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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/29 20160101AFI20240806BHJP
【FI】
H02P7/29 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020190939
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080011
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】水谷 昌樹
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-245476(JP,A)
【文献】特開2003-047271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流モータを制御するモータ制御装置であって、
前記直流モータの目標回転速度がスティックスリップ現象を生じ得る所定の速度である場合に、スティックスリップ現象を生じないトルクを前記直流モータに発生させる第1の駆動信号を、前記直流モータを駆動する駆動回路へ出力する第1の期間と、前記直流モータにブレーキを掛ける第2の駆動信号を前記駆動回路へ出力する第2の期間とが交互に繰り返されるように、前記直流モータを制御するモータ制御部、
を有するモータ制御装置。
【請求項2】
上位の制御回路から前記目標回転速度を設定する速度設定信号を受信する通信部と、
前記速度設定信号にて設定された前記目標回転速度が前記所定の速度か否か判定し、前記速度設定信号にて設定された前記目標回転速度が前記所定の速度でない場合、前記モータ制御部に対して、前記直流モータを定速回転させることを指示し、一方、前記速度設定信号にて設定された前記目標回転速度が前記所定の速度である場合、前記モータ制御部に対して前記第1の期間と前記第2の期間とが交互に繰り返されるように前記直流モータを制御することを指示する判定部と、
をさらに有する、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記目標回転速度が前記所定の速度である場合、前記直流モータが所定のサンプリング角度だけ回転する度に検知信号を出力する回転角センサから最後に前記検知信号を受信したときの回転位置から第1の角度回転した位置を目標位置として設定し、前記目標位置を設定してから前記直流モータの回転角度が前記目標位置に達するまでを前記第1の期間とするとともに、前記直流モータの回転角度が前記目標位置に達した後、前記目標位置を設定してからの経過時間が前記目標回転速度で前記直流モータが回転したときに前記目標位置に到達するのに要する時間に達するまでを前記第2の期間とする、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータを制御するためのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回胴遊技機または弾球遊技機などの遊技機には、遊技者の興趣を高めるために、遊技者の視覚、聴覚または感覚に訴える演出を行うための工夫が凝らされている。特に、遊技者の視覚に訴える演出を行うために、遊技機には、可動体、例えば、可動役物あるいは回転リールが設けられることがある。このような可動体の移動範囲及び移動速度は演出に応じて予め設定されている。そのため、一般的に、1ステップ当たりの回転量が決まっており、かつ、ステップ単位で回転量を制御できるステッピングモータによって可動体は駆動される。そして上位制御装置(例えば、演出用のプロセッサユニット(以下、単に演出用CPUと呼ぶ)あるいは主制御装置)が、遊技の状態に応じて可動体が指定された位置へ移動する移動量に相当するステップ数だけステッピングモータを回転させる命令を、ステッピングモータの制御回路へ送信することで、ステッピングモータがそのステップ数だけ回転し、その結果として可動体が指定された位置へ移動する。特に、回転及び停止を厳密に制御することが要求される、回胴遊技機の回転リール(あるいはドラムとも呼ばれる)を駆動するために、ステッピングモータが用いられる。
【0003】
さらに、遊技者の興趣を高めるために、回転リールの回転速度を速くすることも検討されている。そこで、回転リールの回転速度を速くするために、ステッピングモータよりも高いトルクを得ることが可能で、より高速に回転させることが容易な直流モータを、回転リールを駆動するために用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-157631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記とは逆に、遊技者の興趣を高めるための演出の一つとして、回転リールを、約10~20rpmといった低速で回転させることがある。このような低速回転を実現するような一定のトルクを発揮するよう、直流モータを駆動すると、スティックスリップ現象と呼ばれる、静止摩擦力が作用する状態と動摩擦力が作用する状態とが交互に発生することによる自励振動が生じ、直流モータ及び直流モータで駆動される回転リールの回転速度が不安定になることがある。
【0006】
そこで、本発明は、可動体を駆動する直流モータを低速回転させても、直流モータの回転速度を安定させることが可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態として、直流モータを制御するモータ制御装置が提供される。このモータ制御装置は、直流モータの目標回転速度がスティックスリップ現象を生じ得る所定の速度である場合に、スティックスリップ現象を生じないトルクを直流モータに発生させる第1の駆動信号を、直流モータを駆動する駆動回路へ出力する第1の期間と、直流モータにブレーキを掛ける第2の駆動信号を駆動回路へ出力する第2の期間とが交互に繰り返されるように直流モータの回転を制御するモータ制御部を有する。
係る構成を有することにより、このモータ制御装置は、可動体を駆動する直流モータを低速回転させても、直流モータの回転速度を安定させることができるという効果を奏する。
