IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図1
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図2
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図3
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図4
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図5
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図6
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図7
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図8
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図9
  • 特許-印刷装置および印刷方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 21/16 20060101AFI20240806BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B41J21/16
B41J3/407
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020197296
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085554
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】萱原 直樹
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03653391(EP,A1)
【文献】特表2004-501000(JP,A)
【文献】特開2014-063376(JP,A)
【文献】特開平09-050527(JP,A)
【文献】特開平11-300948(JP,A)
【文献】特開2010-198089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 21/16
B41J 3/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、
前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、
前記模様を表現する第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとの対比に基づいて、前記第2画像データにおける前記模様に対応する模様領域を抽出する模様抽出部と、
前記模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の位置関係に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、
前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備え、
前記模様抽出部は、
前記模様領域の一つを探索元の模様領域とし、前記探索元の模様領域から所定の探索方向へ所定距離離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した前記模様領域を探索先の模様領域とし、前記探索先の模様領域の位置が前記探索方向において前記探索元の模様領域に隣り合うと記憶する、位置関係特定処理を実行し、
前記探索先の模様領域を新たな前記探索元の模様領域として前記位置関係特定処理を行う、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
Nを2以上の整数としたとき、前記模様抽出部は、前記位置関係特定処理において、前記探索元の模様領域から前記探索方向へ前記所定距離×N離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した前記模様領域をN倍探索先の模様領域とし、前記N倍探索先の模様領域の位置が前記探索方向において前記探索元の模様領域からN個先に在ると記憶する、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記模様抽出部は、前記位置関係特定処理において、前記第2画像データの縦方向を前記探索方向として前記探索を実行し、かつ、前記第2画像データの横方向を前記探索方向として前記探索を実行する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記模様抽出部は、前記一定範囲を円としたとき、前記円の直径を前記第1画像データの対角線の長さの1/2より短い長さとする、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記模様抽出部は、
前記第2画像データから抽出した複数の前記模様領域の全てについて、少なくとも前記探索元の模様領域としたか又は前記探索元の模様領域との位置関係を記憶した場合、複数の前記模様領域を位置関係の繋がりの有無に基づいてグループ分けし、
複数のグループに分けられた場合、いずれか一つのグループの前記模様領域の位置関係の情報を前記印刷画像生成部へ提供する、ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送工程と、
搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、
前記模様を表現する第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとの対比に基づいて、前記第2画像データにおける前記模様に対応する模様領域を抽出する模様抽出工程と、
前記模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の位置関係に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、
搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を備え、
前記模様抽出工程は、
前記模様領域の一つを探索元の模様領域とし、前記探索元の模様領域から所定の探索方向へ所定距離離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した前記模様領域を探索先の模様領域とし、前記探索先の模様領域の位置が前記探索方向において前記探索元の模様領域に隣り合うと記憶する、位置関係特定処理を実行し、
前記探索先の模様領域を新たな前記探索元の模様領域として前記位置関係特定処理を行う、ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の規範となる良品を撮影して得られた規範画像の特徴と類似した候補を、検査対象画像内で探索する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017‐96750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、模様が形成された生地を印刷媒体に用いる場合に、搬送される生地を撮像して得られた撮像画像から、模様を抽出することを想定する。多くの場合、生地には模様が周期的に形成されているが、搬送中の生地に歪みや伸び縮み(以下、歪み等)が発生している可能性があり、撮像画像において、各模様が縦方向や横方向へ整然と並んでいるとは限らない。生地へ適切な印刷を行うためには、生地における模様同士の位置関係を把握する必要があるが、上述の歪み等の影響により、撮像画像から抽出した模様同士の位置関係を正しく把握することは容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
