(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】支持装置およびこれを備えた作業機械、重量ブロックの運搬方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/36 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
E02F3/36 Z
(21)【出願番号】P 2020180230
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】保坂 善伸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆典
(72)【発明者】
【氏名】山下 康一
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163645(JP,A)
【文献】実開平03-083245(JP,U)
【文献】実開平04-122751(JP,U)
【文献】特開平02-186019(JP,A)
【文献】実開昭49-058005(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第1213209(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行面を走行可能な走行部を含む機体と、前記機体に起伏方向に回動可能に支持された起伏体および前記起伏体の先端部に回動可能に支持された作業部材を含む作業装置とを有する作業機械に装着され、前記作業装置と協同して重量ブロックを支持し前記作業機械が前記重量ブロックを運搬することを可能とする支持装置であって、
前記重量ブロックは、第1方向を向く第1外側面と、第1稜線において前記第1外側面と交わる第2外側面と、前記第1方向とは逆向きの第2方向を向くとともに前記第1外側面とは反対側で第2稜線において前記第2外側面と交わる第3外側面とを含み、
前記支持装置は、
前記重量ブロックを支持することが可能な少なくとも一つの支持部と、
前記少なくとも一つの支持部に接続され、前記機体に対する前記少なくとも一つの支持部の上下方向の相対変位を拘束するように前記機体に固定される固定部と、
を有し、
前記少なくとも一つの支持部は、
左右方向に延びる支点部を含み、前記機体の前方において前記第1外側面が前記走行面上に配置され前記第2外側面が前記機体に対して間隔をおいて対向して配置されるように前記重量ブロックが前記走行面上に設置された状態である初期状態から前記走行面上の前記第1稜線を支点として前記機体に近づくように後方に回動する第1回動動作において前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止めることが可能な受け止め部と、
前記支点部の後方に配置される支持面であって、前記第1回動動作の後に前記第2外側面が前記支点部に支持された状態で前記重量ブロックが前記支点部を支点として後方に回動する動作である第2回動動作において前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止め前記作業部材と協同して前記重量ブロックを支持することが可能な支持面と、を有する、支持装置。
【請求項2】
前記受け止め部は、左右方向に幅を有し前方に向かって先下がりに傾斜した第1傾斜面であって、前記第1回動動作において前記重量ブロックを受け止めることが可能な第1傾斜面を有する、請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記第1傾斜面は平面から構成される、請求項2に記載の支持装置。
【請求項4】
左右方向から見て前記第1傾斜面を含む平面と前記走行面とがなす角度が30度以上50度以下の範囲に含まれるように前記第1傾斜面が設定されている、請求項3に記載の支持装置。
【請求項5】
前記作業機械は、前記固定部が前記機体に固定された状態における前記支持面の後方に配置され、作業者が搭乗することを許容するキャブを更に備え、
前記少なくとも一つの支持部は、前記第1傾斜面が前記第2外側面を受け止めた状態の前記重量ブロックの重心が前記第1稜線よりも後方に位置するように、前記初期状態における前記第1稜線の前記第1傾斜面に対する相対位置である目標相対位置を指し示す、左右方向に間隔をおいて配置される複数の位置指標部を更に備え、
前記作業機械を操作する作業者から見て、前記複数の位置指標部と前記目標相対位置に配置される前記第1稜線とが重なるように前記複数の位置指標部が配置されている、請求項2乃至4の何れか1項に記載の支持装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つの支持部は、前記第1傾斜面の後方に配置され、左右方向に幅を有し前記第1傾斜面よりも小さな角度で前方に向かって先下がりに傾斜した平面からなる第2傾斜面を更に有し、
前記第2傾斜面が前記支持面を構成している、請求項2乃至5の何れか1項に記載の支持装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つの支持部は、
前記第1傾斜面の後方に配置され、左右方向に幅を有し前記第1傾斜面よりも小さな角度で前方に向かって先下がりに傾斜した平面からなる第2傾斜面と、
上面部を含み、前記第2傾斜面に沿って前後方向に移動可能なように前記第2傾斜面に支持された移動部材と、
を更に有し、
前記移動部材の前記上面部が前記支持面を構成している、請求項2乃至5の何れか1項に記載の支持装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの支持部は、左右方向に延びるとともに前記第1傾斜面および前記第2傾斜面を互いに接続する接続稜線を更に有し、
前記接続稜線が、前記支点部を構成している、請求項6または7に記載の支持装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの支持部は、前記支持面の後方において当該支持面よりも上方に配置され、前記重量ブロックの前記第2稜線または前記第3外側面に当接することで前記第2回動動作によって前記支持面に支持された前記重量ブロックが後方向に移動することを阻止する当接部を更に有する、請求項2乃至8の何れか1項に記載の支持装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの支持部は、左右方向から見て前記走行部よりも前方に突出するように配置される先端支持部を有し、
前記先端支持部は、
当該先端支持部の先端部かつ上端部に配置される角部であって前記受け止め部および前記支点部を構成する先端角部と、
前記先端角部から後方に延びるとともに前記支持面を構成する先端上面部と、
を含む、請求項1に記載の支持装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つの支持部は、前記先端支持部の後方に配置される後方支持部を更に有し、
前記後方支持部は、前記先端角部の後方かつ上方に配置され前記先端角部とともに前記第1回動動作において前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止めることが可能な補助受け止め部を含む、請求項10に記載の支持装置。
【請求項12】
前記後方支持部は、前記補助受け止め部と前記先端上面部とを互いに接続するとともに前方に向かって先下がりに傾斜した案内面であって、前記先端角部を支点とする前記重量ブロックの前記第2回動動作において前記重量ブロックの前記第2稜線に当接し前記第2稜線を前記先端上面部まで案内する案内面を更に有する、請求項11に記載の支持装置。
【請求項13】
前記走行部は、カーボディと、前記カーボディの左右両端部にそれぞれ接続される左右一対のクローラユニットとを有し、
前記左右一対のクローラユニットは、
前記カーボディに接続されるクローラフレームと、
前記クローラフレームに周回可能に支持されたクローラシューと、
をそれぞれ有し、
左右方向から見て、前記受け止め部、前記支点部および前記支持面のそれぞれが前記クローラシューの外側に配置されるように、前記固定部が前記機体に固定されている、請求項1乃至12の何れか1項に記載の支持装置。
【請求項14】
前記左右一対のクローラユニットは、前記クローラフレームの前端部に回転可能に支持され、前記クローラシューを支持する支持ローラーをそれぞれ有し、
前記少なくとも一つの支持部が左右方向から見て前記支持ローラーの回転中心よりも上方に配置されるように前記固定部が前記機体に固定されている、請求項13に記載の支持装置。
【請求項15】
前記少なくとも一つの支持部は左右一対の支持部を含む、請求項1乃至14の何れか1項に記載の支持装置。
【請求項16】
前記機体は、前記起伏体を起伏方向に回動可能に支持する起伏体支持部を更に含み、
前後方向から見て前記左右一対の支持部が前記起伏体支持部の左右両側に配置されるように前記固定部が前記機体に固定される、請求項15に記載の支持装置。
【請求項17】
走行面を走行可能な走行部を含む機体と、
前記機体に起伏方向に回動可能に支持された起伏体および前記起伏体の先端部に回動可能に支持された作業部材を含む作業装置と、
前記作業装置と協同して重量ブロックを支持することが可能な、請求項1乃至16の何れか1項に記載の支持装置と、を備え、
前記支持装置の前記固定部は、前記機体に対する前記少なくとも一つの支持部の上下方向の相対変位を拘束するように前記機体に固定されている、作業機械。
【請求項18】
走行面を走行可能な走行部を含む機体と、前記機体に起伏方向に回動可能に支持された起伏体および前記起伏体の先端部に回動可能に支持された作業部材を含む作業装置と、前記機体の前側部分に固定された支持装置とを有する作業機械によって重量ブロックを支持し前記重量ブロックを運搬する重量ブロックの運搬方法であって、
前記重量ブロックとして、第1方向を向く第1外側面と、第1稜線において前記第1外側面と交わる第2外側面と、前記第1外側面とは反対側で前記第1方向とは逆向きの第2方向を向くように第2稜線において前記第2外側面と交わる第3外側面とを含むものを準備する準備工程と、
前記機体の前方において前記第1外側面が前記走行面上に配置され前記第2外側面が前記機体に対して間隔をおいて対向して配置されるように前記重量ブロックを前記走行面上に設置する運搬物設置工程と、
