(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】鉄骨柱梁の接合工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240806BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
E04B1/58 505S
E04B1/24 L
(21)【出願番号】P 2020201587
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 潤二
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第2681408(JP,B2)
【文献】特開2003-184179(JP,A)
【文献】特開2020-037774(JP,A)
【文献】特公平05-039375(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に接合される下鋼管柱及び上鋼管柱の接合箇所に上下一対のフランジと前記上下一対のフランジ間を接続するウェブとを有する鉄骨梁を接合する鉄骨柱梁の接合工法であって、
前記下鋼管柱は、前記鉄骨梁の前記下フランジと接合される下接合部を有する下ダイアフラムを備え、
前記上鋼管柱は、前記鉄骨梁の前記上フランジと接合される上接合部を有する上ダイアフラムを備えており、
前記下鋼管柱を立設する下柱立設工程と、
前記下柱立設工程で立設された前記下鋼管柱の前記下ダイアフラムの前記下接合部の上に前記鉄骨梁の前記下フランジを載置して前記下接合部と前記下フランジとをボルト締結によって仮留めする梁仮組工程と、
前記梁仮組工程で前記下鋼管柱に仮留めされた前記鉄骨梁の前記上フランジの上に前記上鋼管柱の前記上ダイアフラムの前記上接合部を載置して前記上接合部と前記上フランジとをボルト締結によって仮留めして前記上鋼管柱を前記下鋼管柱の上方に仮建てする上柱仮建工程と、
前記上柱仮建工程で仮建てされた前記上鋼管柱の建ち調整を行った後に前記下接合部及び前記下フランジと前記上接合部及び前記上フランジとをそれぞれボルト締結によって本締めして前記鉄骨梁を前記下鋼管柱と前記上鋼管柱とにそれぞれ接合する柱梁接合工程と、
前記柱梁接合工程の後に前記下鋼管柱と前記上鋼管柱とを溶接によって接合する上下柱接合工程と、
前記上下柱接合工程の後にガセットプレートによって前記鉄骨梁と前記下鋼管柱及び前記上鋼管柱とを接合する柱梁補強工程と、を備えることを特徴とする鉄骨柱梁の接合工法。
【請求項2】
前記下鋼管柱及び上鋼管柱は四角柱であることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨柱梁の接合工法。
【請求項3】
前記下ダイアフラム及び上ダイアフラムはそれぞれ複数の下接合部及び上接合部を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄骨柱梁の接合工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造の建物の柱同士並びに柱及び梁を接合するための鉄骨柱梁の接合工法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造の建物を建てる際、柱が長尺でそのままの長さでは製作や運搬が困難である場合、分割された長さの柱を工場で製作して、それらを現場で上下方向に接合して一体化することで所望の長さの柱が立設されることになる。通常、まず下の柱が立設されて、その下の柱に対して上の柱を接合していくことになるが、このとき、例えば、クレーンで上の柱を吊りながら上下の柱を溶接しようとすると、溶接中、上下の柱が正確に位置合わせされた状態で静止させておくことは通常困難である。