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特許7533131表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20240806BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240806BHJP
   G02B 30/26 20200101ALI20240806BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20240806BHJP
   G09G 5/377 20060101ALI20240806BHJP
   G09G 5/02 20060101ALI20240806BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20240806BHJP
   G09G 5/38 20060101ALI20240806BHJP
   G09G 5/373 20060101ALI20240806BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240806BHJP
   H04N 13/125 20180101ALI20240806BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20240806BHJP
   H04N 13/363 20180101ALI20240806BHJP
   H04N 13/305 20180101ALI20240806BHJP
   H04N 13/31 20180101ALI20240806BHJP
   H04N 13/324 20180101ALI20240806BHJP
【FI】
G09G5/00 510A
G02B27/01
G02B30/26
G09G5/36 500
G09G5/377 100
G09G5/02 B
G09G5/37 300
G09G5/38
G09G5/00 550C
G09G5/00 530T
G09G5/373 200
G09G5/37 110
G09G5/00 550X
B60K35/23
H04N13/125
H04N13/346
H04N13/363
H04N13/305
H04N13/31
H04N13/324
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020182672
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072954
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016207268(DE,A1)
【文献】特開2014-050062(JP,A)
【文献】特開2018-185439(JP,A)
【文献】特開2011-082829(JP,A)
【文献】特開2019-054513(JP,A)
【文献】特開2002-095010(JP,A)
【文献】特開平08-331600(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0070665(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226965(US,A1)
【文献】特表2010-521081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0320599(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K35/00-37/20
G02B27/00-30/60
G09G5/00-5/42
H04N13/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置(30)であって、
1つ又は複数のプロセッサ(33)と、
メモリ(37)と、
前記メモリ(37)に格納され、前記1つ又は複数のプロセッサ(33)によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記観察者の左右の各目に、視差を有する左視点画像(V10)及び右視点画像(V20)を視認させることで、奥行き表現を付加したコンテンツ画像(FU)として表示する3D表示処理と、
前記コンテンツ画像(FU)の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない1つ又は複数のグロー画像(G)を表示するグロー表示処理と、を実行し、
前記3D表示処理は、
横方向に第1の長さ(αf1)を有し、観察者から第1の距離(D31)だけ離れた位置に視認される第1のコンテンツ画像(FU1)を表示させる処理、及び、
横方向に前記第1の長さ(αf1)より短い第2の長さ(αf2)を有し、前記第1の距離(D31)より長い第2の距離(32)だけ離れた位置に視認される第2のコンテンツ画像(FU2)と、を表示させる処理、を含み、
前記グロー表示処理は、
左端と右端との間に第3の長さ(αg1)を有し、前記第1のコンテンツ画像(FU1)の左右方向に表示される第1のグロー画像(G1)を表示させる処理、
左端と右端との間に第4の長さ(αg2)を有し、前記第2のコンテンツ画像(FU2)の左右方向に表示される第2のグロー画像(G2)を表示させる処理、及び、
前記第2の長さ(αf2)に対する前記第4の長さαg2の比率が、前記第1の長さ(αf1)に対する前記第3の長さ(αg1)の比率より大きくなる(αg2/αf2>αg1/αf1)ように、前記グロー画像(G)の左端と右端との間の長さを設定する処理、を含む
示制御装置(30)。
【請求項2】
画像を被投影部材に投影することで、観察者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置(30)であって、
1つ又は複数のプロセッサ(33)と、
メモリ(37)と、
前記メモリ(37)に格納され、前記1つ又は複数のプロセッサ(33)によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記プロセッサ(33)は、
前記観察者の左右の各目に、視差を有する左視点画像(V10)及び右視点画像(V20)を視認させることで、奥行き表現を付加したコンテンツ画像(FU)として表示する3D表示処理と、
前記コンテンツ画像(FU)の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない1つ又は複数のグロー画像(G)を表示するグロー表示処理と、を実行し、
前記観察者の目又は頭部の位置を示す情報、又は前記目又は頭部の位置を推定可能な情報を取得し、前記目又は頭部が特定の状態であるか否かの判定処理、及び、
前記目又は頭部の位置が特定状態ではないと判定された場合、前記グロー画像(G)を第1の表示態様で表示させ、前記目又は頭部の位置が特定状態であると判定された場合、前記グロー画像(G)を第2の表示態様で表示させる、表示切り替え処理、をさらに実行し、
前記第1の表示態様は、前記第2の表示態様と比較してサイズを小さくすること、彩度を低くすること、サイズを小さくしつつ彩度を低くすること、又は非表示にすること、を含む
示制御装置(30)。
【請求項3】
前記メモリ(37)は、クロストークが生じる領域、又はクロストークの影響が所定値より大きい領域を、クロストーク領域(EC)として記憶し、
前記特定の状態は、前記目又は頭部の位置が前記クロストーク領域(EC)内で検出されること及び/又は、前記目又は頭部の位置が前記クロストーク領域(EC)内に入ると予測されること、を含む、
請求項に記載の表示制御装置(30)。
【請求項4】
前記判定処理は、前記目又は頭部の移動速度が所定の値以上である場合、前記目又は頭部の位置が前記クロストーク領域(EC)内に入ると予測する、
請求項に記載の表示制御装置(30)。
【請求項5】
前記判定処理は、前記観察者の左目及び/又は右目が前記特定状態にあるか判定する処理を含み、
前記表示切り替え処理は、
前記左目のみが前記特定状態であると判定される場合、前記左視点画像(V10)の左右方向に付加する前記グロー画像を前記第2の表示態様に設定し、前記右視点画像(V20)の左右方向に付加する前記グロー画像を第1の表示態様に設定すること、
前記右目のみが前記特定状態であると判定される場合、前記左視点画像(V10)の左右方向に付加する前記グロー画像を前記第1の表示態様に設定し、前記右視点画像(V20)の左右方向に付加する前記グロー画像を第2の表示態様に設定すること、を含む、
請求項に記載の表示制御装置(30)。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の表示制御装置(30)と、
表示光を出射する光変調素子(50)と、
前記光変調素子(50)からの前記表示光を被投影部にむけるリレー光学系(80)と、を備える、ヘッドアップディスプレイ装置(20)。
【請求項7】
画像の表示制御方法であって、
観察者の左右の各目に、視差を有する左視点画像(V10)及び右視点画像(V20)を視認させることで、奥行き表現を付加したコンテンツ画像(FU)として表示する3D表示処理と、
前記コンテンツ画像(FU)の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない1つ又は複数のグロー画像(G)を表示するグロー表示処理と、を実行し、
前記3D表示処理は、
横方向に第1の長さ(αf1)を有し、前記観察者から第1の距離(D31)だけ離れた位置に視認される第1のコンテンツ画像(FU1)を表示させる処理、及び、
横方向に前記第1の長さ(αf1)より短い第2の長さ(αf2)を有し、前記第1の距離(D31)より長い第2の距離(32)だけ離れた位置に視認される第2のコンテンツ画像(FU2)と、を表示させる処理、を含み、