前記作業装置の前記作業部材を駆動し当該作業部材によって前記走行面上の前記第1稜線を支点として前記重量ブロックを後方に回動させ、前記重量ブロックの前記第2外側面を前記支持装置の受け止め部によって受け止める受け止め工程と、
前記受け止め部が前記第2外側面を受け止めた状態から、前記重量ブロックの前記第2外側面が前記受け止め部に配置される支点部を支点として後方に回動するとともに前記第1稜線が前記走行面から上方に離間するように、前記作業部材によって前記重量ブロックを押し上げる押し上げ工程と、
押し上げられた前記重量ブロックの前記第2外側面を、前記支持装置のうち前記支点部よりも後方に配置された支持面によって受け止め、前記作業部材および前記支持面によって前記重量ブロックを支持する支持工程と、
前記作業部材および前記支持装置が前記重量ブロックを支持した状態で前記走行部を走行させ、前記重量ブロックを運搬する運搬工程と、
を備える、重量ブロックの運搬方法。
【請求項19】
前記受け止め工程は、前記支持装置の前記受け止め部に設けられた傾斜面であって前方に向かって先下がりに傾斜した傾斜面によって前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止めることを含む、請求項18に記載の重量ブロックの運搬方法。
【請求項20】
前記受け止め工程は、前記重量ブロックの重心が前記第1稜線よりも後方に位置するような前記重量ブロックの姿勢において、前記傾斜面が前記第2外側面を受け止めることを含む、請求項
19に記載の重量ブロックの運搬方法。
【請求項21】
前記作業機械は、前記支持装置の後方に配置されたキャブを有し、
前記運搬物設置工程は、前記キャブに搭乗した作業者から見て、前記支持装置に左右方向に間隔をおいて設けられた複数の位置指標部と前記重量ブロックの前記第1稜線とが重なるように、前記重量ブロックを前記走行面上に設置することを含む、請求項18乃至20の何れか1項に記載の重量ブロックの運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量ブロックを支持可能な支持装置およびこれを備えた作業機械、重量ブロックの運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている作業機械は、地面などの走行面を走行可能な下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体に起伏可能に支持された作業装置とを有する。
【0003】
特許文献1には、前記作業機械の一例としての油圧ショベルが開示されている。当該油圧ショベルでは、前記作業装置が、上部旋回体に回動可能に支持されたブームと、前記ブームの先端部に回動可能に支持されたアームと、前記アームの先端部に回動可能に支持されたバケットとを有する。作業機械は、前記バケットを用いて地面の掘削作業や輸送車両への土砂の積み込み作業などを行うことができる。更に、前記油圧ショベルは、下部走行体の前部に揺動可能に支持されたドーザ(排土板)を有する。前記ドーザは土砂の運搬作業や整地作業などを行うことができる。
【0004】
特許文献1には、上記のような油圧ショベルを用いて円管などの長尺の荷物を運搬する吊荷運搬構造が開示されている。当該吊荷運搬構造では、バケットの基端部に装着されたフックがワイヤーを介して前記円管の一端部を吊り上げつつ前記ドーザの上端部が前記円管の他端部を支持した状態で、油圧ショベルが上記荷物を運搬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された油圧ショベルの吊荷運搬構造では、大理石や御影石に代表される石材のような重量ブロックを運搬することが難しいという問題がある。具体的に、採石場などでは一辺が1メートルを超える直方体形状を有しその重量が数十トンにも及ぶ石材が岩山から切り出される。このような石材を上記の吊荷運搬構造を用いて運搬しようとすると、前記石材の一端部にワイヤーを巻いてフックで吊り上げる作業には多くの手間が掛かる。また、前記石材の他端部をドーザ上に配置するためには他の補助クレーンなどで石材を一旦吊り上げる必要があり、その作業にも多くの手間が掛かる。更に、上記のように石材の重量は数十トンにも及ぶことがあり、通常の作業において前記ドーザを揺動するために前記作業機械に備えられた油圧シリンダでは、当該油圧シリンダの能力が不足するため、前記ドーザが前記石材の他端部を安定して支持することが困難となる。
【0007】
本発明の目的は、作業機械によって石材のような重量ブロックを安定して運搬することを可能とする支持装置およびこれを備えた作業機械、重量ブロックの運搬方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるのは作業装置に装着される支持装置である。前記作業機械は、走行面を走行可能な走行部を含む機体と、前記機体に起伏方向に回動可能に支持された起伏体および前記起伏体の先端部に回動可能に支持された作業部材を含む作業装置とを有する。前記支持装置は、前記作業装置と協同して重量ブロックを支持し前記作業機械が前記重量ブロックを運搬することを可能とする。前記重量ブロックは、第1方向を向く第1外側面と、第1稜線において前記第1外側面と交わる第2外側面と、前記第1方向とは逆向きの第2方向を向くとともに前記第1外側面とは反対側で第2稜線において前記第2外側面と交わる第3外側面とを含む。前記支持装置は、前記重量ブロックを支持することが可能な少なくとも一つの支持部と、前記少なくとも一つの支持部に接続され前記機体に対する前記少なくとも一つの支持部の上下方向の相対変位を拘束するように前記機体に固定される固定部とを有する。前記少なくとも一つの支持部は、左右方向に延びる支点部を含む受け止め部と、支持面とを有する。前記受け止め部は、初期状態から前記走行面上の前記第1稜線を支点として前記機体に近づくように後方に回動する第1回動動作において前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止めることが可能である。前記初期状態は、前記機体の前方において前記第1外側面が前記走行面上に配置され前記第2外側面が前記機体に対して間隔をおいて対向して配置されるように前記重量ブロックが前記走行面上に設置された状態である。前記支持面は、前記支点部の後方に配置され、前記第1回動動作の後に前記第2外側面が前記支点部に支持された状態で前記重量ブロックが前記支点部を支点として後方に回動する動作である第2回動動作において前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止め前記作業部材と協同して前記重量ブロックを支持することが可能である。
【0009】
本構成によれば、支持装置は、重量ブロックの形状に対応した構造を有しており、前記重量ブロックの第2外側面を前記受け止め部で受け止め、前記支点部回りに回動可能に支持し、更に前記支持面で前記第2外側面を支持することができる。このため、作業者は、重量ブロックにワイヤーなどを装着する必要がなく、作業装置などを操作することによって重量ブロックを地面から支持装置の支持面まで第1回動動作および第2回動動作において順に転がすことで、作業部材とともに重量ブロックを支持することができる。また、支持装置の固定部が作業機械の機体に固定されているため、重量ブロックが石材のように大きな重量を有するものであってもその重量を作業機械の機体で安定して受けることができる。したがって、作業装置の作業部材と支持装置の支持面とによって重量ブロックを安定して支持しながら、当該重量ブロックを運搬することができる。
【0010】
上記の構成において、前記受け止め部は、左右方向に幅を有し前方に向かって先下がりに傾斜した第1傾斜面であって、前記第1回動動作において前記重量ブロックを受け止めることが可能な第1傾斜面を有することが望ましい。
【0011】
本構成によれば、第1傾斜面が所定の長さを有しつつ前方に向かって傾斜しているため、初期状態における重量ブロックの第1稜線と支持装置の受け止め部との距離がばらついても、第1傾斜面が重量ブロックの一部を安定して受け止めることができる。また、作業機械が第2外側面の長さが互いに異なる複数のサイズの重量ブロックを運搬する場合であっても、第1傾斜面が各重量ブロックの一部を安定して受け止めることができる。
【0012】
上記の構成において、前記第1傾斜面は平面から構成されることが望ましい。
【0013】
本構成によれば、第1傾斜面が重量ブロックの第2外側面に面接触することができるため、重量ブロックの自重が支持装置に付与される際の衝撃を抑えることができる。
【0014】
上記の構成において、左右方向から見て前記第1傾斜面を含む平面と前記走行面とがなす角度が30度以上50度以下の範囲に含まれるように前記第1傾斜面が設定されていることが望ましい。
【0015】
本構成によれば、上記の角度が30度未満の場合と比較して、第1稜線を支点として回動する重量ブロックの自重が支持装置に付与される際の衝撃を抑えることができる。また、上記の角度が50度を超える場合と比較して、作業装置の作業部材を用いて重量ブロックを後方に回動させやすくすることができる。更に、上記の角度が45度未満の場合には、受け止め部が第2外側面を受け止めたのち重量ブロックが第1傾斜面から離れるように前方に転動することを抑止することができる。
【0016】
上記の構成において、前記作業機械は前記固定部が前記機体に固定された状態における前記支持面の後方に配置され作業者が搭乗することを許容するキャブを更に備え、前記少なくとも一つの支持部は、前記初期状態における前記第1稜線の前記第1傾斜面に対する相対位置である目標相対位置を指し示す、左右方向に間隔をおいて配置される複数の位置指標部を更に備えることが望ましい。前記目標相対位置は、前記第1傾斜面が前記第2外側面を受け止めた状態の前記重量ブロックの重心が前記第1稜線よりも後方に位置するように設定されている。前記作業機械を操作する作業者から見て前記複数の位置指標部と前記目標相対位置に配置される前記第1稜線とが重なるように前記複数の位置指標部が配置されている。
【0017】
本構成によれば、作業者は位置指標部が指し示す目標相対位置に合わせて重量ブロックと作業機械との相対位置を設定することが可能であるため、支持部の第1傾斜面が重量ブロックの第2外側面を受け止めたのちに重量ブロックが第1傾斜面から離れるように前方に転動することを抑止することができる。
