(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/20 20060101AFI20240806BHJP
B60W 10/11 20120101ALI20240806BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240806BHJP
B60W 10/00 20060101ALI20240806BHJP
B60W 30/14 20060101ALI20240806BHJP
F02D 13/06 20060101ALI20240806BHJP
F16H 61/21 20060101ALI20240806BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20240806BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20240806BHJP
F16H 59/54 20060101ALI20240806BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20240806BHJP
【FI】
B60W30/20
B60W10/11
B60W10/06
B60W10/00 148
B60W30/14
F02D13/06 B
F16H61/21
F16H61/02
F16H63/50
F16H59/54
B60W10/18
(21)【出願番号】P 2020181520
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野並 誠典
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121679(JP,A)
【文献】特開2016-88179(JP,A)
【文献】特開2012-47054(JP,A)
【文献】特開2005-162175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
F02D 13/00-28/00
F16H 59/00-61/12
F16H 61/16-61/24
F16H 61/66-61/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び有段変速機を含むパワートレインとブレーキとを制御することにより実車速を目標車速に自動的に維持する運転支援を行う車両制御装置であって、
前記パワートレインによる制駆動力と前記ブレーキによる制動力との合計が要求制駆動力となるように、前記有段変速機のギヤ段を所定のギヤ段に制御して前記エンジンのフューエルカットを実行し且つ前記ブレーキによる制動力を発生させている場合に、仮に前記所定のギヤ段からダウンシフトしたダウンシフト後ギヤ段でのフューエルカットの実行による前記パワートレインの制駆動力が、前記要求制駆動力よりも低いと予測できる場合には、前記所定のギヤ段で前記ブレーキの作動が継続している時間が所定の上限時間以上となった場合に、前記所定のギヤ段から前記ダウンシフト後ギヤ段へのダウンシフトを行う
とともに前記ブレーキを作動させずに燃料噴射を再開させ、
前記上限時間は、前記所定のギヤ段でのフューエルカットの実行中に前記ブレーキによる制動力を発生させた際に振動が生じる時間に対して所定のマージン分だけ短い時間に設定されており、
前記所定のギヤ段で前記ブレーキの作動が継続している状態での前記ブレーキによる制動力が増大するほど、前記上限時間は徐々に又は段階的に短くなるように規定されている、車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ACC(Adaptive Cruise Control)、ASL(Adjustable Speed Limiter)、CRC(Cruise Control System)等の、実車速を目標車速に自動的に維持する運転支援技術が知られている。このような運転支援では、実車速を目標車速に維持するためにパワートレインによる制駆動力やブレーキによる制動力が制御される。例えば車両が降坂路を走行中では、目標車速を維持するための要求制駆動力が、所定のギヤ段でエンジンのフューエルカットを実行した場合でのパワートレインによる制駆動力よりも低い場合には、パワートレインによる制駆動力とブレーキによる制動力との合計が要求制駆動力となるようにブレーキを作動させる。また、要求制駆動力が更に低下して、仮に現在のギヤ段よりもダウンシフトしたギヤ段でのフューエルカットによる制駆動力よりも低下すると予測した場合には、フューエルカットを継続しつつギヤ段のダウンシフトが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように車両が降坂路を走行中では、ブレーキの作動が継続して実車速が目標車速に維持されるが、要求制駆動力がダウンシフト後のギヤ段でのフューエルカットによる制駆動力よりも低下しない場合には、ダウンシフトは行われずにブレーキが作動した状態が長時間継続する。