従って、このような分割された柱同士を接合して一体化する場合、エレクションピースを用いて上下の柱の仮建てを行ってから、上下の柱を突合せ溶接することで接合することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。エレクションピースは、上下の柱を仮固定するための部材で、上の柱の下端部の外側面と下の柱の上端部の外側面とにそれぞれ固定される固定プレートと、上下の柱に固定された固定プレートを共に両側から挟み込む2枚の挟持プレートとを備え、上下の固定プレートの位置を合わせて2枚の挟持プレートで共挟みしてボルト留めすることによって、上下の固定プレートが2枚の挟持プレートを介して連結される。鉄骨造の建物においては、一般的に断面略矩形で中空の鋼管が柱として用いられることが多いが、この場合、通常、柱の四方の側面にそれぞれエレクションピースが設けられて、各エレクションピースをそれぞれ連結することで、上下の柱が仮建てされて、その状態で上下の柱が突合せ溶接によって接合一体化されることになる。エレクションピースは、上下の柱を溶接して一体化するまでの仮建てのために用いられるものであるので、上下の柱を溶接した後には撤去される。
【0003】
一方、梁についても、柱と梁とが接合された状態で工場から現場まで搬送することは通常困難であるため、現場で柱と梁とが接合されることになる。鉄骨造の建物においては、一般的に梁としてH形鋼が用いられることが多く、中空の鋼管の柱とH形鋼の梁とを接合する場合、中空の柱が梁から力を受けて変形しないように、柱と梁との接合部分において、柱にダイアフラムが設けられて、ダイアフラムに梁を接合するという方法が採られる。即ち、柱を軸方向に垂直に切断して、その間に柱の断面外形よりもやや大きく形成されたダイアフラムとなる鋼板を挟んで、鋼板と切断された柱とをそれぞれ突合せ溶接によって一体化することで、柱に横断してダイアフラムが通された、通しダイアフラムという形式が一般的に用いられる(例えば、特許文献2)。
【0004】
この特許文献2の場合も、予め工場において、角鋼管柱に梁となるH形鋼の高さに略等しい間隔を開けて2つのダイアフラムを溶接固定しておくと共に、この2つのダイアフレムの端部に梁のH形鋼と同じ形状であるが長さが短いH形鋼からなるブラケットの上フランジと下フランジをそれぞれ溶接接合し加えてウェブを角鋼管柱の向い合う面に溶接接合しておく。そして、施工現場においては、立設し終えたこの角鋼管柱の前記ブラケットと梁の端部同士を相対向させることにより接し合った上フランジ、下フランジ及びウェブをそれぞれ2枚のスプライスプレートを用いて挟み込んでボルト締めして角鋼管柱と梁を接合固定する工法が用いられている。
【0005】
更に、特許文献3においては、工場では角鋼管柱にH形鋼からなる梁の高さ分の間隔を開けて2つのダイアフレムが溶接接合された状態のものを製作しておき、施工現場においては、立設したこの角鋼管柱の前記2つのダイアフラムの間にH形鋼からなるこの梁の端部を水平移動させながら挿入して、上下に重なり合ったダイアフレムの接合部分と梁の上下のフランジを補強プレートを用いてボルト締めして接合し、梁のウェブと角鋼管柱の表面とをガゼットプレートを用いて溶接接合することによって、角鋼管柱と梁との接合を行っている構造及び工法が開示されている。
【0006】
上述した前記従来技術によると、長尺な角鋼管柱が必要な場合には、特許文献1の工法を使用し、柱と梁の接合の場合には特許文献2又は特許文献3の工法を用いて施工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-184312号公報
【文献】特開2002-146907号公報
