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特許7533153眼科装置、および眼科装置制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】眼科装置、および眼科装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020191539
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080459
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 邦生
(72)【発明者】
【氏名】小林 城久
(72)【発明者】
【氏名】古川 智章
(72)【発明者】
【氏名】中西 弘敬
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-010978(JP,A)
【文献】特開2002-224043(JP,A)
【文献】特開2017-217121(JP,A)
【文献】特開2016-187695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0084856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査する眼科装置であって、
被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影手段と、
前記被検者を検出する検出手段と、
前記眼科装置を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検出手段によって前記被検者が検出されるまで、表示手段に表示させる前記撮影画像の少なくとも一部を隠すことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記撮影画像を非表示にすることを特徴とする請求項1の眼科装置。
【請求項3】
被検眼を検査する眼科装置において実行される眼科装置制御プログラムであって、前記
眼科装置の制御手段によって実行されることで、
被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影ステップと、
前記被検者を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記被検者が検出されるまで、表示手段に表示させる前記撮影画像の少なくとも一部を隠す表示制限ステップと、を前記眼科装置に実行させることを特徴とする眼科装置制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査する眼科装置、および眼科装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を検査する眼科装置としては、眼屈折力測定装置、波面収差測定装置、眼圧測定装置、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography: OCT)、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope: SLO)、眼底カメラ、視野測定装置、角膜形状測定層、角膜内皮撮影装置などが知られている。これらの眼科装置は、被検眼に対して検眼部を適正な位置にアライメントした状態で検査を行う。
【0003】
眼科装置のアライメント方法としては、例えば、被検眼の前眼部画像に対する輝点検出処理によって検出された角膜反射像に基づいてアライメント情報(例えば、検眼部と被検眼との位置ずれ情報など)を取得する方法、前眼部画像に対する瞳孔検出処理によって検出された瞳孔に基づいてアライメント情報を取得する方法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-066760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被検者の画像を撮影して表示部に表示させる場合、背景、人物または衣服などの不要な情報が表示部に表示されてしまうことがあった。この場合、不要な情報が検者または被検者の目に入って煩わしく感じたり、表示画面が見づらくなったりすることがあった。
【0006】
本開示は、従来の問題点を鑑み、不要な情報が目に入る煩わしさまたは表示画面の見づらさを改善できる眼科装置、および眼科装置制御プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 被検眼を検査する眼科装置であって、被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影手段と、前記被検者を検出する検出手段と、前記眼科装置を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出手段によって前記被検者が検出されるまで、表示手段に表示させる前記撮影画像の少なくとも一部を隠すことを特徴とする。
