を形成していて、前方の斜め上方に向かって傾斜している。下側傾斜縁122bは、サイドドア用開口の側縁部122の下部を形成していて、上側傾斜縁122aと同じ前方の斜め下方に向かって傾斜している。
【0036】
第1サイドインナ補強部114の部分のうち、特にサイドインナパネル104とサイドアウタパネル112(図3(a)参照)との間に車幅方向にわたる第1連結部128は、下側傾斜縁122bに沿ってサイドインナパネル104に接合されている。また、第2サイドインナ補強部116の部分のうち、サイドインナパネル104とサイドアウタパネル112(図3(a)参照)との間に車幅方向にわたる第2連結部130は、上側傾斜縁122aに沿ってサイドインナパネル104に接合されている。
【0037】
図2(b)は、図1(a)の補強構造100を車内側から示した図である。図2(a)では、車外側の各サイドインナ補強部を透過して破線で示している。ホイールハウス補強部材124は、第1サイドインナ補強部114の車内側に重なり、第1サイドインナ補強部114を延長するように配置されている。
【0038】
図3は、図2(a)の補強構造100の各断面図である。図3(a)は、図2(a)の補強構造100のA-A断面図である。サイドアウタパネル112は、サイドインナパネル104との間に空間を設けた状態で、サイドインナパネル104の車外側に設けられている。そして、ホイールハウスアウタパネル108は、サイドインナパネル104の下部に接合されて、車外側に屈曲した形状になっている。また、ホイールハウスインナパネル110は、ホイールハウスアウタパネル108の車内側にてサイドインナパネル104の下部に接合された状態になっていて、車内側の下方に湾曲して延びている。
【0039】
第1サイドインナ補強部114は、サイドインナパネル104の車外側の面、サイドアウタパネル112の車内側の面、およびホイールハウスアウタパネル108の上面を連結する第1連結部128を有している。また、第2サイドインナ補強部116は、第1サイドインナ補強部114の上方にて、サイドインナパネル104の車内側の面とサイドアウタパネル112の車内側の面とを連結する第2連結部130を有している。
【0040】
上記の第1サイドインナ補強部114の第1連結部128は、サイドインナパネル104とサイドアウタパネル112との間で車幅方向に延びてこれら部材を連結し、さらに上下方向の下端がホイールハウスアウタパネル108の上面にまで延びて当該ホイールハウスアウタパネル108に結合されている。この第1連結部128は、サイドインナパネル104等の3つのパネル部材の間で梁のように機能し、各パネル部材からの荷重を圧縮方向に受けて吸収することで、サイドボディ102の車幅方向の振動を効率よく抑える。サイドボディ102の振動を抑えることで、ルーフパネルやフロアパネルへの振動の伝搬も抑えられるため、走行中におけるロードノイズも効率よく防ぐことが可能になる。
【0041】
また、第2サイドインナ補強部116の第2連結部130によっても、サイドインナパネル104とサイドアウタパネル112との間で車幅方向に延びてこれら部材をつなぐことで、サイドボディ102の車幅方向の振動を抑えることが可能になる。特に、第2サイドインナ補強部116は、第1サイドインナ補強部114から独立しているため、第1サイドインナ補強部114とは振動領域が分離されている。したがって、第2サイドインナ補強部116を第1サイドインナ補強部114とは別個に設けることで、サイドボディ102の振動をより効率よく抑えることが可能になる。
【0042】
このように、当該補強構造100では、第1連結部128を有する第1サイドインナ補強部114、および第2連結部130を有する第2サイドインナ補強部116を利用して、重量を抑えた簡潔な構成でサイドインナパネル104を中心としたサイドボディ102を補強し、振動および騒音の発生を効率よく抑えることを可能にしている。
【0043】
上述したように、ホイールハウス補強部材124は、第1サイドインナ補強部114の下端の車内側に重なり、第1サイドインナ補強部114を延長するように配置されている。この構成によって、第1サイドインナ補強部114が受けた荷重を、ホイールハウス補強部材124を介してサイドメンバ126に伝えて吸収することが可能になる。
【0044】
図2(b)に示したように、ホイールハウス補強部材124の下端は、サイドメンバ126のうちクロスメンバ132の接続領域に接合されている。この接続領域とは、サイドメンバ126の一方の側面にクロスメンバ132が接続している範囲における反対側の側面および上下の面を意味している。本実施例では、ホイールハウス補強部材124の下端を、サイドメンバ126のうちクロスメンバ132の接続領域の上面に接続することで、第1サイドインナ補強部114からホイールハウス補強部材124を介してサイドメンバ126およびクロスメンバ132へと、荷重を好適に分散させることができる。
【0045】