【0008】
また、このモータ制御装置は、上位の制御回路から目標回転速度を設定する速度設定信号を受信する通信部と、速度設定信号にて設定された目標回転速度が上記の所定の速度か否か判定し、速度設定信号にて設定された目標回転速度がその所定の速度でない場合、モータ制御部に対して、直流モータを定速回転させることを指示し、一方、速度設定信号にて設定された目標回転速度がその所定の速度である場合、モータ制御部に対して第1の期間と第2の期間とが交互に繰り返されるように直流モータを制御することを指示する判定部とをさらに有することが好ましい。
これにより、このモータ制御装置は、直流モータの目標回転速度がスティックスリップ現象を生じ得る速度か否かに応じて、直流モータの制御を適切に切り替えることができる。
【0009】
さらに、このモータ制御装置において、モータ制御部は、目標回転速度が上記の所定の速度である場合、直流モータが所定のサンプリング角度だけ回転する度に検知信号を出力する回転角センサから最後に検知信号を受信したときの回転位置から第1の角度回転した位置を目標位置として設定し、目標位置を設定してから直流モータの回転角度が目標位置に達するまでを第1の期間とするとともに、直流モータの回転角度が目標位置に達した後、目標位置を設定してからの経過時間が目標回転速度で直流モータが回転したときに目標位置に到達するのに要する時間に達するまでを第2の期間とすることが好ましい。
これにより、このモータ制御装置は、目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得るような速度であっても、直流モータの回転速度をその目標回転速度に近付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一つの実施形態に係るモータ制御装置の概略構成図である。
図2】モータ駆動回路の回路図である。
図3】モータ駆動回路の各スイッチに印加される駆動信号と直流モータの回転方向との関係を表すテーブルの一例を示す図である。
図4】アップダウンカウンタの値の時間経過と、指定速度の設定タイミングとの関係の一例を示す図である。
図5】(a)は、比較例による、モータの目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得る速度である場合における、モータの回転速度とモータ駆動回路に出力されるパルスのデューティ比との時間変化の一例を示す図である。(b)は、本実施形態による、モータの目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得る速度である場合における、モータの回転速度とモータ駆動回路に出力されるパルスのデューティ比との時間変化の一例を示す図である。
図6】本実施形態による、モータ制御処理の動作フローチャートである。
図7】本発明の実施形態または変形例に係るモータ制御装置を備えた回胴遊技機の概略斜視図である。
図8】本発明の実施形態または変形例に係るモータ制御装置を備えた回胴遊技機の概略内部構成図である。
図9】リールユニットが有する一つの回転リールの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一つの実施形態によるモータ制御装置を、図を参照しつつ説明する。このモータ制御装置は、例えば、回胴遊技機に実装され、回胴遊技機が有する、可動体の一例である回転リールを駆動する直流モータを制御する。そしてこのモータ制御装置は、上位制御装置から受信した速度設定信号で設定された目標となる回転速度(以下、単に目標回転速度と呼ぶ)で直流モータを回転させる。特に、設定された目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じるような低速である場合、このモータ制御装置は、スティックスリップ現象が生じないトルクを直流モータに発生させて回転リールを回転させる第1の期間(以下、説明の便宜上、オン期間と呼ぶことがある)と、直流モータにブレーキを掛ける第2の期間(以下、説明の便宜上、オフ期間と呼ぶことがある)とが交互に繰り返されるように直流モータの回転を制御する。このような制御により、このモータ制御装置は、直流モータを低速回転させても、直流モータの回転速度を安定させることを図る。
【0012】
なお、以下の実施形態では、速度設定信号は、モータが駆動する回転リールの目標回転速度を設定する。したがって、モータの回転軸に対して回転リールが直接取り付けられる場合、モータの目標回転速度は、速度設定信号にて設定された目標回転速度そのものとなる。一方、モータの回転軸に対して回転リールがギヤを介して取り付けられる場合、モータの目標回転速度は、速度設定信号にて設定された目標回転速度を、そのギヤによるギヤ比で補正した回転速度となる。以下の説明では、速度設定信号にて設定された回転リールの目標回転速度に対応する、モータの目標回転速度を、単にモータの目標回転速度と呼ぶことがある。
【0013】
図1は、本発明の一つの実施形態に係るモータ制御装置の概略構成図である。図1に示されるように、モータ制御装置1は、通信インターフェース回路10と、メモリ11と、判定回路12と、駆動制御回路13と、駆動信号生成回路14と、ブレーキタイミング判定回路15と、速度設定回路16とを有する。
モータ制御装置1が有するこれらの各部は、それぞれ、別個の回路として回路基板(図示せず)上に実装されてもよく、あるいは、これらの各部が集積された集積回路として回路基板上に実装されてもよい。また、駆動制御回路13及び駆動信号生成回路14は、モータ制御部の一例である。
【0014】
モータ制御装置1は、上位制御装置から受信した速度設定信号及び駆動信号に従って、直流モータであるモータ2を駆動するモータ駆動回路3を制御することで、モータ2の回転を制御する。本実施形態では、モータ制御装置1は、モータ2に対する電流の供給のオン/オフを切り替える駆動信号を、パルス幅変調(PWM)方式により生成する。そしてモータ制御装置1は、生成した駆動信号を、モータ駆動回路3へ出力することで、モータ2の回転を制御する。その際、モータ制御装置1は、駆動信号のデューティ比を、速度設定信号にて設定された目標回転速度に対応するデューティ比に設定することで、モータ2をその設定された目標回転速度で回転させる。モータ2が回転することにより、モータ2の回転軸(図示せず)に対して直接またはギヤを介して取り付けられる回転リール5も回転する。なお、回転リール5は、可動体の一例である。そしてモータ制御装置1は、モータ2の回転量を調べるための回転角センサ4から、モータ2の回転軸が所定のサンプリング角度だけ回転する度に、その角度回転したことを示す検知信号を受信し、検知信号の受信回数に応じてモータ2にブレーキを掛け始めるタイミングを制御する。