【0018】
特に、本構成によれば、作業者は、複数の位置指標部が指し示す目標相対位置に合わせて重量ブロックと作業機械との相対位置を設定することができる。また、左右方向に間隔を置いて配置される複数の位置指標部と重量ブロックの第1稜線との左右方向における相対位置を調整することによって、重量ブロックの左右のバランスを保ちながら支持装置の支持部によって重量ブロックを安定して支持することができる。
【0019】
上記の構成において、前記少なくとも一つの支持部は、前記第1傾斜面の後方に配置され、左右方向に幅を有し前記第1傾斜面よりも小さな角度で前方に向かって先下がりに傾斜した平面からなる第2傾斜面を更に有し、前記第2傾斜面が前記支持面を構成していることが望ましい。
【0020】
本構成によれば、支持面が水平面または後方に向かって先下がりの平面からなる場合と比較して、支点部回りに回動した重量ブロックを受け止める際の衝撃を小さくすることができるとともに、支持装置から重量ブロックを容易に下ろすことができる。また、第2傾斜面の傾斜角度が第1傾斜面の傾斜角度よりも小さく設定されているため、運搬時に第1傾斜面が重量ブロックを支持する場合と比較して、重量ブロックが前方に滑落する力を減ずることができる。
【0021】
上記の構成において、前記少なくとも一つの支持部は、前記第1傾斜面の後方に配置され、左右方向に幅を有し前記第1傾斜面よりも小さな角度で前方に向かって先下がりに傾斜した平面からなる第2傾斜面と、上面部を含み前記第2傾斜面に沿って前後方向に移動可能なように前記第2傾斜面に支持された移動部材とを更に有し、前記移動部材の前記上面部が前記支持面を構成していることが望ましい。
【0022】
本構成によれば、移動部材は、支点部回りに回動した重量ブロックを上面部において支持しながら後方に移動することができるため、重量ブロックを機体に近い位置に配置することで運搬時の作業機械の安定性を高めることができる。
【0023】
上記の構成において、前記少なくとも一つの支持部は、左右方向に延びるとともに前記第1傾斜面および前記第2傾斜面を互いに接続する接続稜線を更に有し、前記接続稜線が前記支点部を構成していることが望ましい。
【0024】
本構成によれば、第1傾斜面と第2傾斜面との間の接続稜線を利用して、重量ブロックを回動させることができるため、支持部の構造をシンプルにすることができる。また、第2傾斜面が接続稜線に接続されているため、接続稜線を支点として回動した重量ブロックの第2外側面を第2傾斜面が速やかに支持することができる。
【0025】
上記の構成において、前記少なくとも一つの支持部は、前記支持面の後方において当該支持面よりも上方に配置され、前記重量ブロックの前記第2稜線または前記第3外側面に当接することで前記第2回動動作によって前記支持面に支持された前記重量ブロックが後方に移動することを阻止する当接部を更に有することが望ましい。
【0026】
本構成によれば、支持面に支持された重量ブロックが更に後方に移動することを阻止することができるため、重量ブロックが機体の一部に衝突することを防止することができる。
【0027】
上記の構成において、前記少なくとも一つの支持部は左右方向から見て前記走行部よりも前方に突出するように配置される先端支持部を有し、前記先端支持部は、当該先端支持部の先端部かつ上端部に配置される角部であって前記受け止め部および前記支点部を構成するする先端角部と、前記先端角部から後方に延びるとともに前記支持面を構成する先端上面部とを含むことが望ましい。
【0028】
本構成によれば、重量ブロックの第2外側面を先端角部で受け止め、当該先端角部を支点として重量ブロックを回動させることで先端上面部において重量ブロックを速やかに支持することができる。このため、簡易な構造からなる先端支持部によって重量ブロックを容易に支持することができる。
【0029】
上記の構成において、前記少なくとも一つの支持部は、前記先端支持部の後方に配置される後方支持部を更に有し、前記後方支持部は、前記先端角部の後方かつ上方に配置され前記先端角部とともに前記第1回動動作において前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止めることが可能な補助受け止め部を含むことが望ましい。
【0030】
本構成によれば、先端角部に加えて補助受け止め部が第2外側面を受け止めることができるため、受け止め時の衝撃を抑えることができる。
【0031】
上記の構成において、前記後方支持部は、前記補助受け止め部と前記先端上面部とを互いに接続するとともに前方に向かって先下がりに傾斜した案内面であって、前記先端角部を支点とする前記重量ブロックの前記第2回動動作において前記重量ブロックの前記第2稜線に当接し前記第2稜線を前記先端上面部まで案内する案内面を更に有することが望ましい。
【0032】
本構成によれば、案内面が重量ブロックの第2稜線を支持しながら先端上面部まで案内することができるため、当該案内面が配置されない場合と比較して、重量ブロックの第2外側面が先端上面部に着地する際に支持装置に付与される衝撃を抑えることができる。
【0033】
上記の構成において、前記走行部はカーボディと前記カーボディの左右両端部にそれぞれ接続される左右一対のクローラユニットとを有し、前記左右一対のクローラユニットは前記カーボディに接続されるクローラフレームと前記クローラフレームに周回可能に支持されたクローラシューとをそれぞれ有し、左右方向から見て前記受け止め部、前記支点部および前記支持面のそれぞれが前記クローラシューの外側に配置されるように前記固定部が前記機体に固定されていることが望ましい。
【0034】
本構成によれば、重量ブロックを走行面から支持面まで持ち上げる際および支持面において重量ブロックを支持する際に、重量ブロックとクローラシューとが接触することを防止することができる。
【0035】
上記の構成において、前記左右一対のクローラユニットは、前記クローラフレームの前端部に回転可能に支持され前記クローラシューを支持する支持ローラーをそれぞれ有し、前記少なくとも一つの支持部が左右方向から見て前記支持ローラーの回転中心よりも上方に配置されるように前記固定部が前記機体に固定されていることが望ましい。
【0036】
本構成によれば、走行部の前方において支持部が支持ローラーの回転中心よりも上方に配置されているため、作業機械が支持装置を備えない場合と比較して、作業機械のアプローチアングルが小さくなることを抑止し、作業機械が坂道を安定して上り下りすることができる。
【0037】
上記の構成において、前記少なくとも一つの支持部は左右一対の支持部を含むことが望ましい。
【0038】
本構成によれば、作業装置の作業部材と左右一対の支持部とによって、重量ブロックを3点で支持することができるため、重量ブロックを安定して支持面まで持ち上げ運搬することができる。
【0039】
上記の構成において、前記機体は、前記起伏体を起伏方向に回動可能に支持する起伏体支持部を更に含み、前後方向から見て前記左右一対の支持部が前記起伏体支持部の左右両側に配置されるように前記固定部が前記機体に固定されることが望ましい。
【0040】
本構成によれば、作業部材の左右方向の位置を起伏体支持部に合わせることで、作業部材を頂点としてその左右両側で左右一対の支持部が重量ブロックを支持することが可能であるため、重量ブロックを更に安定して支持面まで持ち上げ運搬することができる。
【0041】
また、本発明によって提供されるのは作業機械であって、走行面を走行可能な走行部を含む機体と、前記機体に起伏方向に回動可能に支持された起伏体および前記起伏体の先端部に回動可能に支持された作業部材を含む作業装置と、前記作業装置と協同して重量ブロックを支持することが可能な、上記の何れか1に記載の支持装置と、を備え、前記支持装置の前記固定部は、前記機体に対する前記少なくとも一つの支持部の上下方向の相対変位を拘束するように前記機体に固定されている。
【0042】
本構成によれば、作業者は、重量ブロックにワイヤーなどを装着する必要がなく、作業装置を操作することによって重量ブロックを走行面から支持装置の支持面まで順に持ち上げ、支持することができる。また、支持装置の固定部が作業機械の機体に固定されているため、重量ブロックが石材のように大きな重量を有するものであってもその重量を作業機械の機体で安定して受けとめることができる。この結果、作業装置の作業部材と支持装置の支持面とによって重量ブロックを安定して支持しながら、作業機械によって重量ブロックを運搬することができる。
【0043】
更に、本発明によって提供されるのは重量ブロックの運搬方法である。当該運搬方法は、走行面を走行可能な走行部を含む機体と、前記機体に起伏方向に回動可能に支持された起伏体および前記起伏体の先端部に回動可能に支持された作業部材を含む作業装置と、前記機体の前側部分に固定された支持装置とを有する作業機械によって重量ブロックを支持し前記重量ブロックを運搬する方法である。当該運搬方法は、準備工程と、運搬物設置工程と、受け止め工程と、押し上げ工程と、支持工程と、運搬工程とを備える。準備工程では、前記重量ブロックとして、第1方向を向く第1外側面と、第1稜線において前記第1外側面と交わる第2外側面と、前記第1外側面とは反対側で前記第1方向とは逆向きの第2方向を向くように第2稜線において前記第2外側面と交わる第3外側面とを含むものを準備する。運搬物設置工程では、前記機体の前方において前記第1外側面が前記走行面上に配置され前記第2外側面が前記機体に対して間隔をおいて対向して配置されるように前記重量ブロックを前記走行面上に設置する。受け止め工程では、前記作業装置の前記作業部材を駆動し当該作業部材によって前記走行面上の前記第1稜線を支点として前記重量ブロックを後方に回動させ、前記重量ブロックの前記第2外側面を前記支持装置の受け止め部によって受け止める。押し上げ工程では、前記受け止め部が前記第2外側面を受け止めた状態から、前記重量ブロックの前記第2外側面が前記受け止め部に配置される支点部を支点として後方に回動するとともに前記第1稜線が前記走行面から上方に離間するように、前記作業部材によって前記重量ブロックを押し上げる。支持工程では、押し上げられた前記重量ブロックの前記第2外側面を、前記支持装置のうち前記支点部よりも後方に配置された支持面によって受け止め、前記作業部材および前記支持面によって前記重量ブロックを支持する。運搬工程では、前記作業装置が前記重量ブロックを支持した状態で前記走行部を走行させ、前記重量ブロックを運搬する。
