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特許7533148射出成形機管理システムおよびコンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】射出成形機管理システムおよびコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020190983
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080040
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大月 芳明
(72)【発明者】
【氏名】塚田 恒
(72)【発明者】
【氏名】三間 雄介
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-164027(JP,A)
【文献】特開2005-297571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機管理システムであって、
射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶する計測データ記憶部と、
前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶する製造データ記憶部と、
予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる制御部と、
を備え
前記統計図は、箱ひげ図であり、
前記箱ひげ図には、前記計測データの外れ値が、前記計測データの最大値または最小値とは表示形式を異ならせて表示される、射出成形機管理システム。
【請求項2】
射出成形機管理システムであって、
射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶する計測データ記憶部と、
前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶する製造データ記憶部と、
予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる制御部と、
を備え、
前記統計図は、箱ひげ図であり、
前記制御部は、予め定められた操作が行われた場合、前記計測データを前記箱ひげ図で表示させる第1表示モードと、前記計測データを折れ線グラフで表示させる第2表示モードとを切り替える、射出成形機管理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の射出成形機管理システムであって、
前記製造データには、予め定められた品質基準を満足する前記成形品の数量、または、前記品質基準を満足しない前記成形品の数量に関する情報が含まれている、射出成形機管理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の射出成形機管理システムであって、
前記製造データには、前記射出成形機の成形条件の変更履歴に関する情報が含まれている、射出成形機管理システム。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の射出成形機管理システムであって、
前記表示部は、携帯端末に設けられる、射出成形機管理システム。
【請求項6】
コンピュータープログラムであって、
射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、
前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、
予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる機能と、
をコンピューターに実現させ
前記統計図は、箱ひげ図であり、
前記箱ひげ図には、前記計測データの外れ値が、前記計測データの最大値または最小値とは表示形式を異ならせて表示される、コンピュータープログラム。
【請求項7】
コンピュータープログラムであって、
射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、
前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、
予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる機能と、
をコンピューターに実現させ、
前記統計図は、箱ひげ図であり、