【0015】
さらに、モータ制御装置1は、速度設定信号にて設定される目標回転速度に基づいて、モータ2を定速回転させるようにモータ2の回転を制御する通常モードと、モータ2に対してオン期間とオフ期間とが交互に繰り返されるようにモータ2の回転を制御する低速モードの何れが適用されるかを判定する。そしてモータ制御装置1は、通常モードと低速モードのうちの適用されるモードに従ってモータ2の回転を制御する。
【0016】
図2は、モータ駆動回路3の回路図である。モータ駆動回路3は、4個のスイッチTR1~TR4を有する。なお、各スイッチは、例えば、トランジスタまたは電界効果トランジスタとすることができる。このうち、二つのスイッチTR1及びTR3が、電源とグラウンドとの間に直列に接続される。同様に、二つのスイッチTR2及びTR4が、電源とグラウンドとの間に直列に接続される。そしてモータ2の正極側端子は、スイッチTR1とTR3の間に接続され、一方、モータ2の負極側端子は、スイッチTR2とTR4の間に接続される。そして各スイッチTR1~TR4のスイッチ端子(例えば、スイッチTR1~TR4がトランジスタであれば、ベース端子に相当し、スイッチTR1~TR4が電界効果トランジスタであれば、ゲート端子に相当)は、それぞれ、駆動信号生成回路14に接続される。そして駆動信号生成回路14からの駆動信号は、各スイッチTR1~TR4のスイッチ端子に入力される。
【0017】
図3は、各スイッチに印加される駆動信号とモータ2の回転方向との関係を表すテーブルの一例を示す図である。
テーブル300に示されるように、モータ2を正転させる場合、スイッチTR1のスイッチ端子とスイッチTR4のスイッチ端子とに、PWM方式に従って設定された、モータ2の回転速度に応じたパルス幅を持つ、周期的なパルスを含む駆動信号が印加される。一方、スイッチTR2のスイッチ端子及びスイッチTR3のスイッチ端子には駆動信号が印加されない。これにより、モータ2には、スイッチTR1とスイッチTR4とにパルスが印加されている間のみ、正極側端子に電源電圧が印加されるので、モータ2は、そのパルス幅に応じた速度で正転する。
なお、モータ2を正転させる場合、スイッチTR1とTR4のうちの何れか一方に駆動信号を印加し、他方を常時オンとしてもよい。
【0018】
一方、モータ2を逆転させる場合、スイッチTR2のスイッチ端子とスイッチTR3のスイッチ端子とに、PWM方式に従って設定された、モータ2の回転速度に応じた周期的なパルスを持つ駆動信号が印加される。一方、スイッチTR1のスイッチ端子及びスイッチTR4のスイッチ端子には駆動信号が印加されない。これにより、モータ2には、スイッチTR2とスイッチTR3とにパルスが印加されている間のみ、負極側端子に電源電圧が印加されるので、モータ2は、そのパルス幅に応じた速度で逆転する。
なお、モータ2を逆転させる場合、スイッチTR2とTR3のうちの何れか一方に駆動信号を印加し、他方を常時オンとしてもよい。
【0019】
本実施形態では、モータ2が正転しているときにモータ2にブレーキをかける場合には、駆動信号生成回路14は、直流モータ2を逆転させる駆動信号をモータ駆動回路3へ出力する。逆に、モータ2が逆転しているときに直流モータ2にブレーキをかける場合には、駆動信号生成回路14は、モータ2を正転させる駆動信号をモータ駆動回路3へ出力する。あるいは、駆動信号生成回路14は、パルス幅をゼロとする駆動信号をモータ駆動回路3へ出力してもよい。
【0020】
また、モータ2の静止状態を維持する場合、スイッチTR3のスイッチ端子とスイッチTR4のスイッチ端子とがオンにされ、スイッチTR1のスイッチ端子とスイッチTR2のスイッチ端子とがオフにされる。
【0021】
さらに、モータ2を駆動しない場合には、各スイッチのスイッチ端子はオフにされる。
【0022】
回転角センサ4は、例えば、光学式のロータリーエンコーダとすることができる。そして回転角センサ4は、例えば、モータ2の回転軸に取り付けられた、その回転軸を中心とする円周方向に沿って複数のスリットを含むスリットの組が形成された円盤と、その円盤を挟んで対向するように配置された光源と受光素子とを有する。そして光源と受光素子との間に何れかのスリットが位置する度に、光源からの光が受光素子に達することで、回転角センサ4は、パルス状の検知信号を出力する。これにより、回転角センサ4は、モータ2が所定のサンプリング角度回転する度に検知信号を出力する。例えば、モータ2の回転軸を中心とする円周方向に沿って、円盤に50個のスリットが設けられることで、回転角センサ4は、直流モータ2の回転軸が1回転する間に50個の検知信号を出力する。さらに、円盤には、モータ2の回転軸からの距離が互いに異なる位置に、上記のスリットの組が2セット設けられてもよい。この場合、一方のスリットの組に含まれる各スリットの円周方向の位置に対して、他方のスリットの組に含まれる各スリットの円周方向の位置が所定のオフセット量だけずれるように、各スリットが形成される。これにより、一方のスリットの組についての検知信号が出力されるタイミングと、他方のスリットの組についての検知信号が出力されるタイミングとの差が、モータ2の回転方向に応じて異なることとなるので、そのタイミングの差により、モータ2の回転方向も検知可能となる。
【0023】
なお、回転角センサ4は、光学式のロータリーエンコーダに限られず、他の形式の回転角センサであってもよい。例えば、回転角センサ4は、モータ2の回転軸を中心とする円周方向に沿って配置される複数のホールICにより構成されてもよい。この場合、回転角センサ4は、モータ2が回転することによる磁場変動を検知して、モータ2が所定角度回転する度に検知信号を出力する。
【0024】
以下、モータ制御装置1の各部について説明する。
【0025】