【0044】
本方法によれば、受け止め工程において重量ブロックを受け止め部で受け止めるとともに、押し上げ工程において重量ブロックを支点部回りに回動させることによって、支持工程において前記重量ブロックを支持面で支持することができる。このため、作業者は、重量ブロックにワイヤーなどを装着する必要がなく、作業装置を操作することによって重量ブロックを地面から支持装置の支持面まで順に持ち上げ、支持することができる。また、支持装置が作業機械の機体に固定されているため、重量ブロックが石材のように大きな重量を有するものであってもその重量を作業機械の機体で安定して受けとめることができる。この結果、作業装置の作業部材と支持装置の支持面とによって重量ブロックを安定して支持しながら、運搬工程において前記重量ブロックを運搬することができる。
【0045】
上記の方法において、前記受け止め工程は、前記支持装置の前記受け止め部に設けられた傾斜面であって前方に向かって先下がりに傾斜した傾斜面によって前記重量ブロックの前記第2外側面を受け止めることを含むことが望ましい。
【0046】
本方法によれば、運搬物設置工程において重量ブロックの第1稜線と支持装置の受け止め部との距離がばらついても、受け止め工程において傾斜面が重量ブロックを安定して受け止めることができる。また、第2外側面の長さが互いに異なる複数のサイズの重量ブロックに対しても、受け止め工程において傾斜面が各重量ブロックを安定して受け止めることができる。
【0047】
上記の方法において、前記受け止め工程は、前記重量ブロックの重心が前記第1稜線よりも後方に位置するような前記重量ブロックの姿勢において、前記傾斜面が前記第2外側面を受け止めることを含むことが望ましい。
【0048】
本構成によれば、受け止め工程において、傾斜面が第2外側面を受け止めたのちに、重量ブロックが傾斜面から離れるように前方に転動することを抑止することができる。
【0049】
上記の方法において、前記作業機械は、前記支持装置の後方に配置されたキャブを有し、前記運搬物設置工程は、前記キャブに搭乗した作業者から見て、前記支持装置に左右方向に間隔をおいて設けられた複数の位置指標部と前記重量ブロックの前記第1稜線とが重なるように、前記重量ブロックを前記走行面上に設置することを含むことが望ましい。
【0050】
本方法によれば、作業者は複数の位置指標部に合わせて重量ブロックと作業機械との相対位置を容易に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、作業機械によって石材のような重量ブロックを安定して運搬することを可能とする支持装置およびこれを備えた作業機械、重量ブロックの運搬方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る作業機械の側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定された様子を示す正面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定された様子を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定された様子を示す側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定された様子を示す側断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定される様子を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る支持装置を作業機械のキャブから見た様子を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定された様子を示す斜視図である。
【
図16】本発明の第2実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定された様子を示す正面図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る支持装置が作業機械の機体に固定された様子を示す側面図である。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図22】本発明の第2実施形態に係る支持装置を備えた作業機械が重量ブロックを支持する様子を示す工程図である。
【
図23】作業機械がバケットだけで重量ブロックを運搬する様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0054】
図1は、本発明の第1実施形態に係る支持装置5(支持装置)が装着、固定される作業機械の一例である油圧ショベル1の側面図を示す。
図2および
図3は、本実施形態に係る支持装置5が油圧ショベル1の下部走行体10に固定された様子を示す正面図および斜視図である。油圧ショベル1は、地面G(走行面)を走行可能なクローラ式の下部走行体10および下部走行体10に旋回可能に支持される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置20と、を備える。下部走行体10および上部旋回体12は、本発明の機体1S(
図1)を構成する。
【0055】
下部走行体10は、地面G上を走行可能である。下部走行体10は、本発明の走行部を構成する。
【0056】
上部旋回体12は、前記下部走行体10に支持される旋回フレーム121と、当該旋回フレーム121上に搭載されるキャブ13と、を有する。前記作業装置20は、前記旋回フレーム121の前端部に水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に連結されるブーム21と、当該ブーム21の先端部に水平な回転中心軸回りに回動可能に連結されるアーム22と、当該アーム22の先端部に水平な回転中心軸回りに回動可能に連結されるバケット23と、を含む。本実施形態では、ブーム21、アーム22およびバケット23の回転中心軸は互いに平行に設定されている。ブーム21およびアーム22は、本発明の起伏体を構成し、バケット23は、本発明の作業部材を構成する。また、作業装置20は、ブーム21を起伏させるように伸縮するブームシリンダ21Sと、アーム22を回動させるように伸縮するアームシリンダ22Sと、バケット23を回動させるように伸縮するバケットシリンダ23Sとを更に有する。これらのシリンダは油圧シリンダから構成される。
【0057】
キャブ13は、旋回フレーム121の前部であって当該旋回フレーム121の幅方向について前記ブーム21と隣接する部位(
図1、
図2に示される例ではブーム21の左側)に搭載され、油圧ショベル1の操縦を行うための運転室を構成する。すなわち、当該キャブ13内において、作業者は、下部走行体10の走行、上部旋回体12の旋回、及び前記作業装置20の作動のための操作を行う。
【0058】
図2に示すように、旋回フレーム121の中央部にはキャブ13に隣接するように、左右一対のブーム支持部20S(起伏体支持部)が配置される。左右一対のブーム支持部20Sは、ブーム21を起伏可能に支持する。
【0059】
また、
図3に示すように、下部走行体10は、カーボディ101と、左右一対のクローラユニット102とを有する。
【0060】
カーボディ101は、旋回部101Sを有する。旋回部101Sは、上部旋回体12を旋回可能に支持する旋回ベアリングを含む。
【0061】
左右一対のクローラユニット102は、カーボディ101の左右方向の端部に接続されるクローラフレーム102Aと、クローラフレーム102Aに周回可能に支持されたクローラシュー102Bとをそれぞれ有する。
【0062】
油圧ショベル1は、更に支持装置5を有する。支持装置5は、作業装置20と協同して石材6(重量ブロック)を支持し油圧ショベル1が石材6を運搬することを可能とする。なお、以下の説明では、重量ブロックの一例として石材6を例示するが、本発明に係る重量ブロックはこれに限定されるものではない。
【0063】
石材6は、岩山などに設けられた採石場などで切り出される。石材6は、一辺が1メートルを超える直方体形状を有するように切り出されることが多い。石材6は、ブロック、重量ブロック、原石、岩塊、山石などともいう。石材6の重量は、10トン以上、更には数十トン以上にも及ぶことがある。たとえば、石材6は、大理石や御影石などである。
【0064】
図1を参照して、このような直方体形状を有する石材6は、それぞれ矩形形状を有する、第1面6A(第1外側面)と、第2面6B(第2外側面)と、第3面6C(第3外側面)とを含む6面を有する。第1面6Aは、第1方向を向き、第3面6Cは第1方向とは逆向きの第2方向を向く。第1面6Aと第2面6Bとは第1稜線Pにおいて交わっており、第2面6Bと第3面6Cとは第2稜線Q(第2稜線)において交わっている。第1稜線Pおよび第2稜線Qは、第2面6Bにおいて互いに反対側で平行(略平行)に配置されている。なお、本実施形態では、説明のために、石材6の各面は平面であり、互いに平行または直交する関係にあるが、上記のように切り出された石材6の各面は、所定の凹凸を有してもよいし、平行関係または直交関係に対して所定の誤差角度を有してもよい。また、本発明に係る支持装置5によって支持される重量ブロックの形状は、上記の形状に限定されるものではない。
【0065】
図1乃至
図3を参照して、支持装置5は、左右一対のクローラユニット102の間において、下部走行体10の前側部分に固定されている。支持装置5は、接続部50と、左右一対の支持腕51とを有する。接続部50は、左右一対の支持腕51同士を左右方向において接続する管部材である。左右一対の支持腕51は、それぞれ下部走行体10のカーボディ101およびクローラフレーム102Aに固定されている。また、
図2に示すように、左右一対の支持腕51は、ブーム支持部20Sの左右両側に配置されている。
【0066】
なお、左右一対の支持腕51の構造は互いに同じであるため、以下では一方の支持腕51を例に説明する。支持腕51は、左右一対の板材51Aと、当該板材51A同士を接続する接続材51Bとから構成される。