印刷装置は、模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送部と、前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、前記模様を表現する第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとの対比に基づいて、前記第2画像データにおける前記模様に対応する模様領域を抽出する模様抽出部と、前記模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の位置関係に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備え、前記模様抽出部は、前記模様領域の一つを探索元の模様領域とし、前記探索元の模様領域から所定の探索方向へ所定距離離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した前記模様領域を探索先の模様領域とし、前記探索先の模様領域の位置が前記探索方向において前記探索元の模様領域に隣り合うと記憶する、位置関係特定処理を実行し、前記探索先の模様領域を新たな前記探索元の模様領域として前記位置関係特定処理を行う。
【0006】
印刷方法は、模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送工程と、搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、前記模様を表現する第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとの対比に基づいて、前記第2画像データにおける前記模様に対応する模様領域を抽出する模様抽出工程と、前記模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の位置関係に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を備え、前記模様抽出工程は、前記模様領域の一つを探索元の模様領域とし、前記探索元の模様領域から所定の探索方向へ所定距離離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した前記模様領域を探索先の模様領域とし、前記探索先の模様領域の位置が前記探索方向において前記探索元の模様領域に隣り合うと記憶する、位置関係特定処理を実行し、前記探索先の模様領域を新たな前記探索元の模様領域として前記位置関係特定処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】印刷装置の構成を簡易的に示すブロック図。
図2図2Aは搬送される生地とその近傍の構成を上方から下方を向く視点により示す図、図2B図2Aに示す構成の一部を上流から下流を向く視点により示す図。
図3】印刷処理を示すフローチャート。
図4】ステップS100の詳細を示すフローチャート。
図5】ステップS130の詳細を示すフローチャート。
図6】抽出された模様領域の中心座標を一欄表示する図。
図7】ステップS130を具体例により説明するための図。
図8】ステップS140,S150を具体例により説明するための図。
図9】模様画像データと撮像画像データの一部分とを例示する図。
図10図10Aは1/2位相ずれの関係を有する模様領域を示す図、図10Bは1/3位相ずれの関係を有する模様領域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0009】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。
印刷装置10は、印刷方法を実行する。印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、撮像部15、搬送部16、印刷部17、記憶部18等を備える。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0010】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、印刷装置10を制御する。制御部11は、プログラム12に従うことにより、模様登録部12a、模様抽出部12b、印刷画像生成部12c、印刷制御部12d等として機能する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0011】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。表示部13や操作受付部14は、印刷装置10の構成の一部であってもよいが、印刷装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。
【0012】
搬送部16は、制御部11による制御下で印刷媒体を搬送する機構である。本実施形態では、印刷媒体として、ジャカード織りされた生地やレース生地のような、糸や繊維の織り方を工夫することにより立体感の有る模様が形成された生地を想定する。生地には、一つあるいは一まとまりの何らかの模様が、繰り返し並ぶように形成されている。以下では、一つあるいは一まとまりの模様を、一つの模様として扱う。
【0013】
搬送部16は、例えば、ロール状に巻かれた印刷前の生地を搬送の下流へ繰り出す繰り出しローラー、繰り出された生地をさらに搬送するためのベルトやローラー、印刷が終了した生地を再びロール状に巻いて回収する巻き取りローラー、各ローラーやベルトを回転させるためのモーター等の構成を有する。以下では、搬送部16による搬送方向の上流、下流を、単に、上流、下流とも記載する。
【0014】
撮像部15は、制御部11による制御下で、搬送部16が搬送する生地を撮像する。撮像部15は、生地を照射する光源、生地からの反射光を受光して撮像結果としての画像データを生成し出力する撮像素子等の構成を有する。
【0015】
印刷部17は、制御部11による制御下で、搬送部16が搬送する生地へ印刷を行う。印刷部17は、撮像部15よりも下流に設けられている。印刷部17は、制御部11から送信される印刷画像データに基づいて生地への印刷を行う。印刷部17は、例えば、インクジェット方式によりシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等といった複数の色のインクを吐出して印刷を実行可能である。インクジェット方式によれば、印刷部17は、画素毎に各インクのドットオンまたはドットオフを規定した印刷画像データに基づいてインクのドットを不図示のノズルから吐出することにより、生地への印刷を行う。
【0016】
記憶部18は、不揮発性メモリーやハードディスクドライブ等といった記憶手段である。記憶部18を制御部11の一部と解してもよい。また、RAM11cを記憶部18の一部と解してもよい。
【0017】
印刷装置10を、記録装置、画像形成装置、プリンター等と呼んでもよい。印刷装置10は、独立した一つの装置によって実現されるだけでなく、通信インターフェイスやネットワークを介して互いに通信可能に接続した複数の装置によって実現されてもよい。複数の装置により構成される印刷装置10を、印刷システム10と呼んでもよい。
【0018】
印刷システム10は、例えば、撮像部15、搬送部16および印刷部17を含んだプリンターと、制御部11として機能する一台以上の情報処理装置と、を含んで構成される。情報処理装置は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末、或いはそれらと同程度の処理能力を有する装置である。印刷システム10において、制御部11を担う装置を、画像処理装置、印刷制御装置等と呼んでもよい。むろん、印刷システム10を構成する一部の装置を発明として捉えることも可能である。
【0019】
図2Aは、搬送される生地30と生地30近傍の構成とを、上方から下方を向く視点により示している。図2Aでは、生地30に予め形成されている模様については描写を省いている。図2Aでは、搬送部16による生地30の搬送方向を、符号D1により示している。符号22は、搬送部16の一部としての無端ベルト22である。無端ベルト22に乗せられた状態の生地30は、無端ベルト22が回転することにより上流から下流へ搬送される。
【0020】