前記グロー表示処理は、
左端と右端との間に第3の長さ(αg1)を有し、前記第1のコンテンツ画像(FU1)の左右方向に表示される第1のグロー画像(G1)を表示させる処理、
左端と右端との間に第4の長さ(αg2)を有し、前記第2のコンテンツ画像(FU2)の左右方向に表示される第2のグロー画像(G2)を表示させる処理、及び、
前記第2の長さ(αf2)に対する前記第4の長さαg2の比率が、前記第1の長さ(αf1)に対する前記第3の長さ(αg1)の比率より大きくなる(αg2/αf2>αg1/αf1)ように、前記グロー画像(G)の左端と右端との間の長さを設定する処理、を含む、
表示制御方法。
【請求項8】
画像の表示制御方法であって、
観察者の左右の各目に、視差を有する左視点画像(V10)及び右視点画像(V20)を視認させることで、奥行き表現を付加したコンテンツ画像(FU)として表示する3D表示処理と、
前記コンテンツ画像(FU)の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない1つ又は複数のグロー画像(G)を表示するグロー表示処理と、を実行し、
前記観察者の目又は頭部の位置を示す情報、又は前記目又は頭部の位置を推定可能な情報を取得し、前記目又は頭部が特定の状態であるか否かの判定処理、及び、
前記目又は頭部の位置が特定状態ではないと判定された場合、前記グロー画像(G)を第1の表示態様で表示させ、前記目又は頭部の位置が特定状態であると判定された場合、前記グロー画像(G)を第2の表示態様で表示させる、表示切り替え処理、をさらに実行し、
前記第1の表示態様は、前記第2の表示態様と比較してサイズを小さくすること、彩度を低くすること、サイズを小さくしつつ彩度を低くすること、又は非表示にすること、を含む、
表示制御方法。
【請求項9】
クロストークが生じる領域、又はクロストークの影響が所定値より大きい領域を、クロストーク領域(EC)として記憶しておき、
前記特定の状態は、前記目又は頭部の位置が前記クロストーク領域(EC)内で検出されること及び/又は、前記目又は頭部の位置が前記クロストーク領域(EC)内に入ると予測されること、を含む、
請求項8に記載の表示制御方法。
【請求項10】
前記判定処理は、前記目又は頭部の移動速度が所定の値以上である場合、前記目又は頭部の位置が前記クロストーク領域(EC)内に入ると予測する、
請求項9に記載の表示制御方法。
【請求項11】
前記判定処理は、前記観察者の左目及び/又は右目が前記特定状態にあるか判定する処理を含み、
前記表示切り替え処理は、
前記左目のみが前記特定状態であると判定される場合、前記左視点画像(V10)の左右方向に付加する前記グロー画像を前記第2の表示態様に設定し、前記右視点画像(V20)の左右方向に付加する前記グロー画像を第1の表示態様に設定すること、
前記右目のみが前記特定状態であると判定される場合、前記左視点画像(V10)の左右方向に付加する前記グロー画像を前記第1の表示態様に設定し、前記右視点画像(V20)の左右方向に付加する前記グロー画像を第2の表示態様に設定すること、を含む、
請求項9に記載の表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等の移動体で使用され、移動体の前景(車両の乗員から見た移動体の前進方向の実景)に画像を重畳して視認させる表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法等に関する。
【0002】
特許文献1には、車両のフロントウインドシールド等の被投影部に投射される表示光が、車両の内側にいる車両の乗員(観察者)に向けて反射されることで、観察者に虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置(虚像表示装置の一例)が記載されている。特に、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、虚像の知覚距離(観察者が知覚する虚像までの距離)を変化させることで、車両の速度の状況を認識させるヘッドアップディスプレイ装置が記載されている。画像(虚像)は、観察者から見て近傍側に移動したり、遠方側に移動したりすることで、観察者の視覚的注意をひくことができたり、表示する画像に距離的な情報を付加することができたりする。このように知覚距離を変化させるヘッドアップディスプレイ装置は、内部に、立体表示装置を設けている。
【0003】
立体表示装置は、例えば、レンズアレイなどを用いる方法(レンチキュラ方式、例えば特許文献2参照。)、パララックスバリアを用いる方法(パララックスバリア方式、例えば特許文献3を参照。)、又は、視差画像時分割表示方式(例えば、特許文献4,5、及び6を参照。)などがある。
【0004】
これらは、左目が存在する位置に左視点画像の表示光を向け、右目が存在する位置に右視点画像の表示光を向けることで、視差のある左視点画像及び右視点画像を視認させ、融像させることにより虚像の知覚距離を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-127065号公報
【文献】特開2006-115198号公報
【文献】特開2014-150304号公報
【文献】特開2011-107382号公報
【文献】特開2000-236561号公報
【文献】特開2000-4452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような立体表示装置では、クロストークが発生することが知られている。クロストークは、1つの視点から観察したときに本来観察されるべき視点画像と、これに隣接した視点画像とが同時に観察される現象であり、複数の視点画像が重なった多重像が観察される。これについて、以下に説明する。
【0007】
図11は、車両の運転席のアイリプスの左右方向(X軸)に配光される表示光の光強度を示す図である。上記のような立体表示装置は、視差がある(異なる視差を有する)表示光が、それぞれ左右方向(又はこれに加えて上下方向)の異なる領域(前記領域は、「部分視域」、「部分視点」、又は単に「視点」等と称される場合がある)に向けられる。図示するように、第1の視差を有する表示光801は、部分視域E101に向けられ、第1の視差と異なる第2の視差を有する表示光802は、第1の部分視域E101の左側に隣接する部分視域E102に向けられ、第1、第2の視差と異なる第3の視差を有する表示光803は、第2の部分視域E102の左側に隣接する部分視域E103に向けられ、そして、第1乃至第3の視差と異なる第4の視差を有する表示光804は、第3の部分視域E103の左側に隣接する部分視域E104に向けられる。
【0008】
図12A及び図12Bは、左視点画像と右視点画像の配置、及び左視点画像と右視点画像により融像される知覚画像の配置、を説明する図である。図12A及び図12Bの上図は、移動体の上側(Y軸正方向)から見た図であり、下図は、移動体の左側(X軸正方向)から見た図である。
【0009】
図12Aに示す知覚画像FU1010は、図13のコンテンツ画像FU1010と対応しており、図12Bに示す知覚画像FU1020よりも観察者から見て近傍側、かつ下方に融像される態様を示す図である。図示するように、表示光803は、虚像表示領域1000内の所定の位置に左視点画像VL31を左目700Lに視認させる。表示光802は、虚像表示領域1000内の左視点画像VL31から右方向に特定の距離DV1010だけ離れた位置に右視点画像VR21を右目700Rに視認させる。これにより、左視点画像VL31と右視点画像VR21とが融像され、左目700Lと左視点画像VL31とを結ぶ直線と、右目700Rと右視点画像VR21とを結ぶ直線との交点の位置に、第1知覚画像FU1010が知覚される。この際、左目700Lと左視点画像VL31とを結ぶ直線と、右目700Rと右視点画像VR21とを結ぶ直線との間の角度を第1の輻輳角θc1とする。また、図12Aの下図に示すように、左目700Lと左視点画像VL31とを結ぶ直線(又は右目700Rと右視点画像VR21とを結ぶ直線)と水平線との間の角度を第1の縦配置角θf1とする。
【0010】
また、図12Bに示す知覚画像FU1020は、図13のコンテンツ画像FU1020と対応しており、図12Aに示す知覚画像FU1010よりも観察者から見て遠方側、かつ上方に融像される態様を示す図である。図示するように、表示光803は、虚像表示領域1000内の所定の位置に左視点画像VL32を左目700Lに視認させる。表示光802は、虚像表示領域1000内の左視点画像VL32から右方向に特定の距離DV1020(ここでは、DV1020>DV1010である。)だけ離れた位置に右視点画像VR22を右目700Rに視認させる。これにより、左視点画像VL32と右視点画像VR22が融像され、左目700Lと左視点画像VL32とを結ぶ直線と、右目700Rと右視点画像VR22とを結ぶ直線との交点の位置に、第1知覚画像FU1010よりも観察者から遠い位置に第2知覚画像FU1020を知覚される。この際、左目700Lと左視点画像VL32とを結ぶ直線と、右目700Rと右視点画像VR22とを結ぶ直線との間の角度を第2の輻輳角θc2は、第1の輻輳角θc1より小さくなる。また、図12Bの下図に示すように、左目700Lと左視点画像VL32とを結ぶ直線(又は右目700Rと右視点画像VR22とを結ぶ直線)と水平線との間の角度を第2の縦配置角θf2は、第1の縦配置角θf1より小さく設定される。これにより、第2知覚画像FU1020は、観察者から見て、図13に示すように第1知覚画像FU1010よりも上側であり、遠方に知覚される。
【0011】