上記構成によって、ホイールハウス補強部材124が受けた荷重は、サイドメンバ126だけでなくクロスメンバ132にも伝達して吸収することが可能になる。このように、ホイールハウス補強部材124を備えることによって、サイドボディ102およびホイールハウス106を補強して、走行中の振動および騒音を効率よく抑えることが可能になる。
【0046】
なお、ホイールハウス補強部材124の下端は、サイドメンバ126のうち、内側に補強用のバルク部材が設置されている領域に接続させることも可能である。この構成によって、バルク部材にも荷重を分散させて吸収することが可能になる。
【0047】
図3(a)に示すように、サイドアウタパネル112は、上方に向かって車内側に傾いて延びる第1傾斜部112aと、第1傾斜部112aから上方に向かって第1傾斜部112aよりも大きく車内側に傾いて延びる第2傾斜部112bとを有している。第1サイドインナ補強部114は、第1傾斜部112aに接合され、第2サイドインナ補強部116は、第2傾斜部112bに接合されている。
【0048】
上記構成によれば、サイドアウタパネル112に傾斜量の異なる第1傾斜部112aおよび第2傾斜部112bを設けることで、サイドアウタパネル112の断面二次モーメントを高めて振動し難い形状にすることができる。そして、第1傾斜部112aに第1サイドインナ補強部114を接続し、第2傾斜部112bに第2サイドインナ補強部116を接続することで、サイドボディ102の振動をより抑えることが可能になる。
【0049】
再び図2(a)を参照する。第1サイドインナ補強部114の第1連結部128は、サイドインナパネル104の下側傾斜縁122bに沿って接合されている。また、第2サイドインナ補強部116の第2連結部130は、サイドインナパネル104の上側傾斜縁122aに沿って接合されている。上記構成によって、第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116を利用して、各連結部をサイドドア用開口の側縁部122に沿って接合させることで、サイドドア用開口の周辺の振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0050】
サイドインナパネル104の後端部134は、バックドアの車幅方向側方に隣接する部分である。特に、後端部134の車内側には、バックドア開口を形成する枠部材などが設けられる。ここで、第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116は、サイドインナパネル104のうち、後端部134よりも側縁部122に近接した位置に接合されている。具体的には、第1サイドインナ補強部114等は、サイドインナパネル104のうち、車両前後方向においてサイドドア用開口の側縁部122との距離Xが、後端部134との距離Yよりも近い位置に設置されている(X<Y)。
【0051】
車両のうちのバックドア用開口の周辺は、サイドドア用開口の周辺に比べて、バックドアを閉めるときの荷重に耐えるため、さらには走行中の捩じり振動に耐えるため、所定の枠部材などを設けることで剛性が高く設定されている。したがって、サイドインナパネル104のうち、バックドア用開口に近い部位よりも、サイドドア用開口に近い部位のほうが相対的に剛性が低く振動しやすい。そこで、本実施例では、後端部134よりも側縁部122に近接した位置に第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116を設けてサイドアウタパネル112に連結することで、サイドボディ102の振動を効率よく抑えることが可能となる。
【0052】
上述した寸法比がX<Yとなる位置に第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116を設けることにより、サイドインナパネル104のX側とY側の振動位相差を小さくすることができる。なお、単にサイドアウタパネル112の面振動を抑制したい場合や、サイドインナパネル104のサイドドア側とバックドア側との剛性が同等である場合は、寸法比X:Y=1:1となる位置に第1サイドインナ補強部114を設置することも可能である。
【0053】
本実施例では、第1サイドインナ補強部114は、ブレース120を介してストライカリンフォース118に接続されていて、これら部材と組み合わせることで前後方向の変形が抑えられている。これによって、サイドボディ102におけるサイドドア用開口の後側の剛性が高まるため、リアサイドドアの開閉時や走行中における変形を抑え、ロードノイズをより効率よく抑えることが可能になっている。
【0054】
第1サイドインナ補強部114とストライカリンフォース118をブレース120で接続すると、サイドインナパネル104の振動位相と第1サイドインナ補強部114を中心とした部材の振動位相とを近づけることができるため、サイドインナパネル104から振動位相が異なる振動が発生して高調波化することを防ぎ、ノイズを抑えることにもつながる。
【0055】