【文献】特開平10-317489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術によると、特許文献1の場合には、工場にて上下の柱の上端部と下端部の4面に夫々取付用プレートを合計8枚溶接し、現場にて4面に溶接してある対応する上下の2枚の取付用プレート同士を夫々2枚の固定用プレートで挟み込んで軽くボルト留めしてから、建ち調整した後に本締めし、その後に上下の柱の柱継手部を現場溶接して接合し、更にその後、前記ボルト留めのボルトを外して取り除いてから、柱の上端部、下端部に溶接してある8枚の取付プレートをガスなどで切断すると共に更にグラインダー等で研磨して仕上げるなどの多くの工場及び現場作業が必要になる。即ち、上記のような複数の部材からなるエレクションピースが必要になること及びその取付取外しに多くの手数と手間がかかるという問題点がある。
【0009】
特許文献2の従来技術によると、工場において上下の2つのダイアフラムと梁のH形鋼と同じ寸法のH形鋼のブラケットとを溶接接合すると共にブラケットのウェブと角鋼管柱の表面とも溶接接合しておかなければならないので工場における作業に手間がかかる問題点がある。更に、施工現場においては、ブラケットの端部と梁の端部同士の位置合わせを行わなければならないが、クレーン等で吊り上げているので位置合わせが難しいという問題点がある。更に、端部同士が接し合った時に隣り合っている上フランジ、下フランジ及びウェブ同士をスプライスプレートで連結する際にも、梁をクレーン等で吊り上げた状態であるので作業がし難いという問題点がある。
【0010】
特許文献3の従来技術によると、立設された角鋼管柱にH形鋼からなる梁の高さ分の間隔を上下方向に開けて溶接接合された2つのダイアフラムを有しており、この2つのダイアフラムと梁の接合を行う際には、梁の端部を2つのダイアフラムの間に水平方向位置から移動させて挿入しなければならないが、梁はクレーン等で吊り上げられていたり、もう一方の端部が他の柱に仮留めされたりしているので、作業が困難になる問題点を有している。梁とダイアフラムに開けられているボルト孔を合わせるのにも手数が掛かるという問題点がある。
【0011】
更に、上記した特許文献2及び特許文献3の技術によって角鋼管柱とH形鋼の梁が溶接接合或いはボルト締め接合された場合でも、別の角鋼管柱を継ぎ足して柱を長くしなければならない場合には、特許文献1の技術を使用しなければならないので、予めエレクションピースを角鋼管柱に溶接接合しておき、施工現場で前記した工法に従って別の角鋼管柱の接続作業をしなければならない。そのために、前記した特許文献1の従来技術の有する前記問題点が解消されないまま現場作業が強いられるという問題点が依然として残るという問題点がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、工場での事前作業が少なく、しかも現場での施工省力化を図ることができる鉄骨柱梁の接合工法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上下方向に接合される下鋼管柱及び上鋼管柱の接合箇所に上下一対のフランジと前記上下一対のフランジ間を接続するウェブとを有する鉄骨梁を接合する鉄骨柱梁の接合工法であって、
前記下鋼管柱は、前記鉄骨梁の前記下フランジと接合される下接合部を有する下ダイアフラムを備え、前記上鋼管柱は、前記鉄骨梁の前記上フランジと接合される上接合部を有する上ダイアフラムを備えており、前記下鋼管柱を立設する下柱立設工程と、前記下柱立設工程で立設された前記下鋼管柱の前記下ダイアフラムの前記下接合部の上に前記鉄骨梁の前記下フランジを載置して前記下接合部と前記下フランジとをボルト締結によって仮留めする梁仮組工程と、前記梁仮組工程で前記下鋼管柱に仮留めされた前記鉄骨梁の前記上フランジの上に前記上鋼管柱の前記上ダイアフラムの前記上接合部を載置して前記上接合部と前記上フランジとをボルト締結によって仮留めして前記上鋼管柱を前記下鋼管柱の上方に仮建てする上柱仮建工程と、前記上柱仮建工程で仮建てされた前記上鋼管柱の建ち調整を行った後に前記下接合部及び前記下フランジと前記上接合部及び前記上フランジとをそれぞれボルト締結によって本締めして前記鉄骨梁を前記下鋼管柱と前記上鋼管柱とにそれぞれ接合する柱梁接合工程と、前記柱梁接合工程の後に前記下鋼管柱と前記上鋼管柱とを溶接によって接合する上下柱接合工程と、 前記上下柱接合工程の後にガセットプレートによって前記鉄骨梁と前記下鋼管柱及び前記上鋼管柱とを接合する柱梁補強工程と、を備えることを特徴とする鉄骨柱梁の接合工法としたことにある。