図11に示すように、左目700Lには、部分視域E103における正規の表示光803以外の非正規の表示光804が入射することがある。非正規の表示光804の光強度920は、正規の表示光803の光強度910に比べると、かなり小さくなる。しかしながら、観察者は、正規の左視点画像VL31,VL32と正規の右視点画像VR21、VR22とが融像した正規の第1知覚画像FU1010、第2知覚画像FU1020以外に、第1知覚画像FU1010の左右方向にずれた位置(図13の例では、第1知覚画像FU1010の右側にずれた位置)に、非正規の表示光804による虚像VR41を視認し、正規の左視点画像VL32と正規の右視点画像VL22とが融像した正規の第2知覚画像FU1020以外に、第2知覚画像FU1020の左右方向にずれた位置(図13の例では、第2知覚画像FU1020の右側にずれた位置)に、非正規の表示光804による虚像VR42を視認し得る。
【0012】
本明細書に開示される特定の実施形態の要約を以下に示す。これらの態様が、これらの特定の実施形態の概要を読者に提供するためだけに提示され、この開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本開示は、以下に記載されない種々の態様を包含し得る。
【0013】
本開示の概要は、視認性の高い画像を表示する表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御応報等を提供することに関する。より具体的には、クロストークによる非正規の画像の視認性を低下させる、又はクロストークによる非正規の画像の視認性を低下させつつ、正規の画像の視認性の低下を抑制する、ことにも関する。
【0014】
したがって、本明細書に記載される表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法等は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。本実施形態は、視差を有する左視点画像及び右視点画像を視認させることで、奥行き表現を付加したコンテンツ画像として表示させ、コンテンツ画像の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない1つ又は複数のグロー画像を表示する、ことをその要旨とする。
【0015】
したがって、本明細書に記載される表示制御装置は、画像を被投影部材に投影することで、観察者に画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置における表示制御を実行する表示制御装置であって、1つ又は複数のプロセッサと、メモリと、メモリに格納され、1つ又は複数のプロセッサによって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、プロセッサは、観察者の左右の各目に、視差を有する左視点画像及び右視点画像を視認させることで、奥行き表現を付加したコンテンツ画像として表示する3D表示処理と、コンテンツ画像の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない1つ又は複数のグロー画像を表示するグロー表示処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、正規のコンテンツ画像の左右方向に、はっきりとした輪郭を有さないグロー画像を表示することで、クロストークで生じた非正規のコンテンツ画像が表示された場合でもグロー画像と非正規のコンテンツ画像とが重なり、非正規のコンテンツ画像の視認性を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、車両用表示システムの車両への適用例を示す図である。
図2図2は、ヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す図である。
図3図3は、自車両の走行中において、観察者が視認する前景と、前記前景に重畳して表示される知覚画像の例を示す図である。
図4図4は、虚像結像面に表示される左視点虚像と右視点虚像と、これら左視点虚像と右視点虚像により観察者が知覚する知覚画像と、の位置関係を概念的に示した図である。
図5A図5Aは、グロー画像Gの一態様を示す図である。
図5B図5Bは、グロー画像Gの一態様を示す図である。
図6図6は、近傍側に知覚される第1のコンテンツ画像に付加される第1のグロー画像と、遠方側に知覚される第2のコンテンツ画像に付加される第2のグロー画像と、の表示態様を示す図である。
図7A図7Aは、グロー画像Gの第1の変化態様を示す図であり、上図が第1の表示態様の一例であり、下図が第2の表示態様の一例である。
図7B図7Bは、グロー画像Gの第2の変化態様を示す図であり、上図が第1の表示態様の一例であり、下図が第2の表示態様の一例である。
図8図8は、いくつかの実施形態の車両用表示システムのブロック図である。
図9】いくつかの実施形態に従って、観察者の目位置に基づき、グロー画像の表示態様を設定する動作を実行する方法を示すフロー図である。
図10図10は、観察者の目位置700が所定の位置にある際の、自車両の運転席のアイボックスの左右方向(X軸)に配光される表示光の光強度を示す図である。
図11図11は、従来例の説明で用いられ、車両の運転席のアイリプスの左右方向(X軸)に配光される表示光の光強度を示す図である。
図12A図12Aは、従来例の説明で用いられ、左視点画像と右視点画像の配置、及び左視点画像と右視点画像により融像される第1知覚画像の配置、を説明する図である。
図12B図12Bは、従来例の説明で用いられ、左視点画像と右視点画像の配置、及び左視点画像と右視点画像により融像される第2知覚画像の配置、を説明する図である。
図13】図q3は、従来例の説明で用いられ、自車両の走行中において、観察者が視認する前景と、前記前景に重畳して表示される知覚画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1ないし図10では、例示的な車両用表示システムの構成、及び動作の説明を提供する。なお、本発明は以下の実施形態(図面の内容も含む)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0019】
図1を参照する。図1は、視差式3D-HUD装置を含む車両用虚像表示システムの構成の一例を示す図である。なお、図1において、車両(移動体の一例。)1の左右方向(換言すると、車両1の幅方向)をX軸(X軸の正方向は、車両1の前方を向いた際の左方向。)とし、左右方向に直交すると共に、地面又は地面に相当する面(ここでは路面6)に直交する線分に沿う上下方向(換言すると、車両1の高さ方向)をY軸(Y軸の正方向は、上方向。)とし、左右方向及び上下方向の各々に直交する線分に沿う前後方向をZ軸(Z軸の正方向は、車両1の直進方向。)とする。この点は、他の図面においても同様である。
【0020】
図示するように、車両(自車両)1に備わる車両用表示システム10は、観察者(典型的には車両1の運転席に着座する運転者)の左目700Lと右目700Rの位置や視線方向を検出する瞳(あるいは顔)検出用の目位置検出部(視線検出部)409、車両1の前方(広義には周囲)を撮像するカメラ(例えばステレオカメラ)などで構成される車外センサ411、ヘッドアップディスプレイ装置(以下では、HUD装置とも呼ぶ)20及び、HUD装置20を制御する表示制御装置30、を有する。
【0021】
図2は、ヘッドアップディスプレイ装置の構成の一態様を示す図である。HUD装置20は、例えばダッシュボード(図1の符号5)内に設置される。このHUD装置20は、立体表示装置40、リレー光学系80及び、これら立体表示装置40とリレー光学系80を収納し、立体表示装置40からの表示光Kを内部から外部に向けて出射可能な光出射窓21を有する筐体22、を有する。
【0022】
立体表示装置40は、ここでは視差式3D表示装置とする。この立体表示装置(視差式3D表示装置)40は、左視点画像と右視点画像と視認させることで奥行き表現を制御可能な多視点画像表示方式を用いた裸眼立体表示装置である表示器50及び、バックライトとして機能する光源ユニット60、により構成される。
【0023】
表示器50は、光源ユニット60からの照明光を光変調して画像を生成する光変調素子51及び、例えば、レンチキュラレンズやパララックスバリア(視差バリア)等を有し、光変調素子51から出射される光を、左目用の光線K11、K12及び、K13等の左目用表示光(図1の符号K10)と、右目用の光線K21、K22及び、K23等の右目用表示光(図1の符号K20)とに分離する光学レイヤ(光線分離部の一例。)52、を有する。光学レイヤ52は、レンチキュラレンズ、パララックスバリア、レンズアレイ及び、マイクロレンズアレイなどの光学フィルタを含む。実施形態で光学レイヤ52は、前述した光学フィルタに限定されることなく、光変調素子51の前面又は後面に配置される全ての形態の光学レイヤを含む。但し、これは一例であり、限定されるものではない。
【0024】
また、立体表示装置40は、光学レイヤ(光線分離部の一例。)52の代わりに又は、それに加えて、光源ユニット60を指向性バックライトユニット(光線分離部の一例。)で構成することで、左目用の光線K11、K12及び、K13等の左目用表示光(図1の符号K10)と、右目用の光線K21、K22及び、K23等の右目用表示光(図1の符号K20)と、を出射させてもよい。具体的に、例えば、後述する表示制御装置30は、指向性バックライトユニットが左目700Lに向かう照明光を照射した際に、光変調素子51に左視点画像を表示させることで、左目用の光線K11、K12及び、K13等の左目用表示光K10を、観察者の左目700Lに向け、指向性バックライトユニットが右目700Rに向かう照明光を照射した際に、光変調素子51に右視点画像を表示させることで、右目用の光線K21、K22及び、K23等の右目用表示光K20を、観察者の左目700Rに向ける。但し、これは一例であり、限定されるものではない。
【0025】