図2Aに示すように、無端ベルト22の上方には、キャリッジ20が配設されている。キャリッジ20は、搬送方向D1と交差する方向D2に沿って往復移動可能である。ここで言う交差とは直交であるが、直交には、厳密な直交だけでなく、製品の製造上生じる誤差が含まれると解してよい。キャリッジ20は、方向D2へ長尺なガイド部材21に沿って移動する。方向D2を、キャリッジ20や印刷ヘッド19の主走査方向とも言う。また、方向D2を、生地30の幅方向とも言う。
【0021】
キャリッジ20は、印刷ヘッド19を搭載している。つまり、印刷ヘッド19は、キャリッジ20と共に幅方向D2に沿って往復移動する。このようなキャリッジ20や印刷ヘッド19は、印刷部17を構成する。図示はしていないが、印刷ヘッド19は、無端ベルト22と相対する下面において複数のノズルを開口させている。印刷ヘッド19は、キャリッジ20と共に幅方向D2に沿って移動しながら、印刷画像データに基づいてノズルからインクを吐出する。
【0022】
図2Aに示すように、無端ベルト22の上方であって、キャリッジ20および印刷ヘッド19よりも上流の所定位置に、撮像部15が配設されている。
図2Bは、図2Aに示した構成の一部を、上流から下流を向く視点により示している。撮像部15は、無端ベルト22と相対する下面を撮像面15aとしており、撮像面15aを介して無端ベルト22上の生地30を撮像する。撮像部15は、例えば、内部において幅方向D2に沿って複数の撮像素子を並べたラインスキャン型のカメラである。撮像部15は、撮像面15aに設けた不図示のレンズ及び撮像素子を介して、ライン単位の撮像を繰り返す。図2Bでは、撮像部15による幅方向D2の撮像範囲を破線により例示している。撮像部15は、レンズの機能により、幅方向D2において無端ベルト22のほぼ全範囲を撮像可能である。
【0023】
撮像部15の構成は、図2A,2Bの例に限定されない。例えば、複数の撮像部15が無端ベルト22の上方において幅方向D2に沿って並び、複数の撮像部15の各々が幅方向D2における無端ベルト22の全範囲のうちの一部範囲を分担して撮像する構成であってもよい。あるいは、撮像部15は、複数の撮像素子を幅方向D2における無端ベルト22のほぼ全範囲に亘って並べて構成されたラインセンサーであってもよい。あるいは、撮像部15は、印刷ヘッド19がキャリッジ20に搭載されているのと同様に、幅方向D2に沿って移動可能なキャリッジに搭載され、キャリッジにより幅方向D2へ移動しながら無端ベルト22上を撮像する構成であってもよい。
【0024】
2.印刷方法:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行する印刷処理を、フローチャートにより示している。
ステップS100では、制御部11の模様登録部12aは、生地30に形成された模様を表現する模様画像データを記憶部18へ登録する。模様画像データは「第1画像データ」に該当し、ステップS100は、登録工程に該当する。
【0025】
図4は、ステップS100の詳細を、フローチャートにより示している。
ステップS102では、模様登録部12aは、生地30の模様を表現する基本画像データを取得する。生地30は、例えば、デザイナーによってデザインされた一つの模様が繰り返し織り込まれた織物である。そのため、基本画像データは、デザインや製図のための所定のソフトウェアを用いて予め生成された、前記一つの模様を表現する画像データであるとする。模様登録部12aは、ユーザーの操作に従って、例えば印刷装置10の外部のPCから、PCに保存されている基本画像データを入力し、入力した基本画像データを記憶部18に保存する。
【0026】
ステップS104では、模様登録部12aは、生地30のプレスキャンにより生成された画像データであるプレスキャンデータを取得する。プレスキャンとは、後述のステップS110で開始する生地30の撮像に先駆けて行う読取や撮像を意味する。例えば、ユーザーは印刷装置10の外部のスキャナーに生地30を予めスキャンさせる。そして、模様登録部12aは、このスキャンによって生成された画像データを、前記スキャナーから入力してプレスキャンデータとして記憶部18に保存する。
【0027】
あるいは、プレスキャンは撮像部15が実行するとしてもよい。例えば、制御部11は、搬送部16に生地30の搬送を開始させ、生地30の先端を、撮像部15よりも所定距離だけ下流の位置まで到達させたタイミングで、生地30の搬送を停止させる。生地30の先端とは、生地30の下流を向く端部である。撮像部15は、搬送により撮像部15の下を通過する生地30を撮像し、模様登録部12aは、この撮像によって生成された画像データを、撮像部15から入力してプレスキャンデータとして記憶部18に保存する。
【0028】
ステップS106では、模様登録部12aは、ステップS102で取得した基本画像データと、ステップS104で取得したプレスキャンデータとを対比して、プレスキャンデータにおいて、生地30の一つの模様に対応する模様領域を抽出する。このとき、模様登録部12aは、画像認識技術を用いて、基本画像データとの類似度がより高い画像領域をプレスキャンデータ内で抽出し、この画像領域を模様領域とする。
【0029】
そして、ステップS108では、模様登録部12aは、ステップS106で抽出した模様領域に該当する画像データを、模様画像データとして記憶部18に保存する。以上により、模様画像データの登録が完了する。
図4に従った説明によれば、模様画像データは、プレスキャンデータの少なくとも一部と言える。
ただし、模様登録部12aは、基本画像データそのものを模様画像データとして記憶部18に登録することにより、ステップS100を簡易化してもよい。
【0030】
図3の説明に戻る。
ステップS110では、制御部11は、搬送部16が所定の速度で搬送する生地30を対象とした撮像を撮像部15に開始させる。つまり、ステップS110では、生地30の「搬送工程」が開始される。また、ステップS110により「撮像工程」が開始される。撮像部15が生地30の撮像により生成したライン単位の画像データが、順次、制御部11へ出力される。制御部11は、撮像部15からのライン単位の画像データを順次保存することにより、2次元状の撮像画像データを取得する。撮像画像データは「第2画像データ」に該当する。
【0031】
ステップS120では、模様抽出部12bは、ステップS100で登録された模様画像データと、ステップS110の撮像により生成された撮像画像データとの対比に基づいて、撮像画像データにおける生地30の模様に対応する模様領域を抽出する。撮像画像データ内には模様が複数並んで表現されている。従って、模様抽出部12bは、撮像画像データ内に並んで表現されている一つ一つの模様毎に模様領域を抽出する。ステップS120は、「模様抽出工程」に該当する。
【0032】
模様抽出部12bは、画像認識技術を用いて、模様画像データとの類似度が所定以上に高い画像領域を模様領域として抽出すればよい。具体的には、模様抽出部12bは、模様画像データにおける画像のエッジを抽出し、同様に、撮像画像データにおける画像のエッジを抽出する。そして、模様画像データにおけるエッジの分布を、撮像画像データにおけるエッジの分布に対して位置をずらしながら、また模様画像データを変形させながら、繰り返し比較し、エッジの分布同士の一致度合が所定以上に高評価である領域を、一つの模様領域として抽出する。なお、ステップS120の処理と同様に、上述のステップS106において、模様登録部12aは、対比する画像同士のエッジの分布の一致度合に応じてプレスキャンデータ内の模様領域を抽出することができる。
【0033】
本実施形態では、制御部11が扱う模様画像データや、撮像画像データや、印刷画像データといった各画像データの向きについても、搬送方向D1および幅方向D2に対応させて説明する。ここで、幅方向D2をX軸、搬送方向D1をY軸と捉えると、撮像画像データは、直交するX・Y軸による2次元平面において座標が定義される。従って、撮像画像データから模様領域を抽出する処理は、撮像画像データ内における模様領域の座標を特定する処理である。より具体的には、模様抽出部12bは、上述したようなエッジ分布の一致度合に応じて一つの模様領域と評価できる撮像画像データ内の領域の中心座標を、一つの模様領域の抽出結果として取得する。このような処理により、模様抽出部12bは、撮像画像データ内から、模様領域を複数抽出する。