図3に示すように、接続材51Bの外形形状は、板材51Aの外形形状よりも僅かに小さく設定されている。また、このような構造を有する支持腕51は、支持部51Cと、固定部51Sと、後記の補助固定部51Rとを有する。支持部51Cは、石材6を支持することが可能とされている。また、固定部51Sは、支持部51Cに接続され、下部走行体10に対する支持部51Cの上下方向の相対変位を拘束するように下部走行体10に固定される(補助固定部51Rも同様)。本実施形態では、固定部51Sは、カーボディ101の前端部分に溶接または不図示のボルトなどで固定される。なお、後記のように支持部51Cが石材6を支持した場合、支持部51Cが石材6の重量で下部走行体10に対して僅かに下方に撓むことは許容される。
【0067】
支持部51Cは、先端傾斜部510と、傾斜板511(第2傾斜面、移動部材)と、規制部512(当接部)と、突起部513(位置指標部)とを有する。
【0068】
先端傾斜部510は、支持腕51の先端部に配置された傾斜部であって、前述の左右一対の板材51Aの先端側の上面部によって構成される。また、このように一対の板材51Aの上面部によって構成される先端傾斜部510は、傾斜面51G(第1傾斜面)を構成する。傾斜面51Gは、左右方向に幅を有し前方に向かって先下がりに所定の角度で傾斜した平面である。なお、
図3に示すように、先端傾斜部510の下端部(先端部)が、傾斜下端部510Aと定義され、先端傾斜部510の上端部(基端部)が、傾斜上端部510Bと定義される。先端傾斜部510は、本発明の受け止め部を構成する。
【0069】
傾斜板511は、先端傾斜部510の後方に配置される。
図3に示すように、接続材51Bは、接続材上面部51B1(第2傾斜面)を有する。接続材上面部51B1は、左右一対の板材51Aに挟まれた接続材51Bの上面部であって、板材51Aの板材上面部51A1よりも下方に配置されている。接続材上面部51B1は、左右方向に所定の幅を有し前方に向かって先下がりに傾斜した平面である。なお、接続材上面部51B1の傾斜角度は、先端傾斜部510の傾斜角度よりも小さく(浅く)設定されている。そして、傾斜板511は、左右一対の板材51Aの間において、接続材上面部51B1に沿って前後方向に移動(スライド移動)可能に支持されている。傾斜板511は、左右方向の寸法よりも前後方向の寸法が大きく設定された平面視で矩形状の板材である。傾斜板511の下面部は、接続材上面部51B1との間での摺動抵抗が小さくなるように構成されており、傾斜板511の上面部は、板材上面部51A1および接続材上面部51B1と平行に設定されており、石材6の外側面との間で摩擦抵抗が大きくなるように、かつ、耐摩耗性が高くなるように構成されている。これらの特性は材料特性でもよいし表面処理によるものでもよい。傾斜板511の前記上面部は、本発明の支持面51Tを構成する。当該支持面51Tは、傾斜上端部510Bの後方に配置され、後記のように傾斜上端部510B回りに回動した石材6の第2面6Bを受け止め石材6を支持することが可能とされている。
【0070】
なお、
図3を参照して、先端傾斜部510の左右一対の傾斜上端部510Bは、板材上面部51A1と先端傾斜部510とを互いに接続する接続稜線として機能している。当該傾斜上端部510B(接続稜線)は、左右方向に延びる稜線であって、本発明の支点部として機能する。当該支点部は、石材6を回動可能に支持する。
【0071】
規制部512は、傾斜板511の後方に配置され、左右一対の板材上面部51A1の後端部から上方に向かって延びている。規制部512は、石材6の一部(第2稜線Qまたは第3面6C)に当接(係合)することで石材6がより後方に移動することを阻止する。
【0072】
突起部513は、左右一対の板材51Aのうち左側の板材51Aの先端部から左方に向かって突設された突起部である。なお、突起部513は、キャブ13に搭乗した作業者によって視認される必要があるため、
図2に示すように、キャブ13が下部走行体10の左端に配置された本実施形態では、上記のように左側の板材51Aに配置されている。突起部513の配置はキャブ13の位置に応じて設定されればよい。
【0073】
図2に示すように、本実施形態では、支持装置5の左右一対の支持腕51は、左右一対のクローラユニット102の内側近傍において、カーボディ101の下面部とほぼ同じ高さまたはカーボディ101の下面部よりも上方に配置されており、地上高さH(最低地上高)が確保されている。このため、油圧ショベル1が地面Gを走行する際に、カーボディ101が不図示の障害物上を通過することが可能となる。
【0074】
図4および
図5は、本実施形態に係る支持装置5が油圧ショベル1の機体1Sに装着された様子を示す側面図および側断面図である。
図5では、左側(紙面手前側)のクローラユニット102の一部を省略し、支持装置5の構造を視認しやすくしている。
図6は、本実施形態に係る支持装置5が油圧ショベル1の下部走行体10(クローラフレーム102A)に装着される様子を示す斜視図である。
【0075】
図6に示すように、接続部50の端部は、支持腕51の一対の板材51Aおよび接続材51B(
図3)を貫通するように、支持腕51に固定されている。また、左右一対の支持腕51は、更に補助固定部51R(固定部)をそれぞれ有する。補助固定部51Rは、接続部50の端部に対応する位置で、支持腕51の外側面に固定されている。補助固定部51Rは、前後一対の縦板51Vと上下一対の横板51Wとを有する。
図6に示すように、補助固定部51Rの先端部は側面視で矩形状の箱型構造を有している。一方、クローラフレーム102Aの内側面には、上下一対のフレームリブ102A1が配置されている。各フレームリブ102A1は左右方向に所定の幅を有し、前後方向に延びている。
図6の矢印に示すように、支持装置5が下部走行体10に装着される際には、上下一対のフレームリブ102A1の間に補助固定部51Rの箱型部分が挿入され、溶接や不図示のボルトなどで接続される。
【0076】
図4を参照して、左右一対のクローラユニット102は、クローラフレーム102Aの前端部に回転可能に支持され、クローラシュー102Bを支持する支持ローラー102C(誘導輪)をそれぞれ有する。上記のように支持装置5が下部走行体10に固定されると、左右方向から見て、先端傾斜部510、傾斜上端部510Bおよび傾斜板511のそれぞれがクローラシュー102Bの外側に配置されるように、前述の固定部51S、補助固定部51Rが下部走行体10のカーボディ101およびクローラフレーム102Aにそれぞれ固定されている。この際、支持腕51の下面部である腕下面部51M(
図4)は、支持ローラー102Cの回転中心102C1よりも上方に配置される。更に、傾斜下端部510Aの下方において支持腕51の先端部は円弧状に施されている。この結果、支持装置5を備えた油圧ショベル1が、坂道などを登り始める際に、支持装置5の先端部が地面Gに接触することが防止される。換言すれば、支持装置5を有していない場合と比較して、油圧ショベル1のアプローチアングルがほぼ同じに設定されている。
【0077】
次に、上記のような支持装置5を備えた油圧ショベル1によって、石材6を持ち上げ、運搬する手順について説明する。
図7は、本実施形態に係る支持装置5を油圧ショベル1のキャブ13から見た様子を示す斜視図である。
図8は、本実施形態に係る支持装置5を備えた油圧ショベル1が石材6を支持する様子を示す工程図である。
図9は、
図8の一部を拡大した側面図である。
図10乃至
図12は、
図8と同様の工程図である。
図13は、
図12の一部を拡大した側面図である。
図14は、
図13の状態における支持装置5を示す斜視図である。
【0078】
油圧ショベル1によって石材6を支持するにあたって、
図1に示すように、切り出された石材6が準備される(準備工程)。そして、油圧ショベル1の下部走行体10の前方において第1面6Aが地面G上に配置され第2面6Bが下部走行体10に対して間隔をおいて対向して配置されるように石材6が地面G上に設置される(運搬物設置工程)。この状態が初期状態と定義される。
【0079】
この際、
図7に示すように、キャブ13内の作業者は、左右一対の突起部513が石材6の第1稜線Pに重なるように、下部走行体10の前後方向の位置を調整する。また、作業者は、左右一対の突起部513と第1稜線Pの左右方向における相対位置を調整することで、支持装置5の左右一対の支持腕51が石材6を均等に支持できるように設定する。この結果、後記のように、支持装置5の左右一対の先端傾斜部510が石材6の第2面6Bを安定して受け止めることができる。
【0080】
次に、
図1に示すように、作業者が作業装置20を操作して駆動させバケット23の先端部を石材6の前側の側面(第2面6Bとは反対側の側面)の上端部に当接させ、第1稜線Pを支点として石材6を下部走行体10に近づくように後方に回動させる(第1回動動作)。この結果、
図8、
図9に示すように、左右一対の支持部51Cの先端傾斜部510(傾斜面51G)が石材6の第2面6Bを受け止める(受け止め工程)。
【0081】
この際、
図7に示すように、予め石材6の第1稜線Pと支持装置5の先端傾斜部510との距離が設定されていることから、
図9に示すように、傾斜面51Gが第2面6Bに面接触するように先端傾斜部510が石材6の第2面6Bを受け止めた状態の石材6の重心6Gが第1稜線Pよりも後方に位置している。すなわち、
図9の重心距離GL(第1稜線Pと重心6Gとの前後方向における距離)が第1稜線Pよりも後方において正の値をとる。したがって、この状態でバケット23が石材6から離れたとしても、石材6は自重で先端傾斜部510に寄り掛かった状態となるため、石材6が
図1に示すような初期状態まで転動することが抑止され、石材6が損傷することを抑止することができる。また、
図9に示すように、左右方向から見て傾斜面51Gを含む平面と地面Gとがなす角度が30度以上50度以下の範囲に含まれるように、石材6を面で安定して受けるためにより望ましくは45度未満、更に望ましくは40度になるように、傾斜面51Gの角度および突起部513の位置が設定されている。特に、前記角度が45度未満の場合には、石材6を安定して受け止めることができるとともに石材6が前方に転動することを防止しつつ次の工程(押し上げ工程)を安定して行うことができる。
【0082】
図8、
図9に示すように、先端傾斜部510によって石材6を受け止めると、作業者は、
図10に示すように、バケット23の先端部を第1面6Aのうち第1稜線Pとは反対側の端部に移動させる。そして、石材6の第2面6Bが支持装置5の傾斜上端部510B(支点部)を支点として左右方向に延びる回転中心軸回りに後方に回動するとともに第1稜線Pが地面Gから上方に離間するように、作業装置20のバケット23が石材6を押し上げる(