これにより、振動が発生するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、実車速を目標車速に自動的に維持する運転支援中に、ブレーキが作動した状態が長時間継続することを抑制する車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、エンジン及び有段変速機を含むパワートレインとブレーキとを制御することにより実車速を目標車速に自動的に維持する運転支援を行う車両制御装置であって、前記パワートレインによる制駆動力と前記ブレーキによる制動力との合計が要求制駆動力となるように、前記有段変速機のギヤ段を所定のギヤ段に制御して前記エンジンのフューエルカットを実行し且つ前記ブレーキによる制動力を発生させている場合に、仮に前記所定のギヤ段からダウンシフトしたダウンシフト後ギヤ段でのフューエルカットの実行による前記パワートレインの制駆動力が、前記要求制駆動力よりも低いと予測できる場合には、前記所定のギヤ段で前記ブレーキの作動が継続している時間が所定の上限時間以上となった場合に、前記所定のギヤ段から前記ダウンシフト後ギヤ段へのダウンシフトを行うとともに前記ブレーキを作動させずに燃料噴射を再開させ、前記上限時間は、前記所定のギヤ段でのフューエルカットの実行中に前記ブレーキによる制動力を発生させた際に振動が生じる時間に対して所定のマージン分だけ短い時間に設定されており、前記所定のギヤ段で前記ブレーキの作動が継続している状態での前記ブレーキによる制動力が増大するほど、前記上限時間は徐々に又は段階的に短くなるように規定されている、車両制御装置によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実車速を目標車速に維持する運転支援中に、ブレーキが作動した状態が長時間継続することを抑制する車両制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両の機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、車両制御装置が実行する制駆動力制御を示したフローチャートの一例である。
【
図3】
図3は、車両制御装置が実行する制駆動力制御を示したフローチャートの一例である。
【
図4】
図4は、ブレーキ制動力に対応した上限時間を規定したマップである。
【
図5】
図5は、要求制駆動力がダウンシフト後のフューエルカット制駆動力よりも低下することによりダウンシフトが実行される場合のタイミングチャートの一例である。
【
図6】
図6は、ブレーキ継続時間が上限時間以上となることによりダウンシフトが実行される場合のタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[車両の概略構成]
図1は、本実施形態に係る車両の機能ブロック図である。車両には、車両制御装置1、パワートレイン50、及びブレーキ60が搭載されている。パワートレイン50は、有段変速機51、及びエンジン52を含む。有段変速機51は、複数のギヤ段が選択的に切換えられる有段式の自動変速機であり、たとえば前進8段、後退1段、及びニュートラルのいずれかが選択され、各ギヤ段の変速比に応じた速度変換が行なわれる。エンジン52は、ガソリン等を燃料とする内燃機関であって燃料の燃焼により制駆動力を発生させる車両の動力源である。
【0010】
車両制御装置1は、要求加速度算出部10、制駆動力制御部20、パワートレイン制御部30、及びブレーキ制御部40を含む。車両制御装置1は、内部にプログラムや各種マップを格納するメモリやマイクロコンピュータを内蔵するECU(Electronic Control Unit)であり、このECUによって制御ブロックの機能が実現される。要求加速度算出部10、制駆動力制御部20、パワートレイン制御部30、及びブレーキ制御部40は、別々のECUで実現されても良いが、これらの境界はこれに限定されない。要求加速度算出部10、制駆動力制御部20、パワートレイン制御部30、及びブレーキ制御部40は、
図1とは異なる境界を有する一つまたは複数のECUで実現されていてもよい。
【0011】
要求加速度算出部10は、ACC等の目標車速を実現、維持する機能を有する運転支援装置に設けられる。要求加速度算出部10は、車速センサ、カメラ等から取得する車両及び車両の周囲の状態を表す情報やあらかじめ設定された情報に基づいて、目標車速を設定し、実車速を目標車速に維持するための制御情報として、車両に発生させる加速度である要求加速度を算出する。
【0012】