又、前記下鋼管柱及び上鋼管柱は四角柱であることにある。
更に、前記下ダイアフラム及び上ダイアフラムはそれぞれ複数の下接合部及び上接合部を具備することにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鉄骨柱梁の接合工法によると、下柱立設工程で下鋼管柱を地盤に設けた基礎或いは既に下方に立設されている鋼管柱等に立設してから、この下鋼管柱の下ダイアフラムの下接合部の上面に上方から鉄骨梁の下フランジを載せてボルトで仮留めする梁仮組工程を経て、次に、仮留めされた鉄骨梁の上フランジの上面に上方から上鋼管柱の下ダイアフラムの下接合部を合わせて載置しボルトで仮留めして上鋼管柱を下鋼管柱の上方に仮建てする上柱仮建てする上柱仮建工程を経て、更に、仮建て状態の上鋼管柱の建ち調整を行った後に、仮留めしているボルトを本締めして鉄骨梁と下鋼管柱と上鋼管柱に接合する柱梁接合工程を経てから、下鋼管柱と上鋼管柱とを溶接によって接合する上下柱接合工程を経て、最後にガセットプレートで鉄骨梁のウェブと下鋼管柱及び上鋼管柱とを溶接又はボルト締結によって接合する柱梁補強工程を順に行う工法である。
【0015】
このような工程を順に経て行う工法のために、鉄骨梁は上方からクレーン等によって下ダイアフラムの下接合部の接合位置へ正確で楽な作業で降ろすことが出来る。その後の工程においても、上鋼管柱をクレーン等で吊り上げて鉄骨梁の上方位置で下鋼管柱の上方に移動させてから徐々に下降させて上鋼管柱の上ダイアフラムの上接合部を鉄骨梁の上フランジの上面に載置させることが出来る。従って、鉄骨梁を上下のダイアフラムの間に横方向から差し込む必要がなく、下から順にクレーン等で吊り上げた部材を所定位置へ降ろして行くだけの楽な作業で構築して行くことが出来る。又、吊上げた状態で行うので位置合わせも楽で且つ正確に行うことが出来る。
【0016】
又、鉄鋼柱が四角柱である場合には、四つの表面が表に出ているので、ダイアフラムの基板部から接合部の伸びる方向も定め易くなる利点がある。
【0017】
更に、上下の鉄鋼柱に夫々方向の異なる複数の接合部を有するダイアフラムを使用した場合には、一本の鉄鋼柱に複数本の鋼鉄梁を接合することが出来るので、利用範囲が広がる利点がある。
【0018】
更に又、この発明の鉄骨柱梁の接合工法は、従来のエレクションピースを用いた工法と場合と比べて、工場で予め上下の鋼管柱の四面等に取付用プレートを溶接する必要もなく、更に、作業現場でこの上下の鋼管柱の取付用プレートを連結用プレートで連結する作業工程も不要であり、加えて、上下の鋼管柱の溶接後に連結用プレートを取外す作業、その後に取付用プレートを鋼管柱からガスバーナ等で切断除去する作業、グラインダー等で柱表面を研磨する作業等々を鋼管柱が垂直に立設した状態でしなければならないがその必要がなくなるので、現場における作業工程が簡潔に行え且つ楽に正確になり、しかも、全体の工費が廉価になる利点がある。更に、鉄骨梁と鋼管柱の接合をも同時に行うことが出来る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鉄骨柱梁の接合工法における柱梁接合に必要な主要な構成部材の斜視説明図。
【
図2】下鋼管柱を地盤や建物基礎或いは下方の鋼管柱に立設する下柱立設工程説明図と鉄骨梁を上方位置から下ダイアフラムの下接合部上面に降ろす説明図。
【
図5】ガゼットプレートによる柱梁補強工程の説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る鉄骨柱梁の接合工法の一実施形態について、以下、図面を参照しつつ説明する。ただし、以下はあくまで本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明の範囲は以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る鉄骨柱梁の接合工法における鉄骨柱梁の接合構造1は、