後述する表示制御装置30は、例えば、画像レンダリング処理(グラフィック処理)、表示器駆動処理などを実行することで、観察者の左目700Lへ左視点画像V10の左目用表示光K10及び、右目700Rへ右視点画像V20の右目用表示光K20、を向け、左視点画像V10及び右視点画像V20を調整することで、HUD装置20が表示する(観察者が知覚する)知覚虚像FUの態様を制御することができる。なお、後述する表示制御装置30は、一定空間に存在する点などから様々な方向に出力される光線をそのまま(概ね)再現するライトフィールドを再現するように、ディスプレイ(表示器50)を制御してもよい。
【0026】
リレー光学系80は、立体表示装置40からの光を反射し、画像の表示光K10、K20を、ウインドシールド(被投影部材)2に投影する曲面ミラー(凹面鏡等)81、82を有する。但し、その他の光学部材(レンズなどの屈折光学部材、ホログラムなどの回折光学部材、反射光学部材又は、これらの組み合わせを含んでいてもよい。)を、さらに有してもよい。
【0027】
図1では、HUD装置20の立体表示装置40によって、左右の各目用の、視差をもつ画像(視差画像)が表示される。各視差画像は、図1に示されるように、虚像表示面(虚像結像面)VSに結像したV10、V20として表示される。観察者(人)の各目のピントは、虚像表示領域VSの位置に合うように調節される。なお、虚像表示領域VSの位置を、「調節位置(又は結像位置)」と称し、また、所定の基準位置(例えば、HUD装置20のアイボックス200の中心205、観察者の視点位置、又は、自車両1の特定位置など)から虚像表示領域VSまでの距離(図4の符号D10を参照)を調節距離(結像距離)と称する。
【0028】
但し、実際は、人の脳が、各画像(虚像)を融像するため、人は、調節位置よりもさらに奥側である位置(例えば、左視点画像V10と右視点画像V20との輻輳角によって定まる位置であり、輻輳角が小さくなるほど、観察者から離れた位置にあるように知覚される位置)に、知覚画像(ここでは、ナビゲーション用の矢先の図形)FUが表示されているように認識する。なお、知覚虚像FUは、「立体虚像」と称される場合があり、また、「画像」を広義に捉えて虚像も含まれるとする場合には、「立体画像」と称することもできる。また、「立体像」、「3D表示」等と称される場合がある。
【0029】
次に、図3及び、図4を参照する。図3は、自車両1の走行中において、観察者が視認する前景と、前記前景に重畳して表示される知覚画像の例を示す図である。図4は、虚像結像面に表示される左視点虚像と右視点虚像と、これら左視点虚像と右視点虚像により観察者が知覚する知覚画像と、の位置関係を概念的に示した図である。
【0030】
図3において、車両1は、直線状の道路(路面)6を走行している。HUD装置20は、ダッシュボード5内に設置されている。HUD装置20の光出射窓21から表示光K(K10,K20)を被投影部(車両1のフロントウインドシールド)2に投影する。図3の例では、路面6に重畳し、車両1の経路(ここでは直進を示す。)を指示する第1のコンテンツ画像FU1、同じく車両1の経路(ここでは直進を示す。)を指示し、第1のコンテンツ画像FU1より遠方に知覚される第2のコンテンツ画像FU2、第1のコンテンツ画像FU1の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない第1のグロー画像G1、第2のコンテンツ画像FU2の左右方向に表示され、はっきりとした輪郭を有さない第2のグロー画像G2、を表示する。
【0031】
図4の左図に示すように、HUD装置20は、(1)目位置検出部409で検出された左目700Lへ被投影部2によって反射されるような位置及び、角度で、被投影部2に左目用表示光K10を出射し、左目700Lから見た虚像表示領域VSの所定の位置に、第1の左視点コンテンツV11と、第1の左視点グロー画像V16と、を結像し、(2)右目700Rへ被投影部2によって反射されるような位置及び、角度で、被投影部2に右目用表示光K20を出射し、右目700Rから見た虚像表示領域VSの所定の位置に、第1の右視点コンテンツV21と、第1の右視点グロー画像V26と、を結像する。視差を有する第1の左視点コンテンツV11及び、第1の右視点コンテンツV21により知覚される第1のコンテンツ画像FU1(同じく、視差を有する第1の左視点グロー画像V16及び、第1の右視点グロー画像V26により知覚される第1のグロー画像G1)は、虚像表示領域VSよりも距離D21だけ奥側である位置(上記の基準位置から距離D31だけ離れた位置)において視認される。
【0032】
同様に、図4の右図に示すように、HUD装置20は、(1)目位置検出部409で検出された左目700Lへ被投影部2によって反射されるような位置及び、角度で、被投影部2に左目用表示光K10を出射し、左目700Lから見た虚像表示領域VSの所定の位置に、第2の左視点コンテンツV12と、第2の左視点グロー画像V17と、を結像し、(2)右目700Rへ被投影部2によって反射されるような位置及び、角度で、被投影部2に右目用表示光K20を出射し、右目700Rから見た虚像表示領域VSの所定の位置に、第2の右視点コンテンツV22と、第2の右視点グロー画像V27と、を結像する。視差を有する第2の左視点コンテンツV12及び、第2の右視点コンテンツV22により知覚される第2のコンテンツ画像FU2(同じく、視差を有する第2の左視点グロー画像V17及び、第2の右視点グロー画像V27により知覚される第2のグロー画像G2)は、虚像表示領域VSよりも距離D22だけ奥側である位置(上記の基準位置から距離D31だけ離れた位置)において視認される。
【0033】
上記実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、グロー画像Gを表示する際、左視点グロー画像V16(V17)と、右視点グロー画像V26(V27)と、を表示していたが、これは一例であり、限定されるものではない。他の実施態様HUD装置20(表示制御装置30)は、グロー画像Gを表示する際、左視点グロー画像V16(V17)又は、右視点グロー画像V26(V27)のいずれか一方のみを表示してもよい。
【0034】
具体的には、上記の基準位置から虚像表示領域VSまでの距離(結像距離D10)は、例えば「4m」の距離に設定され、上記の基準位置から図4の左図に示される第1のコンテンツ画像FU1及び、第1のグロー画像G1までの距離(第1の知覚距離D31)は、例えば「7m」の距離に設定され、上記の基準位置から図4の右図に示される第2のコンテンツ画像FU2及び、第2のグロー画像G2までの距離(第2の知覚距離D32)は、例えば「10m」の距離に設定される。但し、これは一例であり、限定されるものではない。
【0035】
第1、第2の知覚距離D31,D32は、左目700Lと左視点画像V10(V11,V16,V12,V17)とを結ぶ線分(換言すると、左目700Lから左視点画像V10へ向けた視線方向)と、右目700Rと右視点画像V20(V21,V26,V22,V27)とを結ぶ線分(換言すると、右目700Rから右視点画像V20へ向けた視線方向)と、の間の角度(輻輳角θc)の大きさに応じて定まる。
【0036】
図4の左図に示す第1の輻輳角θc1は、図4の右図に示す第2の輻輳角θc2より大きい。したがって、上記の基準位置から第1のコンテンツ画像FU1及び、第1のグロー画像G1までの距離(第1の知覚距離D31)は、上記の基準位置から第2のコンテンツ画像FU2及び、第2のグロー画像G2までの距離(第2の知覚距離D32)より短くなる。
【0037】
本実施形態の表示制御装置30(HUD装置20)は、コンテンツ画像FUと、このコンテンツ画像FUの左右方向に表示されるグロー画像Gを表示する。これにより、クロストークが生じて、正規のコンテンツ画像FUの左方向及び/又は、右方向に非正規のコンテンツ画像が表示されてしまった場合でも、正規のコンテンツ画像FUの左右方向に表示されるグロー画像Gと混在し、非正規のコンテンツ画像がはっきり視認されてしまうことを抑制することができる。換言すると、非正規のコンテンツ画像の視認性を低下させることができる。
【0038】
図5Aは、グロー画像Gの一態様を示す図である。図示するように、観察者から見たグロー画像Gの横方向の長さαgは、コンテンツ画像FUの横方向の長さαfより長い。また、観察者から見たグロー画像Gの縦方向の長さβgは、コンテンツ画像FUの縦方向の長さβfより長い。また、グロー画像Gの横方向の長さαgとコンテンツ画像FUの横方向の長さαfとの差(αg-αf)は、グロー画像Gの縦方向の長さβgとコンテンツ画像FUの縦方向の長さβfとの差(βg-βf)より長い。典型的には、クロストークにより生じる非正規のコンテンツ画像は、横方向では正規のコンテンツ画像から大きくずれて視認され、縦方向では横方向に比べて正規のコンテンツ画像からずれる量が少ない(及び/又はずれる頻度が少ない)。よって、ずれる量が少ない(及び/又はずれる頻度が少ない)縦方向において、付加的なグロー画像Gの長さ(面積)を抑えることで、コンテンツ画像FUのコントラスト(視認性の一例)の低下を抑制しつつ、ずれる量が大きい(及び/又はずれる頻度が多い)横方向において、クロストークによる非正規のコンテンツ画像の視認性低下をより確実に抑制することができる。但し、上記の態様は、一例であり、これに限定されない。他の実施形態の一例として、観察者から見たグロー画像Gの縦方向の長さβgは、コンテンツ画像FUの縦方向の長さβfと同じ又はそれより短くてもよい。
【0039】