(2) 被検眼を検査する眼科装置において実行される眼科装置制御プログラムであって、前記眼科装置の制御手段によって実行されることで、被検者を撮影することで撮影画像を取得する撮影ステップと、前記被検者を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて前記被検者が検出されるまで、表示手段に表示させる前記撮影画像の少なくとも一部を隠す表示制限ステップと、を前記眼科装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、不要な情報が目に入る煩わしさまたは表示画面の見づらさを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例の外観構成を示す図である。
図2】本実施例の内部構成を示す図である。
図3】本実施例の光学系を示す図である。
図4】本実施例の制御動作を示すフローチャートである。
図5】顔撮影画像の表示制御を示すフローチャートである。
図6】顔撮影画像にメッセージウィンドウが重畳された状態を示す図である。
図7】顎台に顎が載った状態で撮影された顔撮影画像を示す図である。
図8】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本開示に係る実施形態について説明する。本実施形態の眼科装置(例えば、眼科装置1)は、被検眼を検査する装置である。眼科装置は、例えば、撮影部(例えば、顔撮影光学系90)と、検出部(例えば、顎台センサ3c)と、制御部(例えば、制御部80)を備える。撮影部は、被検者を撮影することで撮影画像(例えば、顔撮影画像301、または前眼部画像など)を取得する。検出部は、被検者を検出する。制御部は、眼科装置を制御する。この場合、制御部は、検出部によって被検者が検出されるまで、撮影画像の表示を制限する。これによって、眼科装置は、表示部(表示部85)に不要な情報が映り込むことを抑制でき、不要な情報が目に入る煩わしさまたは表示画面の見づらさなどを改善できる。
【0012】
なお、制御部は、検出部によって被検者が検出されるまで、表示部に表示させる撮影画像の少なくとも一部を隠してもよい。例えば、制御部は、撮影画像にメッセージウィンドウ(例えば、メッセージウィンドウ302)などを重畳表示させることによって、撮影画像の少なくとも一部を隠してもよいし、撮影画像を非表示にすることによって撮影画像の少なくとも一部を隠してもよいし、モザイク処理などによって撮影画像の少なくとも一部を隠してもよい。これによって、表示部に不要な情報が映り込むことを抑制できる。
【0013】
なお、制御部は、メッセージウィンドウに検者または被検者に対して検査を補助するためのメッセージを表示させてもよい。これによって、メッセージウィンドウによって表示部に不要な情報が映り込むことを抑制しつつ、メッセージによって検者または被検者に対する検査補助を行うことができる。
【0014】
なお、制御部は、検査状況に応じて、メッセージウィンドウに表示されるメッセージ内容を変化させてもよい。これによって、検査状況に応じて、より適切な検査補助を行うことができる。制御部は、撮影部の撮影画像、検出部の検出結果などに基づいて、検査状況を判定してもよい。
【0015】
なお、制御部は、例えば、検出部によって被検者が検出された場合、撮影画像の表示制限を解除する。制御部は、例えば、撮影画像の表示制限を解除するとともに撮影画像に基づく被検眼の検出処理を開始してもよい。制御部は、検出処理の開始後に被検者が再び検出されなった場合、再度撮影画像の表示を制限する。この場合、制御部は撮影画像に基づく検出処理を続行してもよい。つまり、制御部は、撮影画像の表示を制限しながら撮影画像の検出処理を行ってもよい。これによって、表示部に不要な情報が映り込むことを抑制しつつ、装置のアライメントを効率的に行うことができる。また、制御部は、検出部によって被検者が検出されたか否かに関わらず、撮影画像に基づいて被検眼の検出処理を行ってもよい。
【0016】
なお、制御部は、検出部によって被検者が検出されるまで、撮影部による撮影を行わないことによって撮影画像の表示を制限してもよい。これによって、表示部に不要な情報が映り込むことを抑制できる。
【0017】
なお、眼科装置は、被検者の顔を支持するための顔支持部を備えてもよい。この場合、検出部は、顔支持部に被検者の顔が支持されているか否かを検出してもよい。顔支持部は、例えば、額当て、または顎台などであってもよい。この場合、検出部は、被検者の額が額当てに当接しているか否かを検出してもよいし、被検者の顎が顎台に載ったか否かを検出してもよい。例えば、検出部は、接触センサ、赤外センサ、超音波センサ、マイクロスイッチなどであってもよい。
