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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240806BHJP
   G03G 15/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/06 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020191328
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080342
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 統成
(72)【発明者】
【氏名】廣田 創
(72)【発明者】
【氏名】堤 敬典
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-038220(JP,A)
【文献】特開2009-145692(JP,A)
【文献】特開2015-161704(JP,A)
【文献】特開2004-233673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/06
G06K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン幅の異なる複数の線画像を形成する形成手段と、
ライン幅の異なる線画像毎にトナー付着量を検出する付着量検出手段と、
ライン幅ごとのトナー付着量から、当該ライン幅の線画像を形成する際の階調値の補正係数を決定する補正係数決定手段と、
線画像を形成する際に、当該線画像のライン幅に対応して決定された補正係数を用いて、当該線画像の階調値を補正する補正手段と、を備え、
形成手段は、更にエッジ効果の影響を受けないものとして予め決定されたライン幅を有するベタ画像を形成し、
付着量検出手段は、さらにベタ画像のトナー付着量を検出し、
補正係数決定手段は、ライン幅ごとのトナー付着量に対するベタ画像のトナー付着量の比を、当該ライン幅の線画像を形成する際の階調値の補正係数として決定する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
ライン幅の異なる複数の線画像を形成する形成手段と、
ライン幅の異なる線画像毎にトナー付着量を検出する付着量検出手段と、
ライン幅ごとのトナー付着量から、当該ライン幅の線画像を形成する際の階調値の補正係数を決定する補正係数決定手段と、
線画像を形成する際に、当該線画像のライン幅に対応して決定された補正係数を用いて、当該線画像の階調値を補正する補正手段と、を備え、
補正係数決定手段は、更に、文字画像の文字サイズに対応するライン幅の線画像の階調値の補正係数を、当該文字画像の階調値の補正係数とし、
補正手段は、更に、文字画像を形成する際に、前記補正係数を用いて当該文字画像の階調値を補正する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
補正係数決定手段は、明朝体の文字画像については、文字画像に含まれる最も太い縦線のライン幅を当該文字画像の文字サイズと対応付ける
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
補正係数決定手段は、
線画像のライン幅と文字画像の文字サイズとの対応関係を記憶する記憶手段を有し、
記憶手段が記憶している対応関係に応じて、文字画像の階調値の補正係数を決定する
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
補正係数決定手段は、階調値を補正して形成した線画像のトナー付着量が、エッジ効果によって、補正前の階調値に相当するトナー付着量になるように補正係数を決定する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
形成手段は、ライン幅の異なる線画像どうしで互いにエッジ効果の影響の大きさが異なるように、線画像を形成する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
形成手段は、ライン幅が異なる線画像ごとに、線画像を等間隔に配したストライプ画像を形成し、
付着量検出手段は、ストライプ画像のトナー付着量を検出する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
形成手段は、ライン幅の異なる複数の線画像どうしは、ライン幅が、相互に指数が異なり、底が共通の累乗になるように、線画像を形成する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
形成手段は、ライン幅異なる複数の線画像のうち、第1、第2、第3の線画像がこの順にライン幅が大きいとした場合、第1の線画像のライン幅と第2の線画像のライン幅の差と、第2の線画像のライン幅と第3の線画像のライン幅の差とが等しくなるように、複数の線画像を形成する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
形成手段は、ライン幅の異なる複数の線画像として、ライン幅が1ドット以下の線画像を形成する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
消耗品または部品が交換されたか否かを判定する交換判定手段を備え、
前記交換がなされたと判定した場合に、形成手段は線画像を形成し、付着量検出手段はトナー付着量を検出し、補正係数決定手段は補正係数を決定する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
装置が所定の耐久状態に達したか否かを判定する耐久状態判定手段を備え、
所定の耐久状態に達したと判定した場合に、形成手段は線画像を形成し、付着量検出手段はトナー付着量を検出し、補正係数決定手段は補正係数を決定する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
環境条件が変化したか否かを判定する環境条件判定手段を備え、
環境条件が変化したと判定した場合に、形成手段は線画像を形成し、付着量検出手段はトナー付着量を検出し、補正係数決定手段は補正係数を決定する
ことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関し、特にエッジ効果に起因するトナー消費量の増大や画像品質の低下を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置は、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを静電吸着させることによってトナー像を形成する。負帯電トナーを用いる場合を例にとると、静電潜像には現像によってトナーを付着させる画像領域とトナーを付着させない非画像領域とがあり、画像領域のうち非画像領域とのエッジに近接する部分では、エッジから遠い部分よりもトナーが多く付着するエッジ効果が知られている。エッジ効果が発生すると、トナーが必要以上に消費されたり、線画や文字の線幅が変動して画像品質が低下したりする。