ブレース120は、ストライカリンフォース118に設置されるストライカから後方に延びた経路上に設けると好適である。この構成によって、リアサイドドアを閉じたときにストライカに伝わる荷重をストライカリンフォース118およびブレース120を介して、第1サイドインナ補強部114に伝え、荷重を効率よく吸収することが可能になる。また、ストライカリンフォース118およびブレース120は、ストライカからの荷重を効率よく受けられる場所に設置することで、さらなる小型化を行っても十全に機能することが可能になる。
【0056】
本実施例では、第1サイドインナ補強部114がホイールハウスアウタパネル108の上面に接続されていて、これによってホイールハウスアウタパネル108も利用してリアサイドドア等からの荷重を吸収することが可能であるため、ストライカリンフォース118は必ずしもホイールハウスアウタパネル108に接続させる必要はない。すなわち、ストライカリンフォース118は、ブレース120を介して第1サイドインナ補強部114に接続されていることで、より小型化を図ることが可能になる。
【0057】
図3(b)は、図3(a)の第1サイドインナ補強部114のB-B断面図である。第1サイドインナ補強部114は、車幅方向に延びる第1連結部128の両端からフランジ136、138が互いに反対の方向へ屈曲した構成になっている。フランジ136はサイドインナパネル104に接続され、フランジ138はサイドアウタパネル112に接続される。
【0058】
図3(c)は、図3(a)の第2サイドインナ補強部116のC-C断面図である。第2サイドインナ補強部116もまた、車幅方向に延びる第2連結部130の両端からフランジ140、142が互いに反対の方向へ屈曲した構成になっている。フランジ140はサイドインナパネル104に接続され、フランジ142はサイドアウタパネル112に接続される。
【0059】
第2サイドインナ補強部116のフランジ140は、サイドインナパネル104に対する接続面積が、第1サイドインナ補強部114のフランジ136のそれよりも大きく設定されている。第2サイドインナ補強部116は、第1サイドインナ補強部114と異なり、ホイールハウスアウタパネル108に接続されていないものの、フランジ140を大きくすることでの設置剛性を補うことができる。この構成によって、サイドボディ102の振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0060】
本実施例では、第2サイドインナ補強部116は、第1サイドインナ補強部114とは別個に製造可能であるため、第1サイドインナ補強部114の重量増加を抑えつつ、第2サイドインナ補強部116を利用してサイドインナパネル104およびサイドアウタパネル112の剛性を局所的に向上させて振動の抑制を図ることが可能である。
【0061】
第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116は、サイドアウタパネル112の車内側の面に所定の接着剤を使用して接合されている。接着剤は、溶接に比べてサイドアウタパネル112の車外側の意匠面に跡が残らないため、車両の美観を保つことができる。
【0062】
上記の接着剤の例としては、金属板の下地を接着する際に使用されるシーラーやプライマーと呼ばれる接着剤が挙げられる。また接着剤は、塗布したときに粘性が高いものや弾性を有するもの、さらには発泡機能があるものを採用することができる。これら性質および機能を有する接着剤は、第1サイドインナ補強部114等とサイドアウタパネル112における接着面の細かな凹凸や寸法差を埋めることができるため、部材同士の組付精度の向上に役立つ。
【0063】
ストライカリンフォース118およびブレース120もまた、サイドアウタパネル112の車内側に接着させることが可能である。第1から第4のサイドインナ補強部をサイドインナパネル104とサイドアウタパネル112とに差し渡すことで、サイドボディ102の車幅方向の振動をさらに抑えることが可能になる。
【0064】
なお、本実施例では、図2(a)に例示したように、サイドドア用開口の後側の側縁部122は、上側傾斜縁122aおよび下側傾斜縁122bが、互いに車両前方の上方および下方に傾斜して延びた構成になっている。すなわち、サイドドア用開口の側縁部122は、上下方向の中央側が車両後方へ凹を描いた形状になっている。しかしながら、本願発明を実施可能な側縁部の形状はこれに限られない。例えば、上側傾斜縁および下側傾斜縁は、互いに車両後方の上方および下方に向かって傾斜して延びた構成とすることも可能である。すなわち、サイドドア用開口の側縁部は、上下方向の中央側が車両前方へ凸を描いた形状とすることも可能である。
【0065】
また、第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116は、サイドドア用開口の前側の側縁部に沿って設けることも可能である。例えば、サイドボディのうちAピラーを構成する領域、すなわちフロントサイドドア用開口の前側の側縁部となる領域においても、第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116を利用して、サイドインナパネル、ホイールハウスアウタパネルおよびサイドアウタパネルを連結し、サイドボディの振動抑制を図ることが可能である。