【0018】
なお、撮影部は、被検者の顔を撮影するための広角カメラであってもよい。これによって、左右の被検眼の少なくとも一方を含む顔をより確実に撮影できる。また、撮影部は、赤外カメラであってもよい。これによって、撮影画像が周辺環境の影響を受けにくく、撮影画像に対する解析処理を安定して行うことができる。
【0019】
なお、制御部は、記憶部などに記憶された眼科装置制御プログラムを実行してもよい。眼科装置制御プログラムは、例えば、撮影ステップと、検出ステップと、表示制御ステップを含む。撮影ステップは、例えば、被検者を撮影することで撮影画像を取得するステップである。検出ステップは、被検者を検出するステップである。表示制御ステップは、検出ステップにおいて被検者が検出されるまで、撮影画像の表示を制限するステップである。
【0020】
<実施例>
以下、本実施例の眼科装置を図面に基づいて説明する。本実施例の眼科装置は、被検眼の眼圧を非接触にて測定する非接触式眼圧計である。非接触式眼圧計は、例えば、被検眼の角膜に流体を吐出し、そのときの角膜の変形状態と流体の圧力の関係から被検眼の眼圧を測定する。なお、眼科装置は、非接触式眼圧計に限らず、その他の検査を行う眼科装置であってもよい。
【0021】
図1に示すように、本実施例の眼科装置1は、基台2、顔支持部3、駆動部4、制御部80、表示部85、測定部(検眼部)100等を備えてもよい。基台2は、測定部100を移動可能に支持する。顔支持部3は、被検者の顔を支持する。顔支持部3は、額当て3a、顎台3b、顎台センサ3c、顎台駆動部3dなどを備える。顎台センサ3cは、顎台3bに顎が載せられているかを検知する。顎台駆動部3dは、顎台3bを上下に移動させて高さを調整する。駆動部4は、測定部100を基台2に対してXYZ方向(3次元方向)に移動させる。もちろん、駆動部4は、移動方向毎に別々に設けられてもよい。駆動部4は、周知の移動機構を備えてもよい。制御部80は、眼科装置1全体の制御を司る。表示部85は、例えば、被検眼の観察画像および測定結果等を表示させる。表示部85は、例えば、眼科装置1と一体的に設けられてもよいし、装置とは別に設けられてもよい。表示部85は、表示画面が、被検者だけでなく被検者側に向くように配置可能であってもよい。表示部85には、検者または被検者による各種操作指示が入力される。なお、表示部85は、操作部86として用いられてもよい。この場合、表示部85は、眼科装置1の各種設定、測定開始、空気吸入時の操作等に用いられる。なお、操作部86として、ジョイスティック、マウス、キーボード、トラックボール、ボタン等の各種ヒューマンインターフェイスが用いられてもよい。測定部100は、被検眼を測定するための光学系などを備える。本実施例の測定部100は、流体吐出部200、測定光学系10などを備える。
【0022】
<流体吐出部>
流体吐出部200は、例えば、被検眼Eの角膜に流体を吐出する。流体吐出部200は、例えば、シリンダ201、ピストン202、ソレノイドアクチュエータ(以下、ソレノイドともいう)203、ノズル206を備える。シリンダ201とピストン202は、被検眼に吐出する空気を圧縮する空気圧縮機構として用いられる。シリンダ201は、例えば、円筒状である。ピストン202は、シリンダ201の軸方向に沿って摺動する。ピストン202は、シリンダ201内の空気圧縮室234の空気を圧縮する。本実施例のソレノイド203は、いわゆる直動ソレノイドであり、直線的に作動する。ソレノイド203は、可動体204とコイル205を備える。可動体204には、例えば、永久磁石等の磁性体が用いられる。コイル205に電流が流れると、コイル205の内側に磁界が生じる。可動体204は、磁界から受けた電磁力によって図2のA方向に移動される。可動体204は、図示無きビス、ボルト、ナット等によってピストン202に固定される。したがって、ピストン202は、可動体204とともに移動する。可動体204の移動によって、ピストン202は圧縮方向(または前進方向、図2のA方向)に移動される。ノズル206は、圧縮された空気を装置外部に吐出する。ノズル206は、吐出口206aを有する。
【0023】
ピストン202の移動によりシリンダ201内の空気圧縮室234で圧縮された流体は、シリンダ201の先端に連結されるチューブ(パイプでもよい)220、圧縮された空気を収容する気密室221を介して、ノズル206から被検眼Eの角膜に向けて吐出される。なお、例えば、シリンダ201は水平面(XZ面)に対して平行に配置されており、ソレノイド203の駆動によってピストン202がシリンダ201内で水平に移動されることにより流体の圧縮が行われてもよい。例えば、シリンダ201はその長手方向が水平方向と平行に配置され、シリンダ201の内面はピストン202をガイドする。このため、ピストン202の移動方向(圧縮方向)は、水平方向となる。なお、上記各構成部材は、装置本体の筐体内に設けられたステージ上にそれぞれ配置されている。