予め定められた操作が行われた場合、前記計測データを前記箱ひげ図で表示させる第1表示モードと、前記計測データを折れ線グラフで表示させる第2表示モードとを切り替える、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機管理システムおよびコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機による成形品の生産達成率を表す折れ線グラフと、成形条件の変更の有無を表す帯グラフと、射出成形機のセンサーから得られるデータを表す折れ線グラフとを同一画面上に表示する装置が開示されている。この装置では、共通の時間軸を横軸にして各グラフが表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-293761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機では1分間に数ショットの頻度で成形品が成形されることがあるので、例えば、特許文献1の装置を用いて1日分のグラフを表示させると、センサーによる計測値が数千ショット分プロットされた折れ線グラフが表示されることがある。計測値の変動が大きい場合には、計測値の折れ線グラフが表示されても、計測データと他のデータとの相関関係を解析することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、射出成形機管理システムが提供される。この射出成形機管理システムは、射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶する計測データ記憶部と、前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶する製造データ記憶部と、予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる制御部と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、コンピュータープログラムが提供される。このコンピュータープログラムは、射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる機能と、をコンピューターに実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】射出成形機管理システムの概略構成を示す説明図。
図2】管理画面の一例を示す説明図。
図3】計測データの折れ線グラフの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における射出成形機管理システム10の概略構成を示す説明図である。射出成形機管理システム10は、射出成形機100と、取出機200と、検査装置300と、表示部400と、管理装置500とを備えている。
【0009】
図1には、射出成形機管理システム10によって製造される成形品の流れが、実線矢印で示されている。射出成形機管理システム10は、射出成形機100によって成形品を成形し、取出機200によって射出成形機100から成形品を取り出して検査装置300に搬送し、検査装置300によって成形品を検査する。
【0010】
射出成形機100は、第1制御部110と、それぞれ図示しない射出装置と型締装置を備えている。型締装置には、キャビティーを有する成形型が装着される。成形型は、金属製でもよいし、セラミック製でもよいし、樹脂製でもよい。金属製の成形型のことを金型と呼ぶ。第1制御部110は、1つまたは複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。第1制御部110は、複数のコンピューターによって構成されてもよい。後述する取出機200の第2制御部210、および、検査装置300の第3制御部310についても、第1制御部110と同様の構成である。
【0011】
第1制御部110は、射出成形機100の各部を制御して射出成形を行い、成形品を成形する。より具体的には、第1制御部110は、型締装置を制御して成形型を型締めし、射出装置を制御して材料を可塑化して成形型に射出することによって、成形型に設けられたキャビティーの形状に応じた形状を有する成形品を成形する。本実施形態では、成形型に設けられたキャビティー数は1である。つまり、1回の射出成形によって、1つの成形品が成形される。1回の射出成形のことを1ショットと呼ぶ。
【0012】
第1制御部110は、成形機データを生成して、成形機データを管理装置500に送信する。成形機データには、計測データと、製造条件データとが含まれている。計測データには、射出成形機100に設けられた各種センサーによる計測値、および、計測時刻に関する情報が表されている。製造条件データには、製造条件の内容と、製造条件の変更履歴に関する情報が表されている。本実施形態では、製造条件には、射出成形機100に入力された成形条件と、成形品の材料と、射出成形機100の運転を担当する担当者と、射出成形機100の稼働状況と、射出成形機100に装着された成形型のメンテナンス状況とが含まれている。製造条件の変更履歴には、製造条件の変更内容、および、変更時刻が表されている。