図11)(第2回動動作、押し上げ工程)。
【0083】
更に、作業者は、作業装置20を操作し、バケット23によって石材6を後方に押し上げる(
図12の矢印参照)。この結果、
図12、
図13に示すように、押し上げられた石材6の第2面6Bを、石材6のうち傾斜上端部510Bよりも後方に配置された支持面51Tが受け止め、バケット23および支持面51Tが石材6を前向きに回動しないように支持することができる(支持工程)。この際、
図13に示すように、支持部51Cの規制部512が、石材6の第2稜線Qに当接することで、石材6が規制部512よりも後方に移動することが阻止される。このため、石材6がキャブ13に衝突しキャブ13が破損することが防止されるとともに、キャブ13に搭乗する作業者の安全を保つことができる。また、
図13に示すように、傾斜板511は、第2面6Bと地面とのなす角度が20度(先端傾斜部510が第2面6Bを支持する角度よりも小さな角度)になるように設定されている。このため、石材6が傾斜板511から前方にずれにくく、バケット23および傾斜板511によって油圧ショベル1と同等の重量を備えた石材6を安定して支持することができる。
【0084】
また、
図12、
図13に示すように、石材6が押し上げられる際には、
図14に示すように、支持面51Tを構成する左右一対の傾斜板511が後方にスライド移動することができるため(
図14の矢印参照)、石材6を後方に容易に移動させることが可能となる。
【0085】
その後、作業者は、バケット23および支持装置5が石材6を支持した状態で下部走行体10を走行させ、石材6を運搬する(運搬工程)。なお、石材6を支持装置5から下す場合にはバケット23によって石材6を傾斜板511から先端傾斜部510まで移動させた後、下部走行体10を前進または後退させる、あるいは、作業装置20のバケット23で石材6を前方に回動することで、石材6を地面Gに着地させることができる。
【0086】
以上のように、本実施形態では、支持装置5が、左右一対の支持部51Cと、固定部51Sとを備える。また、支持部51Cは、傾斜上端部510Bを含む先端傾斜部510と、支持面51Tとを有する。
【0087】
当該支持装置5は、大きな重量を有する石材6を吊り上げる作業に多くの手間や困難性があることに着目し、当該石材6を地面Gから転がしながら持ち上げるという発想に基づくものである。そして、支持装置5は、石材6を先端傾斜部510で受け止め、傾斜上端部510B回りに回動可能に支持し、更に傾斜板511(支持面51T)で受け止め、支持することができる。このため、作業者は、石材6にワイヤーなどを装着する必要がなく、作業装置20を操作することによって石材6を地面Gから支持装置5の支持面51Tまで前記第1回動動作および前記第2回動動作によって順に持ち上げ、バケット23とともに石材6を支持することができる。また、支持装置5の固定部51Sおよび補助固定部51Rが油圧ショベル1の下部走行体10に固定されているため、石材6のように大きな重量を有する重量ブロックであってもその重量を油圧ショベル1の下部走行体10で安定して受けとめることができる。この結果、油圧ショベル1のバケット23と支持装置5の支持面51Tとによって石材6を安定して支持しながら、石材6を運搬することができる。
【0088】
なお、前記第1回動動作は、石材6が前記初期状態から地面G上の第1稜線Pを支点として下部走行体10に近づくように後方に回動する動作である。本実施形態では、バケット23を含む作業装置20によって前記第1回動動作が実現されるが、他の部材、装置によって石材6を転がすことで第1回動動作が行われてもよい。また、前記第2回動動作は、前記第1回動動作の後に石材6の第2面6Bが傾斜上端部510Bに支持された状態で石材6が傾斜上端部510Bを支点として後方に回動する動作である。当該第2回動動作も、必ずしもバケット23を含む作業装置20によって行われる必要はないが、第1回動動作および第2回動動作が油圧ショベル1の作業装置20によって行なわれることで、油圧ショベル1だけで石材6の支持作業および運搬作業を行うことができる。
【0089】
また、本実施形態では、先端傾斜部510は、前記第1回動動作において後方に回動した石材6の第2面6Bを受け止めることが可能な傾斜面51G(第1傾斜面)を有している。
【0090】
このような構成によれば、初期状態における石材6の第1稜線Pと支持装置5の先端傾斜部510との距離がばらついても、傾斜面51Gが石材6を安定して受け止めることができる。また、第2面6Bの長さが互いに異なる複数のサイズの石材6に対しても、傾斜面51Gが各石材6を安定して受け止めることができる。特に、傾斜面51Gが平面から構成されるため、石材6の第2面6Bに面接触することができるため、石材6の自重が支持装置5に付与される際の衝撃を抑えることができる。
【0091】
更に、本実施形態では、左右方向から見て傾斜面51Gを含む平面と地面Gとがなす角度が30度以上50度以下、より望ましくは30度以上45度未満の範囲に含まれるように傾斜面51Gが設定されている。
【0092】
このような構成によれば、上記の角度が30度未満の場合と比較して、第1稜線Pを支点として回動する石材6の自重が支持装置5に付与される際の衝撃を抑えることができる。また、上記の角度が50度以下に設定されている場合には、作業装置20のバケット23を手前に引き込むことで、上記の角度を利用して石材6を後方に回動させやすくすることができる。また、上記の角度が45度未満の場合には、先端傾斜部510(傾斜面51G)が第2面6Bを受け止めたのち石材6が傾斜面51Gから離れるように前方に転動することを抑止することができる。
【0093】
また、本実施形態では、左右一対の支持部51Cが、突起部513(位置指標部)をそれぞれ有している。当該左右一対の突起部513は、前記初期状態における石材6の第1稜線Pの傾斜面51Gに対する前後方向における相対位置である目標相対位置を指し示す。特に、当該目標相対位置は、傾斜面51Gが第2面6Bを受け止めた状態の石材6の重心6Gが第1稜線Pよりも後方に位置するように設定されている。
【0094】
このような構成によれば、作業者は突起部513が指し示す目標相対位置に合わせて石材6と油圧ショベル1との相対位置を設定することが可能であるため、傾斜面51Gが石材6の第2面6Bを受け止めたのちに石材6が傾斜面51Gから離れるように前方に転動することを抑止することができる。
【0095】
更に、本実施形態では、石材6の第1稜線Pを支点とする回動に伴って傾斜面51Gが石材6の第2面6Bに面接触するような前記目標相対位置を指し示す。
【0096】
このような構成によれば、突起部513が指し示す目標相対位置に基づいて、石材6の第2面6Bと傾斜面51Gとを安定して面接触させることができる。
【0097】
また、キャブ13は、固定部51Sが下部走行体10に固定された状態において傾斜板511(支持面51T)の後方に配置されている。そして、左右一対の突起部513(複数の突起部513)は、油圧ショベル1を操作する作業者から見て、左右一対の突起部513と前記目標相対位置に配置される第2面6Bとが重なるように配置されている。
【0098】
このような構成によれば、作業者はキャブ13に搭乗したまま、突起部513が指し示す目標相対位置に合わせて石材6と油圧ショベル1との相対位置を設定することができる。また、左右方向に間隔を置いて配置される複数の突起部513と石材6の第1稜線Pとの左右方向における相対位置を調整することによって、石材6の左右のバランスを保ちながら支持装置5の支持部51Cによって石材6を安定して支持することができる。
【0099】
また、本実施形態では、左右一対の支持部51Cにおいて、傾斜板511が前後方向に移動可能に支持されている。
【0100】
このような構成によれば、傾斜板511は、傾斜上端部510B回りに回動した石材6を支持面51Tにおいて支持したのち後方に移動することができるため、石材6を下部走行体10に近い位置に配置することで運搬時の油圧ショベル1の安定性を高めることができる。
【0101】
更に、本実施形態では、左右一対の支持部51Cが、規制部512をそれぞれ有している。規制部512は、前記第2回動動作によって傾斜板511に支持された石材6の第2稜線Qまたは第3面6Cに当接可能である。
【0102】
このような構成によれば、支持面51Tに支持された石材6が更に後方に移動することを阻止することができるため、石材6がキャブ13などの下部走行体10の一部に衝突することを防止することができる。
【0103】
また、本実施形態では、受け止め部に相当する先端傾斜部510が面状に構成されているため、
図8において、突起部513に基づいて設定される第1稜線Pの位置を共通化しつつ、異なる大きさの石材6であっても、先端傾斜部510によって第2面6Bを安定して受け止めることができる。すなわち、1辺の長さが互いに異なる複数サイズの石材6に対しても、これらの石材6を安定して支持し運搬することができる。
【0104】
また、本実施形態では、左右方向から見て、先端傾斜部510、傾斜上端部510Bおよび傾斜板511のそれぞれがクローラシュー102Bの外側に配置されるように、固定部51Sおよび補助固定部51Rが下部走行体10に固定されている。
【0105】
このような構成によれば、石材6を地面Gから傾斜板511の支持面51Tまで持ち上げる際および支持面51Tにおいて石材6を支持する際に、石材6とクローラシュー102Bとが接触することを防止することができる。
【0106】
また、本実施形態では、支持部51Cが左右方向から見て支持ローラー102Cの回転中心102C1よりも上方に配置されるように固定部51Sおよび補助固定部51Rが下部走行体10に固定されている。
【0107】
このような構成によれば、油圧ショベル1が支持装置5を備えない場合と比較して、油圧ショベル1のアプローチアングルが小さくなることを抑止し油圧ショベル1が坂道を安定して上り下りすることができる。
【0108】
また、本実施形態では、支持装置5が左右一対の支持部51Cを有する。このため、作業装置20のバケット23と左右一対の支持部51Cとによって、石材6を3点で支持することができるため、石材6を安定して支持面51Tまで持ち上げ運搬することができる。更に、バケット23の左右方向の位置をブーム支持部20Sに合わせることで、バケット23を頂点としてその左右両側で左右一対の支持部51Cが石材6を支持することが可能であるため、石材6を更に安定して支持面51Tまで持ち上げ運搬することができる。