また、グロー画像Gは、コンテンツ画像FUに対して、同系色で且つ彩度を低くすることが好ましい。ここで、同系色とは、色相環における中心からのなす角度が60度以下であることをいう。より好ましくは、グロー画像Gの色とコンテンツ画像FUの色とが、色相環における中心からのなす角度が30度以下となるようにする。クロストークで視認され得る非正規のコンテンツ画像は、コンテンツ画像と同系色で且つ彩度が低くなる。よって、グロー画像Gの色(色相、彩度及び、明度)を、クロストークで視認され得る非正規のコンテンツ画像の色(色相、彩度及び、明度)と概ね同じにすることで、非正規のコンテンツ画像は、グロー画像Gに融和し、非正規のコンテンツ画像の視認性をより低下させることができる。なお、コンテンツ画像FUが複数色で構成されている場合、グロー画像Gの色度が、コンテンツ画像FUの画素の平均色度に対して、同系色で且つ彩度を低くするようにしてもよい。
【0040】
図5Bは、グロー画像Gの一態様を示す図である。グロー画像Gは、クロストークで視認され得る非正規のコンテンツ画像の位置(領域)を、切り欠く(非表示とする)又は、彩度を低くした低視認性部GAを有していてもよい。これにより、クロストークで非正規のコンテンツ画像が表示される際、非正規のコンテンツ画像は、グロー画像Gの低視認性部GAに表示され、これにより、非正規のコンテンツ画像と、非正規のコンテンツ画像の周囲のグロー画像Gとが融和しやすくなり、非正規のコンテンツ画像の視認性をさらに低下させることができる。
【0041】
但し、上記の態様では、低視認性部GAは、コンテンツ画像FUの左側にのみ設けられているが、これは一例であり、これに限定されない。他の実施形態の一例として、低視認性部GAは、コンテンツ画像FUの左側にのみ設けられていてもよく、コンテンツ画像FUの左右両方に設けられていてもよい。また、後述する表示制御装置30は、目位置700に応じて、低視認性部GAを、コンテンツ画像FUの左側にのみに表示する態様又は、コンテンツ画像FUの右側にのみに表示する態様で切り替えてもよい。また、後述する表示制御装置30は、目位置700に応じて、低視認性部GAを、コンテンツ画像FUの左側にのみに表示する態様、コンテンツ画像FUの右側にのみに表示する態様又は、コンテンツ画像FUを設けない態様で切り替えてもよい。なお、虚像表示領域VSよりも奥側にコンテンツ画像FUを知覚させる場合、左目700Lに対してクロストークが生じる場合、左目700Lは、正規の左視点画像V10の右側に非正規の右視点画像V20を視認する。したがって、図4の左視点画像V11(V12)に付加されるグロー画像V16(V17)は、左視点画像V11の少なくとも右側に低視認性部GAを設けることが好ましい。なお、この際、図4の右視点画像V21(V22)に付加されるグロー画像V26(V27)は、右視点画像V21(V22)の左側の視認性を低下させてもよい。これにより、グロー画像G1,G2における左右のバランスを調整することができる。また、同様に、右目700Rに対してクロストークが生じる場合、右目700Rは、正規の右視点画像V20の左側に非正規の左視点画像V10を視認する。したがって、図4の右視点画像V21(V22)に付加されるグロー画像V26(V27)は、右視点画像V21(V22)の少なくとも左側に低視認性部GAを設けることが好ましい。なお、この際、図4の左視点画像V11(V12)に付加されるグロー画像V16(V17)は、左視点画像V11(V12)の右側の視認性を低下させてもよい。これにより、グロー画像G1,G2における左右のバランスを調整することができる。
【0042】
図6は、近傍側に知覚される第1のコンテンツ画像FU1に付加される第1のグロー画像G1と、第1のコンテンツ画像FU1より遠方側に知覚される第2のコンテンツ画像FU2に付加される第2のグロー画像G2と、の表示態様を示す図である。遠方側に知覚される第2のコンテンツ画像FU2の横方向の長さαf2に対する第2のグロー画像G2の横方向の長さαg2の比率は、近傍側に知覚される第1のコンテンツ画像FU1の横方向の長さαf1に対する第1のグロー画像G1の横方向の長さαg1の比率より大きい(αg2/αf2>αg1/αf1)。すなわち、いくつかの実施形態によれば、知覚距離D30が大きくなるに従い、コンテンツ画像の横方向の長さαfに対するグロー画像の横方向の長さαgの比率を大きくしてもよい。クロストークで視認され得る非正規のコンテンツ画像は、知覚距離D30が大きくなるに従い、正規の知覚画像からのずれ量が大きくなることが発明者によって認識されたが、上記実施形態によれば、知覚距離D30が大きくなり、非正規のコンテンツ画像のずれ量が大きくなっても、非正規のコンテンツ画像がグロー画像Gに重なりやすくなり(非正規のコンテンツ画像とグロー画像Gとが重なる面積が増加し)、非正規のコンテンツ画像の視認性を低下させることができる。すなわち、表示制御装置30は、知覚距離D30の増加に従い、コンテンツ画像の横方向の長さαfに対するグロー画像の横方向の長さαgの比率を段階的又は、連続的に大きくするためのテーブルデータや演算式等をメモリ37に予め記憶しておいてもよい。なお、第1のグロー画像G1の横方向の長さαg1と第2のグロー画像G2の横方向の長さαg2とは、同じであってもよい。グロー画像Gの大きさを変化させないことで、観察者の視覚的注意が、グロー画像Gやコンテンツ画像FUに向きすぎることを抑制することがきでる。
【0043】
いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、検出される(又は推定される)目位置が特定状態であるか否かに応じて、グロー画像Gの表示態様を変化させる。
【0044】
図7Aは、グロー画像Gの第1の変化態様を示す図であり、上図が第1の表示態様の一例であり、下図が第2の表示態様の一例である。いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、グロー画像Gの大きさを維持しつつ、彩度を変化させてもよい。図7Aの上図で示されるグロー画像Gの横の長さαg11は、下図で示されるグロー画像Gの横の長さαg12と同じである。また、図7Aの上図で示されるグロー画像Gの彩度は、図7Aの下図で示されるグロー画像Gの彩度より低くしている。
【0045】
図7Bは、グロー画像Gの第2の変化態様を示す図であり、上図が第1の表示態様の一例であり、下図が第2の表示態様の一例である。いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、グロー画像Gの彩度を維持しつつ、大きさを変化させてもよい。図7Bの上図で示されるグロー画像Gの横の長さαg21は、下図で示されるグロー画像Gの横の長さαg22より短くしている。また、図7Bの上図で示されるグロー画像Gの彩度は、図7Aの下図で示されるグロー画像Gの彩度と同じである。
【0046】
また、図7Aに示す第1の変化態様と、図7Bに示す第2の変化態様を組み合わせてもよい。いくつかの実施形態のHUD装置20(表示制御装置30)は、グロー画像Gの彩度と大きさを変化させてもよい。第1の表示態様のグロー画像Gの横の長さは、第2の表示態様のグロー画像Gの横の長さより短くし、且つ、第1の表示態様のグロー画像Gの彩度は、第2の表示態様のグロー画像Gの彩度より低くしてもよい。
【0047】
図8は、いくつかの実施形態に係る、車両用虚像表示システムのブロック図である。表示制御装置30は、1つ又は複数のI/Oインタフェース31、1つ又は複数のプロセッサ33、1つ又は複数の画像処理回路35、及び1つ又は複数のメモリ37を備える。図3に記載される様々な機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれら両方の組み合わせで構成されてもよい。図8は、1つの実施形態に過ぎず、図示された構成要素は、より数の少ない構成要素に組み合わされてもよく、又は追加の構成要素があってもよい。例えば、画像処理回路35(例えば、グラフィック処理ユニット)が、1つ又は複数のプロセッサ33に含まれてもよい。
【0048】
図示するように、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37と動作可能に連結される。より具体的には、プロセッサ33及び画像処理回路35は、メモリ37に記憶されているプログラムを実行することで、例えば画像データを生成、及び/又は送信するなど、車両用表示システム10(表示器40)の制御を行うことができる。プロセッサ33及び/又は画像処理回路35は、少なくとも1つの汎用マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。メモリ37は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVRAMを含んでもよい。
【0049】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と動作可能に連結されている。I/Oインタフェース31は、例えば、車両に設けられた後述の車両ECU401及び/又は、他の電子機器(後述する符号403~419)と、CAN(Controller Area Network)の規格に応じて通信(CAN通信とも称する)を行う。なお、I/Oインタフェース31が採用する通信規格は、CANに限定されず、例えば、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport:MOSTは登録商標)、UART、もしくはUSBなどの有線通信インタフェース、又は、例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワークなどのパーソナルエリアネットワーク(PAN)、802.11x Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)等の数十メートル内の近距離無線通信インタフェースである車内通信(内部通信)インタフェースを含む。また、I/Oインタフェース31は、無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)などの車外通信(外部通信)インタフェースを含んでいてもよい。
【0050】
