(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
G04B 37/10 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G04B37/10 T
(21)【出願番号】P 2020191606
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】星野 一憲
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-149219(JP,A)
【文献】特開2006-234658(JP,A)
【文献】実開昭50-157270(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 3/04
G04B 37/10
G04B 37/11
G04G 21/00
H01H 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴、及び、ネジ穴を有する胴部と、
前記貫通穴に挿入されるパイプ部を有するボタンと、
前記ネジ穴に挿入されるネジと、を備え、
前記パイプ部は、前記ネジにより前記胴部に押圧固定される時計であって、
前記ボタンは、前記パイプ部が挿管される挿管穴を有するリング体をさらに有し、
前記リング体は、前記挿管穴を中心とした環状部材であり、
前記胴部には、前記貫通穴と連通し、前記リング体が配置される凹部が設けられており、
前記リング体は、前記凹部に収納され、
前記パイプ部を含む前記リング体は、前記ネジ穴を介して、前記ネジにより前記胴部に
押圧固定される時計。
【請求項2】
前記貫通穴の軸方向からの平面視において、
前記リング体は、外周の一部が切り欠かれた形状をなしており、
前記ネジは、前記切り欠かれた部分に直交する方向から、前記リング体を押圧固定する
請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記リング体と前記胴部の前記凹部とが当接する部分に、パッキンが設けられている請求
項1または2に記載の時計。
【請求項4】
前記リング体と前記パイプ部とは一体である請求項1から3のいずれか一項に記載の時
計 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作用のボタンを有する時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時刻表示以外の機能を備えた多機能時計には、付加機能を実行するための複数の操作用ボタンが設けられている。例えば、ストップウォッチ機能を備えた時計は、リューズに加えて、計時のスタート・ストップを行うためのボタンや、計時を初期化するリセットボタンなど、複数の操作用ボタンを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、4つの操作用のボタンを備えた時計が開示されている。当該文献(例えば、
図5、
図6)によれば、ボタンの操作軸の端部がケース本体内に突出し、この突出した端部にEリングなどの抜止め部材が取り付けられ、この抜止め部材によって操作軸がケース本体の外部に抜け出さないように構成する、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、ケース内部において、抜止め部材により操作軸が固定されてしまうため、一旦ボタンをケースに固定すると、ユーザーが自分でボタンを取り外すことが困難であった。
つまり、ユーザーの嗜好や、用途などに応じて、ボタンを取り換え可能な時計が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る時計は、貫通穴、及び、ネジ穴を有する胴部と、前記貫通穴に挿入されるパイプ部を有するボタンと、前記ネジ穴に挿入されるネジと、を備え、前記パイプ部は、前記ネジにより前記胴部に押圧固定される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