通信インターフェース回路10は、通信部の一例である。そして通信インターフェース回路10は、例えば、モータ制御装置1を上位の制御装置と接続する。上位の制御装置は、例えば、モータ制御装置1が実装された回胴遊技機本体の制御部である。そして通信インターフェース回路10は、上位の制御装置から、シリアル伝送される複数のビットを持つ速度設定信号を、モータ2が駆動する回転リール5の目標回転速度が変更される度に受信する。例えば、速度設定信号が2ビットを有するとする。この場合、速度設定信号のビット値‘00’は、低速モードが適用されることを示すとともに、目標回転速度として10[rpm]が設定される。同様に、速度設定値のビット値‘01’、‘10’、‘11’のそれぞれは、通常モードが適用されることを示すとともに、目標回転速度として80[rpm]、240[rpm]、333[rpm]が設定される。また、通信インターフェース回路10は、速度設定信号とともに、あるいは、速度設定信号とは別個に、回転リール5の回転方向を指定する回転方向設定信号を上位の制御装置から受信してもよい。
【0026】
さらに、通信インターフェース回路10は、回転リール5が回転駆動されている間、上位の制御装置から、回転リール5を図柄一つ分の回転量だけ回転させる度に、回転リール5の回転を継続することを表す駆動制御信号を受信する。なお、駆動制御信号は、例えば、矩形の単パルス信号とすることができる。
【0027】
通信インターフェース回路10は、速度設定信号を受信する度に、受信した速度設定信号を判定回路12及び駆動制御回路13へ渡す。同様に、通信インターフェース回路10は、回転方向設定信号を受信する度に、受信した回転方向設定信号を駆動制御回路13へ渡す。さらに、通信インターフェース回路10は、駆動制御信号を受信する度に、駆動制御信号を受信したことを駆動制御回路13へ通知する。なお、回転リール5の回転が停止される場合には、上位の制御装置は、駆動制御信号をモータ制御装置1へ送信しないので、通信インターフェース回路10から駆動制御回路13にも、駆動制御信号の受信が通知されない。なお、モータ2の回転が停止されることを、以下では、単にモータ2が停止されると呼ぶことがある。同様に、回転リール5の回転が停止されることを、以下では、単に回転リール5が停止されると呼ぶことがある。
【0028】
メモリ11は、例えば、不揮発性の半導体メモリ回路を有する。そしてメモリ11は、回転リール5の回転制御に必要な情報を記憶する。本実施形態では、メモリ11は、速度設定信号と回転リール5の回転速度との関係を表す速度テーブルと、回転速度ごとの、何れかの図柄が所定の停止位置にて停止するよう、回転中の回転リール5が静止するまで、すなわち、回転中のモータ2が停止するまでの検知信号数(以下、停止所要数と呼ぶ)とを記憶する。なお、停止所要数は、停止閾値の一例である。さらに、メモリ11は、回転速度ごとのデューティ比を表すデューティ比テーブルと、回転速度とブレーキ力に応じたデューティ比との関係を表す速度ブレーキ値テーブルとを記憶する。さらにまた、メモリ11は、モータ2の回転と回転リール5の回転とが完全に同期する理想的な場合においてモータ2が駆動する回転リール5が一周する間に受信する受信信号数(以下、一周所要数と呼ぶ)とを記憶する。さらにまた、メモリ11は、低速モードが適用される場合における、速度設定信号の値、及び、オン期間でのモータ2の回転速度の目標値である低速目標速度を記憶する。
【0029】
判定回路12は、判定部の一例であり、上位の制御装置から受信した速度設定信号にて設定される、モータ2の目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得る速度か否か判定する。本実施形態では、判定回路12は、速度設定信号で設定された値が、低速モードが適用されることを示す値である場合、モータ2の目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得る速度であると判定する。すなわち、判定回路12は、速度設定信号は低速命令であると判定する。一方、速度設定信号で設定された値が通常モードが適用されることを示す値である場合、判定回路12は、モータ2の目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得る速度でないと判定する。すなわち、判定回路12は、速度設定信号は低速命令でないと判定する。
【0030】
速度設定信号が低速命令でない場合、判定回路12は、駆動制御回路13に対して通常モードでモータ2を制御するよう指示する。
【0031】
一方、速度設定信号が低速命令である場合、判定回路12は、駆動制御回路13に対して低速モードでモータ2を制御するよう指示する。さらに、判定回路12は、メモリ11を参照して、スティックスリップ現象が生じないトルクをモータ2に発生させることができる低速目標速度が設定されているか否か判定し、低速目標速度が設定されていない場合、速度設定回路16に対して低速目標速度を設定することを指示する。
【0032】
駆動制御回路13は、通常モード及び低速モードのうち、適用されるモードに従ってモータ2の回転を制御する。
【0033】
判定回路12から通常モードでモータ2を制御することを通知されると、駆動制御回路13は、メモリ11から速度テーブルを読み込んで、その速度テーブルを参照することで、速度設定信号にて設定された値に対応する目標回転速度を求める。さらに、駆動制御回路13は、目標回転速度に応じて、駆動信号のパルスのデューティ比を設定する。駆動制御回路13は、デューティ比テーブルを参照して、目標回転速度に対応するデューティ比を決定すればよい。そして駆動制御回路13は、そのデューティ比を駆動信号生成回路14へ出力する。これにより、駆動制御回路13は、モータ2を定速回転させることができる。
【0034】
駆動制御回路13は、速度設定信号で設定された目標回転速度が変更される度に、その速度設定信号にて設定された目標回転速度に対応するデューティ比を駆動信号生成回路14へ出力する。また、駆動制御回路13は、回転方向設定信号にて指定された回転方向を表す情報を駆動信号生成回路14へ出力する。
【0035】