【0034】
ステップS130では、模様抽出部12bは、ステップS120で抽出した複数の模様領域の位置関係を特定する。ステップS130も、模様抽出工程の一部と解してよい。
図5は、ステップS130の詳細を、フローチャートにより示している。
ステップS131では、模様抽出部12bは、ステップS120で抽出した複数の模様領域のうち少なくとも一つを、「探索元の模様領域」に設定する。
【0035】
図6は、ステップS120で抽出された模様領域の中心座標を一欄表示している。図6では、模様領域毎に、模様領域名と模様領域の中心座標(X,Y)との対応関係を記載している。例えば、模様領域A1の中心座標は、(x1,y1)である。ステップS120による模様領域の抽出結果として得られる情報は、各模様領域の中心座標(X,Y)の情報である。図6では、説明の便宜上、模様領域毎に模様領域名を記載している。むろん、模様抽出部12bは、ステップS120により得た各模様領域の中心座標(X,Y)に、それらを区別するための模様領域名を付けることができる。
【0036】
ステップS130における最初のステップS131では、模様抽出部12bは、例えば、図6に示した模様領域のうちX、Yの座標が共に最小である模様領域を、探索元に設定する。ここでは、例として、模様領域A1を探索元に設定したとする。
【0037】
ステップS132では、模様抽出部12bは、探索元の模様領域を基準にして探索範囲を設定する。具体的には、模様抽出部12bは、探索元の模様領域から所定の探索方向へ所定距離離れた位置の一定範囲を、探索範囲として設定する。ここで言う所定距離とは、探索元に隣接する他の模様領域を探索するために適した所定距離を指す。
【0038】
ステップS133では、模様抽出部12bは、探索範囲内で模様領域を探索する。この場合、探索範囲内から、模様領域の中心座標を発見することができれば探索成功となる。ステップS133において探索に成功した模様領域を、「探索先の模様領域」と呼ぶ。
【0039】
ステップS134では、模様抽出部12bは、探索元の模様領域と探索先の模様領域との位置関係を記憶する。この場合、模様抽出部12bは、探索先の模様領域の位置が探索方向において探索元の模様領域に隣り合う、という情報を記憶する。ステップS131~S134は、位置関係特定処理に該当する。
【0040】
ステップS135では、模様抽出部12bは、探索元とすべき模様領域が残っているか否かを判定し、探索元とすべき模様領域が残っていれば、“Yes”の判定からステップS131へ進む。模様抽出部12bは、例えば、ステップS120で抽出した模様領域の全てについて、少なくとも探索元の模様領域としたか又は探索元の模様領域との位置関係を記憶した場合に“No”、つまり探索元とすべき模様領域が残っていないと判定し、ステップS130を終えればよい。模様抽出部12bは、ステップS133の探索に成功しなかった場合は、ステップS134を実質的にスキップしてステップS135の判定に進めばよい。
【0041】
ステップS135の“Yes”を経たステップ131では、模様抽出部12bは、ステップS120で抽出した模様領域のうち未だ探索元に設定していない模様領域を新たな探索元の模様領域に設定して位置関係特定処理を繰り返す。このとき、模様抽出部12bは、探索先の模様領域を新たな探索元の模様領域に設定して位置関係特定処理を繰り返せばよい。
【0042】
図7は、ステップS130を具体例により説明するための図である。図7では、直交するX・Y軸による2次元平面における一部の模様領域の中心座標等を示している。図において、X軸+方向は幅方向D2に対応し、X軸-方向は幅方向D2の逆方向に対応すると解してよい。また、Y軸+方向は搬送方向D1の上流の向きに対応し、Y軸-方向は搬送方向D1の下流の向きに対応している。
【0043】
ステップS130における最初のステップS131では、模様抽出部12bは、例えば、模様領域A1を探索元に設定する。図7には、模様領域A1の中心座標(x1,y1)が示されている。模様領域A1を探索元に設定した模様抽出部12bは、ステップS132では、中心座標(x1,y1)からX軸+方向へ所定の距離W離れた位置を中心とした円C1を設定し、かつ、中心座標(x1,y1)からX軸-方向へ距離W離れた位置を中心とした円C2を設定する。さらに、模様抽出部12bは、中心座標(x1,y1)からY軸-方向へ所定の距離H離れた位置を中心とした円C3を設定し、かつ、中心座標(x1,y1)からY軸+方向へ距離H離れた位置を中心とした円C4を設定する。
【0044】
つまり、X軸と平行な方向やY軸と平行な方向が、所定の探索方向に該当する。また、このような探索方向は、撮像画像データの横方向や縦方向と言える。幅方向D2と平行な方向を、横方向と解し、搬送方向D1と平行な方向を、縦方向と解せばよい。距離Hおよび距離Wは、模様領域の理想的な縦および横の長さであり、本実施形態では予め決まった値である。あるいは、模様抽出部12bは、模様画像データの縦の長さを距離Hとし、模様画像データの横の長さを距離Wとして扱ってもよい。
【0045】
このように設定した円C1,C2,C3,C4が、探索元の模様領域A1を基準とした探索範囲である。探索範囲としての円の直径も予め決まっており、探索元に隣接する他の模様領域を探索するために適した値である。ステップS133では、模様抽出部12bは、円C1,C2,C3,C4それぞれの中で、模様領域の中心座標を探索し、これら円に中心座標が入っている模様領域を、探索先の模様領域とする。図7によれば、円C1内に模様領域A2の中心座標(x2,y2)が入っており、かつ円C4内に模様領域A4の中心座標(x4,y4)が入っている。そのため、円C1を探索範囲としたときに模様領域A2の探索に成功し、円C4を探索範囲としたときに模様領域A4の探索に成功したことになる。図7では、探索範囲として設定した円のうち、その中に模様領域の中心座標が入っている円は実線で示し、その中に模様領域の中心座標が入っていない円は2点鎖線で示している。
【0046】
ステップS134では、模様抽出部12bは、探索先の模様領域A2はX軸+方向において探索元の模様領域A1に隣接し、かつ、探索先の模様領域A4はY軸+方向において探索元の模様領域A1に隣接する、という位置関係の情報を記憶する。このステップS134の後、模様抽出部12bは、ステップS135の“Yes”の判定を経たステップS131において、模様領域A2,A4のそれぞれを新たな探索元に設定する。
【0047】
従って、模様抽出部12bは、ステップS132では、模様領域A2の中心座標(x2,y2)からX軸+方向へ距離W離れた位置を中心とした円C5を設定し、中心座標(x2,y2)からY軸-方向へ距離H離れた位置を中心とした円C6を設定し、かつ、中心座標(x2,y2)からY軸+方向へ距離H離れた位置を中心とした円C7を設定する。同様に、模様抽出部12bは、模様領域A4の中心座標(x4,y4)からX軸+方向へ距離W離れた位置を中心とした円C8を設定し、中心座標(x4,y4)からX軸-方向へ距離W離れた位置を中心とした円C9を設定し、かつ、中心座標(x4,y4)からY軸+方向へ距離H離れた位置を中心とした円C10を設定する。なお、模様抽出部12bは、探索元の模様領域を基準としたX軸+・-方向およびY軸+・-方向の4方向のうち、既に他の模様領域との隣接関係が判明している方向へは、探索範囲としての円を設定しなくてよい。
【0048】
ステップS133では、模様抽出部12bは、円C5,C6,C7,C8,C9,C10それぞれの中で、模様領域の中心座標を探索し、これら円に中心座標が入っている模様領域を、探索先の模様領域とする。図7によれば、円C5内に模様領域A3の中心座標(x3,y3)が入っており、円C7内に模様領域A5の中心座標(x5,y5)が入っている。また、円C8内に模様領域A5の中心座標(x5,y5)が入っており、円C10内に模様領域A6の中心座標(x6,y6)が入っている。
【0049】