【0003】
このような問題に対して、例えば、エッジまでの距離が小さい画素ほどエッジ効果が高くなって、トナーの付着量が多くなることに着目して、エッジからの距離に応じて画素の階調を補正することによってトナーの消費量を削減する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、エッジ効果による影響の大きさは、エッジから画素までの距離以外に、現像ローラーの外周面から感光体ドラムの外周面までの距離Dsの大小によっても変化する。このため、例えば、画像形成装置の製造時に記憶しておいた距離Dsの設計値を参照して、距離Dsが大きいほど線端部のトナー付着量を少なくする技術が提案されている(特許文献2を参照)。
【0005】
距離Dsに応じたエッジ効果の変化に対して、現像バイアスの交流成分の振幅Vppを最適化するために、線幅が1画素のライン画像の濃度を、ライン画像どうしの間隔を変えて測定し、ライン画像どうしの間隔が変わってもライン画像の濃度が安定する振幅Vppを特定する技術も提案されている(特許文献3を参照)。
【0006】
このような従来技術を採用すれば、エッジ効果に起因する画像品質の劣化を抑制することができる。
【0007】
また、小サイズの文字は濃度が高過ぎると潰れる場合があり、エッジ効果によってトナー付着量が増加しても潰れてしまう恐れがある。小サイズ文字の潰れについては、例えば、感光体表面を露光して静電潜像を形成するレーザービームのパワーを文字のサイズに応じて調整する技術が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。このような技術を応用すれば、エッジ効果に起因する小サイズ文字の潰れを改善することができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-61284号公報
【文献】特開2017-67897号公報
【文献】特開2006-47852号公報
【文献】特開2017-71146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、現像ローラーの外周面から感光体ドラムの外周面までの距離Dsの大小によってエッジ効果による影響の大きさが変化するため、距離Dsに関係なく一律にエッジからの距離だけに応じて画素の階調を補正しても、画像品質の低下を十分に防止することはできない。
【0010】
逆に、エッジからの距離に関係なく一律に距離Dsだけに応じてトナー付着量を補正しても、画像品質の低下を十分に防止することはできない。また、線幅が1画素のライン画像の濃度のみを安定化しても、エッジからの距離に応じたエッジ効果の影響の大きさの変化に対応することができない。
【0011】
また、エッジ効果に起因して小サイズ文字の潰れが発生する場合も、エッジ効果の影響の大きさが変動するとトナーの付着量が変動するため、文字サイズに応じてレーザービームのパワーを調整しても、文字の潰れを十分改善することができない。
【0012】
更に、エッジ効果による影響の大きさは、エッジから画素までの距離や、現像ローラーの外周面から感光体ドラムの外周面までの距離Dsだけでなく、環境、感光体膜厚、トナー帯電量、感光体感度、かぶりマージン、現像バイアス条件などさまざまな条件に応じて大きく変動する。このため、どれかの条件だけに着目して画像補正を行っても、エッジ効果に起因する画像品質の劣化を十分に抑制することができない。
【0013】
本開示は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、どのような原因でエッジ効果による影響の大きさが変動しても、エッジ効果に起因する不必要なトナー消費を低減するとともに、画像品質の劣化を防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る画像形成装置は、ライン幅の異なる複数の線画像を形成する形成手段と、ライン幅の異なる線画像毎にトナー付着量を検出する付着量検出手段と、ライン幅ごとのトナー付着量から、当該ライン幅の線画像を形成する際の階調値の補正係数を決定する補正係数決定手段と、線画像を形成する際に、当該線画像のライン幅に対応して決定された補正係数を用いて、当該線画像の階調値を補正する補正手段と、を備え、形成手段は、更にエッジ効果の影響を受けないものとして予め決定されたライン幅を有するベタ画像を形成し、付着量検出手段は、さらにベタ画像のトナー付着量を検出し、補正係数決定手段は、ライン幅ごとのトナー付着量に対するベタ画像のトナー付着量の比を、当該ライン幅の線画像を形成する際の階調値の補正係数として決定することを特徴とする。
【0015】
この場合において、形成手段は、ライン幅の異なる線画像どうしで互いにエッジ効果の影響の大きさが異なるように、線画像を形成してもよい。
【0016】
また、補正係数決定手段は、階調値を補正して形成した線画像のトナー付着量が、エッジ効果によって、補正前の階調値に相当するトナー付着量になるように補正係数を決定してもよい。
【0018】
本開示の別の一形態に係る画像形成装置は、ライン幅の異なる複数の線画像を形成する形成手段と、ライン幅の異なる線画像毎にトナー付着量を検出する付着量検出手段と、ライン幅ごとのトナー付着量から、当該ライン幅の線画像を形成する際の階調値の補正係数を決定する補正係数決定手段と、線画像を形成する際に、当該線画像のライン幅に対応して決定された補正係数を用いて、当該線画像の階調値を補正する補正手段と、を備え、補正係数決定手段は、更に、文字画像の文字サイズに対応するライン幅の線画像の階調値の補正係数を、当該文字画像の階調値の補正係数とし、補正手段は、更に、文字画像を形成する際に、前記補正係数を用いて当該文字画像の階調値を補正することを特徴とする
【0019】
また、補正係数決定手段は、明朝体の文字画像については、文字画像に含まれる最も太い縦線のライン幅を当該文字画像の文字サイズと対応付けてもよい。
【0020】
また、補正係数決定手段は、線画像のライン幅と文字画像の文字サイズとの対応関係を記憶する記憶手段を有し、記憶手段が記憶している対応関係に応じて、文字画像の階調値の補正係数を決定してもよい。
【0021】
また、形成手段は、ライン幅が異なる線画像ごとに、線画像を等間隔に配したストライプ画像を形成し、付着量検出手段は、ストライプ画像のトナー付着量を検出してもよい。
【0022】