【0013】
本実施形態の取出機200は、第2制御部210と、取出ロボットと、切断機とによって構成されている。第2制御部210は、取出ロボットおよび切断機の動作を制御する。取出ロボットは、例えば、水平多関節ロボットや垂直多関節ロボットである。取出ロボットは、射出成形機100の成形型から成形品を取り出す。切断機は、成形型で成形品とともに成形されるスプルーやランナーを、切断によって成形品から除去する機器である。本実施形態では、取出ロボットは、射出成形機100のエジェクターピンによって成形型から離型された成形品を、取出ロボットのアームの先端に取り付けられたエンドエフェクターによって直接把持して取り出す。その後、切断機によってスプルーやランナーが成形品から除去され、スプルーやランナーが除去された成形品が取出ロボットによって検査装置300に搬送される。なお、他の実施形態では、取出ロボットは、例えば、成形品を真空吸着して把持するロボットであってもよい。取出機200は、切断機を備えていなくてもよい。
【0014】
本実施形態の検査装置300は、第3制御部310とカメラとによって構成される。第3制御部310は、カメラを制御して成形品を撮像し、撮像した成形品の画像を解析することによって、成形品の外観検査および寸法検査を行う。
【0015】
第3制御部310は、検査装置データを生成して、管理装置500に送信する。検査装置データには、検査結果データと、検査条件データとが含まれている。検査結果データには、検査結果の内容と、検査時刻とが表されている。検査結果には、検査された成形品が、予め定められた品質基準を満足している適合品であるか、品質基準を満足していない不適合品であるかについての情報が表されている。外観に関する品質基準、および、成形品の寸法に関する品質基準を満足している成形品は適合品であり、外観に関する品質基準と寸法に関する品質基準とのうち少なくともいずれか一方を満足していない成形品は不適合品である。外観に関する品質基準を満足していないことを外観不適合と呼び、寸法に関する品質基準を満足していないことを寸法不適合と呼ぶ。本実施形態では、検査結果データには、外観不適合による不適合品であるか、寸法不適合による不適合品であるかについての情報が表されている。検査条件データには、検査条件の内容と、検査条件の変更履歴に関する情報とが表されている。本実施形態では、検査条件には、検査装置の運転を担当する担当者が含まれている。検査条件の変更履歴には、検査条件の変更内容、および、変更時刻が表されている。
【0016】
本実施形態では、表示部400は、作業者が携帯する携帯端末に設けられた液晶ディスプレイである。携帯端末とは、例えば、タブレット端末や小型ノートパソコンやスマートフォン等のことを意味する。なお、表示部400は、携帯端末に設けられたディスプレイではなく、例えば、管理装置500に接続されたディスプレイであってもよいし、工場内に設置された大型ディスプレイでもよい。
【0017】
管理装置500は、1つまたは複数のプロセッサーと、主記憶装置と、補助記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。なお、管理装置500は、複数のコンピューターによって構成されてもよい。
【0018】
管理装置500は、射出成形機100、検査装置300、および、表示部400が設けられた携帯端末と通信可能に接続されている。本実施形態では、管理装置500は、ネットワークNTを介して、射出成形機100、検査装置300、および、表示部400が設けられた携帯端末と相互に通信可能に構成されている。ネットワークNTは、例えば、LANであってもよいし、WANであってもよいし、インターネットであってもよい。管理装置500は、ネットワークNTを介して、射出成形機100や取出機200や検査装置300と通信することによって、射出成形機100や取出機200や検査装置300とのデータの送受信等を実行する。
【0019】
管理装置500は、計測データ記憶部510と、製造データ記憶部520と、表示制御部530とを有している。計測データ記憶部510および製造データ記憶部520は、管理装置500の補助記憶装置上に設けられている。表示制御部530は、管理装置500のプロセッサーが射出成形管理プログラムを実行することによってソフトウェア的に実現されている。なお、表示制御部530のことを単に制御部と呼ぶことがある。
【0020】