制駆動力制御部20は、要求加速度算出部10からの要求として上述の要求加速度を受け付け、要求加速度を車両に発生させる力に換算して要求制駆動力を算出する。要求制駆動力は、例えば車両の進行方向を正の向きとする値で表される。要求制駆動力は、例えば、要求加速度、予め設定された車両の重量に基づいて算出することができる。また、算出にあたり、車速センサ等から取得した実車速に基づくフィードバックや、各種センサから取得した路面の傾斜等に基づく補正等の演算をしてもよい。また、制駆動力制御部20は、要求制駆動力に基づいて、パワートレイン制御部30に制動力または駆動力である制駆動力を要求し、あるいはさらに、ブレーキ制御部40に制動力を要求する。
【0013】
パワートレイン制御部30は、パワートレイン50を制御して制駆動力を発生させることができる。パワートレイン制御部30は、制動力を発生させる場合は、エンジン52の温度や有段変速機51のギヤ段等のパワートレイン50の各種状態や制動力の値に応じてエンジン52のフューエルカットを実行することができる。
【0014】
パワートレイン制御部30は、パワートレイン50の各種状態を監視し、これに基づいて有段変速機51の現在のギヤ段及び現在のギヤ段からダウンシフトしたギヤ段のそれぞれにおいて、パワートレイン50がエンジン52のフューエルカットの実行時に発生させる制駆動力であるフューエルカット制駆動力を算出する。また、パワートレイン制御部30は、要求された制駆動力に応じて、有段変速機51のギヤ段の変更やエンジン52のフューエルカットを行うか否か等、パワートレイン50の制御内容を決定し、制駆動力を発生させる。
【0015】
ブレーキ制御部40は、車両が備えるブレーキ60を制御して車輪に制動力を発生させる。
【0016】
[制駆動力制御]
図2及び
図3は、車両制御装置1が実行する制駆動力制御を示したフローチャートの一例である。
図2及び
図3に示すフローチャートは、ACCのような運転支援中に、車両が例えば降坂路を走行して、目標車速を維持するために車両に発生させる制駆動力が徐々に小さくなっていく場合に、繰り返し実行される。最初に、
図2に示すフローチャートについて説明する。
【0017】
要求加速度算出部10は、上述のように要求加速度を算出する(ステップS1)。制駆動力制御部20は、要求加速度に基づいて、上述のように要求制駆動力を算出する(ステップS2)。パワートレイン制御部30は、有段変速機51の現在のギヤ段におけるフューエルカット制駆動力を算出する(ステップS3)。尚、フューエルカット制駆動力は、フューエルカットを実行した場合でのエンジン52の制駆動力の最小値である。
【0018】
パワートレイン制御部30は、要求制駆動力がステップS3で算出されたフューエルカット制駆動力よりも低いか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4でYesの場合、ブレーキ制御部40はフューエルカット制駆動力とブレーキ制動力との合計が要求制駆動力となるように、ブレーキ制動力を算出する(ステップS5)。次にパワートレイン制御部30は、エンジン52にフューエルカットを実行し、ブレーキ制御部40はブレーキ制動力をブレーキ60に発生させる(ステップS6)。次にブレーキ制御部40は、詳しくは後述するが、ブレーキ制動力をブレーキ60に発生させてからの継続時間のカウントを開始する(ステップS7)。
【0019】
ステップS4でNoの場合には、パワートレイン制御部30はパワートレイン50に要求制駆動力を発生させる(ステップS8)。この場合、要求制駆動力とフューエルカット制駆動力とがほぼ同じ場合には、パワートレイン制御部30はエンジン52にフューエルカットを実行させ、要求制駆動力がフューエルカット制駆動力よりも大きい場合には、エンジン52に燃料噴射を開始させて駆動させる。いずれの場合も、ステップS4でNoの場合にはブレーキ制御部40はブレーキ60を作動させない。
【0020】
このようにして、車両の制駆動力を要求制駆動力に追従させることができ、車速を目標車速に維持させることができる。
【0021】
次に、
図3に示すように、パワートレイン制御部30は、有段変速機51の現在のギヤ段からダウンシフト後のギヤ段におけるフューエルカット制駆動力を算出する(ステップS11)。
【0022】
パワートレイン制御部30は、要求制駆動力が、ステップ11で算出されたダウンシフト後のギヤ段でのフューエルカット制駆動力から所定の制駆動力αを減算した値よりも低いか否かを判定する(ステップS12)。ここで、所定の制駆動力αはゼロより大きい値であるが、ゼロであってもよい。また、所定の制駆動力αは、ダウンシフト後のギヤ段によらずに一定の値であってもよいし、ダウンシフト後のギヤ段に応じて異なる値であってもよい。ステップS12でYesの場合、パワートレイン制御部30は有段変速機51のギヤ段のダウンシフトを実行する(ステップS13)。
【0023】