図示するように、プロセッサ33は、I/Oインタフェース31と相互動作可能に連結されることで、車両用表示システム10(I/Oインタフェース31)に接続される種々の他の電子機器等と情報を授受可能となる。I/Oインタフェース31には、例えば、車両ECU401、道路情報データベース403、自車位置検出部405、操作検出部407、目位置検出部409、車外センサ411、明るさ検出部413、IMU415、携帯情報端末417、及び外部通信機器419などが動作可能に連結される。なお、I/Oインタフェース31は、車両用表示システム10に接続される他の電子機器等から受信する情報を加工(変換、演算、解析)する機能を含んでいてもよい。
【0051】
表示器40は、プロセッサ33及び画像処理回路35に動作可能に連結される。したがって、光変調素子51によって表示される画像は、プロセッサ33及び/又は画像処理回路35から受信された画像データに基づいてもよい。プロセッサ33及び画像処理回路35は、I/Oインタフェース31から取得される情報に基づき、光変調素子51が表示する画像を制御する。
【0052】
車両ECU401は、車両1に設けられたセンサやスイッチから、車両1の状態(例えば、走行距離、車速、アクセルペダル開度、ブレーキペダル開度、エンジンスロットル開度、インジェクター燃料噴射量、エンジン回転数、モータ回転数、ステアリング操舵角、シフトポジション、ドライブモード、各種警告状態、姿勢(ロール角、及び/又はピッチング角を含む)、車両の振動(振動の大きさ、頻度、及び/又は周波数を含む))などを取得し、車両1の前記状態を収集、及び管理(制御も含んでもよい。)するものであり、機能の一部として、車両1の前記状態の数値(例えば、車両1の車速。)を示す信号を、表示制御装置30のプロセッサ33へ出力することができる。なお、車両ECU401は、単にセンサ等で検出した数値(例えば、ピッチング角が前傾方向に3[degree]。)をプロセッサ33へ送信することに加え、又はこれに代わり、センサで検出した数値を含む車両1の1つ又は複数の状態に基づく判定結果(例えば、車両1が予め定められた前傾状態の条件を満たしていること。)、若しくは/及び解析結果(例えば、ブレーキペダル開度の情報と組み合わせされて、ブレーキにより車両が前傾状態になったこと。)を、プロセッサ33へ送信してもよい。例えば、車両ECU401は、車両1が車両ECU401のメモリ(不図示)に予め記憶された所定の条件を満たすような判定結果を示す信号を表示制御装置30へ出力してもよい。なお、I/Oインタフェース31は、車両ECU401を介さずに、車両1に設けられた車両1に設けられたセンサやスイッチから、上述したような情報を取得してもよい。
【0053】
また、車両ECU401は、車両用表示システム10が表示する画像を指示する指示信号を表示制御装置30へ出力してもよく、この際、画像の座標、サイズ、種類、表示態様、画像の報知必要度、及び/又は報知必要度を判定する元となる必要度関連情報を、前記指示信号に付加して送信してもよい。
【0054】
目位置検出部409は、車両1の運転席に着座する観察者の目位置700を検出する赤外線カメラなどのカメラを含み、撮像した画像を、プロセッサ33に出力してもよい。プロセッサ33は、目位置検出部409から撮像画像(目位置700を推定可能な情報の一例。)を取得し、この撮像画像を、パターンマッチングなどの手法で解析することで、観察者の目位置700の座標を検出してもよい。
【0055】
また、目位置検出部409は、カメラの撮像画像を解析した解析結果(例えば、観察者の目位置700が、アイボックス200内(又はアイボックス200とその周辺を含む領域内)に設定された空間的な複数の領域のどこに属しているかを示す信号。)を、プロセッサ33に出力してもよい。なお、車両1の観察者の目位置700又は、観察者の目位置700を推定可能な情報を取得する方法は、これらに限定されるものではなく、既知の目位置検出(推定)技術を用いて取得されてもよい。
【0056】
また、目位置検出部409は、観察者の目位置700(観察者の頭部でもよい。)の移動速度、及び/又は移動方向を検出し、観察者の目位置700(観察者の頭部でもよい。)の移動速度、及び/又は移動方向を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0057】
また、目位置検出部409は、(10)観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)にあることを示す信号又は、(20)観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内に入ると予測される信号、を検出した場合、上記特定の条件を満たしたと判定し、当該状態を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0058】
(20)観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内に入ると予測される信号は、(21)新たに検出した目位置700が、過去に検出した目位置700に対して、メモリ37に予め記憶された目位置移動距離閾値以上であること(所定の単位時間内における目位置の移動が規定範囲より大きいこと。)を示す信号、(22)目位置の移動速度が、メモリ37に予め記憶された目位置移動速度閾値以上であることを示す信号、(23)目位置の移動方向が、メモリ37に予め記憶されたクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)に近づく方向であることを示す信号、などを含む。
【0059】
メモリ37に記憶されたソフトウェア構成要素は、目位置検出モジュール502、目位置推定モジュール504、目位置予測モジュール506、目位置状態判定モジュール508、表示パラメータ設定モジュール510、グラフィックモジュール512、光源駆動モジュール514、及びアクチュエータ駆動モジュール516、を含む。
【0060】
図9は、いくつかの実施形態に従って、観察者の目位置に基づき、グロー画像の表示態様を設定する動作を実行する方法S100を示すフロー図である。方法S100は、表示器40(光変調素子51)と、この表示器40(光変調素子51)を制御する表示制御装置30と、において実行される。方法S100内のいくつかの動作は任意選択的に組み合わされ、いくつかの動作の手順は任意選択的に変更され、いくつかの動作は任意選択的に省略される。
【0061】
以下で説明するように、方法S100は、特に、観察者の目位置が特定状態であるか否かの判定に基づき、グロー画像の表示態様を変化させる方法を提供する。
【0062】
図8の目位置検出モジュール502は、観察者の目位置700を検出する(S110)。目位置検出モジュール502は、観察者の目の横位置を示す座標(X軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の横方向の位置及び奥行方向の位置を示す座標(X及びZ軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の高さを示す座標(Z軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、観察者の目の高さ及び奥行方向の位置を示す座標(Y及びZ軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、及び/又は観察者の目位置700を示す座標(X,Y,Z軸方向の位置であり、目位置700を示す信号の一例である。)を検出すること、に関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。
【0063】
なお、目位置検出モジュール502が検出する目位置700は、右目と左目それぞれの位置700R,700L、右目位置700R及び左目位置700Lのうち予め定められたいずれか一方の位置、右目位置700R及び左目位置700Lのうち検出可能な(検出しやすい)いずれか一方の位置、又は右目位置700Rと左目位置700Lとから算出される位置(例えば、右目位置と左目位置との中点)、などを含む。例えば、目位置検出モジュール502は、目位置700を、表示設定を更新するタイミングの直前に目位置検出部409から取得した観測位置に基づき決定する。
【0064】
また、目位置検出モジュール502は、目位置検出部409から取得する複数の観察者の目の観測位置に基づき、観察者の目位置700の移動方向、及び/又は移動速度を検出し、観察者の目位置700の移動方向、及び/又は移動速度を示す信号を、プロセッサ33に出力してもよい。
【0065】
目位置推定モジュール504は、目位置を推定可能な情報を取得する(S114)。目位置を推定可能な情報は、例えば、目位置検出部409から取得した撮像画像、車両1の運転席の位置、観察者の顔の位置、座高の高さ、又は複数の観察者の目の観測位置などである。目位置推定モジュール504は、目位置を推定可能な情報から、車両1の観察者の目位置700を推定する。目位置推定モジュール504は、目位置検出部409から取得した撮像画像、車両1の運転席の位置、観察者の顔の位置、座高の高さ、又は複数の観察者の目の観測位置などから、観察者の目位置700を推定すること、など観察者の目位置700を推定することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、目位置推定モジュール504は、目の位置を推定可能な情報から観察者の目位置700を推定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0066】
目位置推定モジュール504は、目位置700を、表示パラメータを更新するタイミングの直前に目位置検出部409から取得した目の観測位置と、1つ又は複数の過去に取得した目の観測位置とに基づき、例えば、加重平均などの手法により、算出してもよい。