【0066】
(第2実施例)
図4は、本発明の第2実施例にかかる車両サイドボディ補強構造(以下、補強構造200)を示した図である。図4以降の各図では、第1実施例にて既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0067】
図4(a)は、当該補強構造200を車外側から示した図である。当該補強構造200は、一体型補強部材202を備えている。一体型補強部材202は、図1(a)に示した第1サイドインナ補強部114、第2サイドインナ補強部116、第3および第4の補強部材であるストライカリンフォース118およびブレース120の4つの部材を一体化させた部材である。一体型補強部材202は、上記第1実施例で説明したこれら4つのサイドインナ補強部の機能を単体で実現することが可能になっている。
【0068】
図4(b)は、当該補強構造200を車外側から示した図である。一体型補強部材202の第1サイドインナ補強部202aは、下側傾斜縁122bに沿ってサイドインナパネル104に接合されている。また、一体型補強部材202の第2サイドインナ補強部202bは、上側傾斜縁122aに沿ってサイドインナパネル104に接合されている。一体型補強部材202においても、第1サイドインナ補強部202aおよび第2サイドインナ補強部202bをサイドドア用開口の側縁部122に沿って接合してサイドアウタパネル112(図5参照)に連結することで、サイドドア用開口の周辺の振動を効率よく抑えることが可能になっている。
【0069】
一体型補強部材202もまた、第1サイドインナ補強部202aおよび第2サイドインナ補強部202bがサイドインナパネル104のうち、サイドドア用開口の側縁部122との距離Xが、後端部134との距離Yよりも近い位置に設置されている(X<Y)。
【0070】
図5は、図4(b)の補強構造200のD-D断面図である。一体型補強部材202の第1サイドインナ補強部202aは、サイドインナパネル104の車外側の面、サイドアウタパネル112の第1傾斜部112aの車内側の面、およびホイールハウスアウタパネル108の上面を連結している。
【0071】
また、一体型補強部材202の第2サイドインナ補強部202bは、第1サイドインナ補強部114の上方にて、サイドインナパネル104の車内側の面とサイドアウタパネル112の第2傾斜部112bの車内側の面とを連結している。一体型補強部材202においても、サイドアウタパネル112の車内側の面に対しては、所定の接着剤を使用して接合することができる。
【0072】
一体型補強部材202においても、第1サイドインナ補強部202aおよび第2サイドインナ補強部202bがサイドインナパネル104とサイドアウタパネル112との間で車幅方向に延びてこれら部材を連結し、さらに第1サイドインナ補強部202aの下端がホイールハウスアウタパネル108の上面にまで延びて当該ホイールハウスアウタパネル108に結合されている。これら第1サイドインナ補強部202aおよび第2サイドインナ補強部202bは、サイドインナパネル104等の3つのパネル部材の間で梁のように機能し、各パネル部材からの荷重を圧縮方向に受けて吸収することで、サイドボディ102の車幅方向の振動を抑え、走行中におけるロードノイズを効率よく防ぐことが可能になっている。
【0073】
ホイールハウス補強部材124は、一体型補強部材202の第1サイドインナ補強部202a下端の車内側に重なり、一体型補強部材202をサイドメンバ126に向かって延長するようにして配置されている。この構成によって、一体型補強部材202が受けた荷重を、ホイールハウス補強部材124を介してサイドメンバ126に伝達して吸収することができる。
【0074】
なお、一体型補強部材202においても、図3(c)のフランジ140と同様に、サイドインナパネル104に対する接続面積は、第1サイドインナ補強部202aのフランジの接続面積よりも、第2サイドインナ補強部202bのフランジの接続面積を大きく設定することが可能である。これによって、一体型補強部材202の上部側の設置剛性を補い、サイドボディ102の振動を効率よく抑えることが可能になる。
【0075】
(変形例)
図6は、図2(b)のホイールハウス補強部材124等の各変形例である。図6(a)は、図2(b)のホイールハウス補強部材124の第1変形例(ホイールハウス補強部材220)である。
【0076】
ホイールハウス補強部材220は、上端が第3の補強部材であるストライカリンフォース118の下端の車内側に重なるように設けられていて、下端がサイドメンバ126のうちクロスメンバ132の接続領域に接続されている。
【0077】