【0024】
また、本実施例のソレノイド203は、コイル205に流す電流の方向を変えることで、可動体204の移動方向を変更することができる。例えば、コイル205に順方向に電流を流すときに可動体204が圧縮方向(前進方向、図2のA方向)に移動し、逆方向に電流を流すときは可動体204が反対方向(後退方向、図2のB方向)に移動する。したがって、コイル205に流す電流の向きを切り換えることによって、可動体204とともに移動するピストン202の移動方向を変更できる。例えば、コイル205に順方向の電流を流し、ピストン202をA方向に移動させて空気圧縮室234の流体を圧縮した後、コイル205に逆方向の電流を流すことによって、ピストン202をB方向に移動させて初期位置に戻すことができる。
【0025】
流体吐出部200は、例えば、ガラス板208と、ガラス板209を備えてもよい。ガラス板208は、透明であり、ノズル206を保持するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。ガラス板209は、気密室221の後壁を構成するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。
【0026】
なお、流体吐出部200は、例えば、圧力センサ212、エア抜き穴213を備えてもよい。圧力センサ212は、例えば、気密室221の圧力を検出する。エア抜き穴213は、例えば、ピストン202に初速が付くまでの間の抵抗が減少され、時間的に比例的な立ち上がりの圧力変化を得ることができる。
【0027】
<測定光学系>
図3は、眼科装置1の測定光学系10の概略図である。測定光学系10は、例えば、観察光学系130、指標投影光学系140、固視光学系48、角膜変形検出光学系500、角膜厚測定光学系70、顔撮影光学系90などを備える。
【0028】
<観察光学系>
観察光学系130は、被検眼を観察するための前眼部画像を撮影する。観察光学系130によって撮影された前眼部画像は、測定部100のアライメントなどに利用される。観察光学系130は、例えば、ビームスプリッタ31、対物レンズ32、ダイクロイックミラー33、撮像レンズ37、フィルタ34、撮像素子35などを備える。赤外照明光源30からの照明光は、前眼部によって反射され、ビームスプリッタ31、対物レンズ32、ダイクロイックミラー33、撮像レンズ37、及びフィルタ34を介して撮像素子35に結像する。光軸L1は観察光軸として用いられる。
【0029】
フィルタ34は、光源30及びアライメント用の指標光源40の光を透過し、後述する角膜変形検出用の光源50の光及び可視光に対して不透過の特性を持つ。撮像素子35に結像した像は表示部85に表示される。
【0030】
<指標投影光学系>
指標投影光学系140は、被検眼に対して指標を投影する。指標投影光学系140は、指標光源40、投影レンズ41などを備える。指標光源40は、例えば、点灯/消灯の切り換えが可能である。指標光源40は、任意の光量設定が可能であってもよい。指標光源40から投影レンズ41を介して投影された赤外光はビームスプリッタ31により反射され、被検眼に正面より投影される。指標光源40により角膜頂点に形成された角膜輝点は、ビームスプリッタ31~フィルタ34を介して撮像素子35に結像し、上下左右方向のアライメント検出に利用される。光軸L1はアライメント光軸として用いられる。
【0031】
固視光学系48は、光軸L1を有し、被検眼Eに対して正面方向から固視標を呈示する。この場合、光軸L1は固視光軸として用いられる。固視光学系48は、例えば、可視光源(固視灯)45、投影レンズ46、ダイクロイックミラー33を有し、被検眼Eを正面方向に固視させるための光を被検眼Eに投影する。可視光源45には、LED、レーザなどの光源が用いられる。また、可視光源45には、例えば、点光源、スリット光源、リング光源などのパターン光源の他、液晶ディスプレイなどの二次元表示器が用いられる。
【0032】
光源45から発せられた可視光は、投影レンズ46を通過し、ダイクロイックミラー33で反射され、対物レンズ32を通過した後、被検眼Eの眼底に投影される。これにより、被検眼Eは、正面方向の固視点を固視した状態となり、視線方向が固定される。なお、光源45から発せられた可視光は投影レンズ46及び対物レンズ32を通過することで、平行光束に変換される。
【0033】
角膜変形検出光学系500は、投光光学系500aと、受光光学系500bと、を含み、角膜Ecの変形状態を検出するために用いられる。各光学系500a、500bは、測定部100に配置され、駆動部4により3次元的に移動される。