また、形成手段は、ライン幅の異なる複数の線画像どうしは、ライン幅が、相互に指数が異なり、底が共通の累乗になるように、線画像を形成してもよい。
【0023】
また、形成手段は、ライン幅異なる複数の線画像のうち、第1、第2、第3の線画像がこの順にライン幅が大きいとした場合、第1の線画像のライン幅と第2の線画像のライン幅の差と、第2の線画像のライン幅と第3の線画像のライン幅の差とが等しくなるように、複数の線画像を形成してもよい。
【0024】
また、形成手段は、ライン幅の異なる複数の線画像として、ライン幅が1ドット以下の線画像を形成してもよい。
【0025】
また、消耗品または部品が交換されたか否かを判定する交換判定手段を備え、前記交換がなされたと判定した場合に、形成手段は線画像を形成し、付着量検出手段はトナー付着量を検出し、補正係数決定手段は補正係数を決定してもよい。
【0026】
また、装置が所定の耐久状態に達したか否かを判定する耐久状態判定手段を備え、所定の耐久状態に達したと判定した場合に、形成手段は線画像を形成し、付着量検出手段はトナー付着量を検出し、補正係数決定手段は補正係数を決定してもよい。
【0027】
また、環境条件が変化したか否かを判定する環境条件判定手段を備え、環境条件が変化したと判定した場合に、形成手段は線画像を形成し、付着量検出手段はトナー付着量を検出し、補正係数決定手段は補正係数を決定してもよい。
【発明の効果】
【0028】
このようにすれば、エッジ効果の影響によってトナー付着量が変動しても、当該トナー付着量を実測し、得られたトナー付着量に応じてライン幅ごとに適切な補正係数を決定し、当該補正係数を用いて線画像の階調値を補正するので、エッジ効果による影響の大きさの変動に応じて、不必要なトナー消費を適切に低減することができると同時に、画像品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置1の主要な構成を示す図である。
図2】作像部100の主要な構成を示す図である。
図3】制御部120の主要な構成を示すブロック図である。
図4】制御部120がエッジ効果に応じて実行する階調補正を説明するフローチャートである。
図5】エッジ効果に起因するトナー付着量の変化を実測するために形成する線画像及びベタ画像を例示する図である。
図6】(a)はエッジ効果が発生する原理を説明するグラフであり、(b)は、エッジ効果の特徴としてライン幅に応じたとトナー付着量の分布の変化を例示する図である。
図7】線画ドットとトナー付着量との関係を例示して、エッジ効果の影響幅と影響量とを説明するグラフである。
図8】(a)は、線幅の範囲と階調補正係数との対応関係を例示するテーブルであり、(b)は、文字の大きさ(ポイント数)の範囲と階調補正係数との対応関係を例示するテーブルである。
図9】(a)は、線画ドットと線幅との対応関係を説明するグラフであり、(b)は、明朝文字の大きさ(ポイント数)と線幅との対応関係を説明するグラフであり、(c)は、線幅と階調補正係数との対応関係を例示するグラフであり、(d)は、明朝文字の大きさ(ポイント数)と階調補正係数との対応関係を例示するグラフである。
図10】エッジ効果が変動した場合における線画ドットと付着量比率との関係の変動を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示に係る画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]画像形成装置の構成
まず、本開示の実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、画像形成装置1は、いわゆるタンデム方式のカラープリンターであって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)各色のトナー像を形成する作像部100Y、100M、100Cおよび100Kを備えている。画像形成装置1には、YMCK各色のトナーを含む現像剤を収容したトナーカートリッジ102Y、102M、102Cおよび102Kが着脱可能に装着されている。
【0032】
作像部100Y、100M、100Cおよび100Kは、それぞれトナーカートリッジ102Y、102M、102Cおよび102Kから二成分系現像剤の供給を受けて、トナー像を形成する。作像部100Y、100M、100Cおよび100K、は共通の構成を備えており、トナーカートリッジ102Y、102M、102Cおよび102Kもまた共通の構成を備えているので、以下においては、形成するトナー像の色を表すYMCKの文字を省略して説明する。
【0033】
図2に示すように、作像部100は、感光体ユニット210と現像ユニット200とを備えている。感光体ユニット210は、感光体ドラム211やクリーニングブレード、帯電ローラー214等を備えている。感光体ドラム211は、光導電性を有する感光体層に、感光体層を保護する保護層を積層した円筒形状になっている。
【0034】
帯電ローラー214は、帯電バイアスが印加されており、感光体ドラム211の外周面を一様に帯電させる。これによって、感光体ドラム211の外周面の電位がV0(本実施の形態においては、-500V。)になる。帯電ローラークリーニングローラー215は、帯電ローラー214に付着した廃トナー等の異物を除去する。なお、感光体ドラム211の外周面を一様に帯電させる帯電装置が帯電ローラー214に限定されないのは言うまでもなく、帯電ローラー214以外の帯電装置を用いて感光体ドラム211の外周面を一様に帯電させてもよい。
【0035】
露光部101(図1)は、画像形成に用いる画像データに応じて変調されたレーザー光を感光体ドラム211の外周面に照射して静電潜像を形成する。感光体ドラム211の外周面のうちレーザー光の照射を受けた領域(画像領域)は導通して帯電電荷を失う。これによって、当該画像領域の電位がVi(本実施の形態においては、-100V。)になる。
【0036】
現像ユニット200は、二成分現像剤を用いるいわゆる反転現像方式によるものであり、現像スリーブ201、供給スクリュー202、攪拌スクリュー203およびトナー濃度センサー204を備えている。トナー濃度センサー204は、攪拌スクリュー203で攪拌されたトナーとキャリアーの比率を検出する。この検出の結果、トナー濃度が低下していることが確認されたら、トナーカートリッジ102から現像剤が補給される。
【0037】
これによって、現像ユニット200内に貯留する現像剤のトナー濃度が一定に保たれる。供給スクリュー202および攪拌スクリュー203は、トナーカートリッジ102から補給された現像剤を、現像槽内で攪拌しながら循環搬送することによって、現像剤を摩擦帯電させる。これによって、トナーがマイナス帯電する。
【0038】