計測データ記憶部510は、射出成形機100から取得された計測データを時系列的に記憶する。製造データ記憶部520は、射出成形機100から取得された製造条件データと、検査装置300から取得された検査条件データと検査結果データを時系列的に記憶する。製造条件データと検査条件データと検査結果データとのことを製造データと呼ぶ。
【0021】
表示制御部530は、計測データおよび製造データを表示部400への表示を制御する。本実施形態では、表示制御部530は、射出成形管理プログラムを実行することによって、計測データと製造データを読み込んで管理画面を生成し、管理画面を表示部400に表示させる。表示制御部530は、予め定められた期間ごとの計測データの統計図と、統計図の期間における製造データとを対応付けて表示部400に表示させる。
【0022】
図2は、表示部400に表示される管理画面SCの一例を示す説明図である。本実施形態では、管理画面SCには、上から順に、製造実績表示領域RG1と、変更履歴表示領域RG2と、計測データ表示領域RG3とが設けられている。各領域RG1~RG3には、横軸を時間軸としたグラフが表されている。各グラフは、共通の時間軸を有している。
【0023】
製造実績表示領域RG1には、管理装置500に予め入力された成形品の製造個数の目標数に関する情報と、製造された成形品のうちの適合品の個数の実績数に関する情報と、製造された成形品のうちの不適合品の個数の実績数に関する情報とが表示されている。本実施形態では、製造実績表示領域RG1には、残りの製造個数についての目標数の1時間ごとの推移が折れ線グラフで表示されている。残りの製造個数についての目標数は、生産の開始から所定の時刻までの期間に生産が予定される成形品の数量を、1つの生産ロットで予定される成形品の総数から差し引いた値である。この折れ線グラフには、残りの製造個数についての実績数の1時間ごとの推移が菱形印で表示されている。残りの製造個数についての実績数は、生産の開始から所定の時刻までの期間に生産された成形品の数量を、1つの生産ロットで予定される成形品の総数から差し引いた値である。
【0024】
本実施形態では、生産開始当日の午前0時から翌日の午前0時までの24時間分の情報が表された各種グラフが表示制御部530によって生成されて、表示部400に表示される。図2には、各種グラフのうちの午前0時台から午前6時台までの情報が表された部分が表されている。製造実績表示領域RG1の下端部に設けられたスライダーを操作することによって、各種グラフのうちの午前7時台以降の情報が表された部分を閲覧できる。なお、生産開始当日の午前0時から翌日の午前0時までの24時間分の情報が表された各種グラフが表示部400に表示されるとしたが、各種グラフに表される期間の長さは、24時間よりも長くてもよいし、24時間よりも短くてもよい。例えば、生産の開始が午前9時であり、生産の終了が翌日の午前11時である場合には、生産開始当日の午前0時から翌日の午後0時までの36時間分の情報が表された各種グラフが表示部400に表示されてもよい。
【0025】
製造実績表示領域RG1には、上述した折れ線グラフとともに、1時間ごとの不適合数の推移を表す棒グラフが表されている。棒グラフのうちの下側部分には、外観不適合による不適合品の個数が表され、棒グラフのうちの上側部分には、寸法不適合による不適合品の個数が表されている。図2に示した例では、午前0時台の不適合数が0個であることが表されている。午前1時台には、外観不適合による不適合数が5個であることが表されている。午前4時台には、外観不適合による不適合数が2個であり、寸法不適合による不適合数が3個であることが表されている。
【0026】
変更履歴表示領域RG2には、製造条件や検査条件の変更履歴が表されている。本実施形態では、変更履歴表示領域RG2には、製造条件や検査条件のうち、「装置担当者」、「検査担当者」、「装置稼働状況」、「金型保全履歴」、「材料ロット」、および、「成形条件設定」の変更履歴を表示する欄が設けられている。各欄には、各条件の変更履歴が帯グラフ状に表示されている。製造条件や検査条件が変更された時刻を境界にして帯に施されたハッチングの種類が切り替えられることによって、製造条件や検査条件の変更履歴が表されている。なお、ハッチングではなく、帯の色が切り替えられることによって、製造条件や検査条件の変更履歴が表されてもよい。
【0027】
「装置担当者」の欄には、射出成形機100の運転を担当する担当者の変更履歴が表されている。「検査担当者」の欄には、検査装置300による検査を担当する担当者の変更履歴が表されている。「装置稼働状況」の欄には、射出成形機100の稼働状況の変更履歴が表されている。稼働状況とは、通常運転中や、異常停止中等の状況のことを意味する。「金型保全履歴」の欄には、金型に付着した汚れを除去する清掃作業やエジェクターピン等の金型内の駆動部分にグリスを補充する作業等の金型のメンテナンスが実行された履歴が表されている。「材料ロット」の欄には、成形品の成形に用いられる材料ロットの変更履歴が表されている。「成形条件設定」の欄には、射出成形機100の成形条件の変更履歴が表されている。