***時計の概要***
図1は、本実施形態に係る時計の正面から見た平面図である。
本実施形態の時計100は、アナログ式の腕時計であり、ストップウォッチ機能、及び、カレンダー機能を備えた、所謂、クロノグラフモデルである。
【0009】
時計100は、胴部30、文字板10、リュウズ15、ボタン20、ボタン50、風防ガラス11、ベゼル12などから構成されている。
胴部30は、ケースであり、ステンレスや、チタンなどの硬質金属から構成されている。
文字板10には、時針2、分針3、クロノグラフ秒針4、24時間針5、クロノグラフ分針6、秒針7、日付窓8、目盛などが設けられている。時針2、分針3、クロノグラフ秒針4は、円形をなした文字板10の中央に配置されている。24時間針5は、文字板10の3時方向に配置された小文字板の中心に設けられる。クロノグラフ分針6は、文字板10の6時方向に配置された小文字板の中心に設けられる。秒針7は、文字板10の9時方向に配置された小文字板の中心に設けられ、秒を指示する。
【0010】
リュウズ15は、胴部30における3時側に設けられた龍頭であり、一段引くと日付の修正が可能で、二段引くと時間の修正が可能に設けられている。なお、その他の機能を有していても良い。
ボタン20は、胴部30の2時方向に設けられた操作用の押しボタンであり、1押しするとクロノグラフが開始し、もう1押しするとクロノグラフが停止する。クロノグラフがスタートすると、クロノグラフ秒針4、クロノグラフ分針6、24時間針5が、それぞれ経過時間を表示する。ボタン20の形状は、胴部30の外形の円弧に沿った曲面を有し、1時半から2時半の位置にかけて略台形状に設けられている。
ボタン50は、胴部30の4時方向に設けられた操作用の押しボタンであり、クロノグラフをリセットする機能が割り当てられている。クロノグラフ計時後に、ボタン50を押すと、クロノグラフ秒針4、クロノグラフ分針6、24時間針5が、リセットされて12時位置に戻る。ボタン50の形状はボタン20と同じであるが、3時半から4時半の方向に設けられている。
【0011】
日付窓8は、日付を表示するための窓枠であり、日付が表示される。
風防ガラス11は、透明なガラスから構成された風防ガラスである。
ベゼル12は、風防ガラス11を囲うリング状の部材であり、胴部30と同じ材質で構成される。なお、本実施形態では、ベゼル12を固定式としているが、回転可能なベゼルであっても良い。
また、時計100は、クロノグラフ以外の機能を備えていても良く、例えば、クロノグラフに加えて、アラーム機能、月齢表示、気圧表示機能などを備えていても良い。その場合、操作用のボタンを、例えば、7時側や、10時側にさらに有していても良い。
【0012】
***時計の断面構造***
図2は、
図1のB-B´断面における断面図であり、ボタン20の周辺構造の断面図である。なお、以下説明において、裏蓋35から風防ガラス11に向かう方向を上側、風防ガラス11から裏蓋35に向かう方向を下側という。
図2に示すように、胴部30の内部には、ムーブメント70が収納されている。ムーブメント70は、時針2、分針3などの各指針を駆動するための輪列機構や、ステッピングモーターなどを含む駆動部であり、駆動用のICが実装された回路基板71を備えている。回路基板71には、スイッチ金具72が実装されている。また、回路基板71の端部には、スイッチパターン71aが形成されており、スイッチ金具72が押込みされた際に、スイッチ金具72がスイッチパターン71aに接触する構成となっている。
【0013】
胴部30の上側には、ベゼル12、風防ガラス11が取付けられている。ベゼル12と風防ガラス11との間、及び、胴部30とベゼル12との間には、それぞれパッキン61,62が挟持されており、防水性が確保されている。なお、パッキン61,62は、平面的には、胴部30の外周円に沿って円環状に配置されている。
胴部30の下側には、裏蓋35が取付けられている。胴部30と裏蓋35との間には、パッキン63が挟持されており、防水性が確保されている。なお、パッキン63も、平面的には閉じた形状となっている。
胴部30の側面には、貫通穴31が形成されている。貫通穴31の中心軸を軸C1とする。貫通穴31には、ボタン20のパイプ部23が挿入される。