【0109】
なお、
図23は、本発明と比較されるために油圧ショベル1Zがバケット23だけで石材6を運搬する様子を示す側面図である。このように、バケット23だけで石材6を支持する場合、作業装置20の各油圧シリンダの油圧性能上、油圧ショベル1Zの持上げ能力以下の質量の石材6しか持ち上げ、支持することができない。また、
図23の状態では、石材6がバケット23から落下しやすく、石材6が破損する危険性がある。また、
図1に示す状態において石材6が地面G上に配置されたまま、バケット23(作業装置20)を用いて石材6を転がしながら作業装置20が石材6を運搬する場合には、多くの運搬時間を要するとともに、石材6の外周面が常に地面に接触、衝突するため、同様に石材6が破損する危険性が高い。一方、本実施形態に係る支持装置5では、作業装置20(バケット23)と支持装置5とによって石材6を安定して支持しながら運搬することができる。このため、バケット23のみによって石材6を支持する場合と比較して、2倍以上の重量の石材6を支持することができる。また、支持装置5は、固定部51Sおよび補助固定部51Rにおいて下部走行体10に安定して固定されているため、石材6の落下が防止されるとともに、石材6を支持した状態において作業装置20の油圧シリンダに掛かる負荷を小さく抑えることができるため、油圧ショベル1の質量と同等の質量を備えた石材6を安定して支持、運搬することも可能となる。
【0110】
また、公知のドーザなどによって石材6を支持しようとする場合、ドーザは下部走行体10に揺動可能に支持されているため、石材6を安定して支持することができない。なお、本来ドーザは掘削作業などを踏まえて上向きの力(抗力)に強い設計がなされている一方、下向きの荷重を受けるような設計はなされていない。このため、ドーザを駆動するための油圧シリンダの動力によって石材6を支持しようしても、前記油圧シリンダの性能上、油圧ショベル1の半分程度の重量の石材6しか支持することはできない。この際、作業者は、バケット23を含む作業装置20に加え前記油圧シリンダを操作する必要があり、石材6の姿勢に充分な注意を払うことが困難となる。
【0111】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図15、
図16および
図17は、本実施形態に係る支持装置5が油圧ショベル1の下部走行体10に固定された様子を示す斜視図、正面図および側面図である。なお、本実施形態では、先の第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通する点の説明を省略する。
【0112】
本実施形態においても、支持装置5は、接続部50と、左右一対の支持腕51とを有する。各支持腕51は、支持部51Cと、固定部51Sとを有する。
【0113】
支持部51Cは、下側支持腕52(先端支持部)と、上側支持腕53(後方支持部)とを有する。下側支持腕52は、前後方向に延びる角柱形状を有する。上側支持腕53は、左右一対の板材53Aと、当該一対の板材53Aを接続する接続材53Bとを有する。
【0114】
下側支持腕52は、左右方向から見て下部走行体10のクローラユニット102よりも前方に突出するように配置される(
図17)。下側支持腕52は、先端上面部52Aと、先端角部52Bと、腕下面部52Mとを有する。先端角部52Bは、下側支持腕52の先端部かつ上端部に配置される角部であって、本発明の受け止め部および支点部を構成する。先端上面部52Aは、先端角部52Bから後方に延びる、下側支持腕52の上面部である。先端上面部52Aは、本発明の支持面を構成する。
【0115】
上側支持腕53は、下側支持腕52の後方部分に接続される。上側支持腕53は、案内部531(案内面)と、被当接部532とを有する。案内部531は、前方に向かって先下がりに傾斜する傾斜面である。案内部531は、案内上端部531Aと、案内下端部531Bとを有する。また、被当接部532は、案内部531の上方において上下方向に延びる壁面から構成される。被当接部532は、被当接上端部532Aと、被当接下端部532Bとを有する。
【0116】
また、被当接部532は、先端角部52Bの後方かつ上方に配置され、前記先端角部52Bとともに石材6の第2面6Bを受け止めることが可能である。この際、被当接部532は、石材6の第2稜線Qを受け止める。被当接部532は、本発明の補助受け止め部を構成する。
【0117】
更に、案内部531は、被当接部532と先端上面部52Aとを互いに接続する。案内部531は、先端角部52Bにおける石材6の回動に伴って石材6の第2稜線Qを先端上面部52Aに向かって案内する。案内部531および被当接部532は、案内上端部531Aおよび被当接下端部532Bを共有し、互いに接続されている。
【0118】
本実施形態においても、
図17に示すように、左右方向から見て、先端角部52B、先端上面部52A、案内部531および被当接部532は、クローラシュー102Bの外側に配置されている。
【0119】
図18乃至
図22は、本実施形態に係る支持装置5を備えた油圧ショベル1が石材6を支持する様子を示す工程図である。
【0120】
油圧ショベル1によって石材6を支持するにあたって、
図18に示すように、切り出された石材6が準備される(準備工程)。そして、油圧ショベル1の下部走行体10の前方において第1面6Aが地面G上に配置され第2面6Bが下部走行体10に対して間隔をおいて対向して配置されるように石材6が地面G上に設置される(運搬物設置工程)。
【0121】
次に、
図18に示すように、作業者が作業装置20を操作して駆動させバケット23の先端部を石材6の前側の側面(第2面6Bとは反対側の側面)の上端部に当接させ、第1稜線Pを支点として石材6を下部走行体10に近づくように後方に回動させる。この結果、
図19に示すように、左右一対の支持部51Cの先端角部52Bおよび被当接部532が石材6の第2面6Bを受け止める(受け止め工程)。
【0122】
図19に示すように、先端角部52Bおよび被当接部532が石材6を受け止めると、作業者は、
図20に示すように、バケット23の先端部を第1面6Aのうち第1稜線Pとは反対側の端部に移動させる。そして、石材6の第2面6Bが支持装置5の先端角部52B(支点部)を支点として左右方向に延びる回転中心軸回りに後方に回動するとともに第1稜線Pが地面Gから上方に離間するように、作業装置20のバケット23によって石材6を押し上げる(
図21)(押し上げ工程)。
【0123】
更に、作業者は、作業装置20を操作し、バケット23によって石材6の角部を後方に押し上げる(
図21)。この結果、被当接部532および案内部531が石材6の第2稜線Qを先端上面部52Aに向かって案内する。この際、第2面6Bのうち先端角部52B(支点部)と接触する部分は後方に移動する。やがて、
図22に示すように、押し上げられた石材6の第2面6Bを先端上面部52Aが受け止め、バケット23および先端上面部52A(支持面)によって石材6を前向きに回動しないように支持する(支持工程)。この際、
図22に示すように、支持部51Cの上側支持腕53が、石材6の第2稜線Qに当接することで、石材6が上側支持腕53よりも後方に移動することが阻止される。このため、石材6がキャブ13に衝突することが防止される。
【0124】
その後、作業者は、バケット23および支持装置5が石材6を支持した状態で下部走行体10を走行させ、石材6を運搬する(運搬工程)。
【0125】
以上のように、本実施形態においても、支持装置5は、石材6を先端角部52Bで受け止め、当該先端角部52B回りに回動可能に支持し、更に先端上面部52A(支持面51T)で支持することができる。このため、作業者は、石材6にワイヤーなどを装着する必要がなく、作業装置20を操作することによって石材6を地面Gから支持装置5の支持面51Tまで第1回動動作および第2回動動作によって順に持ち上げ、バケット23と協同して石材6を支持することができる。また、支持装置5の固定部51Sおよび補助固定部51Rが油圧ショベル1の下部走行体10に固定されているため、石材6のように大きな重量を有する重量ブロックであってもその重量を油圧ショベル1の下部走行体10で安定して受けとめることができる。この結果、油圧ショベル1のバケット23と支持装置5の支持面51Tとによって石材6を安定して支持しながら、石材6を運搬することができる。
【0126】
また、本実施形態に係る支持装置5では、先の第1実施形態に係る支持装置5と比較して、簡易な構造で石材6を支持することができる。また、本実施形態では、初期状態から回動された石材6を先端角部52Bによって支持するため、石材6の姿勢、角度が細かく管理される必要がない。
【0127】
また、本実施形態では、支持部51Cの下側支持腕52が、先端角部52Bと先端上面部52Aとを有している。
【0128】
このような構成によれば、石材6の第2面6Bを先端角部52Bで受け止め、当該先端角部52Bを支点として石材6を回動させることで先端上面部52Aにおいて速やかに支持することができる。このため、簡易な構造からなる下側支持腕52によって石材6を容易に支持することができる。
【0129】
また、本実施形態では、上側支持腕53が、被当接部532を有する。被当接部532は、先端角部52Bの後方かつ上方に配置され先端角部52Bとともに前記第1回動動作において石材6の第2面6Bを受け止めることが可能である。
【0130】
このような構成によれば、先端角部52Bに加えて被当接部532が第2面6Bを受け止めることができるため、受け止め時の衝撃を抑えることができる。
【0131】
更に、本実施形態では、上側支持腕53が、案内部531を有する。案内部531は、先端角部52Bを支点とする石材6の前記第2回動動作において石材6の第2稜線Qに当接し前記第2稜線Qを先端上面部52Aまで案内する。
【0132】
このような構成によれば、案内部531が石材6の第2稜線Qを支持しながら先端上面部52Aまで案内することができるため、当該案内部531が配置されない場合と比較して、石材6の第2面6Bが先端上面部52Aに着地する際に支持装置5に付与される衝撃を抑えることができる。
【0133】