【0028】
計測データ表示領域RG3には、計測データが表されている。本実施形態では、計測データのうち、「最大射出圧力」、「充填時間」、および、「射出最前進位置」を表示する欄が設けられている。最大射出圧力とは、1ショットでの射出圧力の最大値のことを意味する。充填時間とは、1ショットでの可塑化された材料が成形型に充填される時間のことを意味する。射出最前進位置とは、1ショットでの可塑化された材料を成形型に射出するために射出装置のプランジャーの先端部が最も前進した位置のことを意味する。
【0029】
計測データ表示領域RG3には、1時間ごとの計測データの箱ひげ図が表示されている。表示制御部530は、計測データ記憶部510に記憶された計測データを読み込んで、計測データに含まれる計測時刻に関する情報を用いて計測データを1時間ごとの計測データに仕分ける。表示制御部530は、1時間ごとの計測データを計測値が小さい順に整理し、1時間ごとの計測データの最大値と最小値とを決定する。
【0030】
表示制御部530は、1時間ごとの計測データの第二四分位数、換言すれば、1時間ごとの計測データの中央値を決定する。表示制御部530は、1時間ごとの計測データのデータ数が奇数である場合には、1時間ごとの計測データを小さい順に並べた際に中央に配置される計測値を1時間ごとの計測データの中央値に決定し、1時間ごとの計測データのデータ数が偶数である場合には、1時間ごとの計測データを小さい順に並べた際に中央に最も近い位置に配置される2つの計測値の平均値を1時間ごとの計測データの中央値に決定する。
【0031】
表示制御部530は、1時間ごとの計測データを中央値よりも値の小さな下位データと、中央値よりも値の大きな上位データとに仕分けして、1時間ごとの計測データの第一四分位数と、第三四分位数とを決定する。
【0032】
表示制御部530は、下位データのデータ数が奇数である場合には、下位データを小さい順に並べた際に中央に配置される計測値を計測データの第一四分位数に決定し、下位データのデータ数が偶数である場合には、下位データを小さい順に並べた際に中央に最も近い位置に配置される2つの計測値の平均値を計測データの第一四分位数に決定する。
【0033】
表示制御部530は、上位データのデータ数が奇数である場合には、上位データを小さい順に並べた際に中央に配置される計測値を計測データの第三四分位数に決定し、上位データのデータ数が偶数である場合には、上位データを小さい順に並べた際に中央に最も近い位置に配置される2つの計測値の平均値を計測データの第三四分位数に決定する。
【0034】
表示制御部530は、第一四分位数を下端とし、第三四分位数を上端とする四角形の箱を生成する。表示制御部530は、中央値を箱の中に横線で表す。表示制御部530は、計測データの最大値と最小値とを横線で表す。表示制御部530は、箱の下端と最小値を表す横線とを縦線で接続する。箱の上端と最大値を表す横線とを縦線で接続する。四角形の部分のことを箱と呼ぶ。箱に対して上側や下側に設けられた横線と当該横線と箱とを接続する縦線とのことをひげと呼ぶ。箱の縦の長さや、ひげの縦の長さは、計測データのばらつきを表している。
【0035】
本実施形態では、表示制御部530は、1時間ごとの計測データの外れ値が検出された場合には、最大値や最小値とは異なる表示形式で外れ値を表示させる。表示制御部530は、例えば、第一四分位数以上、かつ、第三四分位数以下の範囲である四分位範囲(IQR)を用いて、第一四分位数-1.5×IQRよりも大きな計測値のうちの最小値をひげの下端とし、第三四分位数+1.5×IQRよりも小さな計測値のうちの最大値をひげの上端として、ひげの上端よりも大きい計測値、および、ひげの下端よりも小さい計測値を外れ値として検出する。本実施形態では、外れ値が検出された場合、表示制御部530は、ひげに代えてドットで外れ値を表示する。なお、表示制御部530は、所定の上限値を超える値、および、所定の下限値を下回る値を外れ値として検出してもよい。
【0036】
図3は、計測データの折れ線グラフを示す説明図である。例えば、箱ひげ図をクリックする等の所定の操作が実行されることによって、図2に示した箱ひげ図がドリルダウンされると、表示制御部530は、計測データが箱ひげ図で表された第1表示モードから、計測データが折れ線グラフで表された第2表示モードに切り替える。第2表示モードでは、折れ線グラフの横軸を時間軸として、1ショットごとの射出最大圧力、充填時間、および、射出最前進位置の推移が折れ線グラフで表示される。第2表示モード時に所定の操作が実行されることによって、表示制御部530は、第2表示モードから第1表示モードに切り替える。