【0014】
***ボタンの詳細な構造***
図3は、ボタン、及び、リング体の斜視図であり、ボタン20、リング体28を裏蓋35側から観察した図である。なお、
図3は、ボタン20を裏蓋35側から観察した図であるため、ネジ38による押圧部が上になっている。
ここでは、ボタン20周辺の詳細な構成について、
図2、
図3を用いて説明する。
ボタン20は、頭部21、軸部22、パイプ部23、戻しバネ25、Cリング26などから構成されている。
頭部21は、ユーザーが指で触れて操作するボタンの操作部であり、
図2に示すように側面視では、曲面を持った形状をしている。頭部21の内面には、凹部21aが形成されている。凹部21aの底面に、棒状の軸部22の一端がロウ付け固定されている。
【0015】
軸部22は、棒状の円柱部材であり、先端部22bはスイッチ金具72の近傍に位置している。軸部22は、貫通穴31の軸C1に沿って延在している。先端部22bの首部は、リング状にくびれた形状となっている。
パイプ部23は、中空のパイプ状の部位と、パイプ状から外形が広がる底部23aとから構成されている。
図2に示すように、底部23aの内部には、戻しバネ25の受け部23cが形成されている。
戻しバネ25は、金属製のコイルばねであり、軸部22の回りに嵌められて、頭部21の凹部21aの底面と、底部23aの受け部23cとの間に、バネ性を持って圧入される。
【0016】
軸部22は、パイプ部23に挿入され、パイプ部23の先端から突出して露出した先端部22bの首部には、Cリング26が取付けられる。Cリング26の外形φ2は、パイプ部23の先端における外形よりも大きく、胴部30の貫通穴31の直径φ1よりも小さい。なお、
図2に示すように、パイプ部23の先端は、基幹部分、つまりパイプ部23の貫通穴31と接触する部分よりも細くなっている。これにより、軸部22がパイプ部23から抜けることを防止している。また、軸部22には、リング状のパッキン27が取付けられており、パイプ部23との間で圧接することで、防水性を確保している。
胴部30の貫通穴31の頭部21側には、貫通穴31の直径よりも広い凹部31aが形成されている。凹部31aは、リング体28の形状に対応したD字状の凹部であり、凹部31aにはリング体28が挿入される。
【0017】
図3に示すように、リング体28は、金属製の環状部材であり、その中央には、挿管穴28aが形成されている。挿管穴28aは、貫通穴31と略同じ直径の穴であり、挿管穴28aにはパイプ部23が挿管される。リング体28は、外周円の一部が直線で切り欠かれたD字状をなしており、当該直線部分に直交する方向から、ネジ38により押圧される。
【0018】
図2に示すように、リング体28は、その直線部分をネジ38側に向けた状態で、胴部30の凹部31aに圧入される。凹部31aの内径は、リング体28の外形と同じか、若干小さく設けられており、リング体28は、胴部30の凹部31aに圧入されて、固定される。なお、胴部30の凹部31aと、リング体28とが当接する部分には、パッキン29が設けられる。
図3に示すように、リング体28の外周には、パッキン29を取付ける溝29aが形成されている。好適例においてパッキン29は、樹脂製のパッキンを用いる。
そして、パイプ部23は、リング体28の挿管穴28aと胴部30の貫通穴31とを、貫いて組付けられる。組込み状態では、リング体28と、パイプ部23の底部23aとが当接した状態となる。
【0019】
図2のように組立てられた状態で、ボタン20を押すと、頭部21及び軸部22がムーブメント70側に押し込まれ、軸部22の先端部22bがスイッチ金具72を動かし、スイッチ金具72がスイッチパターン71aに接触する。これにより、電気的なスイッチ動作がなされ、ボタン20による操作が実行される。ボタン20を離すと、戻しバネ25の復元力により、頭部21及び軸部22は元の位置に戻る。
なお、スイッチ金具72とスイッチパターン71aとの距離d1は、頭部21の許容動作長さである距離d2よりも、短く設定されている。換言すれば、スイッチストロークである距離d1が、ボタン20の許容動作距離d2よりも短く設定されているため、確実にスイッチ操作を行うことができる。