ステップS12でNoの場合、ブレーキ制御部40はステップS7でカウントを開始したブレーキ継続時間が上限時間β以上となったか否かを判定する(ステップS14)。ここで、上限時間βは、ブレーキ制動力によって異なる。
図4は、ブレーキ制動力に対応した上限時間βを規定したマップである。横軸がブレーキ制動力[N]を示し、縦軸は上限時間β[ms]を示している。
図4の例では、ブレーキ制動力が0から所定値まで、上限時間βは最も長い一定値に規定され、ブレーキ制動力が増大するほど上限時間βは短くなるように規定され、その後ブレーキ制動力が増大しても上限時間βは最も短い一定値に規定されている。上限時間βは、フューエルカットの実行中にブレーキ60にブレーキ制動力を発生させた際に振動が生じる時間に対して所定のマージン分だけ短い時間に設定されている。
図4のマップは、予め実験により取得されブレーキ制御部40のメモリに記憶されている。尚、上限時間βは
図4のマップに限定されず、例えばブレーキ制動力が増大するほどに上限時間βが徐々に、又は段階的に短くなるように規定してもよい。また、このようなマップではなく、ブレーキ制動力を引数とした演算式により上限時間βを算出してもよい。
【0024】
ステップS14でNoの場合には本制御は終了する。尚、上述したステップS4でNoと判定されてステップS8が実行され、ステップS7が実行されずにブレーキ継続時間がカウントされていない場合には、本ステップS14ではNoと判定される。
【0025】
ステップS14でYesの場合には、ブレーキ60の作動の継続によって振動が発生する可能性が高くなっているものとみなして、パワートレイン制御部30は有段変速機51にダウンシフトを実行させる(ステップS13)。
【0026】
ここで、ステップS12でNoの場合には、要求制駆動力がダウンシフト後のフューエルカット制駆動力よりも大きい場合と、要求制駆動力がダウンシフト後のフューエルカット制駆動力よりも所定の制駆動力α以下の値の分だけ小さい場合とが含まれる。要求制駆動力がダウンシフト後のフューエルカット制駆動力よりも大きい場合には、ダウンシフト後にエンジン52はフューエルカットから復帰して燃焼が開始され、ブレーキ60の作動は解除される。要求制駆動力がダウンシフト後のフューエルカット制駆動力よりも所定の制駆動力α以下の値の分だけ小さい場合には、ダウンシフト後にフューエルカットは継続され、ブレーキ制動力はダウンシフト前よりも小さい値に制御されてブレーキ60の作動が継続される。この場合、ブレーキ継続時間のカウントは継続され、再度小さい値に制御されたブレーキ制動力に対応した上限時間βに基づいて、再度ダウンシフトが行われ得る。
【0027】
上述したようにステップS12でNoの場合には、フューエルカットが継続されて燃費の向上は確保されているが、ブレーキ60の作動が継続してこれにより振動が発生するおそれがある。このため本実施例では、ブレーキ継続時間が上限時間β以上となった場合にダウンシフトを行うことにより、燃費の向上と振動の抑制との両立を図っている。
【0028】
図5は、要求制駆動力がダウンシフト後のフューエルカット制駆動力よりも低下することによりダウンシフトが実行される場合のタイミングチャートの一例である。
図5には、車両が走行中の道路の勾配、実車速、目標車速、要求制駆動力、フューエルカット制駆動力、有段変速機51のギヤ段、の推移を示している。実車速を実線で示し、目標車速は点線で示し、要求制駆動力は太線で示し、フューエルカット制駆動力は細線で示している。
【0029】
図5に示す例では、時刻T0で、車両が走行中の道路が降坂路となり、以降、登りを正として表した勾配が徐々に小さくなり(くだりの傾斜が大きくなり)、実車速を目標車速に維持するための要求制駆動力は徐々に小さくなる場合を示している。尚、
図5には、一例としてこれらを一定値で表したが、実際には運転支援装置の動作やパワートレイン50の状態によって変動することがある。これらの値が変動する場合であっても同様の処理が可能である。
【0030】
時刻T0では、有段変速機51のギヤ段は一例として7速に制御されている。時刻T1以前では、パワートレイン制御部30が有段変速機51のギヤ段を現在のギヤ段(7速)にしたまま、エンジン52のフューエルカットを実行せずにパワートレイン50に要求制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40はブレーキ60に制動力を発生させない(ステップS8)。
【0031】
時刻T1では、パワートレイン制御部30は有段変速機51のギヤ段を現在のギヤ段(7速)にしたまま、エンジン52のフューエルカットを実行し、パワートレイン50に現在のギヤ段(7速)のフューエルカット制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40は、ブレーキ60に制動力を発生させない(ステップS8)。