さらに、駆動制御回路13は、駆動制御信号を受信したことが通知される度に、1図柄当たりの回転量に相当する、回転角センサ4からの検知信号の数(以下、図柄単位検知信号数と呼ぶ)をブレーキタイミング判定回路15へ出力する。例えば、モータ2と回転リール5のギヤ比が1:10であり、回転角センサ4が、モータ2が一回転する間に50個の検知信号を出力するとすれば、回転リール5が一回転する間に500個の検知信号が出力される。したがって、回転リール5に20個の図柄が設けられる場合、1図柄当たり25個の検知信号が出力される。そのため、この例では、駆動制御回路13は、駆動制御信号を受信したことが通知される度に、図柄単位検知信号数として、‘25’をブレーキタイミング判定回路15へ出力する。なお、回転リール5が停止される場合には、駆動制御信号を受信したことが通知されないので、駆動制御回路13は、図柄単位検知信号数を出力しない。
【0036】
さらに、駆動制御回路13は、速度設定信号で設定された目標回転速度が変更される度に、その目標回転速度をブレーキタイミング判定回路15へ通知する。
【0037】
また、駆動制御回路13は、判定回路12から低速モードでモータ2を制御することが通知されると、モータ2に対してオン期間とオフ期間とが交互に繰り返されるようにモータ2の回転を制御する。
【0038】
具体的に、駆動制御回路13は、回転角センサ4から最後に検知信号を受信したときのモータ2の回転位置から第1の角度だけ回転した位置を、低速時目標位置として設定する。なお、第1の角度は、例えば、回転角センサ4によるサンプリング角度(すなわち、回転角センサ4により検知可能なモータ2の回転角度の解像度)と等しいか、そのサンプリング角度の数倍程度に設定される。
【0039】
また、駆動制御回路13は、速度設定信号で設定された目標回転速度でモータ2が回転したときに、回転角センサ4から検知信号を受信する時間間隔(以下、説明の便宜上、基準検知間隔と呼ぶ)を算出する。本実施形態では、モータ2と回転リール5のギヤ比が1:10であるとして、基準検知間隔は次式に従って算出される。
基準検知間隔[ms] = 6000/(速度設定信号にて設定された回転リール5の目標回転速度[rpm]*モータ2の1回転当たりの検知信号数)
【0040】
駆動制御回路13は、モータ2の回転速度を制御するために、アップダウンカウンタを有し、低速モードによる制御が開始された時点でそのアップダウンカウンタの値をゼロにリセットする。また、駆動制御回路13は、基準検知間隔が経過する度に、そのアップダウンカウンタに1を加算する。さらに、駆動制御回路13は、回転角センサ4から検知信号を受信する度に、アップダウンカウンタから1を減算する。したがって、モータ2が、自身の目標回転速度で回転していれば、基準検知間隔の経過によりアップダウンカウンタに1が加算される周期と検知信号の受信によりアップダウンカウンタから1が減算される周期とが一致するので、アップダウンカウンタの値は±1の範囲に収まる。一方、モータ2の実際の回転速度が目標回転速度よりも遅ければ、基準検知間隔の経過によりアップダウンカウンタに1が加算される周期の方が、検知信号の受信によりアップダウンカウンタから1が減算される周期よりも短くなるので、アップダウンカウンタの値は正となり、その絶対値は徐々に増加する。逆に、モータ2の実際の回転速度が目標回転速度よりも速ければ、基準検知間隔の経過によりアップダウンカウンタに1が加算される周期の方が、検知信号の受信によりアップダウンカウンタから1が減算される周期よりも長くなるので、アップダウンカウンタの値は負となり、その絶対値は徐々に増加する。
【0041】
駆動制御回路13は、モータ2の回転角度が低速時目標位置に到達するまでの期間、すなわち、オン期間において、フィードバック制御によりモータ2の回転速度を制御する。そのために、駆動制御回路13は、クロックを有し、低速時目標位置を設定してからの経過時間をクロックにて計時する。そして駆動制御回路13は、その経過時間が基準検知間隔の整数倍となる度に、アップダウンカウンタの値と低速目標速度とに基づいて、モータ2に対して指定する回転速度である指定速度を設定する。上記のように、アップダウンカウンタの値が正であれば、モータ2の実際の回転速度は、目標回転速度よりも遅くなっている。そこで、駆動制御回路13は、アップダウンカウンタの値が正であり、かつ、その絶対値が大きいほど、大きな値となる補正速度量を低速目標速度に加算することで、指定速度を算出する。
【0042】
逆に、アップダウンカウンタの値が負であれば、モータ2の実際の回転速度は、目標回転速度よりも速くなっている。そこで、駆動制御回路13は、アップダウンカウンタの値が負であり、かつ、その絶対値が大きいほど、大きな値となる補正速度量を低速目標速度から減算することで、指定速度を算出する。補正速度量は、例えば、アップダウンカウンタの絶対値が1増える度に5[rpm]増加する。このように、低速目標速度に基づいて指定速度が設定されることで、モータ2は、スティックスリップ現象が生じないトルクを発生させることができる。
【0043】
さらに、駆動制御回路13は、低速時目標位置を設定してから受信した検知信号の数をカウントし、そのカウント値を第1の角度に相当する値と比較する。そのカウント値が第1の角度に相当する値に達した時点において、駆動制御回路13は、モータ2の回転位置が低速時目標位置に達したと判定し、オン期間からオフ期間に切り替える。そして駆動制御回路13は、指定速度を、モータ2に対してブレーキを掛けることを表す値に設定する。その後、駆動制御回路13は、低速時目標位置を設定してからの経過時間が目標回転速度でモータ2が回転したときに低速時目標位置に到達するのに要する目標所要時間に達するまでを、オフ期間とする。経過時間が目標所要時間に達すると、駆動制御回路13は、オフ期間からオン期間に切り替えるとともに、上記のように、次の低速時目標位置を設定して、上記の処理を繰り返す。
【0044】
駆動制御回路13は、デューティ比テーブルを参照して、設定された指定速度に対応するデューティ比を決定すればよい。そして駆動制御回路13は、そのデューティ比を駆動信号生成回路14へ出力する。なお、指定速度が低速目標速度に基づいて設定される場合における、駆動信号生成回路14からの駆動信号は、スティックスリップ現象が発生しないトルクをモータ2に発生させる第1の駆動信号に相当する。一方、指定速度がモータ2に対してブレーキを掛けることを表す場合における、駆動信号生成回路14からの駆動信号は、モータ2にブレーキを掛ける第2の駆動信号に相当する。
【0045】