【0020】
***ボタンの固定構造***
図2に示すように、ボタン20は、ネジ38により、胴部30に押圧固定される。詳しくは、胴部30には、貫通穴31と対となるネジ穴32が形成されており、ネジ穴32の中心軸である軸C2と、貫通穴31の軸C1とは交差している。そして、ネジ38は、裏蓋35を介してネジ穴32に螺合され、リング体28を介して、パイプ部23を押圧固定する。
好適例としてネジ38は、なべ頭のプラスネジを用いる。裏蓋35には、ネジ穴32と対応する穴36が形成されており、穴36の下側には、ネジ38の頭を収納する凹部36aが設けられている。胴部30のネジ穴32には、雌ネジが形成されている。
【0021】
このような構成において、ネジ38を外すと、ボタン20を胴部30から取り外すことができる。詳しくは、ネジ38を外すことにより、リング体28を介して押圧されていたパイプ部23が緩むため、胴部30の貫通穴31、及び、連続するリング体28の挿管穴28aから、パイプ部23を引き抜くことができる。
つまり、ネジ38により、ボタンの取り換えが可能な構成となっており、ボタン20と異なる頭部形状のボタンと取り換えることができる。なお、ボタン50の構造も、ボタン20と同じであり、ネジ38により取り換え可能な構成となっている。換言すれば、胴部30には、貫通穴31とネジ穴32との対が、ボタンの数に応じて複数ヶ所形成される。
【0022】
なお、上記構成に限定するものではなく、ネジ38によりボタン20が取り換え可能な構造であれば良い。例えば、ボタン20にリング体28が組付けられた状態で、一体化したセット状態で取り換える構成であっても良い。この場合、リング体28の挿管穴28aの直径を、パイプ部23の直径と同じか、若干小さくしておき、挿管穴28aにパイプ部23を圧入して固定する。そして、胴部30の凹部31aの内径は、リング体28の外形よりも若干大きく設定し、リング体28を着脱可能とする。
【0023】
図4は、時計の背面図であり、
図1の時計100の裏側に対応している。なお、解り易くするために、実際のネジよりも、ネジを大きく図示している。
図4に示すように、裏蓋35は、胴部30に対して6本のネジで固定されている。ボタン20,50に対応するネジ38は、前述のプラスネジである。その他の4本のネジ48は、固定ネジであり、六角星型のねじ頭を有するトルクス(登録商標)ネジを用いている。ネジ48は、ボタンと対応していない固定ネジであるため、一般ユーザーが外すことが困難なタイプのネジを採用している。このように、頭部の形状を変えることにより、どれがボタンの取り換えネジ38であるか、一目で識別することができる。
なお、頭部の形状を変えることに限定するものではなく、取り換えネジ38であることが識別できれば良く、ネジの色調を変えることであっても良い。例えば、固定のネジ48は黒色とし、取り換えネジ38は青色としても良い。
【0024】
以上述べた通り、本実施形態の時計100によれば、以下の効果を得ることができる。
時計100は、貫通穴31、及び、ネジ穴32を有する胴部30と、貫通穴31に挿入されるパイプ部23を有するボタン20と、ネジ穴32に挿入されるネジ38と、を備え、パイプ部23は、ネジ38により胴部30に押圧固定される。
【0025】
この構成によれば、胴部30に設けられたネジ穴32に挿入されるネジ38によりボタン20を固定するので、簡便にボタン20を取り換えることができる。
よって、ユーザーの嗜好や、用途などに応じて、ボタン20を取り換え可能な時計100を提供することができる。
【0026】
ボタン20は、パイプ部23が挿管される挿管穴28aを有するリング体28をさらに有し、リング体28は挿管穴28aを中心とした環状部材であり、胴部30には、貫通穴31と連通し、リング体28に対応する凹部31aが設けられており、リング体28は凹部31aに収納され、パイプ部23を含むリング体28は、ネジ穴32を介して、ネジ38により胴部30に押圧固定される。詳しくは、貫通穴31の軸C1方向からの平面視において、リング体28は、外周の一部が切り欠かれた形状をなしており、ネジ38は、切り欠かれた部分に直交する方向から、リング体28を押圧固定する。