【0067】
目位置予測モジュール506は、観察者の目位置700を予測可能な情報を取得する(S116)。観察者の目位置700を予測可能な情報は、例えば、目位置検出部409から取得した最新の観測位置、又は1つ又はそれ以上の過去に取得した観測位置などである。目位置予測モジュール506は、観察者の目位置700を予測可能な情報に基づいて、目位置700を予測することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。具体的に、例えば、目位置予測モジュール506は、新たな表示設定が適用された画像が観察者に視認されるタイミングの、観察者の目位置700を予測する。目位置予測モジュール506は、例えば、最小二乗法や、カルマンフィルタ、α-βフィルタ、又はパーティクルフィルタなどの予測アルゴリズムを用いて、過去の1つ又はそれ以上の観測位置を用いて、次回の値を予測するようにしてもよい。
【0068】
目位置状態判定モジュール508は、観察者の目位置700が特定状態であるか判定する(S130)。目位置状態判定モジュール508は、(S132)観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内であるか否かを判定し、目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内である場合、特定状態であると判定すること、(S134)観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内に入ると予測されるか否かを判定し、予測される場合、特定状態であると判定すること、(S136)観察者の目位置700が検出できるか否かを判定し、目位置700が検出できない場合、特定状態であると判定すること、など観察者の目位置700が特定状態であることに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、目位置状態判定モジュール508は、目位置700の検出情報、推定情報、又は予測情報から特定状態であるか否かを判定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0069】
(S132)観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内にあるか否かの判定する方法は、(1)目位置検出部409から所定期間内において取得される観察者の目の観測位置の一部(例えば、所定の回数以上。)又は全部をクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内で取得すること、(2)目位置検出モジュール502が観察者の目位置700をクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内で検出すること、又はこれらの組み合わせにより、観察者の目位置700がアイボックス200外にある(観察者の目位置700が特定状態である)と判定すること、を含む(なお前記判定方法は、これらに限定されない。)。
【0070】
(S134)観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内に入ると予測されるか否かを判定する方法は、(1)目位置予測モジュール506が所定時間後の観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内に入るか予測すること、(2)目位置検出モジュール502が新たに検出した目位置700が、過去に検出した目位置700に対して、メモリ37に予め記憶された目位置移動距離閾値以上であること(目位置700の移動速度が、メモリ37に予め記憶された目位置移動速度閾値以上であること。)、又はこれらの組み合わせにより、観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)内に入ると予測できる(観察者の目位置700が特定状態である)と判定すること、を含む(なお前記判定方法は、これらに限定されない。)。
【0071】
(S136)観察者の目位置700が検出できるか否かの判定する方法は、(1)目位置検出部409から所定期間内において取得される観察者の目の観測位置の一部(例えば、所定の回数以上。)又は全部が検出できないこと、(2)目位置検出モジュール502が、通常の動作において、観察者の目位置700を検出できないこと、(3)目位置推定モジュール504が、通常の動作において、観察者の目位置700を推定できないこと、(4)目位置予測モジュール506が、通常の動作において、観察者の目位置700を予測できないこと、又はこれらの組み合わせにより、観察者の目位置700が検出できない(観察者の目位置700が特定状態である)と判定すること、を含む(なお前記判定方法は、これらに限定されない。)。
【0072】
図10は、観察者の目位置700が所定の位置にある際の、自車両1の運転席のアイボックス200の左右方向(X軸)に配光される表示光の光強度を示す図である。観察者の目位置700が所定の位置にある際、図示するように、アイボックス200は、左右方向に隣接した4つの部分視域E10,E20,E30,及びE40に分類される。HUD装置20は、(E10)部分視域E10へ第1の視差を有する画像(例えば、第1の左視点画像)を表示する表示光K1を向け、(E20)部分視域E20には第1の視差と異なる第2の視差を有する画像(例えば、第1の右視点画像)を表示する表示光K2を向け、(E30)部分視域E30には、第1、第2の視差と異なる第3の視差を有する画像(例えば、第2の左視点画像)を表示する表示光K3を向け、そして、(E40)部分視域E40には、第1乃至第3の視差と異なる第4の視差を有する画像(例えば、第2の右視点画像)を表示する表示光K4は、第3の部分視域E103の左側に隣接する部分視域E104に向ける。隣接する部分視域E10、E20の境界付近の第1の領域EC1、隣接する部分視域E20、E30の境界付近の第2の領域EC2、そして、隣接する部分視域E30、E40の境界付近の第3の領域EC3は、隣接する部分視域Eに向けられた表示光Kの一部が向けられるため、クロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)といえる。なお、この部分視域の数や配置は、観察者の目位置700によって変化し得る。すなわち、目位置700が、クロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)である領域EC1、領域EC2、又は領域EC3に移動した場合でも、目位置700に応じた部分視域Eの配置とすることでクロストークが視認されにくくすることもできる。
【0073】
目位置状態判定モジュール508は、目位置検出部409から取得した撮像画像、目位置検出部409から取得した顔の座標、目位置検出部409から取得した目位置700の座標、車両1の運転席の位置、観察者の顔の位置、座高の高さ、又は複数の観察者の目の観測位置などから、観察者の目位置700がクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)に入っているか、近づいているか、入ると予測されるか、など目位置が特定状態あるか否か判定することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、目位置状態判定モジュール508は、目位置700からクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)であるか否かを判定するための、クロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)の座標データ、目位置700からクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)であるか否かを判定可能なテーブルデータ、演算式などを含み得る。なお、クロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)の座標データ、目位置700からクロストークを生じ得る領域(又はクロストークによる影響が増加し得る領域)であるか否かを判定可能なテーブルデータ、演算式などは、HUD装置20が自車両1に取り付けられた状態で、テスト表示を行い、これを測定することなどにより得られたテスト結果に基づき、キャリブレーションされて、メモリ37に書き込まれるものであってもよい。
【0074】
表示パラメータ設定モジュール510は、目位置検出モジュール502で検出した目位置700、目位置推定モジュール504で推測した目位置700、又は目位置予測モジュール506で予測した目位置700が、予め定められた複数の座標範囲のどこに属しているか判定し、目位置700に対応する表示パラメータを設定する。表示パラメータ設定モジュール510は、目位置700が示すX軸座標、Y軸座標、Z軸座標、又はこれらの組み合わせが、複数の空間的な領域のどこに属するのかを判定し、目位置700が属する空間的な領域に対応する表示パラメータを設定することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含む。すなわち、目位置推定モジュール504は、目位置700が示すX軸座標、Y軸座標、Z軸座標、又はこれらの組み合わせから、表示パラメータを特定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0075】