図4は、アップダウンカウンタの値の時間経過と、指定速度の設定タイミングとの関係の一例を示す図である。図4において、横軸は時間経過を表し、縦軸はアップダウンカウンタの値を表す。さらに、波形400は、各時刻における、アップダウンカウンタの値を表す。
【0046】
波形400に示されるように、基準検知間隔Pが経過する度に、アップダウンカウンタの値は1増加する。また、検知信号が受信される度に、アップダウンカウンタの値は1減少する。そして上記のように、アップダウンカウンタの値が正であれば、指定速度を低速目標速度よりも速くするよう、指定速度が修正される。逆に、アップダウンカウンタの値が負であれば、指定速度を低速目標速度よりも遅くするよう、指定速度が修正される。そして、モータ2の回転角度が低速時目標位置に達すると、オン期間からオフ期間に切り替わり、指定速度は、ブレーキに相当する値に設定される。
【0047】
図5(a)は、比較例による、モータ2の目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得る速度である場合における、モータ2の回転速度とモータ駆動回路3に出力されるパルスのデューティ比との時間変化の一例を示す図である。この比較例では、フィードバック制御により、モータ2の回転速度が目標回転速度に近付くように制御される。一方、図5(b)は、本実施形態による、モータ2の目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得る速度である場合における、モータ2の回転速度とモータ駆動回路3に出力されるパルスのデューティ比との時間変化の一例を示す図である。図5(a)及び図5(b)において、横軸は時間を表す。また、左側の縦軸は、回転速度を表し、右側の縦軸はデューティ比を表す。また、図5(a)において、波形501は、モータ2の回転速度の時間変化を表し、波形502は、デューティ比の時間変化を表す。同様に、図5(b)において、波形511は、モータ2の回転速度の時間変化を表し、波形512は、デューティ比の時間変化を表す。
【0048】
図5(a)において波形501及び波形502に示されるように、比較例では、モータ2の回転速度は、目標回転速度Stに収束せずに不安定となり、場合によっては、モータ2が停止してしまうことが分かる。
【0049】
これに対して、図5(b)において波形511及び波形512に示されるように、本実施形態によれば、スティックスリップ現象が生じないトルクをモータ2が発生させるオン期間とオフ期間とが非常に短い周期で繰り返されることで、モータ2の回転速度が目標回転速度Stに近い速度に収束しており、かつ、その回転速度が安定していることが分かる。
【0050】
なお、駆動制御回路13は、低速モードが適用される場合についても、通常モードが適される場合と同様に、駆動制御信号を受信したことが通知される度に、図柄単位検知信号数をブレーキタイミング判定回路15へ出力する。さらに、駆動制御回路13は、速度設定信号で設定された目標回転速度をブレーキタイミング判定回路15へ通知する。これにより、低速モードが適用される場合でも、通常モードが適用される場合と同様に、回転リール5を目標位置にて停止することが可能となる。
【0051】
駆動信号生成回路14は、例えば、出力するパルスの幅(すなわち、デューティ比)を変更可能な可変パルス生成回路と、可変パルス生成回路により生成された、駆動信号である周期的なパルス信号を、モータ駆動回路3の何れのスイッチへ出力するかを切り替えるスイッチ回路とを有する。そして駆動信号生成回路14は、駆動制御回路13からデューティ比が通知される度に、モータ2を駆動するための駆動信号であるパルス信号をPWM方式に従って生成し、所定の出力周期ごとに、そのパルス信号を、モータ駆動回路3へ出力することで、モータ2の回転を制御する。その際、駆動信号生成回路14は、通知されたデューティ比に従って、パルス信号のパルス幅を設定すればよい。一方、駆動信号生成回路14は、ブレーキタイミング判定回路15からブレーキ開始タイミングになったことを通知されると、モータ2にブレーキを掛けて停止させるための駆動信号を、モータ駆動回路3へ出力する。
【0052】
駆動信号生成回路14は、モータ2にブレーキを掛ける場合、メモリ11から読み込んだブレーキ値テーブルを参照して、モータ2に印加するブレーキ力を設定する。
【0053】
本実施形態では、駆動信号生成回路14は、ブレーキ開始タイミングから、停止所要数だけモータ2が回転した時点でモータ2が停止するよう、ブレーキ力を制御する。そこで、ブレーキ力に相当する駆動信号のデューティ比は、モータ2の回転速度に応じて設定される。すなわち、駆動信号生成回路14は、メモリ11に記憶されている速度ブレーキ値テーブルを参照して、モータ2の回転速度に対応するデューティ比を特定すればよい。なお、速度ブレーキ値テーブルでは、例えば、モータ2の回転速度が高いほど、高いデューティ比、すなわち、高いブレーキ力が設定される。
【0054】
駆動信号生成回路14は、ブレーキ力を決定するために、回転角センサ4から受信した検知信号に基づいて、モータ2の現在の回転速度を算出すればよい。そのために、駆動信号生成回路14は、例えば、タイマとカウンタとをさらに有する。そして駆動信号生成回路14は、タイマにより計時された一定期間中に受信した検知信号の数をカウンタによりカウントし、その検知信号の数に、回転角センサ4のサンプリング角度を乗じて得られる回転量をその一定期間で除することで回転速度を算出する。なお、駆動信号生成回路14は、一定期間内に受信した検知信号の数が1個以下である場合、モータ2の回転速度を0としてもよい。
【0055】
駆動信号生成回路14は、モータ2が停止するまで、特定したデューティ比の駆動信号をモータ駆動回路3へ出力する。
【0056】
なお、駆動信号生成回路14は、モータ2の回転量が目標回転量となり、かつ、モータ2の回転速度が0になると、モータ2に対するブレーキを停止させ、モータ2の静止状態を維持させる駆動信号をモータ駆動回路3へ出力してもよい。
【0057】
ブレーキタイミング判定回路15は、ブレーキタイミング判定部の一例であり、停止設定値に応じてモータ2にブレーキを掛け始めるタイミング(すなわち、ブレーキ開始タイミング)を決定する。
【0058】