【0027】
この構成によれば、リング体28を介してパイプ部23が間接的に固定されるため、パイプ部23の偏芯を防ぐことができる。よって、操作性の良いボタン20とすることができる。
【0028】
また、貫通穴31の軸C1と、ネジ穴32の軸C2とが交差している。
この構成によれば、ボタン20のパイプ部23を、ネジ38で交差する方向から押圧するため、ボタン20を確実に固定することができる。
【0029】
また、貫通穴31とネジ穴32とは対として設けられ、胴部30には、貫通穴31とネジ穴32との対が、複数ヶ所形成される。
この構成によれば、複数の操作ボタンを備えた時計100に適用することができる。
【0030】
また、ボタン20は、頭部21と、頭部21から延在する軸部22とを、さらに有し、軸部22はパイプ部23に挿入されており、パイプ部23から露出する軸部22の先端部22bには、パイプ部23の先端における外形よりも大きいCリング26が取付けられ、Cリング26の外形は貫通穴31の直径よりも小さい。
この構成によれば、パイプ部23をCリング26が取付けられた状態で、貫通穴31から抜くことが可能なため、ネジ38を外すだけで、ボタン20の抜き差しを容易に行うことができる。
【0031】
また、裏蓋35をさらに備え、裏蓋35にはネジ穴32と対応する穴36が形成されており、ネジ38は、裏蓋35を介してネジ穴32に螺合される。
この構成によれば、ボタン20固定用のネジ38により、裏蓋35の固定も兼ねることができる。よって、裏蓋35固定用の専用ネジを設ける場合に比べて、部品数を削減することができる。
【0032】
また、裏蓋35は、複数のネジ48、ネジ38により、胴部30に固定されており、ネジ38の頭部における色調、及び、形状は、固定ネジであるネジ48の色調、及び、形状とは異なる。
これによれば、ネジ頭部の形状を変えることにより、どれがボタンの取り換えネジ38であるか、一目で識別することができる。
【0033】
実施形態2
***ボタンの異なる構成***
図5は、本実施形態のボタン周辺構造の断面図であり、
図2に対応している。
図6は、ボタン40の斜視図であり、
図3と対応している。
本実施形態の時計110は、実施形態1のボタン20、裏蓋35とは異なる構造のボタン40、裏蓋45を備えている。これらの点以外は、実施形態1の時計100と同様である。以下、実施形態1と同じ構成部位には、同一の附番を附し、重複する説明は省略する。
【0034】
本実施形態のボタン40では、リング体28(
図2)をパイプ部43と一体化している。換言すれば、リング体を省略して、その機能をパイプ部43が担っている。詳しくは、ボタン40では、内部に戻しバネ25の受け部23cが形成された底部43aの長さを、リング体の厚さ分、貫通穴31側に伸ばした構成としている。
【0035】
図6に示すように、パイプ部43の底部43aの長さは、
図3の底部23aの長さに比べて、約2倍程度長くなっている。そして、底部43aの形状は、D字状ではなく円筒形としている。また、底部43aが挿入される胴部30の凹部31bは、底部43aに対応した円筒形の凹部としている。
パイプ部43の底部43aの角部には、リング状に溝49aが形成されており、当該溝には、
図5に示すように、リング状の樹脂製のパッキン49が取り付けられ、防水性が確保される。
【0036】
また、
図5に示すように、本実施形態では裏蓋45を介さずに、胴部30に形成されたネジ穴32に対して、直接、ネジ38bを螺合させる構造としている。なお、ネジ38bは、実施形態1のネジ38と同様のプラスネジであるが、ネジ長さが若干異なる。つまり、ネジ38bを、ボタン40の専用ネジとしている。なお、図示を省略するが、ボタン50の構成も、ボタン40と同じである。
このような構成において、ネジ38bを外すと、ボタン40を胴部30から取り外すことができる。詳しくは、ネジ38を外すことにより、押圧されていた底部43aが緩むため、胴部30の貫通穴31から、パイプ部43を引き抜くことができる。
【0037】
図7は、時計の背面図であり、
図4と対応している。