現像スリーブ201はマグネットロールに外装されている。マグネットロールが発生させる磁界によって、現像剤中のキャリアーが現像スリーブ201の外周面上に磁気吸着され、磁気ブラシを形成する。磁気ブラシは、現像スリーブ201の回転によって、感光体ドラム211と対向する現像領域へ搬送され、静電潜像にトナーを供給することによって、顕像化する。
【0039】
本実施の形態においては、現像バイアスVdcとして-300Vが印加されており、この現像バイアスVdcによって発生する電界(電位差△=Vi-Vdc=200V)によって、図6(a)に示すように、マイナス帯電したトナー601が感光体ドラム211の外周面上における画像領域(Vi=-100V)へ移動する。非画像領域のうち、画像領域と非画像領域との境界(エッジ)近傍にあるトナー602には、非画像領域との間で反発力が作用すると、現像バイアスVdcによって発生する電界(電位差△=V0-Vdc=-200V)によって、
トナー602が画像領域へ移動する。
【0040】
このため、画像領域におけるエッジ近傍のトナー付着量が増大する。このようにして、エッジ効果が発生する。画像領域内でも、エッジから遠くなるほどエッジ効果は小さくなる。図6(b)に例示するように、ライン幅が32ドットの線画像ではライン幅全体に亘ってエッジ効果の影響によってトナーの付着量が増加する。
【0041】
一方、ライン幅が128ドットの線画像ではライン幅の中央部分にエッジ効果の影響が及んでおらず、トナーの付着量は増加していない部分がある。このため、線画像を構成する画素すべてについて濃度の平均値を求めると、ライン幅が32ドットの線画像の方が、ライン幅が128ドットの線画像よりも濃度の平均値が高くなる。
【0042】
このようにして、感光体ドラム211の外周面上に形成されたトナー像は、感光体ドラム211の回転によって、一次転写ローラー(図示省略)に対応する位置まで搬送され、中間転写ベルト103の外周面上に静電転写される(一次転写)。一次転写後に感光体ドラム211の外周面上に残留するトナーは、クリーニングブレード212によって掻き取られた後、廃トナースクリュー213によって廃トナーボックス(図示省略)へ搬送され、回収される。
【0043】
中間転写ベルト103は駆動ローラー104および従動ローラー105に掛け回され、矢印A方向に周回走行する。作像部100Y、100M、100Cおよび100Kが形成したYMCK各色のトナー像は、互いに重なり合うようにタイミングを合わせて一次転写され、カラートナー像が形成される。モノクロトナー像を形成する場合には、YMCKいずれかの色のトナー像のみが形成される。
【0044】
駆動ローラー104には、中間転写ベルト103を挟んで二次転写ローラー106が圧接されており、二次転写ニップを形成している。中間転写ベルト103はトナー像を二次転写ニップまで搬送する。
【0045】
中間転写ベルト103によるトナー像の搬送を並行して、給紙部116から記録シートが供給される。給紙部116は、給紙トレイ108、給紙ローラー109、手差しトレイ110および手差しローラー111を備えている。給紙トレイ108には記録シート束が収容されている。給紙トレイ108から記録シートSを供給する場合には、給紙ローラー109が給紙トレイ108に収容されている記録シート束の最上位の記録シートSをシート搬送経路へ送り出す。
【0046】
また、手差しトレイ110に載置されている記録シート束から記録シートSを供給する場合には、手差しローラー111が手差しトレイ110に載置されている記録シート束の最上位の記録シートSをシート搬送路経路へ送り出す。シート搬送経路へ送り出された記録シートSは二次転写ニップへ搬送される。なお、給紙トレイ108と手差しトレイ110とのどちらから記録シートSを供給するかは画像形成ジョブ(プリントジョブ)におけるユーザー指定に従う。
【0047】
トナー像が中間転写ベルト103に搬送され二次転写ニップに到達するタイミングに合わせて、記録シートSが二次転写ニップに到達するように、タイミングローラー112は記録シートの搬送タイミングを調整する。この場合において、タイミングローラー112は、記録シートSにループを形成させることによって、記録シートSのスキューを補正する。
【0048】
二次転写ローラー106には二次転写バイアスが印加されており、二次転写ニップにおいては、中間転写ベルト103から記録シートSへトナー像が静電転写される(二次転写)。二次転写後に中間転写ベルト103上に残留するトナーは図示しないクリーニング装置によって回収され、廃棄される。一方、記録シートSは定着部113へ搬送される。
【0049】
定着部113は、記録シートSが担持するトナー像を記録シートSに熱定着する。トナー像を熱定着された記録シートSは排紙ローラー114によって排紙トレイ115上へ排出される。
【0050】
制御部120は、画像形成装置1のユーザーから画像形成ジョブを受け付けると、画像形成装置1の動作を監視し、制御して画像形成ジョブを実行させる。
【0051】
制御部120は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302およびRAM(Random Access Memory)303等を内部バス306で接続した構成を備えている。CPU301は、画像形成装置1に電源が投入される等してリセットされると、ROM302からブートプログラムを読み出して起動し、RAM303を作業用記憶領域として、HDD(Hard Disk Drive)304からOS(Operating System)や制御プログラム、画像処理プログラム等を読み出して、実行する。
【0052】
NIC(Network Interface Card)305は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の通信ネットワークを経由して他の装置と通信するための処理を実行する。これによって、制御部120は他の装置から画像形成ジョブを受け付ける。制御部120は、操作パネル311が接続されており、画像形成装置1のユーザーが操作パネル311を操作することによって、画像形成ジョブを受け付けることもできる。
【0053】
制御部120は、画像形成ジョブを実行する際には、作像部100、露光部101、定着部113および給紙部116の動作を制御したり、監視したりする。中間転写ベルト103の周回走行方向における作像部100Kから定着ニップに至る間には、反射型の光学センサーであるIDC(Image Density Control)センサー107(図1)が配設されており、中間転写ベルト103の外周面上に担持されているトナー像の階調を検出する。制御部120は、IDCセンサー107を用いて後述するパターンのトナーの付着量を検出することによって、エッジ効果に起因するトナー付着量の変化を検出することができる。
【0054】