ブレーキタイミング判定回路15は、回転リール5の目標停止位置に対応する所定の目標回転量と、回転リール5の現在の回転位置に対応するモータ2の回転量との差(すなわち、残回転量)が停止所要数以下になるとブレーキ開始タイミングになったと判定する。本実施形態では、ブレーキタイミング判定回路15は、駆動制御回路13から受け取った図柄単位検知信号数の累積値(以下、単に累積値と呼ぶ)と、受信した検知信号の数とに基づいてブレーキ開始タイミングを決定する。なお、モータ2が、回転リール5の1図柄分回転しても上位制御装置から駆動制御信号を受信しなかったとき、すなわち、モータ2の回転の停止が指示されたときの累積値が、モータ2を停止させる目標停止位置までのモータ2の目標回転量に相当し、それ以降に受信した検知信号の数がモータ2の回転量に相当する。したがって、回転角センサ4から検知信号を受信する度に更新される累積値は、目標回転量までの残回転量に相当する。
【0059】
例えば、ブレーキタイミング判定回路15は、回転リール5が回転を開始する前の時点で、累積値を0に設定する。そしてブレーキタイミング判定回路15は、駆動制御回路13から回転リール5の回転速度を通知されると、その回転速度に対応する停止所要数をメモリ11から読み込む。またブレーキタイミング判定回路15は、駆動制御回路13から図柄単位検知信号数を受信する度に、累積値に受信した図柄単位検知信号数を加算する。
【0060】
一方、ブレーキタイミング判定回路15は、回転角センサ4から検知信号を受信する度に、累積値から1を減じる。そしてブレーキタイミング判定回路15は、累積値がメモリ11から読み込んだ停止所要数以下となったときをブレーキ開始タイミングとする。
【0061】
速度設定回路16は、速度設定部の一例であり、判定回路12から低速目標速度を設定することを指示されると、低速目標速度を設定する。
【0062】
例えば、速度設定回路16は、モータ2に対して候補速度を設定する。最初に設定される候補速度は、例えば、モータ2に対して設定可能であり、かつ、0でない最小速度とすることができる。速度設定回路16は、駆動制御回路13と同様に、メモリ11に記憶されているデューティ比テーブルを参照することで、候補速度に対応するデューティ比を決定する。そして速度設定回路16は、決定したデューティ比を、上位の制御装置から受信した回転方向設定信号にて指定された回転方向を表す情報とともに駆動信号生成回路14へ出力することで、モータ2に、その指定された回転方向に候補速度で回転させるための電力が供給されるようにする。
【0063】
その後、速度設定回路16は、設定した候補速度に相当するデューティ比を駆動信号生成回路14へ出力してから所定時間内に回転角センサ4から検知信号を受信できたとき、その候補速度を、低速目標速度として設定する。一方、速度設定回路16は、設定した候補速度に相当するデューティ比を駆動信号生成回路14へ出力してから所定時間内に回転角センサ4から検知信号を受信できない場合、すなわち、モータ2が回転していない場合、速度設定回路16は、候補速度を所定量だけ増加して、上記の処理を繰り返す。そして速度設定回路16は、設定した候補速度に相当するデューティ比を駆動信号生成回路14へ出力してから所定時間内に回転角センサ4から検知信号を最初に受信できたときの候補速度を、低速目標速度として設定すればよい。これにより、速度設定回路16は、スティックスリップ現象を生じないだけのトルクをモータ2に発生させる回転速度を低速目標速度に設定することができる。
【0064】
速度設定回路16は、低速目標速度を設定すると、設定した低速目標速度をメモリ11に書き込む。一度設定された低速目標速度は、モータ制御装置1に電力が供給されている間、メモリ11に記憶される。したがって、低速目標速度の設定は、モータ制御装置1が最初に低速命令を受信したときに1回だけ実行されればよい。
【0065】
なお、速度設定回路16は、モータ2の回転方向ごとに、上記の処理を実行することで、モータ2の回転方向ごとに低速目標速度を設定してもよい。
【0066】
図6は、本実施形態による、モータ制御処理の動作フローチャートである。
【0067】
判定回路12は、上位の制御装置から受信した速度設定信号の値が、低速モードが適用される値か否か判定する(ステップS101)。速度設定信号の値が、低速モードが適用される値でない場合(ステップS101-No)、判定回路12は、駆動制御回路13に対して通常モードが適用されることを通知する。そして駆動制御回路13は、回転リール5が速度設定信号にて設定された目標回転速度で定速回転するように、駆動信号生成回路14及びモータ駆動回路3を介してモータ2の回転を制御する(ステップS102)。
【0068】
一方、速度設定信号の値が、低速モードが適用される値である場合(ステップS101-Yes)、判定回路12は、駆動制御回路13に対して低速モードが適用されることを通知する。そして駆動制御回路13は、低速目標速度に従って設定される、スティックスリップ現象が生じないトルクをモータ2に発生させるよう、指定速度でモータ2を回転させるオン期間とモータ2にブレーキを掛けるオフ期間とが交互に繰り返されるように、駆動信号生成回路14及びモータ駆動回路3を介してモータ2の回転を制御する(ステップS103)。
【0069】
また、ブレーキタイミング判定回路15は、モータ2の残回転量と停止所要数とを比較し、残回転量が停止所要数以下になると、駆動信号生成回路14に、モータ2にブレーキを掛けさせることで、回転リール5を目標停止位置にて停止させる(ステップS104)。そしてモータ制御装置1は、モータ制御処理を終了する。
【0070】
以上に説明してきたように、このモータ制御装置は、モータの目標回転速度が、スティックスリップ現象が生じ得るような低い回転速度である場合、スティックスリップ現象が生じないトルクをモータに発生させるオン期間とモータにブレーキを掛けるオフ期間とが繰り返されるようにモータの回転を制御する。これにより、このモータ制御装置は、モータの実際の回転速度を、目標回転速度に近付けるとともに、モータの回転速度を安定させることができる。
【0071】
上記の実施形態または変形例によるモータ制御装置は、弾球遊技機または回胴遊技機といった遊技機に搭載されてもよい。
【0072】