ホイールハウス補強部材220によっても、ホイールハウス106を補強しつつ、ストライカリンフォース118を介して伝わる荷重をサイドメンバ126に伝えて吸収することができるため、ストライカリンフォース118および第1サイドインナ補強部114等の荷重吸収性能を高め、サイドドア用開口の後方にて振動を効率よく吸収することが出来る。
【0078】
なお、本変形例の場合、ストライカリンフォース118をサイドアウタパネル112に接続することで、ホイールハウス補強部材220の機能と合わせて、サイドボディ102の車幅方向の振動をより抑えることが可能となる。
【0079】
なお、本変形例の場合、ストライカリンフォース118は、ホイールハウス補強部材220によって設置剛性を高めることができるため、第1サイドインナ補強部114と必ずしも結合させなくてもよい。この場合、ストライカリンフォース118は、サイドアウタパネル112の車内側の面に所定の接着剤を使用して接合することが好ましい。
【0080】
図6(b)は、図2(b)のホイールハウス補強部材124等の第2変形例(隆起部材242およびホイールハウス補強部材244)である。車両のCピラーの車内側には、サイドインナパネル104から車内側に隆起した大型の隆起部材242が設けられている。この隆起部材242もまた、ホイールハウス補強部材と同等に機能させることが可能である。
【0081】
本変形例では、第1サイドインナ補強部114は、隆起部材242の前側の壁部の車外側に重なるように設けている。これによって、第1サイドインナ補強部114等が受けた荷重を、隆起部材242に伝えることが可能になる。また、ホイールハウス補強部材244は、隆起部材242の下部にてサイドメンバ126にうちクロスメンバ246の接続領域にかけ渡すように設けられている。
【0082】
本変形例においても、第1サイドインナ補強部114が受けた荷重を、隆起部材242およびホイールハウス補強部材244を介して、サイドメンバ126およびクロスメンバ246に伝えて吸収することができる。本変形例においても、第1サイドインナ補強部114等の荷重吸収性能を高め、サイドドア用開口の後方にて振動を効率よく吸収することが可能になる。
【0083】
図7は、図1(b)のホイールハウス補強部材124等の第3変形例(ホイールハウス補強部材260、262)である。図7(a)は、ホイールハウス補強部材260等を車内側前方から示した斜視図である。本変形例は、第1ホイールハウス補強部材260および第2ホイールハウス補強部材262を備えている。第1ホイールハウス補強部材260は、サイドインナパネル104とホイールハウスインナパネル110とにかけ渡されていて、第2ホイールハウス補強部材262はホイールハウスインナパネル110とサイドメンバ126とにかけ渡されている。
【0084】
図7(b)は、図7(a)のホイールハウス補強部材260、262を車内側から示した図である。第1ホイールハウス補強部材260は、上端が第1サイドインナ補強部114の下端の車内側に重なるように設けられている。そして、第2ホイールハウス補強部材262は、第1ホイールハウス補強部材260の延長上において、下端がサイドメンバ126に接続されるように設けられている。
【0085】
図8は、図7(b)の第1サイドインナ補強部114および第2サイドインナ補強部116のE-E断面図である。第1ホイールハウス補強部材260および第2ホイールハウス補強部材262によっても、ホイールハウス106を補強しつつ、第1サイドインナ補強部114からの荷重をサイドメンバ126に伝えて吸収することができる。本変形例もまた、第1サイドインナ補強部114等の荷重吸収性能を高め、サイドボディ102の振動を効率よく吸収することが出来る。
【0086】
また、本変形例では、第1ホイールハウス補強部材260と第2ホイールハウス補強部材262とに分割し、ホイールハウスインナパネル110の付近に局所的に配置することで、ホイールハウス補強部材としての全体の重量増大を抑えつつ、ホイールハウス106およびサイドボディ102の振動抑制を図ることができる。
【0087】
図9は、図2(b)のホイールハウス補強部材124等の第4変形例(ホイールハウス補強部材280、282)である。本変形例は、第1ホイールハウス補強部材280および第2ホイールハウス補強部材282を備えている。第1ホイールハウス補強部材280は、サイドインナパネル104とホイールハウスインナパネル110とにかけ渡されていて、第2ホイールハウス補強部材282はホイールハウスインナパネル110とサイドメンバ126とにかけ渡されている。
【0088】
第1ホイールハウス補強部材280は、上端が第4の補強部材であるストライカリンフォース118の下端の車内側に重なるように設けられている。そして、第2ホイールハウス補強部材282は、第1ホイールハウス補強部材280の延長上において、下端がサイドメンバ126のうちクロスメンバ132の接続領域に接続されるように設けられている。
【0089】