従って、ステップS134では、模様抽出部12bは、探索先の模様領域A3はX軸+方向において探索元の模様領域A2に隣接し、かつ、探索先の模様領域A5はY軸+方向において探索元の模様領域A2に隣接する、という位置関係の情報を記憶する。同様に、模様抽出部12bは、探索先の模様領域A5はX軸+方向において探索元の模様領域A4に隣接し、かつ、探索先の模様領域A6はY軸+方向において探索元の模様領域A4に隣接する、という位置関係の情報を記憶する。このステップS134の後、模様抽出部12bは、ステップS135の“Yes”の判定を経たステップS131において、模様領域A3,A5,A6のそれぞれを探索元に設定する。以降は、同様の処理の繰り返しである。
【0050】
このように、模様抽出部12bは、探索範囲から座標が見つけられた探索先の模様領域を新たな探索元とする探索の連鎖を発生させることで、位置関係特定処理を繰り返す。これにより、模様抽出部12bは、ステップS120で抽出した複数の模様領域について、どの模様領域とどの模様領域とがどの方向に隣接しているといった模様領域同士の位置関係を、正確に特定することができる。
【0051】
図3の説明に戻る。
ステップS140では、印刷画像生成部12cは、生地30の模様に重ねて印刷すべき画像を表現する着色画像データを、模様領域の形状に合うように補正する。着色画像データは「第3画像データ」に該当する。着色画像データは、一つの模様に着色すべき色や色の印刷範囲を表現した、予め生成されたカラー画像データである。着色画像データは、例えば、記憶部18に予め保存されている。あるいは、制御部11は、ユーザーの操作に従って、例えば印刷装置10の外部のPCから、PCに保存されている着色画像データを入力し、入力した着色画像データを記憶部18に保存する。
【0052】
撮像画像データにおいて、各模様領域の中心座標は、理想的には搬送方向D1、幅方向D2のそれぞれに沿って一定の間隔で存在する。また、模様領域は、理想的には縦の長さがH、横の長さがWの矩形である。しかしながら、搬送される生地30には、上述したように歪み等が発生している可能性があるため、ステップS120で撮像画像データから抽出された複数の模様領域の中心座標の位置関係も、このような歪み等の影響を受けた配置となっていることがある。例えば、模様領域A1に対してX軸+方向に隣接する模様領域A2は、その中心は理想的には円C1の中心と一到すると想定されるが、図7の例によれば、模様領域A2の中心座標(x2,y2)は円C1の中心からずれている。また、模様領域A1に対してY軸+方向に隣接する模様領域A4は、その中心は理想的には円C4の中心と一到すると想定されるが、図7の例によれば、模様領域A4の中心座標(x4,y4)は円C4の中心からずれている。
【0053】
従って、ステップS140を実行するにあたり、模様抽出部12bまたは印刷画像生成部12cは、ステップS120で抽出した模様領域の中心座標およびステップS130で特定した模様領域の位置関係に基づいて、撮像画像データにおける各模様領域の形状を特定する。この場合、模様抽出部12bは、一つの中心座標を中心あるいはほぼ中心に有する四角形の四隅の座標を隣接する周囲の模様領域の中心座標との距離および位置関係に応じて演算する処理を繰り返すことにより、各模様領域の形状を特定すればよい。このように特定した各模様領域は、生地30の歪み等に起因して歪んだり伸び縮みしたりした形状となっている場合がある。
【0054】
印刷画像生成部12cは、模様領域の個々の形状に合わせて、着色画像データの形状を変形する。変形方法としては、例えば、画像の拡大、縮小、回転、せん断等を含むアフィン変換や、その他の変形方法を用いる。このような変形が、ステップS140による補正である。模様領域の形状次第では、結果的にステップS140の補正が不要な場合もある。
【0055】
ステップS150では、印刷画像生成部12cは、ステップS140を経た複数の着色画像データを、撮像画像データにおける複数の模様領域の位置関係に対応させて配置することにより、印刷画像データを生成する。印刷画像データは、ステップS140を経た複数の着色画像データを結合した画像データであり、撮像の対象となった生地30の領域に対して印刷する画像である。このようなステップS140,S150は、第3画像データを抽出された模様領域の位置関係に合うように配置することにより印刷画像データを生成する、「印刷画像生成工程」に該当する。
【0056】
ステップS140,S150の具体例を、図8を参照して説明する。符号50は、着色画像データ50を示している。図8の例では、着色画像データ50は、花びらをモチーフにしてデザインされた模様に重ねて着色すべき色を表現したカラー画像データである。着色画像データ50は、縦横が模様画像データと同一或いはほぼ同一のサイズの画像と解してよい。符号51aは、中心座標(x1,y1)を有する模様領域A1の形状に合わせて着色画像データ50を補正した後の着色画像データ51aを示している。同様に、符号51bは、模様領域A1に対してX軸+方向に隣接する模様領域A2の形状に合わせて着色画像データ50を補正した後の着色画像データ51bである。図8では、補正後の着色画像データの境界を一部破線で示している。
【0057】
符号51cは、模様領域A2に対してX軸+方向に隣接する模様領域A3の形状に合わせて着色画像データ50を補正した後の着色画像データ51cである。符号51dは、模様領域A1に対してY軸+方向に隣接する模様領域A4の形状に合わせて着色画像データ50を補正した後の着色画像データ51dである。そして、このような着色画像データ51a,51b,51c,51d…を、撮像画像データにおける模様領域の位置関係の通りに結合したものが、印刷画像データ51である。
【0058】
図3の破線の矢印で示すように、制御部11は、ステップS110で生地30の撮像を開始して以降、撮像部15から順次得られる撮像画像データに応じて、ステップS120~S150を繰り返す。つまり、制御部11は、撮像部15から順次得られる所定サイズ分の撮像画像データを対象としてステップS120,S130を実行し、ステップS120,S130の結果を受けてステップS140,S150を実行する。図8に示す印刷画像データ51は、このようなステップS120~S150の一サイクルの結果得られる印刷画像データである。
【0059】
ステップS160では、印刷制御部12dは、ステップS150で生成された印刷画像データの生地30への印刷を開始する。つまり、ステップS160により「印刷工程」が開始される。印刷画像生成部12cは、ステップS140,S150を繰り返すことにより印刷画像データを順次生成し、生成した順に印刷画像データを印刷制御部12dへ出力する。印刷制御部12dは、印刷画像生成部12cから取得した印刷画像データに対して、いわゆる色変換処理やハーフトーン処理といった必要な各処理を適宜施して、印刷部17が印刷に使用する形式の印刷画像データに変換する。印刷制御部12dは、このような変換後の印刷画像データを、一時的にバッファに蓄積してもよい。
【0060】
そして、印刷制御部12dは、前記変換後の印刷画像データを印刷部17に転送し、ステップS110により撮像を開始した生地30の位置が印刷ヘッド19の下に到達した所定のタイミングで、キャリッジ20の移動と印刷画像データに基づく印刷ヘッド19からのインク吐出と、による印刷を印刷部17に開始させる。これにより、印刷画像データを構成する個々の着色画像データが表現するカラー画像が、生地30における個々の模様に合った形で模様に重なって印刷される。
【0061】
搬送部16には、搬送のために回転するローラーやベルトの回転量を検出するエンコーダーが設けられている。印刷制御部12dは、エンコーダーからの検出信号に従って生地30の搬送距離を演算する。従って、印刷制御部12dは、ステップS110により撮像を開始した生地30の位置の、搬送方向D1における現在位置を把握し、当該位置が印刷ヘッド19の下に到達したタイミングで、印刷部17に、生地30への印刷を開始させることができる。
【0062】
ステップS160で印刷を開始した後、制御部11は、印刷を終了するか否かを判定する(ステップS170)。制御部11は、印刷を終了する場合は、“Yes”と判定し、ステップS180の終了処理へ進む。制御部11は、例えば、ユーザーから印刷終了の指示を受けた場合や、予定されていた長さ分の生地30の搬送を終えた場合に、印刷の終了と判定する。
【0063】