また、画像形成装置1の内部には環境センサー312が配設されており、環境温度並びに環境湿度を検出する。制御部120は環境センサー312の検出信号を参照することによって、装置内の環境温度および環境湿度の変化を検出する。エッジ効果による影響は、温度による変化もある程度あるが、特に環境湿度に応じて変化するため、環境湿度を監視することによって、制御部120は、エッジ効果に起因するトナー付着量の変化を検出し直すタイミングを決定することができる。
[2]制御部120による階調補正処理
上述のようにエッジ効果に起因してトナーの付着量が変動すると、線画像や文字画像の階調が変動して、例えば、カラー画像では色味が変化する等の画像品質の劣化が発生し得る。このような問題に対して、本実施の形態においては、トナーの付着量の変動量を実際に検出し、検出した変動量に合わせて線画像や文字の階調を補正することによって、画質劣化を防止する。
【0055】
このため、制御部120は、図4に示すように、まず、エッジ効果の影響を確認するかどうかを判断する。エッジ効果の影響が変動している場合には、線画像や文字の階調補正のしかたを変更しないと、適切に階調を補正することができない。
【0056】
エッジ効果の影響が変動した可能性があるかどうかについては、例えば、消耗品や部品の交換を行ったかどうかによって判断してもよい。この部品には感光体を含めてもよい。消耗品や部品を交換した場合にはエッジ効果の影響が変動した可能性があると判断できる。具体例を挙げると、現像ユニット200や感光体ユニット201を交換すると現像スリーブ201から感光体ドラム211の外周面までの距離Dsが変動する可能性があるので、エッジ効果の影響が変動した可能性があると判断される。
【0057】
また、環境センサー312を用いて環境条件を検出し、前回エッジ効果の影響を確認したときの環境条件から所定の範囲を超えて環境条件が変化したかどうかによっても、エッジ効果の影響が変動した可能性があるか判断することができる。具体例を挙げると、環境条件のうち、特に環境湿度が変動した場合にはトナーの帯電性能が変化し得るため、エッジ効果の影響が変動した可能性があると判断される。
【0058】
環境湿度が変動したかどうかは、トナーの帯電特性に合わせて、環境湿度に応じて環境湿度範囲をあらかじめ設定しておき、エッジ効果の影響を確認するたびに、環境湿度を検出する。当該検出した環境湿度から、当該環境湿度について設定されている環境湿度範囲を超えて環境湿度が変動した場合には、エッジ効果の影響が変動するほど環境湿度が変動した可能性があると判断してもよい。
【0059】
更に、耐久によって感光体の膜厚やトナー帯電量、感光体感度などが前回エッジ効果の影響を確認したときと比較して所定の範囲を超えて変化した場合には、所定の耐久状態に達したとして、エッジ効果の影響が変動した可能性があると判断してもよい。具体例を挙げると、感光体ドラム211の感光体層の膜厚が変動すると感光体ドラム211の外周面の帯電特性が変化する。
【0060】
感光体層は、画像形成枚数に比例して摩耗することから、例えば、画像形成枚数の累積値が所定の枚数に達するたびに、エッジ効果による影響の大きさが変動するほど感光体層の膜厚が変動したと判断してもよい。
【0061】
エッジ効果の影響を確認すると判断した場合には(S401:YES)、線画像およびベタ画像を出力する(S402)。本実施の形態においては、図5に示すように、ベタ画像、ライン幅が1ドットの線画像を3ドットのライン間隔で配置したストライプ画像、およびライン幅とライン間隔とがともに2の累乗ドットであるストライプ画像を出力する。
【0062】
ライン幅が1ドット(2の0乗)の線画像のライン間隔を3ドットにしたのは、エッジ効果によって、白地部分から線画像へ移動するトナー量を十分多くすることによって、エッジ効果による濃度の変化を明確にするためである。ライン間隔が1ドットしかない場合には、現像スリーブ上の白地部分に対応する領域が狭くなるので、エッジ効果によって線画像部分へ移動するトナー量が少なくなって、エッジ効果による濃度の変化が明確にならない恐れがあるからである。
【0063】
2の累乗は2の1乗(=2)から2の9乗(=512)までの9種類である。図5においては、2on2offから512on512offまでの9種類がこれに該当する。ベタ画像は、エッジ効果の影響を受けない場合のトナー付着量を検出することができる画像であればよく、例えば、エッジ効果の影響を受けないものとして予め決められたライン幅を有する線画像であってもよい。
【0064】
これらの画像は、YMCK各色について形成され、中間転写ベルト103の外周面上の別々の位置に一次転写される。トナー色によって帯電し易さが異なる等、エッジ効果の程度が異なる場合には、トナー色毎に別個にトナー付着量を実測するのが有効である。逆に、トナー色どうしでエッジ効果の差異が少ない場合には、例えばK色など、いずれか一色だけでもよい。
【0065】
また、線画像の長手方向を中間転写ベルト103の周回走行方向に直交させると、特に線幅の広い線画像において、IDCセンサー107による読み取りタイミングによって検出値が変化する恐れがある。一方、線画像の長手方向を中間転写ベルト103の周回走行方向に平行にすれば、どのタイミングでIDCセンサー107が読み取っても、線画像の見え方が変わらないので検出値が安定する。
【0066】
次に、IDCセンサー107を用いて、線画像およびベタ画像のトナー付着量(以下、「トナー検出量」という。)を検出し(S403)、そのトナー検出量からエッジ効果の影響量と影響幅を算出する(S404)。このため、線画像について、トナー検出量から線画像部分(露光領域)における単位面積当たりのトナー付着量(以下、「トナー付着量」という。)を算出する。
【0067】
ベタ画像では全領域が露光領域になっているので、IDCセンサー107が検出したトナー付着量が単位面積当たりのトナー付着量になる。線画像については、IDCセンサー107は、線画像部分(露光領域)と線画像がない白地部分(非露光領域)とを合わせたトナー検出量を出力するため、線画像部分と白地部分との面積比(BW比)を用いて、トナー付着量を算出する。
【0068】
例えば、1on3offの線画像では、線画像部分の面積が全体の4分の1なので、IDCセンサー107によるトナー検出量を4倍したものがトナー付着量になる。一方、2on2offや4on4off等は、線画像部分が全体の2分の1なので、IDCセンサー107によるトナー検出量を2倍したものがトナー付着量になっている。
【0069】
このようにして算出したトナー付着量を用いて、ベタ画像のトナー付着量に対する線画像のトナー付着量の比(付着量比率)を求める。
【0070】
図7は、線画像のライン幅(線画ドット)を横軸(対数軸)とし、付着量比率を縦軸として、ライン幅毎の付着量比率をプロットしたグラフである。ライン幅を「solid」とした付着量比率はベタ画像の付着量比率であり、当然その値は1である。ベタ画像(solid)は、エッジ効果の影響を受けないものとしての基準に用いられ、その面積(ライン幅)が予め決められている。図6(b)に示すように、ライン幅が小さい場合には、線画像中のすべての画素に対してエッジ効果が作用してトナー付着量が増加する。