図7に示すように、裏蓋45は、4本の専用のネジ48により固定されている。裏蓋45と、胴部30との間には、平面的に閉じた形状のパッキン63(
図5)が設けられており、防水性が確保されている。
そして、ボタン40,50に対応するネジ38bは、専用のボタン取り換えネジ38としている。
【0038】
以上述べた通り、本実施形態の時計110によれば、実施形態1の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
ボタン40では、リング体と一体化したパイプ部43を採用している。
これにより、部品点数を削減することができる。また、リング体として機能する底部43aは、肉厚に構成されて剛性が高いため、ネジ38bにより押圧されても、パイプ部43の偏芯を防ぐことができる。よって、操作性の良いボタン40とすることができる。
【0039】
裏蓋45は4本の専用の固定ネジであるネジ48により固定されており、ボタン40,50の取り付けネジであるネジ38bと区分けしている。
この構成によれば、ボタン用のネジ38bを着脱しても、裏蓋45用のネジ48には何も影響を及ぼさないため、時計110の気密性を確実に確保することができる。
【0040】
実施形態3
***ボタンの頭部形状のバリエーション***
図8は、本実施形態の時計の平面図であり、
図1に対応している。
本実施形態の時計120は、上記各実施形態のボタンとは異なる頭部形状のボタン80~84を備えている。また、2時方向、4時方向のボタン80,81に加えて、7時方向、9時方向、10時方向にも、ボタン82~84を備えている。これらの点以外は、上記実施形態の時計100,110と同様である。以下、上記実施形態と同じ構成部位には、同一の附番を附し、重複する説明は省略する。
【0041】
2時方向のボタン80は、頭部の形状を除き、前述のボタン20,40と同じ構造の操作ボタンである。同様に、他のボタン81~84も頭部形状以外は、ボタン20,40と同じ構造である。
図8に示すように、ボタン80の頭部は、胴部の外形曲面とは反対向きの曲面を有している。
【0042】
4時方向のボタン81の頭部は、略直線となっており、角部が胴部30に向かって狭まる形状となっている。
7時方向のボタン82の頭部も、略直線となっているが、角部は胴部30に向かって真っ直ぐな形状となっている。
9時方向のボタン83の頭部は、略正方形をなしており、ボタン20(
図1)に比べて、胴部30から突出する高さは高いが、ボタンの長さが短くなっている。
10時方向のボタン84の頭部は、ボタン20(
図1)と同様な形状であるが、ボタンの長さが短くなっている。
【0043】
なお、平面的なボタン頭部の変化だけでなく、側面方向においても同様に変化させても良い。操作面の表面仕上げや、色調なども変化させても良い。また、頭部の材質を変更しても良い。
【0044】
以上述べた通り、本実施形態の時計120によれば、上記各実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
ボタンを取り換え可能な構造としたことにより、用途や、ユーザーの嗜好に応じて、時計のボタンを取り換えることができる。これにより、意匠性を高めるとともに、操作性も向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
2…時針、3…分針、4…クロノグラフ秒針、5…24時間針、6…クロノグラフ分針、7…秒針、8…日付窓、10…文字板、11…風防ガラス、12…ベゼル、15…リュウズ、20…ボタン、21…頭部、21a…凹部、22…軸部、22b…先端部、23…パイプ部、23a…底部、23c…受け部、25…戻しバネ、26…Cリング、27…パッキン、28…リング体、28a…挿管穴、29…パッキン、29a…溝、30…胴部、31…貫通穴、31a…凹部、31b…凹部、32…ネジ穴、35…裏蓋、38…ネジ、38b…ネジ、40…ボタン、43…パイプ部、43a…底部、45…裏蓋、48…ネジ、49…パッキン、49a…溝、50…ボタン、63…パッキン、70…ムーブメント、71…回路基板、71a…スイッチパターン、72…スイッチ金具、80~84…ボタン、100,110,120…時計、C1…軸、C2…軸。