なお、本実施形態では、下側支持腕52の高さよりも先端上面部52Aの前後方向の長さが大きく設定されているため、先端上面部52Aが石材6を安定して支持することができる。
【0134】
そして、上記のような第1実施形態および第2実施形態に係る石材6の運搬方法は、石材6を準備する準備工程と、石材6を下部走行体10の前方に設置する運搬物設置工程と、石材6を先端傾斜部510または先端角部52B(いずれも受け止め部)によって受け止める受け止め工程と、傾斜上端部510Bまたは先端角部52B(いずれも支点部)を支点として石材6を押し上げる押し上げ工程と、押し上げられた石材6を傾斜板511(支持面51T)または先端上面部52Aで支持する支持工程と、バケット23および支持装置5によって石材6を支持した状態で、下部走行体10を走行させる運搬工程と、を備える。
【0135】
このような方法によれば、受け止め工程において石材6を受け止め部で受け止めるとともに、押し上げ工程において石材6を各支点部回りに回動させることによって、支持工程において石材6を各支持面で支持することができる。このため、作業者は、石材6にワイヤーなどを装着する必要がなく、作業装置20を操作することによって石材6を地面Gから支持装置5の各支持面まで順に持ち上げ、支持することができる。また、支持装置5が油圧ショベル1の下部走行体10に固定されているため、石材のように大きな重量を有する重量ブロックであってもその重量を油圧ショベル1の下部走行体10で安定して受けとめることができる。この結果、作業装置20のバケット23と支持装置5の各支持面とによって石材6を安定して支持しながら、運搬工程において石材6を運搬することができる。
【0136】
なお、前記受け止め工程は、支持装置5の先端傾斜部510に設けられ前方に向かって先下がりに傾斜した傾斜面51Gによって石材6の第2面6Bを受け止めることを含むことが望ましい。
【0137】
このような方法によれば、運搬物設置工程において石材6の第1稜線Pと支持装置5の先端傾斜部510または先端角部52Bとの距離がばらついても、受け止め工程において傾斜面51Gが石材6を安定して受け止めることができる。また、石材6の第2面6Bの長さが互いに異なる複数のサイズの石材6に対しても、受け止め工程において傾斜面51Gが各石材6を安定して受け止めることができる。
【0138】
また、前記受け止め工程は、石材6の重心6Gが第1稜線Pよりも後方に位置するような石材6の姿勢において、傾斜面51Gが第2面6Bを受け止めることを含むことが望ましい。
【0139】
このような方法によれば、受け止め工程において、傾斜面51Gが石材6の第2面6Bを受け止めたのちに、石材6が傾斜面51Gから離れるように前方に転動することを抑止することができる。
【0140】
更に、運搬物設置工程は、キャブ13に搭乗した作業者から見て支持装置5に左右方向に間隔をおいて設けられた複数の突起部513と石材6の第1稜線Pとが重なるように、石材6を地面G上に設置することを含むことが望ましい。
【0141】
このような方法によれば、作業者は複数の突起部513に合わせて石材6と油圧ショベル1との相対位置を容易に設定することが可能となる。
【0142】
以上、本発明の実施形態に係る支持装置5、油圧ショベル1および重量ブロック(石材6)の運搬方法について説明した。このような油圧ショベル1によれば、作業者は、石材6にワイヤーなどを装着する必要がなく、作業装置20を操作することによって石材6を地面Gから支持装置5の支持面51Tまで順に持ち上げ、支持することができる。また、支持装置5の固定部51Sおよび補助固定部51Rが油圧ショベル1の下部走行体10に固定されているため、石材6のように大きな重量を有する重量ブロックであってもその重量を油圧ショベル1の下部走行体10で安定して受けとめることができる。この結果、作業装置20のバケット23と支持装置5の支持面51Tとによって石材6を安定して支持しながら、油圧ショベル1によって石材6を運搬することができる。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明は、例えば以下のような変形実施形態を取ることができる。
【0143】
(1)上記の実施形態では、作業機械として油圧ショベル100を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る作業機械は油圧ショベル以外の構造からなるものでもよい。特に、作業装置20の先端部に配置される作業部材はバケット23に限定されるものではなく、石材6などの重量ブロックを押圧可能な部材であればよい。また、本発明に係る上部本体は下部走行体10に対して旋回しない態様でもよい。この場合、上部本体の前後方向と下部走行体10の前後方向とは互いに合致する。
【0144】
(2)支持装置5は、左右一対の支持腕51(支持部51C)を有する態様にて説明したが、一つの支持腕51を有する態様でもよい。この場合、左右一対のクローラユニット102の間において、
図3の支持腕51よりも左右方向に大きな幅を有する支持腕51が配置されることが望ましい。また、支持腕51は、3つ以上配置されてもよい。
【0145】
(3)先の第1実施形態では、左右一対の支持部51Cが傾斜板511を有する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。支持部51Cの一対の板材上面部51A1が本発明の第2傾斜面および支持面を構成し、石材6の第2面6Bを直接支持する態様でもよい。
【0146】
また、このような構成においても、板材上面部51A1は先端傾斜部510(傾斜面51G)よりも浅い角度に設定されているため、傾斜上端部510Bを支点として回動された石材6の第2面6Bを各支持部51Cの板材上面部51A1が安定して支持することができるとともに、石材6が板材上面部51A1から前方にずれ落ちることを防止することができる。
【0147】
換言すれば、支持面51Tが水平面または後方に向かって先下がりの平面からなる場合と比較して、板材上面部51A1が傾斜上端部510B回りに回動した石材6を受け止める際の衝撃を小さくすることができるとともに、支持装置5から石材6を容易に下ろすことができる。また、板材上面部51A1(支持面51T)の傾斜角度が先端傾斜部510(傾斜面51G)の傾斜角度よりも小さく設定されているため、運搬時に傾斜面51Gが石材6を支持する場合と比較して、石材6が前方に滑落する力を減ずることができる。
【0148】
また、このような構成においては、傾斜上端部510Bが、先端傾斜部510と板材上面部51A1とを接続する接続稜線として機能するとともに、石材6を回動可能に支持する支点部として機能する。このため、石材6の第2面6Bを受け止める傾斜面(第1傾斜面)と支持する傾斜面(第2傾斜面)との間の稜線を利用して石材6を回動させることができるため、簡易な構造からなる支持部51Cによって、石材6を持ち上げ、支持することが可能となる。また、板材上面部51A1によって形成される支持面51Tが傾斜上端部510Bに接続されているため、傾斜上端部510Bを支点として回動した石材6の第2面6Bを支持面51Tによって速やかに支持することができる。
【0149】
(4)第1実施形態において、傾斜面51Gは平面からなる態様にて説明したが、傾斜面51Gは上方に凸状の湾曲面でもよい。
【0150】
(5)上記の実施形態では、固定部51Sおよび左右一対の補助固定部51Rにおいて支持装置5が下部走行体10に固定、支持される態様にて説明したが、固定部51Sまたは左右一対の補助固定部51Rのみによって支持装置5が下部走行体10に固定される態様でもよい。
【0151】
(6)上記の各実施形態では、石材6を持ち上げ、支持する工程において、バケット23の先端部を移動させて石材6に接触する部分を変更する態様にて説明したが、石材6のうち常に同じ部分にバケット23の先端部が接触してもよいし、更に異なる部分にバケット23が接触してもよい。
【0152】
(7)また、上記の各実施形態では、キャブ13内に作業者が搭乗した状態で、油圧ショベル1が石材6を支持、運搬する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。油圧ショベル1が遠隔で操作され、石材6を支持、運搬する態様でもよい。この場合、キャブ13には作業者の視点に対応するカメラ(撮像装置)が配置され、油圧ショベル1を遠隔で操作する作業者が前記カメラの画像を見ながら操作することが望ましい。特に、前記カメラ画像に基づいて左右一対の突起部513が石材6の第1稜線Pに重なるように、作業者が遠隔操作で下部走行体10や石材6の前後方向の位置を調整することが望ましい。この場合も、作業者は、左右一対の突起部513と第1稜線Pの左右方向における相対位置とを調整することで、支持装置5の左右一対の支持腕51が石材6を均等に支持できるように設定することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 油圧ショベル(作業機械)
10 下部走行体(機体)
101 カーボディ
101S 旋回部
102 クローラユニット
102A クローラフレーム
102A1 フレームリブ
102B クローラシュー
102C 支持ローラー
101C1 ローラー回転中心
12 上部旋回体(機体)
121 旋回フレーム
13 キャブ
1S 機体
20 作業装置
20S ブーム支持部(起伏体支持部)
21 ブーム
22 アーム
23 バケット
5 支持装置
50 接続部
51 支持腕
510 先端傾斜部(受け止め部)
510A 傾斜下端部
510B 傾斜上端部(支点部、接続稜線)
511 傾斜板(第2傾斜面、移動部材)
512 規制部(当接部)
513 突起部(位置指標部)
51A 板材
51A1 板材上面部(第2傾斜面)
51B 接続材
51B1 接続材上面部(第2傾斜面)
51C 支持部
51G 傾斜面(第1傾斜面)
51M 腕下面部
51R 補助固定部(固定部)
51S 固定部
51T 支持面
51V 縦板
51W 横板
52 下側支持腕(先端支持部)
52A 先端上面部(支持面)
52B 先端角部(受け止め部、支点部)
52M 腕下面部
53 上側支持腕(後方支持部)
531 案内部(案内面)
532 被当接部(補助受け止め部)
6 石材(重量ブロック)
6A 第1面(第1外側面)
6B 第2面(第2外側面)
6C第3面(第3外側面)
6G 重心
G 地面(走行面)
GL 重心距離
H 地上高さ
P 第1稜線
Q 第2稜線