【0071】
一方、ライン幅が一定の値を超えると、線画像のエッジから最も遠い中央部分に対してはエッジ効果が作用しなくなるので、当該中央部分の画素については濃度が高くならない。このため、ライン幅が一定の値を超えると、ライン幅が大きいほど、トナー付着量が低下する。図7の例では、ライン幅が64ドット以下である場合には、付着量比率が1.4程度で一定している一方、ライン幅が64ドットを超えると付着量比率が概ね直線的に減少している。
【0072】
このため、線画像全体にエッジ効果の影響が及び得るライン幅の範囲をエッジ効果の影響幅と呼び、付着量比率をエッジ効果による影響量と呼ぶものとする。図7の例では、ライン幅が64ドットを超えると、エッジ効果による影響量が漸減するので、影響幅は1ドットから64ドットまでの範囲である。影響量は、ライン幅が32ドットの場合には1.4であり、ライン幅が256ドットの場合には1.1等である。
【0073】
本実施の形態においては、上述のような付着量比率の逆数を当該ライン幅の線画像の階調値の補正係数(以下、「階調補正係数」という。)とする。すなわち、エッジ効果によって付着量比率だけトナー付着量が増加するのに対して、階調補正係数として付着量比率の逆数をあらかじめ階調値に乗算しておけば、エッジ効果によってトナー付着量が増加しても、実際の現像によって形成される線画像の階調値をエッジ効果がないベタ画像の場合と階調値を同じにすることができる。
【0074】
(実際の階調値)
=(画像データの階調値)×(階調補正係数)×(付着量比率)
=(画像データの階調値)×(付着量比率)-1×(付着量比率)
=(画像データの階調値) …(1)
となるので、実際の階調値を画像データの階調値に合わせることができる。ただし、トナーの付着量比率は、単位面積当たりのトナー付着量に基づいて算出したので、式(1)の「実際の階調値」と「画像データの階調値」とは当該線画像における階調の平均値の意味で等しくなる。
【0075】
このような計算を行うことによって、図9(a)に例示するような、線幅と階調補正係数との対応テーブルを作成することができる(S405)。本実施の形態に係る画像形成装置1が形成する画像は解像度が600dpi(dot per inch)であり、1ドットのライン幅が42μm(=1インチ/600ドット)に相当する。例えば、線幅が1mm以下である場合の階調補正係数は、対応するライン幅が、
(1mm)/(42μm)≒(24ドット) …(2)
である。24ドットは図7のグラフでは影響幅の範囲内であり、影響幅の範囲内での付着量比率の逆数が階調補正係数の値になる。
【0076】
(階調補正係数)= 1/1.4 ≒ 0.71 …(3)
一方、線幅が6mm以上かつ7mm以下である場合の階調補正係数は、対応するライン幅が、
(6mm)/(42μm)≒(143ドット) …(4)
(7mm)/(42μm)≒(167ドット) …(5)
図7のグラフを参照すると、ライン幅が64ドットから512ドットまでの範囲内では、ライン幅が2倍になると付着量比率から1を減算した値が概ね半分になっている。すなわち、
(付着量比率)=[(1.4 - 1)×{(64ドット)/(ライン幅)}]+1
={0.4×(64ドット)/(ライン幅)}+1 …(6)
と付着量比率を近似的に算出することができる。階調値の階調補正係数は付着量比率の逆数なので、
(階調補正係数)= 1/(付着量比率)
= 1/[{0.4 ×(64ドット)/(ライン幅)}+1] …(7)
この式(7)に、式(4)、(5)で算出したライン幅を代入すると、
(線幅6mmの階調補正係数)≒ 0.85 …(8)
(線幅7mmの階調補正係数)≒ 0.87 …(9)
式(8)、(9)の値を平均すると、0.86となり、図8(a)の表に記載されている値が求まる。図8(a)の表をプロットしたものが図9(c)のグラフである。線幅が狭いほどエッジ効果が高くトナー付着量が多くなるので、階調補正係数の値が小さくなっている。
【0077】
更に、図8(b)に例示するような、文字サイズと階調補正係数の対応テーブルを作成する(S406)。文字サイズと階調補正係数の対応テーブルは、線幅と文字サイズとの関係を利用して、線幅と階調補正係数対応テーブルから求めることができる。
【0078】
まず、図9(a)のように、線画ドット(ライン幅)と線幅とは比例関係にあり、式(4)、(5)に例示したように、線画ドットに対応する線幅を算出することができる。次に、図9(b)に示すように、明朝文字の大きさ(ポイント数)と線幅もまた比例関係にある。ここで、線幅とは、明朝文字に含まれる太い縦線の線幅である。したがって、同じ線幅を経由して、線画ドットと明朝文字の大きさとを対応付けることができる。
【0079】
例えば、図8(b)に例示するように、明朝文字の大きさが180ポイント以上かつ200ポイント以下である場合には、図9(b)のグラフを外挿すれば、線幅が8.1mm以上かつ8.9mm以下である。これは、図8(a)の表を参照すると、0.89以上かつ0.9以下に対応するので、図8(b)の180ポイント以上かつ200ポイント以下の欄に記載された値0.9になる。
【0080】
このような計算を文字サイズの範囲ごとに実行すれば、文字サイズと階調補正係数の対応テーブルを作成することができる。図9(d)は、図8(b)の表をプロットしたグラフである。図9(d)に示すように、文字サイズが小さいほど、文字サイズに対応する線幅が狭くなるので、エッジ効果が高くトナー付着量が多くなる。従って、文字サイズが小さいほど階調補正係数の値が小さくなり、文字サイズが大きくなるとエッジ効果が低下するので階調補正係数が1に漸近する。
【0081】
なお、文字画像にはさまざまな線幅の線部分が含まれており、線部分ごとの線幅に応じてエッジ効果の影響の大きさが複雑に変化する可能性がある。また、同じ文字であっても文字サイズが異なると、エッジ効果の影響大きさもまた変化する。これに対して、本実施の形態のように、最も太い線を基準にして、一律に階調補正係数を決定すると、文字画像の部分ごとのエッジ効果の影響の大きさの変化に対して必ずしも厳密に追随して階調を補正することにはならない。
【0082】
しかしながら、視認性の観点から考えると、最も太い直線は最も目立ち易いので、最も太い直線におけるエッジ効果の影響を精度よく補正することができれば、エッジ効果の影響を効果的に目立たなくすることができる。また、最も太い直線以外の直線についても階調補正を行うので、これらの直線についてもエッジ効果の影響を目立ち難くすることができる。
【0083】
ステップS406の処理を完了した後、およびエッジ効果の影響を確認しない場合には(S401:NO)、制御部120は印刷画像データを取得する(S407)。この印刷画像データは画像形成ジョブにて指定されたものである。画像形成ジョブは印刷画像データとして印刷すべきテキストデータを含んでいてもよい。印刷画像データとしてテキストデータが含まれている場合には、文字ごとに文字サイズ(ポイント数)が指定される。