ステップS180の終了処理では、制御部11は、撮像部15による生地30の撮像を停止させる。また、制御部11は、最後のステップS120~S150の一サイクルで生成された印刷画像データに基づく印刷を印刷部17に実行させた後、搬送部16や印刷部17の駆動を停止し、図3のフローチャートを終了する。むろん、制御部11は、巻き取りローラーによる生地30の回収等の必要な処理を制御した上で、搬送部16を停止させるとしてもよい。
【0064】
3.N倍探索:
位置関係特定処理に関して、追加の説明を行う。模様抽出部12bは、位置関係特定処理において、これまで説明したように探索元の模様領域に隣接する模様領域を探索することに加え、探索元の模様領域からある程度離れた位置の模様領域を探索するとしてもよい。つまり、模様抽出部12bは、ステップS131~S133において、探索元の模様領域から探索方向へ所定距離×N離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した模様領域を「N倍探索先の模様領域」とする。そして、ステップS134では、N倍探索先の模様領域の位置が探索方向において探索元の模様領域からN個先に在る、と記憶する。Nは2以上の整数である。ここでは、N=2とする。ちなみに、探索元の模様領域から1個先に在るとは、探索元の模様領域に隣接するという意味である。
【0065】
再び図7を参照して説明を行う。模様抽出部12bは、ステップS131で、中心座標(x1,y1)を有する模様領域A1を探索元に設定したとする。この場合、模様抽出部12bは、ステップS132では、中心座標(x1,y1)を基準とした探索範囲として、図7に示す円C1,C2,C3,C4に加え、中心座標(x1,y1)からX軸+方向へ距離W×2離れた位置を中心とした円、中心座標(x1,y1)からX軸-方向へ距離W×2離れた位置を中心とした円、中心座標(x1,y1)からY軸-方向へ距離H×2離れた位置を中心とした円、および、中心座標(x1,y1)からY軸+方向へ距離H×2離れた位置を中心とした円、を設定する。そして、ステップS133では、模様抽出部12bは、これら計8個の円のそれぞれで模様領域の中心座標を探索する。
【0066】
ステップS120による模様領域の抽出の精度次第では、撮像画像データにおいて実際には表現されている模様領域の一部が抽出されないことがある。仮に、ステップS120において、模様領域A2の中心座標(x2,y2)が抽出されなかったとする。中心座標(x2,y2)が抽出されなかった場合、模様抽出部12bは、模様領域A1の中心座標(x1,y1)を基準として設定した円C1から、模様領域の中心座標を見つけることができない。すると、複数の模様領域が探索方向に隣接して連なっていることを前提とした探索の連鎖が途切れてしまい、模様領域A1よりもX軸+方向に在る模様領域A3等について探索できなくなる。
【0067】
このような不都合に対し、上述したように探索元の模様領域から探索方向へ所定距離×N離れた位置の一定範囲内で探索を行うようにすれば、仮に、模様領域A1を探索元にして隣接する模様領域A2が探索できなくても、模様領域A1からX軸+方向において2つ先に在る、中心座標(x3,y3)の模様領域A3を探索することができる。
【0068】
なお、生地30の歪み等の影響を考えると、探索元の模様領域を基準として設定する探索範囲が探索元から遠くなるほど、探索方向において探索元の模様領域からN個先に在る模様領域を正しく探索することができなくなる。従って、Nは概ね2または3ぐらいが適切である。
【0069】
また、位置関係特定処理によれば、上述したようにステップS120において模様領域A2の中心座標(x2,y2)が抽出されなかった場合であっても、探索の連鎖が模様領域A2を介さずに回り込むことにより、模様領域A1よりもX軸+方向に在る模様領域A3等について探索することができる。具体的には、中心座標(x1,y1)を有する模様領域A1を探索元として、Y軸+方向に隣接する中心座標(x4,y4)の模様領域A4が探索される。そして、これに連鎖し、模様領域A4を探索元としてX軸+方向に隣接する中心座標(x5,y5)の模様領域A5が探索され、さらに、模様領域A5を探索元としてX軸+方向に隣接する、図7に不図の模様領域が探索され、さらに、この不図示の模様領域を探索元としてY軸-方向に隣接する中心座標(x3,y3)の模様領域A3が探索される。
【0070】
4.探索範囲のサイズ決定方法:
これまでは、ステップS132で探索範囲として設定する円の直径は所定値であると説明したが、探索範囲のサイズの決定方法を、例えば以下のようにしてもよい。
【0071】
図9は、ステップS100で登録された模様画像データ40と、ステップS110の撮像により生成された撮像画像データ41の一部分とを例示している。また、図9では、画像データにおけるハート形等で構成された模様を具体的に示している。ステップS120では、模様抽出部12bは、模様画像データ40と、撮像画像データ41との対比に基づいて、撮像画像データ41から模様領域を抽出する。
【0072】
図9において撮像画像データ41内の符号42で示す実線の各枠は、それぞれが模様領域42である。また、図9において符号43で示す破線の各枠も、それぞれが模様領域43である。模様領域42,43は、いずれも模様画像データ40と同様の模様を有している。これまでの説明から解るように、ステップS120では、模様抽出部12bは、撮像画像データ41における各模様領域42,43それぞれの中心座標を抽出する。
【0073】
撮像画像データ41内の実線の各枠に注目すると、撮像画像データ41内には、模様領域42が一定周期で重ならずに連続している。また、撮像画像データ41内の破線の各枠に注目すると、撮像画像データ41内には、模様領域43が一定周期で重ならずに連続している。そして、模様領域42と、模様領域43とは、搬送方向D1および幅方向D2のそれぞれにおいて、模様領域の周期の1/2の距離分互いにずれている。このように、ある模様領域の発生周期の1/2の距離ずれた各位置からも同様の模様領域を抽出できるデザインは、様々な生地30で採用されている。
【0074】
本実施形態では、模様領域42と模様領域43とのように、互いの一部が重なっており、搬送方向D1および幅方向D2において模様領域の周期の1/2の距離分互いにずれている関係を「1/2位相ずれ」の関係と呼ぶ。模様領域42同士は、重ならずに連続しており、同位相の関係にある。模様領域43同士も重ならずに連続しており同位相の関係にある。そして、複数の模様領域42の繋がりによりカバーされる領域は、複数の模様領域43の繋がりによってもカバーされている。従って、ステップS140,S150において印刷画像生成部12cが着色画像データを模様領域の位置関係に対応させて配置し一繋ぎの印刷画像データを生成することを考えると、印刷画像生成部12cにとっては、1/2位相ずれの関係にある模様領域42と模様領域43とのうちどちらか一方の情報が有ればよい。そこで、模様抽出部12bは、探索元の模様領域を基準として、同位相の模様領域を探索でき、かつ異なる位相の模様領域は探索できないサイズの探索範囲を設定する。
【0075】
図10Aは、図9と同様に、撮像画像データ内で1/2位相ずれの関係にある幾つかの模様領域を実線および破線により示している。図10Aでは、見易さを考慮して図9に示したような模様は省略している。符号Ap,Arは、同位相の模様領域であって、X軸+方向に隣接する二つの模様領域Ap,Arを示している。模様領域Ap,Arは、図9に示した模様領域42同士の例と解してよい。一方、符号Aq,Asは、同位相の模様領域であって、X軸+方向に隣接する二つの模様領域Aq,Asを示している。模様領域Aq,Asは、図9に示した模様領域43同士の例と解してよい。つまり、模様領域Ap,Arと、模様領域Aq,Asとは、1/2位相ずれの関係にある。
【0076】
図10Aでは、模様領域Ap,Aq,Ar,Asのそれぞれを簡易的に矩形で示しているが、実際の模様領域の形状は、上述したように生地30の歪み等の影響を受けて歪んでいたり伸び縮みしていたりする。ステップS120では、模様領域Ap,Aq,Ar,Asそれぞれの中心座標(X,Y)が、模様領域の抽出結果として得られる。
【0077】