図1に示すように、下鋼管柱2と上鋼管柱3との接合箇所においてH形鋼からなる鉄骨梁4が接合されたパネルゾーンの構造となっている。鉄骨梁4と下鋼管柱2及び上鋼管柱3とは下鋼管柱2と上鋼管柱3の接合箇所を跨いでガゼットプレート5でも接合されている。
【0022】
下鋼管柱2は、
図1、
図2によく表れているように、下柱基部21と、下柱上端部22と、下ダイアフラム23とを備える。下柱基部21は、鉄骨造の建物において柱として用いられる中空の閉断面を有する長尺部材であり、地盤あるいは建物基礎に立設されたり2階以上の階層においては下階の柱に固定されるもので鉄骨造の建物において一般的に柱として用いられる角鋼管や丸鋼管等によって構成されている。この実施形態においては角鋼管を用いて説明する。下柱上端部22は、下柱基部21の延長上にあり下柱基部21と等しい断面を有する角鋼管によって形成されており、前記下柱基部21と下柱上端部22との間に下ダイアフラム23が挟まれ溶接固定された構成で下鋼管柱2を形成している。前記下ダイアフラム22は、下柱基部21及び下柱上端部22の間に固定される下基板部231と前記鉄骨梁4を載置して接続する下接合部232を下鋼管柱2から突出した形状の板材である。下接合部232には鉄骨梁4を接続するためのボルト孔233が設けられている。又、上端内部には、接合時に用いる裏当て金70が上方へ突出するように溶接されている。
【0023】
上鋼管柱3は、
図1、
図3によく表れているように、上柱基部31と、上柱下端部32と、上ダイアフラム33とを備える。上柱基部31は、下柱基部21と同じ角鋼管であり、上柱下端部32も同様に上柱基部31との延長上にあり等しい断面を有する角鋼管によって形成されており、前記上柱基部31と上柱下端部32との間に上ダイアフラム33が挟まれ溶接固定された構成で上鋼管柱3を形成している。前記上ダイアフラム33は、上柱基部31及び上柱下端部32に固定される上基板部331と前記鉄骨梁4と接続する上接合部332を上鋼管柱3から突出した形状である。上接合部332には鉄骨梁4を接続するためのボルト孔333が設けられている。
【0024】
ガゼットプレート5は、
図1、
図5によく表れているように、鉄骨梁4と下鋼管柱2及び上鋼管柱3とを接続する板材であって、一端側中央に切欠き部51を形成し板材面には必要に応じて鉄骨梁4と連結固定するためのボルト孔52が設けられている。
【0025】
この発明の鉄骨柱梁の接合工法は、上記した下鋼管柱2、上鋼管柱3、鉄骨梁4及びガゼットプレート5を用いて、鉄骨柱梁の接合を行う工法であり、下柱立設工程、梁仮設組工程、上柱仮建工程、柱梁接合工程、上下柱接合工程、柱梁補強工程を順に行う工法である。以下、各工程について順に説明する。尚、この実施形態においては、鉄骨梁4としては、上フランジ41としたフランジ42及びこれらを繋ぐウェブ43からなるH形鋼を用いた。
【0026】
(下柱立設工程)
下鋼管柱2を建物の基礎等に立設する工程である。下柱基部21の下端を通常の工法によって垂直方向に立設することによって、下柱上端部22及び下ダイアフラム23が上方に位置する。
(梁仮設組工程)
図2に示すように、クレーン等で鉄骨梁4を吊り上げてその端部の下フランジ41を下ダイアフラム23の下接合部232の上方位置に移動させて大方の位置合わせを行ってから矢符に示すように徐々に降ろして
図3に示すように重ね合わせ、下接合部232のボルト孔233と下フランジ41の端部に設けてあるボルト孔411を合わせてボルト6を嵌め込みナットで仮留めする。この時点で鉄骨梁4を吊り上げているクレーン等を外せる場合には外して次の工程に使用する。この工程で鉄骨梁4の反対側の端部が他の鉄鋼柱に既に固定されている場合には、高さ位置が定まっているので水平方向への位置をずらせる作業だけで良い。
(上柱仮建工程)
次に、