本変形例においても、第1ホイールハウス補強部材280および第2ホイールハウス補強部材282を利用して、ホイールハウス106を補強しつつ、ストライカリンフォース118を介して伝わる荷重をサイドメンバ126に伝えて吸収することができる。本変形例においても、ストライカリンフォース118および第1サイドインナ補強部114等の荷重吸収性能を高め、サイドドア用開口の後方にて振動を効率よく吸収することが出来る。
【0090】
なお、本変形例においても、ストライカリンフォース118をサイドアウタパネル112に接続することで、第1ホイールハウス補強部材280および第2ホイールハウス補強部材282の機能と合わせて、サイドボディ102の車幅方向の振動をより抑えることが可能となる。
【0091】
図10は、図3(b)の第1サイドインナ補強部114の各変形例である。図10(a)は、図3(b)の第1サイドインナ補強部114の第1変形例(第1サイドインナ補強部300)である。第1サイドインナ補強部300は、第1連結部128に対して、フランジ302、138が同じ方向に屈曲した構成になっている。本構成の第1サイドインナ補強部300もよっても、サイドインナパネル104とサイドアウタパネル112とを好適に連結することができる。
【0092】
図10(b)は、図3(b)の第1サイドインナ補強部114の第2変形例(第1サイドインナ補強部310)である。第1サイドインナ補強部310は、サイドインナパネル104側のフランジ312がT字形状になっている。また、図10(c)は、図3(b)の第1サイドインナ補強部114の第3変形例(第1サイドインナ補強部320)である。第1サイドインナ補強部320は、両側のフランジ322、324がT字形状になっている。これら第1サイドインナ補強部310および第1サイドインナ補強部320によっても、サイドインナパネル104とサイドアウタパネル112とを好適に連結することができる。
【0093】
図10(d)は、図3(b)の第1サイドインナ補強部112の第4変形例(第1サイドインナ補強部330)である。第1サイドインナ補強部330は、断面U字形状になっていて、二又のフランジ332、334でサイドインナパネル104に接合し、U字形状の底部336でサイドアウタパネル112に接着された構成になっている。第1サイドインナ補強部330によっても、サイドインナパネル104とサイドアウタパネル112とを好適に連結することができる。
【0094】
上記のいずれの変形例においても、簡潔な構成かつ重量およびコストを抑えた第1サイドインナ補強部を実現することが可能である。
【0095】
なお、図2(b)および図6から図9に例示した各ホイールハウス補強部材は、各サイドインナ補強部からの荷重をホイールハウス106およびサイドメンバ126に伝えて吸収することができる。そのため、各ホイールハウス補強部材を適用したさらなる他の例として、図2(b)および図6から図9に例示した第1サイドインナ補強部114の下端をホイールハウス106に結合させない構成とすることも可能である。この場合、例えば第3の補強部材であるストライカリンフォース118の下端を、ホイールハウス106に結合させる。そして、第4の補強部材であるブレース120の車外側の面を、サイドアウタパネル112の車内側の面に所定の接着剤を使用して接合させる。このような構成によっても、上記変形例と同様に、サイドボディ102の車幅方向の振動を効率よく抑え、走行中におけるロードノイズも防ぐことが可能になる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、車両サイドボディ補強構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
100…補強構造、102…サイドボディ、104…サイドインナパネル、106…ホイールハウス、108…ホイールハウスアウタパネル、110…ホイールハウスインナパネル、112…サイドアウタパネル、112a…第1傾斜部、112b…第2傾斜部、114…第1サイドインナ補強部、116…第2サイドインナ補強部、118…ストライカリンフォース、120…ブレース、122…側縁部、122a…上側傾斜縁、122b…下側傾斜縁、124…ホイールハウス補強部材、126…サイドメンバ、128…第1連結部、130…第2連結部、132…クロスメンバ、134…後端部、136…フランジ、138…フランジ、140…フランジ、142…フランジ、200…補強構造、202…一体型補強部材、202a…第1サイドインナ補強部、202b…第2サイドインナ補強部、220…ホイールハウス補強部材、240…ホイールハウス補強部材、242…隆起部材、244…ホイールハウス補強部材、246…クロスメンバ、260…ホイールハウス補強部材、262…第2ホイールハウス補強部材、280…第1ホイールハウス補強部材、282…第2ホイールハウス補強部材、300…第1サイドインナ補強部、302…フランジ、310…第1サイドインナ補強部、312…フランジ、322…フランジ、324…フランジ、330…第1サイドインナ補強部、332…フランジ、334…フランジ、336…底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10