図7は、上記の実施形態または変形例によるモータ制御装置を備えた回胴遊技機100の概略斜視図である。また図8は、回胴遊技機100の回路ブロック図である。さらに、図9は、リールユニット120が有する一つの回転リールの概略斜視図である。図7に示すように、回胴遊技機100は、遊技機本体である本体筐体110と、リールユニット120と、スタートレバー130と、ストップボタン140a~140cとを有する。
【0073】
また回胴遊技機100は、本体筐体110内に、回胴遊技機100の各部を制御する制御回路150と、リールユニット120が有する回転リールを駆動するための3個のモータ151-1~151-3と、各モータを駆動する3個のモータ駆動回路152-1~152-3と、3個のモータ制御装置153-1~153-3とを有する。なお、モータ制御装置153-1~153-3は、上記の実施形態または変形例によるモータ制御装置とすることができる。また、モータ駆動回路152-1~152-3は、上記の実施形態または変形例によるモータ駆動回路とすることができる。さらに、回胴遊技機100は、回胴遊技機100の各部に電力を供給する電源回路(図示せず)及び制御回路150からの制御信号に応じてメダルを一時貯留し、かつメダルを排出するためのメダル貯留及び排出機構(図示せず)を有する。
【0074】
本体筐体110の前面の中央上部には開口111が形成されており、その開口111を通じて、リールユニット120の一部が視認可能になっている。また開口111の下側の枠112の上面には、メダルを投入するためのメダル投入口113が形成されている。
【0075】
リールユニット120は、3個の回転リール121-1~121-3を有する。回転リール121-1~121-3は、それぞれ、制御回路150からの駆動制御信号に応じて、本体筐体110の前面に対して略平行かつ略水平な回転軸(図示せず)を回転中心として、それぞれ、別個に回転可能となっている。さらに、回転リール121-1~121-3のそれぞれの回転軸は、ギヤ(図示せず)を介してモータ151-1~151-3の回転軸と係合される。そしてモータ151-1~151-3が回転することで、回転リール121-1~121-3も回転する。さらに、モータ151-1~151-3のそれぞれの回転軸には、回転角センサ(図示せず)が取り付けられ、回転角センサは、モータ151-1~151-3が所定のサンプリング角度だけ回転する度に、検知信号をモータ制御装置153-1~153-3へ出力する。
また、回転リール121-1~121-3の表面は、それぞれ、回転方向、すなわち、円周方向に沿って複数の略同一幅を持つ領域に区切られ、領域ごとに様々な図柄が描かれており、それら領域のうちの一部が開口111を介して遊技者に視認可能となっている。
【0076】
スタートレバー130は、本体筐体110の枠112の前面に向かって左側に設けられている。また、枠112の前面略中央には、ストップボタン140a~140cが設けられている。ストップボタン140a~140cは、それぞれ、回転リール121-1~121-3に対応する。
【0077】
本体筐体110の前面の下部には、メダルを排出するためのメダル排出口114が形成されている。そしてメダル排出口114の下方には、排出されたメダルが落下することを防止するためのメダル受け皿115が取り付けられている。
【0078】
メダルがメダル投入口113に投入された後に、スタートレバー130が操作されると、スタートレバー130が操作されたことを示す信号が制御回路150へ伝達される。そして制御回路150は、回転リール121-1~121-3の回転を開始させる。すなわち、制御回路150は、モータ制御装置153-1~153-3へ、速度設定信号を出力するとともに、回転リール121-1~121-3がそれぞれ1図柄分だけ回転する度に、駆動制御信号を出力する。なお、制御回路150は、遊技の状態に応じて、回転リール121-1~121-3の回転速度を変更してもよい。この場合、制御回路150は、回転リール121-1~121-3の回転速度を変更する度に、変更後の回転速度を目標回転速度として設定する速度設定信号をモータ制御装置153-1~153-3へ出力すればよい。なお、制御回路150は、回転リール121-1~121-3のそれぞれごとに、異なる回転速度を設定してもよい。また、制御回路150は、回転リール121-1~121-3のそれぞれごとに、回転速度を変更するタイミングを互いに異ならせてもよい。さらにまた、制御回路150は、遊技の状態によって、回転リール121-1~121-3の何れかを低速回転させる場合には、モータ制御装置153-1~153-3のうちのその低速回転する回転リールに対応するモータ制御装置に対して、低速モードが適用されることを示す速度設定信号を出力する。
【0079】
その後、本体筐体110の枠112の前面略中央に設けられたストップボタン140a~140cの何れかが押下されると、制御回路150は、その押下されたボタンから押下されたことを示す信号を受信し、その押下されたボタンに対応する回転リールの回転を停止させる。あるいは、制御回路150は、回転リール121-1~121-3のうち、回転を開始してから所定期間が経過するまでに、対応するストップボタンが押下されなかった回転リールを、その所定期間経過後に停止させる。回転リールを停止させる場合、制御回路150は、駆動制御信号の出力を停止すればよい。
そして全ての回転リールが停止した時点で、同一の図柄が全ての回転リールにわたって一列に並んでいると、制御回路150は、その図柄に応じた所定枚数のメダルを、メダル排出口114を通じて排出する。
【0080】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 モータ制御装置
2 直流モータ
3 モータ駆動回路
4 回転角センサ
10 通信インターフェース回路
11 メモリ
12 判定回路
13 駆動制御回路
14 駆動信号生成回路
15 ブレーキタイミング判定回路
16 速度設定回路
100 回胴遊技機
110 本体筐体
120 リールユニット
121-1~121-3 回転リール
130 スタートレバー
140a~140c ストップボタン
150 制御回路
151-1~151-3 モータ
152-1~152-3 モータ駆動回路
153-1~153-3 モータ制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9