表示パラメータの種類は、(1)目位置700から見て、車両1の外側に位置する実オブジェクトと所定の位置関係になるような画像の配置(画像の配置を制御するために表示器40を制御するパラメータ、及び/又はアクチュエータを制御すパラメータ。)、(2)目位置700から見た虚像光学系90などにより生じ得る画像の歪みを軽減するために画像を事前に歪ませるためのパラメータ(表示器40上で表示される画像を事前に歪ませるために表示器40を制御するパラメータであり、ワーピングパラメータとも呼ばれる。)、(3)目位置700に、画像の光を向け、目位置700以外の表示パラメータには画像の光を向けない(又は光を弱くする)指向性表示をするためのパラメータ(表示器40を制御するパラメータ、表示器40の前記光源を制御するパラメータ、アクチュエータを制御するパラメータ、又はこれらの組み合わせを含むパラメータ。)、(4)目位置から見て、所望の立体画像を視認させるためのパラメータ(表示器40を制御するパラメータ、表示器40の前記光源を制御するパラメータ、アクチュエータを制御するパラメータ、又はこれらの組み合わせを含むパラメータ。)、などを含む。ただし、表示パラメータ設定モジュール510が設定(選択)する表示パラメータは、観察者の目位置700に応じて変更されることが好ましいパラメータであればよく、表示パラメータの種類は、これらに限定されない。
【0076】
表示パラメータ設定モジュール510は、1種類の表示パラメータにつき、目位置700に対応する1つ又は複数の表示パラメータを選定する。目位置700が、例えば、右目位置700R、及び左目位置700Lのそれぞれを含む場合、表示パラメータ設定モジュール510は、右目位置700Rに対応する表示パラメータと、左目位置700Lに対応する表示パラメータと、の2つを選定し得る。一方、目位置700が、例えば、右目位置700R及び左目位置700Lのうち予め定められた一方の位置、右目位置700R及び左目位置700Lのうち検出可能な(検出しやすい)いずれか一方の位置、又は右目位置700Rと左目位置700Lとから算出される1つの位置(例えば、右目位置700Rと左目位置700Lとの中点)である場合、表示パラメータ設定モジュール510は、目位置700に対応する1つの表示パラメータを選定し得る。なお、表示パラメータ設定モジュール510は、目位置700に対応する表示パラメータと、当該目位置700の周囲に設定される表示パラメータも選定し得る。すなわち、表示パラメータ設定モジュール510は、目位置700に対応する3つ以上の表示パラメータを選定し得る。
【0077】
本実施形態の表示パラメータ設定モジュール510は、目位置状態判定モジュール508により特定状態ではないと判定された場合、グロー画像の表示パラメータを第1の表示態様に設定し、特定状態であると判定された場合、グロー画像の表示パラメータを第2の表示態様に設定する(S150)。
【0078】
いくつかの実施形態の表示パラメータ設定モジュール510は、S130での判定結果に基づき、グロー画像Gの彩度を維持しつつ、大きさを変化させてもよい。表示パラメータ設定モジュール510は、S130で特定状態ではないと判定された場合、第2の表示態様と比較して、グロー画像Gの大きさを維持しつつ、彩度を低下させ(第1の表示態様の一例。図7A上図参照。)、S130で特定状態であると判定された場合、第1の表示態様と比較して、グロー画像Gの大きさを維持しつつ、彩度を上昇させる(第2の表示態様の一例。図7A下図参照。)。
【0079】
また、いくつかの実施形態の表示パラメータ設定モジュール510は、S130での判定結果に基づき、グロー画像Gの彩度を維持しつつ、大きさを変化させてもよい。表示パラメータ設定モジュール510は、S130で特定状態ではないと判定された場合、第2の表示態様と比較して、グロー画像Gの彩度を維持しつつ、サイズを小さくし(第1の表示態様の一例。図7B上図参照。)、S130で特定状態であると判定された場合、第1の表示態様と比較して、グロー画像Gの彩度を維持しつつ、サイズを大きくする(第2の表示態様の一例。図7B下図参照。)。
【0080】
また、いくつかの実施形態の表示パラメータ設定モジュール510は、S130での判定結果に基づき、グロー画像Gの彩度とサイズの双方を変化させてもよい。表示パラメータ設定モジュール510は、S130で特定状態ではないと判定された場合、第2の表示態様と比較して、グロー画像Gの彩度を低くしつつ、サイズを小さくし(第1の表示態様の一例。図7A上図と図7B上図を参照。)、S130で特定状態であると判定された場合、第1の表示態様と比較して、グロー画像Gの彩度を高くしつつ、サイズを大きくする(第2の表示態様の一例。図7A上図と図7B下図を参照。)。
【0081】
また、いくつかの実施形態の表示パラメータ設定モジュール510は、S130での判定結果に基づき、グロー画像Gの表示/非表示を切り替えてもよい。表示パラメータ設定モジュール510は、S130で特定状態ではないと判定された場合、グロー画像Gを非表示にし(第1の表示態様の一例。)、S130で特定状態であると判定された場合、グロー画像Gを表示する(第2の表示態様の一例。)。
【0082】
なお、いくつかの実施形態では、目位置状態判定モジュール508は、特定状態と判定する条件に、車両1の挙動(振動)が少ないことを示す信号が検出されること、を少なくとも含むようにしてもよい。例えば、表示パラメータ設定モジュール510は、車両1の挙動(振動)が大きい場合、特定状態と判定しないようにしてもよい。
【0083】
再び図8を参照する。グラフィックモジュール512は、レンダリングなどの画像処理をして画像データを生成し、表示器40を駆動するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含む。また、グラフィックモジュール512は、表示される画像の、種類、配置(位置座標、角度)、サイズ、表示距離(3Dの場合。)、視覚的効果(例えば、輝度、透明度、彩度、コントラスト、又は他の視覚特性)、を変更するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含んでいてもよい。グラフィックモジュール512は、画像の種類(表示パラメータの例の1つ。)、画像の位置座標(表示パラメータの例の1つ。)、画像の角度(X方向を軸としたピッチング角、Y方向を軸としたヨーレート角、Z方向を軸としたローリング角などであり、表示パラメータの例の1つ。)、画像のサイズ(表示パラメータの例の1つ。)、画像の色(色相、彩度、明度などで設定される表示パラメータの例の1つ。)で観察者に視認されるように画像データを生成し、光変調素子51を駆動し得る。
【0084】
光源駆動モジュール514は、光源ユニット24を駆動することを実行するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含む。光源駆動モジュール514は、設定された表示パラメータに基づき、光源ユニット24を駆動し得る。
【0085】
アクチュエータ駆動モジュール516は、第1アクチュエータ28及び/又は第2アクチュエータ29を駆動することを実行するための様々な既知のソフトウェア構成要素を含むアクチュエータ駆動モジュール516は、設定された表示パラメータに基づき、第1アクチュエータ28及び第2アクチュエータ29を駆動し得る。
【0086】
上述の処理プロセスの動作は、汎用プロセッサ又は特定用途向けチップなどの情報処理装置の1つ以上の機能モジュールを実行させることにより実施することができる。これらのモジュール、これらのモジュールの組み合わせ、及び/又はそれらの機能を代替えし得る公知のハードウェアとの組み合わせは全て、本発明の保護の範囲内に含まれる。
【0087】
車両用表示システム10の機能ブロックは、任意選択的に、説明される様々な実施形態の原理を実行するために、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実行される。図3で説明する機能ブロックが、説明される実施形態の原理を実施するために、任意選択的に、組み合わされ、又は1つの機能ブロックを2以上のサブブロックに分離されてもいいことは、当業者に理解されるだろう。したがって、本明細書における説明は、本明細書で説明されている機能ブロックのあらゆる可能な組み合わせ若しくは分割を、任意選択的に支持する。
【符号の説明】
【0088】

1 :自車両
2 :被投影部
5 :ダッシュボード
6 :路面
10 :車両用表示システム
20 :HUD装置(ヘッドアップディスプレイ装置)
21 :光出射窓
22 :筐体
24 :光源ユニット
30 :表示制御装置
31 :I/Oインタフェース
33 :プロセッサ
35 :画像処理回路
37 :メモリ
40 :表示器(立体表示装置)
50 :表示器
51 :光変調素子
52 :光学レイヤ
60 :光源ユニット
80 :リレー光学系
90 :虚像光学系
200 :アイボックス
205 :中心
700 :目位置
700L :左目
700L :左目位置
700R :右目位置
D10 :結像距離
D30 :知覚距離
D31 :第1の知覚距離
D32 :第2の知覚距離
E :部分視域
E10 :部分視域
E20 :部分視域
E30 :部分視域
E40 :部分視域
EC1 :第1の領域(クロストーク領域)
EC2 :第2の領域
EC3 :第3の領域
FU :知覚虚像
FU :コンテンツ画像(知覚虚像)
FU1 :第1のコンテンツ画像
FU2 :第2のコンテンツ画像
G :グロー画像
G1 :第1のグロー画像
G2 :第2のグロー画像
GA :低視認性部
K :表示光
K10 :左目用表示光
K20 :右目用表示光
V10 :左視点画像
V11 :第1の左視点コンテンツ
V12 :第2の左視点コンテンツ
V16 :第1の左視点グロー画像
V17 :第2の左視点グロー画像
V20 :右視点画像
V21 :第1の右視点コンテンツ
V22 :第2の右視点コンテンツ
V26 :第1の右視点グロー画像
V27 :第2の右視点グロー画像
VS :虚像表示領域
θc :輻輳角
θc1 :第1の輻輳角
θc2 :第2の輻輳角
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13