模様抽出部12bは、ステップS131で模様領域Apを探索元に設定したとき、ステップS132では、模様領域Apの中心座標(xp,yp)からX軸+方向へ距離W離れた位置を中心とする円Cpを、探索範囲の一つとして設定する。円Cpは、当然、模様領域Apに対してX軸+方向に隣接する模様領域Arの中心座標を探索するための探索範囲である。また、円Cpによって1/2位相ずれの関係にある模様領域Asの中心座標は探索されるべきではない。同様に、模様抽出部12bは、ステップS131で模様領域Aqを探索元に設定したとき、ステップS132では、模様領域Aqの中心座標(xq,yq)からX軸+方向へ距離W離れた位置を中心とする円Cqを、探索範囲の一つとして設定する。円Cqは、模様領域Aqに対してX軸+方向に隣接する模様領域Asの中心座標を探索するための探索範囲であり、この円Cqによって1/2位相ずれの関係にある模様領域Arの中心座標は探索されるべきではない。
【0078】
そこで、模様抽出部12bは、探索範囲としての円の直径を、模様画像データの対角線の長さの1/2より短い所定値とする。模様画像データの縦横のサイズは、模様領域の縦横のサイズとほぼ同様と言える。従って、探索範囲としての円の直径を、模様画像データの対角線の長さの1/2より短い長さとすれば、1/2位相ずれの関係にある二つの模様領域それぞれを探索元として円Cp,Cqのように設定した二つの探索範囲は理論上重ならない。その結果、これまでに説明した探索の連鎖により、模様抽出部12bは、同位相の模様領域同士の位置関係を記憶することができる。
【0079】
撮像画像データが1/2位相ずれの関係にある模様領域を含んでいることを前提として、ステップS135以降の処理について補足説明する。撮像画像データが1/2位相ずれの関係にある模様領域を含んでいる場合、図6に中心座標を示す複数の模様領域のうち、およそ半数の模様領域は同位相の模様領域のグループ(第1グループ)であり、およそ残りの模様領域は、同位相の模様領域のグループであって第1グループと1/2位相ずれの関係にあるグループ(第2グループ)である。
【0080】
模様抽出部12bは、ステップS131で探索元に設定した模様領域が、偶々、第1グループに属する模様領域であった場合、ステップS131~S134を繰り返すことにより、結果的に第1グループに属する模様領域同士の位置関係を記憶する。ステップS132では、探索範囲としての円の直径を、模様画像データの対角線の長さの1/2より短い所定値とする。模様抽出部12bは、第1グループに属する全ての模様領域について、それらの隣接関係等を記憶してステップS135に進んだとき、未だ探索元としていない模様領域が残っているため、“Yes”の判定からステップS131へ進み、直近のステップS133で見つけた探索先の模様領域を、新たな探索元とする。
【0081】
しかしながら、この新たな探索元の模様領域は、第1グループに属する模様領域であるため、当該新たな探索元の模様領域を基準として探索できる模様領域は、既に位置関係を記憶した第1グループ内の他の模様領域以外に無く、実質的に探索の連鎖が途切れる。このように探索の連鎖が途切れた場合、模様抽出部12bは、ステップS131において、未だ探索元としていないいずれかの模様領域を新たな探索元に設定し、ステップS131~S134を繰り返す。この結果、模様抽出部12bは、第2グループに属する模様領域同士の位置関係も記憶する。
【0082】
従って、ステップS135で“No”と判定したとき、模様抽出部12bは、図6に示したような複数の模様領域の情報を、位置関係の繋がりの有無に基づいて、第1グループと第2グループとに分類することができる。模様抽出部12bの認識として、第1グループと第2グループとの間に位置関係の繋がりは無い。また、ステップS120における模様領域の抽出精度によっては、実際は模様画像データが表現する模様に該当しない領域の中心座標が、誤って抽出されることもある。このように誤って中心座標が抽出されたものを、偽模様領域と称する。撮像画像データ内において偽模様領域の位置は不規則であり、偽模様領域を探索元としても、基本的には第1グループの模様領域や第2グループの模様領域の探索に成功することは無い。従って、ステップS135で“No”と判定したとき、模様抽出部12bは、ステップS120で抽出した複数の模様領域の情報を、第1グループと、第2グループと、さらには偽模様領域のグループとに分類することができる。
【0083】
模様抽出部12bは、上述のように分けたグループのうち、いずれか一つのグループの模様領域の位置関係の情報を、印刷画像生成部12cへ提供して、ステップS140以降を実施させる。模様抽出部12bは、基本的には、含まれる模様領域の数が最も多い一つのグループを選んで、その模様領域の位置関係の情報を印刷画像生成部12cへ提供すればよい。模様抽出部12bは、例えば、第1グループの模様領域の位置関係の情報を印刷画像生成部12cへ提供し、第2グループおよび偽模様領域のグループに関する情報は破棄する。なお、偽模様領域のグループは、第1グループや第2グループと比べて、模様領域の数が大幅に少ないため、情報を印刷画像生成部12cへ提供すべきでないグループであることは容易に判断できる。
【0084】
生地30に採用される模様のデザインには、図9に例示した1/2位相ずれ以外にも、例えば、1/3位相ずれの関係を有する模様領域により構成されたものや、1/4位相ずれの関係を有する模様領域により構成されたものがある。
図10Bは、撮像画像データ内で1/3位相ずれの関係にある幾つかの模様領域を実線および破線で示している。図10Bでは、図10Aと同様に、見易さを考慮して模様自体は省略している。図10Bについては、図10Aと共通する説明は省略する。図10Bにおいて、符号At,Avは、同位相の模様領域であって、X軸+方向に隣接する二つの模様領域At,Avを示し、符号Au,Awは、同位相の模様領域であって、X軸+方向に隣接する二つの模様領域Au,Awを示している。つまり、図10Bでは、模様領域At,Avと、模様領域Au,Awとは、互いの一部が重なっており、搬送方向D1および幅方向D2において模様領域の周期の1/3の距離分互いにずれている、1/3位相ずれの関係を有している。
【0085】
模様抽出部12bは、ステップS131で模様領域Atを探索元に設定したとき、ステップS132では、模様領域Atの中心座標(xt,yt)からX軸+方向へ距離W離れた位置を中心とする円Ctを、探索範囲の一つとして設定する。円Ctは、模様領域Atに対してX軸+方向に隣接する模様領域Avの中心座標を探索するための探索範囲であり、この円Ctによって1/3位相ずれの関係にある模様領域Awの中心座標は探索されるべきではない。同様に、模様抽出部12bは、ステップS131で模様領域Auを探索元に設定したとき、ステップS132では、模様領域Auの中心座標(xu,yu)からX軸+方向へ距離W離れた位置を中心とする円Cuを、探索範囲の一つとして設定する。円Cuは、模様領域Auに対してX軸+方向に隣接する模様領域Awの中心座標を探索するための探索範囲であり、この円Cuによって1/3位相ずれの関係にある模様領域Avの中心座標は探索されるべきではない。
【0086】
図示は省略しているが、図10Bの例においては当然に、模様領域At,Avとの関係では2/3位相ずれの関係を有し、かつ、模様領域Au,Awとの関係では1/3位相ずれの関係を有する模様領域のグループも撮像画像データ内に存在する。図10Bにおいては、模様抽出部12bは、探索範囲としての円の直径を、模様画像データの対角線の長さの1/3より短い所定値とする。かかる構成とすれば、1/3位相ずれの関係にある模様領域それぞれを探索元として円Ct,Cuのように設定した二つの探索範囲は理論上重ならない。この結果、模様抽出部12bは、ステップS130では、模様領域At,Avを含む同位相の複数の模様領域(第1グループ)に関する位置関係を記憶し、模様領域Au,Awを含む同位相の複数の模様領域(第2グループ)に関する位置関係を記憶し、さらに、これら第1グループ、第2グループいずれにも属さない同位相の複数の模様領域(第3グループ)に関する位置関係を記憶する。模様抽出部12bは、これら第1~第3グループのうち、いずれか一つのグループの模様領域の位置関係の情報を、印刷画像生成部12cへ提供してステップS140以降を実施させればよい。
【0087】
このような図9,10Aや図10Bの例によれば、模様抽出部12bは、撮像画像データが1/J位相ずれの関係にある模様領域を有している場合、ステップS132では、Jおよび模様画像データの対角線の長さLに基づき、探索範囲としての円の直径Dを、下記式(1)を満たす値に決定する。