【0084】
次に、制御部120は、印刷画像データを参照して、線画像や文字画像が含まれているかトナー色毎に確認する(S408)。エッジ効果は、静電潜像の現像時に発生するため、トナー色毎に発生し、またどれかのトナー色でエッジ効果が発生しても、そのトナー色でのエッジ効果が他のトナー色に影響を与えることはない。
【0085】
印刷画像データを確認した結果、線画像があった場合は(S409:YES)、線幅と階調補正係数との対応テーブルを参照して、当該線画像の線幅に応じた階調補正係数を特定し、当該階調補正係数を用いて当該線画像を構成する画素の階調値を補正する(S410)。直線や曲線の検出には、ハフ(Hough)変換など通常のアルゴリズムを用いることができる。
【0086】
また、線幅については、直線や曲線を構成する画素のうち線を構成する画素と、他の画素との両方に隣接する画素を、線幅方向における両端の画素として、除去する除去処理を実行し、その実行後、線を構成する画素がある場合には当該除去作業を更に繰り返し実行する。
【0087】
そして、線を構成する画素が無くなるまで除去処理を繰り返した回数から線幅を特定することができる。例えば、ライン幅が3ドットの直線の場合には、1回目の除去処理によってエッジ部分の画素が除去され、ライン幅が1ドットになる。
【0088】
更に、2回目の除去処理を行うと、線を構成する画素が無くなる。このため、ライン幅が3ドットであると判定され、線幅が、
(42μm)×(3ドット)≒0.1mm …(10)
と算出される。階調補正係数には、線幅が1mm以下の場合の階調補正係数である0.71を用いる。
【0089】
次に、文字画像があった場合には(S411:YES)、文字サイズと階調補正係数との対応テーブルを参照して、当該文字画像の文字サイズに応じた階調補正係数を特定し、当該階調補正係数を用いて当該文字画像を構成する画素の階調値を補正する(S412)。画像形成ジョブがテキストデータに文字サイズの指定を付加して文字画像を指定している場合には、文字サイズと階調補正係数の対応テーブルを参照し、画像形成ジョブにおける文字サイズの指定に応じて、文字画像の階調を補正すればよい。
【0090】
また、画像認識処理によって文字画像を検出してもよい。この場合には、文字画像を検出する際に併せて文字サイズを検出することができるので、文字サイズと階調補正係数との対応テーブルを参照して、文字サイズの検出値に応じた階調補正係数を特定し、当該階調補正係数を用いれば、階調補正を効果的かつ適切に実施することができる。
【0091】
その後、階調値を補正した印刷画像データを用いて、画像形成処理を実行した後(S413)。処理を終了する。
【0092】
このように、本実施の形態においては、エッジ効果の影響の大きさを実測して、階調補正係数を決定する。例えば、図10に例示するように、環境、感光体膜厚、Ds、トナー帯電量、感光体感度、かぶりマージン、現像バイアス条件などの変化によって、付着量比率はグラフ1011、1021および1031のように変動する。
【0093】
グラフ1011は、環境湿度が低く、トナー帯電量が少ないために、非露光領域とトナーとの反発力が小さくなり、エッジ効果が低下した場合などにみられる付着量比率を表している。一方、グラフ1031は、逆に環境湿度が高く、トナー帯電量が多いために、非露光領域とトナーとの反発力が大きくなり、エッジ効果が増大した場合などにみられる付着量比率を表している。
【0094】
当然ながら、エッジ効果が低下すれば、付着量比率のグラフ1011もまた低下し、影響幅1012が狭くなる。これに呼応して、本実施の形態においては、階調補正係数の値が大きくなって、1に近づく。一方、エッジ効果が増大すれば、付着量比率のグラフ1031もまた増大し、影響幅1032が広くなるので。本実施の形態においては、階調補正係数の値が小さくなる。中間のグラフ1021の場合は、影響幅1022も中間になる。
【0095】
したがって、環境、感光体膜厚、Ds、トナー帯電量、感光体感度、かぶりマージン、現像バイアス条件などの少なくとも一つの変化によってエッジ効果の影響の大きさが変化しても、エッジ効果に起因する階調値の変動を精度よく補正して、優れた画像品質を達成することができる。また、エッジ効果が発生しても、階調値を低下させることによって、トナーの付着量が増加するのを抑制するので、トナーが不必要に消費されるのを抑制することができる。
[3]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(3-1)上記実施の形態においては特に言及しなかったが、ベタ画像は、画像形成可能な領域を必ずしもすべて塗り潰す必要はなく、IDCセンサー107によって濃度を検出する領域においてエッジ効果が発生しない程度に、IDCセンサー107による濃度検出領域よりも広い領域を塗り潰せば十分である。
【0096】
また、IDCセンサー107によって濃度を検出した画素のうち、トナー付着量比率を算出するために検出濃度を参照する画素において、エッジ効果が発生するのでなければ、IDCセンサー107による濃度検出領域よりも狭い領域しか塗り潰さなくても、トナー付着量比率を精度よく算出することができる。
【0097】
ベタ画像として塗り潰す範囲が狭いほど、当該範囲を塗り潰すために必要になるトナー量が少なくなるので、トナーの消費量を削減する上で有用である。
(3-2)上記実施の形態においては、ライン幅が2の累乗となる線画像についてトナー付着量を実測する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、ライン幅が等間隔になる複数の線画像、またはライン幅が等間隔ではない複数の線画像を用いてトナー付着量を実測してもよい。
【0098】
また、影響幅の変動範囲があらかじめ特定されている場合には、影響幅の端部になり得るライン幅の線画像とベタ画像とについてトナー付着量を実測し、影響幅内のライン幅の線画像については影響幅の端部のライン幅の線画像とトナー付着量が同じであるものとしてもよい。
【0099】
また、影響幅の端部からベタ画像までのライン幅の線画像については、影響幅の端部のライン幅の線画像のトナー付着量と、ベタ画像のトナー付着量とを、ライン幅に応じて比例配分する内挿計算によって、トナー付着量を推定してもよい。このようにすれば、トナー付着量を実測する線画像の種類を少なくすることができるという意味において、トナー消費量を低減することができる。
【0100】
また、影響幅以上のライン幅の線画像について実測したトナー付着量を用いた外挿計算によって、ベタ画像のトナー付着量を推定してもよい。このようにすれば、線画像と比較してトナー消費量が多いベタ画像を形成する必要がなくなるという意味において、トナー消費量を低減することができる。