図3に示すように、上鋼管柱3を役目を終えた先ほどのクレーンか別のクレーン等で吊り上げて下鋼管柱2の上方位置まで移動させておよその位置合わせをした後に矢符で示すように徐々に降ろして上ダイアフラム33の上接合部332のボルト孔333と上フランジ42の端部に設けてあるボルト孔421を合わせてボルト6を嵌め込みナットで仮留めする。同時に、下柱上端部22の上方位置に上柱下端部32が位置していることを確認して更に降下して仮建てされる。
(柱梁接合工程)
仮建てされた上鋼管柱3の建ち調整を行った後に、
図4に示すように、下接合部232と下フランジ41及び上接合部332と上フランジ42とをそれぞれボルト6のナットを締め付けることによって本締めして、鉄骨梁4を下鋼管柱2と上鋼管柱3とを接合する。
(上下柱接合工程)
そして、上柱下端部32の下端の周囲と下柱上端部22の上端の周囲に形成されている溶接継手71同士を熔材を用いて溶接し、
図6に示すように、溶接ビード7が溶接継手71の周囲に形成される。
(柱梁補強工程)
溶接が終了すると、
図5に示すように、溶接ビード7を跨いで下鋼管柱2と上鋼管柱3とを鉄骨梁4にガセットプレート5で連結補強する。切欠き部51によって溶接ビード7を避けている。ガセットプレート5と下鋼管柱2及び上鋼管柱3とは溶接によって接合しているが、鉄骨梁4のウェブ43との接合は、図示のようにウェブ43のボルト孔431とガセットプレート5のボルト孔52を合わせてボルト6で締めて固定しても良いが、ガセットプレート5の外周囲とウェブ43とを溶接によって接合しても良い。ウェブ43と下鋼管柱2及び上鋼管柱3をそれぞれ別のガセットプレート5を使用しても良い。尚、上下柱接合工程に先立ってこの柱梁補強工程を行っても差支えはない。
【0027】
下鋼管柱2と上鋼管柱3の鋼管柱同士の接合及び一つの鉄骨梁4をこの接合している鋼管柱に接合する接合工法について説明したが、鉄骨梁4が2以上の場合であっても同じ手順で同じ工程を経ることによって実施できる。この場合には、下ダイアフラム23及び上ダイアフラム33のそれぞれの下接合部231及び上接合部332の数を直角方向に2~4つに増加させ、それぞれの方向へ延びた上下の接合部に対して一つずつ同じ工程の繰り返しによって能率よく施工できる。
【0028】
図6は、この柱梁接合工法を使用して構築している骨組構造を示す。2階迄の施工が完了して3階の施工途中までを示し、更に高層階に構築して行く場合には上鋼管柱3を接合し行く。この図からも明らかなように、2階の鋼管柱は、上記説明における下鋼管柱2と上鋼管柱3を兼ねるものであるから、下方には上柱下端部32と上柱基部31の間に上ダイアフラム33が取付けられ、上方には下柱上端部22と下柱基部21の間に下ダイアフラム23が取付けられたものとなる。このような工程の繰り返しによって上層階に至るまでこの発明の鉄骨柱梁の接合工法を採用でき得る。それぞれの階層においても、鉄骨梁4はクレーン等で吊り上げた状態からダイアフラムの接合部の上面へ降ろすだけの作業で良いので、楽にしかも正確に効率よく作業することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る鉄骨柱梁の接合工法は、鋼管柱と鉄骨梁を用いて構築する建物全てに適用できる工法であるので、適用範囲が広く、建設、建築業界における普及が見込まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 鉄骨柱梁の接合構造
2 下鋼管柱
21 下柱基部
22 下柱上端部
23 下ダイアフラム
231 下基板部
232 下接合部
233 ボルト孔
3 上鋼管柱
31 上柱基部
32 上柱下端部
33 上ダイアフラム
331 上基板部
332 上接合部
333 ボルト孔
4 鉄骨梁
41 下フランジ
411 ボルト孔
42 上フランジ
421 ボルト孔
43 ウェブ
431 ボルト孔
5 ガセットプレート
51 切欠き部
52 ボルト孔
6 ボルト
7 溶接ビード
70 裏当て金
71 溶接継手