【0034】
投光光学系500aは、投光光軸として光軸L3を有し、被検眼Eの角膜Ecに向けて斜め方向から照明光を照射する。投光光学系500aは、例えば、赤外光源50、コリメータレンズ51、ビームスプリッタ52、を有する。受光光学系500bは光検出器57を有し、被検眼Eの角膜Ecでの照明光の反射光を受光する。受光光学系500bは、光軸L1に関して投光光学系500aと略対称的に配置されている。受光光学系500bは、例えば、レンズ53、ビームスプリッタ55、ピンホール板56、光検出器57、を有し、受光光軸として光軸L2を形成する。
【0035】
光源50を出射した光はコリメータレンズ51により略平行光束とされ、ビームスプリッタ52で反射された後、後述する受光光学系70bの光軸L3と同軸(一致)となり、被検眼の角膜Ecに投光される。角膜Ecで反射した光は後述する投光光学系70aの光軸L2と同軸(一致)となり、レンズ53を通過した後、ビームスプリッタ55で反射し、ピンホール板56を通過して光検出器57に受光される。レンズ53には、光源30及び指標光源40の光に対して不透過の特性を持つコーティングが施される。また、角膜変形検出用の光学系は、被検眼が所定の変形状態(偏平状態)のときに光検出器57の受光量が最大になるように配置されている。
【0036】
また、この角膜変形検出光学系500は第1作動距離検出光学系の一部を兼ねており、第1作動距離検出光学系の投光光学系は、角膜変形検出光学系500の投光光学系500aを兼用する。光源50による角膜Ecでの反射光を受光する受光光学系600bは、例えば、投光光学系500aのレンズ53、ビームスプリッタ58、集光レンズ59、位置検出素子60を有し、受光光軸として光軸L2を形成する。
【0037】
光源50より投光され、角膜Ecで反射した照明光は光源50の虚像である指標像を形成する。その指標像の光は、レンズ53、ビームスプリッタ55を通過してビームスプリッタ58で反射され、集光レンズ59を通過してPSDやラインセンサ等の一次元または二次元の位置検出素子60に入射する。位置検出素子60は、被検眼E(角膜Ec)が作動距離方向(Z方向)に移動すると、光源50による指標像も位置検出素子60上を移動するため、制御回路20は位置検出素子60からの出力信号に基づいて作動距離情報を得る。なお、本実施形態の位置検出素子60からの出力信号は、作動距離方向(Z方向)のアライメント(粗調整)に利用される。第1作動距離検出光学系の受光光学系600bは後述する受光光学系70bほど倍率が大きくない。そのため、位置検出素子60のZ方向の距離検出範囲は受光素子77より広くなる。
【0038】
角膜厚測定光学系70は、投光光学系70aと、受光光学系70bと、固視光学系48と、を含み、被検眼Eの角膜厚を測定するために用いられる。また、投光光学系70aは、角膜変形検出光学系500及び第1作動距離検出光学系の一部が兼用される。
【0039】
投光光学系70aは、投光光軸として光軸L2を有し、被検眼Eの角膜Ecに向けて斜め方向から照明光(測定光)を照射する。投光光学系70aは、例えば、照明光源71、集光レンズ72、光制限部材73、凹レンズ74、角膜変形検出光学系500と兼用されるレンズ53、を有する。照明光源71には、可視光源若しくは赤外光源(近赤外を含む)が用いられ、例えば、LED、レーザなどの光源が用いられる。集光レンズ72は、光源71から出射された光を集光する。なお、光源50及び光源71は互いに波長帯域を用いる。
【0040】
光制限部材73は、投光光学系70aの光路に配置され、光源71から出射された光を制限する。光制限部材73は、角膜Ecに対して略共役な位置に配置される。光制限部材73としては、例えば、ピンホール板、スリット板などが用いられる。光制限部材73は、光源71から出射された一部の光を通過させ、他の光を遮断するアパーチャーとして用いられる。そして、投光光学系70aは、被検眼Eの角膜上において所定のパターン光束(例えば、スポット光束、スリット光束)を形成する。
【0041】
受光光学系70bは、受光素子77を有し、被検眼Eの角膜表面及び裏面での照明光の反射光を受光する。受光光学系70bは、光軸L1に関して投光光学系70aと略対称に配置されている。受光光学系70bは、例えば、受光レンズ75、凹レンズ76、受光素子77、を有し、受光光軸として光軸L3を形成する。なお、図3の受光光学系70bは、被検眼Eに対するZ方向のアライメント状態を検出する第2作動距離検出光学系を兼用する。
【0042】
受光素子77は、複数の光電変換素子を有し、角膜表面及び裏面からの反射光をそれぞれ受光する。受光素子77には、例えば、一次元ラインセンサ、二次元エリアセンサなどの光検出デバイスが用いられる。角膜厚測定光学系70及び第2作動距離検出光学系の受光光学系70bは倍率を大きくして観察を行う。そのため、受光素子77のZ方向の距離検出範囲は位置検出素子60より狭くなる。