D<L×1/J …(1)
【0088】
なお、Jの値は、生地30に採用されているデザインに依存する。模様抽出部12bは、何らかの手段によりJを取得できればよく、例えば、ユーザーによる操作受付部14の操作を通じてJの値を取得する。
【0089】
5.まとめ:
このように本実施形態によれば、印刷装置10は、模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送部16と、搬送部16が搬送する生地30を撮像する撮像部15と、搬送部16が搬送する生地30へ印刷を行う印刷部17と、模様を表現する第1画像データと、撮像部15による生地30の撮像により生成された第2画像データとの対比に基づいて、第2画像データにおける模様に対応する模様領域を抽出する模様抽出部12bと、模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された模様領域の位置関係に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部12cと、印刷画像データの生地30への印刷を印刷部17に実行させる印刷制御部12dと、を備える。そして、模様抽出部12bは、模様領域の一つを探索元の模様領域とし、探索元の模様領域から所定の探索方向へ所定距離離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した模様領域を探索先の模様領域とし、探索先の模様領域の位置が探索方向において探索元の模様領域に隣り合うと記憶する、位置関係特定処理を実行する。さらに、模様抽出部12bは、探索先の模様領域を新たな探索元の模様領域として位置関係特定処理を行う。
【0090】
上述したように生地30の歪み等の影響により、第2画像データにおいて各模様領域が縦方向や横方向に沿って整然と並んでいるとは限らない。また、ステップS120による模様領域の抽出で得られる情報は、図6に示したような中心座標の羅列に過ぎない。そのため、従来は、撮像画像データにおける模様領域同士の位置関係を正確に把握することが困難であった。これに対して本実施形態によれば、模様抽出部12bは、探索元の模様領域と、これを基準にして設定した一定範囲内で見つけた探索先の模様領域との隣接関係を記憶する位置関係特定処理を、探索先の模様領域を新たな探索元として繰り返す。
【0091】
つまり、生地30の歪み等の影響により第2画像データにおける模様領域の並びも歪んでいたり斜めであったりするが、隣接する模様領域の位置関係であれば、搬送方向D1や幅方向D2における理想的な位置関係に対するずれ量が小さく、一方を基準にして他方を探索し易い。そのため、本実施形態のように位置関係特定処理を繰り返すことにより、模様抽出部12bは、複数の模様領域について、模様領域同士の位置関係を正確に特定することができる。なお、隣り合うとは、これまでの具体例では隣接を意味するが、接しているとは言えないが隣同士である位置関係を含む意味であってよい。
【0092】
また、本実施形態によれば、Nを2以上の整数としたとき、模様抽出部12bは、位置関係特定処理において、探索元の模様領域から探索方向へ所定距離×N離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した模様領域をN倍探索先の模様領域とし、N倍探索先の模様領域の位置が探索方向において探索元の模様領域からN個先に在ると記憶する、としてもよい。
前記構成によれば、位置関係特定処理の繰り返しによる探索の連鎖が途切れることを、防止し易い。
【0093】
また、本実施形態によれば、模様抽出部12bは、位置関係特定処理において、第2画像データの縦方向を探索方向として探索を実行し、かつ、第2画像データの横方向を探索方向として探索を実行する、としてもよい。
前記構成によれば、第2画像データにおいて2次元状に繰り返し存在する複数の模様領域について、互いの位置関係を特定することができる。
ただし本実施形態は、1次元状に並ぶ複数の模様領域について位置関係を特定する場合にも適用可能である。
【0094】
また、本実施形態によれば、模様抽出部12bは、一定範囲を円としたとき、円の直径を第1画像データの対角線の長さの1/2より短い長さとする、としてもよい。
前記構成によれば、模様抽出部12bは、第2画像データにおいて、1/2位相ずれ等の異なる位相の関係にある模様領域を探索先から除外し、同位相の関係にある模様領域を探索して、探索元と探索先との位置の繋がりを記憶することができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、模様抽出部12bは、第2画像データから抽出した複数の模様領域の全てについて、少なくとも探索元の模様領域としたか又は探索元の模様領域との位置関係を記憶した場合、複数の模様領域を位置関係の繋がりの有無に基づいてグループ分けし、複数のグループに分けられた場合、いずれか一つのグループの模様領域の位置関係の情報を印刷画像生成部12cへ提供する。
前記構成によれば、第2画像データが異なる位相の関係にある模様領域を含む場合に、模様抽出部12bは、印刷画像生成部12cに対して、印刷画像データ生成のために、無駄を排した必要な情報を提供することができる。
【0096】
本実施形態は、印刷装置10以外にも、システム、プログラム、方法といった各種カテゴリーの発明を開示する。
印刷方法は、模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送工程と、搬送される生地30を撮像する撮像工程と、模様を表現する第1画像データと、生地30の撮像により生成された第2画像データとの対比に基づいて、第2画像データにおける模様に対応する模様領域を抽出する模様抽出工程と、模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された模様領域の位置関係に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される生地30への印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を備える。そして、模様抽出工程は、模様領域の一つを探索元の模様領域とし、探索元の模様領域から所定の探索方向へ所定距離離れた位置に設定した一定範囲内で探索に成功した模様領域を探索先の模様領域とし、探索先の模様領域の位置が探索方向において探索元の模様領域に隣り合うと記憶する、位置関係特定処理を実行する。さらに、模様抽出工程は、探索先の模様領域を新たな探索元の模様領域として位置関係特定処理を行う。
【0097】
図2Aの例では、印刷ヘッド19がキャリッジ20に搭載されて移動する、いわゆるシリアルプリンターの構成を開示したが、印刷ヘッド19は、いわゆるライン型のヘッドであってもよい。つまり、印刷ヘッド19は、キャリッジ20に搭載されず、幅方向D2に沿って生地30の幅をカバー可能な長尺のプリントヘッドであってもよい。
【0098】
図2A,2Bにおいて、符号22で示す構成は、無端ベルトではなく、生地30を下方から支持する台としてのプラテンであってもよい。つまり、不図示のローラーによって搬送される生地30がプラテン上を移動すると解してもよい。
【0099】
探索元の模様領域から所定距離離れた位置に探索範囲として設定する一定範囲は、円形に限らず、例えば、楕円や多角形であってもよい。
本実施形態は、生地30以外の素材、例えば、紙による印刷媒体であって模様が形成された印刷媒体を印刷に使用する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
10…印刷装置、11…制御部、12…プログラム、12a…模様登録部、12b…模様抽出部、12c…印刷画像生成部、12d…印刷制御部、13…表示部、14…操作受付部、15…撮像部、16…搬送部、17…印刷部、18…記憶部、19…印刷ヘッド、20…キャリッジ、22…無端ベルト、30…生地、40…模様画像データ、41…撮像画像データ、42,43…模様領域、50,51a,51b,51c,51d…着色画像データ、51…印刷画像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10