【0101】
例えば、上記実施の形態のように、2on2offや4on4offなどの線画像を用いる場合には、エッジ効果に起因するトナー消費量の増加分を考慮しても、線画像と比較してベタ画像は2倍近くトナーを消費する。このため、ベタ画像を形成しなくてもよいのであれば、線画像の2倍分近いトナー消費を節約することができる。
(3-3)上記実施の形態においては、線画像が直線からなるストライプ画像出る場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、直線に代えて曲線を用いてもよい。また、線の本数も任意であるのは言うまでもなく、線が1本だけであってもよい。また、ライン幅が1ドット以下の線画像についてもトナー付着量を検出して、階調補正係数を算出してもよい。
【0102】
また、線画像以外にも、例えば、様々な半径の円画像(内部を塗り潰した画像)を用いてもよく、ベタ画像のトナー付着量と比較することによって、エッジ効果による影響幅やトナー付着量比率を算出したり、階調補正係数を求めたりすることができる。このように、トナー付着量比率を求めるために形成する画像の如何に関わらず、本開示を採用すれば、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(3-4)上記実施の形態においては、中間転写ベルト103に担持されている状態で線画像やベタ画像のトナー付着量を実測する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次にようにしてもよい。
【0103】
例えば、感光体ドラム211に担持されている状態で線画像やベタ画像のトナー付着量を実測してもよい。この場合には、静電潜像の現像後、クリーニングブレード212に至るまでの間で、より好ましくは感光体ドラム211の周方向に沿って現像位置から一次転写位置までの間の位置で、感光体ドラム211の外周面に対向するようにIDCセンサー107を配設する必要がある。
【0104】
また、線画像やベタ画像を記録シートSに転写した状態で、トナー付着量を実測してもよい。この場合には、言うまでもなく、記録シートSにトナー像を転写する転写位置よりも下流にIDCセンサー107を配設する必要がある。このような構成を採れば、中間転写方式以外の方式の画像形成装置1にも本開示を適用することができる。
【0105】
また、IDCセンサー107以外のセンサーを用いてもよい。例えば、記録シートSに転写した後、スキャナーを用いてトナー付着量を実測してもよい。熱定着によって細線が潰れたとしても、トナー付着量そのものは維持されるので、トナー付着量を測定することができる。
(3-5)上記実施の形態においては、文字のサイズとして特に明朝文字の大きさを例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、明朝体以外のフォントの文字については、明朝文字とは別にフォント毎に文字サイズと階調補正係数との対応テーブルを作成してもよい。
【0106】
例えば、図9(b)に例示したような文字サイズ(ポイント数)と線幅との対応関係をフォント毎にあらかじめ決定しておき、この対応関係に基づいて、線幅と階調補正係数との対応関係からフォント毎に文字サイズと階調補正係数との対応テーブルを作成することができる。
【0107】
また、図9(b)に例示した文字サイズ(ポイント数)と線幅との対応関係が共通するフォントどうしについては、同じ対応テーブルを共用すれば、あらかじめ用意すべき対応テーブルの個数を低減することができるので、対応テーブルを作成するための処理負荷や処理時間、対応テーブルを記憶するための記憶領域などを節約することができる。
【0108】
また、上記実施の形態においては、図9(a)、図9(b)に示すように、線幅を経由して線画ドット(ライン幅)と文字サイズ(ポイント数)とを対応付けたが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、線画ドット(ライン幅)と文字サイズ(ポイント数)とを直接対応付けるテーブルを用意してもよいし、関数を用いて換算してもよい。
(3-6)上記実施の形態においては、画像形成処理の実行に先立って、階調補正係数を算出する場合を例にとって説明した。トナー消費量を節約するという目的を考慮すれば、上記実施の形態のように、画像形成処理を実行するのが確定している場合にだけ、線画像やベタ画像のトナー付着量を検出して、補正係数を算出する処理を実行するのが適当であるが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0109】
画像形成処理の実行に先立って、階調補正係数を算出すると、画像形成処理の開始タイミングが遅れて、画像形成装置1の性能を表す指標値のひとつであるFCOT(First Copy Out Time)が長くなってしまう恐れがある。この意味においては、画像形成処理を実行後など、画像形成処理を実行しないときに、線画像やベタ画像のトナー付着量処理や、階調補正係数の算出処理を実行するのが有効である。
(3-7)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム方式のカラープリンターである場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム方式に代えてタンデム方式以外の方式のカラープリンターであってもよいし、モノクロプリンターであってもよい。また、スキャン機能を備えたコピー装置や、更にファクシミリ機能を備えたファクシミリ装置であってもよいし、これらの機能を兼ね備えて複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)であってもよい。
【0110】
また、上記実施の形態においては、トナーとキャリアーとからなる二成分系の現像剤を用いる場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、トナーのみからなる一成分系の現像剤を用いてもよい。いずれの場合においても、本開示を適用することによって同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示に係る画像形成装置は、エッジ効果に起因するトナー消費量の増大や画像品質の低下を抑制することができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0112】
1………画像形成装置
100…作像部
101…露光部
103…中間転写ベルト
107…IDCセンサー
120…制御部
200…現像ユニット
201…現像スリーブ
211…感光体ドラム
312…環境センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10