【0043】
被検眼E(角膜Ec)が作動距離方向(Z方向)に移動すると、角膜Ecでの光源71の反射光も受光素子77上を移動するため、制御部80は、第2作動距離検出光学系の受光素子77からの出力信号に基づいて作動距離情報を得る。また、制御部80はこの受光素子77からの出力信号により、角膜変形状態や被検眼Eの瞬きを知り、ソレノイド203の駆動を制御する。
【0044】
照明光源71から出射された光は、集光レンズ72によって集光され、光制限部材73を背後から照明する。そして、光源71からの光は、光制限部材73によって制限された後、レンズ53によって角膜Ec付近で結像(集光)される。角膜Ec付近において、例えば、ピンホール像(ピンホール板を使用の場合)、スリット像(スリット板を使用の場合)が結像される。このとき、光源71からの光は、角膜Ec上における視軸との交差部分の近傍で結像される。
【0045】
投光光学系70aによって角膜Ecに照明光が投光されると、角膜Ecでの照明光の反射光は、光軸L1に関して投光光束とは対称な方向に進行する。そして、反射光は、受光レンズ75によって受光素子77上の受光面上で結像される。
【0046】
なお、受光光学系500b、600b及び投光光学系70aで兼用されるレンズ53は、光源50による角膜Ecでの反射光をピンホール板56の穴の中央部に集光させ、かつ、光源71からの照明光を角膜Ec表面及び裏面で集光させる位置に配置される。
【0047】
顔撮影光学系90は、例えば、被検者の顔を撮影する。顔撮影光学系90は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影するための光学系である。例えば、図3に示すように、本実施例の顔撮影光学系90は、例えば、撮像素子91と、撮像レンズ92を主に備える。
【0048】
顔撮影光学系90は、例えば、測定部100が初期位置にある場合に被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。本実施例において、測定部100の初期位置は、右眼を検査し易いように測定部100の光軸L1に対して右側にずれた位置に設定される。したがって、顔撮影光学系90は、測定部100が右側にずれた初期位置にある状態で、被検眼の両眼を撮影できる位置に設けられる。例えば、顔撮影光学系90は、測定部100が初期位置にある状態で機械中心に配置される。初期位置は、例えば、瞳孔間距離の半分、つまり片眼瞳孔間距離に基づいて設定される場合、顔撮影光学系90は、装置本体の機械中心に対して片眼瞳孔間距離だけ左右にずれた位置に配置されてもよい。
【0049】
本実施例の顔撮影光学系90は、駆動部4によって測定部100とともに移動される。もちろん、顔撮影光学系90は、例えば、基台2に対して固定され、移動しない構成でもよい。
【0050】
なお、顔撮影光学系90は、広角カメラであってもよい。この場合、撮像レンズ92は、例えば、広角レンズであってもよい。広角レンズは、例えば、魚眼レンズ、円錐レンズ等である。これによって、顔撮影光学系90は、広い画角で被検者の顔を確実に撮影できる。また、顔撮影光学系90は、赤外撮影を行ってもよい。これによって、撮影された画像が周辺環境の影響を受けにくくなる。もちろん、可視光を撮影するカメラであってもよい。
【0051】
<制御系>
図2に示すように、眼科装置1は制御部80を備える。制御部80は、眼科装置1の各種制御を司る。制御部80は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)81、ROM82、RAM83等を備える。例えば、ROM82には、眼科装置1を制御するための眼科装置制御プログラム、初期値等が記憶されている。例えば、RAM83は、各種情報を一時的に記憶する。制御部80は、測定部100、顔撮影光学系90、駆動部4、表示部85、操作部86、顎台駆動部3d、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)84等と接続されている。記憶部84は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、着脱可能なUSBフラッシュメモリ等を記憶部84として使用することができる。
【0052】
<制御動作>
以上のような構成を備える眼科装置1の制御動作を図4に基づいて説明する。なお、図4の例において、眼科装置1は角膜厚測定と眼圧測定を行うが、これは一例であり、眼科装置1は別の検査を行ってもよい。
【0053】
(ステップS101:顔撮影アライメント)