【0037】
図2に示した例では、製造実績表示領域RG1を参照すると、例えば、午前4時台に寸法不適合による不適合品が生じていることを把握できる。計測データ表示領域RG3を参照すると、午前4時台の充填時間が長くなっていることを把握できる。これに対して、午前5時に、充填時間が短くなるように成形条件が変更された。しかしながら、製造実績表示領域RG1を参照すると、午前5時台では数が午前4時台に比べて不適合品の個数が増加していることを把握できる。計測データ表示領域RG3を参照すると、午前5時台では、充填時間が短くなりすぎていることを把握できる。これに対して、午前5時台に、材料ロットが変更され、さらに、充填時間が短くなるように成形条件が変更された。製造実績表示領域RG1を参照すると、午前6時台では、不適合品の個数が0個になったことが把握できる。
【0038】
以上で説明した本実施形態における射出成形機管理システム10によれば、表示制御部530は、成形品の製造に関する情報が表された各種グラフと、計測データの箱ひげ図とを時間軸を揃えて表示部400に表示させる。そのため、計測値の変動が大きな計測データであっても、計測データと成形品の製造に関する情報との相関関係を解析しやすくできる。
【0039】
また、本実施形態では、表示部400には、成形品の製造目標数に対する製造実績数との関係を表すグラフ、不適合品の個数を表すグラフと、計測データの箱ひげ図とが表示されるので、不適合品の個数と成形条件の変更履歴と計測データとの相関関係を解析しやすくできる。
【0040】
また、本実施形態では、表示部400には、成形条件の変更履歴等を表すグラフと、計測データの箱ひげ図とが表示されるので、成形条件の変更履歴と計測データとの相関関係を解析しやすくできる。
【0041】
また、本実施形態では、計測データに外れ値がある場合、計測データの最大値または最小値とは表示形式を異ならせて外れ値が表示される。そのため、外れ値を識別しやすくできるので、計測データを解析しやすくできる。
【0042】
また、本実施形態では、表示制御部530は、所定の操作が行われた場合、計測データを箱ひげ図で表示する第1表示モードと、計測データを折れ線グラフで表示する第2表示モードとを切り替える。そのため、箱ひげ図と折れ線グラフとの両方を用いて、計測データを多角的に解析できる。
【0043】
また、本実施形態では、管理画面SCが表示される表示部400は、携帯端末に設けられている。そのため、作業者は、手元の携帯端末を用いて、様々な場所で管理画面SCを確認できる。また、携帯端末では表示部400が比較的小さいので、膨大な量の計測データを折れ線グラフで表示させた場合、計測データを把握しにくくなる可能性がある。本実施形態では、折れ線グラフではなく箱ひげ図を用いて計測データを表示させることによって、小さな画面でも計測データを把握しやすくできる。
【0044】
B.他の実施形態:
(B1)上述した各実施形態の射出成形機管理システム10において、管理装置500は、ネットワーク等を介して、製造工程全体を総合的に管理する生産管理システムと通信可能に構成され、管理画面SCのデータを生産管理システムに送信してもよい。この場合、生産管理システムは、適合品の個数に対する不適合品の個数の割合を取得できるので、適合品の個数に対する不適合品の個数の割合を考慮して生産計画を立案できる。また、管理装置500は、ネットワーク等を介して、成形品の材料を発注する資材調達システムと通信可能に構成され、管理画面SCのデータを資材調達システムに送信してもよい。資材調達システムは、例えば、不適合品の個数が所定個数を超えた場合に、成形品の材料を追加発注してもよい。この場合、材料が不足して成形品の製造が停止することを抑制できる。
【0045】
(B2)上述した各実施形態の射出成形機管理システム10では、表示制御部530によって生成される管理画面SCには、変更履歴表示領域RG2が設けられている。これに対して、管理画面SCには、変更履歴表示領域RG2が設けられなくてもよい。
【0046】
(B3)上述した各実施形態の射出成形機管理システム10では、表示制御部530は、計測データの箱ひげ図を管理画面SCの計測データ表示領域RG3に表示させる。これに対して、表示制御部530は、計測データの箱ひげ図に代えて、正規分布を表すグラフを計測データ表示領域RG3に表示させてもよい。
【0047】
(B4)上述した各実施形態の射出成形機管理システム10では、表示制御部530は、計測データの外れ値を計測データの箱ひげ図に表示させている。これに対して、表示制御部530は、計測データの外れ値を箱ひげ図に表示させなくてもよい。
【0048】
(B5)上述した各実施形態の射出成形機管理システム10では、表示制御部530は、所定の操作が行われた場合に、計測データを箱ひげ図で表示する第1表示モードと、計測データを折れ線グラフで表示する第2表示モードとを切り替える。これに対して、表示制御部530は、計測データを折れ線グラフで表示させなくてもよい。