【0032】
時刻T1以降で要求制駆動力が、ギヤ段が7速である場合のフューエルカット制駆動力以下となると、パワートレイン制御部30はエンジン52においてフューエルカットを継続しつつ、ブレーキ制御部40はブレーキ60に要求制駆動力と現在のギヤ段(7速)のフューエルカット制駆動力との差に相当する制動力を発生させる(ステップS6)。
図5では、要求制駆動力がフューエルカット制駆動力よりも低くなっているハッチングを施した領域が、ブレーキ制動力に相当する。
ブレーキ60の作動が継続される。
【0033】
時刻T2以降では、要求制駆動力が、ギヤ段が6速である場合のフューエルカット制駆動力から所定の制駆動力αを減算した値よりも低くなり(ステップS12でYes)、パワートレイン制御部30は有段変速機51のダウンシフトを実行する(ステップS13)。
【0034】
また、時刻T2以降では、要求制駆動力が、現在のギヤ段(6速)からダウンシフトしたギヤ段(5速)のフューエルカット制駆動力から所定の制駆動力αを減算した値以上の間は(ステップS12でNo)、パワートレイン制御部30は有段変速機51のギヤ段を現在のギヤ段(6速)にしたまま、エンジン52でフューエルカットを実行して現在のギヤ段(6速)のフューエルカット制駆動力を発生させ、ブレーキ制御部40はブレーキ60に要求制駆動力と現在のギヤ段のフューエルカット制駆動力との差に相当する制動力を発生させる(ステップS6)。
【0035】
その後も、要求制駆動力が徐々に小さくなっていくと、フューエルカットの実行が継続した状態で、ダウンシフトが繰り返され、フューエルカットやブレーキ60の作動が継続され得る。
【0036】
尚、パワートレイン制御部30は、現在のギヤ段から2以上の複数段階ダウンシフトしたギヤ段におけるフューエルカット制駆動力も算出できるようにしておき、要求制駆動力が急峻に減少した場合、フューエルカットの実行が継続でき、またパワートレイン50が発生させるフューエルカット制駆動力とブレーキ60の制動力との合計である実制駆動力が要求制駆動力に一致するようにブレーキ60の制動力を発生させることができれば、有段変速機51を2段階以上ダウンシフトしてもよい。
【0037】
図6は、ブレーキ継続時間が上限時間β以上となることによりダウンシフトが実行される場合のタイミングチャートの一例である。
図6には、
図5と同様に、車両が走行中の道路の勾配、実車速、目標車速、要求制駆動力、フューエルカット制駆動力、有段変速機51のギヤ段、の推移を示している。
【0038】
図6に示す例では、時刻T01で、車両が走行中の道路が降坂路となり、以降、登りを正として表した勾配が徐々に小さくなり(くだりの傾斜が大きくなり)、目標車速実現のための要求制駆動力が徐々に小さくなる。時刻T01において、有段変速機51のギヤ段は一例として7速である。時刻T11で、要求制駆動力が、ギヤ段が7速である場合のフューエルカット制駆動力に等しくなる。その後、時刻T21で、時刻T11からの継続時間が上限時間βとなって、パワートレイン制御部30は有段変速機51のダウンシフトを実行する。
図6には、一例としてこれらを一定値で表したが、これらの値が変動する場合であっても同様の処理が可能である。
【0039】
時刻T11の時、時刻T11~時刻T21の期間については、それぞれ、
図5に示した時刻T1の時、時刻T1~時刻T2の期間と同様の処理が行われる。
【0040】
時刻T21付近では、
図5に示した時刻T2付近と異なり、勾配が小さくなっていない。従って、時刻T21では、要求制駆動力は、ダウンシフト後のフューエルカット制駆動力よりも低くなっていないが(ステップS12でNo)、ブレーキ60が作動を開始した時刻T11からの継続時間が上限時間βを超え(ステップS14でYes)、パワートレイン制御部30は有段変速機51のダウンシフトを実行する(ステップS13)。
【0041】
また、時刻T21以降ではフューエルカット制駆動力は要求制駆動力よりも低くなるため(ステップS4でNo)、パワートレイン制御部30はエンジン52での燃料噴射を再開してフューエルカットから復帰させ、ブレーキ制御部40はブレーキ60を作動させない(ステップS8)。以上により、ブレーキ60が長時間継続して作動することによる振動の発生を抑制することができる。
【0042】
上記実施例では、パワートレイン制御部30がパワートレイン50に発生させる制駆動力を決定したが、これに限定されず、制駆動力制御部20がパワートレイン50に発生させる制駆動力を決定してもよい。
【0043】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両制御装置
10 要求加速度算出部
20 制駆動力制御部
30 パワートレイン制御部
40 ブレーキ制御部
50 パワートレイン
51 有段変速機
52 エンジン
60 ブレーキ