まず、検者は、被検者の顔を顔支持部3に支持させる。制御部80は、顔撮影光学系90によって被検者の顔を撮影し、顔撮影画像を取得する。制御部80は、取得された顔撮影画像から被検眼を検出する。制御部80は、顔撮影画像から検出した被検眼の位置情報に基づいて、測定部100のアライメントを行う。例えば、制御部80は、顔撮影画像上の被検眼の座標に基づいて、被検眼の存在する直線を求め、その直線に沿って測定部100を移動させる(例えば、特開2017-064058号公報参照)。
【0054】
(ステップS102:前眼部撮影アライメント)
顔撮影アライメントによって被検眼に対する測定部100の位置がある程度調整され、観察光学系130によって被検眼の前眼部が撮影できるようになると、制御部80は前眼部画像に基づいて測定部100のアライメントを行う。例えば、制御部80は、前眼部画像の瞳孔検出または輝点検出によってアライメント情報(測定部100と被検眼との位置ずれ情報等)を取得し、測定部100を被検眼に対して位置合わせする。
【0055】
(ステップS103:測定)
アライメントが完了すると、制御部80は、被検眼を測定する。本実施例では、例えば、角膜厚と眼圧を測定する。まず、制御部80は、角膜厚測定光学系70によって被検眼の角膜厚を測定する。例えば、制御部80は、受光素子77によって検出された角膜前面での反射信号と角膜裏面での反射信号との距離(ピーク間距離)を算出する。角膜厚の測定が完了すると、制御部80は眼圧を測定する。例えば、制御部80はソレノイド203を駆動させてピストン202を移動させると、シリンダ201内の空気が圧縮され、圧縮空気がノズル206から角膜Ecに向けて吹き付けられる。角膜Ecは、圧縮空気の吹き付けにより徐々に変形し、扁平(または圧平)状態に達したときに光検出器57に最大光量が入射される。制御部80は、圧力センサ212からの出力信号と光検出器57からの出力信号とに基づき眼圧値を求める。
【0056】
(ステップS104:結果出力)
測定が完了すると、制御部80は、測定結果のデータを出力する。例えば、制御部80は、測定結果を表示部85に表示させたり、プリントアウトしたり、無線または有線で装置外部に出力したりする。データ出力が完了すると、制御部80は、処理を終了する。
【0057】
<顔撮影画像の表示制御>
続いて、顔撮影光学系90によって取得された画像の表示制御について説明する。本実施例の制御部80は、ステップS101の顔撮影アライメントにおいて、顔撮影光学系90によって撮影された画像(顔撮影画像と呼ぶ)301を表示部85に表示させる。しかしながら、被検者がいない場合、または被検者の準備ができていない場合など、図8に示すように、表示部85に表示した顔撮影画像301に不要な情報(背景、人物または衣服など)が映りこむことがあった。このような場合、不要な情報が検者または被検者の目に入って煩わしく感じたり、表示画面300が見づらくなったりすることがあった。
【0058】
そこで、本実施例では、顔撮影光学系90で撮影された顔撮影画像301を表示させる際、被検者の顎が顎台3bに載っていない場合は、表示部85による顔撮影画像301の表示を制限する処理を行う。以下、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0059】
(ステップS201:顔撮影画像取得)
まず、制御部80は、顔撮影アライメントが開始されると、顔撮影光学系90による顔撮影画像301の撮影を開始する。制御部80は、顔撮影光学系90からの出力に基づいて顔撮影画像301を取得する。
【0060】
(ステップS202:メッセージを重畳表示)
制御部80は、顔撮影画像301を表示部85に表示させるとともに、顔撮影画像301にメッセージを重畳表示(オーバーラップ)させる。つまり、制御部80は、顔撮影画像301の上にメッセージウィンドウ302が重なった状態で表示されるようにする。これによって、顔撮影画像301の一部は表示されたまま、メッセージウィンドウ302によって顔撮影画像301の大部分は隠された状態となる。制御部80は、例えば、メッセージウィンドウ302に「あご台にあごを載せると測定を開始します。」と表示させる。これによって、被検者は、次に何をすればよいのか把握することができる。なお、制御部80は、顔撮影画像301を隠した状態においても、顔撮影画像301の解析(例えば、眼検出処理)を行っていてもよい。これによって、顔撮影画像301の解析をスムーズに行うことができる。
【0061】
(ステップS203:顎台判定)
制御部80は、顎台3bに被検者の顎が載っているか否かの判定を行う。制御部80は、顎台センサ3cがONになっている場合は顎台3bに顎が載っていると判定し、顎台センサ3cがOFFになっている場合は、顎台3bに顎が載っていないと判定する。制御部80は、顎台3bに顎が載っていると判定した場合はステップS203に進み、顎台3bに顎が載っていないと判定した場合は、ステップS202に戻り、顔撮影画像301へのメッセージウィンドウ302の重畳表示を続ける。