【0049】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0050】
(1)本開示の第1の形態によれば、射出成形機管理システムが提供される。この射出成形機管理システムは、射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶する計測データ記憶部と、前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶する製造データ記憶部と、予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる制御部と、を備える。
この形態の射出成形機管理システムによれば、制御部が、予め定められた期間ごとの計測データの統計図と、統計図の期間における製造データとを対応付けて表示部に表示させるので、計測データと製造データとの相関関係を解析しやすくできる。
【0051】
(2)上記形態の射出成形機管理システムにおいて、前記製造データには、予め定められた品質基準を満足する前記成形品の数量、または、前記品質基準を満足しない前記成形品の数量に関する情報が含まれてもよい。
この形態の射出成形機管理システムによれば、計測データと成形品の品質との相関関係を解析できる。
【0052】
(3)上記形態の射出成形機管理システムにおいて、前記製造データには、前記射出成形機の成形条件の変更履歴に関する情報が含まれてもよい。
この形態の射出成形機管理システムによれば、計測データと成形条件の変更履歴との相関関係を解析できる。
【0053】
(4)上記形態の射出成形機管理システムにおいて、前記統計図は、箱ひげ図であってもよい。
この形態の射出成形機管理システムによれば、計測データの分布を視覚的に把握しやすくできる。
【0054】
(5)上記形態の射出成形機管理システムにおいて、前記箱ひげ図には、前記計測データの外れ値が、前記計測データの最大値または最小値とは表示形式を異ならせて表示されてもよい。
この形態の射出成形機管理システムによれば、計測データの外れ値を視覚的に把握しやすくできる。
【0055】
(6)上記形態の射出成形機管理システムにおいて、前記制御部は、予め定められた操作が行われた場合、前記計測データを前記箱ひげ図で表示する第1表示モードと、前記計測データを折れ線グラフで表示する第2表示モードとを切り替えてもよい。
この形態の射出成形機管理システムによれば、計測データを箱ひげ図で表示する第1表示モードと、計測データを折れ線グラフで表示する第2表示モードとを切り替えることができるので、箱ひげ図と折れ線グラフとを用いて計測データを多角的に解析することができる。
【0056】
(7)上記形態の射出成形機管理システムにおいて、前記表示部は、携帯端末に設けられてもよい。
この形態の射出成形機管理システムによれば、携帯端末に設けられた表示部に計測データと製造データとの相関関係が表示されるので、計測データと製造データとの相関関係を種々の場所で確認できる。
【0057】
(8)本開示の第2の形態によれば、コンピュータープログラムが提供される。このコンピュータープログラムは、射出成形機において計測される計測値を表す計測データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、前記射出成形機による成形品の製造に関する情報を表す製造データを時系列的に記憶部に記憶させる機能と、予め定められた期間ごとの前記計測データの統計図と、前記統計図の前記期間における前記製造データとを対応付けて表示部に表示させる機能と、をコンピューターに実現させる。
この形態のコンピュータープログラムによれば、予め定められた期間ごとの計測データの統計図と、統計図の期間における製造データとを対応付けて表示部に表示させることができるので、計測データと製造データとの相関関係を解析しやすくできる。
【0058】
本開示は、射出成形機管理システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、コンピュータープログラム、射出成形機管理方法等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…射出成形機管理システム、100…射出成形機、110…第1制御部、200…取出機、210…第2制御部、300…検査装置、310…第3制御部、400…表示部、500…管理装置、510…計測データ記憶部、520…製造データ記憶部、530…表示制御部、RG1…製造実績表示領域、RG2…変更履歴表示領域、RG3…計測データ表示領域、SC…管理画面
図1
図2
図3