【0062】
(ステップS204:メッセージを消す)
制御部80は、顎台3bに顎が載っていると判定すると、メッセージウィンドウ302を消去して顔撮影画像301だけを表示部85に表示させる。図7に示すように、被検者の顎が顎台3bに載っている状態であれば、顔撮影画像301の大部分に被検者の顔が映るようになるため、不要な情報は映りにくくなる。
【0063】
以上のように、本実施例の眼科装置1は、顔撮影光学系90によって撮影された顔撮影画像301の表示を制限することによって、顔撮影画像301に映る不要な情報が表示部85に表示されることを抑制することができ、不要な情報が目に入る煩わしさ、または表示画面300の見づらさを改善できる。また、本実施例のように、メッセージウィンドウ302によって顔撮影画像301を隠すことによって、不要な情報を隠しつつ、ユーザ(検者または被検者)の補助を行うことができる。また、顔撮影画像301の一部が表示されていることによって、顔撮影光学系90が正常に動作しているのか否かを把握できたり、眼科装置1を遠隔操作している場合に顔撮影画像301によって人の気配を感じたりすることができる。また、本実施例の顔撮影光学系90のように被検者の顔を撮影するために広い範囲を撮影する場合は、顔撮影画像301に不要な情報が映り易いため、顔撮影画像301の表示を制限することは特に効果的である。
【0064】
<変容例>
なお、制御部80は、検査状況に応じて、メッセージウィンドウ302に表示されるメッセージ内容を変化させてもよい。例えば、制御部80は、被検者の検出結果に基づいて検査状況を判定し、検査状況に応じたメッセージを表示させるようにしてもよい。例えば、制御部80は、顎台3bに一度顎が載せられ、メッセージウィンドウ302を消した後に、顎台3bから顎が離れてしまい、顎台センサ3cからの検出信号が途絶えた場合には、再度メッセージウィンドウ302を表示させ、「眼検出中です」というメッセージを表示させてもよい。
【0065】
また、例えば、制御部80は、右眼の測定位置または初期位置などから左眼の測定位置に移動するときに、顎台センサ3cがOFFになっている場合は、「左眼に移動中です。」などのメッセージを表示させてもよい。また、例えば、制御部80は、顎台3bの高さを自動で調整するときに、被検者に顎を離してもらい顎台センサ3cがOFFになった場合は、「あご台の高さを自動調整中です。」というメッセージをメッセージウィンドウ302に表示させてもよい。また、測定終了後に測定部100が初期位置に戻るときに、顎台センサ3cがOFFになっている場合は、「初期化中です。」というメッセージをメッセージウィンドウ302に表示させてもよい。このように、検査状況に応じたメッセージを表示させることによって、より好適な検査補助を行うことができる。
【0066】
なお、制御部80は、顔撮影画像301にモザイク処理、または、ぼかす処理を施してから表示部85に表示させるようにしてもよい。これによって、顔撮影画像301に映る不要な情報が表示部85に表示されることを抑制することができる。
【0067】
なお、制御部80は、被検者が検出されるまで、顔撮影画像301を表示部85に表示させないようにしてもよい。例えば、制御部80は、メッセージウィンドウ302だけを表示させ、顔撮影画像301を表示させないようにしてもよい。これによって、顔撮影画像301に映る不要な情報が表示部85に表示されることを抑制することができる。
【0068】
なお、以上の実施例において、被検者を検出するための検出手段として顎台センサ3cを備えていたが、これに限らない。例えば、顎台センサ3cの代わりに顔撮影画像301から被検眼を検出することによって、被検者を検出してもよい。また、超音波センサや他の人感センサなどによって被検者を検出してもよい。
【0069】
なお、制御部80は、被検者が検出されるまで、顔撮影画像301を縮小させた状態で表示部85に表示させてもよい。これによって、顔撮影画像301に映る不要な情報も縮小されるため、不要な情報が気になってしまったり表示画面300が見づらくなったりすることが低減される。
【0070】
なお、制御部80は、被検者が検出されるまで、顔撮影光学系90による撮影を行わないようにしてもよい。このように、表示部85に表示させる顔撮影画像301を取得しないようにすることで、表示部85の表示を制限してもよい。これによって、顔撮影画像301に映る不要な情報が表示部85に表示されることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 眼科装置
80 制御部
85 表示部
90 顔撮影光学系
100 測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8